(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、当該基板の一面上に並ぶよう設けられた複数の面状の発光素子と、当該基板の一面上において、当該複数の発光素子の各々が埋没する状態で各発光素子を覆うよう設けられた、当該複数の発光素子に共通の中間層と、この中間層の一面上に設けられた、前記発光素子の各々に対応する複数のレンズ素子とを備えており、
前記レンズ素子の各々は、球欠高さが曲率半径以下の大きさの球欠体状に形成されており、出射面を構成する球面に係る曲率中心が対応する発光素子の発光面と前記中間層の表面との間に位置されると共に、光軸が対応する発光素子の中心軸と一致する状態で、底面が前記中間層の一面に接合されており、
前記基板に垂直な断面において、レンズ素子の底面における外縁位置と、当該レンズ素子に対応する発光素子の発光面における当該発光素子の中心軸上の点とを結ぶ仮想直線の、当該発光素子の中心軸に対してなす角度を取込角θとしたとき、
前記レンズ素子の各々は、当該取込角θが50度以上70度以下となる状態で、形成されていることを特徴とする発光モジュール。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばLED素子よりなる複数の発光素子が同一平面上に配列されてなる線状または面状の光源装置の開発が進んでいる。このような光源装置は、光処理装置、検査用装置、医療用装置などに利用されている。
【0003】
このような光源装置においては、より高出力の光を得るために、単位面積あたりの発光素子の実装密度をより高くすることや、各々の発光素子からの光の取出し効率を向上させることなどが求められている。
【0004】
一般に、発光素子からの光の取出し効率を向上させるための技術として、基板の表面上に配置された発光素子を例えばレンズ作用を有する透光性樹脂層によって封止する構造とすることが行われている(例えば特許文献1参照。)。
例えば、特許文献1には、
図5に示すように、基板41の一面42上に複数の発光素子45が実装された発光モジュール40aにおいて、複数の発光素子45が一次元的に並んで配置され、透光性樹脂よりなるレンズアレイ50が各々の発光素子45を覆うよう設けられた構造とされることが記載されている。レンズアレイ50は、各々の発光素子45に対応するレンズ部51が一体的に形成された構成とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような発光モジュールでは、各々の発光素子に対応するレンズ部が一体的に形成された構成とされているため、レンズ部を発光素子に対して適正な位置に設けることが困難であるという問題がある。また、発光素子の配列パターンやピッチ幅の大きさに応じたパターンでレンズ部を形成することが必要とされるため、汎用性が低く、製造時のコスト増が避けられない。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、複数の発光素子が同一平面上に配置されてなる発光モジュールにおいて、高い光取り出し効率を得ることができると共に、汎用性に優れ、有利に製造することのできる発光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発光モジュールは、基板と、当該基板の一面上に並ぶよう設けられた複数の面状の発光素子と、当該基板の一面上において、当該複数の発光素子の各々が埋没する状態で各発光素子を覆うよう設けられた
、当該複数の発光素子に共通の中間層と、この中間層の一面上に設けられた、前記発光素子の各々に対応する複数のレンズ素子とを備えており、
前記レンズ素子の各々は、球欠高さが曲率半径以下の大きさの球欠体状に形成されており、出射面を構成する球面に係る曲率中心が対応する発光素子の発光面と前記中間層の表面との間に位置されると共に、光軸が対応する発光素子の中心軸と一致する状態で、底面が前記中間層の一面に接合されて
おり、
前記基板に垂直な断面において、レンズ素子の底面における外縁位置と、当該レンズ素子に対応する発光素子の発光面における当該発光素子の中心軸上の点とを結ぶ仮想直線の、当該発光素子の中心軸に対してなす角度を取込角θとしたとき、
前記レンズ素子の各々は、当該取込角θが50度以上70度以下となる状態で、形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の発光モジュールにおいては、前記レンズ素子の各々は、光学接着剤によって前記中間層の表面に接着された構成とすることができる。
【0011】
さらにまた、本発明の発光モジュールにおいては、前記レンズ素子の屈折率が、前記中間層の屈折率よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発光モジュールにおいては、複数の発光素子の各々に対応するレンズ素子の各々が互いに別体として構成されている。さらに、各レンズ素子の底面が中間層の一面に接合された構成とされている。このような構成とされていることにより、発光素子の配列パターンやピッチ幅の大きさに制約を受けることがなく、レンズ素子を対応する発光素子の配置位置との関係において所要の位置に確実に形成することができる。従って、本発明の発光モジュールによれば、光の取り出し効率を向上させることができる。
また、本発明の発光モジュールによれば、レンズ素子を個別に形成すればよいので、高い汎用性を得ることができる。しかも、発光素子が目的に応じた配置パターンまたは配置ピッチで設けられた発光モジュールを有利に作製することができる。
さらにまた、本発明の発光モジュールにおいては、レンズ素子を構成する材料を中間層を構成する材料に応じて適宜変更することにより、レンズ素子の中間層に対する相対屈折率を調整することができる。従って、本発明の発光モジュールによれば、所要の配光特性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の発光モジュールの一例における構成の概略を示す平面図である。
図2は、
図1に示す発光モジュールの一部を拡大して示す断面図である。
この発光モジュール10においては、基板11の一面12上に、複数の面状の発光素子15が例えば縦横に並んだ状態で実装されている。具体的には例えば、複数の面状の発光素子15が、基板11の一面12上において仮想的に設定した平面格子(例えば長方格子)の各格子点上に配置されている。各々の発光素子15は、ボンディングワイヤ(図示せず)によって基板11の一面12に形成された配線部(図示せず)に電気的に接続されている。
基板11の一面12上には、例えば透光性樹脂材料よりなる中間層20が、複数の発光素子15の各々が埋没する状態で、発光素子15の周辺領域を覆うよう設けられている。さらに、中間層20の一面21上には、発光素子15の各々に対応する複数のレンズ素子25が設けられている。
【0015】
発光素子15は、例えば平面形状が矩形のLEDチップにより構成されている。
発光素子15の発光波長は、特に限定されず、青色波長域、緑色波長域、赤色波長域などの可視光域の発光波長を有するもの、紫外線域に発光波長を有するもの、赤外線域に発光波長を有するもののいずれであってもよい。
発光素子15の発光面16の縦横の寸法は、それぞれ0.2〜2.0mmの範囲内であり、厚みは例えば50〜500μmである。また、発光素子15のピッチ幅Dpは、例えば0.1〜2.0mmである。ここに、ピッチ幅Dpは、隣接する発光素子15の中心間距離をいう。
【0016】
基板11を構成する材料としては、例えば、窒化アルミニウム、アルミナセラミックス、窒化珪素、ガラス繊維補強型エポキシ樹脂、シリコン(SiO
2 )、銅、アルミニウムなどを例示することができる。
【0017】
中間層20を構成する材料としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂やエポキシ樹脂などの透光性を有する熱硬化性樹脂材料、あるいは、石英ガラスやホウ珪酸ガラスなどのガラス材などを例示することができる。
中間層20の厚みは、発光素子15の発光面16からの突出高さTが例えば0.05〜0.5mmとなる大きさであることが好ましい。
【0018】
各々のレンズ素子25は、例えば球欠高さHが曲率半径R以下の大きさの球欠体形状、すなわち、半球あるいは半球より球欠高さHの小さい球欠体状に形成されている。各々のレンズ素子25は、光軸Lが対応する発光素子15の中心軸Cと一致する状態で、設けられている。ここに、発光素子15の中心軸Cとは、発光面16の中央位置において法線方向に延びる軸をいう。この例におけるレンズ素子25は、いずれも同一の形状を有しており、例えば、出射面26を構成する球面の曲率半径Rおよび球欠高さHが同一の大きさとされている。
【0019】
各々のレンズ素子25は、取込角θが50度以上90度未満となる状態で、形成されていることが好ましい。取込角θは、基板11に垂直な断面において、レンズ素子25の底面27における外縁位置Pと、当該レンズ素子25に対応する発光素子15の発光面16における当該発光素子15の中心軸C上の点Oとを結ぶ仮想直線Xの、当該発光素子15の中心軸Cに対してなす角度である。
取込角θの大きさが上記範囲内であることにより、レンズ素子25は、発光素子15の発光面16における出射光の分布(ランバーシアン配光)に対応する形状を有するものとなる。従って、高い光の取り出し効率を確実に得ることができる。
各々のレンズ素子25の最大外径Dは、例えば0.4〜3mmであり、レンズ素子25の曲率半径Rは、例えば0.2〜1.5mmである。
【0020】
レンズ素子25を構成する材料としては、中間層20を構成する材料として例示したものを用いることができる。レンズ素子25は、中間層20と同一の材料によって形成されていても、異なる材料によって形成されていてもよいが、中間層20を構成する材料の屈折率より大きい屈折率を有する材料により形成されていることが好ましい。これにより、
図2に示すように、中間層20からレンズ素子25へ光が進行していくときに、両者の境界面に対して中間層20から入射角αで入射する光は、入射角αより小さい屈折角βでレンズ素子25に進行することとなる。従って、中間層20およびレンズ素子25の両者の境界面において全反射が生じることを確実に抑えることができる。ここに、レンズ素子25の中間層20に対する屈折率(相対屈折率)は、例えば1.0〜1.4であることが好ましい。
【0021】
而して、上記の発光モジュール10においては、各々のレンズ素子25は、底面27が中間層20の一面21に接合されて設けられた構成とされている。さらに、各々のレンズ素子25は、出射面26を構成する球面の曲率中心Fが、対応する発光素子15の発光面16と中間層20の一面21との間に位置された状態で、設けられている。発光素子15の発光面16と中間層20の一面21との間の位置は、中間層20の一面21上の位置を含むものとする。
具体的には、各々のレンズ素子25は、底面27が例えば光学接着剤によって中間層20の一面21に接着されている。光学接着剤としては、例えば透光性を有する熱硬化性樹脂接着剤を用いることができる。
【0022】
上記構成の発光モジュール10は、例えば次のようにして製造することができる。
先ず、
図3(a)に示すように、複数の発光素子15が実装された基板11の一面12上に、金型(図示せず)を用いて中間層20を所定の厚みで形成する。次いで、
図3(b)に示すように、底面に光学接着剤30が塗布されたレンズ素子材料25aを中間層20の一面21上における各々の発光素子15に対応する位置に配置する。その後、光学接着剤30を加熱して光学接着剤30を硬化させることにより、レンズ素子材料25aを中間層20に接合してレンズ素子25を形成する。以って、
図1に示す発光モジュール10を得ることができる。
【0023】
また、本発明の発光モジュールは、複数の発光素子15が実装された基板11の一面12上に、金型(図示せず)を用いて中間層20を所定の厚みで形成した後、ポッティング(樹脂盛り)加工を施すことによってレンズ素子25を形成することにより、製造することもできる。具体的には、
図4(a)に示すように、中間層20の一面21上における各々の発光素子15に対応する位置に、例えば液状の熱硬化性樹脂材料よりなるレンズ素子形成材料Trをディスペンサー35によって滴下する。次いで、
図4(b)に示すように、所定のレンズ形状を有するレンズ素子用材料層25bを中間層20の一面21上に形成する。その後、レンズ素子用材料層25bの加熱処理を行って当該レンズ素子用材料層25bを硬化させることにより、底面27が中間層20の一面21に接着(接合)されたレンズ素子25を形成し、以って、本発明に係る発光モジュールを得ることができる。
【0024】
而して、上記の発光モジュール10においては、複数の発光素子15の各々に対応するレンズ素子25の各々が互いに別体として構成されている。さらに、各レンズ素子25の底面27が中間層20の一面21に接合された構成とされている。このような構成とされていることにより、発光素子15の配列パターンやピッチ幅Dpの大きさに制約を受けることがなく、レンズ素子25を対応する発光素子15の配置位置との関係において所要の位置に確実に形成することができる。従って、上記構成の発光モジュール10によれば、光の取り出し効率を向上させることができる。また、上記構成の発光モジュール10によれば、レンズ素子25を個別に形成すればよいので、高い汎用性を得ることができる。しかも、発光素子15が目的に応じた配置パターンまたは配置ピッチで設けられた発光モジュールを有利に作製することができる。
さらにまた、上記の発光モジュール10においては、レンズ素子25を構成する材料を中間層20を構成する材料に応じて適宜変更することによりレンズ素子25の中間層20に対する相対屈折率を調整することができる。従って、上記構成の発光モジュール10によれば、所要の配光特性を確実に得ることができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明の発光モジュールにおいては、発光素子が一次元的に配置された構成、換言すれば発光素子が一方向に並ぶ状態で配置された構成とされていてもよい。また、基板上に実装される発光素子の数は、特に限定されるものではない。
さらにまた、レンズ素子は、互いに同一の形状であっても、互いに異なる形状であってもよい。
【0026】
以下、本発明の実験例について説明する。
<実験例1>
図1および
図2に示す構成に従って、本発明に係る発光モジュール(以下、「発光モジュール(A)」という。)を作製した。この発光モジュール(A)の仕様は、次に示す通りである。
〔発光素子(15)〕
寸法1mm(縦方向)×1mm(横方向)×0.11mm(厚み)のLEDチップ
個々のLEDチップの出力:0.82W
LEDチップの発光波長(ピーク波長):395nm
LEDチップの個数:
図1における上下方向に4個,
図1における左右方向に10個
LEDチップのピッチ幅(Dp);2mm
〔中間層(20)〕
材質:シリコーン樹脂
厚み:0.43mm
LEDチップの発光面からの突出高さ(T):0.32mm
〔レンズ素子(25)〕
材質:シリコーン樹脂
形状:半球状
出射面の曲率中心(F)の位置:中間層の一面上
出射面の曲率半径(R):0.9mm、最大外径(D):1.8mm
取込角(θ):70度
【0027】
<実験例2>
レンズ素子を出射面の曲率半径(R)が0.9mm、取込角(θ)が55度となる形状で形成したことの他は、実験例1において作製した発光モジュールと同一の構成を有する発光モジュール(以下、「発光モジュール(B)」という。)を作製した。
【0028】
<実験例3>
中間層の厚みを1.17mmで形成したことの他は、実験例1において作製した発光モジュールと同一の構成を有する発光モジュール(以下、「発光モジュール(C)」という。)を作製した。この発光モジュール(C)における取込角(θ)は40度である。
【0029】
また、中間層およびレンズ素子を形成しなかったことの他は、発光モジュール(A)と同一の構成を有する発光モジュール(以下、「参考発光モジュールという。」)を作製した。
以上のようにして得られた発光モジュール(A)〜発光モジュール(C)、参考発光モジュールの各々について、放射される光の全放射光束を測定した。そして、参考発光モジュールの全放射光束を100%としたときの発光モジュール(A)〜(C)の全放射光束の相対値を求めた。この結果、発光モジュール(A)の全放射光束は112%、発光モジュール(B)の全放射光束は108%、発光モジュール(C)の全放射光束は96%であった。