(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記種別情報は、前記通信パケットの受信側において、セキュリティ処理が行われたセキュアなアプリケーションデータを、アンセキュアなアプリケーションデータにする処理を行う前に読み取られる制御フィールドに設けられている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の通信機。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔システムの全体構成〕
図1は、高度道路交通システム(ITS)の全体構成を示す概略斜視図である。なお、
図1では、道路構造の一例として、南北方向と東西方向の複数の道路が互いに交差した碁盤目構造を想定している。
図1に示すように、高度道路交通システムは、交通信号機1、路側に設置された基地局2、車両に搭載された移動局3(
図2及び
図3参照)、中央装置4、移動局を搭載した車両5、及び、各種の車両感知器よりなる路側センサ6などを含む。なお、以下、路側に設置された基地局2を「路側通信機」といい、車両に搭載された移動局3を「車載通信機」という。
なお、本実施形態に係る高度道路交通システムは、非特許文献1に示す標準規格及び非特許文献2に示すガイドラインに準拠している。
【0033】
交通信号機1と路側通信機2は、複数の交差点Ji(図例では、i=1〜12)のそれぞれに設置されており、電話回線等の通信回線7を介してルータ8に接続されている。このルータ8は交通管制センター内の中央装置4に接続されている。
中央装置4は、自身が管轄するエリアに含まれる各交差点Jiの交通信号機1及び路側通信機2とLAN(Local Area Network)を構成している。従って、中央装置4は、各交通信号機1及び各路側通信機2との間で双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0034】
図1及び
図2では、図示を簡略化するために、十字路交差点である各交差点Jiに信号灯器が1つだけ描写されているが、実際の各交差点Jiには、互いに交差する道路の上り下り用として少なくとも4つの信号灯器が設置されている。
【0035】
路側センサ6は、各交差点Jiに流入する車両台数をカウントしたり、渋滞末尾を検出したりする目的で、管轄エリア内の適所に設置された各種の車両感知器よりなる。
この車両感知器としては、例えば、超音波式車両感知器、マイクロ波式車両感知器、光学式車両感知器(光ビーコン)、「画像式車両感知器」及び「旅行時間計測用感知器」などを採用することができる。
【0036】
〔中央装置〕
中央装置4は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなる制御部を有している。この制御部は、路側通信機2や路側センサ6からの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。
具体的には、中央装置4の制御部は、自身のネットワークに属する交差点Jiの交通信号機1に対して、同一道路上の交通信号機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を行うことができる。
【0037】
また、中央装置4は、通信回線7を介してLAN側と接続された通信インタフェースである通信部を有している。この通信部は、信号灯器の灯色切り替えタイミングに関する信号制御指令S1や、渋滞情報等を含む交通情報S2を所定時間ごとに交通信号機1及び路側通信機2に送信している(
図1参照)。
信号制御指令S1は、前記系統制御や広域制御を行う場合の信号制御パラメータの演算周期(例えば、1.0〜2.5分)ごとに送信され、交通情報S2は、例えば5分ごとに送信される。
【0038】
また、中央装置4の通信部は、各交差点Jiに対応する路側通信機2から、当該路側通信機2が車載通信機3から受信した車両5の位置や速度等を含む車両情報(アプリケーションデータ)S3を受信し、各道路に設置された路側センサ6から前記感知情報S4を受信する。
中央装置4の制御部は、管轄エリア内の路側通信機2や路側センサ6などから通信部が取得した車両情報S3及び感知情報S4に基づいて、前記系統制御や広域制御を実行することができる。
【0039】
〔無線通信の方式等〕
図2は、上記高度道路交通システムの管轄エリアの一部を示す道路平面図である。
図2では、互いに交差する2つの道路の各々が上りと下りで片側1車線のものとして例示されているが、道路構造はこれに限られるものではない。
図2にも示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、車載通信機3との間で無線通信が可能な複数の路側通信機2と、CSMA方式で無線通信を行う移動無線送受信機の一種である複数の車載通信機3とを有する、無線通信システムを含んでいる。
【0040】
路側通信機2は、それぞれ路側の交差点Jiごとに設置されていて、
図1及び
図2に例示するように、例えば交通信号機1の支柱に取り付けられている。車載通信機3は、道路を走行する車両5に搭載されている。
路側通信機2は、自身の受信エリアAr内にある車載通信機3からの無線信号を受信可能であり、その受信エリアArが他の路側通信機2のアンテナに到達している場合には、当該他の路側通信機2からの無線信号も受信可能である。
【0041】
本実施形態の路側通信機2では、道路の延長方向に沿った指向性を有する複数のアンテナ20a,20b(
図3及び
図7参照)を採用しているため、受信エリアArが交差点J2から道路の延長方向に沿って延びた形状になっている。
なお、
図2では、交差点J2に設置された路側通信機2の受信エリアArのみが描かれているが、その他の交差点Jiに設置された路側通信機2の受信エリアArも同様に、交差点Jiから道路の延長方向に沿って延びた形状になっている。
【0042】
本実施形態の高度道路交通システムでは、路側通信機2同士の通信(路路間通信)については無線通信が用いられ、また、路側通信機2と車載通信機3との間の通信(「路」から「車」への路車間通信と「車」から「路」への車路間通信との双方を含む。)と車載通信機3同士(車車間通信)についても、無線通信が用いられている。
なお、前記した通り、交通管制センターに設けられた中央装置4は、各路側通信機2と有線での双方向通信が可能となっているが、これらの間も無線通信であってもよい。
【0043】
路側通信機2には、自身が無線送信するための専用のタイムスロット(
図4の第1スロットT1)をTDMA方式で割り当てられており、このタイムスロット以外の時間帯(
図4の第2スロットT2)には無線送信を行わない。従って、路側専用のタイムスロット以外の時間帯は、車載通信機3のためのCSMA方式による送信時間として開放されている。
また、路側通信機2は、自身の送信タイミングを制御するために、他の路側通信機2との時刻同期機能を有している。この路側通信機2の時刻同期は、例えば、自身の時計をGPS時刻に合わせるGPS同期や、自身の時計を他の路側通信機2からの送信信号に合わせるエア同期等によって行われる。
【0044】
〔路側通信機(基地局)〕
図3は、路側通信機2と車載通信機3の内部構成を示すブロック図である。
路側通信機2は、無線通信のためのアンテナ20a,20bを有する無線通信部(送受信部)21と、中央装置4と双方向通信する有線通信部22と、それらの通信制御を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)等よりなる制御部23と、制御部23に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部24とを備えている。
【0045】
記憶部24は、制御部(コンピュータ)23が実行する通信制御処理のためのコンピュータプログラムや、各通信機2,3の通信機IDなどを記憶している。制御部23が実行する処理は、コンピュータプログラムが制御部23によって実行されることで行われる。
【0046】
無線通信部21は、交差点Jiの道路方向に沿った指向性を有する2つのアンテナ20a,20bを備えており、この2つのアンテナ20a,20bのうちのいずれか1つを受信アンテナとして選択する選択受信方式を採用している。なお、選択受信方式を採用する無線通信部21の具体的構成(
図6)については後述する。
【0047】
制御部23は、無線通信部21や有線通信部22が送受信するITS用アプリケーションデータを総括的に制御する通信制御機能を有する。
例えば、制御部23は、無線通信部21が車載通信機3から受信した車両情報(アプリケーションデータ)S3を記憶部24に一時的に記憶させ、有線通信部22を通じて中央装置4に転送する。また、制御部23は、有線通信部22が中央装置4から受信した交通情報(アプリケーションデータ)S2等を、記憶部24に一時的に記憶させ、当該交通情報S2を含む通信パケットを無線通信部21からブロードキャスト送信する。
【0048】
また、制御部23は、記憶部24に記憶されたタイムスロットの割当情報(アプリケーションデータ)S5を含む通信パケットを、無線通信部21を介してブロードキャスト送信する。この割当情報S5は、路側通信機2の送信時間(
図4の第1スロットT1)を車載通信機3に通知するための情報である。
路側通信機2から割当情報S5を取得した車両5の車載通信機3は、その割当情報S5を送信した路側通信機2が送信を行わない時間帯(
図4の第2スロットT2)に、キャリアセンス方式による無線送信を行う。
【0049】
〔タイムスロットの割当情報〕
図4は、上記割当情報S5に含まれるタイムスロットの一例を示す概念図である。
図4に示すように、タイムスロットには第1スロットT1と第2スロットT2とが含まれており、これらのスロットT1,T2は所定長のサイクルC(例えば、100m秒)内で所定回数だけ繰り返すようになっている。
第1スロットT1は、路側通信機2用のタイムスロットであり、この時間帯においては路側通信機2による無線送信が許容される。第1スロットT1にはスロット番号iが付されており、このスロット番号iは周期的にインクリメント又はデクリメントされる。
【0050】
また、第2スロットT2は、車載通信機3用のタイムスロットである。この時間帯は車載通信機3による無線送信用として開放するため、路側通信機2は第2スロットT2では無線送信を行わない。
図4に示すタイムスロットにおいて、各スロット番号i=1〜3の第1スロットT1に記したドット●は、当該第1スロットT1に複数の路側通信機2の送信時間が割り当てられていることを示している。
【0051】
すなわち、
図4に示す例では、スロット番号(1)の第1スロットT1には、交差点J1とJ5(
図1参照)にある2つの路側通信機2の送信時間が割り当てられ、スロット番号(2)の第1スロットT1には、交差点J2,J6及びJ8にある3つの路側通信機2の送信時間が割り当てられ、スロット番号(3)の第1スロットT1には、交差点J3にある1つの路側通信機2の送信時間が割り当てられている。
【0052】
このように、各路側通信機2の送信時間は、第1スロットT1に対して1対1対応で割り当てられるのではなく、互いに電波干渉が生じない交差点Jiに設置された路側通信機2同士について、同じスロット番号iに重複して割り当て可能となっている。
かかるスロット割当は、中央装置4が総括的に行うこともできるし、他装置から取得した設置位置やスロット情報を利用して各路側通信機2が自律的に行うこともできる。
また、複数の路側通信機2,2…の中から1つの親機を予め選定しておき、この親機が、他の路側通信機2である子機同士で電波干渉が生じない送信タイミングとなるように、スロット割当を行うようにすることもできる。
【0053】
〔車載通信機〕
図3に戻り、車載通信機3は、無線通信のためのアンテナ30を有する通信部(送受信部)31と、この通信部31に対する通信制御を行うプロセッサ等よりなる制御部32と、この制御部32に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部33とを備えている。
記憶部33は、制御部(コンピュータ)32が実行する通信制御処理のためのコンピュータプログラムや、各通信機2,3の通信機ID等を記憶している。制御部23が実行する処理は、コンピュータプログラムが制御部32によって実行されることで行われる。
【0054】
車載通信機3の制御部32は、車車間通信のためのキャリアセンス方式による無線通信を通信部31に行わせるものであり、路側通信機2との間の時分割多重方式での通信制御機能は有していない。
従って、車載通信機3の通信部31は、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行うようになっている。
【0055】
なお、車載通信機3の制御部32は、車両5(車載通信機3)の現時の位置、方向及び速度等を含む車両情報(アプリケーションデータ)S3を含む通信パケットを、通信部31を介して外部にブロードキャストで無線送信させている。
また、車載通信機3の制御部32は、他の車両5から直接受信した車両情報S3や、路側通信機2から受信した他の車両5の車両情報S3に含まれる、位置、速度及び方向に基づいて、右直衝突や出合い頭衝突等を回避するための安全運転支援制御を行うことができる。
【0056】
更に、車載通信機3の制御部32は、路側通信機2がブロードキャスト送信したタイムスロットの割当情報(アプリケーションデータ)S5を通信部31が受信すると、この割当情報S5を含む通信フレームを生成し、この通信フレームの無線信号をブロードキャスト送信して他の車載通信機3に割当情報S5を転送する。
従って、路側通信機2がダウンリンク送信した無線信号と、その路側通信機2の送信エリア外の車載通信機3がブロードキャスト送信した無線信号とが、その路側通信機2の送信エリア内の車載通信機3に同時に届くことはない。
【0057】
[通信プロトコルスタック]
図5は、路側通信機2及び車載通信機3が準拠する非特許文献1に記載の通信プロトコルスタックを示している。
図5に示す機能に基づく処理は、路側通信機2の制御部23及び車載通信機3の制御部32によって実行される。
【0058】
図5に示すプロトコルスタックは、OSI参照モデルを参照して各層が規定されており、レイヤ1(L1,物理層:Physical Layer)、レイヤ2(L2,データリンク層:Data Link Layer)、車車間・路車間共用通信制御情報層(IVC−RVC層:Inter-Vehicle Communication - Road to Vehicle Communication Layer)、及び、レイヤ7(L7,アプリケーション層:Application Layer)を有している。
【0059】
レイヤ1は、IEEE802.11において規定される物理層に準拠して動作する。
レイヤ2は、MAC副層(Medium Access Control sublayer)と、LLC副層(Logical Link Control sublayer)と、から構成される。なお、MAC副層を、単に、MAC層(Medium Access Control layer)ともいい、LLC副層(Logical Link Control sublayer)を、単に、LLC層(Logical Link Control layer)ともいう。
【0060】
MAC層は、車載通信機3間の通信制御としてCSMA/CA方式を用いる。MAC層は、無線チャネルの通信管理として、フレーム制御及び同報通信(ブロードキャスト)を行う。
LLC層は、上位層のエンティティ間でパケット伝送を行うために、確認なしコネクションレス型通信のサービスを提供する。
【0061】
車車間・路車間共用通信制御情報層(IVC−RVC層)は、車車間・路車間共用通信制御に必要な情報の生成と管理を行う。非特許文献1では、路路間通信は規定されていないが、本実施形態のように、路路間通信を行う場合、車車間・路車間共用通信制御情報層(IVC−RVC層)において、路路間通信の通信制御に必要な情報の生成と管理を行うことができる。
【0062】
レイヤ7は、アプリケーションAPに対して通信制御手段を提供するためのものである。アプリケーションAPは、送信される通信パケットに格納されるアプリケーションデータ(交通情報、車両情報など)をレイヤ7に与えるとともに、受信した通信パケットに格納されていたアプリケーションデータをレイヤ7から取得する。
【0063】
ここで、路側通信機(基地局)2のアプリケーションとしては、車載通信機3又は他の路側通信機2に対して提供されるアプリケーションデータ(交通情報・車両情報など)の取得・生成を行い、そのアプリケーションデータをレイヤ7によって提供される通信制御手段によって送信するアプリケーションが含まれる。
また、路側通信機2のアプリケーションとしては、レイヤ7によって提供される通信制御手段によって車載通信機3又は他の路側通信機2から受信したアプリケーションデータ(交通情報・車両情報など)を取得し、処理又は転送するアプリケーションが含まれる。
【0064】
さらに、車載通信機3のアプリケーションとしては、他の車載通信機3又は路側通信機2に対して提供されるアプリケーションデータ(交通情報・車両情報など)の取得・生成を行い、そのアプリケーションデータをレイヤ7によって提供される通信制御手段によって送信するアプリケーションが含まれる。
また、車載通信機3のアプリケーションとしては、レイヤ7によって提供される通信制御手段によって他の車載通信機3又は路側通信機2から受信したアプリケーションデータ(交通情報・車両情報など)を取得し、処理又は転送するアプリケーションが含まれる。
【0065】
前述の各層L1,L2,IVC−RVC,L7における処理及びアプリケーションAPにおける処理は、前記制御部23及び前記制御部32によって実行される。
また、前記制御部23及び前記制御部32は、
図5におけるセキュリティ管理(SEC)の処理、及びシステム管理(SME)の処理も実行する。
【0066】
セキュリティ管理(SEC)は、セキュリティ・サービスアクセスポイント(SEC−SAP)を介して、レイヤ7との間で、セキュリティ処理のために情報のやりとりをおこなう。具体的には、セキュリティ管理では、レイヤ7から取得したアンセキュアなアプリケーションデータをセキュアにしてレイヤ7に返す処理、及び、レイヤ7から取得したセキュアなアプリケーションデータをアンセキュアにしてレイヤ7に返す処理が行われる。
【0067】
システム管理(SME)は、レイヤマネジメントエンティティ(LME)を介して、各層L1,L2,IVC−RVC,L7との間で、システム管理に関する情報のやりとりをおこなう。
【0068】
[非特許文献1記載の通信パケットの構成]
図6は、路側通信機2及び車載通信機2によって送信される通信パケットの構成を示している。
図6に示す通信パケットの構成は、基本的に、非特許文献1に準拠したものである。
【0069】
通信パケットは、先頭にPHYヘッダ(物理ヘッダ)を有している。PHYヘッダは、送信側の通信機2,3のレイヤ1(物理層)によって、MAC層から取得したMACフレーム(MPDU;MAC Protocol Data Unit)の前に付加される。
PHYヘッダは、受信側の通信機2,3におけるレイヤ1(物理層)において読み取られて、受信側のレイヤ1における通信制御処理に用いられる。なお、PHYヘッダを含む通信パケット全体が、PPDU(PHY Protocol Data Unit)である。PHYヘッダよりも後側のMACフレーム(MPDU(MAC Protocol Data Unit))は、PSDU(PHY Service Data Unit)でもある。
【0070】
PHYヘッダの構成は、IEEE802.11に準拠する。したがって、PHYヘッダには、プリアンブルなどが含まれる。
【0071】
PHYヘッダに続いて、MAC制御フィールド(MACヘッダ)及びLLC制御フィールド(LLCヘッダ)が設けられている。MAC制御フィールドは、送信側の通信機2,3のレイヤ2のMAC層によって、LLC層から取得したLLCフレーム(LPDU;LLC Protocol Data Unit)の前に付加される。
MAC制御フィールドは、受信側の通信機2,3のレイヤ2のMAC層において読み取られて、受信側のMAC層における通信制御処理に用いられる。
MAC制御フィールドよりも後側のLLCフレーム(LPDU;LLC Protocol Data Unit)は、MSDU(MAC Service Data Unit)でもある。
【0072】
図7(a)に示すように、MAC制御フィールドは、フレーム制御フィールド、保持期間フィールド、宛先アドレスフィールド、送信元アドレスフィールド、無線局識別符号フィールド、及び送信カウント値フィールドを有している。
【0073】
MAC制御フィールドに含まれる上記の各フィールドのうち、送信元アドレスフィールドには、送信元となる通信機2,3のMACアドレスが格納される。通信機2,3のMACアドレスは、単なるアドレスであるため、通信機2,3の種別を示すものではない。
【0074】
MAC制御フィールドに含まれる上記の各フィールドのうち、宛先アドレスフィールドには、宛先のアドレスが格納される。ただし、非特許文献1において、宛先アドレスとしては、ブロードキャストアドレスのみが規定されている。非特許文献1において、宛先アドレスは、すべての基地局(路側通信機)2及び移動局(車載通信機)3が解釈しなければならないこととされている。
【0075】
したがって、
図6に示す通信パケットが無線信号として送信されていることを検出した全ての路側通信機2及び車載通信機3は、当該通信パケットを自機(自局)2,3宛の通信パケットとして受信することになる。
ただし、通信パケットの受信側2,3のMAC層では、受信した通信パケットが、車車間通信パケット、路路間通信パケット、及び路車間通信パケットのうちのいずれであるのかは、区別できない。
【0076】
なお、MAC制御フィールドに含まれる上記の各フィールドのうち、無線局識別符号フィールドには、無線局識別符号を格納することができるが、非特許文献1によると、無線局識別符号は、MAC制御フィールドにおいて無視されることとなっている。
したがって、MAC制御フィールドに含まれる各フィールドに格納される情報は、通信機2,3の種別を示すものではない。
【0077】
通信パケットの受信側2,3のMAC層は、受信に成功した通信パケットのMACフレーム(MPDU)から、MAC制御フィールド等を取り除いたLLCフレーム(LPDU;MSDU)を、LLC層に与える。
【0078】
図6に戻り、MAC制御フィールドに続くLLC制御フィールドは、送信側の通信機2,3のレイヤ2のLLC層によって、IVC−RVC層から取得したIRフレーム(IPDU;IR Protocol Data Unit)の前に付加される。
LLC制御フィールドは、受信側の通信機2,3のレイヤ2のLLC層において読み取られて、受信側のLLC層における通信制御処理に用いられる。
また、LLC制御フィールドよりも後側のIRフレーム(IPDU;IR Protocol Data Unit)は、LSDU(LLC Service Data Unit)でもある。
【0079】
図7(b)に示すように、LLC制御フィールドは、DSAP(Destination Service Access Point)アドレスフィールド、SSAP(Source Service Access Point)アドレスフィールド、制御フィールド、及びプロトコル識別子フィールドを有している。
非特許文献1において、LLC制御フィールドにおける各フィールドに格納される情報は、通信機2,3の種別を示すものではない。
【0080】
通信パケットの受信側2,3のLLC層は、受信した通信パケットのLLCフレーム(LPDU)から、LLC制御フィールドを取り除いたIRフレーム(IPDU;LSDU)を、IVC−RVC層に与える。
【0081】
図6に戻り、LLC制御フィールに続いて、IR制御フィールド(IRヘッダ)が設けられている。IR制御フィールドは、送信側の通信機2,3のIVC−RVC層によって、APフレーム(APDU;Application Protocol Data Unit)の前に付加される。
IR制御フィールドは、受信側の通信機2,3のIVC−RVC層において読み取られて、受信側のIVC−RVC層における通信制御処理に用いられる。
IR制御フィールドよりも後側のAPフレーム(APDU;Application Protocol Data Unit)は、ISDU(IR Service Data Unit)でもある。
【0082】
図7(c)に示すように、IR制御フィールドは、バージョンフィールド、識別情報フィールド、同期情報フィールド、予約フィールド、送信時刻フィールド、路車間通信期間情報フィールド、及び拡張領域フィールドを有している。
【0083】
識別情報フィールドに格納される識別情報は、送信元の識別に用いられる。識別情報フィールドは、4ビットのフィールドである。4ビットのうち、先頭ビットが送信元の識別に用いられ、送信元が基地局であれば「1」、送信元が移動局であれば「0」が格納される。したがって、識別情報フィールドに格納される識別情報は、送信元の通信機2,3の種別を示すものである。
なお、4ビットの識別情報フィールドのうち、先頭ビット以外の他のビットは、非特許文献1において、今後のための予約とされており、未定義である。
【0084】
なお、IR制御フィールドにおける予約フィールド(1ビット)は、今後のための予約とされている。
また、IR制御フィールドにおける拡張領域フィールド(16ビット)も、今後のための予約フィールドとされている。
【0085】
非特許文献1によると、IR制御フィールドにおいて、識別情報フィールド以外の各フィールドに格納される情報は、通信機2,3の種別を示すものではない。
【0086】
通信パケットの受信側2,3のIVC−RVC層は、受信した通信パケットのIRフレーム(IPDU)から、IR制御フィールドを取り除いたAPフレーム(APDU;ISDU)を、レイヤ7に与える。
【0087】
図6に戻り、IR制御フィールドに続いて、L7ヘッダが設けられている。L7ヘッダは、送信側の通信機2,3のレイヤ7によって、ASDU(Application Service Data Unit)の前に付加される。
レイヤ7ヘッダは、受信側の通信機2,3のレイヤ7において読み取られて、受信側のレイヤ7における通信制御処理に用いられる。
【0088】
図7(d)に示すように、レイヤ7ヘッダは、バージョンフィールド、セキュリティ区分情報フィールド、予約フィールド、及びアプリケーション関連情報フィールドを有している。
【0089】
レイヤ7ヘッダのセキュリティ区分情報フィールド(1ビット)には、セキュリティ区分情報が格納される。セキュリティ区分情報は、アプリケーションデータの処理を行う際に、セキュリティ管理SECを経由するか否かを示す情報であり、「0」であればセキュリティ管理SECを経由しないことを示し、「1」であればセキュリティ管理SECを経由することを示す。
【0090】
レイヤ7ヘッダのアプリケーション関連情報フィールド(8ビット)には、送信側においてアプリケーションAPがレイヤ7に伝えるアプリケーション関連情報、又は、受信側においてレイヤ7がアプリケーションに伝えるアプリケーション関連情報が格納される。
非特許文献1では、アプリケーション関連情報の詳細は、規定されていない。
【0091】
レイヤ7ヘッダの予約フィールド(3ビット)は、今後のための予約とされている。
【0092】
非特許文献1によると、レイヤ7ヘッダの各フィールドに格納される情報は、通信機2,3の種別を示すものではない。
【0093】
送信側の通信機2,3のレイヤ7は、アプリケーションAPからアプリケーションデータを受け取った際に、セキュリティ管理SECを経由しない旨の指示を受け取った場合には、アプリケーションAPから受け取ったアプリケーションデータ(アンセキュアなアプリケーションデータ)を、ASDUとして取り扱う。つまり、アンセキュアなアプリケーションデータの前にレイヤ7ヘッダが付加される。この場合、レイヤ7ヘッダのセキュリティ区分情報フィールドには、セキュリティ管理SECを経由しないことを示す「0」が格納される。
【0094】
受信側の通信機2,3のレイヤ7は、受信した通信パケットのレイヤ7ヘッダのセキュリティ区分情報に、セキュリティ管理SECを経由しないことを示す「0」が格納されている場合、APDUからレイヤ7ヘッダを除いた部分をASDU(アンセキュアなアプリケーションデータ)として扱う。つまり、このASDU(アンセキュアなアプリケーションデータ)は、アプリケーションAPに与えられる。
【0095】
一方、送信側の通信機2,3のレイヤ7は、アプリケーションAPからアプリケーションデータを受け取った際に、セキュリティ管理SECを経由する旨の指示を受け取った場合には、アプリケーションAPから受け取ったアプリケーションデータ(アンセキュアなアプリケーションデータ)を、セキュリティサービスアクセスポイントSEC−SAPを介して、セキュリティ管理SECに渡す。
【0096】
セキュリティ管理SECでは、レイヤ7から受け取ったアンセキュアなアプリケーションデータに対して、セキュリティ処理を行って、セキュアなアプリケーションデータを生成する。
図6に示すASDUは、セキュリティ管理SECによってセキュリティ処理が行われたセキュアなアプリケーションデータを示している。非特許文献1においてセキュアなアプリケーションデータの詳細についての規定はないが、セキュアなアプリケーションデータは、セキュリティ管理ヘッダ(セキュリティ管理のためのフィールド)及びアプリケーションデータ本体によって構成することができる。
セキュリティ管理ヘッダには、セキュリティ管理SECによって、セキュリティ管理に関する情報が格納される。
なお、アプリケーションデータがセキュアである場合には、ASDUに含まれる情報のうち、セキュリティ管理ヘッダは、制御フィールであるとみなす。
【0097】
セキュリティ管理SECは、セキュリティ処理が施されたセキュアなアプリケーションデータを、セキュリティサービスアクセスポイントSEC−SAPを介して、レイヤ7に戻す。
レイヤ7は、セキュリティ管理SECから与えられたセキュアなアプリケーションデータを、ASDUとして取り扱う。つまり、セキュアなアプリケーションデータ(ASDU)の前にレイヤ7ヘッダが付加される。この場合、レイヤ7ヘッダのセキュリティ区分情報フィールドには、セキュリティ管理SECを経由することを示す「1」が格納される。
【0098】
受信側の通信機2,3のレイヤ7は、受信した通信パケットのレイヤ7ヘッダのセキュリティ区分情報に、セキュリティ管理SECを経由することを示す「1」が格納されている場合、APDUからレイヤ7ヘッダを除いた部分をセキュアなアプリケーションデータとして扱う。この場合、レイヤ7は、セキュアなアプリケーションデータを、セキュリティ管理SECに渡す。
【0099】
セキュリティ管理SECでは、レイヤ7から与えられたセキュアなアプリケーションデータをアンセキュアなアプリケーションデータにする処理が行われる。
セキュリティ管理SECは、アンセキュアになったアプリケーションデータを、レイヤ7に戻す。
レイヤ7は、セキュリティ管理SECから戻されたアンセキュアなアプリケーションデータをASDUとして扱う。つまり、このASDU(アンセキュアなアプリケーションデータ)は、アプリケーションAPに与えられる。
【0100】
なお、セキュリティ管理SECにおいて、アンセキュアなアプリケーションデータをセキュアなアプリケーションデータにする処理(セキュリティ処理)には、暗号化処理、署名処理などの処理が含まれる(ただし、非特許文献1では規定されていない)。
また、セキュリティ管理SECにおいて、セキュアなアプリケーションデータをアンセキュアなアプリケーションデータにする処理には、暗号を復号化する処理、署名検証処理などの処理が含まれる(ただし、非特許文献1では規定されていない)。
【0101】
なお、アプリケーションデータへの暗号化処理は、アプリケーションデータを秘匿したい場合に行われる。例えば、路路間通信のアプリケーションデータには、機器の保守関連情報のように、車載通信機(移動局)3又は一部の路側通信機(基地局)2に対して、秘匿したい情報が含まれることがある。このような場合、アプリケーションデータは送信側にて暗号化され、受信側にて復号される。
【0102】
[非特許文献2の拡張レイヤ及び通信パケット構成]
図8は、
図5のアプリケーションAPとレイヤ7との間の通信機能を拡張する拡張レイヤELを示している。この拡張レイヤELは非特許文献2のガイドラインに準拠したものである。非特許文献1の標準規格に加えて、非特許文献2のガイドラインにも準拠する路側通信機2及び車載通信機3の場合、拡張レイヤELに基づく処理は、路側通信機2の制御部23及び車載通信機3の制御部32によって実行される。
なお、本実施形態に係る路側通信機2及び車載通信機3は、基本的に、非特許文献1の標準規格に加えて、非特許文献2のガイドラインにも準拠するものとする。
【0103】
拡張レイヤELは、アプリケーションAPに対してデータ伝送サービスを提供する。アプリケーションAPは、送信される通信パケットに格納されるアプリケーションデータ(交通情報、車両情報など)を拡張レイヤELに与える。データ伝送サービス提供のため、拡張レイヤELは、レイヤ7以下の下位階層に対してデータ伝送要求を出す。
【0104】
また、拡張レイヤELは、セキュリティサービスアクセスポイントSEC−SAPを介して、セキュリティ管理SECとの間で、レイヤ7と同様に、セキュリティ処理のために情報のやりとりを行うことができる。
つまり、セキュリティ管理SECは、レイヤ7及び拡張レイヤELの双方との間で、情報のやりとりが可能である。
【0105】
図9は、
図8に示す拡張レイヤELに対応した通信パケット構成を示している。
図9の通信パケットは、
図6に示すL7ヘッダの後に、ELヘッダ(EL基地局ヘッダ、EL移動局ヘッダ)を追加したものに相当する。
【0106】
ELヘッダは、送信側の通信機2,3の拡張レイヤELによって、EL−SDU(EL Service Data Unit)の前に付加される。
ELヘッダは、受信側の通信機2,3の拡張レイヤELにおいて読み取られて、受信側の拡張レイヤELにおける処理に用いられる。
【0107】
基地局(路側通信機)2によって付加されるELヘッダ(EL基地局ヘッダ)は、
図10(a)に示すように、バージョンフィールド、ELヘッダ種別フィールド、ELセキュリティ区分情報フィールド、データ関連情報フィールド、分割番号フィールド、予約フィールドを有している。
移動局(車載通信機)3によって付加されるELヘッダ(EL移動局ヘッダ)は、
図10(b)に示すように、バージョンフィールド、ELヘッダ種別フィールド、ELセキュリティ区分情報フィールドを有している。
【0108】
ELヘッダ種別フィールドは、EL基地局ヘッダとEL移動局ヘッダを区別する情報が格納されるフィールドである。したがって、ELヘッダ種別フィールドに格納される情報は、送信元の通信機2,3の種別を示すものである。
【0109】
ELヘッダのセキュリティ区分情報フィールドは、レイヤ7ヘッダのセキュリティ区分情報フィールドと同じものである。
拡張レイヤELは、セキュリティ管理SECに、アンセキュアなアプリケーションデータをセキュアなアプリケーションデータにする処理、及び、セキュアなアプリケーションデータをアンセキュアなアプリケーションデータにする処理を実行させることに関し、レイヤ7と同様に動作する。
【0110】
ELヘッダのデータ関連情報フィールド(18ビット)には、アプリケーションデータの関連情報(Data Associated Information)が格納される。
ELヘッダ(EL基地局ヘッダ)の予約フィールド(4ビット)は、今後のための予約である。
【0111】
図10(c)(d)に示すように、アプリケーションデータの関連情報(Data Associated Information)としては、BaseStationID(基地局ID情報)、DataSequence(データ順番情報)、DataTotalNumber(データ総数情報)が設けられている。
BaseStationID(基地局ID情報)によって、送信元の基地局を個別に識別することができる。
【0112】
非特許文献2によると、ELヘッダにおいて、ELヘッダ種別フィールド以外の各フィールドに格納される情報は、通信機2,3の種別を示すものではない。
【0113】
[実施形態の通信パケット]
本実施形態の路側通信機2及び車載通信機3によって送信される通信パケットは、非特許文献1の標準規格だけに準拠する場合、基本的に、
図6に示す構成と同じ構成を有し、非特許文献1の標準規格に加えて非特許文献2のガイドラインにも準拠する場合、基本的に、
図9に示す構成と同じ構成を有する。
【0114】
本実施形態の路側通信機2及び車載通信機3によって送信される通信パケットが、非特許文献1及び2に記載のもの相違する点は、次の相違点1及び2に示す通りである。
なお、無線通信システム内には、次の相違点1及び2に示す相違点を有する通信パケットを送信することができる路側通信機2及び車載通信機3(実施形態に係る路側通信機2及び車載通信機3)だけでなく、非特許文献1及び2にのみに準拠した路側通信機2及び車載通信機3も含むことができる。
【0115】
本実施形態の路側通信機2及び車載通信機3によって送信される通信パケットは、基本的には非特許文献1及び2に準拠しているため、非特許文献1及び2にのみに準拠した車載通信機3(移動局)及び路側通信機2であっても、受信可能である。つまり、非特許文献1及び2に示す規格のみに準拠した車載通信機3(移動局)及び路側通信機2は、本実施形態に係る無線通信システムにおいても機能することができる。
【0116】
[相違点1:路路間通信における宛先アドレス]
非特許文献1に従うと、MAC制御フィールドの宛先アドレスフィールドには、ブロードキャストアドレスのみが格納されることになるが、本実施形態の路側通信機2の制御部23は、路側通信機2向け通信パケット(路路間通信パケット又は車路間通信パケット)を送信する際には、MAC制御フィールドの宛先アドレスフィールドに、非ブロードキャストアドレスがセットされる。
【0117】
具体的には、本実施形態の路側通信機2の制御部23(MAC層)又は車載通信機3の制御部32は、路側通信機向け通信パケットを送信する際には、宛先となる路側通信機2のアドレスを指定するユニキャストアドレス、又は、宛先として複数の路側通信機2を指定するマルチキャストアドレスを、MAC制御フィールドの宛先アドレスフィールドに格納する。
【0118】
この場合、宛先となった路側通信機2は、ユニキャストアドレス又はマルチキャストアドレスによって自機(自局)が指定されているため、送信されてきた通信パケットを自機(自局)宛と判断して問題なく受信することができる。
【0119】
一方、宛先として指定されていない路側通信機2及び車載通信機3は、通信パケットを受信しても、MAC層より上位階層で処理する前に、その通信パケットを破棄することができる。したがって、宛先として指定されていない車載通信機3等の処理負荷を軽減できる。
なお、宛先として指定されていない通信機2,3であっても、必要に応じて、MAC層よりも上位階層での処理を行って、通信パケットに含まれるアプリケーションデータを取得してもよい。
【0120】
しかも、非特許文献1(及び2)のみに準拠した車載通信機3(全ての通信パケットがブロードキャストアドレスで送信されてくることを前提とした車載通信機3)においては、非ブロードキャストアドレスで送信されてきた通信パケットを、規格外の情報が格納されたイレギュラーなものとして、棄却することが期待される。
したがって、非特許文献1(及び2)のみに準拠した車載通信機3(全ての通信パケットがブロードキャストアドレスで送信されてくることを前提とした車載通信機3)と、路路間通信パケットはユニキャストアドレス又はマルチキャストアドレスで送信されてくることを前提とした車載通信機3)とを、同一の無線通信システム内に共存させることができる。
【0121】
ユニキャストでの路路間通信は、例えば、
図11に示す個別情報(アプリケーションデータ)の送信のために利用することができる。個別情報とは、特定の一の路側通信機2宛に送信されるべき情報をいい、例えば、第1の路側通信機2の近傍に設置された車両感知器6にて検出した情報を個別情報とすることができる。この場合、車両感知器6にて検出した情報は個別情報として、第1の路側通信機2Aから、車両進行方向に位置する第2の路側通信機2B宛にユニキャスト送信される。
【0122】
マルチキャストでの路路間通信は、例えば、
図11に示す共通情報(アプリケーションデータ)の送信のために利用することができる。共通情報とは、複数の路側通信機2宛に共通して送信されるべき情報をいい、例えば、第1の路側通信機2の近傍に設置された交通信号機1の動作を示す情報を共通情報とすることができる。この場合、交通信号機1の動作を示す情報は、共通情報として、第1の路側通信機2Aから、四方に位置する複数の路側通信機宛にマルチキャスト送信される。
【0123】
なお、本実施形態の路側通信機2の制御部23(MAC層)は、路路間通信パケット以外の通信パケット(路車間通信パケット)を送信する際には、非特許文献1に示すとおり、MAC制御フィールドの宛先アドレスフィールドには、ブロードキャストアドレスをセットする。また、本実施形態の車載通信機2の制御部32(MAC層)は、車路間通信パケット以外の通信パケット(車車間通信パケット)を送信する際には、非特許文献1に示すとおり、MAC制御フィールドの宛先アドレスフィールドには、ブロードキャストアドレスをセットする。
【0124】
[相違点2:宛先となる通信機の種別情報]
非特許文献1及び2によると、IR制御フィールドの識別情報フィールド(
図7(c)参照)、及び、ELヘッダのELヘッダ種別フィールド(
図10(a)(b)参照)に格納される情報は、送信元の通信機2,3の種別を示す情報(種別情報;第1情報)として利用できる。しかし、宛先の通信機2,3の種別を示す情報は含まれていない。
【0125】
そこで、本実施形態の通信パケットには、アプリケーションデータ本体以外のフィールド(制御フィールド)に、宛先の通信機2,3の種別を示す情報(種別情報;第2情報)が追加されている。
宛先の通信機2,3の種別を示す情報が通信パケットに含まれていることで、受信側の通信機2,3は、路側通信機2から送信されたパケットが、他の路側通信機2向けのパケット(路路間通信パケット又は車路間通信パケット)であるのか、車載通信機3向けのパケット(路車間通信パケット又は車車間通信パケット)であるのかを区別することができる。
【0126】
したがって、車載通信機2は、路路間通信パケット又は車路間通信パケットを受信してしまっても(特に、路路間通信パケット又は車路間通信パケットがブロードキャストされた場合であっても)、宛先の通信機2,3の種別を示す第2情報を参照し、通信機種別が路側通信機(基地局)である場合には、アプリケーションデータ本体を読み取る前に、当該路路間通信パケットを破棄することができる。
【0127】
前述のように、宛先の通信機2,3の種別を示す情報(第2情報)は、
図6に示す通信パケットにおける制御フィールド(PHYヘッダ、MAC制御フィールド、LLC制御フィールド、IR制御フィールド、L7ヘッダ、又はセキュリティ管理ヘッダ)に設けられている。
より具体的には、第2情報は、制御フィールドのうち、MAC層よりも上位層において読み取られるフィールド(LC制御フィールド、IR制御フィールド、又はL7ヘッダ)、又は、当該上位層がアクセスする処理部(セキュリティ管理SEC)において読み取られるフィールドに設けられる。
【0128】
第2情報を、MAC層よりも上位層又は当該上位層がアクセスする処理部において読み取られる制御フィールドに設けることで、受信側の通信機2,3は、受信した通信パケットをMAC層にて破棄できない場合であっても(例えば、MAC制御フィールドの宛先アドレスがブロードキャストアドレスである場合)、MAC層よりも上位層にて破棄することが可能となる。
具体的には、例えば、車載通信機3は、受信した通信パケットの送信元の通信機2,3の種別を示す情報(第1情報)と宛先の通信機2,3の種別を示す情報(第2情報)とを参照し、送信元が路側通信機2であって、宛先も路側通信機2である場合には、受信した通信パケットは路路間通信パケットであると判定し、当該路路間通信パケットを破棄することができる。
また、車載通信機3は、受信した通信パケットの送信元の通信機2,3の種別を示す情報(第1情報)と宛先の通信機2,3の種別を示す情報(第2情報)とを参照し、送信元が車載通信機3であって、宛先が路側通信機2である場合には、受信した通信パケットは車路間通信パケットであると判定し、当該車路間通信パケットを破棄することができる。
なお、送信元の通信機種別を考慮せずに、宛先の通信機種別だけを考慮して、通信パケットを破棄するか否か判定してもよい。
【0129】
しかも、第1情報及び第2情報は、制御フィールドに設けられているため、受信側の通信機2,3のアプリケーションAPが、アプリケーションデータ(アプリケーションデータ本体)を読み取る前に、受信した通信パケットを破棄することができる。
したがって、読み取る必要のない通信パケットのアプリケーションデータ(例えば、車載通信機3にとっての路路間通信パケット又は車路間通信パケットのアプリケーションデータ)を、受信側の通信機2,3のアプリケーションAPが読み取って処理することによる処理負荷の発生を避けることができる。
【0130】
第2情報は、IR制御フィールド、L7ヘッダ、ELヘッダ、及びセキュリティ管理ヘッダの少なくともいずれか一つに設けるのが更に好ましい。
IR制御フィールド、L7ヘッダ及びELヘッダには、非特許文献1,2において、今後のために予約されたフィールド(空フィールド)が確保されているため、当該空フィールドに第2情報を格納することで、非特許文献1,2の規格との整合性を保ちつつ、第2情報を追加することができる。
また、セキュリティ管理ヘッダは、非特許文献1,2において規定されていないため、セキュリティ管理ヘッダに第2情報を格納することで、非特許文献1,2の規格との整合性を保ちつつ、第2情報を追加することができる。
【0131】
第2情報をIR制御フィールドに設ける場合、IR制御フィールドの拡張領域フィールド(16ビット)及び予約フィールド(1ビット)が予約フィールドであるため、当該拡張領域フィールド等に第2情報を格納するのに、好適である(
図7参照)。
また、IR制御フィールドの識別情報フィールド(の先頭ビット)には、送信元が基地局であるか移動局であるかを識別する識別情報(通信機種別を示す第1情報)が格納されているため、受信側のIVC−RVC層は、第1情報及び第2情報を読み取って、受信した通信パケットが路路間通信パケット又は車路間通信パケットであるか否かを判定し、路路間通信パケット又は車路間通信パケットであれば破棄することができる。
なお、識別情報フィールドの先頭ビット以外の3ビットには、送信元をさらに詳細に識別する情報を格納してもよい。
【0132】
第2情報をL7ヘッダに設ける場合、L7ヘッダの予約フィールド(3ビット)及び同じく予約フィールドであるアプリケーション関連情報フィールド(8ビット)のうちの少なくともいずれか一方に、第2情報を格納するのが好適である(
図7参照)。なお、アプリケーション関連情報フィールドのほうが領域として大きいため、より好適である。
なお、第1情報も、L7ヘッダの予約フィールド(3ビット)及びアプリケーション関連情報フィールド(8ビット)のうちの少なくともいずれか一方に設けてもよいし、レイヤ7が、IVC−RVC層から第1情報(IR制御フィールドの識別情報)を取得してもよい。いずれの場合においても、受信側のレイヤ7は、受信した通信パケットが路路間通信パケット又は車路間通信パケットであるか否かを判定し、路路間通信パケット又は車路間通信パケットであれば破棄することができる。
【0133】
このように、第1情報と第2情報とは、同じレイヤで読み取られる制御フィールド(ヘッダ)に設けられていてもよいし、異なるレイヤで読み取られる制御フィールド(ヘッダ)に設けられていてもよい。
【0134】
第2情報をELヘッダに設ける場合、ELヘッダの予約フィールド(4ビット)に第2情報を格納するのが好適である。
第1情報として、ELヘッダのELヘッダ種別フィールドに格納されたELヘッダ種別を用いる場合、受信側の拡張レイヤELは、ELヘッダ種別及び予約フィールド(4ビット)に格納された第2情報を参照することで、受信した通信パケットが路路間通信パケット又は車路間通信パケットであるか否かを判定し、路路間通信パケット又は車路間通信パケットであれば破棄することができる。
【0135】
また、拡張レイヤELでは、BaseStationID(基地局ID情報)によって、送信元の基地局を個別に識別することができる。
路路間通信において、受信側の路側通信機2が、特定の路側通信機2からのアプリケーションデータだけを処理対象とし、それ以外の路側通信機2からのアプリケーションデータは処理対象としたくない場合がある。この場合、受信側の路側通信機2(の拡張レイヤEL)は、受信した通信パケットが特定の路側通信機2からの路路間通信パケットであるか否かを、BaseStationID(基地局ID情報)を参照することによって判定し、特定の路側通信機2からの路路間通信パケットでなければ破棄することができる。
【0136】
第2情報をセキュリティ管理ヘッダに設ける場合、セキュリティ管理ヘッダの任意のフィールドに第2情報を格納することができる。また、第1情報も、セキュリティ管理ヘッダに設けてもよいし、セキュリティ管理SECが、レイヤ7又は拡張レイヤELから、第1情報を取得してもよい。いずれの場合においても、受信側のセキュリティ管理SECは、受信した通信パケットが路路間通信パケット又は車路間通信パケットであるか否かを判定することができる。なお、セキュリティ管理が、路路間通信パケット又は車路間通信パケットであると判定した場合、その旨がレイヤ7に通知され、レイヤ7において路路間通信パケット車路間通信パケットを破棄することができる。
【0137】
なお、セキュリティ管理SECにて、受信した通信パケットが路路間通信パケット又は車路間通信パケットであるか否かを判定しようとすると、処理がセキュリティ管理SECへ移行し、必然的に、セキュリティ管理SECにおいてセキュアなアプリケーションデータをアンセキュアなアプリケーションデータにする処理も行われることになる。
したがって、セキュリティ管理SECにおける処理負荷を避けるには、受信側のレイヤ7又は拡張レイヤELが、セキュリティ管理SECにセキュアなアプリケーションデータを渡す前に、路路間通信パケット又は車路間通信パケットであるか否かの判定が行われるほうがよい。
つまり、受信側のセキュリティ管理SECにおける処理負荷を避けるには、拡張レイヤ若しくはレイヤ7又はレイヤ7よりも下位層で、路路間通信パケット又は車路間通信パケットであるか否かの判定が行われるほうがよい。
【0138】
かかる観点からは、第1情報及び第2情報は、セキュリティ管理ヘッダよりも前側の制御フィールド(LLC制御フィールド、IR制御フィールド、L7ヘッダ、ELヘッダ)に設けられているのが好ましい。この場合、第1情報及び第2情報は、受信側のLLC層、IVC−RVC層、レイヤ7、又は拡張レイヤELにおいて読み取られる。したがって、セキュリティ管理SECがセキュアなアプリケーションデータをアンセキュアにする前に、パケットを破棄することができる。
【0139】
図12は、路路間通信又は車路間通信とそれ以外の通信とを区別するため等に用いられる情報(第2情報を含む)の例を示している。
図12に示す情報は、第2情報である宛先通信機種別(4ビット)と、情報種別/宛先ID等情報(4ビット)と、を有している。
図12に示す情報は、計8ビットであるため、レイヤ7のアプリケーション関連情報フィールド(8ビット)、又はIR制御フィールドの拡張領域フィールド(16ビット)に設けられる情報として好適である。また、
図12に示す情報を、セキュリティ管理ヘッダに設けてもよい。
【0140】
宛先通信機種別は、「路」ビット、「車」ビット、「歩」ビット、及び「予約」ビットを有している。「路」ビットは、宛先の通信機種別が路側通信機(基地局)2であるか否かを示し、「車」ビットは、宛先の通信機種別が、移動局のうち車載通信機であるか否かを示し、「歩」ビットは、宛先の通信機種別が、移動局のうち歩行者が携帯する歩行者用通信機であるか否かを示し、「予約」ビットは、今後のための予約ビットである。
【0141】
各ビットにおいて「1」が格納されている場合、そのビットが示す通信機が宛先として含まれることを示し、「0」が格納されている場合、そのビットが示す通信機は宛先には含まれないことを示す。
なお、第2情報は、
図12に示すように4ビット必要なものではなく、基地局(路側通信機)と移動局(車載通信機)とを区別するためだけの情報であれば、1ビットあれば足りる。
【0142】
図12に示す情報種別/宛先ID等情報は、路路間通信又は車路間通信の場合において宛先となる路側通信機2のID、又は、路路間通信及び路路間通信以外の通信形態(路車間通信、路歩間通信、車路間通信、車車間通信、車歩間通信)において送信されるアプリケーションデータ(又はその他のデータ)の情報種別を示す。
【0143】
情報種別/宛先ID等情報は、「種別/ID」ビットと、内容ビット(b2,b1,b0)と、を有している。「種別/ID」ビットは、内容ビットが情報種別を示しているのか、宛先となる路側通信機2のIDを示しているかを表すフラグである。
内容ビット(b2〜b0)には、宛先となる路側通信機2のID、又は、情報種別を示す情報が格納される。
【0144】
宛先となる路側通信機2のIDが、例えば、L7ヘッダのアプリケーション関連情報フィールド又はIR制御フィールドの拡張領域フィールドに格納されていると、受信側のレイヤ7又はIVC−RVC層は、宛先となる路側通信機2のIDによって、宛先の路側通信機を個別に識別することができる。
【0145】
内容ビット(b2〜b0)に格納される情報種別としては、
図12に示すように、例えば、セキュリティ情報更新案内のための情報、緊急車両の緊急発動中であることを報知する情報、津波発生など災害情報を報知する情報である。
内容ビット(b2〜b0)に格納される情報は、アプリケーションデータとは別に、受信側によって処理される情報であってもよいし、アプリケーションデータの種別を示す情報であってもよい。
【0146】
情報種別が、例えば、L7ヘッダのアプリケーション関連情報フィールド又はIR制御フィールドの拡張領域フィールドに格納されていると、受信側では、アプリケーションAPがアプリケーションデータを取得しなくても、レイヤ7又はIVC−RVC層においては、情報種別を迅速に把握することができる。
【0147】
図13は、路路間通信又は車路間通信とそれ以外の通信とを区別するため等に用いられる情報の他の例を示している。
図13に示す情報は、第1情報である送信元通信機種別(2ビット)と、第2情報である宛先通信機種別(4ビット)と、データ種別(2ビット)と、を有している。
図13に示す情報は、計8ビットであるため、レイヤ7のアプリケーション関連情報フィールド(8ビット)、又はIR制御フィールドの拡張領域フィールド(16ビット)に設けられる情報として好適である。また、
図13に示す情報を、セキュリティ管理ヘッダに設けてもよい。
【0148】
図13に示す送信元通信機種別は、「00」の場合、送信元の通信機種別が路側通信機(基地局)2であることを示し、「01」の場合、送信元の通信機種別が車載通信機3であることを示し、「10」である場合、送信元の通信機種別が歩行者用通信機であることを示す。なお、「11」は今後のための予約である。
なお、
図13に示す宛先通信機種別は、
図12に示す宛先通信機種別と同様である。
【0149】
図13に示すデータ種別は、通常の情報であるか、緊急時情報(優先度の高い情報)であるかを示すものである。データ種別が「00」であれば、通常の情報であることを示し、「01」であれば、緊急時情報であることを示す。
【0150】
図14は、路路間通信又は車路間通信とそれ以外の通信とを区別するため等に用いられる情報の他の例を示している。
図14に示す情報は、第1情報である送信元通信機種別(2ビット)と、第2情報である宛先通信機種別(3ビット)と、データ種別(3ビット)と、を有している。
図14に示す情報は、計8ビットであるため、レイヤ7のアプリケーション関連情報フィールド(8ビット)、又はIR制御フィールドの拡張領域フィールド(16ビット)に設けられる情報として好適である。また、
図14に示す情報を、セキュリティ管理ヘッダに設けてもよい。
【0151】
図14に示す送信元通信機種別は、
図13に示す送信元通信機種別と同様である。
図14に示す宛先通信機情報は、「路」ビット、「全端末」ビット、及び「予約」ビットを有している。「路」ビットは、宛先の通信機種別が路側通信機(基地局)2であるか否かを示し、「路」ビットに「1」が格納されていれば、路側通信機2が宛先として含まれる。「全端末」ビットに「1」が格納されていれば、路側通信機、車載通信機、及び歩行者用通信機を含む全端末が、宛先となる。「予約」ビットは、今後のための予約ビットである。
【0152】
図14に示すデータ種別は、通常の情報であるか、緊急時情報(優先度の高い情報)であるかを示すものである。データ種別が「000」であれば、通常の情報であることを示し、「001」であれば、緊急時情報であることを示す。
【0153】
図15は、路路間通信又は車路間通信とそれ以外の通信とを区別するため等に用いられる情報の他の例を示している。
図15に示す情報は、第1情報である送信元通信機種別(2ビット)と、第2情報である宛先通信機種別(3ビット)と、データ種別(3ビット)と、を有している。
図14に示す情報は、計8ビットであるため、レイヤ7のアプリケーション関連情報フィールド(8ビット)、又はIR制御フィールドの拡張領域フィールド(16ビット)に設けられる情報として好適である。また、
図15に示す情報を、セキュリティ管理ヘッダに設けてもよい。
【0154】
図15に示す送信元通信機種別及び宛先通信機種別は、
図14に示す送信元通信機種別及び宛先通信機種別と同様である。
【0155】
図15に示すデータ種別は、アプリケーションデータとして送信される情報の種別を示している。データ(情報)の種別としては、「安全運転支援」に関する情報、「車両情報」、「保守情報」、「セキュリティ情報更新案内」に関する情報、「緊急走行中」であることを示す情報、「歩行者情報」、「津波発生」に関する情報などがあげられる。
【0156】
本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、第1情報と第2情報は、情報として区別可能に設けられている必要はなく、例えば、路路間通信、路車間通信、及び車車間通信を含む複数の通信形態(送信元種別と宛先種別によって区別される通信形態)の種類を区別する情報が設けられていれば、第1情報及び第2情報の両方が設けられていることに相当する。