(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンが設置された機体フレームの上部左右一側に穀粒を貯留するグレンタンクを設け、前記グレンタンクの後方に該グレンタンクに貯留された穀粒を上方に向けて搬送する縦オーガを設けたコンバインにおいて、
前記エンジンの排気ガスを尿素水から発生するアンモニアを用いて還元して浄化処理する尿素SCR触媒を含む排ガス浄化装置を設け、
前記機体フレーム上における前記グレンタンクと前記縦オーガとの間に、前記尿素SCR触媒に供給する尿素水を貯留する尿素水タンクを設け、
前記尿素水タンクの少なくとも一部を、前記グレンタンクの後面に形成した凹部に入り込ませ、
前記機体フレームの後部には、前記尿素SCR触媒に尿素水を送るサプライモジュールが取り付けられる取付部材を設け、
前記取付部材は、前記グレンタンクの後方に設けられ、当該取付部材の前側に前記サプライモジュールが取り付けられ、当該取付部材の後側には前記尿素水タンクが取り付けられ、前記サプライモジュールを前記尿素水タンクの前部とともに前記凹部に配置可能とし、
前記グレンタンクは、縦軸を中心として機体外側方へ回動する構成とし、
前記グレンタンクを前記縦軸を中心として機体外側方へ回動させる場合に、前記尿素水タンクが、前記サプライモジュールと共に、前記グレンタンクに干渉することなく該グレンタンクの前記凹部から抜け出て機体側に残る構成とし、
前記エンジンを収容するエンジンルーム内に配置されたラジエータの外側部を覆うラジエータカバーを設けるとともに、前記ラジエータカバーの外側部を覆う横開きの外部カバーを設け、
前記外部カバーを前記ラジエータカバーに対して閉じた状態にロックするロック機構を設け、
前記ロック機構は、前記ラジエータカバー側に第1の固定用ピンを備え、前記外部カバー側に、可動用スリットと固定用スリットとが形成された長板状のロックステーと、可動用ピンと、第2の固定用ピンと、を備え、
前記可動用スリットは、前記ロックステーの長手方向に沿って形成された第1長スリット部と、前記第1長スリット部の端部から略垂直に形成された第1短スリット部とを有し、略L字形に形成され、
前記固定用スリットは、前記ロックステーの長辺から連続するとともに前記可動用スリットの前記第1短スリット部と平行に形成された入口部と、前記入口部から連続するとともに前記可動用スリットの前記第1長スリット部の長手方向の延長線上に形成された第2長スリット部と、前記第2長スリット部の端部から該第2長スリット部に略直交して形成された第2短スリット部とを有し、略Z字形に形成され、
前記ロックステーは、前記可動用ピンが前記可動用スリットの前記第1短スリット部に位置し、前記第2の固定用ピンが前記固定用スリットの前記第2短スリット部に位置することで、前記外部カバーに対して当該ロックステーが一体化した収納姿勢となり、前記可動用ピンが前記可動用スリットの前記第1短スリット部に位置し、前記第1の固定用ピンが前記固定用スリットの前記第2短スリット部に位置することで、当該ロックステーが自重により斜め姿勢のロック状態となることを特徴とするコンバイン。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るコンバインの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、かつ、容易なもの、或いは実質的に同一のものいわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0021】
図1および
図2は、実施形態に係るコンバイン1の左右の側面図である。なお、以下の説明では、コンバイン1の通常の使用態様時における前後方向、左右方向、上下方向を、各部位におけるそれぞれの前後方向、左右方向、上下方向として説明する。
【0022】
このうち、「前」方は、刈り取り作業時におけるコンバイン1の進行方向であり、「左」方は、前方に向かって左手方向であり、「下」方は、重力が作用する方向である。なお、これらの方向は、説明をわかりやすくするために便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、コンバイン1を指して「機体」という場合がある。
【0023】
<コンバイン1の全体構成>
まず、コンバイン1の全体構成を簡単に説明する。コンバイン1は、
図1および
図2に示すように、機体フレーム2と、機体フレーム2の下方に設けられた走行装置3と、機体フレーム2の上部、および機体フレーム2の前方に設けられた各種作業装置と、機体フレーム2の上部前側に設けられた操縦部(以下、「キャビン」という)7とを備える。なお、キャビン7には、各種操作レバーおよび計器類が設けられる。
【0024】
走行装置3は、機体フレーム2上に設置されたエンジン20から動力が伝達されて周回する左右一対のクローラベルト3a,3aを備える。走行装置3は、クローラベルト3aによって機体を走行させる。クローラベルト3aは、ゴム等の弾性体により無端状に形成される。また、走行装置3は、機体の前後方向に、クローラベルト3aを回転させる駆動輪3bと、クローラベルト3aに張力を加える緊張輪3cとを備える。
【0025】
また、走行装置3は、左右一対のトラックローラフレーム60,60を備える。トラックローラフレーム60には、複数の転輪61が、クローラベルト3aの接地面にそれぞれ内側から当接するように設けられる。なお、コンバイン1は、クローラ機構を含む走行装置3を、機体フレーム2に対してそれぞれ独立して昇降するローリング機構と、クローラ機構を含む走行装置3を、一体的に前後揺動するピッチング機構とを備える。
【0026】
作業装置は、たとえば、機体フレーム2の前方に設けられた刈取装置4と、機体フレーム2上においてキャビン7の左側に設けられた穀稈搬送装置5と、機体フレーム2の上部左側に設けられた脱穀装置6と、機体フレーム2の上部右側に設けられたグレンタンク8と、脱穀装置6およびグレンタンク8のさらに上方に配置された穀粒排出オーガ9とを備える。作業装置では、刈取装置4で刈り取った穀稈を穀稈搬送装置5で脱穀装置6に向けて搬送し、脱穀装置6で脱穀および選別された穀粒をグレンタンク8で貯留し、グレンタンク8に貯留された穀粒を穀粒排出オーガ9で機体外部に排出する。
【0027】
機体フレーム2の上方前側に設けられたキャビン7は、上記したように、操縦部として機能し、図示を省略した操縦席や各種操縦用レバー、計器類および操作パネル、さらには各種情報を表示可能なモニタなどが設けられる。
【0028】
刈取装置4は、圃場の穀稈を分草する分草杆4aと、分草された穀稈を引き起こす引起装置4bと、引き起こされた穀稈の根元を切断する刈刃とを備える。刈取装置4では、圃場に植立する穀稈を分草杆4aで分草し、分草した穀稈を引起装置4bで引き起こし、引き起こした穀稈を刈刃で刈り取る。なお、刈り取られた穀稈は、穀稈搬送装置5によって脱穀装置6に向けて搬送される。
【0029】
脱穀装置6では、脱穀の後に選別部(図示せず)において選別した穀粒を、揚穀装置(図示せず)によってグレンタンク8に送り込む。グレンタンク8では、貯留した穀粒を、グレンタンク8の後方(機体フレーム2の後方)に設けられた縦オーガ10に送り込む。縦オーガ10では、送り込まれた穀粒を、穀粒排出オーガ9に送り込む。
【0030】
縦オーガ10は、筒状に形成され、上端部において穀粒排出オーガ9を上下方向および左右方向に回動自在に支持する。また、縦オーガ10は、下端部において引継ぎ部材11(
図4参照)によって軸周りに回転自在に支持される。なお、縦オーガ10および引継ぎ部材11については、
図3〜
図5を用いて後述する。
【0031】
また、
図1に示すように、機体フレーム2上において、キャビン7の下方右側には、エンジンルーム25が設けられる。エンジンルーム25には、動力源であるエンジン20や、エンジン20を冷却するためのラジエータ(図示せず)などが収容されている。
【0032】
ここで、
図3〜
図5を参照して縦オーガ10および引継ぎ部材11について説明する。なお、
図3には、引継ぎ部材11の正面視(流入面)を示し、
図4および
図5には、引継ぎ部材11の右側面視を示している。
図3に示すように、グレンタンク8では、貯留した穀粒を後方に向けて搬送する。グレンタンク8から搬送された穀粒は、引継ぎ部材11の流入面11aに形成された流入口11aaから引継ぎ部材11内に流入する。
【0033】
縦オーガ10は、円筒形状に形成され、軸が縦を向いて配置される。縦オーガ10は、ラセン搬送によって穀粒を下から上に搬送(揚穀)する。縦オーガ10によって揚穀された穀粒は、横オーガである穀粒排出オーガ9(
図1および
図2参照)によって穀粒排出オーガ9の先端側に向けて搬送され、先端部に設けられた排出筒9a(
図1および
図2参照)から排出される。
【0034】
引継ぎ部材(以下、「引継ぎメタル」という)11は、流入面11aと、流出面11bとを備える。流入面11aは、環状に形成された、引継ぎメタル11の前端面である。流入面11aには、グレンタンク8の底部に備えた搬送螺旋(図示省略)によって後方に向けて搬送される穀粒が流入する略円形の流入口11aaが形成される。流出面11bは、環状に形成された、引継ぎメタル11の上端面であり、流入面11aとは略直交する姿勢に設定している。流出面11bには、引継ぎメタル11から縦オーガ10に向けて穀粒を搬送する略円形の流出口11bbが形成される。
【0035】
すなわち、引継ぎメタル11は、全体として鉤状であり、機体フレーム2に取り付けられる。引継ぎメタル11は、機体フレーム2の後端部から後方に突出している。引継ぎメタル11内では、前側から流入する穀粒を、上方向に向けて搬送して縦オーガ10に引き継ぐ。また、引継ぎメタル11の流入面11a側の部位には支持フレーム13の下部を固定する。なお、引継ぎメタル11は機体フレーム2に固定される。また、引継ぎメタル11の流出面11bは、縦オーガ10をその軸まわりに回転自在に支持する。
【0036】
<排ガス浄化装置30および尿素水タンク40>
次に、
図3〜
図7を参照して排ガス浄化装置30および尿素水タンク40について説明する。
図3は、排ガス浄化装置30および尿素水タンク40の配置を示す説明用の正面図である。
図4は、排ガス浄化装置30および尿素水タンク40の配置を示す説明用の右側面図である。
図5は、尿素水タンク40の配置を示す説明用の拡大右側面図である。
図6は、排ガス浄化装置30および尿素水タンク40の配置を示す説明用の平面図である。
図7は、尿素水タンク40の配置を示す説明用の拡大平面図である。
【0037】
なお、まず、排ガス浄化装置30について説明し、次いで、尿素水タンク40について説明する。上記したように、エンジン20は、グレンタンク8の前方に設けられたエンジンルーム25(
図1参照)に収容されている。たとえば、
図4に示すように、エンジン20は、機体フレーム2上の右側に設置され、機体フレーム2上に設けられたエンジン20の排気ガスを浄化処理する排ガス浄化装置30に接続される。
【0038】
図3に示すように、排ガス浄化装置30は、エンジン20の排気マニホールド21に接続された排気管22に接続される。排ガス浄化装置30は、たとえば、機体フレーム2上に設けたフレーム上に配置することで、エンジン20よりも上方、かつ、エンジン20の後方に配置されることが好ましい。このような配置構成によれば、排ガス浄化装置30がエンジン20や走行装置3といった振動源からの振動の影響を受けにくくなる。
【0039】
排ガス浄化装置30は、排気ガス中の粒子状物質を除去するDPF(Diesel Particulate Filter)31(
図4参照)と、尿素水を用いた選択触媒還元で浄化処理する、すなわち、DPF31通過後の排気ガス中の窒素酸化物に、尿素水が加水分解されて発生したアンモニアを反応させて無害な窒素に変換する尿素SCR触媒32(
図3参照)とを備える。これらDPF31と尿素SCR触媒32は、いずれも円筒状のケースに内蔵される。(なお、図示における符号は、これらの各ケースに付与している。)
【0040】
DPF31は、ハニカム担体に触媒(Pt)を担持し、SOFおよびNOx成分を酸化させるとともに、粒子状物質をろ過して捕集するものであり、たとえば、ハニカム担体と複数の隔壁とからなり、多角形断面を有する貫通孔を複数持つ、ハチの巣状のセル構造体と、それを取り囲む外壁とから形成される。
【0041】
排ガス浄化装置30は、DPF31において、一酸化窒素を効率的に酸化させるDOC(Diesel Oxidation Catalyst)の機能を有するとともに、尿素SCR触媒32において、尿素水から発生するアンモニアを用いた選択触媒還元の機能を有する。
【0042】
排ガス浄化装置30では、DPF31において、排気ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に変換し、DPF31の出口と尿素SCR触媒32の入口とを接続する配管内において、二酸化窒素に尿素水を噴射し、二酸化窒素を水と窒素ガスとに変換することで、排気ガス中の窒素酸化物(NO
X)を除去する。浄化処理された排気ガスは、排気管321から外部へ排出される。
【0043】
また、排ガス浄化装置30は、尿素SCR触媒32における尿素水噴射ユニットでもあるドージングモジュール(以下、「DM」と略称する)33(
図6参照)を備える。DM33は、DPF31の出口と尿素SCR触媒32の入口を接続する配管に近接して設けられる。
【0044】
なお、排ガス浄化装置30であるDPF31および尿素SCR触媒32(DM33を含む)は、たとえば、グレンタンク8の側面のうち、脱穀装置6と対向する側面(内側面)に形成されたU字状の凹み(「凹部」ともいう)によって形成される空間(「スペース」ともいう)に配置してもよい。
【0045】
このような配置構成によれば、DPF31および尿素SCR触媒32は、脱穀装置6とグレンタンク8とに覆われるようになり、たとえば、DPF31および尿素SCR触媒32を雨や直射日光から保護することができるとともに、DPF31および尿素SCR触媒32が洗車時の高圧水の影響を受けにくくなる。また、グレンタンク8を開ければDPF31および尿素SCR触媒32にアクセス可能となり、DPF31および尿素SCR触媒32のメンテナンスなどが容易となる。
【0046】
また、排ガス浄化装置30であるDPF31および尿素SCR触媒32を、エンジン20よりも上方、かつ、後方に配置する他、たとえば、DPF31および尿素SCR触媒32を前後方向に直線状に並べて、たとえば、グレンタンク8の下方などにあるデッドスペースなどに配置すれば、スペースを有効活用することができ、好適である。
【0047】
また、
図4に示すように、機体フレーム2の後部には、尿素SCR触媒32に尿素水を送るサプライモジュール(以下、「SM」と略称する)34が取り付けられる取付部材12が設けられる。
図5に示すように、取付部材12は、後述する尿素水タンク40を支持する台部14上に立設された脚部12aを介して設けられる。取付部材12は、グレンタンク8の後方に設けられ、取付部材12の先端側、かつ、前側に取り付けられたSM34を、取付部材12の後側に取り付けられた尿素水タンク40の前部とともに、グレンタンク8の後面に形成された凹み(凹部)35によって形成される空間(すなわち、請求項における「凹部」)内に配置可能とする。
【0048】
また、SM34は、取付部材12の先端側に取り付けられることで、機体フレーム2から上方へ離れて配置される。このため、SM34に対して振動源からの振動が伝達されるのを抑制することができ、SM34の破損などを抑えることができる。また、SM34が排ガス浄化装置30であるDPF31および尿素SCR触媒32からも離れて配置されるため、SM34がDPF31および尿素SCR触媒32から発生する熱の影響を受けにくくなる。
【0049】
図4〜
図7に示すように、尿素水タンク40は、尿素SCR触媒32に供給される尿素水を貯留する。
図5に示すように、尿素水タンク40は、機体フレーム2上、グレンタンク8と縦オーガ10との間において、少なくとも一部をグレンタンク8の後面に形成した空間(凹部)35に入り込ませた状態で設けられる。なお、この場合、尿素水タンク40は、グレンタンク8(グレンタンクカバー)の開閉動作には干渉しない。
【0050】
このような配置構成によれば、機体フレーム2上においてグレンタンク8とは干渉しない位置に尿素水タンク40を配置することができる。これにより、現状のグレンタンクの形状を維持しつつ尿素水タンク40が配置可能となる。すなわち、機体の大型化を抑え、グレンタンク8の容量の減少を抑えながら、尿素水タンク40を配置することができる。これにより、グレンタンク8の容量増加の余地を残せるようになるなど、グレンタンク8の容量をかせぐことができる。
【0051】
また、尿素水タンク40が機体フレーム2の後部、すなわち、機体後部に配置されるため、たとえば、納屋などの狭い場所において、尿素水タンク40が機体中央部に配置される場合に比べて尿素水タンク40への給水を容易に行えるなど、尿素水タンク40に対するアクセス性を向上させることができる。
【0052】
また、尿素水タンク40の少なくとも一部をグレンタンク8後面に形成された凹部35に入り込ませることで、グレンタンク8と縦オーガ10の前後間隔を狭めて機体をコンパクトに構成しながらも、尿素水タンク40の容量を大きく設定することができる。また、たとえば、グレンタンク8を、縦軸を中心として機体外側方へ回動させる構成とした場合に、尿素水タンク40がグレンタンク8後面の凹部35から抜け出て機体側に残るため、この尿素水タンク40から尿素SCR触媒32側への配管を簡素化することができる。
【0053】
また、尿素水タンク40がエンジン20から離れた位置に配置されているため、尿素水タンク40がエンジン20からの熱(排熱)の影響を受けにくくなる。これにより、尿素水の劣化を抑えることができる。
【0054】
図4および
図5に示すように、尿素水タンク40は、機体フレーム2の後方において縦オーガ10を支持する引継ぎメタル11よりも上方に配置される。このような配置構成によれば、グレンタンク8から縦オーガ10までの穀粒の搬送経路を妨げないように尿素水タンク40を配置することができる。
【0055】
また、
図4および
図5に示すように、尿素水タンク40は、機体フレーム2上において引継ぎメタル11に固定される支持フレーム13の上部に設けられた台部14の上面に配置される。なお、台部14の上面は平坦面である。支持フレーム13の上部に尿素水タンク40が配置される台部14が設けられることで、支持フレーム13が台部14を補強するようになり、台部14の強度を高めることができる。これにより、尿素水タンク40を強固に設置することができる。
【0056】
また、
図6および
図7に示すように、尿素水タンク40は、尿素水の給水口41が機体フレーム2の右側に位置するように配置される。すなわち、尿素水タンク40は、給水口41が機体外側部に臨むように配置される。このような配置構成によれば、尿素水タンク40の給水口41に対して、人手によってキャップを取り外し、携行タンクから給水することができる。すなわち、尿素水タンク40への給水作業を容易化することができる。
【0057】
なお、尿素水タンク40には、エンジン20の冷却水(不凍液)を循環させる冷却水配管(図示せず)が設けられる。エンジン20から尿素水タンク40に至る冷却水配管(「冷却水パイプ」あるいは「LLC(ロングライフクーラント)パイプ」ともいう)には、冷却水を遮断するバルブが設けられる。バルブの開閉操作は、たとえば、キャビン7において行う。
【0058】
また、エンジン20と尿素水タンク40とを接続する冷却水配管において、たとえば、送り配管は、エンジン20からバルブを経由して尿素水タンク40に至り、戻り配管は、尿素水タンク40からエンジン20に戻る。
【0059】
尿素水が凍結すると尿素SCR触媒32側へ送水できなくなるが、エンジン20の冷却水の温度を利用して凍結防止および解凍することができる。また、尿素水を温め過ぎると品質が劣化してしまうが、たとえば、尿素水への経路中にバルブを設けることで、バルブの開閉により尿素水の凍結防止と過剰加熱を回避することができる。なお、尿素水タンク40内の温度が所定温度以下になるとバルブが開くようにしてもよい。これにより、尿素水の凍結をより確実に防止することができる。
【0060】
また、尿素水タンク40の上部には、エンジン20の冷却水を流す冷却水配管の他、尿素水タンク40内の尿素水の量を検出する水位センサや尿素水タンク40内の尿素水の尿素濃度を検出する濃度センサがユニット化されたセンサユニット42が着脱可能に設けられる。
【0061】
<排気管50の構成>
次に、
図8および
図9を参照してコンバイン1に適用される排気管50の構成について説明する。
図8(a)および
図8(b)は、排気管50の構成部材を示す説明用の図である。なお、
図8(a)には、排気管50の側面視を示し、
図8(b)には、排気管50の正面視を示している。
図9(a)は、排気管50の一例を示す説明用の模式的な断面図であり、
図9(b)は、排気管50の他の例を示す説明用の模式的な断面図である。
【0062】
排気管50は、たとえば、排ガス浄化装置30(尿素SCR触媒32)から送られる排気ガスを大気中に排出するパイプ(「テールパイプ」ともいう)である。この場合、排気管50は、尿素SCR触媒32の排気管321(
図3参照)の先端部に接続される。
図8(a)および
図8(b)に示すように、排気管50は、多角形の筒状に形成される。図示の例では、排気管50は、六角形の筒状である。
【0063】
また、排気管50は、2つの構成部材(「以下、排気管部材」という)51a,51bを組み合わせて、1つのパイプ状に形成される。
図9(a)に示すように、各排気管部材51a,51bは、それぞれ4つの面52を有し、断面視でU字状に形成される。排気管部材51a(51b)は、たとえば、1枚の金属プレートを折曲して形成される。この場合、各面52同士の折曲角度αは同じ角度(たとえば、120度)であることが好ましい。このような構成によれば、たとえば、1つのプレス機(治具)で量産することが可能となり、生産性および製造時の作業効率を向上させることができる。また、プレス機などの製造機器に要していたコストの削減が可能となる。
【0064】
また、
図8(a)および
図8(b)に示すように、排気管50は、排気管部材51a,51bの切断面の角度を変更して接合することで、接合面53による排気管50の曲げ角度を調節可能とする。これにより、排気管50を自由に曲げることができ、排気管50の形状の自由度を向上させることができる。このような構成によっても、生産性および製造時の作業効率を向上させることができる。
【0065】
また、
図8(b)および
図9(a)に示すように、排気管50は、排気管部材51a,51bによって形成された管内に、排気管部材54a,54bによって形成された管が配置されるような二重構造に形成されてもよい。この場合、排気管50では、内側の管(排気管部材54a,54b)に排気ガスが流れ、外側の管(排気管部材51a,51b)が内側の管を保護するカバーとなる。このような構成によれば、排気管50内にゴミなどが侵入するのを抑えることができる。
【0066】
なお、
図8(b)に示すように、排気管50は、基端側において内側の管(排気管部材54a,54bによって形成され、排気ガスが流れる管)が外側の管(排気管部材51a,51bによって形成され、内側の管を保護する管)よりも長く、先端側においては内側の管が外側の管よりも短い。また、排気管50は、内側の管と外側の管との間に隙間を有する。このような構成によれば、エジェクタ効果を利用して、排気管50の基端側において、
図8(b)中に矢線Aで示すように外気を吸い込み、内側の管の外部を外気が流れることで、内側の管を流れる排気ガスを冷却することができる。なお、内側の管が外側の管よりも短いため、排気管50の排気口55付近では外気と排気ガスが混合されて排気口55から排出される。
【0067】
また、
図9(a)に示すように、排気管50は、この排気管50を構成する排気管部材51a,51b(排気管部材54a,54b)が上下または左右に嵌め合わされることで形成される。排気管部材51a,51b(排気管部材54a,54b)が同一形状の場合は、排気管部材51a,51b(排気管部材54a,54b)が内外に互い違いとなるように嵌め合わされる。このような構成によれば、嵌合部分においてオーバーラップする部分によって、排気管50の上下または左右からのゴミなどの侵入を抑えることができる。
【0068】
なお、
図9(b)に示すように、他の例の排気管56は、排気管部材51a,51b(排気管部材54a,54b)のうち、いずれか一方が他方よりも小径であり、一方が外側、他方が内側となるように嵌め合わされる。このような構成によっても、嵌合部分においてオーバーラップする部分によって、排気管56の上下または左右からのゴミなどの侵入を抑えることができる。
【0069】
<トラックローラフレーム60>
ここで、
図10を参照してトラックローラフレーム60について説明する。
図10(a)および
図10(b)は、トラックローラフレーム60を示す説明用の図である。なお、
図10(a)には、トラックローラフレーム60の右側面視を示し、
図10(b)には、トラックローラフレーム60の平面視を示している。
図10(c)は、補強部材64を示す説明用の模式的な斜視図である。
【0070】
上記したように、トラックローラフレーム60は、走行装置3(
図1および
図2参照)の一部であり、走行装置3において複数の転輪61を軸受けしつつ回転可能に支持する。
図10(a)および
図10(b)に示すように、トラックローラフレーム60においては、前後方向に長い2つのプレート62,62がその厚さ方向(左右方向)に対向配置されている。2つのプレート62,62の間には隙間が形成される。トラックローラフレーム60の前側には、2つのプレート62,62の間を連結するとともに、トラックローラフレーム60の厚さ方向の補強機能を有する補強プレート63が設けられる。
【0071】
補強プレート63は、2つのプレート62,62の間を厚さ方向に遮蔽するように設けられる壁部(前壁63a、後壁63b)を有する。このような構成によれば、補強プレート63によって、トラックローラフレーム60の強度を高めることができることに加えて、前壁63aおよび後壁63bが2つのプレートの間を塞ぐように設けられることで、機体前進時において、2つのプレート62,62の間に前方から泥などが侵入するのを防止することができる。
【0072】
また、
図10(a)および
図10(b)に示すように、トラックローラフレーム60の前側および後側には、2つのプレート62,62の間に補強部材64が設けられる。
図10(c)に示すように、補強部材64は、U字状に形成される。また、
図10(a)および
図10(b)に示すように、補強部材64は、天板部64aが2つのプレート62,62の間を連結するように配置される。これにより、トラックローラフレーム60の厚さ方向の強度を高めることができる。また、補強部材64によって2つのプレート62,62の間の距離を調節することができる。このため、2つのプレート62,62の間を調節する部材が不要となり、部品点数を減らすことができる。
【0073】
また、
図10(a)および
図10(b)に示すように、トラックローラフレーム60における、上記したローリング機構に連結させるためにローリングアームが取り付けられる軸部65の周囲には、2つのプレート62,62のそれぞれに補強部材(「補強板」ともいう)66が設けられる。このため、軸部65の周囲のような応力が集中する部分の強度を高めることができる。また、2つのプレート62,62を補強する補強板66は、補強板66の向きを変える、あるいは補強板66の表裏を逆にして配置することで各部に使いまわすことができるため、生産性(量産性)を向上させることができる。
【0074】
<ラジエータカバー70の外部カバー71>
また、ここで、
図11〜
図13を参照してラジエータカバー70の外部カバー71について説明する。
図11は、ラジエータカバー70の外部カバー71を示す説明用の平面図である。
図12は、ラジエータカバー70の外部カバー71の構成部品を示す説明用の部品図である。
図13は、外部カバー71のロック機構のロック動作を示す説明用の動作図である。
【0075】
エンジンルーム25(
図1参照)内には、エンジン20(
図1参照)と共に、エンジン20の外側方に配置されたラジエータ(図示せず)が収容されている。ラジエータカバー70は、ラジエータの外側部を覆うカバーである。また、
図11に示すように、ラジエータカバー70の外側方には、ラジエータカバー70の外側部を覆う外部カバー71が設けられる。
【0076】
なお、以下では、ラジエータカバー70の外部カバー71が、上下方向に沿った回動軸76の軸まわりに回動することで
図11中の矢線B方向に開閉する横開きであって、エンジンルーム25の後方側に回動軸76が設けられた場合を例に説明する。
図11および
図12に示すように、外部カバー71は、扉部72と、回動軸76と、取付ステー77とを備える。扉部72は、上部窓部73aと、下部窓部73bとを備える。上部窓部73aおよび下部窓部73bは共に、通気可能として、かつ、ゴミなどの侵入を防止するために網目構造を有する。なお、上部窓部73aと下部窓部73bとの間はフレーム74によって仕切られている。
【0077】
また、扉部72の上部には、作業者などが握ることが可能なレバー75が設けられる。このように、レバー75が扉部72の上部にあることで、作業者は、操縦部7(
図1参照)にいながら外部カバー71を開閉することができ、操縦部7からラジエータを清掃することができる。
【0078】
また、レバー75は、外部カバー71を取り付けた状態における扉部72の前側の外周縁に沿って扉部72の下縁まで延びて設けられる。すなわち、レバー75が、扉部72の外周の補強部材としても機能する。これにより、外部カバー71を開閉する場合にかかる力によって生じる扉部72の歪みなどを防止することができる。
【0079】
なお、
図11に示すように、ラジエータカバー70よおび扉部72の前側端部(領域C)には、ラジエータカバー70に対して外部カバー71を閉じた状態にロックするロック機構が設けられる。ロック機構については、
図13を用いて後述する。
【0080】
回動軸(「以下、回動ピン」という)76は、扉部72を開閉する場合の回動支点となり、扉部72を機体に取り付けた状態で扉部72の後方側の端縁に下方に向けて突出して設けられる。また、回動ピン76は、扉部72の端縁に沿って複数(たとえば、2つ)設けられる。
【0081】
取付ステー77は、ラジエータカバー70の後方側の端縁に設けられる。取付ステー77のステー本体78には、回動ピン76が挿通される、上下方向に沿った挿通孔79が形成される。取付ステー77は、回動ピン76が挿通孔79に挿通されることで、扉部72を開閉可能に支持する。また、取付ステー77は、ラジエータカバー70の端縁において、扉部72が取り付けられた場合に回動ピン76と対応する位置に設けられる。
【0082】
このような構成によれば、ラジエータカバー70にさらに外部カバー71が設けられることで、刈取りや脱穀などの作業中に、外部カバー71が開閉可能であるため、外部カバー71の網目の詰まりを除去することができる。また、網目の詰まりを小まめに除去することで、ラジエータの冷却機能の低下を抑制することができる。なお、これまでは、ラジエータカバー70のみにカバー機能を持たせていたため、作業を中断してラジエータカバー70の網目の詰まりを除去していた。
【0083】
また、上部窓部73aと下部窓部73bとは、略同等の面積を有しており、上部窓部73aおよび下部窓部73bからは均等に外気が入るようになる。これにより、ラジエータに対して均等に風があたるようになる。なお、上部窓部73aと下部窓部73bとが略同等の面積であるため、意匠的にも見栄えがよい。
【0084】
また、ラジエータカバー70には固定式を用いているが、たとえば、開閉式のラジエータカバーに代えて外部カバー71を取り付ける場合、取付ステー77を、ラジエータカバー(開閉式)と外部カバー71とで共有してもよい。このような構成によれば、取付ステー77を交換するだけで外部カバーを従来機に取り付けることができる。なお、元に戻す場合も取付ステー77を交換すればよい。また、外部カバー71の回動軸76がずれることもない。
【0085】
また、ラジエータカバー(開閉式)と外部カバー71の回動支点が同軸上にあることで、清掃時などにはラジエータカバーと外部カバー71が干渉するのを防止することができる。このため、清掃などにかかる手間を低減することができる。また、ラジエータカバーが固定式で外部カバー71のみ開閉可能な場合も、ラジエータカバーに対して外部カバー71の距離が一定であるため、互いに干渉しない。
【0086】
なお、本実施形態において外部カバー71は、後方に回動支点を有して横開きするが、これ以外に、外部カバー71が、たとえば、上方に回動支点を有するまたは下方に回動支点を有して、縦開きするものであってもよい。また、外部カバー71が、たとえば、前方に回動支点を有して横開きするものであってもよい。このような構成としても、ラジエータカバー70にさらに外部カバー71が設けられることで、刈取りや脱穀などの作業中に、外部カバー71が開閉可能であるため、外部カバー71の網目の詰まりを除去することができる。また、網目の詰まりを小まめに除去することで、ラジエータの冷却機能の低下を抑制することができる。
【0087】
<外部カバー71のロック機構>
また、ここで、
図13を参照して外部カバー71のロック機構について説明する。
図13は、外部カバー71のロック機構のロック動作を示す説明用の動作図である。なお、
図13には、ラジエータカバー70および外部カバー71の正面視を示している。
図13に示すように、ラジエータカバー70および外部カバー71の互いの正面側の端縁には、ロック機構が設けられる。
【0088】
図13に示すように、ロック機構を構成するロック部80は、ラジエータカバー70側に設けられる固定部81と、外部カバー71側に設けられる可動部82とを備える。固定部81は、ラジエータカバー70の正面側(前方側)の端面から前方へ向けて突設された固定用ピン83(第1の固定用ピン)を備える。可動部82は、ロックステー84と、可動用ピン85と、固定用ピン86(第2の固定用ピン)とを備える。ロックステー84は、板状に形成され、その面に可動用スリット87と、固定用スリット88とが形成される。
【0089】
可動用スリット87は、ロックステー84の長手方向に沿って形成された長スリット部87aと、長スリット部87aの端部から連続するとともに長スリット部87aに対して略直交して形成された短スリット部87bとを有し、略L字形に形成される。なお、長スリット部87aの長さは、第1の固定用ピン83と可動用ピン85との間の距離と略同等の長さである。また、固定用スリット88は、ロックステー84における可動用スリット87とは反対側の端部に切欠き状に形成される。
【0090】
固定用スリット88は、ロックステー84の長辺から連続するとともに可動用スリット87の短スリット部87bと平行に形成された入口部88aと、入口部88aから連続するとともに可動用スリット87の長スリット部87aの長手方向の延長線上に形成された長スリット部88bと、長スリット部88bの端部から連続するとともに長スリット部88bに対して略直交して形成された短スリット部88cとを有し、略Z字形に形成される。
【0091】
図13の最も上(上から1つ目)に示すように、ロックステー84は、可動用ピン85が可動用スリット87の短スリット部87bに位置し、第2の固定用ピン86が固定用スリット88の短スリット部88cに位置することで、外部カバー71に対して一体化した収納姿勢となる。
【0092】
図13の上から2つ目に示すように、ロック部80によってラジエータカバー70に対して外部カバー71をロックする場合には、まず、可動用ピン85が可動用スリット87の長スリット部87aをスライドすることで、可動用ピン85と第1の固定用ピン83との間にロックステー84の先端側が通過するように、ロックステー84をスライドさせる。
【0093】
次に、
図13の上から3つ目に示すように、可動用ピン85が可動用スリット87の長スリット部87aをスライドすることで、固定用スリット88の入口部88aを第1の固定用ピン83の位置にあわせて、可動用ピン85を支点としてロックステー84を回動させる。
【0094】
次に、
図13の最も下(上から4つ目)に示すように、可動用ピン85が可動用スリット87の短スリット部87bに位置し、第1の固定用ピン83が固定用スリット88の短スリット部88cに位置することで、ロックステー84はロック状態となり、ラジエータカバー70に対して外部カバー71をロックする。なお、ロック部80では、ロック状態では斜め姿勢であるため、ロックステー84が自重によってロック状態となり、自動的にロックすることができる。
【0095】
また、ロック部80では、ロック状態においてはロックステー84の先端側が下がった斜め姿勢であるためロックステー84が外れにくく、意図しない開放を防ぐことができる。なお、ロックステー84のロック状態を解除するためには、ロックステー84の先端側を持ち上げるだけでよい。
【0096】
なお、固定部81と可動部82とは逆に設けられてもよい。すなわち、ラジエータカバー70側に可動部82が設けられ、外部カバー71側に固定部81が設けられてもよい。また、上記したロック部80では機械式でロックするが、たとえば、ロック部80における固定部81を磁石で構成してもよい。このような構成によれば、容易にロックおよびロック解除が可能となる。
【0097】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【解決手段】実施形態に係るコンバイン1は、グレンタンク8と、縦オーガ10とを備える。グレンタンク8は、穀粒を貯留し、エンジン20が設置された機体フレーム2の上部左右一側に設けられる。縦オーガ10は、グレンタンク8に貯留された穀粒を上方に向けて搬送し、グレンタンク8の後方に設けられる。また、コンバイン1は、排ガス浄化装置30と、尿素水タンク40とを備える。排ガス浄化装置30は、エンジン20の排気ガスを尿素水から発生するアンモニアを用いて還元して浄化処理する尿素SCR触媒32を含む。尿素水タンク40は、尿素SCR触媒32に供給する尿素水を貯留し、機体フレーム2上におけるグレンタンク8と縦オーガ10との間に設けられる。