(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1無線伝送システム用回路が接続される給電コイルと、第1無線伝送システムにおける伝送相手のアンテナコイルおよび前記給電コイルに対して磁界を介して結合し、第1無線伝送システムの伝送周波数で共振する第1無線伝送システム用コイルと、第2無線伝送システム回路に接続され、第2無線伝送システムにおける伝送相手のアンテナコイルと磁界を介して結合する第2無線伝送システム用コイルと、を有し、
平面視で、前記第2無線伝送システム用コイルのコイル開口と前記第1無線伝送システム用コイルのコイル開口とは少なくとも一部で重なり、
前記第1無線伝送システム用コイルは、主要部と、前記給電コイルと磁界を介して結合する結合部とを有し、
前記第1無線伝送システム用コイルの前記結合部と前記給電コイルとの最短距離は、前記給電コイルと前記第2無線伝送システム用コイルとの最短距離よりも短く、
前記結合部は、前記第1無線伝送システム用コイルにおいて前記第2無線伝送システム用コイルに最も近接する箇所とは異なる位置にある、
ことを特徴とするアンテナ装置。
前記第1無線伝送システム用コイルは基材シートに設けられており、前記基材シートは折り曲げられ、前記第1無線伝送システム用コイルの前記結合部は、前記磁性体シートに対して前記第1無線伝送システム用コイルの主要部とは反対側に位置する、請求項9に記載のアンテナ装置。
前記第1無線伝送システム用コイルは開口が形成された基材シートに設けられており、前記磁性体シートは前記基材シートの開口に挿入され、前記第1無線伝送システム用コイルの前記結合部は、前記磁性体シートに対して前記第1無線伝送システム用コイルの主要部とは反対側に位置する、請求項9に記載のアンテナ装置。
前記基板は前記第2無線伝送システム用コイルの外側で折り返されていて、前記第1無線伝送システム用コイルの前記結合部は、前記基板の折り返しに伴って、前記第2無線伝送システム用コイルの形成面とは反対側に配置された、請求項14に記載のアンテナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されているモジュールでは、非接触充電用コイルとNFC用コイルとが同軸で且つコイル導体同士が近接配置されているので、両コイルの結合による、非接触充電回路とNFC回路との干渉が懸念される。
【0007】
特許文献2に示されているモジュールでは、非接触充電用コイルとNFC用コイルとは、各コイル軸が直交するように配置されているので、各コイルは結合しにくい。そのため、非接触充電の回路とNFCの回路との干渉が生じにくい。しかし、NFC用コイルの形状や巻き方に制約があり、大型化(高背化)しやすく、設計の自由度が低いという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、非接触充電および近距離無線通信等、異なる複数の無線伝送システムに用いられるアンテナ装置を大型化することなく、異なる無線伝送システム間の相互干渉を抑制したアンテナ装置およびそれを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアンテナ装置は、
第1無線伝送システム用回路が接続される給電コイルと、第1無線伝送システムにおける伝送相手のアンテナコイルおよび前記給電コイルに対して磁界を介して結合し、第1無線伝送システムの伝送周波数で共振する第1無線伝送システム用コイルと、第2無線伝送システム回路に接続され、第2無線伝送システムにおける伝送相手のアンテナコイルと磁界を介して結合する第2無線伝送システム用コイルと、を有し、
平面視で、前記第2無線伝送システム用コイルのコイル開口と前記第1無線伝送システム用コイルのコイル開口とは少なくとも一部で重なり、
前記第1無線伝送システム用コイルは
、主要部と、前記給電コイルと磁界を介して結合する結合部
とを有し、
前記第1無線伝送システム用コイルの
前記結合部と前記給電コイルとの最短距離は、前記給電コイルと前記第2無線伝送システム用コイルとの最短距離よりも短い、
ことを特徴とする。
【0010】
上記構成により、第2無線伝送システム用コイルと第1無線伝送システム用コイルとは結合するとしても、第2無線伝送システム用コイルと給電コイルとは結合しない配置にできる。よって、第2無線伝送システムと第1無線伝送システムとの相互干渉を抑制することができる。
【0011】
前記結合部は、前記第1無線伝送システム用コイルにおいて前記第2無線伝送システム用コイルに最も近接する箇所とは異なる位置にあることが好ましい。
【0012】
また、平面視で前記第2無線伝送システム用コイルに重なる磁性体シートを備えることが好ましい。この構成により、第2無線伝送システム用コイルと他の導体部との不要な磁界結合が磁性体シートにより抑制され、他の導体部に渦電流が生じるのを抑制できる。
【0013】
前記磁性体シートは第1無線伝送システム用コイルに近接し、第1無線伝送システム用コイルは、少なくともその一部が磁性体シートの近接範囲外にあり、給電コイルは、磁性体シートの近接範囲外で第1無線伝送システム用コイルの結合部と磁界結合する位置に配置されていることが好ましい。この構成により、第1無線伝送システム用コイルと他の導体部との不要な磁界結合が磁性体シートにより抑制され、他の導体部に渦電流が生じるのを抑制できる。
【0014】
また、平面視で、前記給電コイルは第2無線伝送システム用コイルの外側に配置されていることが好ましい。このことにより、給電コイルと第2無線伝送システム用コイルとの不要結合を抑制できる。
【0015】
前記給電コイルは、磁性体コアと、当該磁性体コアの周囲に巻回されたコイル導体とを有し、平面視で、給電コイルは、コイル導体の巻回軸が第2無線伝送システム用コイルの外側を通るように配置されていることが好ましい。このことにより、給電コイルと第2無線伝送システム用コイルとの不要結合をより抑制できる。
【0016】
また、平面視で、前記給電コイルは第2無線伝送システム用コイルの内側に配置されていることが好ましい。この構成により、アンテナ装置の占有面積を縮小化できる。
【0017】
また、平面視で、給電コイルは第2無線伝送システム用コイルのコイル巻回軸と重なる位置に配置されていることが好ましい。このことにより、給電コイルと第2無線伝送システム用コイルとの不要結合を、より抑制できる。
【0018】
前記第1無線伝送システム用コイルの結合部は、第2無線伝送システム用コイルから見て磁性体シートの裏側にあることが好ましい。この構成により、給電コイルと第2無線伝送システム用コイルとの不要結合をより抑制できる。
【0019】
前記第1無線伝送システム用コイルの主要部は、前記磁性体シートに対して前記第2無線伝送システム用コイルと同じ面側に位置することが好ましい。
【0020】
例えば、前記第1無線伝送システム用コイルは基材シートに設けられており、前記基材シートは折り曲げられ、前記第1無線伝送システム用コイルの前記結合部は、前記磁性体シートに対して前記第1無線伝送システム用コイルの主要部とは反対側に位置する。
【0021】
また、例えば、前記第1無線伝送システム用コイルは開口が形成された基材シートに設けられており、前記磁性体シートは前記基材シートの開口に挿入され、前記第1無線伝送システム用コイルの前記結合部は、前記磁性体シートに対して前記第1無線伝送システム用コイルの主要部とは反対側に位置する。
【0022】
また、平面視で第2無線伝送システム用コイルおよび第1無線伝送システム用コイルに重なる磁性体シートを備え、平面視で、給電コイルは、第2無線伝送システム用コイルの外側に配置されていて、磁性体シートは、平面視で第2無線伝送システム用コイルと重なる領域では、第2無線伝送システム用コイルに対して第2無線伝送システム用の相手側コイルとは反対側に配置され、第1無線伝送システム用コイルの結合部では、第1無線伝送システム用コイルに対して給電コイルとは反対側に配置されることが好ましい。この構成により、給電コイルと第1無線伝送システム用コイルとの結合度を高めることができる。また、給電コイルと第2無線伝送システム用コイルとの不要結合を抑制できる。
【0023】
前記給電コイルと第2無線伝送システム用コイルとの間に
は、導電性部材または磁性部材が配置されていることが好ましい。これにより、給電コイルと第2無線伝送システム用コイルとの不要結合をより抑制できる。
【0024】
前記第1無線伝送システム用コイルおよび第2無線伝送システム用コイルは基板の同一主面上に設けられていることが好ましい。この構成により、部材の構成要素が削減され、薄型化、低コスト化できる。
【0025】
前記基板は第2無線伝送システム用コイルの外側で折り返されていて、第1無線伝送システム用コイルの結合部は、基板の折り返しに伴って、第2無線伝送システム用コイルの形成面とは反対側に配置されていることが好ましい。この構成により、アンテナ装置の占有面積を縮小化でき、且つ、第2無線伝送システム用コイルと給電コイルとの不要結合が抑制できる。
【0026】
前記第1無線伝送システムの伝送周波数帯と、前記第2無線伝送システムの伝送周波数帯は異なることが好ましい。
【0027】
前記第1無線伝送システムおよび前記第2無線伝送システムは、例えば一方が近距離無線通信システムであり、他方が非接触充電システムである。
【0028】
本発明の電子機器は、上
記アンテナ装置と、前記近距離無線通信システムの回路を含む回路に対する電源である二次電池と、前記非接触充電システム用のコイルに誘導される電力で前記二次電池を充電する非接触充電用制御回路と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、第1無線伝送システム用コイルを13.56MHz付近で共振させることによって、共振の選択効果により、周波数の異なる第2無線伝送システムの信号(例えば1MHz/7MHz)が、給電コイルに伝わりにくくなる。また、給電コイルと第1無線伝送システム用コイルとは直結(直流的接続)ではなく、磁界を介しての結合であって、しかも、第1無線伝送システム用コイルと第2無線伝送システム用コイルとは結合するが、第2無線伝送システム用コイルと給電コイルとは殆ど結合しないので、第1無線伝送システムとして十分に機能させつつも、第2無線伝送システムと第1無線伝送システムの干渉を防ぐことができる。さらに、第1無線伝送システム用コイルと第2無線伝送システム用コイルとは近接配置できるため、第1無線伝送システム用コイルの設計上の自由度が高い。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0032】
本発明は、異なる複数の無線伝送システムに用いられるアンテナ装置およびそれを備えた電子機器に関する発明である。複数の無線伝送システムのうち、第1、第2の無線伝送システムの組み合わせ例は次のとおりである。
【0033】
(1)
第1伝送システム:近距離無線通信システム
第2伝送システム:ワイヤレス電力伝送システム
(2)
第1伝送システム:ワイヤレス電力伝送システム
第2伝送システム:近距離無線通信システム
(3)
第1伝送システム:第1近距離無線通信システム
第2伝送システム:第2近距離無線通信システム
以降に示す各実施形態では、第1の無線伝送システムが近距離無線通信システム、第2の無線伝送システムがワイヤレス電力伝送システムである例を示す。
【0034】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係るアンテナ装置101の平面図、
図1(B)はアンテナ装置101の断面図である。
【0035】
本実施形態のアンテナ装置101は、給電コイル1と、NFC用コイル2と、非接触充電用コイル3と、磁性体シート4とを備えている。NFC用コイル2は本発明に係る「第1無線伝送システム用コイル」に相当する。NFC用コイルは、例えば13.56MHz帯を利用するNFCの通信用コイルである。また、非接触充電用コイル3は本発明に係る「第2無線伝送システム用コイル」に相当する。非接触充電用コイル3は、例えば110kHz〜205kHzを利用するWPC(Wireless Power Consortium)のQi(登録商標)や、6.78MHz帯を利用するA4WP(Alliance for Wireless Power)のRezence(登録商標)のコイルである。
【0036】
給電コイル1はプリント配線板6に実装されている。NFC用コイル2および非接触充電用コイル3は基材シート5の表面に形成されている。基材シート5は磁性体シート4を包むように、磁性体シート4の2辺で折り返されている。基材シート5は例えばPET樹脂シートやLCP樹脂シート、ポリイミドシートである。磁性体シート4は、例えばフェライト粉などの磁性体粉と樹脂材との混合体が矩形板状に成形されたもの、または小片化された焼結磁性体が矩形板状に成形されたものである。
【0037】
NFC用コイル2は、上記基材シート5の折り返しによって、一部が上面から下面に折り返されている。NFC用コイル2の主要部は、磁性体シート4の上面で矩形スパイラル状部分を形成している。NFC用コイル2の残りの部分は、磁性体シート4の下面で給電コイル1の近傍にまで引き出されている(配線されている)。
【0038】
NFC用コイル2は、両端に共振キャパシタ7が接続されている。このNFC用コイル2と共振キャパシタ7とで共振回路が構成されていて、近距離無線通信信号の周波数(13.56MHz)またはその付近で共振する。
【0039】
非接触充電用コイル3は、上記基材シート5の折り返しによって、一部が上面から下面に折り返されている。非接触充電用コイル3は磁性体シート4の上面でスパイラル状部分を形成している。非接触充電用コイル3の両端は接続端子31として引き出されている。磁性体シート4の下面でピン端子62は上記接続端子31に当接し、直結(直流的接続)している。
【0040】
プリント配線板6には近距離無線通信回路が設けられていて、この近距離無線通信回路に給電コイル1が接続されている。また、プリント配線板6には非接触充電用回路が設けられていて、この回路にピン端子62が接続されている。
【0041】
図2は給電コイル1の分解斜視図、
図3はその断面図である。給電コイル1は、複数のシート10a〜10iが積層された多層基板10と、この多層基板10に形成されたコイル導体とを備えている。
図2では上下の非磁性体層10a,10iは図示を省略している。磁性体シート10bの下面にはコイル導体の複数の第1線条部11が形成されている。磁性体シート10hの上面にはコイル導体の複数の第2線条部12が形成されている。磁性体シート10b〜10hにはコイル導体の複数のビア導体(層間接続導体)が形成されている。これらの線条部11,12およびビア導体によって、横置きの扁平角筒に沿ったヘリカル状のコイル導体を備えた給電コイル1が構成されている。
【0042】
本実施形態のアンテナ装置101の特徴的な構成を列挙すると、次のとおりである。
【0043】
・平面視で、非接触充電用コイル3はNFC用コイル2に重なり、最短距離で、給電コイル1は非接触充電用コイル3よりNFC用コイル2に近い位置にある。なお、給電コイル1とNFC用コイル2との最短距離は、NFC用コイル2を構成するコイル導体のうち、給電コイル1に最も近い部分(
図1(B)では磁性体シート4の下面に位置する部分)から給電コイル1までの距離である。給電コイル1と非接触充電用コイル3との最短距離は、非接触充電用コイル3を構成するコイル導体のうち、給電コイル1に最も近い部分から給電コイル1までの距離である。
【0044】
・磁性体シート4は、平面視で非接触充電用コイル3およびNFC用コイル2に重なる。
【0045】
・給電コイル1は、磁性体コアと、この磁性体コアの周囲に巻回された形状のコイル導体とを有し、コイル導体のコイル巻回軸方向はNFC用コイル2のコイル巻回軸方向と交差している。
【0046】
・平面視で、給電コイル1は非接触充電用コイル3の内側に配置されている。
【0047】
・平面視で、給電コイル1は非接触充電用コイル3の中心軸と重なる位置に配置されている。
【0048】
・NFC用コイル2と給電コイル1との結合部は、非接触充電用コイル3から見て磁性体シート4の裏側にある。
【0049】
図1に表れているように、NFC用コイル2のうち、磁性体シート4の下面に配線された部分で、NFC用コイル2は給電コイル1と磁界を介して結合する。
図1(B)において破線φ1は、上記結合に寄与する磁束を概念的に表している。
【0050】
NFC用コイル2は通信相手のアンテナコイルと磁界結合する。同様に、非接触充電用コイル3は非接触充電用相手側コイルと磁界結合する。
図1(B)において破線φ2,φ3はこれらの結合に寄与する磁束を概念的に表している。
【0051】
次に、近距離無線通信のためのコイルを、NFC用コイル2と、それに結合する給電コイル1とで構成し、給電コイル1を非接触充電用コイルから離したことによる効果、NFC用コイルが近距離無線通信の周波数で共振することによる効果について示す。但し、確認実験のため、NFC用コイル2が非接触充電用コイル3に意図的に結合しやすくなるように、外形35mmの非接触充電用コイルのサイズに合わせて、外形35mmで4ターンのNFC用コイル2を作成し、これを非接触充電用コイル3に重ねた。
【0052】
[確認実験1]
非接触充電の磁界による近距離無線通信回路系への影響を確認する実験を行った。
【0053】
先ず、非接触充電用コイルとの結合により誘起されるNFC用コイル両端の電圧を測定した。非接触充電に使用される磁界の周波数を200kHzとし、NFC用コイルを共振させないとき、NFC用コイルの両端電圧は9.56Vであり、非常に高い電圧が誘起された。次に、NFC用コイルに共振キャパシタを接続して、共振周波数を13.56MHzとし給電コイルに誘起される電圧を測定すると、2.44Vと十分低い値であった。
【0054】
[確認実験2]
NFC用コイルが近接していることによる非接触充電回路系への影響を確認する実験を行った。
【0055】
先ず、NFC用コイルを非接触充電用コイルに貼付する前に非接触充電用コイルに誘起される電圧は22.05Vであり、両端開放状態にしたNFC用コイルを非接触充電用コイルに貼付したときに非接触充電用コイルに誘起される電圧は22.36Vであった。この状態で、NFC用コイルに共振キャパシタを接続して、共振周波数を13.56MHzに設定すると、非接触充電用コイルに誘起される電圧は22.40Vであった。さらに、NFC用コイルに給電コイルを結合させたときも、非接触充電用コイルに誘起される電圧は22.40Vであった。すなわち、NFC用コイルが近接していることによる非接触充電用コイルへの影響は殆どない。
【0056】
ちなみに、NFC用コイルの両端に20Ωの抵抗を接続すると、非接触充電用コイルに誘起される電圧は18.80Vとなり約17%低下した。このように、非接触充電回路系はNFC用コイルのQ値の影響を受けるが、実際には、NFC用コイルはLC共振回路を構成し、Q値は高いので、問題はない。
【0057】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0058】
給電コイル1は非接触充電用コイル3の中心に配置され、且つ、給電コイル1のコイル巻回軸方向と非接触充電用コイル3のコイル巻回軸方向とは直交しているので、非接触充電用コイル3と給電コイル1とは殆ど結合しない。非接触充電用コイル3のコイル開口とNFC用コイル2のコイル開口とは重なるが、NFC用コイル2は近距離無線通信の周波数(13.56MHz)で共振し、非接触充電用の周波数(例えば200kHz/7MHz)では共振しない。よって、非接触充電システムと近距離無線通信システムとの相互干渉は抑制できる。
【0059】
NFC用コイル2と共振キャパシタ7とは、NFC用信号のバンドパスフィルタとして機能する。すなわち、このバンドパスフィルタは、NFC用信号を通過させるが、非接触充電用の信号(磁界)を阻止するため、非接触充電用送電装置(相手側)からの非接触充電用の大きな電力がNFC用のICに入ることがなく、ICが破壊されることが防止される。
【0060】
また、給電コイル1とNFC用コイル2とは直結(直流的接続)ではなく、磁界を介しての結合であって、しかも、NFC用コイル2と非接触充電用コイル3とは結合するが、非接触充電用コイル3と給電コイル1とは殆ど結合しないので、近距離無線通信システムとして十分に機能させつつも、非接触充電回路と近距離無線通信回路の干渉を防ぐことができる。さらに、NFC用コイル2と非接触充電用コイル3とは近接配置できるため、NFC用コイル2の設計上の自由度が高い。
【0061】
また、プリント配線板6には面状に拡がるグランド電極61が形成されているが、非接触充電用コイル3およびNFC用コイル2の主要部とグランド電極61との間には磁性体シート4が介在している。そのため、非接触充電用コイルによる渦電流およびNFC用コイル2による渦電流がグランド電極61に誘導されるのを抑制できる。
【0062】
また、近距離無線通信には、通常、通信用コイルと共に磁性体部材が必要になるが、非接触充電用のコイル(非接触充電用コイル3)の磁芯として使用する磁性材料がNFC用コイルに近接することで、近距離無線通信のための新たな磁性体部材が不要になる。
【0063】
《第2の実施形態》
図4は第2の実施形態に係るアンテナ装置102の平面図である。
図5(A)はアンテナ装置102が組み込まれた携帯端末等の電子機器202の断面図、
図5(B)はそのアンテナ装置102部分の断面図であり、
図5(A)に示す破線で囲んだ部分の断面図である。
【0064】
本実施形態のアンテナ装置102は、給電コイル1と、NFC用コイル2と、非接触充電用コイル3と、磁性体シート4とを備えている。
図5(A)に表れているように、アンテナ装置102は筐体8内に構成されている。筐体8内にはプリント配線板6およびバッテリーパック81などが組み込まれている。電子機器202の表示・操作面にはタッチパネル付きのディスプレイ82が設けられている。
【0065】
給電コイル1はプリント配線板6に実装されている。NFC用コイル2および非接触充電用コイル3は基材シート5の上面に形成されている。基材シート5の下面には、平面視でNFC用コイル2の一部および非接触充電用コイル3と重なる位置に磁性体シート4が設けられている。
【0066】
上記NFC用コイル2および非接触充電用コイル3が形成された基材シート5と磁性体シート4とは接着されている。また、基材シート5は接着層51を介して筐体8の内面に接着されている。
【0067】
NFC用コイル2の主要部は、磁性体シート4の上面で矩形スパイラル状部分を形成している。NFC用コイル2の残りの部分は、磁性体シート4とは重ならない位置で、且つ給電コイル1の近傍に引き出されている。
【0068】
図4に示すように、NFC用コイル2は、両端に共振キャパシタ7が接続されている。このNFC用コイル2と共振キャパシタ7とで共振回路が構成されていて、近距離無線通信信号の周波数(13.56MHz)またはその付近で共振する。
【0069】
非接触充電用コイル3は磁性体シート4の上面でスパイラル状部分を形成している。非接触充電用コイル3の一部は、ピン端子62が当接する位置にまで配線されている。
【0070】
プリント配線板6には近距離無線通信用IC63、非接触充電用IC64、チップキャパシタやチップインダクタ等の受動部品65,66が実装されている。近距離無線通信用IC63を含む近距離無線通信回路には給電コイル1が接続されている。また、非接触充電用IC64を含む非接触充電用回路にピン端子62が接続されている。
【0071】
本実施形態のアンテナ装置101の特徴的な構成を列挙すると、次のとおりである。
【0072】
・平面視で、非接触充電用コイル3はNFC用コイル2に重なり、最短距離で、給電コイル1は非接触充電用コイル3よりNFC用コイル2に近い位置にある。
【0073】
・磁性体シート4は、平面視で非接触充電用コイル3およびNFC用コイル2に重なる。
【0074】
・給電コイル1は、磁性体コアと、この磁性体コアの周囲に巻回された形状のコイル導体とを有し、コイル導体のコイル巻回軸方向はNFC用コイル2のコイル巻回軸方向と交差している。
【0075】
・平面視で、給電コイル1は、非接触充電用コイル3の外側に配置されている。
【0076】
図6(A)は近距離通信を行う通信相手装置300に設けられている通信相手側コイル302との結合の様子を示す図である。通信相手側コイル302はスパイラル状コイルである。この通信相手側コイル302にNFC用コイル2が対向する。
図6(A)において破線φ2は通信相手側コイル302とNFC用コイル2との結合に寄与する磁束を概念的に表している。また、NFC用コイル2のうち、磁性体シート4より平面視で外側に引き出された部分で、NFC用コイル2は給電コイル1と磁界を介して結合する。
図6(A)において破線φ1は、上記結合に寄与する磁束を概念的に表している。
【0077】
図6(B)は充電台400に設けられている充電台側コイル403との結合の様子を示す図である。充電台側コイル403はスパイラル状コイルである。この充電台側コイル403に非接触充電用コイル3が対向する。
図6(B)において破線φ3は充電台側コイル403と非接触充電用コイル3との結合に寄与する磁束を概念的に表している。給電コイル1は非接触充電用コイル3から離れた位置にあるので、給電コイル1は充電台側コイル403からも離れた位置にあることになる。したがって、給電コイル1は充電台側コイル403と不要結合することはなく、非接触充電用の磁界が近距離無線通信用回路に悪影響を与えることはない。
【0078】
図5(A)に示したバッテリーパック81は近距離無線通信回路を含む回路に対する電源である。非接触充電回路は、非接触充電用コイル3に誘導される電力でバッテリーパック81を充電する充電回路を備えている。
【0079】
《第3の実施形態》
図7は第3の実施形態に係るアンテナ装置103の断面図である。本実施形態のアンテナ装置103は、給電コイル1と、NFC用コイル2と、非接触充電用コイル3と、磁性体シート4とを備えている。
【0080】
給電コイル1はプリント配線板6に実装されている。NFC用コイル2および非接触充電用コイル3は基材シート5の表面に形成されている。基材シート5の下面には、平面視でNFC用コイル2の主要部および非接触充電用コイル3と重なる位置に磁性体シート4が設けられている。給電コイル1はプリント配線板6の下面に実装されている。
【0081】
上記NFC用コイル2および非接触充電用コイル3が形成された基材シート5と磁性体シート4とは接着されている。NFC用コイル2および非接触充電用コイル3の構成は第1の実施形態で示したものと基本的には同じである。但し、NFC用コイル2の主要部は、磁性体シート4の上面で矩形スパイラル状部分を形成していて、残りの部分は、給電コイル1の近傍にまで引き出されている。また、非接触充電用コイルの主要部は、磁性体シート4の上面でスパイラル状部分を形成していて、残りの部分は、ピン端子62が当接する位置にまで引き出されている。
【0082】
本実施形態のように、給電コイル1はプリント配線板6の下面に実装されていても、NFC用コイルと結合させることができる。給電コイル1をプリント配線板6の下面に配置することで、非接触充電用コイル3が対向する充電台側コイルから給電コイル1がより離れるので、充電台側コイルと給電コイル1との不要結合を抑制できる。
【0083】
《第4の実施形態》
図8は第4の実施形態に係るアンテナ装置104Aの断面図、
図9は第4の実施形態に係る別のアンテナ装置104Bの断面図、
図10は第4の実施形態に係る、さらに別のアンテナ装置104Cの断面図である。
【0084】
本実施形態のアンテナ装置104A,104B,104Cのいずれにおいても、プリント配線板6に金属板等の導電性を有するシールド部材67が設けられている。いずれのシールド部材67も静電シールドとして機能させるために、グランド電極61に電気的に接続されている。その他の構成は、
図5(B)に示したアンテナ装置と同じである。
【0085】
なお、シールド部材67を電磁シールドとして機能させるだけならば、シールド部材67をグランド電極61に電気的に接続する必要はない。また、シールド部材67は、非接触充電用コイル3と給電コイル1とがより結合しないようにするために、非接触充電用コイル3と給電コイル1とが対向する方向に対して、垂直に広がる面を有することが好ましい。
【0086】
図8に示すアンテナ装置104Aの例では、シールド部材67は、給電コイル1と非接触充電用コイル3との間に配置されている。そのため、充電台側コイルと結合して非接触充電用コイル3を通過する磁束に対して給電コイル1が電磁シールドされる。
【0087】
図9に示すアンテナ装置104Bの例では、シールド部材67は、給電コイル1の近傍で、且つ非接触充電用コイル3から見て給電コイル1より遠い側に配置されている。この構成であっても、シールド部材67は、非接触充電用コイル3を通過する磁束が給電コイル1を抜けようとするのを抑制することができる。
【0088】
図10に示すアンテナ装置104Cの例では、給電コイル1のコイル開口部の両側にシールド部材67が配置されている。そのため、給電コイル1は充電台側コイルおよび非接触充電用コイル3との不要結合が抑制される。
【0089】
なお、本実施形態では、導電性を有するシールド部材67を設けているが、他の目的で配置されているシールド部材(例えばICを覆うシールド部材)や、バッテリーパック等の導電性を有し、給電コイル1と非接触充電用コイル3との不要結合を遮る部材であれば、それを本実施形態のシールド部材67として兼用できる。
【0090】
なお、本実施形態では、給電コイル1と非接触充電用コイル3とを電磁的に遮蔽するために導電性を有するシールド部材67を設けたが、シールド部材67を磁気シールドとして機能させるだけならば、シールド部材67は磁性を有する部材であってもよく、導電性を有する必要は無い。
【0091】
《第5の実施形態》
図11(A)は第5の実施形態に係るアンテナ装置105の平面図、
図11(B)はアンテナ装置105の断面図である。
【0092】
NFC用コイル2は基材シート5Aの表面に形成されている。非接触充電用コイル3は基材シート5Bの表面に形成されている。基材シート5Aにはスリット状の開口が形成されていて、その開口の周囲に矩形スパイラル状のNFC用コイル2が形成されている。磁性体シート4の上面に基材シート5Bが貼付されていて、この磁性体シート4および基材シート5Bが基材シート5Aの上記開口に挿入されている。給電コイル1はプリント配線板6に実装されている。この給電コイル1はNFC用コイル2の一部に近接する位置に配置されている。
【0093】
なお、
図11(A)においては、NFC用コイル2に接続される共振キャパシタや非接触充電用コイル3から引き出される接続端子については図示を省略している。
【0094】
本実施形態によれば、NFC用コイル2に特別な引き出しパターンを形成することなく、給電コイル1とNFC用コイル2とを結合させることができる。また、NFC用コイル2のコイル開口に磁性体シート4が挿入された構造であるので、NFC用コイル2と通信相手側コイルとの結合度が高まり、NFC用コイル2の占有面積が小さくても所望の通信特性が得られる。
【0095】
《第6の実施形態》
図12(A)は第6の実施形態に係るアンテナ装置106の平面図、
図12(B)はアンテナ装置106の断面図である。磁性体シート4Aを備えた点で、第2の実施形態で
図4、
図5(B)に示したアンテナ装置とは異なる。磁性体シート4Aは給電コイル1との間にNFC用コイル2の引き出し部を挟む位置関係で、基材シート5に貼付されている。そのため、給電コイル1とNFC用コイル2との結合に寄与する磁束φ1はNFC用コイル2の引き出し部の近傍の磁性体シート4Aを通るので、給電コイル1とNFC用コイル2との結合度が高い。
【0096】
《第7の実施形態》
図13(A)は第7の実施形態に係るアンテナ装置107の平面図、
図13(B)はアンテナ装置107の断面図である。基材シート5にスリット状の開口が形成されている点、その開口に磁性体シート4が挿入されている点で、第2の実施形態で
図4、
図5(B)に示したアンテナ装置とは異なる。
【0097】
NFC用コイル2および非接触充電用コイル3は基材シート5の表面に形成されている。基材シート5にはスリット状の開口が形成されていて、その開口に磁性体シート4の突起形状部が挿入されている。磁性体シート4は、平面視で、NFC用コイル2の主要部および非接触充電用コイル3と重なる位置では、NFC用コイル2の主要部および非接触充電用コイル3の下部に有る。また、磁性体シート4は、給電コイル1の近傍では、給電コイル1と磁性体シート4とでNFC用コイル2の引き出し部を挟む位置関係にある。
【0098】
本実施形態によれば、給電コイル1とNFC用コイル2との結合に寄与する磁束φ1は磁性体シート4を通り、給電コイル1とNFC用コイル2との結合度が高い。
【0099】
《第8の実施形態》
図14(A)は第8の実施形態に係るアンテナ装置108の平面図、
図14(B)はそのアンテナ装置108の断面図である。この例では、給電コイル1のコイル導体のコイル巻回軸を一点鎖線で示している。この巻回軸が非接触充電用コイル3の外側を通るように、給電コイル1は配置されている。また、本実施形態では、NFC用コイル2は、平面視で磁性体シート4の外側を周回するように配置されている。また、給電コイル1は全体が矩形スパイラル状であり、その一部に給電コイル1が近接している。また、非接触充電用コイル3は楕円スパイラル状である。その他の構成は
図4に等に示したアンテナ装置と同様である。
【0100】
本実施形態によれば、給電コイル1と非接触充電用コイル3との不要結合をより抑制できる。また、NFC用コイル2が磁性体シート4から離れているので、近距離無線通信の周波数帯で損失の大きな磁性体シートであっても問題は生じない。すなわち、磁性体シート4には非接触充電の周波数に適した材料が適用できる。
【0101】
《第9の実施形態》
図15(A)は第9の実施形態に係るアンテナ装置109の平面図、
図15(B)はそのアンテナ装置109の断面図である。この例では、平面視で非接触充電用コイル3と重なる円形の磁性体シート4A、平面視でNFC用コイル2と重なる円環状の磁性体シート4Bを備えている。また、本実施形態では、NFC用コイル2の主要部は非接触充電用コイルと同心のスパイラル状に形成されている。また、給電コイル1のコイル導体の巻回軸(一点鎖線)が非接触充電用コイル3の外側を通るように、給電コイル1は配置されている。その他の構成は
図4に等に示したアンテナ装置と同様である。
【0102】
本実施形態によれば、非接触充電用コイルおよびNFC用コイルにそれぞれ適した磁性体シートを重ねることができる。すなわち、磁性体シート4Aには、非接触充電の周波数で低損失な磁性体シートを用い、磁性体シート4Bには、近距離通信の周波数で低損失な磁性体シートを用いることができる。
【0103】
なお、NFC用コイル2の外形サイズに比べて非接触充電用コイル3の外形サイズが大きくてもよい。すなわち、NFC用コイル2の外側に非接触充電用コイル3が配置されていてもよい。
【0104】
《第10の実施形態》
図16(A)は第10の実施形態に係るアンテナ装置110の平面図、
図16(B)はアンテナ装置110の断面図である。この例では、NFC用コイル2は基材シート5Aの表面に形成されている。非接触充電用コイル3は基材シート5Bの表面に形成されている。NFC用コイル2のコイル開口の重心は非接触充電用コイル3のコイル開口の重心とは平面視で互いにずれた位置にある。なお、ここでいう「重心」とは、コイル開口の幾何学的重心であり、コイル開口内の磁束密度を考慮した磁束の重心のことではない。近距離無線通信時の通信相手側コイルとの対向位置で最も結合度の高い位置(ホットスポット)はNFC用コイル2のコイル開口の重心付近である。同様に、非接触充電時の充電台側コイルとの対向位置で最も結合度の高い位置(ホットスポット)は非接触充電用コイル3のコイル開口の重心付近である。本実施形態によれば、この2つのホットスポットを個別に設定できる。
【0105】
また、本実施形態によれば、給電コイル1は非接触充電用コイル3からより離れた位置に配置されている。そのため、給電コイル1と非接触充電用コイル3との不要結合をより抑制できる。
【0106】
また、本実施形態では、給電コイル1の巻回軸は非接触充電用コイル3の巻回軸の周方向に延びているため、給電コイル1と非接触充電用コイル3との結合を、より抑えることができる。
【0107】
《第11の実施形態》
図17(A)は第11の実施形態に係るアンテナ装置111の平面図、
図17(B)はアンテナ装置111の断面図である。基材シート5にスリット状の開口が形成されていて、その開口に磁性体シート4が挿入されている。この例では、NFC用コイル2のコイル開口の重心は非接触充電用コイル3のコイル開口の重心とは平面視で互いにずれた位置にある。そのため、近距離無線通信のホットスポットと非接触充電のホットスポットを個別に設定できる。
【0108】
《第12の実施形態》
図18は第12の実施形態に係るアンテナ装置112の主要部の断面図である。NFC用コイル2は筐体8の内面に形成されている。筐体8はエンジニアリング・プラスチックの成形体であり、NFC用コイル2は例えばLaser Direct Structuring(LDS)工法で形成されている。非接触充電用コイル3は銅線を所定回巻回してリング状の成形した巻線型のコイルであり、基材シート5に搭載されている。
【0109】
本実施形態のように、比較的巻回数が少なくて済むNFC用コイルは筐体に一体的に形成してもよい。また、NFC用コイルに比べて巻回数の必要な非接触充電用コイル3は巻線型コイルで構成してもよい。これらの構成によって、占有面積の小さなアンテナ装置を構成できる。
【0110】
《第13の実施形態》
図19は第13の実施形態に係るアンテナ装置113の主要部の断面図である。
図19に表れているように、基材シート5の上面にNFC用コイル2および非接触充電用コイル3が形成されている。基材シート5の下面に、平面視でNFC用コイル2の主要部および非接触充電用コイル3に重なる位置に磁性体シート4が貼付されている。また、NFC用コイル2の引き出し部の上面に磁性体シート4Aが貼付されている。基材シート5および磁性体シート4は金属部材83の上面に沿って設けられている。
【0111】
金属部材83には2つのスリット状の開口が形成されていて、基材シート5の対向する2辺は金属部材83の2つの開口に挿入されている。プリント配線板6の下面の、NFC用コイル2の引き出し部に近接する位置に給電コイル1が実装されている。プリント配線板6にはピン端子62が設けられていて、非接触充電用コイルの2つの端子はこのピン端子に接続される。
【0112】
本実施形態によれば、非接触充電用コイル3と給電コイル1との間に、導電性部材の一例である金属部材83が介在しているので、非接触充電用コイル3と給電コイル1との不要結合がより確実に防止される。
【0113】
なお、本実施形態では、給電コイル1は、プリント配線板6のNFC用コイル2と対向する面とは反対の面に配置されている。これまでの実施形態ではプリント配線板6内に面状に拡がるグランド電極61が配置されていたが、本実施形態ではグランド電極61は配置されていない。このように、グランド電極61のような電磁シールドとして機能する導電性部材が給電コイル1とNFC用コイル2との間に配置されない構成であれば、給電コイル1はプリント配線板6のNFC用コイル2と対向する面とは反対の面に配置してもよい。
【0114】
《第14の実施形態》
第14の実施形態ではNFC用コイルの他の例について示す。
図20は本実施形態のNFC用コイルの分解斜視図である。このNFC用コイルは、基材シート5、絶縁体基材52、第1コイル2A、第2コイル2Bを備えている。第1コイル2Aと第2コイル2Bはそれぞれ矩形スパイラル状にパターン化された導体であり、平面視で同方向に電流が流れる状態で容量結合するようにパターン化されている。同一方向からの平面視で、一方のコイル導体に時計回りの電流が流れるとき、他方のコイル導体にも時計回りに電流が流れるように、二つのコイル導体はパターン化されている。
【0115】
本実施形態のNFC用コイルは、第1コイル2A、第2コイル2Bのインダクタンス成分、第1コイル2Aと第2コイル2Bとの間に生じるキャパシタンス成分を含み、これによりLC共振回路が構成される。したがって、例えば
図1(A)に示したような実装部品としてのキャパシタ7は不要である。
【0116】
なお、上記キャパシタ7を実装する代わりに、スパイラル状コイルの両端を対向させて、その間に容量を生じさせてもよい。また、絶縁体基材の一方主面側にはスパイラル状コイルを形成し、他方主面側にはコイルを形成せずに容量形成用の電極のみを形成することにより、スパイラル状コイルと電極との間で容量を生じさせてもよい。
【0117】
以上に示した各実施形態では、近距離無線通信システムの例として、13.56MHz帯のNFCを例に挙げたが、その他に例えば5MHz以下の通信システムに適用することもできる。
【0118】
以上に示した各実施形態では、近距離無線通信システムを第1伝送システム、非接触充電システムを第2伝送システム、とする例を示したが、非接触充電システムを第1伝送システム、近距離無線通信システムを第2伝送システム、とする構成にも適用できる。その場合、非接触充電システム用コイルとキャパシタが、非接触充電システムのバンドパスフィルタとして機能する。近距離無線通信システムの伝送周波数帯と、非接触充電システムの伝送周波数帯は異なるので、そのバンドパスフィルタは、近距離無線通信システムの信号を阻止する。このことにより、アンテナ装置から相手側に送信する近距離無線通信システムの信号のエネルギーが非接触充電システム側の回路に取られて、近距離無線通信が阻害されることを防止できる。
【0119】
以上に示した各実施形態では、ワイヤレス電力伝送システムとして非接触充電システムの例を挙げたが、二次電池の充電用に限らず、ワイヤレスで電力を伝送するシステムに同様に適用できる。
【0120】
また、以上に示した各実施形態では、近距離無線通信システムおよびワイヤレス電力伝送システムに適用される例を示したが、規格の異なる2つの近距離無線通信システムにも同様に適用できる。