(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属膜は、前記金属−半導体接合をなす接合面から前記層間絶縁膜上にわたって設けられ、前記層間絶縁膜を介して前記第3の第2導電型半導体領域の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記金属膜の端部は、前記第3の第2導電型半導体領域と前記第4の第2導電型半導体領域との境界で終端していることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
前記第4の第2導電型半導体領域の不純物濃度は、前記第3の第2導電型半導体領域の不純物濃度の0.4倍以上0.7倍以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置。
前記金属膜は、IVa族金属、Va族金属、VIa族金属、カーボンまたはシリコン、もしくはこれらの金属のうちの2元素または3元素を含む複合膜であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の半導体装置。
前記第1導電型半導体基板の、前記第1導電型半導体堆積層が設けられた面の結晶学的面指数は、(000−1)に対して平行な面もしくは10度以内に傾いた面であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の半導体装置。
シリコンよりもバンドギャップの広い半導体からなる第1導電型半導体基板の表面に、シリコンよりもバンドギャップの広い半導体からなり、かつ前記第1導電型半導体基板よりも不純物濃度の低い第1導電型半導体堆積層を堆積する工程と、
活性領域において前記第1導電型半導体堆積層の表面層に、第1の第2導電型半導体領域を選択的に形成する工程と、
前記第1導電型半導体堆積層上に、前記第1の第2導電型半導体領域、および、前記第1導電型半導体堆積層の、隣り合う前記第1の第2導電型半導体領域に挟まれた部分のみを覆う、前記第1の第2導電型半導体領域よりも不純物濃度が低く、かつシリコンよりもバンドギャップの広い半導体からなる第2導電型半導体堆積層を選択的に形成する工程と、
前記第2導電型半導体堆積層を深さ方向に貫通して前記第1導電型半導体堆積層に達する第1導電型ウェル領域を形成する工程と、
前記第2導電型半導体堆積層の内部に、第1導電型ソース領域を選択的に形成する工程と、
前記第1導電型半導体堆積層の、前記第1の第2導電型半導体領域よりも外周側の表面層に、前記第1の第2導電型半導体領域に接して、かつ前記第1の第2導電型半導体領域の周囲を囲むように、前記第1の第2導電型半導体領域よりも不純物濃度の低い第2の第2導電型半導体領域を選択的に形成する工程と、
前記第1導電型半導体堆積層の、前記第2の第2導電型半導体領域よりも外周側の表面層に、前記第2の第2導電型半導体領域と離して、かつ前記第2の第2導電型半導体領域の周囲を囲むように、前記第1の第2導電型半導体領域よりも不純物濃度の低い第3の第2導電型半導体領域を選択的に形成する工程と、
前記第1導電型半導体堆積層の、前記第3の第2導電型半導体領域よりも外周側の表面層に、前記第3の第2導電型半導体領域に接して、かつ前記第3の第2導電型半導体領域の周囲を囲むように、前記第3の第2導電型半導体領域よりも不純物濃度の低い第4の第2導電型半導体領域を選択的に形成する工程と、
前記第1導電型半導体堆積層の表面に、前記第3の第2導電型半導体領域および前記第4の第2導電型半導体領域を覆う層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第2導電型半導体堆積層の、前記第1導電型ウェル領域を除いた領域で、かつ前記第2導電型半導体堆積層よりも不純物濃度が高い第2導電型コンタクト領域を形成する工程と、
前記第1導電型ソース領域と前記第1導電型ウェル領域とに挟まれた部分の表面上に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記第1導電型ソース領域および前記第2導電型コンタクト領域に接し、前記第2導電型半導体堆積層と金属−半導体接合をなす金属膜からなるソース電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数(結晶学的面指数)の表記において、“−”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“−”を付けることで負の指数をあらわしている。
【0023】
(参考例1)
本発明にかかる半導体装置は、例えばシリコン(Si)よりもバンドギャップの広い半導体(以下、ワイドバンドギャップ半導体とする)を用いて構成される。参考例1においては、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いて作製(製造)された炭化珪素半導体装置について、接合障壁ショットキー(JBS:Junction Barrier Shottoky)構造のダイオードを例に説明する。
図1は、参考例1にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
図1に示すように、参考例1にかかる炭化珪素半導体装置は、例えばn
+型炭化珪素基板(第1導電型半導体基板)1の主面上にn型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型半導体堆積層)2が堆積されたエピタキシャル基板を備える。
【0024】
n
+型炭化珪素基板1は、例えば窒素(N)がドーピングされた炭化珪素単結晶基板である。n型炭化珪素エピタキシャル層2は、n
+型炭化珪素基板1よりも低い不純物濃度で例えば窒素がドーピングされてなる低濃度n型ドリフト層である。以下、n
+型炭化珪素基板1単体、またはn
+型炭化珪素基板1とn型炭化珪素エピタキシャル層2とを併せて炭化珪素半導体基体(半導体チップ)とする。n型炭化珪素エピタキシャル層2のn
+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体のおもて面側)の表面層(以下、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面層とする)には、p
+型領域(第1の第2導電型半導体領域)3a、p
-型領域(第2の第2導電型半導体領域)3b、JBS構造を構成するp
+型領域(第5の第2導電型半導体領域)4、終端構造を構成する第1のp
-型領域(第3の第2導電型半導体領域)5aおよび第2のp
--型領域(第4の第2導電型半導体領域)5bが選択的に設けられている。
【0025】
p
+型領域3aは、ダイオードの素子構造が形成された活性領域101の周囲を囲む耐圧構造部102から活性領域101にわたって設けられている。p
+型領域3aの活性領域101に設けられた部分は、後述するショットキー電極9に接する。p
-型領域3bは、p
+型領域3aよりも炭化珪素半導体基体のチップ外周側にp
+型領域3aに接して設けられ、当該p
+型領域3aの周囲を囲む。活性領域101は、オン状態のときに電流が流れる領域である。耐圧構造部102は、n型ドリフト層の基体おもて面側の電界を緩和し耐圧を保持する領域である。
【0026】
p
+型領域3aは、p
-型領域3bおよび第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bよりも不純物濃度が高く、例えばアルミニウム(Al)がドーピングされてなる。p
+型領域3aの不純物濃度は例えば1.0×10
18/cm
3以上1.0×10
20/cm
3以下程度であるのが好ましく、p
-型領域3bの不純物濃度は例えば1.0×10
17/cm
3以上1.0×10
18/cm
3以下程度であるのが好ましい。その理由は、本発明の効果が顕著にあらわれるからである。p
+型領域3aおよびp
-型領域3bは、n型炭化珪素エピタキシャル層2とショットキー電極9との接合端部の電界集中を回避する機能を有する。すなわち、p
+型領域3aおよびp
-型領域3bは、n型炭化珪素エピタキシャル層2とショットキー電極9との接合端部にかかる電界を緩和する構造となっている。また、p
-型領域3bは、p
+型領域3aにかかる電界を緩和する機能を有する。
【0027】
p
+型領域4は、活性領域101においてn型炭化珪素エピタキシャル層2に所定の間隔で複数設けられ、JBS構造(素子構造部)を構成する(二点鎖線で示す部分)。p
+型領域4の不純物濃度は、p
+型領域3aの不純物濃度と等しくてもよい。第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bは、ダブルゾーン分離終端(STE)構造を構成する。STE構造とは、電界緩和構造を構成するp型領域(p
+型領域3aおよびp
-型領域3b)と離して終端構造を配置した構造である。ダブルゾーンSTE構造とは、終端構造を構成する不純物濃度の異なる2つのp型領域(第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5b)を互いに接するように並列に配置した構成のSTE構造である。
【0028】
具体的には、第1のp
-型領域5aは、p
-型領域3bよりもチップ外周側にp
-型領域3bと離れて設けられ、当該p
-型領域3bの周囲を囲む。すなわち、第1のp
-型領域5aとp
-型領域3bとの間には、炭化珪素半導体基体のおもて面に露出されるようにn型炭化珪素エピタキシャル層2が介在する。第1のp
-型領域5aの不純物濃度は、p
-型領域3bの不純物濃度と等しくてもよい。第2のp
--型領域5bは、第1のp
-型領域5aよりもチップ外周側に第1のp
-型領域5aに接して設けられ、当該第1のp
-型領域5aの周囲を囲む。すなわち、耐圧構造部102には、活性領域101側からチップ外周側へ向かって、p
+型領域3a、p
-型領域3b、n型炭化珪素エピタキシャル層2の一部、第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bが順に並列に配置されている。
【0029】
p
+型領域4、第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bは、それぞれ例えばアルミニウムがドーピングされてなる。第1のp−型領域5aの不純物濃度は、例えば1.0×10
17/cm
3以上1.0×10
18/cm
3以下程度であるのが好ましい。その理由は、所望の耐圧が得やすくなるとともに、本発明の効果が顕著にあらわれるからである。第2のp
--型領域5bの不純物濃度は、第1のp
-型領域5aの不純物濃度よりも低い。好ましくは、第2のp
--型領域5bの不純物濃度は、例えば第1のp
-型領域5aの不純物濃度の0.4倍以上0.7倍以下程度であるのがよい。その理由は、本発明の効果が顕著にあらわれるからである。第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bは、活性領域101と耐圧構造部102との境界付近の電界をさらに分散させる機能を有する。
【0030】
耐圧構造部102には、p
+型領域3aのp
-型領域3b側の部分、p
-型領域3b、n型炭化珪素エピタキシャル層2の、p
-型領域3bと第1のp
-型領域5aとに挟まれた部分、および第1,2のp
-型領域5a,5bの表面を覆うように層間絶縁膜6が設けられている。STE構造を覆う層間絶縁膜6によって、第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bは活性領域101の素子構造部と電気的に絶縁されている。n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面(炭化珪素半導体基体のおもて面)には、層間絶縁膜6を貫通するコンタクトホールを介してショットキー電極9が設けられている。ショットキー電極9は、活性領域101から耐圧構造部102の一部にわたって設けられている。
【0031】
具体的には、ショットキー電極9は、活性領域101において、層間絶縁膜6のコンタクトホールに露出するn型炭化珪素エピタキシャル層2の表面全面を覆い、p
+型領域3aの活性領域101に設けられた部分に接する。また、ショットキー電極9は、活性領域101から耐圧構造部102へとわたって設けられ、層間絶縁膜6上に張り出している。ショットキー電極9の端部は、例えばp
+型領域3aの上方(層間絶縁膜6の、p
+型領域3aを覆う部分上)で終端している。ショットキー電極9は、n型炭化珪素エピタキシャル層2とショットキー接合を形成し、アノード電極を構成する。
【0032】
ショットキー電極9は、次の材料でできているのがよい。その理由は、本発明の効果が顕著にあらわれるからである。ショットキー電極9は、例えば、IVa族金属、Va族金属、VIa族金属、カーボンまたはシリコンでできているのがよい。または、ショットキー電極9は、IVa族金属、Va族金属、VIa族金属、カーボンおよびシリコンのうちの2元素または3元素を含む複合膜でできているのがよい。特に、ショットキー電極9は、チタン(Ti)、カーボンまたはシリコンでできている、もしくは、チタン、カーボンおよびシリコンのうちの2元素または3元素を含む複合膜であるのが好ましい。さらに好ましくは、ショットキー電極9は、n型炭化珪素エピタキシャル層2とショットキー接合を形成する部分が例えばチタンでできているのがよい。ショットキー電極9とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのショットキー障壁高さは、参考例1にかかる炭化珪素半導体装置を高耐圧半導体装置として使用する場合には、例えば1eV以上であるのが好ましい。また、ショットキー電極9のショットキー障壁高さは、参考例1にかかる炭化珪素半導体装置を電源装置として使用する場合には、例えば0.5eV以上1eV未満であるのが好ましい。
【0033】
ショットキー電極9上には、例えばアルミニウムでできた電極パッド10が設けられている。電極パッド10は、活性領域101から耐圧構造部102にわたって設けられている。電極パッド10の端部は、ショットキー電極9上で終端していてもよい。STE構造上には、ショットキー電極9および電極パッド10の各端部を覆うように、例えばポリイミドからなるパッシベーション膜などの保護膜11が設けられている。保護膜11は、放電防止の機能を有する。n
+型炭化珪素基板1のn型炭化珪素エピタキシャル層2側に対して反対側の表面(炭化珪素半導体基体の裏面)には、n
+型炭化珪素基板1とオーミック接合8を形成する裏面電極(オーミック電極)7が設けられている。裏面電極7は、カソード電極を構成する。
【0034】
次に、参考例1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について、例えば600V以上の耐圧クラスのJBS構造の高耐圧ダイオードを作製する場合を例に説明する。
図2〜4は、参考例1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である。まず、
図2に示すように、例えば1×10
18/cm
3の不純物濃度で窒素がドーピングされた例えば厚さ300μm程度のn
+型炭化珪素基板1を用意する。n
+型炭化珪素基板1の主面は、例えば(0001)面であってもよい。次に、n
+型炭化珪素基板1の主面上に、1.0×10
16/cm
3の不純物濃度で窒素がドーピングされた例えば厚さ10μm程度のn型炭化珪素エピタキシャル層2を成長させる。
【0035】
次に、
図3に示すように、フォトリソグラフィおよび第1イオン注入によって、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面層に、終端構造を構成するp
+型領域3aおよびJBS構造を構成するp
+型領域4を選択的に形成する。p
+型領域3a,4は、例えばアルミニウムなどのp型不純物を第1イオン注入し、例えばn型炭化珪素エピタキシャル層2の表面(炭化珪素半導体基体のおもて面)から0.5μm程度の深さまでのボックスプロファイルの不純物濃度が3×10
19/cm
3程度になるように形成する。
【0036】
p
+型領域3a,4を形成するための第1イオン注入は、加速エネルギーおよびドーピング濃度を例えば5段階に変化させて行う多段イオン注入としてもよい。この場合、例えば、第1〜第5段のイオン注入の加速エネルギーおよびドーピング濃度は、それぞれ、300keVおよび5×10
14個/cm
2、200keVおよび3×10
14個/cm
2、150keVおよび3×10
14個/cm
2、100keVおよび2×10
14個/cm
2、50keVおよび3×10
14個/cm
2であってもよい。
【0037】
次に、
図4に示すように、フォトリソグラフィおよび第2イオン注入によって、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面層に、電界緩和構造を構成するp
-型領域3bを選択的に形成する。フォトリソグラフィおよび第3イオン注入によって、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面層に、STE構造を構成する第1のp
-型領域5aを選択的に形成する。フォトリソグラフィおよび第4イオン注入によって、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面層に、STE構造を構成する第2のp
--型領域5bを選択的に形成する。この第2、第3、第4イオン注入では、p
-型領域3b、第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bを形成するための各イオン注入を順に行う。これら各イオン注入の順序は種々変更可能である。p
-型領域3b、第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bを形成するための各イオン注入のドーパントおよびドーパント濃度は例えば次の値をとる。
【0038】
p
-型領域3bおよび第1のp
-型領域5aの形成領域に対応する部分には、例えばアルミニウムなどのp型不純物を3×10
17/cm
3のドーパント濃度で注入する。第2のp
--型領域5bの形成領域に対応する部分には、例えばアルミニウムなどのp型不純物を1.5×10
17/cm
3のドーパント濃度で注入する。これらのイオン注入後に、例えばアルゴン(Ar)雰囲気中において1650℃の温度で不純物を活性化させるための熱処理(アニール)を240秒間行い、n型炭化珪素エピタキシャル層2に注入されたp型不純物を活性化させる。
【0039】
次に、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面(炭化珪素半導体基体のおもて面)全体に、層間絶縁膜6として例えば0.5μmの厚さの酸化膜を形成する。次に、層間絶縁膜6をパターニングして選択的に除去することで層間絶縁膜6を貫通するコンタクトホールを形成し、活性領域101におけるn型炭化珪素エピタキシャル層2およびp
+型領域3aの活性領域101側を露出させる。これにより、p
+型領域3aのp
-型領域3b側の部分、p
-型領域3b、n型炭化珪素エピタキシャル層2の、p
-型領域3bと第1のp
-型領域5aとに挟まれた部分、第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bの表面を覆うように層間絶縁膜6が形成される。
【0040】
次に、n
+型炭化珪素基板1の表面(炭化珪素半導体基体の裏面)に、裏面電極7として例えばニッケル(Ni)膜を例えば50nmの厚さで成膜(形成)する。次に、例えばアルゴン雰囲気中において1100℃の温度で2分間の熱処理を行う。この熱処理により、n
+型炭化珪素基板1と裏面電極7とのオーミック接合8が形成される。次に、炭化珪素半導体基体のおもて面側の全面に、層間絶縁膜6を貫通するコンタクトホールを埋め込むように、ショットキー電極9として例えばチタン膜を100nmの厚さで成膜する。次に、ショットキー電極9の端部がp
+型領域3aの上方で終端するように、耐圧構造部102上のショットキー電極9を選択的に除去する。
【0041】
次に、アルゴン雰囲気中において500℃の温度で5分間の熱処理を行う。この熱処理により、n型炭化珪素エピタキシャル層2とショットキー電極9とのショットキー接合が形成される。次に、炭化珪素半導体基体のおもて面の全面に、ショットキー電極9を覆うように、電極パッド10として例えばアルミニウム膜を5μmの厚さで堆積する。次に、電極パッド10の端部がショットキー電極9上で終端するように、電極パッド10を選択的に除去する。その後、電極パッド10上に、放電防止のためのポリイミドからなる保護膜11を例えば8μmの厚さで形成することにより、
図1に示すJBS構造のダイオードが完成する。
【0042】
以上、説明したように、参考例1によれば、活性領域と耐圧構造部との境界付近において電界緩和構造を構成するp型領域と、耐圧構造部において終端構造を構成するp型領域とを離して配置したSTE構造とすることで、活性領域と耐圧構造部との境界付近に最も電界が集中するようにすることができる。このため、耐圧構造部において層間絶縁膜と炭化珪素半導体基体との界面(酸化膜/SiC界面)に大電流が流れることを回避することができる。これにより、耐圧構造部の端部(チップ端部)でなく、活性領域と耐圧構造部との境界付近で耐圧破壊を起こす構造とすることができ、耐圧構造部の耐量を向上させることができる。これによって、装置全体の耐量を向上させることができるため、半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、参考例1によれば、ダブルゾーンSTE構造とすることにより、半導体材料としてワイドバンドギャップ半導体を用いて高耐圧半導体装置を作製する場合であっても、信頼性の高い高耐圧半導体装置を作製することができる。
【0043】
(参考例2)
次に、参考例2にかかる炭化珪素半導体装置の構成について説明する。
図5は、参考例2にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。参考例2にかかる炭化珪素半導体装置が参考例1にかかる炭化珪素半導体装置と異なる点は、ショットキー電極9がSTE構造を覆う層間絶縁膜6上にまで張り出している点である。
図5には、ショットキー電極9の端部が、STE構造を構成する第1のp
-型領域5aの上方(層間絶縁膜6の、第1のp
-型領域5aを覆う部分上)で終端している場合を図示している。
【0044】
ショットキー電極9は、層間絶縁膜6を介して第1のp
-型領域5aの少なくとも一部を覆っていればよく、層間絶縁膜6を介して第1のp
-型領域5aの全体を覆っていてもよい。すなわち、ショットキー電極9の端部は、第1のp
-型領域5aと第2のp
--型領域5bとの境界(第1のp
-型領域5aの外周上)まで延在していてもよいし、第2のp
--型領域5bの上方まで延在していてもよい。参考例2にかかる炭化珪素半導体装置のショットキー電極9の端部の配置以外の構成は、参考例1と同様である。
【0045】
以上、説明したように、参考例2によれば、参考例1と同様の効果を得ることができる。また、参考例2によれば、ショットキー電極の層間絶縁膜上に張り出させた部分をフィールドプレートとして機能させることができる。このため、ショットキー電極の層間絶縁膜上に張り出させた部分によって半導体装置の動作時に耐圧構造部に生じる電界を分散させることができ、より耐量を向上させることができる。また、参考例2によれば、ショットキー電極の層間絶縁膜上に張り出させた部分によって、半導体装置の動作時に耐圧構造部に生じる電荷を外部へ放出させることができる。このため、半導体装置の動作時に耐圧が変動することを抑制することができ、半導体装置の信頼性をさらに向上させることができる。
【0046】
(実施の形態1)
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成について説明する。
図6は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置が参考例1にかかる炭化珪素半導体装置と異なる点は、ダイオードの素子構造に代えて、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の素子構造を形成した点である。実施の形態1においては、縦型プレーナーゲート構造のMOSFETを例に説明する。また、n
+型炭化珪素基板1、n型炭化珪素エピタキシャル層2および後述するp型炭化珪素エピタキシャル層13を併せて炭化珪素半導体基体とする。
【0047】
図6に示すように、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置は、ドレイン領域となるn
+型炭化珪素基板1の主面上に、n型炭化珪素エピタキシャル層2が堆積されている。n
+型炭化珪素基板1およびn型炭化珪素エピタキシャル層2は、参考例1のn
+型炭化珪素基板およびn型炭化珪素エピタキシャル層と同様である。n
+型炭化珪素基板1のn型炭化珪素エピタキシャル層2側に対して反対側の表面(炭化珪素半導体基体の裏面)には、参考例1と同様に裏面電極7が設けられている。裏面電極7は、ドレイン電極を構成する。
【0048】
活性領域101において、炭化珪素半導体基体のおもて面側には、MOS(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)構造(素子構造部)が形成されている。具体的には、活性領域101において、n型炭化珪素エピタキシャル層2のn
+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体のおもて面側)の表面層には、p
+型領域(以下、第1のp
+型ベース領域(第1の第2導電型半導体領域)とする)12が選択的に設けられている。第1のp
+型ベース領域12は、例えばアルミニウムがドーピングされてなる。
【0049】
第1のp
+型ベース領域12の表面、およびn型炭化珪素エピタキシャル層2の、隣り合う第1のp
+型ベース領域12に挟まれた部分の表面上には、p型炭化珪素エピタキシャル層(第2導電型半導体堆積層)13が選択的に堆積されている。p型炭化珪素エピタキシャル層13は、活性領域101にのみ堆積されている。p型炭化珪素エピタキシャル層13の不純物濃度は、第1のp
+型ベース領域12の不純物濃度よりも低い。p型炭化珪素エピタキシャル層13は、例えばアルミニウムがドーピングされてなる。
【0050】
p型炭化珪素エピタキシャル層13の第1のp
+型ベース領域12上の部分には、n
+型ソース領域14およびp
+型コンタクト領域15が設けられている。n
+型ソース領域14およびp
+型コンタクト領域15は互いに接する。p
+型コンタクト領域15は、n
+型ソース領域14よりも耐圧構造部102側に配置されている。また、p
+型コンタクト領域15は、p型炭化珪素エピタキシャル層13を深さ方向に貫通して第1のp
+型ベース領域12に達する。
【0051】
p型炭化珪素エピタキシャル層13のn型炭化珪素エピタキシャル層2上の部分には、p型炭化珪素エピタキシャル層13を深さ方向に貫通してn型炭化珪素エピタキシャル層2に達するn型ウェル領域16が設けられている。n型ウェル領域16は、n型炭化珪素エピタキシャル層2とともにドリフト領域として機能する。p型炭化珪素エピタキシャル層13の、n型ウェル領域16を除いた領域(以下、第2のp型ベース領域(第2導電型ベース領域)13とする)は、第1のp
+型ベース領域12とともにベース領域として機能する。
【0052】
第2のp型ベース領域13の、n
+型ソース領域14とn型ウェル領域16とに挟まれた部分の表面上には、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極18が設けられている。ゲート電極18は、ゲート絶縁膜17を介して、n型ウェル領域16の表面上に設けられていてもよい。層間絶縁膜20は、ゲート電極18を覆うように、炭化珪素半導体基体のおもて面側の全面に設けられている。ソース電極19は、層間絶縁膜20を貫通するコンタクトホールを介して、n
+型ソース領域14およびp
+型コンタクト領域15に接しており、炭化珪素半導体基体とのオーミック接合を形成している。
【0053】
また、ソース電極19は、層間絶縁膜20によってゲート電極18と電気的に絶縁されている。ソース電極19の端部は、層間絶縁膜20上に延在しており、第1のp
+型ベース領域12の上方(層間絶縁膜20の、第1のp
+型ベース領域12を覆う部分上)で終端している。ソース電極19上には、電極パッド21が設けられている。電極パッド21の端部は、ソース電極19上で終端している。耐圧構造部102上には、ソース電極19および電極パッド21の各端部を覆うように、例えばポリイミドからなるパッシベーション膜などの保護膜22が設けられている。保護膜22は、放電防止の機能を有する。
【0054】
耐圧構造部102には、第1のp
+型ベース領域12よりもチップ外周側に第1のp
+型ベース領域12に接し、かつ第1のp
+型ベース領域12の周囲を囲むp
-型領域3bが設けられている。p
-型領域3bよりも外周側には、参考例1と同様に、第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bが設けられている。すなわち、実施の形態1においては、耐圧構造部102に、活性領域101側からチップ外周側へ向かって、第1のp
+型ベース領域12、p
-型領域3b、n型炭化珪素エピタキシャル層2の一部、第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bが順に並列に配置されている。
【0055】
p
-型領域3bの不純物濃度は、第1のp
+型ベース領域12の不純物濃度よりも低い。第1のp
-型領域5aの不純物濃度は、第1のp
+型ベース領域12の不純物濃度よりも低い。STE構造を構成する第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bは、層間絶縁膜20に覆われており、層間絶縁膜20によって活性領域の素子構造部と電気的に絶縁されている。
図6には、活性領域101に1つのMOS構造のみを図示しているが、活性領域101に複数のMOS構造が並列に配置されていてもよい。
【0056】
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について、例えば1200Vの耐圧クラスのMOSFETを作成する場合を例に説明する。まず、例えば2×10
19/cm
3程度の不純物濃度で窒素がドーピングされたn
+型炭化珪素基板1を用意する。n
+型炭化珪素基板1は、主面が例えば<11−20>方向に4度程度のオフ角を有する(000−1)面であってもよい。次に、n
+型炭化珪素基板1の主面上に、1.0×10
16/cm
3の不純物濃度で窒素がドーピングされた厚さ10μmのn型炭化珪素エピタキシャル層2を成長させる。
【0057】
次に、フォトリソグラフィおよび第1イオン注入によって、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面層に、第1のp
+型ベース領域12を選択的に形成する。この第1イオン注入では、例えば、アルミニウムをドーパントとし、第1のp
+型ベース領域12の不純物濃度が1.0×10
18/cm
3程度となるようにドーズ量を設定してもよい。第1のp
+型ベース領域12の幅および深さは、それぞれ13μmおよび0.5μmであってもよい。隣り合う第1のp
+型ベース領域12間の距離は、例えば2μmであってもよい。
【0058】
次に、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面に、第2のp型ベース領域13となるp型炭化珪素エピタキシャル層を例えば0.5μmの厚さで成長させる。このとき、例えば、第2のp型ベース領域13の不純物濃度が1.0×10
16/cm
3となるようにアルミニウムがドーピングされたp型炭化珪素エピタキシャル層を成長させてもよい。
【0059】
次に、フォトリソグラフィおよび第2イオン注入によって、第2のp型ベース領域13のn型炭化珪素エピタキシャル層2上の部分の導電型を反転させて、n型ウェル領域16を選択的に形成する。この第2イオン注入では、例えば、窒素などのn型不純物をドーパントとして用いることで、n型炭化珪素エピタキシャル層2の導電型を反転させる。第2イオン注入のドーズ量は、例えばn型ウェル領域16の不純物濃度が5.0×10
16/cm
3となるように設定してもよい。n型ウェル領域16の幅および深さは、それぞれ2.0μmおよび0.6μmであってもよい。
【0060】
次に、フォトリソグラフィおよび第3イオン注入によって、第2のp型ベース領域13の第1のp
+型ベース領域12上の部分の表面層に、n
+型ソース領域14を選択的に形成する。次に、フォトリソグラフィおよび第4イオン注入によって、第2のp型ベース領域13の第1のp
+型ベース領域12上の部分の表面層に、p
+型コンタクト領域15を選択的に形成する。次に、エッチングによって、第2のp型ベース領域13の、耐圧構造部102上の部分を例えば0.7μmの深さでn型炭化珪素エピタキシャル層2の表面層ごと除去することで、耐圧構造部102におけるn型炭化珪素エピタキシャル層2を露出させる。
【0061】
次に、フォトリソグラフィおよび第5イオン注入によって、耐圧構造部102におけるn型炭化珪素エピタキシャル層2のエッチングによる露出部分の表面層に、p
-型領域3bおよび第1のp
-型領域5aを選択的に形成する。この第5イオン注入では、例えば、アルミニウムをドーパントとし、ドーズ量を2.0×10
13/cm
2としてもよい。次に、フォトリソグラフィおよび第6イオン注入を行い、耐圧構造部102におけるn型炭化珪素エピタキシャル層2のエッチングによる露出部分の表面層に、第2のp
--型領域5bを選択的に形成する。この第6イオン注入では、例えば、アルミニウムをドーパントとし、ドーズ量を1.0×10
13/cm
2としてもよい。
【0062】
次に、n
+型ソース領域14、p
+型コンタクト領域15、n型ウェル領域16、第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bを形成するために注入した不純物を活性化させるための熱処理(アニール)を行う。このとき、熱処理温度および熱処理時間は、例えば、それぞれ1620℃および2分間であってもよい。n
+型ソース領域14、p
+型コンタクト領域15、n型ウェル領域16、第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bを形成する順序は種々変更可能である。
【0063】
次に、炭化珪素半導体基体のおもて面側を熱酸化し、例えば100nmの厚さでゲート絶縁膜17を形成する。この熱酸化は、例えば、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱処理によって行ってもよい。これにより、活性領域101から耐圧構造部102にわたって、第2のp型ベース領域13およびn型炭化珪素エピタキシャル層2の表面層に形成された各領域がゲート絶縁膜17で覆われる。次に、ゲート絶縁膜17上に、ゲート電極18として、例えばリン(P)がドープされた多結晶シリコン層を形成する。
【0064】
次に、多結晶シリコン層をパターニングして選択的に除去し、第2のp型ベース領域13の、n
+型ソース領域14とn型ウェル領域16とに挟まれた部分上に多結晶シリコン層を残す。このとき、n型ウェル領域16上に多結晶シリコン層を残してもよい。次に、ゲート絶縁膜17を覆うように、層間絶縁膜20として例えばリンガラス(PSG:Phospho Silicate Glass)を1.0μmの厚さで成膜(形成)する。次に、層間絶縁膜20およびゲート絶縁膜17をパターニングして選択的に除去して、層間絶縁膜20およびゲート絶縁膜17を貫通するコンタクトホールを形成し、n
+型ソース領域14およびp
+型コンタクト領域15を露出させる。次に、層間絶縁膜20を平坦化するための熱処理(リフロー)を行う。
【0065】
次に、層間絶縁膜20の表面に、ソース電極19を形成する。このとき、層間絶縁膜20のコンタクトホールの内部にソース電極19を埋め込み、n
+型ソース領域14およびp
+型コンタクト領域15とソース電極19とを接触させる。次に、ソース電極19の端部が第1のp
+型ベース領域12の上方で終端するように、耐圧構造部102上のソース電極19を選択的に除去する。次に、n
+型炭化珪素基板1の表面(炭化珪素半導体基体の裏面)に、裏面電極7として例えばニッケル膜を成膜する。次に、例えば970℃の温度で熱処理し、n
+型炭化珪素基板1と裏面電極7とのオーミック接合8を形成する。
【0066】
次に、例えばスパッタリング法によって、炭化珪素半導体基体のおもて面の全面にソース電極19を覆うように、電極パッド21を堆積する。電極パッド21の層間絶縁膜20上の部分の厚さは、例えば5μmであってもよい。電極パッド21は、例えば、1%の割合でシリコンを含んだアルミニウム(Al−Si)で形成してもよい。次に、電極パッド21の端部がソース電極19上で終端するように、電極パッド21を選択的に除去する。次に、炭化珪素半導体基体のおもて面側に、ソース電極19および電極パッド21の各端部を覆うように保護膜22を形成する。そして、ニッケル膜の表面に、裏面電極7として例えばチタン、ニッケルおよび金(Au)をこの順に成膜することにより、
図6に示すMOSFETが完成する。
【0067】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、MOSFETの素子構成を形成した場合においても参考例1と同様の効果を得ることができる。
【0068】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構成について説明する。
図7は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置と異なる点は、ソース電極19がSTE構造を覆う層間絶縁膜20上にまで張り出している点である。具体的には、ソース電極19の端部は、STE構造を構成する第1のp
-型領域5aの上方(層間絶縁膜20の、第1のp
-型領域5aを覆う部分上)で終端している。
【0069】
ソース電極19は、層間絶縁膜20を介して第1のp
-型領域5aの少なくとも一部を覆っていればよく、層間絶縁膜20を介して第1のp
-型領域5aの全体を覆っていてもよい。すなわち、ソース電極19の端部は、第1のp
-型領域5aと第2のp
--型領域5bとの境界(第1のp
-型領域5aの外周上)まで延在していてもよいし、第2のp
--型領域5bの上方まで延在していてもよい。電極パッド21の端部は、ソース電極19の端部と同程度の位置まで延在していてもよい。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のソース電極19および電極パッド21の各端部の配置以外の構成は、実施の形態1と同様である。
【0070】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態2によれば、ソース電極および電極パッドの層間絶縁膜上に張り出させた部分をフィールドプレートとして機能させることができる。このため、ソース電極および電極パッドの層間絶縁膜上に張り出させた部分によって半導体装置の動作時に耐圧構造部に生じる電界を分散させることができ、より耐量を向上させることができる。また、実施の形態2によれば、ソース電極および電極パッドの層間絶縁膜上に張り出させた部分によって、半導体装置の動作時に耐圧構造部に生じる電荷を外部へ放出させることができる。このため、半導体装置の動作時に耐圧が変動することを抑制することができ、半導体装置の信頼性をさらに向上させることができる。
【0071】
(実施例)
次に、本発明にかかる炭化珪素半導体装置の耐圧特性について検証した。
図8Aは、実施例にかかる炭化珪素半導体装置の耐圧構造部の構成を示す断面図である。
図8Bは、比較例の炭化珪素半導体装置の耐圧構造部の構成を示す断面図である。
図8A,8Bでは、電極パッドおよび保護膜を図示省略する。まず、参考例2にしたがい、炭化珪素半導体からなるJBS構造のダイオード(以下、実施例とする)を作製した。具体的には、
図8Aに示すように、実施例においては、活性領域101と耐圧構造部102との境界付近において電界緩和構造を構成する耐圧構造部102側のp
-型領域3bと、耐圧構造部102において終端構造を構成する活性領域101側の第1のp
-型領域5aとをn型炭化珪素エピタキシャル層2の一部で分離したSTE構造としている。また、耐圧構造部102の層間絶縁膜6上にショットキー電極9を張り出させて、ショットキー電極9の層間絶縁膜6上の部分をフィールドプレートとした(符号Aで示す部分)。
【0072】
比較として、
図8Bに示すように、電界緩和構造をp
+型領域3aのみで構成し、このp
+型領域3aに接するように、終端構造を構成する活性領域101側の第1のp
-型領域5aを設けた従来のJBS構造のダイオード(以下、比較例とする)を作製した。比較例は、耐圧構造部102の層間絶縁膜6上にショットキー電極9を張り出させない構成とした(符号Bで示す部分)。比較例の、ショットキー電極9の端部の配置および第1のp
-型領域5aの配置以外の構成は実施例と同様である。このため、
図8Bでは、実施例と同様の構成に同一の符号を付している。また、実施例および比較例ともに、層間絶縁膜6の厚さを0.5μmとした。n型炭化珪素エピタキシャル層2の不純物濃度を1×10
16/cm
3とし、その厚さを10μmとした。第1のp
-型領域5aおよび第2のp
--型領域5bはともに、幅および深さをそれぞれ30μmおよび0.5μmとした。
【0073】
これら実施例および比較例について、第1のp
-型領域5aの不純物濃度を2×10
17/cm
3〜7×10
17/cm
3の範囲で変化させたときの耐圧特性のシミュレーション結果を
図9に示す。
図9は、実施例にかかる炭化珪素半導体装置の耐圧特性を示す特性図である。
図9には、第1のp
-型領域5aの不純物濃度を横軸に示し、耐圧を縦軸に示す。第2のp
--型領域5bの不純物濃度は、第1のp
-型領域5aの不純物濃度の半分の不純物濃度としている。また、実施例は、p
-型領域3bの幅および深さをそれぞれ4μmおよび0.5μmとし、p
-型領域3bと第1のp
-型領域5aとの間隔を3μmとしている。
図9に示す結果より、実施例は比較例と同等以上の耐圧特性が得られることが確認された。すなわち、本発明のように電界緩和構造と終端構造とを離して配置したSTE構造とした場合においても、電界緩和構造と終端構造とが接触している構成の従来構造と同等以上の耐圧特性が得られることが確認された。
【0074】
次に、上述した実施例および比較例の耐圧構造部102における電界分布をシミュレーションした結果をそれぞれ
図10A,10Bに示す。
図10Aは、実施例にかかる炭化珪素半導体装置の電界分布を示す特性図である。
図10Bは、比較例の炭化珪素半導体装置の電界分布を示す特性図である。
図10A,10Bには、電界の集中する層間絶縁膜6と炭化珪素半導体基体との界面(酸化膜/SiC界面)から0.5μmの深さのpn接合部分の電界強度を、第1のp
-型領域5aの不純物濃度ごとに示す。pn接合部分とは、電界緩和構造および終端構造を構成するp型領域と、n型炭化珪素エピタキシャル層2との間のpn接合である。また、
図10A,10Bには、活性領域101と耐圧構造部102との境界、すなわち層間絶縁膜6の活性領域101側の端部の位置(以下、原点X=0μmとする)から耐圧構造部102側(外周側)へ向かって所定距離の位置における電界分布を示す。
【0075】
図10Bに示す結果より、比較例では、原点Xから外周側に3μm離れた位置にあるp
+型領域3aと第1のp
-型領域5aとの境界b1、原点Xから外周側に33μm離れた位置にある第1のp
-型領域5aと第2のp
--型領域5bとの境界b2、および、原点Xから外周側に63μm離れた位置にある第2のp
--型領域5bの外周側の端部b3で電界集中が起こっていることが確認された。また、第1のp
-型領域5aの不純物濃度が3.0×10
17/cm
3以下の場合には、p
+型領域3aと第1のp
-型領域5aの境界b1での電界集中が最大となり、酸化膜/SiC界面に大電流は流れなかった。しかし、第1のp
-型領域5aの不純物濃度が4.0×10
17/cm
3以上では第1のp
-型領域5aと第2のp
--型領域5bの境界b2での電界集中が最大となり、第1のp
-型領域5aの不純物濃度が6.0×10
17/cm
3以上では第2のp
--型領域5bの外周側の端部b3での電界集中が最大となることで酸化膜/SiC界面に大電流が流れ、装置の信頼性が低下することが確認された。
【0076】
一方、
図10Aに示すように、実施例においては、原点Xから外周側に4μm離れた位置にあるp
-型領域3bとn型炭化珪素エピタキシャル層2との境界a1、原点Xから外周側に20μm離れた位置にあるショットキー電極9の端部a2、原点Xから外周側に34μm離れた位置にある第1のp
-型領域5aと第2のp
--型領域5bの境界a3、および、原点Xから外周側に64μm離れた位置にある第2のp
--型領域5bの外周側の端部a4で電界集中が起こっていることが確認された。また、第1のp
-型領域5aの不純物濃度が1.0×10
17/cm
3〜7.0×10
17/cm
3のすべての範囲において、p
-型領域3bとn型炭化珪素エピタキシャル層2との境界a1での電界集中が最大となった。そして、ショットキー電極9から炭化珪素半導体基体に直接大電流が流れ、酸化膜/SiC界面に流れないことが確認された。このため、実施例においては、耐圧構造部102において例えば終端構造(STE構造)を構成するp型領域に活性化率などにむらが生じても、酸化膜/SiC界面に大電流が流れない構造の、信頼性の高い耐圧構造部102を備えた装置を提供することができることが確認された。
【0077】
また、上記非特許文献1に開示されるように、活性化率は温度に依存し、100℃の温度変動で90%近くの差が生じる。このため、比較例のように電界緩和構造と終端構造とが接触している構成の従来構造では、第1のp
-型領域5aの不純物濃度を2×10
17/cm
3とするためにp型不純物を注入したとしても、活性化のための熱処理の温度差により活性化率が低くなり1400V以下の耐圧となってしまう。また、耐圧を向上させるために第1のp
-型領域5aの不純物濃度を高くしたとしても、第1のp
-型領域5a付近での耐圧破壊が生じ、半導体装置の信頼性が低下する。それに対して、実施例においては、
図9に示す結果より、第1のp
-型領域5aと第2のp
--型領域5bとの不純物濃度の比率を1:0.5としたときに、耐圧1400V以上を維持するには、第1のp
-型領域5aの不純物濃度を例えば2×10
17/cm
3以上7×10
17/cm
3以下程度の範囲にすればよいことがわかる。また、
図10Aに示す結果より、活性領域101と耐圧構造部102との境界付近に電界を集中させるためには、第1のp
-型領域5aの不純物濃度を例えば1.0×10
17/cm
3以上7.0×10
17/cm
3以下の範囲が好ましいことがわかる。
【0078】
また、図示省略するが、参考例1のようにショットキー電極9の層間絶縁膜上に張り出させた部分が短くフィールドプレートとしての効果が低い場合や、実施の形態1,4のように活性領域101にMOSFETの素子構造を形成した場合においても、実施例と同様にp
-型領域3bと第1のp
-型領域5aとをn型炭化珪素エピタキシャル層2の一部で分離したSTE構造の終端構造を設けているため、実施例と同様の効果が得られる。
【0079】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した実施の形態では、JBS構造のダイオードや縦型MOSFETを例に説明しているが、本発明は、活性領域を囲む耐圧構造部を備えたさまざまな構成の半導体装置に適用することが可能である。したがって、活性領域の素子構造を構成する各領域とワイドバンドギャップ半導体基体との接合は、金属−半導体接合を備えた構成や、絶縁体−半導体接合を備えた構成、またはその両方を備えた構成であってもよい。金属−半導体接合のみを備えた素子構造とは、例えばダイオードの素子構造である。金属−半導体接合と絶縁体−半導体接合とを備えた素子構造とは、例えばMOSFETの素子構造などである。
【0080】
また、上述した実施の形態では、炭化珪素半導体基体とショットキー接合を形成する金属材料としてチタンを例に説明しているが、炭化珪素半導体基体とのショットキー接合を形成することができればよく、他の材料を用いてショットキー電極を形成してもよい。また、STE構造の構成例としてダブルゾーンSTE構造について説明しているが、さらに、不純物濃度の異なる3つ以上のp型領域が接するように並列に配置された構成のマルチゾーンSTE構造としてもよい。また、上述した実施の形態では、耐圧構造部にSTE構造の終端構造を設けた場合を例に説明しているが、FLR構造のように複数のp型領域が所定間隔を空けて配置された構成のSTE構造としてもよい。
【0081】
また、上述した実施の形態では、炭化珪素でできた炭化珪素基板の(0001)面を主面とした場合を例に説明したが、これに限らず、基板主面の面方位や、基板を構成するワイドバンドギャップ半導体材料などを種々変更可能である。例えば、基板主面を(000−1)面としてもよいし、窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ半導体でできた半導体基板を用いてもよい。また、上述した実施の形態では、ショットキー電極やソース電極などのおもて面電極を用いてフィールドプレートを構成しているが、電極パッドやゲート電極、またはその他の金属電極を新たに設けるなど、おもて面電極以外の電極を用いてフィールドプレートを構成してもよい。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。