特許第6233553号(P6233553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233553
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20171113BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20171113BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20171113BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20171113BHJP
   B62D 117/00 20060101ALN20171113BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D101:00
   B62D113:00
   B62D117:00
   B62D119:00
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-539466(P2017-539466)
(86)(22)【出願日】2017年3月17日
(86)【国際出願番号】JP2017010877
【審査請求日】2017年7月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-61816(P2016-61816)
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】椿 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】北爪 徹也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭太
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−352001(JP,A)
【文献】 特開2010−058690(JP,A)
【文献】 特開2002−120744(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/088705(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
B62D 101/00 −137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシスト制御モードと舵角制御モードを切り換える機能を有し、アシスト制御部で演算された第1のアシスト制御指令値と、舵角制御部で演算された第1の舵角制御指令値とでモータ電流指令値を生成し、前記モータ電流指令値によりモータを駆動して車両の操舵系をアシスト制御する電動パワーステアリング装置において、
前記舵角制御部は、
目標操舵角及び実操舵角を入力して第1の舵角速度指令値を出力する位置制御部と、
前記第1の舵角速度指令値を舵角制御徐変ゲインに応じて徐変して上下限値を制限する徐変制限部と、
前記徐変制限部から出力される第2の舵角速度指令値を、実舵角速度及び舵角制御徐変ゲインに基づいて処理する速度制御部と、
前記速度制御部から出力される第1の舵角制御指令値を前記舵角制御徐変ゲインに応じて徐変して第2の舵角制御指令値を出力する第1の徐変部と、
で構成され、
前記アシスト制御部から出力される前記第1のアシスト制御指令値をアシスト制御徐変ゲインで徐変し、第2のアシスト制御指令値を出力する第2の徐変部を備え、
前記第2の舵角制御指令値及び前記第2のアシスト制御指令値に基づいて前記モータ電流指令値を生成することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記アシスト制御モードと前記舵角制御モードを切り換えるとき、前記舵角制御徐変ゲインと前記アシスト制御徐変ゲインが、各割合の合計値が1.0若しくは100%の関係で、かつ逆の関係で増加減する特性である請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記徐変制限部が、前記第1の舵角速度指令値を前記舵角制御徐変ゲインに応じて徐変する第3の徐変部と、前記第3の徐変部で徐変された徐変後舵角速度指令値の上下限値を制限し、第2の舵角速度指令値を出力するリミッタとで構成されている請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記リミッタの前記上下限値が、前記舵角制御徐変ゲインに応じて可変される請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記位置制御部が、前記目標操舵角及び前記実操舵角の位置偏差を求める第1の減算部と、前記位置偏差をゲイン倍して前記舵角速度指令値を出力するゲイン部とで構成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記速度制御部が、
前記第2の舵角速度指令値から前記実舵角速度を減算する第2の減算部と、
前記第2の減算部の減算結果を積分処理する積分部と、
前記実舵角速度を比例処理する比例部と、
前記積分部の積分結果から前記比例部の比例結果を減算する第3の減算部と、
前記第3の減算部の減算結果を前記舵角制御徐変ゲインにより徐変し、前記第1の舵角制御指令値を出力する第4の徐変部と、
で構成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の電動パワーテアリング装置。
【請求項7】
前記速度制御部が、
前記第2の舵角制御指令値から前記実舵角速度を減算する第2の減算部と、
前記第2の減算部からの速度偏差を前記舵角制御徐変ゲインにより徐変し、速度偏差を出力する乗算部と、
前記速度偏差を積分処理する積分部と、
前記実舵角速度を比例処理する比例部と、
前記積分部の積分結果から前記比例部の比例結果を減算し、前記第1の舵角制御指令値を出力する減算部と、
で構成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の電動パワーテアリング装置。
【請求項8】
前記速度制御部が、
前記第2の舵角速度指令値から前記実舵角速度を減算する第2の減算部と、
前記第2の減算部からの速度偏差を積分処理する積分部と、
前記実舵角速度を比例処理する比例部と、
前記積分部の積分結果を前記舵角制御徐変ゲインにより徐変し、第3の舵角制御指令値を出力する第4の徐変部と、
前記第3の舵角制御指令値から前記比例部の比例結果を減算し、前記第1の舵角制御指令値を出力する第3の減算部と、
で構成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の電動パワーテアリング装置。
【請求項9】
前記速度制御部が、
前記第2の舵角速度指令値から前記実舵角速度を減算する第2の減算部と、
前記第2の減算部からの速度偏差を積分処理する積分部と、
前記実舵角速度を前記舵角制御徐変ゲインにより徐変して徐変後舵角制御指令値を出力する第4の徐変部と、
前記徐変後舵角制御指令値を比例処理する比例部と、
前記積分部の積分結果から前記比例部の比例結果を減算し、前記第1の舵角制御指令値を出力する第3の減算部と、
で構成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の電動パワーテアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵制御において自動操舵制御モード(駐車支援等の舵角制御モード)及び手動操舵制御モード(アシスト制御モード)の切換機能を有し、モータ電流指令値によりモータを駆動し、車両の操舵系にアシスト力を付与するようにした電動パワーステアリング装置に関し、特に舵角制御における舵角速度指令値及び舵角制御指令値を所定の徐変ゲインで徐変すると共に、アシスト制御指令値をアシスト制御徐変ゲインで徐変し、モータ電流指令値に対して意図しないハンドルの変動を抑制し、運転者への違和感を低減する電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング機構にモータの回転力で操舵補助力(アシスト力)を付与する電動パワーステアリング装置(EPS)は、モータの駆動力を減速機を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に操舵補助力を付与するようになっている。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、操舵補助力のトルクを正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデューティの調整で行っている。
【0003】
電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図1に示して説明すると、ハンドル(ステアリングホイール)1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、コラム軸2には、ハンドル1の操舵角θrを検出する舵角センサ14及び操舵トルクThを検出するトルクセンサ10が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号IGが入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Vsとに基づいてアシスト制御の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによってモータ20に供給する電流を制御する。なお、舵角センサ14からは操舵角θrが検出されるが、モータ20に連結された回転センサから得ることもできる。
【0004】
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VsはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
【0005】
コントロールユニット30は主としてCPU(MPUやMCUも含む)で構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図2のようになる。
【0006】
図2を参照してコントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTh及び車速センサ12で検出された(若しくはCANからの)車速Vsは、電流指令値Iref1を演算する電流指令値演算部31に入力される。電流指令値演算部31は、入力された操舵トルクTh及び車速Vsに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値Iref1を演算する。電流指令値Iref1は加算部32Aを経て電流制限部33に入力され、過熱保護条件で最大電流を制限された電流指令値Iref3が減算部32Bに入力され、フィードバックされているモータ電流値Imとの偏差Iref4(=Iref3−Im)が演算され、その偏差Iref4が操舵動作の特性改善のためのPI制御部35に入力される。PI制御部35で特性改善された電圧制御指令値VrefがPWM制御部36に入力され、更に駆動部としてのインバータ37を介してモータ20がPWM駆動される。モータ20の電流値Imはモータ電流検出器38で検出され、減算部32Bにフィードバックされる。
【0007】
また、モータ20にはレゾルバ等の回転センサ21が接続されており、実操舵角θsが検出される。加算部32Aには補償部34からの補償信号CMが加算されており、補償信号CMの加算によってシステム系の補償を行い、収れん性や慣性特性等を改善するようになっている。補償部34は、セルフアライニングトルク(SAT)343と慣性342を加算部344で加算し、その加算結果に更に収れん性341を加算部345で加算し、加算部345の加算結果を補償信号CMとしている。
【0008】
このような電動パワーステアリング装置において、近年自動操舵制御モード(駐車支援等の舵角制御モード)及び手動操舵制御モード(アシスト制御モード)を有し、これら制御モードの切換機能を有する車両が出現して来ており、自動操舵を実現する場合、舵角制御とアシスト制御を独立して保有し、これらの出力を切り換える構成が一般的である。舵角制御には、応答性や外乱抑圧性で優れた性能を持つ位置速度制御が用いられており、位置制御はP(比例)制御、速度制御はPI(比例積分)制御等で構成される。
【0009】
舵角制御モード及びアシスト制御モードの機能を具備し、操舵制御モードを切り換える機能を有する一般的な電動パワーステアリング装置を図3について説明すると、モータ150にはモータ回転角θsを検出するためのレゾルバ等の回転センサ151が接続されており、モータ150は車両側ECU130及びEPS側ECU140を介して駆動制御される。車両側ECU130は、運転者の意思を示すボタン、スイッチ等に基づいて、舵角制御モード又はアシスト制御モードの切換指令SWを出力する切換指令部131と、カメラ(画像)やレーザレーダなどの信号に基づいて目標操舵角θtを生成する目標操舵角生成部132とを具備している。また、コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)に設けられた舵角センサ14で検出された実操舵角θrは、ECU130を経てEPS側ECU140内の舵角制御部200に入力される。
【0010】
切換指令部131は、舵角制御モードに入ることを識別する信号、例えば運転者の意思をダッシュボードやハンドル周辺に設けたボタンやスイッチ、或いはシフトに設けた駐車モードなどによる車両状態の信号を基に切換指令SWを出力し、切換指令SWをEPS側ECU140内の切換部142に入力する。また、目標操舵角生成部132は、カメラ(画像)、レーザレーダなどのデータを基に公知の手法で目標操舵角θtを生成し、生成された目標操舵角θtをEPS側ECU140内の舵角制御部200に入力する。
【0011】
EPS側ECU140は、操舵トルクTh及び車速Vsに基づいて演算されたアシスト制御指令値Itrefを出力するアシスト制御部141と、目標操舵角θt、実操舵角θr及びモータ角速度ωrに基づいて舵角制御のための舵角制御指令値Imrefを演算して出力する舵角制御部200と、切換指令SWによってアシスト制御指令値Itref及び舵角制御指令値Imrefを切り換える切換部142と、切換部142からのモータ電流指令値Iref(=Itref又はImref)に基づいてモータ150を駆動制御する電流制御/駆動部143と、回転センサ151からのモータ回転角θsに基づいてモータ速度を求め、モータ速度とギア比を用いて実舵角速度ωrを演算するモータ角速度演算部144とを具備している。モータ角速度演算部144は、微分相当の演算の後段に高周波ノイズをカットするためのローパスフィルタ(LPF)を備えている。
【0012】
舵角制御部200は図4に示すように、目標操舵角θtに実操舵角θrを追従させるように舵角速度指令値ωcを出力する位置制御部210と、舵角速度指令値ωcに実舵角速度ωrを追従させるように舵角制御指令値Imrefを出力する速度制御部220とで構成されている。また、切換部142は、車両側ECU130の切換指令部131からの切換指令SWに基づいて、アシスト制御部141によるアシスト制御モード(手動操舵制御)と、舵角制御部200による舵角制御モード(位置/速度制御モード)とを切り換え、アシスト制御ではアシスト制御指令値Itrefを出力し、舵角制御では舵角制御指令値Imrefを出力する。
【0013】
なお、実舵角速度とモータ角速度は、減速機の比の関係であっても良い。
【0014】
このような機能を備えた電動パワーステアリング装置において、操舵モードの切換時にスイッチなどにより急に切り換えてしまうとモータ電流指令値Irefが急変動し、ハンドル挙動が不自然になるため、運転者へ違和感を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3912279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このため、舵角制御指令値とアシスト制御指令値に徐変ゲインを乗じ、徐々に操舵モードを切り換えることによって、モータ電流指令値の急変動を抑制する手法が用いられる。しかし、この手法では、切換中は舵角制御指令値が徐変ゲインで制限されてモータ電流指令値へ出力されるため、舵角制御指令値に対し電流指令値が制限された分だけ出力が小さくなってしまう。この制限により、舵角速度指令値に対し、モータの実舵角速度が遅くなるため、舵角速度指令値と実舵角速度に偏差が発生し、速度制御内のI制御の積分値が蓄積してしまうことで、速度制御から更に大きな舵角制御指令値が出力されてしまう。この結果、徐変ゲインが徐々に大きくなっていく状態では、徐変ゲインによる制限が緩和されていくため、徐変ゲインが大きくなるに従って舵角制御指令値が過剰な値となり、ハンドルが舵角速度指令値に対して過剰に応答し、運転者へ違和感を与えてしまう。
【0017】
例えば特許第3912279号(特許文献1)では、舵角制御開始時に徐々に舵角速度を増加させるよう制御し、開始時のハンドル急変動による運転者への違和感を低減する手法が提案されている。しかし、特許文献1の手法では、徐変が始まると上限値に達するまで増加し続けるため、I制御の積分値が過剰に蓄積してしまう問題がある。
【0018】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、舵角制御指令値及びアシスト制御指令値を徐変すると共に、舵角速度指令値も徐変し、舵角速度指令値にリミッタを設けることにより速度制御内の積分値の過剰な蓄積を抑制し、運転者に違和感を与えない電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、アシスト制御モードと舵角制御モードを切り換える機能を有し、アシスト制御部で演算された第1のアシスト制御指令値と、舵角制御部で演算された第1の舵角制御指令値とでモータ電流指令値を生成し、前記モータ電流指令値によりモータを駆動して車両の操舵系をアシスト制御する電動パワーステアリング装置に関し、本発明の上記目的は、前記舵角制御部は、目標操舵角及び実操舵角を入力して第1の舵角速度指令値を出力する位置制御部と、前記第1の舵角速度指令値を舵角制御徐変ゲインに応じて徐変して上下限値を制限する徐変制限部と、前記徐変制限部から出力される第2の舵角速度指令値を、実舵角速度及び舵角制御徐変ゲインに基づいて処理する速度制御部と、前記速度制御部から出力される第1の舵角制御指令値を前記舵角制御徐変ゲインに応じて徐変して第2の舵角制御指令値を出力する第1の徐変部とで構成され、前記アシスト制御部から出力される前記第1のアシスト制御指令値をアシスト制御徐変ゲインで徐変し、第2のアシスト制御指令値を出力する第2の徐変部を備え、前記第2の舵角制御指令値及び前記第2のアシスト制御指令値に基づいて前記モータ電流指令値を生成することにより達成される。
【0020】
本発明の上記目的は、前記アシスト制御モードと前記舵角制御モードを切り換えるとき、前記舵角制御徐変ゲインと前記アシスト制御徐変ゲインが、各割合の合計値が1.0若しくは100%の関係で、かつ逆の関係で増加減する特性であることにより、或いは前記徐変制限部が、前記第1の舵角速度指令値を前記舵角制御徐変ゲインに応じて徐変する第3の徐変部と、前記第3の徐変部で徐変された徐変後舵角速度指令値の上下限値を制限し、第2の舵角速度指令値を出力するリミッタとで構成されていることにより、或いは前記リミッタの前記上下限値が、前記舵角制御徐変ゲインに応じて可変されることにより、或いは前記位置制御部が、前記目標操舵角及び前記実舵角速度の位置偏差を求める第1の減算部と、前記位置偏差をゲイン倍して前記舵角速度指令値を出力するゲイン部とで構成されていることにより、或いは前記速度制御部が、前記第2の舵角速度指令値から前記実舵角速度を減算する第2の減算部と、前記第2の減算部の減算結果を積分処理する積分部と、前記実舵角速度を比例処理する比例部と、前記積分部の積分結果から前記比例部の比例結果を減算する第3の減算部と、前記第3の減算部の減算結果を前記舵角制御徐変ゲインにより徐変し、前記第1の舵角制御指令値を出力する第4の徐変部とで構成されていることにより、或いは前記速度制御部が、前記第2の舵角制御指令値から前記実舵角速度を減算する第2の減算部と、前記第2の減算部からの速度偏差を前記舵角制御徐変ゲインにより徐変し、速度偏差を出力する乗算部と、前記速度偏差を積分処理する積分部と、前記実舵角速度を比例処理する比例部と、前記積分部の積分結果から前記比例部の比例結果を減算し、前記第1の舵角制御指令値を出力する減算部とで構成されていることにより、或いは前記速度制御部が、前記第2の舵角速度指令値から前記実舵角速度を減算する第2の減算部と、前記第2の減算部からの速度偏差を積分処理する積分部と、前記実舵角速度を比例処理する比例部と、前記積分部の積分結果を前記舵角制御徐変ゲインにより徐変し、第3の舵角制御指令値を出力する第4の徐変部と、前記第3の舵角制御指令値から前記比例部の比例結果を減算し、前記第1の舵角制御指令値を出力する第3の減算部とで構成されていることにより、或いは前記速度制御部が、前記第2の舵角速度指令値から前記実舵角速度を減算する第2の減算部と、前記第2の減算部からの速度偏差を積分処理する積分部と、前記実舵角速度を前記舵角制御徐変ゲインにより徐変して徐変後舵角制御指令値を出力する第4の徐変部と、前記徐変後舵角制御指令値を比例処理する比例部と、前記積分部の積分結果から前記比例部の比例結果を減算し、前記第1の舵角制御指令値を出力する第3の減算部とで構成されていることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電動パワーステアリング装置によれば、舵角制御における舵角速度指令値及び舵角制御指令値を舵角制御徐変ゲイン若しくは独立の徐変ゲインで徐変すると共に、アシスト制御指令値をアシスト制御徐変ゲインで徐変し、徐変がほぼ完了するまで速度制御内の上下限値を制限しているので、速度制御内の積分制御の積分値が過剰に蓄積することもなく、モータ電流指令値に対して意図しないハンドルの変動を抑制し、運転者への違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電動パワーステアリング装置の概要を示す構成図である。
図2】電動パワーステアリング装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図3】自動操舵制御モード及び手動操舵制御モードの切換機能有する電動パワーステアリング装置の一例を示すブロック図である。
図4】舵角制御部の構成例を示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態の一例を示すブロック構成図である。
図6】舵角制御部の構成例(第1実施例)を示すブロック図である。
図7】本発明の動作例を示すフローチャートである。
図8】本発明の動作例(第1実施形態)を示すタイムチャートである。
図9】本発明の動作例(第2実施形態)を示すタイムチャートである。
図10】舵角制御部の構成例(第2実施例)を示すブロック図である。
図11】舵角制御部の動作例(第2実施例)を示すフローチャートである。
図12】舵角制御部の構成例(第3実施例)を示すブロック図である。
図13】舵角制御部の動作例(第3実施例)を示すフローチャートである。
図14】舵角制御部の構成例(第4実施例)を示すブロック図である。
図15】舵角制御部の動作例(第4実施例)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、舵角制御部内の位置制御部からの舵角速度指令値に対して舵角制御徐変ゲインを乗じて徐変すると共に、徐変後の舵角速度指令値の上下限値をリミッタで制限して速度制御部に入力する。速度制御部からは更に徐変処理された舵角制御指令値が出力され、舵角制御指令値に対しても舵角制御徐変ゲインを乗じて徐変する。また、アシスト制御部からのアシスト制御指令値に対しては、アシスト制御徐変ゲインを乗じて徐変し、舵角制御徐変ゲインとアシスト制御徐変ゲインを逆の増加減特性としている。つまり、舵角制御徐変ゲインとアシスト制御徐変ゲインは制御モードの切換時に、各割合(舵角制御徐変ゲインは0.0(0%)〜1.0(100%)、アシスト制御徐変ゲインは1.0(100%)〜0.0(%))の合計値が1.0若しくは100%の関係で、かつ逆の関係で増加減(線形若しくは非線形)する特性となっている。
【0024】
舵角制御開始時は、舵角制御徐変ゲインに合わせて舵角速度指令値を徐変し、徐変後の舵角速度指令値に対してリミッタを設け、このリミッタの上下制限値を逐次切換替可能とし、上下制限値を舵角制御徐変ゲインがある閾値未満では小さくし、その閾値以上で大きくすることにより、舵角速度指令値が制限される。舵角制御除変ゲインと舵角速度指令値のリミッタの制限値の変更により、速度制御部内の積分値の過剰な蓄積を抑制することができる。更に、速度制御部内の徐変後舵角制御指令値に対して舵角制御徐変ゲインを乗じることによって徐変し、運転者への違和感を低減する。
【0025】
また徐変完了後は、舵角制御徐変ゲインと除変中の制限値により、舵角速度指令値が制限されないため、通常の舵角制御にシフトすることができる。
【0026】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図5は本発明の構成例を示しており、目標操舵角θt及び実操舵角θrは位置を追従させるための位置制御部210に入力され、位置制御部210からの舵角速度指令値ωcは、徐変部を構成する乗算部201に入力される。乗算部201には舵角制御徐変ゲインSGが入力されており、乗算部201で徐変された舵角速度指令値ωcaは上下限値を制限するリミッタ202に入力される。リミッタ202には舵角制御徐変ゲインSGが入力されており、舵角制御徐変ゲインSGに応じて制限値が可変される。リミッタ202で上下限値を制限された舵角速度指令値ωcbは、実舵角速度ωrと共に、速度追従を行う速度制御部220に入力される。速度制御部220からの舵角制御指令値Imrefは、徐変部を構成する乗算部203に入力されて舵角制御徐変ゲインSGで徐変され、徐変された舵角制御指令値Imrefcが加算部205に入力される。以上が舵角制御部の構成であり、乗算部201及びリミッタ202で徐変制限部を構成している。
【0028】
一方、アシスト制御部141からのアシスト制御指令値Itrefは乗算部204に入力され、アシスト制御徐変ゲインAGで徐変される。徐変されたアシスト制御指令値Itrefcが加算部205に入力され、舵角制御指令値Imrefcと加算されてモータ電流指令値Irefが生成される。
【0029】
舵角制御徐変ゲインSG及びアシスト制御徐変ゲインAGはそれぞれの徐変により、舵角制御モード(舵角制御徐変ゲインSG=100%、アシスト制御徐変ゲインAG=0%)とアシスト制御モード(舵角制御徐変ゲインSG=0%、アシスト制御徐変ゲインAG=100%)を相互に切り換える特性を有しており、逆の関係で増加減する。
【0030】
図6は舵角制御部200の第1実施例を示しており、位置制御部210は、目標操舵角θt及び実操舵角θrの位置偏差θeを求める減算部211と、位置偏差θeをゲイン(Kpp)倍して舵角速度指令値ωcを出力するゲイン部212とで構成されている。舵角速度指令値ωcは乗算部201に入力され、乗算部201で舵角制御徐変ゲインSGで徐変され、徐変された舵角速度指令値ωcaは上下限値を制限するリミッタ202に入力される。リミッタ202は正負で制限している制限値1及び制限値2(制限値2>制限値1)を有し、乗算部201及びリミッタ202で徐変制限部を構成している。
【0031】
徐変制限部のリミッタ202で上下限値を制限された舵角速度指令値ωcbは、速度制御部220に入力される。速度制御部220は、舵角速度指令値ωcbから実舵角速度ωrを減算する減算部221と、減算部221の減算結果である速度偏差Dfを積分処理(Kvi/s)して補償する積分部222と、実舵角速度ωrを比例処理(Kvp)して補償する比例部225と、積分部222の積分結果である舵角制御指令値Ir1から比例部225の比例結果である舵角制御指令値Ir2を減算する減算部223と、減算部223の減算結果である舵角制御指令値Imref1を舵角制御徐変ゲインSGにより徐変し、舵角制御指令値Imrefを出力する乗算部224とで構成されている。
【0032】
このような構成において、その動作例を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0033】
最初に目標操舵角θt、実操舵角θr、実舵角速度ωrが入力され(ステップS1)、次いで舵角制御徐変ゲインSG、アシスト制御徐変ゲインAGが入力される(ステップS2)。これら入力の順序は適宜変更可能である。
【0034】
位置制御部210は目標操舵角θtに実操舵角θrを追従するように位置制御する。即ち、減算部211で目標操舵角θtと実操舵角θrの位置偏差θeが求められ、位置偏差θeはゲイン部212でゲイン(Kpp)倍されてリミッタ202に入力される。リミッタ202で上下限値を制限された舵角速度指令値ωcが出力され(ステップS3)、舵角速度指令値ωcは乗算部201に入力される。乗算部201で徐変された舵角速度指令値ωcaはリミッタ202に入力され、以下のようにリミッタ202で上下限値を制限される。
【0035】
リミッタ202には舵角制御徐変ゲインSGが入力されており、舵角制御徐変ゲインSGを先ず前回値から加算(演算初回の前回値=0%)し(ステップS5)(後述する図8及び図9のように時系列に対して線形に舵角制御徐変ゲインSGを変化させる場合、加算値は一定値で良い。)、舵角制御徐変ゲインSGが100%となるように処理する(ステップS6、S7)。舵角制御徐変ゲインSGが100%になると、舵角制御徐変ゲインSGが閾値以上であるか否かを判定し(ステップS10)、舵角制御徐変ゲインSGが閾値以上である場合には、リミッタ制限値を前回値から加算し(ステップS11)(後述する図8及び図9のように時系列に対して線形に舵角制御徐変ゲインSGを変化させる場合、加算値は一定値で良い。)、リミッタ制限値が制限値2以上であるか否かを判定する(ステップS12)。リミッタ制限値が制限値2以上である場合には、リミッタ制限値を制限値2とする(ステップS13)。
【0036】
その後、或いは上記ステップS10において舵角制御徐変ゲインSGが閾値よりも小さい場合、或いは上記ステップS12においてリミッタ制限値が制限値よりも小さい場合、位置制御部210から出力された舵角速度指令値ωcを、乗算部201において舵角制御徐変ゲインSGで徐変する(ステップS14)。乗算部201からの徐変後舵角速度指令値ωcaはリミッタ202に入力されて上下限値を制限される(ステップS15)。上下限値を制限された舵角速度指令値ωcbは、実舵角速度ωrと共に速度制御部220に入力され、実舵角速度ωrを舵角速度指令値ωcbに追従させる速度制御が実施される。
【0037】
速度制御部220では、減算部221において舵角速度指令値ωcbと実舵角速度ωrとの速度偏差Dfが演算され(ステップS20−1)、速度偏差Dfは積分部222で積分され、求められた舵角制御指令値Ir1が減算部223に入力される(ステップS20−1)。また、実舵角速度ωrは比例部225で比例処理(Kvp)され、処理された舵角制御指令値Ir2が減算部223に入力され、減算部223において偏差である舵角制御指令値Imref1が演算される(ステップS20−1)。舵角制御指令値Imref1は乗算部224において舵角制御徐変ゲインSGで徐変され(ステップS20−2)、速度制御部220内で徐変された舵角制御指令値Imref1は、更に乗算部203において舵角制御徐変ゲインSGで徐変され、徐変された舵角制御指令値Imrefcが出力される(ステップS20−3)。
【0038】
舵角制御装置200にはアシスト制御徐変ゲインAGが入力されており、アシスト制御徐変ゲインAGを前回値から減算(演算初回の前回値=100%)し(ステップS30)、アシスト制御徐変ゲインAGが0%以下となるように処理する(ステップS31、S32)。アシスト制御徐変ゲインAGが0%になると、アシスト制御指令値Itrefを演算すると共に、乗算部204においてアシスト制御徐変ゲインAGで徐変し、舵角制御指令値Itrefcを出力する(ステップS33)。
【0039】
その後、徐変されたアシスト制御指令値Itrefcが加算部205に入力され、舵角制御指令値Imrefcと加算されてモータ電流指令値Irefが演算される(ステップS34)。モータ電流指令値Irefによりモータが駆動される。そして、舵角制御徐変ゲインSGの前回値を舵角制御徐変ゲインSGに更新し、アシスト制御徐変ゲインAGの前回値をアシスト制御徐変ゲインAGに更新すると共に、リミッタ制限値の前回値をリミッタ制限値に更新する(ステップS35)。
【0040】
図8及び図9は、リミッタ後の舵角速度指令値ωcb、舵角制御徐変ゲインSG、アシスト制御徐変ゲインAG及びリミッタ202の制限値の関係を示すタイムチャートである。図8の例では、時点t0でアシスト制御から舵角制御に移行し、時点t3に完全に舵角制御になる様子を示している。リミッタ202の制限値は、完全に舵角制御になる時点3より少し前の時点t2(閾値により設定)から、時点t3以降の時点t4の間に制限値1から制限値2(>制限値1)に徐々に変わるようになっている。図9の例も、時点t10でアシスト制御から舵角制御に移行し、時点t12に完全に舵角制御になる様子を示している。本例では、リミッタ202の制限値は、完全に舵角制御になった時点12から以降時点t13の間に、制限値1から制限値2に変わるようになっている。
【0041】
図8(B)及び(C)の時点t0〜t3に示すように、また、図9(B)及び(C)の時点t10〜t12に示すように、舵角制御徐変ゲインSGとアシスト制御徐変ゲインAGはその割合の合計値が1.0若しくは100%の関係で、かつ逆の関係で増加減するようになっている。増加減の波形(特性)は任意であり、線形であっても、非線形であっても良い。
【0042】
図10は舵角制御部200の第2実施例を示しており、速度制御部220を除いて、他の構成は図6の舵角制御部200の第1実施例と同じである。速度制御部220は、舵角速度指令値ωcbから実舵角速度ωrを減算する減算部221と、減算部221の減算結果である速度偏差Df1を舵角制御徐変ゲインSGにより徐変し、速度偏差Df2を出力する乗算部224と、速度偏差Df2を積分処理(Kvi/s)して補償する積分部222と、実舵角速度ωrを比例処理(Kvp)して補償する比例部225と、積分部222の積分結果である舵角制御指令値Ir1から比例部225の比例結果である舵角制御指令値Ir2を減算し、舵角制御指令値Imrefを出力する減算部203とで構成されている。
【0043】
このような構成において、その動作例を図11のフローチャートを参照して説明する。この場合、舵角制御部200の動作は速度制御部220のみが図6の動作と相違しており、速度制御に相当する図7のフローチャートのステップS20−1〜ステップS20−3を除いて同一である。
【0044】
先ず減算部221で速度偏差Df1が演算され(ステップS21−1)、速度偏差Df1は乗算部224において舵角制御徐変ゲインSGにより徐変される(ステップS21−2)。徐変された速度偏差Df2は積分部222に入力されて積分され、積分値である舵角制御指令値Ir1は減算部223に入力される(ステップS21−3)。実舵角速度ωrは比例部225で比例(Kvp)処理され、比例部225からの舵角制御指令値Ir2は減算部223に入力される(ステップS21−4)。そして、減算部223は、舵角制御指令値Ir1から舵角制御指令値Ir2を減算し、舵角制御指令値Imrefを演算して出力する(ステップS21−5)。その後、乗算部203において舵角制御指令値Imrefを舵角制御徐変ゲインSGで徐変し(ステップS21−6)、徐変した舵角制御指令値Imrefcを出力する(ステップ21−7)。
【0045】
図12は舵角制御部200の第3実施例を示しており、速度制御部220を除いて、他の構成は図6の舵角制御部200の第1実施例と同じである。速度制御部220は、舵角速度指令値ωcbから実操舵角ωrを減算する減算部221と、減算部221の減算結果である速度偏差Dfを積分処理(Kvi/s)して補償する積分部222と、実操舵角ωrを比例処理(Kvp)して補償する比例部225と、積分部222の積分結果である舵角制御指令値Ir1を舵角制御徐変ゲインSGにより徐変し、舵角制御指令値Ir3を出力する乗算部224と、舵角制御指令値Ir3から比例部225の比例結果である舵角制御指令値Ir2を減算し、舵角制御指令値Imrefを出力する減算部223とで構成されている。
【0046】
このような構成において、その動作例を図13のフローチャートを参照して説明する。この場合も、舵角制御部200の動作は速度制御部220のみが図6の動作と相違しており、速度制御に相当する図7のフローチャートのステップS20−1〜ステップS20−3を除いて同一である。
【0047】
先ず減算部221で速度偏差Dfが演算され(ステップS22−1)、速度偏差Dfは積分部222に入力されて積分される(ステップS22−2)。積分値である舵角制御指令値Ir1は乗算部224に入力され、乗算部224において舵角制御徐変ゲインSGにより徐変され、徐変された速度制御指令値Ir3は減算部223に入力される(ステップS22−3)。実舵角速度ωrは比例部225で比例(Kvp)処理され、比例部225からの舵角制御指令値Ir2は減算部223に入力される(ステップS22−4)。そして、減算部223は、舵角制御指令値Ir3から舵角制御指令値Ir2を減算し、舵角制御指令値Imrefを演算して出力する(ステップS22−5)。その後、乗算部203において舵角制御指令値Imrefを舵角制御徐変ゲインSGで徐変し(ステップS22−6)、徐変した舵角制御指令値Imrefcを出力する(ステップ22−7)。
【0048】
図14は舵角制御部200の第4実施例を示しており、速度制御部220を除いて、他の構成は図6の舵角制御部200の第1実施例と同じである。速度制御部220は、舵角速度指令値ωcbから実舵角速度ωrを減算する減算部221と、減算部221の減算結果である速度偏差Dfを積分処理(Kvi/s)して補償する積分部222と、実舵角速度ωrを舵角制御徐変ゲインSGにより徐変して徐変後舵角速度ωr2を出力する乗算部224と、徐変後舵角速度ωr2を比例処理(Kvp)して補償する比例部225と、積分部222の積分結果である舵角制御指令値Ir1から比例部225の比例結果である舵角制御指令値Ir2を減算し、舵角制御指令値Imrefを出力する減算部223とで構成されている。
【0049】
このような構成において、その動作例を図15のフローチャートを参照して説明する。この場合も、舵角制御部200の動作は速度制御部220のみが図6の動作と相違しており、速度制御に相当する図7のフローチャートのステップS20−1〜ステップS20−3を除いて同一である。
【0050】
先ず減算部221で速度偏差Dfが演算され(ステップS23−1)、速度偏差Dfは積分部222に入力されて積分され、積分値である舵角制御指令値Ir1は減算部223に入力される(ステップS23−2)。実舵角速度ωrは乗算部224に入力され、乗算部224において舵角制御徐変ゲインSGにより徐変され、徐変された舵角速度ωr2は比例部225に入力されて比例(Kvp)処理され、比例部225からの舵角制御指令値Ir2は減算部223に入力される(ステップS23−4)。そして、減算部223は、舵角制御指令値Ir1から舵角制御指令値Ir2を減算し、舵角制御指令値Imrefを演算して出力する(ステップS23−5)。その後、乗算部203において舵角制御指令値Imrefを舵角制御徐変ゲインSGで徐変し(ステップS23−6)、徐変した舵角制御指令値Imrefcを出力する(ステップ23−7)。
【0051】
上述では舵角制御徐変ゲインと舵角速度指令値に用いる徐変ゲインを同一としているが、それぞれ独立な徐変ゲインとしても良く、舵角制御徐変ゲインとアシスト制御徐変ゲインは徐変時間や徐変タイミングを任意に変更可能なようにしても良い。徐変部をゲインの入力と乗算部で構成しているが、出力を徐々に変化させることが可能な手段であれば良い。
【0052】
また、上述では対象を速度制御としているが、要求舵角などの入力を蓄積し、電流指令値などの出力へ利用する構成を持つ制御方式に対しても有効であり、位置制御及び速度制御に前記機能が組み込まれていれば、その他の構成は適宜変更可能である。
【0053】
更に、実舵角速度はモータ速度と減速比から求めても良く、ハンドル舵角センサから求めても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 ハンドル(ステアリングホイール)
2 コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)
10、154 トルクセンサ
12 車速センサ
13 バッテリ
14 舵角センサ
20、150 モータ
30 コントロールユニット(ECU)
31 電流指令値演算部
33 電流制限部
37 インバータ
130 車両側ECU
140 EPS側ECU
141 アシスト制御部
142 切換部
200 舵角制御部
201,203,204 乗算部
202 リミッタ
210 位置制御部
220 速度制御部
【要約】
【課題】舵角制御指令値及びアシスト制御指令値を徐変すると共に、舵角速度指令値も徐変し、舵角速度指令値にリミッタを設けることにより速度制御内の積分値の過剰な蓄積を抑制し、運転者に違和感を与えない電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】アシスト制御モードと舵角制御モードを切り換える機能を有する電動パワーステアリング装置において、舵角制御部は、目標操舵角及び実操舵角を入力して第1の舵角速度指令値を出力する位置制御部と、第1の舵角速度指令値を舵角制御徐変ゲインに応じて徐変して上下限値を制限する徐変制限部と、徐変制限部から出力される第2の舵角速制御指令値を、実舵角速度及び舵角制御徐変ゲインに基づいて処理する速度制御部と、速度制御部から出力される第1の舵角制御指令値を舵角制御徐変ゲインに応じて徐変して第2の舵角制御指令値を出力する徐変部とで構成され、アシスト制御部から出力される第1のアシスト制御指令値をアシスト制御徐変ゲインで徐変し、第2のアシスト制御指令値を出力する徐変部を備え、第2の舵角制御指令値及び第2のアシスト制御指令値に基づいてモータ電流指令値を生成する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15