特許第6233560号(P6233560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233560
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】車両用照明装置、および車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20171113BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20171113BHJP
【FI】
   F21S2/00 312
   F21S2/00 390
   F21S2/00 375
   F21Y115:10
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-78922(P2013-78922)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-203669(P2014-203669A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】日野 清和
【審査官】 山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−209512(JP,A)
【文献】 特開2013−038373(JP,A)
【文献】 特開2013−033777(JP,A)
【文献】 特開2011−109010(JP,A)
【文献】 特開2012−094449(JP,A)
【文献】 特開2013−025935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
H01L 33/00
F21S 8/00 − 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面にセラミックスを含む基板と;
前記基板の表面に設けられた配線パターンと;
前記配線パターンの上に設けられた発光素子と;
前記発光素子を囲むように設けられた包囲壁部材と;
前記包囲壁部材が設けられる領域において、前記基板と、前記包囲壁部材と、の間に設けられた接合部と;
前記包囲壁部材が設けられる領域において、前記基板と、前記接合部と、の間に設けられ、ガラス材料を含む被覆部と;
を具備し
前記被覆部は、前記基板の表面、前記配線パターンの表面、および前記接合部と接触し、
前記接合部は、前記包囲壁部材と接触している車両用照明装置。
【請求項2】
前記被覆部の表面の中心線平均粗さは、0.3μmを超える請求項1記載の車両用照明装置。
【請求項3】
前記被覆部の表面の中心線平均粗さは、前記基板の中心線平均粗さより大きい請求項1または2に記載の車両用照明装置。
【請求項4】
前記接合部は、シリコーン樹脂を含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
【請求項5】
前記接合部の線膨張係数は、前記基板の線膨張係数よりも大きく、前記包囲壁部材の線膨張係数よりも小さい請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
【請求項6】
前記包囲壁部材の中央部に設けられた封止部をさらに具備した請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
【請求項7】
前記被覆部は、前記包囲壁部材の内側にさらに設けられ、前記封止部と接する請求項6記載の車両用照明装置。
【請求項8】
前記基板が設けられる本体部をさらに具備した請求項1〜7のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
【請求項9】
前記本体部は、フィンを有する請求項8記載の車両用照明装置。
【請求項10】
前記本体部は、高熱伝導性樹脂を含む請求項8または9に記載の車両用照明装置。
【請求項11】
記配線パターンと電気的に接続された給電端子と;
前記給電端子と嵌め合わされるソケットと;
をさらに具備した請求項1〜10のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の車両用照明装置を具備した車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
後述する実施形態は、概ね、車両用照明装置、および車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
基板と、基板上に実装された複数の発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)と、複数の発光ダイオードを包囲するようにして基板上に接着された包囲壁部材と、包囲壁部材の内側に充填された封止部と、を備えた照明装置がある。
この様な照明装置において、セラミックスから形成された基板を用いると、包囲壁部材と基板との固着強度(接着強度)が低くなるという問題がある。
包囲壁部材と基板との固着強度が低くなると、外部応力や熱衝撃に対し部分的に弱い部分が形成される。そのため、包囲壁部材と基板との間における気密性が低下し、水分・ガスの侵入による性能低下や、封止部の剥離に伴う導通不良などが発生するおそれがある。 そこで、セラミックスから形成された基板を用いる場合であっても、包囲壁部材と基板との固着強度を向上させることができる照明装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−25935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、包囲壁部材と基板との固着強度を向上させることができる車両用照明装置、および車両用灯具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る車両用照明装置は、少なくとも表面にセラミックスを含む基板と;前記基板の表面に設けられた配線パターンと;前記配線パターンの上に設けられた発光素子と;前記発光素子を囲むように設けられた包囲壁部材と;前記包囲壁部材が設けられる領域において、前記基板と、前記包囲壁部材と、の間に設けられた接合部と;前記包囲壁部材が設けられる領域において、前記基板と、前記接合部と、の間に設けられ、ガラス材料を含む被覆部と;を具備し、前記被覆部は、前記基板の表面、前記配線パターンの表面、および前記接合部と接触し、前記接合部は、前記包囲壁部材と接触している。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、包囲壁部材と基板との固着強度を向上させることができる車両用照明装置、および車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態に係る照明装置1を例示するための模式斜視図である。
図2】本実施の形態に係る照明装置1を例示するための模式斜視図である。
図3】発光部20の模式平面図である。
図4図3におけるA−A線断面図である。
図5】被覆部29が設けられていない場合を例示するための模式断面図である。
図6】被覆部29が設けられている場合を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態に係る発明は、少なくとも表面にセラミックスを含む基板と;前記基板の表面に設けられた配線パターンと;前記配線パターンの上に設けられた発光素子と;前記発光素子を囲むように設けられた包囲壁部材と;前記包囲壁部材が設けられる領域において、前記基板と、前記包囲壁部材と、の間に設けられた接合部と;前記包囲壁部材が設けられる領域において、前記基板と、前記接合部と、の間に設けられ、ガラス材料を含む被覆部と;を具備し、前記被覆部は、前記基板の表面、前記配線パターンの表面、および前記接合部と接触し、前記接合部は、前記包囲壁部材と接触している車両用照明装置である。
この車両用照明装置によれば、包囲壁部材と基板との固着強度を向上させることができる。
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1および図2は、本実施の形態に係る照明装置1を例示するための模式斜視図である。
なお、図1は照明装置1の模式斜視図、図2は照明装置1の模式分解図である。
図3は、発光部20の模式平面図である。
図4は、図3におけるA−A線断面図である。
【0014】
図1および図2に示すように、照明装置1には、本体部10、発光部20、給電部30、およびソケット40が設けられている。
本体部10には、収納部11、フランジ部12、およびフィン13が設けられている。 収納部11は、円筒状を呈し、フランジ部12の一方の面から突出している。収納部11の内側には、発光部20が収納されている。また、収納部11の内側には、給電部30の給電端子31が突出している。
【0015】
フランジ部12は、円板状を呈し、一方の面には収納部11が設けられ、他方の面にはフィン13が設けられている。
フィン13は、フランジ部12の面から突出して複数設けられている。複数のフィン13は、板状を呈し、放熱フィンとして機能する。
【0016】
本体部10は、発光部20および給電部30などを収納する機能と、発光部20や給電部30で発生した熱を照明装置1の外部に放出する機能とを有する。
そのため、熱を外部に放出することを考慮して、本体部10を熱伝導率の高い材料から形成することができる。例えば、本体部10は、アルミニウム、アルミニウム合金、高熱伝導性樹脂などから形成することができる。高熱伝導性樹脂は、例えば、PETやナイロン等の樹脂に、熱伝導率の高い炭素や酸化アルミニウム等の繊維や粒子を混合させたものである。
この場合、フィン13などの熱を外部に放出する部分を熱伝導率の高い材料から形成し、その他の部分を樹脂などから形成することもできる。
また、本体部10の主要部分を導電性材料で構成する場合は、給電端子31と本体部10の導電性材料との間の電気的絶縁を確保するため、給電端子31の周囲を絶縁材料(図示無)で覆い、更に、その周囲に導電性材料を配置する構成としても良い。絶縁材料は、例えば、樹脂などで、熱伝導率が高い材料が好ましい。また、本体部10には、車両用灯具に脱着可能な取り付け部が設けられても良い。
【0017】
図3および図4に示すように、発光部20には、基板21、発光素子22、制御素子23、配線パターン24、配線25、包囲壁部材26、封止部27、接合部28、および被覆部29が設けられている。
基板21は、本体部10の収納部11の内側に設けられている。
基板21は、板状を呈し、表面に配線パターン24が設けられている。
基板21は、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミックスから形成されたものとすることができる。
また、基板21は、金属板の表面をセラミックスで被覆したものであってもよい。
すなわち、基板21は、少なくとも表面にセラミックスを含むものであればよい。
【0018】
この様な材料を用いて、基板21を形成すれば、発光素子22において発生した熱を、基板21と本体部10を介して効率よく放出することができる。
なお、基板21は、単層であってもよいし、多層であってもよい。
【0019】
発光素子22は、基板21の表面に設けられた配線パターン24の上に複数実装されている。
発光素子22は、配線パターン24に設けられる側とは反対側の面(上面)に図示しない電極を有したものとすることができる。なお、図示しない電極は、配線パターン24に設けられる側の面(下面)と、配線パターン24に設けられる側とは反対側の面(上面)とに設けられていてもよいし、どちらかの面のみに設けられていてもよい。
【0020】
発光素子22の下面に設けられた電極は、銀ペーストなどの導電性の熱硬化材を介して配線パターン24に設けられた実装パッド24bと電気的に接続されている。発光素子22の上面に設けられた図示しない電極は、配線25を介して配線パターン24に設けられた配線パッド24cと電気的に接続されている。
【0021】
発光素子22は、例えば、発光ダイオード、有機発光ダイオード、レーザダイオードなどとすることができる。
発光素子22の光の出射面である上面は、照明装置1の正面側に向けられており、主に、照明装置1の正面側に向けて光を出射する。
発光素子22の数や大きさなどは、例示をしたものに限定されるわけではなく、照明装置1の大きさや用途などに応じて適宜変更することができる。
【0022】
制御素子23は、配線パターン24の上に実装されている。
制御素子23は、発光素子22に流れる電流を制御する。すなわち、制御素子23は、発光素子22の発光を制御する。
制御素子23の数や大きさなどは、例示をしたものに限定されるわけではなく、発光素子22の数や仕様などに応じて適宜変更することができる。
【0023】
配線パターン24は、基板21の少なくとも一方の表面に設けられている。
配線パターン24は、基板21の両方の面に設けることもできるが、製造コストを低減させるためには、基板21の一方の面に設けるようにすることが好ましい。
配線パターン24には、入力端子24aが設けられている。
入力端子24aは、複数設けられている。入力端子24aには、給電部30の給電端子31が電気的に接続されている。そのため、発光素子22は、配線パターン24を介して、給電部30と電気的に接続されている。
【0024】
配線25は、発光素子22の上面に設けられた図示しない電極と、配線パターン24に設けられた配線パッド24cとを電気的に接続する。
配線25は、例えば、金を主成分とする線とすることができる。ただし、配線25の材料は、金を主成分とするものに限定されるわけではなく、例えば、銅を主成分とするものや、アルミニウムを主成分とするものなどであってもよい。
【0025】
配線25は、例えば、超音波溶着または熱溶着により、発光素子22の上面に設けられた図示しない電極と、配線パターン24に設けられた配線パッド24cとに電気的に接続される。配線25は、例えば、ワイヤボンディング法を用いて、発光素子22の上面に設けられた図示しない電極と、配線パターン24に設けられた配線パッド24cとに電気的に接続することができる。
【0026】
その他、必要に応じて、図示しない回路部品などを適宜設けることができる。図示しない回路部品は、例えば、配線パターン24上に実装することができる。
【0027】
包囲壁部材26は、複数の発光素子22を取り囲むようにして、基板21上に設けられている。包囲壁部材26は、例えば、環状形状を有し、中央部26aに複数の発光素子22が露出するようになっている。包囲壁部材26の形状は、その他に、楕円形状や、四角形、六角形、八角形等の多角形状としてもよく、特に、形状には限定されない。
包囲壁部材26は、例えば、樹脂から形成することができる。この場合、包囲壁部材26は、例えば、ポリアミド(polyamide)系樹脂やPBT(polybutylene terephthalate)などから形成することが好ましい。
また、樹脂に酸化チタンなどの粒子を混合して、発光素子22から出射した光に対する反射率を向上させるようにすることができる。
なお、酸化チタンの粒子に限定されるわけではなく、発光素子22から出射した光に対する反射率が高い材料からなる粒子を混合させるようにすればよい。
また、包囲壁部材26は、例えば、白色の樹脂から形成することもできる。
【0028】
包囲壁部材26の中央部26a側の側壁面26bは斜面となっている。発光素子22から出射した光の一部は、包囲壁部材26の側壁面26bで反射されて、照明装置1の正面側に向けて出射される。
また、発光素子22から照明装置1の正面側に向けて出射された光の一部であって封止部27の天面(封止部27と外気との界面)で全反射した光は、包囲壁部材26の中央部26a側の側壁面26bで反射して、再び照明装置1の正面側に向けて照射される。
【0029】
すなわち、包囲壁部材26は、リフレクタの機能を併せ持つものとすることができる。なお、包囲壁部材26の形態は、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0030】
封止部27は、包囲壁部材26の中央部26aに設けられている。封止部27は、包囲壁部材26の内側を覆うように設けられている。
封止部27は、透光性を有する材料から形成されている。封止部27は、例えば、シリコーン樹脂などから形成することができる。
封止部27は、例えば、包囲壁部材26の中央部26aに樹脂を充填することで形成することができる。樹脂の充填は、例えば、ディスペンサなどの液体定量吐出装置を用いて行うことができる。
【0031】
包囲壁部材26の中央部26aに樹脂を充填すれば、発光素子22、包囲壁部材26の中央部26aに露出する配線パターン24、および配線25などに対する外部からの機械的な接触を抑制することができる。また、空気・水分などが、発光素子22、包囲壁部材26の中央部26aに露出する配線パターン24、および配線25などに付着することを抑制することができる。そのため、照明装置1に対する信頼性を向上させることができる。
【0032】
また、封止部27には、蛍光体を含めることができる。蛍光体は、例えば、YAG系蛍光体(イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体)とすることができる。
例えば、発光素子22が青色発光ダイオード、蛍光体がYAG系蛍光体である場合には、発光素子22から出射した青色の光によりYAG系蛍光体が励起され、YAG系蛍光体から黄色の蛍光が放射される。そして、青色の光と黄色の光が混ざり合うことで、白色の光が照明装置1から出射される。なお、蛍光体の種類や発光素子22の種類は例示をしたものに限定されるわけではなく、照明装置1の用途などに応じて所望の発光色が得られるように適宜変更することができる。
【0033】
接合部28は、被覆部29を介して、包囲壁部材26と、基板21とを接合する。
接合部28は、膜状を呈し、包囲壁部材26と、被覆部29との間に設けられている。 接合部28は、例えば、シリコーン系接着剤やエポキシ系接着剤を硬化させることで形成されたものとすることができる。
【0034】
接合部28は、例えば、以下の手順により形成することができる。
まず、被覆部29の上に、シリコーン系接着剤やエポキシ系接着剤を塗布する。
例えば、ディスペンサなどを用いて、被覆部29の上に接着剤を塗布する。
次に、溶剤などを蒸発させることで接着剤を硬化させ、接合部28を形成するとともに、被覆部29を介して、包囲壁部材26と、基板21とを接合する。
例えば、まず、塗布された接着剤の上に包囲壁部材26を載置する。
続いて、包囲壁部材26を押圧して接着剤を包囲壁部材26に密着させるとともに、包囲壁部材26の位置(接着剤の厚み)を調整する。
その後、溶剤などを蒸発させることで接着剤を硬化させる。
【0035】
ここで、接着剤の硬化前の粘度は、1Pa・s〜15Pa・sであることが好ましい。 この様な粘度とすれば、ディスペンサなどを用いて塗布を行う際に、任意の形状に塗布することが容易となる。
また、この様な粘度とすれば、接着剤を硬化させる際に、包囲壁部材26の位置を安定させることができる。
【0036】
また、照明装置1が車載用の照明装置である場合には、接合部28は、広い温度範囲において高い信頼性を有したものとする必要がある。
例えば、車載用の照明装置の場合には、−40℃〜+85℃の範囲の温度変化が一定時間毎に繰りかえされたり、発光素子22の点灯による熱影響を受けたりする。そのため、包囲壁部材26、接合部28、および基板21に、膨張や収縮が発生する。
【0037】
この場合、基板21をセラミックスから形成すると、線膨張係数は、7ppm/K程度となる。包囲壁部材26を樹脂から形成すると、線膨張係数は、20ppm/K〜250ppm/K程度となる。そのため、線膨張係数の違いから熱応力が発生する。
ここで、熱応力を緩和させるために、接合部28の線膨張係数の値が、基板21の線膨張係数の値よりも大きく、包囲壁部材26の線膨張係数の値よりも小さくなるようにすることができる。
【0038】
例えば、包囲壁部材26の材料であるポリアミド(polyamide)系樹脂やPBT(polybutylene terephthalate)の線膨張係数は、80ppm/K〜90ppm/K程度である。基板21の材料であるセラミックスの線膨張係数は、7ppm/K程度である。そして、エポキシ系接着剤(線膨張係数60ppm/K)を用いて接合部28を形成する。
前述したように、線膨張係数が、包囲壁部材26と基板21との間になるようにエポキシ系接着剤を用いて接合部28を形成すると、熱応力を緩和することができる。
ただし、エポキシ系接着剤を用いて接合部28を形成すると、弾性が小さいため、熱応力を充分に緩和できない場合が生じ得る。
【0039】
エポキシ系接着剤を用いても熱応力を充分に緩和できない場合には、接合部28の弾性が高くなるようにすればよい。
例えば、シリコーン系接着剤を用いて接合部28を形成するようにすることができる。 すなわち、接合部28は、シリコーン樹脂を含むものとすることができる。
この場合、シリコーン系接着剤を用いて接合部28を形成すると、接合部28の線膨張係数は、200ppm/K程度となる。
【0040】
しかしながら、シリコーン系接着剤を用いて形成された接合部28は、線膨張係数が高いものの、弾性が高いので、温度変化に伴う膨張量や収縮量を吸収することができる。そのため、熱応力を充分に緩和することができる。
また、シリコーン系接着剤を用いて接合部28を形成すれば、線膨張係数が高い材料(例えば、200ppm/K〜250ppm/Kの材料)を用いて包囲壁部材26を作らなくてはならない場合であっても、熱応力を緩和することが可能となる。
【0041】
被覆部29は、基板21と、接合部28との間に設けられている。
被覆部29は、包囲壁部材26と基板21との固着強度を向上させるために設けられている。
被覆部29は、ガラス材料を含むものとすることができる。
なお、被覆部29に関する詳細は後述する。
【0042】
給電部30には、複数の給電端子31が設けられている。
複数の給電端子31は、収納部11およびフランジ部12の内側を延びている。複数の給電端子31の一方の端部は、収納部11の底面から突出し、配線パターン24の入力端子24aと電気的に接続されている。複数の給電端子31の他方の端部は、本体部10の基板21が設けられる側とは反対の側から露出している。
【0043】
なお、給電端子31の数、配置、形態などは例示をしたものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
また、給電部30は、図示しない基板や、コンデンサや抵抗などの回路部品を備えたものとすることもできる。なお、図示しない基板や回路部品は、例えば、収納部11またはフランジ部12の内部に設けることができる。
【0044】
ソケット40は、本体部10の基板21が設けられる側とは反対の側に露出している複数の給電端子31の端部に嵌め合わされる。
ソケット40には、図示しない電源などが電気的に接続されている。
そのため、ソケット40を給電端子31の端部に嵌め合わせることで、図示しない電源などと、発光素子22とが電気的に接続される。
ソケット40は、例えば、接着剤などを用いて本体部10側の要素に接合することができる。
【0045】
次に、被覆部29についてさらに説明する。
図5は、被覆部29が設けられていない場合を例示するための模式断面図である。
図6は、被覆部29が設けられている場合を例示するための模式断面図である。
図5に示すように、被覆部29が設けられていない場合には、基板21の表面に接合部28が設けられることになる。
【0046】
ここで、基板21の表面には、発光素子22や制御素子23などが実装される。そのため、基板21の平坦度は高くする必要がある。一般的には、基板21の表面の中心線平均粗さRaは、0.3μm以下とされる。
【0047】
しかしながら、セラミックスから形成された基板21は、多孔質であり表面に微細な凹凸部が存在する。そのため、微細な凹凸部の内部にまで接着剤が充分に入り込めず、図5中のB部に示すように、基板21の表面と接合部28との間に隙間が形成されてしまう場合がある。基板21の表面と接合部28との間に隙間が形成されていると、外力が加えられた場合に、隙間を起点とした剥離が生じやすくなる。その結果、包囲壁部材26と基板21との固着強度が低くなるおそれがある。
【0048】
これに対し、ガラス材料から形成された被覆部29の表面には、微細な凹凸部が存在しない。
そのため、図6に示すように、被覆部29の表面と接合部28との間に隙間が形成されることを抑制することができる。その結果、外力が加えられても剥離が生じにくくなるので、包囲壁部材26と基板21との固着強度を向上させることができる。
また、被覆部29の表面の中心線平均粗さRaが0.3μmを超えるようにすれば、被覆部29の表面と接合部28との間の接触面積を増加させることができるので、包囲壁部材26と基板21との固着強度をさらに向上させることができる。
【0049】
そして、包囲壁部材26と基板21との固着強度を向上させることができれば、包囲壁部材26の大きさを小さくしても(肉厚寸法を短くしても)、必要となる固着強度を確保することができる。
そのため、照明装置1の小型化を図ることもできる。
【0050】
この様な被覆部29は、例えば、以下のようにして形成することができる。
まず、ガラスペーストを作成する。
ガラスペーストは、例えば、ガラス粉末、フィラー、および有機溶剤を含むものとすることができる。
【0051】
ガラス粉末は、例えば、珪素、バリウム、カルシウム、およびビスマスなどを含むものとすることができる。
フィラーは、例えば、酸化アルミニウムを含むものとすることができる。
【0052】
有機溶剤は、例えば、トルエン、キシレンなどとすることができる。
ガラスペーストは、色素(白色)をさらに含むものであってもよい。
また、ガラスペーストに含まれるガラス粉末やフィラーなどの粒径や、ガラスペーストの粘度などを制御することで、被覆部29の表面の中心線平均粗さRaが0.3μmを超えるようにすることができる。
【0053】
次に、スクリーン印刷法などを用いて、基板21の表面の包囲壁部材26が設けられる領域にガラスペーストを塗布する。
次に、ガラスペーストを焼成して被覆部29を形成する。
以上のようにして、表面の中心線平均粗さRaが0.3μmを超える被覆部29が基板21上に形成される。
【0054】
また、被覆部29は、包囲壁部材26の内側をも覆うように設けることができる。
前述したように、封止部27は、包囲壁部材26の中央部26aにシリコーン樹脂などを充填することで形成することができる。
そのため、包囲壁部材26の内側をも覆うように被覆部29を設ければ、封止部27と基板21との固着強度を向上させることができる。
封止部27と基板21との固着強度を向上させることができれば、気密性の向上、水分・ガスの侵入による性能低下の抑制、封止部27の剥離に伴う導通不良の発生の抑制などを図ることができる。
また、封止部27と基板21との固着強度を向上させることができれば、包囲壁部材26と基板21との固着を補強することができる。
【0055】
また、被覆部29は、ガラス材料から形成されるため、絶縁性を有する。
そのため、被覆部29は、配線パターン24を覆うように設けてもよい。絶縁性を有する被覆部29により、配線パターン24を覆うようにすれば、照明装置1の信頼性を向上させることができる。
【0056】
包囲壁部材26の内側や、配線パターン24の上をも覆うように被覆部29を設ける場合には、スクリーン印刷法などを用いて、包囲壁部材26が設けられる領域、包囲壁部材26の内側、および配線パターン24の上を覆うように被覆部29を形成すればよい。
この際、入力端子24a、実装パッド24b、および配線パッド24cの上には、被覆部29が形成されないようにする。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 照明装置、10 本体部、11 収納部、20 発光部、21 基板、22 発光素子、23 制御素子、24 配線パターン、25 配線、26 包囲壁部材、26a 中央部、27 封止部、28 接合部、29 被覆部、30 給電部、40 ソケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6