(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステアリングシャフトに操舵補助力を付与する電動モータのモータ回転軸と同期回転可能に設けられ、かつ周方向に異なる磁極を交互に2極以上配した円環状又は円板状の磁石と、
前記磁石の磁束を回転位置情報として検出する回転位置情報検出部、及び前記回転位置情報検出部で検出した前記回転位置情報に基づき前記電動モータの回転変位に係る回転情報を検出する回転情報検出部を備えた回転情報検出機能部と、
前記回転情報検出機能部から出力される前記回転情報に基づき前記電動モータを駆動制御するモータ駆動制御部と、
イグニッションスイッチがOFF状態になったと判定すると、OFF状態中は、前記回転情報検出機能部に対して、前記電動モータのモータ回転数が予め設定した設定回転数未満となる間は、バッテリからの電力を予め設定した第1の間隔で間欠的に供給し、前記モータ回転数が予め設定した設定回転数以上となる間は、前記バッテリからの電力を予め設定した前記第1の間隔よりも短い第2の間隔で間欠的に供給する電源制御部と、を備えることを特徴とするモータ駆動制御装置。
前記電源制御部は、前記回転情報検出機能部に対して、前記バッテリからの電力を前記第2の間隔で間欠的に供給中に、前記モータ回転数が下降し始めたと判定すると、下降中は前記設定回転数未満となるまで、前記回転情報検出機能部に対して、前記バッテリからの電力を、予め設定した前記第1の間隔よりも短くかつ前記第2の間隔よりも長い第3の間隔で間欠的に供給する請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
前記設定回転数として、前記第1の間隔による前記電力の間欠的な供給状態である第1間欠供給状態から前記第2の間隔による前記電力の間欠的な供給状態である第2間欠供給状態へと移行する際の判定に用いる第1設定回転数と、前記第1の間隔とは異なる間隔による前記電力の間欠的な供給状態である第3間欠供給状態から前記第1間欠供給状態へと移行する際の判定に用いる、前記第1設定回転数とは異なる第2設定回転数とが予め設定されており、
前記電源制御部は、前記第1間欠供給状態中に前記モータ回転数が前記第1設定回転数以上になったと判定すると前記第1間欠供給状態から前記第2間欠供給状態へと移行し、前記モータ回転数が前記第1設定回転数以上となってから下降し始めて前記第2設定回転数以下になったと判定すると前記第3間欠供給状態から前記第1間欠供給状態へと移行する請求項1又は2に記載のモータ駆動制御装置。
ステアリングシャフトに操舵補助力を付与する電動モータのモータ回転軸と同期回転可能に設けられ、周方向に異なる磁極を交互に2極以上配した円環状又は円板状の磁石と、
前記磁石の磁束を回転位置情報として検出する回転位置情報検出部、及び前記回転位置情報検出部で検出した前記回転位置情報に基づき前記電動モータの回転変位に係る回転情報を検出する回転情報検出部を備えた回転情報検出機能部と、
前記回転情報検出機能部から出力される前記回転情報に基づき前記電動モータを駆動制御するモータ駆動制御部と、
イグニッションスイッチがOFF状態になったと判定すると、OFF状態中は、前記回転情報検出機能部に対して、バッテリからの電力を予め設定した第1の間隔で間欠的に供給するとともに、前記電動モータのモータ回転数が予め設定した設定回転数以上になったと判定すると該設定回転数以上の間は前記バッテリからの電力を連続的に供給する電源制御部と、を備えることを特徴とするモータ駆動制御装置。
前記電源制御部は、前記モータ回転数が前記設定回転数以上となって前記第1の間隔による間欠的な供給状態から前記連続的な供給状態へと移行後に、前記モータ回転数が下降し始めたと判定すると、下降中は前記設定回転数未満となるまで、前記回転情報検出機能部に対して、前記バッテリからの電力を、予め設定した前記第1の間隔よりも短い第2の間隔で間欠的に供給する請求項4に記載のモータ駆動制御装置。
前記設定回転数として、前記第1の間隔による前記電力の間欠的な供給状態である第1の供給状態から前記電力の連続的な供給状態である通常供給状態へと移行する際の判定に用いる第1設定回転数と、前記第1の供給状態とは異なる前記電力の供給状態である第2の供給状態から前記第1の供給状態へと移行する際の判定に用いる、前記第1設定回転数とは異なる第2設定回転数とが予め設定されており、
前記電源制御部は、前記モータ回転数が前記第1設定回転数以上になったと判定すると前記第1の供給状態から前記通常供給状態へと移行し、前記モータ回転数が前記第1設定回転数以上となってから下降し始めて前記第2設定回転数以下になったと判定すると前記第2の供給状態から前記第1の供給状態へと移行する請求項4又は5に記載のモータ駆動制御装置。
前記回転情報検出部は、前記回転位置情報に基づき前記電動モータのモータ回転角を検出する回転角検出部と、前記回転位置情報に基づき前記電動モータの回転位置の変化量、及び回転回数を計測する回転情報計測部とを備える請求項1から7のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
前記電源制御部は、イグニッションスイッチがOFF状態になったと判定すると、OFF状態中は、前記回転情報検出機能部を構成する構成部のうち、前記回転位置情報検出部、及び前記回転情報計測部のみに前記バッテリからの電力を供給する請求項8に記載のモータ駆動制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第7実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものも含まれており、部材ないし部分の縦横の寸法や縮尺は実際のものとは異なる場合があることに留意すべきである。従って、具体的な寸法や縮尺は以下の説明を参酌して判断すべき場合がある。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す第1〜第7実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
(第1実施形態)
(全体構成)
第1実施形態に係る車両1は、
図1に示すように、左右の転舵輪となる前輪4FR及び4FLと後輪4RR及び4RLを備えている。前輪4FR及び4FLは、電動パワーステアリング装置3によって転舵される。
電動パワーステアリング装置3は、ステアリングホイール31と、ステアリングシャフト32と、第1のユニバーサルジョイント34と、ロアシャフト35と、第2のユニバーサルジョイント36とを備える。
電動パワーステアリング装置3は、更に、ピニオンシャフト37と、ステアリングギヤ38と、タイロッド39と、ナックルアーム40と、トルクセンサ41とを備える。
ステアリングホイール31に運転者から作用された操舵力は、ステアリングシャフト32に伝達される。このステアリングシャフト32は、入力軸32aと出力軸32bとを有する。入力軸32aの一端はステアリングホイール31に連結され、他端はトルクセンサ41を介して出力軸32bの一端に連結されている。
【0012】
そして、出力軸32bに伝達された操舵力は、第1のユニバーサルジョイント34を介してロアシャフト35に伝達され、さらに、第2のユニバーサルジョイント36を介してピニオンシャフト37に伝達される。このピニオンシャフト37に伝達された操舵力はステアリングギヤ38を介してタイロッド39に伝達される。更に、このタイロッド39に伝達された操舵力はナックルアーム40に伝達され、前輪4FRおよび4FLを転舵させる。
ここで、ステアリングギヤ38は、ピニオンシャフト37に連結されたピニオン38aとこのピニオン38aに噛合するラック38bとを有するラックアンドピニオン形式に構成されている。したがって、ステアリングギヤ38は、ピニオン38aに伝達された回転運動をラック38bで車幅方向の直進運動に変換している。
【0013】
トルクセンサ41は、ステアリングホイール31に付与されて入力軸32aに伝達された操舵トルクTを検出する。
また、ステアリングシャフト32の出力軸32bには、操舵補助力を出力軸32bに伝達する操舵補助機構42が連結されている。
操舵補助機構42は、出力軸32bに連結したウォームギヤ機構で構成される減速ギヤ43と、この減速ギヤ43に連結された操舵補助力を発生する電動モータ44と、電動モータ44のハウジングに固定支持されたモータ駆動制御装置45とを備えている。
【0014】
電動モータ44は、3相ブラシレスモータであり、図示しない環状のモータロータと環状のモータステータとを備えている。モータステータは、径方向内側に突出する複数の極歯を円周方向に等間隔に備えて構成され、各極歯には励磁用コイルが巻き回されている。そして、モータステータの内側に、モータロータが同軸に配設されている。モータロータは、モータステータの極歯と僅かの空隙(エアギャップ)をもって対向しかつ外周面に円周方向に等間隔に設けられた複数の磁石を備えて構成されている。
モータロータはモータ回転軸に固定されており、モータステータのコイルにモータ駆動制御装置45を介して3相交流電流を流すことでモータステータの各歯が所定の順序に励磁されてモータロータが回転し、この回転に伴ってモータ回転軸が回転する。
【0015】
そして、モータ回転軸が回転すると、その回転力(操舵補助力)が減速ギヤ43を介してステアリングシャフト32に伝達されステアリングシャフト32が回転する。一方、ステアリングホイール31が操舵されてステアリングシャフト32が回転すると、その回転力が減速ギヤ43を介してモータ回転軸に伝達されモータロータが回転する。すなわち、電動モータ44の回転位置とステアリングシャフト32の回転位置とは対応関係があり、いずれか一方の回転情報から他方の回転位置を算出することが可能である。
【0016】
モータ駆動制御装置45は、車載電源であるバッテリ61から電源供給されることによって作動する。ここで、バッテリ61の負極は接地され、その正極はエンジン始動を行うイグニッションスイッチ62(以下、「IGスイッチ62」と記載する場合がある)を介してモータ駆動制御装置45に接続されると共に、IGスイッチ62を介さず直接、モータ駆動制御装置45に接続されている。
また、モータ駆動制御装置45には、
図1に示すように、トルクセンサ41で検出された操舵トルクTと、車速センサ60で検出された車速Vとが入力されている。
【0017】
(モータ駆動制御装置45の構成)
モータ駆動制御装置45は、
図2に示すように、モータ回転センサ46と、回転検出装置47と、コントローラ48と、モータ駆動回路49と、電源制御部50とを備えている。
モータ回転センサ46は、電動モータ44の回転位置情報を検出するための磁気式のセンサであり、
図3に示すように、2系統の回転位置情報検出部である、第1の回転位置情報検出部46b及び第2の回転位置情報検出部46cを備えている。なお、モータ回転センサ46の詳細な構成については後述する。
【0018】
図2に戻って、回転検出装置47には、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cで検出された磁気検出信号である、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)が入力されている。
以下、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)は、個別に「sinθ1」、「cosθ1」、「sinθ2」、「cosθ2」と略記する場合がある。
【0019】
回転検出装置47は、
図4に示すように、入力された第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)に基づき、これらモータ回転位置信号の異常診断処理、モータ回転角θmの算出処理、モータ回転位置の変化量の測定処理等を行う、2系統の第1及び第2回転情報検出部47a及び47bを備えている。回転検出装置47の詳細な構成については後述する。
ここで、第1実施形態の回転検出装置47は、モータ回転位置の変化量の測定処理をIGスイッチ62がOFF状態中も継続して行うように構成されている。
【0020】
図2に戻って、コントローラ48は、操舵トルクTと、車速Vと、回転検出装置47からのモータ回転角θm及びモータ回転位置の変化量とに基づきモータ駆動回路49を制御して電動モータ44を駆動制御する。
具体的に、コントローラ48は、操舵補助制御を行う場合に、操舵トルクT、車速V及びモータ回転角θmに応じた操舵補助トルクを電動モータ44で発生するための操舵補助指令値(操舵補助トルク指令値)を公知の手順で算出し、算出した操舵補助指令値に基づき操舵補助制御のための第1の電流指令値Iref1を算出する。そして、算出した第1の電流指令値Iref1に基づきモータ駆動回路49を制御して、電動モータ44を駆動制御する。
【0021】
このとき、第1実施形態のコントローラ48は、回転検出装置47の2系統の第1及び第2回転情報検出部47a及び47bの各々の異常診断結果に基づき、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)に異常が生じているか否かを判定する。そして、いずれか一方に異常が生じていると判定した場合に、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)に基づき算出された第1モータ回転角θm1及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)に基づき算出された第2モータ回転角θm2のうち異常の生じていない方のモータ回転角に基づき操舵補助制御を行うように構成されている。
【0022】
一方、コントローラ48は、IGスイッチ62がON状態中に、回転検出装置47からのモータ回転角θmに基づきステアリングシャフト32の回転位置θs(以下、「ステアリング角度θs」と記載する場合がある)を算出(推定)する。
但し、第1実施形態のコントローラ48は、IGスイッチ62がOFF状態からON状態に切り替わったときは、予め不揮発性メモリ(不図示)に記憶したOFF状態となる直前のステアリング角度θs及びモータ回転位置の変化量(後述するカウント値Cs及びCc)と、ON状態に切り替わった直後のモータ回転位置の変化量とに基づき、OFF状態からON状態に切り替わったときのステアリング角度θsを算出する。
【0023】
そして、コントローラ48は、自動運転制御装置(不図示)からの指令に応じて、自動運転制御を行う場合に、自動運転制御装置からの目標操舵角θs*と、算出したステアリング角度θsと、回転検出装置47からのモータ回転角θmとに基づき自動運転制御のための第2の電流指令値Iref2を算出する。そして、算出した第2の電流指令値Iref2に基づきモータ駆動回路49を制御して、電動モータ44を駆動制御する。
モータ駆動回路49は、図示省略するが、3相インバータ回路を備え、コントローラ48からの駆動信号(例えばPWM信号)に基づき3相インバータ回路を駆動してモータ駆動電流を電動モータ44に供給する。
【0024】
電源制御部50は、バッテリ61と直接接続されていると共にIGスイッチ62とも接続されている。電源制御部50には、IGスイッチ62からのIGスイッチ62のON状態及びOFF状態を示す信号(以下、「IG信号」又は「IG」と記載する場合がある)が入力されている。加えて、モータ回転センサ46からの第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)が入力されている。
電源制御部50は、IG信号に基づきIGスイッチ62がON状態であると判定すると、ON状態の間は、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cと回転検出装置47に対して、バッテリ61からの電力を、間隔を空けずに連続的に供給する制御を行う。
【0025】
以下、バッテリ61からの電力を連続的に供給する電力供給状態を「通常供給状態」と記載する場合がある。
一方、電源制御部50は、IGスイッチ62がOFF状態であると判定すると、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)に基づき、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cと回転検出装置47に対して、バッテリ61からの電力を予め設定した間隔で間欠供給する制御を行う。なお、電源制御部50の詳細な構成については後述する。
【0026】
(モータ回転センサ46の構成)
次に、
図3に基づき、モータ回転センサ46の具体的な構成について説明する。
第1実施形態のモータ回転センサ46は、
図3(a)に示すように、電動モータ44のモータステータ内に位置するモータ回転軸44aの減速ギヤ43側のステータ端部位置に設けられている。
具体的に、モータ回転センサ46は、
図3(b)に示すように、多極リング磁石46aと、第1の回転位置情報検出部46bと、第2の回転位置情報検出部46cとを備えている。
【0027】
多極リング磁石46aは、周方向に沿って外径面にS極とN極とが交互に連続するように着磁された円環形状(リング状)の多極磁石であり、モータ回転軸44aに固定支持されている。この多極リング磁石46aは、中央の貫通穴内にモータ回転軸44aを挿通させた状態でモータ回転軸44aと同心にモータステータの内側に固定支持されている。これにより、モータ回転軸44aの回転に同期して多極リング磁石46aも回転する。
なお、多極リング磁石46aは、正弦波着磁によって着磁されており、各磁極表面の磁束密度分布が正弦波状となっている。
【0028】
第1の回転位置情報検出部46bは、第1磁気検出素子46d及び第2磁気検出素子46eを備えている。第1磁気検出素子46d及び第2磁気検出素子46eは、多極リング磁石46aの外周面に所定の空隙をもって対向して配置され、かつ多極リング磁石46aの周方向に沿って互いに電気角で90°の位相差となる間隔で並列して設けられている。
第2の回転位置情報検出部46cは、第3磁気検出素子46f及び第4磁気検出素子46gを備えている。第3磁気検出素子46f及び第4磁気検出素子46gは、多極リング磁石46aの外周面に所定の空隙をもって対向して配置され、かつ多極リング磁石46aの周方向に沿って互いに電気角で90°の位相差となる間隔で並列して設けられている。
【0029】
かかる構成によって、第1の回転位置情報検出部46bは、モータ回転軸44aの回転位置に応じて変化する多極リング磁石46aの磁束を正弦波及び余弦波の磁気検出信号(第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1))として検出することが可能である。更に、第2の回転位置情報検出部46cは、モータ回転軸44aの回転位置に応じて変化する多極リング磁石46aの磁束を正弦波及び余弦波の磁気検出信号(第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2))として検出することが可能である。なお、第1の回転位置情報検出部46b及び第2の回転位置情報検出部46cが正常時は、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)と、第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)とは一致する。
すなわち、第1実施形態に係るモータ回転センサ46は、2系統の回転位置情報検出部を備えている。
【0030】
なお、
図3(a)〜(b)に示すモータ回転センサ46は、多極リング磁石46aに対して、第1の回転位置情報検出部46bと第2の回転位置情報検出部46cとを、多極リング磁石46aの外周面に所定の空隙をもって対向して配置する構成としたが、この構成に限らない。
例えば、
図3(c)のモータ回転センサ46'に示すように、第1の回転位置情報検出部46bと第2の回転位置情報検出部46cとを、多極リング磁石46aの軸方向の端面に所定の空隙をもって対向して配置する構成としてもよい。
また、モータ回転センサは、
図3(a)〜(c)に示す構成に限らず、例えば、
図3(d)に示すモータ回転センサ53を用いる構成としてもよい。
このモータ回転センサ53は、2極磁石53aと、第3の回転位置情報検出部53bとを備えている。
【0031】
2極磁石53aは、軸方向の一端側の面がS極とN極の2極に着磁された円板形状の磁石である。2極磁石53aは、着磁された面とは反対側の面の中央に設けられた凹部に、モータ回転軸44aの減速ギヤ43とは反対側の端部を2極磁石53aと同心となるように挿入した状態でモータ回転軸44aに固定支持されている。これにより、モータ回転軸44aの回転に同期して2極磁石53aも回転する。
第3の回転位置情報検出部53bは、2極磁石53aの軸方向の他端側の面と所定の空隙をもって対向配置されている。第3の回転位置情報検出部53bは、モータ回転センサ46と同様に2系統の回転位置情報検出部を備えており(図示略)、モータ回転センサ46と同様に第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)を検出可能である。
【0032】
(回転検出装置47の構成)
次に、
図4に基づき、回転検出装置47の具体的な構成について説明する。
回転検出装置47は、
図4に示すように、第1回転情報検出部47aと、第2回転情報検出部47bとを備えている。
また、第1の回転位置情報検出部46bと第1回転情報検出部47aとから第1回転情報検出機能部51が構成され、第2の回転位置情報検出部46cと第2回転情報検出部47bとから第2回転情報検出機能部52が構成されている。すなわち、第1実施形態のモータ駆動制御装置45は、2系統の回転情報検出機能部を備えている。
第1回転情報検出部47aは、第1ADC(Analog-to-digital converter)471aと、第1診断部471bと、第1カウンタ部471cと、第1メモリ部471dと、第1回転角算出部471eと、第1出力判定部471fとを備えている。
【0033】
第1ADC471aは、第1の回転位置情報検出部46bからのアナログの第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)が入力されると、これをデジタルの第1モータ回転位置信号である第1デジタル回転位置信号(sinθd1,cosθd1)に変換する。そして、この第1デジタル回転位置信号(sinθd1,cosθd1)を、第1診断部471b、第1カウンタ部471c及び第1回転角算出部471eにそれぞれ出力する。
以下、第1デジタル回転位置信号(sinθd1,cosθd1)を、「第1デジタル回転位置信号」、又は、個別に「sinθd1」、「cosθd1」と略記する場合がある。
【0034】
第1診断部471bは、第1デジタル回転位置信号に基づき、この第1デジタル回転位置信号に異常が発生しているか否かを診断する。そして、診断結果を示す第1診断結果フラグDR1を設定し、設定した第1診断結果フラグDR1を第1カウンタ部471c、第1メモリ部471d及び第1出力判定部471fにそれぞれ出力する。
具体的に、第1診断部471bは、以下の式(1)に基づき、第1デジタル回転位置信号の異常の有無を診断する。
sinθd
2+cosθd
2=1 ・・・(1)
すなわち、sin信号とcos信号との2乗を求めると、両者は位相が反転したのみの同波形となって、上式(1)が成立する。このことから、sinθd1及びcosθd1が正常であれば、その自乗値の和「sinθd1
2+cosθd1
2」は1となる。
【0035】
従って、sinθd1及びcosθd1の自乗値の和が「1」であれば、第1デジタル回転位置信号に異常が発生していない(正常である)と診断することが可能である。そして、「1」以外の数値になった場合に異常が発生していると診断することが可能である。
第1診断部471bは、正常と診断した場合に第1診断結果フラグDR1を「0」に設定し、異常と診断した場合に第1診断結果フラグDR1を「1」に設定する。
第1カウンタ部471cは、sinθd1及びcosθd1の象限毎にこれらの値をカウントし、そのカウント値である第1sinカウント値Cs1及び第1cosカウント値Cc1を第1メモリ部471dに出力する。
【0036】
以下、第1sinカウント値Cs1及び第1cosカウント値Cc1を、「第1カウント値Cs1及びCc1」と略記する場合がある。
さらに、第1カウンタ部471cは、予め設定された1周のカウント数と、第1カウント値Cs1及びCc1とに基づき第1回転回数Rt1を算出する。そして、算出した第1回転回数Rt1を第1メモリ部471dに出力する。
また、第1カウンタ部471cは、第1診断部471bから入力された第1診断結果フラグDR1が「1」の場合に、その動作を停止するように構成されている。
【0037】
第1メモリ部471dは、不揮発性のメモリ(図示略)を備え、第1カウンタ部471cから入力される第1カウント値Cs1及びCc1、並びに第1回転回数Rt1を不揮発性のメモリに記憶する。以下、第1カウント値Cs1及びCc1、並びに第1回転回数Rt1を、「第1回転変位情報」と略記する場合がある。
また、第1メモリ部471dは、第1診断部471bから入力された第1診断結果フラグDR1が「1」の場合に、その動作を停止するように構成されている。
第1回転角算出部471eは、第1ADC471aからの第1デジタル回転位置信号に基づき、第1モータ回転角θm1を算出する。そして、算出した第1モータ回転角θm1を第1出力判定部471fに出力する。
【0038】
第1出力判定部471fは、第1診断部471bから入力された第1診断結果フラグDR1が「0」のときは、この第1診断結果フラグDR1と、第1回転角算出部471eから入力された第1モータ回転角θm1とをコントローラ48に出力する。また、IGスイッチ62がOFF状態からON状態になったときは、さらに、第1メモリ部471dに記憶された第1回転変位情報をコントローラ48に出力する。さらにまた、IGスイッチ62がOFF状態中は、第1カウント値Cs1及びCc1を電源制御部50に出力する。
一方、第1出力判定部471fは、第1診断結果フラグDR1が「1」のときは、第1モータ回転角θm1及び第1回転変位情報の出力を停止し、第1診断結果フラグDR1のみをコントローラ48に出力する。
【0039】
一方、第2回転情報検出部47bは、第2ADC472aと、第2診断部472bと、第2カウンタ部472cと、第2メモリ部472dと、第2回転角算出部472eと、第2出力判定部472fとを備えている。
第2ADC472aは、第2の回転位置情報検出部46cからのアナログの第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)が入力されると、これをデジタルの第2モータ回転位置信号である第2デジタル回転位置信号(sinθd2,cosθd2)に変換する。そして、この第2デジタル回転位置信号(sinθd2,cosθd2)を、第2診断部472b、第2カウンタ部472c及び第2回転角算出部472eにそれぞれ出力する。
【0040】
以下、第2デジタル回転位置信号(sinθd2,cosθd2)を、単に「第2デジタル回転位置信号」、又は、個別に「sinθd2」、「cosθd2」と略記する場合がある。
なお、第2診断部472b、第2カウンタ部472c、第2メモリ部472d、第2回転角算出部472e及び第2出力判定部472fは、取り扱う信号が異なるだけで、上記第1診断部471b、第1カウンタ部471c、第1メモリ部471d、第1回転角算出部471e及び第1出力判定部471fと同様の動作を行うものである。そのため、これらの説明を省略する。
【0041】
また、第2診断部472bの診断結果を示すフラグを第2診断結果フラグDR2とし、第2カウンタ部472cのカウント値を第2sinカウント値Cs2及び第2cosカウント値Cc2とする。また、これらカウント値と1周のカウント数とに基づく回転回数を第2回転回数Rt2とし、第2回転角算出部472eで算出されるモータ回転角を第2モータ回転角θm2とする。
以下、第2sinカウント値Cs2及び第2cosカウント値Cc2を、「第2カウント値Cs2及びCc2」と略記する場合がある。さらに、第2カウント値Cs2及びCc2、並びに第2回転回数Rt2を、「第2回転変位情報」と略記する場合がある。
【0042】
第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の上記構成によって、コントローラ48は、第1診断結果フラグDR1が「1」である場合に、第1回転情報検出機能部51に異常が生じていると認識することが可能となり、第2診断結果フラグDR2が「1」である場合に、第2回転情報検出機能部52に異常が生じていると認識することが可能となる。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52のいずれに異常が生じているかを特定することが可能となる。
なお、第1実施形態のコントローラ48は、異常を検出した場合に、不図示の警告ランプの点灯及び不図示のカーナビゲーションの表示装置への警告メッセージの表示によって運転者への異常の報知を行うように構成されている。
【0043】
また、第1実施形態の第1回転情報検出部47a及び第2回転情報検出部47bは、それぞれ独立して構成されている。例えば、特定の用途向けに設計・製造される集積回路であるASIC(application specific integrated circuit)や、製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路であるFPGA(field programmable gate array)等の回路からそれぞれが独立して構成されている。従って、一方に異常が生じても他方がその異常の影響を受けることなく独立して動作することが可能となっている。
【0044】
また、第1実施形態の第1及び第2回転情報検出機能部51及び52は、IGスイッチ62がOFF状態となっても、電源制御部50を介してバッテリ61からの電力が間欠供給される。そのため、IGスイッチ62がOFF状態中も第1及び第2モータ回転位置信号の検出処理と、第1及び第2モータ回転位置信号のAD変換処理と、第1及び第2デジタル回転位置信号のカウント処理、及び回転回数算出処理と、回転情報の記憶処理とを継続して行うことが可能である。
これによって、IGスイッチ62のOFF状態中にステアリングホイール31が操舵されても、モータ回転位置の変化を追跡することが可能となり、コントローラ48は、IGスイッチ62がOFF状態からON状態に切り替わったときに第1回転情報検出機能部51及び第2回転情報検出機能部52から入力される第1回転変位情報及び第2回転変位情報に基づき正確なステアリング角度θsを算出することが可能である。
【0045】
(電源制御部50の構成)
次に、
図5に基づき、電源制御部50の具体的な構成について説明する。
電源制御部50は、
図5に示すように、回転変位検出部50aと、電源供給制御部50bと、第1の切替スイッチ50cとを備えている。
回転変位検出部50aは、第1回転情報検出部47a及び第2回転情報検出部47bから入力される、第1カウント値Cs1及びCc1と、第2カウント値Cs2及びCc2とに基づき回転変位を算出する。具体的に、各カウント値に基づき前回駆動時の回転位置と今回駆動時の回転位置とを算出し、前回の回転位置と今回の回転位置との差を回転変位として算出する。そして、算出した回転変位を電源供給制御部50bに出力する。
【0046】
電源供給制御部50bは、IGスイッチ62から入力されるIGN信号に基づき、IGスイッチ62がON状態のときは、第1回転情報検出機能部51及び第2回転情報検出機能部52に対して、バッテリ61からの電力を、間隔を空けずに連続的に供給する制御を行う。
具体的に、電源供給制御部50bは、IGスイッチ62がON状態中、第1の切替スイッチ50cに対して、この第1の切替スイッチ50cをON状態にし続ける(固定する)切替制御信号を出力する。
【0047】
以下、バッテリ61からの電力を連続的に供給する電力供給状態を「通常供給状態」と記載する場合がある。
一方、IGスイッチ62がOFF状態であると判定すると、第1回転情報検出機能部51及び第2回転情報検出機能部52に対して、バッテリ61からの電力を間欠的に供給する制御を行う。すなわち、間欠供給によって、IGスイッチ62がOFF状態時の電力消費量を低減するように構成されている。
具体的に、電源供給制御部50bは、IGスイッチ62がOFF状態になったと判定すると、第1の切替スイッチ50cに対して、この第1の切替スイッチ50cが予め設定した第1の間隔X1毎に予め設定した供給時間TcだけON状態となるようにON状態及びOFF状態を交互に繰り返す切替制御信号を出力する。
【0048】
以下、バッテリ61からの電力を、第1の間隔X1で間欠的に供給する電力供給状態を「第1間欠供給状態」と記載する場合がある。
一方、電源供給制御部50bは、第1の間欠供給状態中に、回転変位検出部50aから入力された回転変位に基づき、モータ回転数が予め設定した設定回転数ωt以上か否かを判定する。すなわち、回転変位とモータ回転数との関係を予め調べておき、回転変位が設定回転数ωtに相当する変化以上か否かを判定する。そして、モータ回転数が設定回転数ωt以上であると判定したとする。この場合に、電源供給制御部50bは、設定回転数ωt以上の間は、第1の切替スイッチ50cに対して、この第1の切替スイッチ50cが予め設定した第1の間隔X1よりも短い第2の間隔X2毎に供給時間TcだけON状態となるようにON状態及びOFF状態を交互に繰り返す切替制御信号を出力する。
【0049】
以下、バッテリ61からの電力を、第2の間隔X2で間欠的に供給する電力供給状態を「第2間欠供給状態」と記載する場合がある。
すなわち、IGスイッチ62がOFF状態中でかつ第1間欠供給状態中に、モータ回転数(rpm)が設定回転数ωt以上となったと判定すると、第1回転情報検出機能部51及び第2回転情報検出機能部52に対する電力供給状態を、第1間欠供給状態から第2間欠供給状態へと切り替える。更に、切替後の第2間欠供給状態中に、モータ回転数が設定回転数ωt未満となったと判定すると第2間欠供給状態から第1間欠供給状態へと切り替える。例えば、第1間欠供給状態のときに、運転者がステアリングホイール31を操舵してモータ回転数が設定回転数ωt以上となったとする。このような場合に、バッテリ61からの電力の供給間隔を第1の間隔よりも短くして、モータ回転位置の変化に、より確実に追随できるようにしている。
【0050】
ここで、供給時間Tcを一定として、間欠供給する際の第1及び第2の間隔X1及びX2の値は、バッテリ61の容量(暗電流)と、ステアリングホイール31の最大回転速度から決定する。すなわち、電力供給を行わない間隔が長すぎると、モータ回転位置の変化に追随できなくなる恐れがあるので、十分に追随できる間隔に決定する。第1実施形態において、第1の間隔X1の値は、設定回転数ωt未満の変化に対して追随可能な間隔値に決定し、第2の間隔X2の値は、設定回転数ωt以上の変化に対して追随可能な間隔値に決定する。
【0051】
第1の切替スイッチ50cは、第1回転情報検出機能部51及び第2回転情報検出機能部52に対する、バッテリ61からの電力の導通及び非導通を切り替えるスイッチである。第1の切替スイッチ50cは、例えば、パワートランジスタから構成され、オン時に導通状態となり、オフ時に非導通状態となる。第1の切替スイッチ50cは、第1回転情報検出機能部51及び第2回転情報検出機能部52の全ての構成部と、バッテリ61との間の電源供給ラインに介挿されている。そして、ON状態のときに全ての構成部に対して電力を導通させ、OFF状態のときに全ての構成部に対して電力を非導通とする。
【0052】
(動作)
次に、
図6〜
図7に基づき、第1実施形態の動作を説明する。
いま、IGスイッチ62がON状態中であり、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対して、バッテリ61からの電力が電源制御部50を介して通常供給状態で供給されていることとする。
この状態において、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cは、モータ回転位置に応じた第1及び第2モータ回転位置信号を検出し、検出した第1及び第2モータ回転位置信号を、第1及び第2回転情報検出部47a及び47bに入力する。
【0053】
これにより、第1及び第2回転情報検出部47a及び47bは、第1及び第2ADC471a及び472aにおいて、入力されたアナログの第1及び第2モータ回転位置信号をデジタルの第1及び第2デジタル回転位置信号に変換する。そして、変換後の第1及び第2デジタル回転位置信号を、第1及び第2診断部471b及び472bと、第1及び第2カウンタ部471c及び472cと、第1及び第2回転角算出部471e及び472eとにそれぞれ出力する。
【0054】
引き続き、第1及び第2診断部471b及び472bは、入力された第1及び第2デジタル回転位置信号から、上式(1)に従って、「sinθd1
2+cosθd1
2」及び「sinθd2
2+cosθd2
2」を算出し、これらの算出結果が「1」となるか否かを判定する。
ここでは、上記算出結果がいずれも「1」であったとして、第1及び第2診断部471b及び472bは、第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2として「0」を、第1及び第2カウンタ部471c及び472cと、第1及び第2メモリ部471d及び472dと、第1及び第2出力判定部471f及び472fとにそれぞれ出力する。
【0055】
また、第1及び第2カウンタ部471c及び472cは、入力された第1及び第2デジタル回転位置信号を象限毎にカウントする。さらに、これらカウント値と1周のカウント数とに基づき、第1回転回数Rt1及び第2回転回数Rt2を算出する。そして、第1カウント値Cs1及びCc1、並びに第1回転回数Rt1からなる第1回転変位情報を第1メモリ部471dに出力し、第2カウント値Cs2及びCc2、並びに第2回転回数Rt2からなる第2回転変位情報を第2メモリ部472dに出力する。
第1メモリ部471dは、入力された第1回転変位情報を自己の不揮発性メモリに記憶し、第2メモリ部472dは、入力された第2回転変位情報を自己の不揮発性メモリに記憶する。
【0056】
また、第1及び第2回転角算出部471e及び472eは、入力された第1及び第2デジタル回転位置信号から、第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2を算出し、第1モータ回転角θm1を第1出力判定部471fに、第2モータ回転角θm2を第2出力判定部472fに出力する。
第1及び第2出力判定部471f及び472fは、入力された第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2が「0」であることから、これら第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2と、入力された第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2とをコントローラ48に出力する。
【0057】
コントローラ48は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52から入力される、第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2に基づき、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の双方に異常が生じていない(双方は正常である)と判定する。
そして、コントローラ48は、入力された第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2のうち、ここでは、第1モータ回転角θm1に基づきステアリング角度θsを算出する。更に、操舵補助制御を実施する場合は、第1モータ回転角θm1に基づき電動モータ44を駆動制御し、自動運転制御を実施する場合は、算出したステアリング角度θsと第1モータ回転角θm1とに基づき電動モータ44を駆動制御する。
【0058】
その後、IGスイッチ62がON状態からOFF状態になると、電源制御部50は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、通常供給状態から第1間欠供給状態へと切り替える。
具体的に、電源制御部50は、第1の切替スイッチ50cを、
図6に示すように、第1の間隔X1(
図6の例では99[ms]のOFF状態)毎に供給時間Tc(
図6の例では1[ms])だけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。これにより、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対する、バッテリ61からの電力供給状態が第1間欠供給状態となる。
【0059】
これにより、第1間欠供給状態中は、第1の間隔X1毎に継続して、第1及び第2ADC471a及び472aに、アナログの第1及び第2モータ回転位置信号が入力され、この信号がデジタルの第1及び第2デジタル回転位置信号に変換される。更に、第1及び第2診断部471b及び472bにおいて、第1及び第2デジタル回転位置信号の診断が行われる。また、第1及び第2回転角算出部471e及び472eにおいて、第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2の算出処理が行われる。
ここでは、第1及び第2デジタル回転位置信号に異常がなく、第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2が「0」になったとする。
【0060】
これにより、第1間欠供給状態中は、第1の間隔X1毎に設定回転数ωt未満の回転変位に対して、第1及び第2カウンタ部471c及び472cのカウント処理及び回転回数の算出処理が継続して実施される。さらに、第1及び第2メモリ部471d及び472dの回転情報の記憶処理が継続して実施される。
例えば、このとき、停車時に自動的にエンジンを停止させる、いわゆるアイドリングストップ機能を搭載した車両1に乗車した運転者が、信号待ちの間に、アイドリングストップ機能によりIGスイッチ62がOFFとなった状態で、ステアリングホイール31を操舵し、この操舵によってモータ回転軸44aが回転したとする。
【0061】
このように、IGスイッチ62がOFF状態中に操舵が行われた場合でも、第1及び第2カウンタ部471c及び472cは、第1及び第2デジタル回転位置信号の変化に応じた値をカウントすることが可能であり、これらカウント値に基づき回転回数も算出することが可能である。さらに、第1メモリ部471d及び第2メモリ部472dも、IGスイッチ62がOFF状態中に、第1回転変位情報と、第2回転変位情報とを記憶することが可能である。
第1間欠供給状態中、電源制御部50は、第1及び第2回転情報検出部47a及び47bから入力される、第1カウント値Cs1及びCc1と、第2カウント値Cs2及びCc2とから回転変位を算出する。そして、算出した回転変位に基づき、モータ回転数が設定回転数ωt(例えば、50[rpm])以上であるか否かを判定する。
【0062】
ここでは、運転者が比較的速い操舵速度で操舵を行って、モータ回転数が設定回転数ωt以上になったと判定されたとする。これにより、電源制御部50は、現在の第1間欠供給状態を第2間欠供給状態へと切り替える。すなわち、第1の切替スイッチ50cを、
図7に示すように、第2の間隔X2(
図7の例では1[ms]のOFF状態)毎に供給時間Tc(
図7の例では1[ms])だけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。これにより、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対する、バッテリ61からの電力供給状態が第1間欠供給状態から第2間欠供給状態へと移行する。
【0063】
なお、
図7において、バツ印が電力供給タイミングに対応するモータ回転数[rpm]を示し、太直線及び太点線が第1の切替スイッチ50cのON及びOFF(導通及び非導通)を示す。
これにより、IGスイッチ62がOFF状態中に設定回転数ωt以上となる操舵が行われた場合、第1及び第2カウンタ部471c及び472cは、第1の間隔X1よりも短い第2の間隔X2による電力供給状態で、第1及び第2デジタル回転位置信号の変化に応じた値をカウントすることが可能となる。加えて、これらカウント値に基づき回転回数を算出することが可能となる。さらに、第1メモリ部471d及び第2メモリ部472dは、第1回転変位情報と、第2回転変位情報とを記憶することが可能となる。
【0064】
引き続き、IGスイッチ62がOFF状態中に、モータ回転数が低下して設定回転数ωt未満になると、電源制御部50は、現在の第2間欠供給状態を第1間欠供給状態へと切り替える。
その後、信号が青になって、アイドリングストップが解除され、IGスイッチ62がOFF状態からON状態になったとする。電源制御部50は、IGスイッチ62がOFF状態からON状態になると、現在の第1間欠供給状態を通常供給状態へと切り替える。
第1及び第2出力判定部471f及び472fは、第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2と第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2とに加えて、第1及び第2メモリ部471d及び472dに記憶された第1回転変位情報及び第2回転変位情報をコントローラ48に出力する。
【0065】
コントローラ48は、入力された第1回転変位情報及び第2回転変位情報に基づきステアリング角度θsを算出し、自動運転制御を実施する際に、算出したステアリング角度θsと入力された第1モータ回転角θm1及びθm2とに基づき電動モータ44を駆動制御する。
引き続き、上記通常供給時と同様の処理が実施され、第1及び第2診断部471b及び472bにおいて、第1診断結果フラグDR1が「1」、第2診断結果フラグDR2が「0」になったとする。すなわち、第1カウンタ部471c、第1メモリ部471d及び第1出力判定部471fに、第1診断結果フラグDR1として異常を示す「1」が入力されたとする。
【0066】
これにより、第1カウンタ部471c及び第1メモリ部471dは動作を停止する。
また、第1出力判定部471fは、第1モータ回転角θm1及び第1カウント値Cs1及びCc1の出力を停止し、第1診断結果フラグDR1(=1)のみをコントローラ48に出力する。
一方、第2回転情報検出機能部52は、正常動作して、コントローラ48には、第2診断結果フラグDR2(=0)と、第2モータ回転角θm2とが出力される。
コントローラ48は、入力された第1診断結果フラグDR1(=1)から第1回転情報検出機能部51に異常が生じていると判断し、入力された第2診断結果フラグDR2(=0)から第2回転情報検出機能部52が正常であると判断する。そして、正常と判断した第2回転情報検出機能部52から入力された第2モータ回転角θm2を用いて電動モータ44を駆動制御する。
【0067】
ここで、多極リング磁石46aが円環状の磁石に対応し、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cが回転位置情報検出部に対応する。
また、第1及び第2カウンタ部471c及び472c、第1及び第2メモリ部471d及び472d、並びに第1及び第2回転角算出部471e及び472eが回転情報検出部に対応する。
また、第1及び第2カウンタ部471c及び472c、並びに第1及び第2メモリ部471d及び472dが回転情報計測部に対応し、第1及び第2回転角算出部471e及び472eが回転角検出部に対応する。
また、第1及び第2診断部471b及び472bが回転位置情報診断部に対応し、コントローラ48及びモータ駆動回路49がモータ駆動制御部に対応し、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52が回転情報検出機能部に対応する。
【0068】
(第1実施形態の効果)
(1)第1実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、ステアリングシャフト32に操舵補助力を付与する電動モータ44のモータ回転軸44aと同期回転可能に設けられ、周方向に異なる磁極を交互に2極以上配した円環状の多極リング磁石46aを備える。
更に、第1回転情報検出機能部51と、第2回転情報検出機能部52との2系統の回転情報検出機能部を備える。
【0069】
第1回転情報検出機能部51は、第1の回転位置情報検出部46bが、第1磁気検出素子46d及び第2磁気検出素子46eによって、モータ回転軸44aの回転位置に応じて変化する多極リング磁石46aの磁束を、回転位置情報(第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1))として検出する。第1回転角算出部471eが、第1の回転位置情報検出部46bで検出した回転位置情報に基づき第1モータ回転角θm1を算出する。なおさらに、第1カウンタ部471c及び第1メモリ部471dが、電動モータ44の回転位置の変化量である第1カウント値Cs1及びCc1と、電動モータ44の回転回数である第1回転回数Rt1とを計測する。
【0070】
第2回転情報検出機能部52は、第2の回転位置情報検出部46cが、第3磁気検出素子46f及び第4磁気検出素子46gによって、モータ回転軸44aの回転位置に応じて変化する多極リング磁石46aの磁束を、回転位置情報(第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2))として検出する。第2回転角算出部472eが、第2の回転位置情報検出部46cで検出した回転位置情報に基づき第2モータ回転角θm2を算出する。第2カウンタ部472c及び第2メモリ部472dが、電動モータ44の回転位置の変化量である第2カウント値Cs2及びCc2と、電動モータ44の回転回数である第2回転回数Rt2とを計測する。
第1実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、さらに、コントローラ48及びモータ駆動回路49が、2系統の第1及び第2回転情報検出機能部51及び52から出力される第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2に基づき電動モータ44を駆動制御する。
【0071】
さらに、電源制御部50が、IGスイッチ62がOFF状態になったと判定すると、OFF状態中は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対して、電動モータ44のモータ回転数が予め設定した設定回転数ωt未満の間は、バッテリ61からの電力を予め設定した第1の間隔X1で間欠的に供給する。加えて、IGスイッチ62がOFF状態中は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対して、電動モータ44のモータ回転数が予め設定した設定回転数ωt以上の間は、バッテリ61からの電力を予め設定した第1の間隔X1よりも短い第2の間隔X2で間欠的に供給する。
なおさらに、コントローラ48及びモータ駆動回路49が、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の一方でモータ回転位置信号に異常が生じていると診断した場合に、他方の正常な回転情報検出機能部から出力されるモータ回転角に基づき電動モータ44を駆動制御する。
【0072】
この構成であれば、IGスイッチ62がOFF状態中は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対する電力供給状態を第1間欠供給状態に切り替えて、動作を継続させることが可能となる。加えて、モータ回転数が設定回転数ωt以上となったときに、電力供給状態を第1間欠供給状態から第2間欠供給状態に切り替えて、動作を継続させることが可能となる。
これによって、モータ回転数が比較的遅い(回転位置変化が比較的小さい)ときは、低消費電力を優先させた比較的長い第1の間隔X1の供給間隔で電力供給を行うことが可能となる。加えて、モータ回転数が比較的速い(回転位置変化が比較的大きい)ときは、その変化に追従させることを優先して比較的短い第2の間隔X2の供給間隔で電力供給を行うことが可能となる。その結果、従来と比較して、モータ回転情報の検出精度を維持しつつバッテリ61の電力消費量を低減することが可能となる。
【0073】
(2)第1実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、さらに、第1診断部471bが、第1の回転位置情報検出部46bで検出した回転位置情報に異常が生じているか否かを診断する。第2診断部472bが、第2の回転位置情報検出部46cで検出した回転位置情報に異常が生じているか否かを診断する。コントローラ48及びモータ駆動回路49が、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の第1診断部471b又は第2診断部472bが異常と診断した場合に、正常な方の回転情報検出機能部から出力されるモータ回転角、回転位置の変化量及び回転回数に基づき電動モータ44を駆動制御する。
【0074】
この構成であれば、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の各々が回転位置情報に異常が生じているか否かを診断可能な診断部を備えているので、異常の発生した回転情報検出機能部を特定することが可能となる。これにより、一方の回転情報検出機能部で異常と診断された場合に、他方の正常な回転情報検出機能部によって電動モータ44の駆動制御を継続して行うことが可能となる。加えて、各系統が、2つの磁気検出素子によって位相の90°異なる2つの回転位置情報(sinθ,cosθ)を検出することが可能であるので、これら2つの回転位置情報から異常の発生した系統をより正確に特定することが可能となる。
(3)第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置3及び車両1は、上記モータ駆動制御装置45を備える。
これによって、信頼性の高い操舵補助制御を行うことが可能となる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、
図8及び
図9に基づき本発明の第2実施形態を説明する。
(構成)
第2実施形態は、IGスイッチ62がOFF状態中に、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の構成部のうちモータ回転位置の変化量を測定するのに必要な構成部にのみバッテリ61からの電力を間欠供給する点が上記第1実施形態と異なる。
以下、上記第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分のみを詳細に説明する。
【0076】
第2実施形態の電源制御部50Aは、
図8に示すように、上記第1実施形態の電源制御部50に対して、第2の切替スイッチ50dを新たに追加した構成となっている。
また、第2実施形態の第1の切替スイッチ50cは、電力供給構成部500に対する電力の導通/非導通を切り替えるように構成されている。
新たに追加した第2の切替スイッチ50dは、電力停止構成部600に対する電力の導通/非導通を切り替えるように構成されている。
【0077】
電力供給構成部500は、モータ回転位置の変化量を測定するのに必要な構成部であり、IGスイッチ62がOFF状態中に稼動させたい構成部である。すなわち、電力供給構成部500は、IGスイッチ62がOFF状態中にバッテリ61からの電力を間欠供給する構成部である。
電力供給構成部500は、
図9に示すように、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cと、第1及び第2ADC471a及び472aと、第1及び第2診断部471b及び472bと、第1及び第2カウンタ部471c及び472cと、第1及び第2メモリ部471d及び472dとから構成される。
【0078】
電力停止構成部600は、モータ回転位置の変化量を測定するのに不要な構成部であり、IGスイッチ62がOFF状態中に稼動停止させたい構成部である。すなわち、電力停止構成部600は、IGスイッチ62がOFF状態中にバッテリ61からの電力供給を完全停止(遮断)する構成部である。
電力停止構成部600は、
図9に示すように、第1及び第2回転角算出部471e及び472eと、第1及び第2出力判定部471f及び472fとから構成される。
【0079】
第2実施形態の電源供給制御部50bは、IGスイッチ62がON状態からOFF状態になったと判定すると、第1の切替スイッチ50cに対して、この第1の切替スイッチ50cが第1の間隔X1毎に供給時間TcだけON状態となるようにON状態及びOFF状態を交互に繰り返す切替制御信号を出力する。さらに、第2の切替スイッチ50dに対して、この第2の切替スイッチ50dがOFF状態で固定される切替制御信号を出力する。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、通常供給状態から第1間欠供給状態へと切り替える。
【0080】
一方、第2実施形態の電源供給制御部50bは、第1間欠供給状態中にモータ回転数が設定回転数ωt以上であると判定した場合に、第1の切替スイッチ50cに対して、この第1の切替スイッチ50cが第2の間隔X2毎に供給時間TcだけON状態となるようにON状態及びOFF状態を交互に繰り返す切替制御信号を出力する。さらに、第2の切替スイッチ50dに対して、この第2の切替スイッチ50dがOFF状態で固定される切替制御信号を出力する。
すなわち、第2実施形態の電源制御部50Aは、IGスイッチ62がOFF状態中に、
図9に示すように、下向きの枠線矢印を付した構成部に対してはバッテリ61からの電力を間欠供給し、枠線矢印を付していない構成部に対しては電力供給を完全停止するように構成されている。
【0081】
(動作)
いま、車両1のIGスイッチ62がON状態からOFF状態になったとする。
電源制御部50Aは、OFF状態になったと判定すると、第1の切替スイッチ50cを、第1の間隔X1毎に供給時間TcだけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。加えて、第2の切替スイッチ50dを、OFF状態に固定する。
すなわち、電力供給構成部500に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の通常供給状態から第1間欠供給状態へと移行する。さらに、電力停止構成部600に対する電力供給状態を、通常供給状態から完全停止状態へと移行する。
【0082】
これにより、第1間欠供給状態中は、継続して、第1及び第2ADC471a及び472aに、アナログの第1及び第2モータ回転位置信号が入力され、この信号がデジタルの第1及び第2デジタル回転位置信号に変換される。さらに、第1及び第2診断部471b及び472bにおいて、第1及び第2デジタル回転位置信号の診断が行われる。
ここでは、第1及び第2デジタル回転位置信号に異常がなく、第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2が「0」になったとする。
これにより、第1間欠供給状態中は、設定回転数ωt未満の回転変位に対して、第1及び第2カウンタ部471c及び472cのカウント処理及び回転回数の算出処理が継続して実施される。さらに、第1及び第2メモリ部471d及び472dの回転情報の記憶処理が継続して実施される。
【0083】
一方、第1及び第2回転角算出部471e及び472eと、第1及び第2出力判定部471f及び472fとは、電力が供給されないため稼動停止状態となる。
引き続き、運転者が比較的速い操舵速度で操舵を行って、モータ回転数が設定回転数ωt以上になったと判定されたとする。これにより、電源制御部50は、第1の切替スイッチ50cを、第2の間隔X2毎に供給時間TcだけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。加えて、第2の切替スイッチ50dを、OFF状態に固定する。
すなわち、電力供給構成部500に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の第1間欠供給状態から第2間欠供給状態へと移行する。さらに、電力停止構成部600に対する電力供給状態を、完全停止状態のまま継続する。
【0084】
これにより、第2間欠供給状態中は、設定回転数ωt以上の回転変位に対して、第1及び第2カウンタ部471c及び472cのカウント処理及び回転回数の算出処理が継続して実施される。さらに、第1及び第2メモリ部471d及び472dの回転情報の記憶処理が継続して実施される。
一方、第1及び第2回転角算出部471e及び472eと、第1及び第2出力判定部471f及び472fとは、電力が供給されないため稼動停止状態となる。
【0085】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態は、上記第1実施形態の効果に加えて下記の効果を奏する。
(1)第2実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、電源制御部50が、IGスイッチ62がOFF状態のときに、電力供給構成部500に対してバッテリ61からの電力を間欠供給し、電力停止構成部600への電力の供給を遮断する。
この構成であれば、IGスイッチ62がOFF状態中は、電力を間欠供給することに加えて、OFF状態中に作動させる必要のある構成部(モータ回転位置の変化量を測定するのに必要な構成部)のみに電力供給を行うことが可能となるので、OFF状態中の消費電力量をより節約することが可能となる。
【0086】
(第3実施形態)
次に、
図10に基づき本発明の第3実施形態を説明する。
(構成)
第3実施形態は、第2間欠供給状態中に、モータ回転数が下がり始めたか否かを判定し、下がり始めたと判定すると、その時点からモータ回転数が設定回転数ωt未満に下降するまでの電力の供給間隔を変更する点が上記第1及び第2実施形態と異なる。
以下、上記第1及び第2実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分のみを詳細に説明する。
【0087】
第3実施形態の電源供給制御部50bは、第2間欠供給状態中に、回転変位検出部50aから入力される回転変位に基づき、モータ回転数が下がり始めたか否かを判定する。そして、下がり始めたと判定したときに、その時点からモータ回転数が設定回転数ωt未満となるまで、下降中は、第1回転情報検出機能部51及び第2回転情報検出機能部52に対して、予め設定された第3の間隔X3で、バッテリ61からの電力を間欠供給する。ここで、第3の間隔X3は、第1の間隔X1よりも短くかつ第2の間隔X2よりも長い間隔である。
以下、第3の間隔X3で間欠的に供給する電力供給状態を「第3間欠供給状態」と記載する場合がある。
【0088】
(動作)
以下、
図10に基づき、第3実施形態の構成を上記第1実施形態の構成に適用した場合の動作例を説明する。
いま、第1間欠供給状態において、運転者が比較的速い操舵速度で操舵を行って、モータ回転数が設定回転数ωt以上になったとする。これにより、電源制御部50は、第1の切替スイッチ50cを、
図10に示すように、第2の間隔X2(
図10の例では1[ms]のOFF状態)毎に供給時間Tc(
図10の例では1[ms])だけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の第1間欠供給状態から第2間欠供給状態へと移行する。
【0089】
なお、
図10において、バツ印が電力供給タイミングに対応するモータ回転数[rpm]を示し、太直線及び太点線が第1の切替スイッチ50cのON及びOFF(導通及び非導通)を示す。
図10の例では、モータ回転数は約100[rpm]まで上昇してそのまましばらく一定となり、その後下がり始めている。電源制御部50は、モータ回転数の下がり始めを検出すると、第1の切替スイッチ50cを、
図10に示すように、第3の間隔X3(
図10の例では1<X3<99)[ms]のOFF状態毎に供給時間Tc(1[ms])だけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の第2間欠供給状態から第3間欠供給状態へと移行する。
【0090】
これにより、第2間欠供給状態中にモータ回転数が下降し始めると、第1及び第2カウンタ部471c及び472cは、第1の間隔X1よりも短くかつ第2の間隔X2よりも長い第3の間隔X3による電力供給状態で、第1及び第2デジタル回転位置信号の変化に応じた値をカウントすることが可能となる。加えて、これらカウント値に基づき回転回数を算出することが可能となる。さらに、第1メモリ部471d及び第2メモリ部472dは、第1回転変位情報と、第2回転変位情報とを記憶することが可能となる。
すなわち、モータ回転数が下降すると回転位置の変化量も小さくなって第2間欠供給状態での回転位置の変化への追従性に余裕が生じる。そのため、その余裕分に基づき回転数の下降中は供給間隔を長くすることで変化量の計測に必要な追従性を維持しつつ電力消費量を低減することが可能となる。
【0091】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態は、上記第1実施形態の効果に加えて下記の効果を奏する。
(1)第3実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、電源制御部50が、第2間欠供給状態中に、モータ回転数が下降し始めたと判定すると、下降中は設定回転数ωt未満となるまで、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対して、バッテリ61からの電力を、予め設定した第1の間隔X1よりも短くかつ第2の間隔X2よりも長い第3の間隔X3で供給する。
この構成であれば、第2間欠供給状態中にモータ回転数が下降して回転位置の変化が小さくなる状況において、電力の供給間隔を第2の間隔X2から第3の間隔X3に変更することが可能となる。その結果、回転位置の変化量の計測精度を許容範囲内に維持しつつ、電力消費量をより低減することが可能となる。
【0092】
(第4実施形態)
次に、
図11に基づき本発明の第4実施形態を説明する。
(構成)
第4実施形態は、第1間欠供給状態及び第2間欠供給状態への移行判定に用いる閾値として、移行方向に対応した2種類の設定回転数を設定している点が上記第1及び第2実施形態と異なる。
以下、上記第1及び第2実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分のみを詳細に説明する。
【0093】
第4実施形態の電源供給制御部50bは、第1間欠供給状態中に、回転変位検出部50aから入力された回転変位に基づき、モータ回転数が予め設定した第1設定回転数ωt1以上になったか否かを判定する。この判定により、モータ回転数が第1設定回転数ωt1以上であると判定した場合に、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の第1間欠供給状態から第2間欠供給状態へと切り替える。
【0094】
さらに、第4実施形態の電源供給制御部50bは、第2間欠供給状態中に、回転変位検出部50aから入力された回転変位に基づき、モータ回転数が予め設定した第1設定回転数ωt1とは異なる値の第2設定回転数ωt2以下になったか否かを判定する。そして、第2設定回転数ωt2以下になったと判定した場合に、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の第2間欠供給状態から第1間欠供給状態へと切り替える。
第4実施形態において、第1設定回転数ωt1は、第2設定回転数ωt2よりも大きい値に設定されている。
【0095】
(動作)
以下、
図11に基づき、第4実施形態の構成を上記第1実施形態の構成に適用した場合の動作例を説明する。
いま、車両1のIGスイッチ62がON状態からOFF状態になったとする。
これにより、電源制御部50は、第1の切替スイッチ50cを、
図11に示すように、第1の間隔X1(
図11の例では99[ms]のOFF状態)毎に供給時間Tc(
図11の例では1[ms])だけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対する電力の供給状態を、現在の通常供給状態から第1間欠供給状態へと移行する。
【0096】
なお、
図11において、バツ印が電力供給タイミングに対応するモータ回転数[rpm]を示し、太直線及び太点線が第1の切替スイッチ50cのON及びOFF(導通及び非導通)を示す。
その後、電源制御部50は、第1間欠供給状態において、回転変位検出部50aから入力される回転変位に基づき、モータ回転数が第1設定回転数ωt1(
図11の例では50[rpm])以上であるか否かを判定する。
【0097】
ここでは、車両1の運転者が比較的速い操舵速度で操舵を行って、モータ回転数が第1設定回転数ωt1以上になったと判定したとする。これにより、電源制御部50は、第1の切替スイッチ50cを、
図11に示すように、第2の間隔X2(
図11の例では1[ms]のOFF状態)毎に供給時間Tc(1[ms])だけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の第1間欠供給状態から第2間欠供給状態へと移行する。
【0098】
引き続き、電源制御部50は、第2間欠供給状態において、回転変位検出部50aから入力される回転変位に基づき、モータ回転数が第2設定回転数ωt2(
図11の例では30[rpm])以下であるか否かを判定する。
ここで、操舵速度が低下して、モータ回転数が第2設定回転数ωt2以下になったと判定したとする。これにより、電源制御部50は、第1の切替スイッチ50cを、
図11に示すように、第1の間隔X1(99[ms])毎に供給時間Tc(1[ms])だけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の第2間欠供給状態から第1間欠供給状態へと移行する。
【0099】
(第4実施形態の効果)
第4実施形態は、上記第1実施形態の効果に加えて下記の効果を奏する。
(1)第4実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、第1間欠供給状態から第2間欠供給状態へと移行する際の判定に用いる第1設定回転数ωt1と、第2間欠供給状態から第1間欠供給状態へと移行する際の判定に用いる、第1設定回転数ωt1とは異なる第2設定回転数ωt2(第4実施形態ではωt1>ωt2)とが予め設定されている。そして、電源制御部50が、モータ回転数が第1設定回転数ωt1以上になったと判定すると第1間欠供給状態から第2間欠供給状態へと移行する。電源制御部50が、モータ回転数が第1設定回転数ωt1以上となってから下降し始めて第2設定回転数ωt2以下になったと判定すると第2間欠供給状態から第1間欠供給状態へと移行する。
【0100】
この構成であれば、第1間欠供給状態から第2間欠供給状態へと移行する条件と、第2間欠供給状態から第1間欠供給状態へと移行する(戻る)条件とを異なる条件とすることが可能となる。具体的に、第1間欠供給状態から第2間欠供給状態へと移行する条件を厳しくして消費電力量を低減したり、第2間欠供給状態から第1間欠供給状態へと移行する条件を緩くして下降時の追従性を高めたりすることが可能となる。
特に、第1設定回転数ωt1を第2設定回転数ωt2よりも大きい値に設定したので、同じ値とした場合と比較してハンチングの発生を低減することが可能となる。
また、例えば、回転数が上昇中及び一定の間は第2間欠供給状態を継続するように制御することで、第1設定回転数ωt1を第2設定回転数ωt2よりも小さい値に設定することも可能である。この場合は、回転数が上昇時の追従性を高めたり、下降時の消費電力量を低減したりすることが可能となる。
【0101】
(第5実施形態)
次に、
図12に基づき本発明の第5実施形態を説明する。
(構成)
第5実施形態は、IGスイッチ62がOFF状態中でかつ第1間欠供給状態中にモータ回転数が設定回転数ωt以上になったと判定した場合に、第1間欠供給状態から通常供給状態に移行する点が上記第1及び第2実施形態と異なる。
以下、上記第1及び第2実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分のみを詳細に説明する。
【0102】
第5実施形態の電源供給制御部50bは、IGスイッチ62がOFF状態になったと判定すると、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の通常供給状態から第1間欠供給状態へと切り替える。
一方、第5実施形態の電源供給制御部50bは、第1間欠供給状態中に、モータ回転数が設定回転数ωt以上になったと判定すると、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の第1間欠供給状態から通常供給状態へと切り替える。
その後、IGスイッチ62がOFF状態中でかつ通常供給状態中にモータ回転数が設定回転数ωt未満になったと判定すると、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の通常供給状態から第1間欠供給状態へと移行する。
【0103】
(動作)
以下、
図12に基づき、第5実施形態の構成を上記第1実施形態の構成に適用した場合の動作例を説明する。
いま、車両1のIGスイッチ62がON状態からOFF状態になったとする。
これにより、電源制御部50は、第1の切替スイッチ50cを、
図12に示すように、第1の間隔X1(
図12の例では99[ms]のOFF状態)毎に供給時間Tc(
図12の例では1[ms])だけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の通常供給状態から第1間欠供給状態へと移行する。
なお、
図12において、細線が通常供給状態におけるモータ回転数[rpm]を示し、太直線及び太点線が第1の切替スイッチ50cのON及びOFF(導通及び非導通)を示す。
【0104】
その後、第1間欠供給状態において、運転者が比較的速い操舵速度で操舵を行って、モータ回転数が設定回転数ωt以上になったとする。これにより、電源制御部50は、
図12に示すように、間隔を空けずに連続的に電力が供給されるように、第1の切替スイッチ50cをON状態で固定する。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の第1間欠供給状態から通常供給状態へと移行する。
これにより、IGスイッチ62がOFF状態中に設定回転数ωt以上となる操舵が行われた場合、第1及び第2カウンタ部471c及び472cは、通常供給状態によるフル稼動状態で、第1及び第2デジタル回転位置信号の変化に応じた値をカウントすることが可能となる。加えて、これらカウント値に基づき回転回数を算出することが可能となる。さらに、第1メモリ部471d及び第2メモリ部472dは、第1回転変位情報と、第2回転変位情報とを記憶することが可能となる。
【0105】
(第5実施形態の効果)
第5実施形態は、上記第1実施形態の効果に加えて下記の効果を奏する。
(1)第5実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、ステアリングシャフト32に操舵補助力を付与する電動モータ44のモータ回転軸44a上に該モータ回転軸44aと同期回転可能に設けられ、周方向に異なる磁極を交互に2極以上配した円環状の多極リング磁石46aを備える。
更に、第1回転情報検出機能部51と、第2回転情報検出機能部52との2系統の回転情報検出機能部を備える。
【0106】
第1回転情報検出機能部51は、第1の回転位置情報検出部46bが、第1磁気検出素子46d及び第2磁気検出素子46eによって、モータ回転軸44aの回転位置に応じて変化する多極リング磁石46aの磁束を、回転位置情報(第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1))として検出する。第1回転角算出部471eが、第1の回転位置情報検出部46bで検出した回転位置情報に基づき第1モータ回転角θm1を算出する。なおさらに、第1カウンタ部471c及び第1メモリ部471dが、電動モータ44の回転位置の変化量である第1カウント値Cs1及びCc1と、電動モータ44の回転回数である第1回転回数Rt1とを計測する。
【0107】
第2回転情報検出機能部52は、第2の回転位置情報検出部46cが、第3磁気検出素子46f及び第4磁気検出素子46gによって、モータ回転軸44aの回転位置に応じて変化する多極リング磁石46aの磁束を、回転位置情報(第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2))として検出する。第2回転角算出部472eが、第2の回転位置情報検出部46cで検出した回転位置情報に基づき第2モータ回転角θm2を算出する。第2カウンタ部472c及び第2メモリ部472dが、電動モータ44の回転位置の変化量である第2カウント値Cs2及びCc2と、電動モータ44の回転回数である第2回転回数Rt2とを計測する。
【0108】
第5実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、さらに、コントローラ48及びモータ駆動回路49が、2系統の第1及び第2回転情報検出機能部51及び52から出力される第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2に基づき電動モータ44を駆動制御する。
さらに、電源制御部50が、IGスイッチ62がOFF状態になったと判定すると、OFF状態中は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対して、電動モータ44のモータ回転数が予め設定した設定回転数ωt未満の間は、バッテリ61からの電力を予め設定した第1の間隔X1で間欠的に供給する。加えて、IGスイッチ62がOFF状態中は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対して、電動モータ44のモータ回転数が予め設定した設定回転数ωt以上の間は、バッテリ61からの電力を、間隔を空けずに連続的に供給する。
【0109】
なおさらに、コントローラ48及びモータ駆動回路49が、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の一方でモータ回転位置信号に異常が生じていると診断した場合に、他方の正常な回転情報検出機能部から出力されるモータ回転角に基づき電動モータ44を駆動制御する。
この構成であれば、IGスイッチ62がOFF状態中も第1及び第2回転情報検出機能部51及び52を継続して動作させることが可能になると共に、OFF状態中の消費電力量を節約することが可能となる。加えて、モータ回転数が設定回転数ωt以上となったときに、第1間欠供給状態から通常供給状態に切り替えて、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52をフル稼動させることが可能となる。これにより、設定回転数ωt以上のときのモータ回転位置の変化量及び回転回数をより確実に測定することが可能となる。
【0110】
(第6実施形態)
次に、
図13に基づき本発明の第6実施形態を説明する。
(構成)
第6実施形態は、IGスイッチ62がOFF状態でかつ通常供給状態中に、モータ回転数が下がり始めたか否かを判定し、下がり始めたと判定すると、その時点からモータ回転数が設定回転数未満に下降するまで、下降中は電力を間欠供給する点が上記第5実施形態と異なる。
【0111】
以下、上記第5実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分のみを詳細に説明する。
第6実施形態の電源供給制御部50bは、IGスイッチ62がOFF状態中にモータ回転数が設定回転数ωt以上となって、第1間欠供給状態から通常供給状態に切り替わった後に、回転変位検出部50aから入力された回転変位に基づき、モータ回転数が下がり始めたか否かを判定する。そして、下がり始めたと判定すると、モータ回転数が下降中は設定回転数ωt未満となるまで、第1回転情報検出機能部51及び第2回転情報検出機能部52に対して、予め設定された第2の間隔X2で、バッテリ61からの電力を間欠供給する。なお、第2の間隔X2に限らず、他の間隔としてもよい。
【0112】
(動作)
以下、
図13に基づき、第6実施形態の構成を上記第1実施形態の構成に適用した場合の動作例を説明する。
いま、第1間欠供給状態において、運転者が比較的速い操舵速度で操舵を行って、モータ回転数が設定回転数ωt以上になったとする。
これにより、電源制御部50は、
図13に示すように、間隔を空けずに連続的に電力が供給されるように、第1の切替スイッチ50cをON状態に固定する。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の第1間欠供給状態から通常供給状態へと移行する。
なお、
図13において、細線及びバツ印が電力供給タイミングに対応するモータ回転数[rpm]を示し、太直線及び太点線が第1の切替スイッチ50cのON及びOFF(導通及び非導通)を示す。
【0113】
図13の例では、モータ回転数は約100[rpm]まで上昇してそのまましばらく一定となり、その後下がり始めている。電源制御部50は、このモータ回転数の下がり始めを検出すると、第1の切替スイッチ50cを、
図13に示すように、第2の間隔X2(
図13の例では1[ms]のOFF状態)毎に供給時間Tc(
図13の例では1[ms])だけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の通常供給状態から第2間欠供給状態へと移行する。
【0114】
これにより、通常供給状態においてモータ回転数が下降し始めると、第1及び第2カウンタ部471c及び472cは、第2間欠供給状態による稼動状態で、第1及び第2デジタル回転位置信号の変化に応じた値をカウントすることが可能となる。加えて、これらカウント値に基づき回転回数を算出することが可能となる。さらに、第1メモリ部471d及び第2メモリ部472dは、第1回転変位情報と、第2回転変位情報とを記憶することが可能となる。
すなわち、モータ回転数が下降すると回転位置の変化量も小さくなって通常供給状態での回転位置の変化への追従性に余裕が生じる。そのため、その余裕分に基づき回転数の下降中は間欠供給状態とすることで変化量の計測に必要な追従性を維持しつつ電力消費量を低減することが可能となる。
【0115】
(第6実施形態の効果)
第6実施形態は、上記第5実施形態の効果に加えて下記の効果を奏する。
(1)第6実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、電源制御部50が、モータ回転数が設定回転数ωt以上となって第1間欠供給状態から通常供給状態へと移行後に、モータ回転数が下降し始めたと判定すると、下降中は設定回転数ωt未満となるまで、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対して、バッテリ61からの電力を、第2の間隔X2で間欠的に供給する。
この構成であれば、モータ回転数が下降して回転位置の変化が小さくなる状況において、電力の供給状態を通常供給状態から間欠供給状態に変更することが可能となる。その結果、回転位置の変化量の測定精度を維持しつつ、電力消費量をより低減することが可能となる。
【0116】
(第7実施形態)
次に、
図14に基づき本発明の第7実施形態を説明する。
(構成)
第7実施形態は、第1間欠供給状態及び通常供給状態への移行判定に用いる閾値として、移行方向に対応した2種類の設定回転数を設定する点が上記第5実施形態と異なる。
以下、上記第5実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分のみを詳細に説明する。
【0117】
第7実施形態の電源供給制御部50bは、IGスイッチ62がON状態からOFF状態になったと判定すると、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の通常供給状態から第1間欠供給状態へと切り替える。
一方、第7実施形態の電源供給制御部50bは、第1間欠供給状態中に、回転変位検出部50aから入力された回転変位に基づき、モータ回転数が予め設定した第1設定回転数ωt1以上になったか否かを判定する。
第7実施形態の電源供給制御部50bは、この判定により、モータ回転数が第1設定回転数ωt1以上になったと判定した場合に、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対する、バッテリ61からの電力供給状態を、現在の第1間欠供給状態から通常供給状態へと切り替える。
【0118】
さらに、第7実施形態の電源供給制御部50bは、この通常供給状態中に、回転変位検出部50aから入力された回転変位に基づき、モータ回転数が予め設定した第1設定回転数ωt1とは異なる値の第2設定回転数ωt2以下になったか否かを判定する。そして、第2設定回転数ωt2以下になったと判定した場合に、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対する、バッテリ61からの電力供給状態を、現在の通常供給状態から第1間欠供給状態へと切り替える。
第7実施形態において、第1設定回転数ωt1は、第2設定回転数ωt2よりも大きい値に設定されている。
【0119】
(動作)
いま、車両1のIGスイッチ62がON状態からOFF状態になったとする。
これにより、電源制御部50は、第1の切替スイッチ50cを、
図14に示すように、第1の間隔X1(
図14の例では99[ms]のOFF状態)毎に供給時間Tc(
図14の例では1[ms])だけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の通常供給状態から第1間欠供給状態へと移行する。
【0120】
なお、
図14において、細線が電力供給タイミングに対応するモータ回転数を示し、太直線及び太点線が第1の切替スイッチ50cのON及びOFF(導通及び非導通)を示す。
その後、第1間欠供給状態において、電源制御部50は、回転変位検出部50aから入力される回転変位に基づき、モータ回転数が第1設定回転数ωt1(
図14の例では50[rpm])以上となったか否かを判定する。
ここでは、運転者が比較的速い操舵速度で操舵を行って、モータ回転数が第1設定回転数ωt1以上になったと判定したとする。これにより、電源制御部50は、
図14に示すように、間隔を空けずに連続的に電力が供給されるように、第1の切替スイッチ50cをON状態に固定する。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の第1間欠供給状態から通常供給状態へと移行する。
【0121】
引き続き、電源制御部50は、通常供給状態において、回転変位検出部50aから入力される回転変位に基づき、モータ回転数が第2設定回転数ωt2(
図14の例では30[rpm])以下となったか否かを判定する。
ここでは、操舵速度が低下して、モータ回転数が第2設定回転数ωt2以下になったと判定したとする。これにより、電源制御部50は、
図14に示すように、第1の切替スイッチ50cを、第1の間隔X1(99[ms])毎に供給時間Tc(1[ms])だけON状態となるように交互に繰り返しON・OFFさせる。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、現在の通常供給状態から第1間欠供給状態へと移行する。
【0122】
(第7実施形態の効果)
第7実施形態は、上記第5実施形態の効果に加えて下記の効果を奏する。
(1)第7実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、第1間欠供給状態から通常供給状態へと移行する際の判定に用いる第1設定回転数ωt1と、通常供給状態から第1間欠供給状態へと移行する際の判定に用いる、第1設定回転数ωt1とは異なる第2設定回転数ωt2(第7実施形態ではωt1>ωt2)とが予め設定されている。そして、電源制御部50が、IGスイッチ62がOFF状態中に、モータ回転数が第1設定回転数ωt1以上になったと判定すると第1間欠供給状態から通常供給状態へと移行する。電源制御部50が、IGスイッチ62がOFF状態中に、モータ回転数が第1設定回転数ωt1以上となってから下降し始めて第2設定回転数ωt2以下になったと判定すると通常供給状態から第1間欠供給状態へと移行する。
【0123】
この構成であれば、IGスイッチ62がOFF状態中に、第1間欠供給状態から通常供給状態へと移行する条件と、通常供給状態から第1間欠供給状態へと移行する(戻る)条件とを異なる条件とすることが可能となる。具体的に、第1間欠供給状態から通常供給状態へと移行する条件を厳しくして消費電力量を低減したり、通常供給状態から第1間欠供給状態へと移行する条件を緩くして下降時の追従性を高めたりすることが可能となる。
特に、第1設定回転数ωt1を第2設定回転数ωt2よりも大きい値に設定したので、同じ値とした場合と比較してハンチングの発生を低減することが可能となる。
また、例えば、回転数が上昇中及び一定の間は通常供給状態を継続するように制御することで、第1設定回転数ωt1を第2設定回転数ωt2よりも小さい値に設定することも可能である。この場合は、回転数が上昇時の追従性を高めたり、下降時の消費電力量を低減したりすることが可能となる。
【0124】
(変形例)
(1)上記各実施形態では、回転情報検出機能部を2系統から構成したが、この構成に限らず、1系統又は3系統以上で構成してもよい。
(2)上記各実施形態では、モータ回転センサ46を磁気式のセンサから構成したが、この構成に限らず、光学式のセンサから構成してもよい。
(3)上記各実施形態では、異常が生じた場合に、各種診断結果フラグのみをコントローラ48に出力し、コントローラ48は、各種診断結果フラグに基づき、異常の生じている回転情報検出機能部や各構成部を特定する構成としたが、この構成に限らない。例えば、異常が生じた場合でも、算出したモータ回転角や測定したカウント値をコントローラ48に出力し、コントローラ48において、各系統間でモータ回転角やカウント値を相互比較することで2重の異常診断を行う構成としてもよい。
【0125】
(4)上記各実施形態では、カウンタ部に入力される回転位置情報を(sinθ,cosθ)とする構成としたが、回転位置情報であれば、この構成に限らない。例えば、角度演算処理された回転位置情報を用いる構成としてもよい。
(5)上記各実施形態では、第1の回転位置情報検出部46bと、第2の回転位置情報検出部46cとが、それぞれ、互いに位相の異なる磁気信号を検出する2つの磁気検出素子を有する構成としたが、この構成に限らず、3つ以上の磁気検出素子を有する構成としてもよい。
【0126】
(6)上記各実施形態では、本発明をコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置に適用した例を説明したが、この構成に限らず、例えば、ラックアシスト式又はピニオンアシスト式の電動パワーステアリング装置に適用する構成としてもよい。
以上、本願が優先権を主張する日本国特許出願P2016−097216(2016年5月13日出願)の全内容は、ここに引用例として包含される。
ここでは、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく各実施形態の改変は当業者にとって自明のことである。
イグニッションスイッチがOFF状態時におけるモータ回転情報の検出のためのバッテリの消費電力を低減するのに好適なモータ駆動制御装置、電動パワーステアリング装置及び車両を提供する。モータ駆動制御装置は、第1及び第2回転情報検出機能部(51)及び(52)と、電源制御部(50)とを備え、電源制御部(50)は、イグニッションスイッチがON状態からOFF状態になったと判定すると、モータ回転数が予め設定した設定回転数未満の間は、第1及び第2回転情報検出機能部(51)及び(52)に対して、バッテリからの電力を第1の間隔で間欠的に供給し、この間欠供給状態中に、モータ回転数が設定回転数以上になったと判定すると、設定回転数以上の間は、第1及び第2回転情報検出機能部(51)及び(52)に対して、バッテリからの電力を第1の間隔よりも短い第2の間隔で間欠的に供給する。