(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233562
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】貴金属触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/52 20060101AFI20171113BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20171113BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20171113BHJP
C25B 11/12 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
B01J23/52 M
B01J37/08
G01N27/30 B
!C25B11/12
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-127650(P2013-127650)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-399(P2015-399A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】皆越 知世
(72)【発明者】
【氏名】前川 亨
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋
【審査官】
吉野 涼
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−146223(JP,A)
【文献】
特開平08−313480(JP,A)
【文献】
特開2009−302015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00〜38/74
G01N 27/30
C25B 11/12
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを検知するガス電極として被検知ガスを化学反応させる作用電極、前記作用電極に対する対極、前記作用電極の電位を制御する参照電極を、電解液を収容した電解槽の電解液収容部に臨んで備えた定電位電解式ガスセンサにおける前記各電極の貴金属触媒として使用され、
担体としてのカーボン粉末に、前記カーボン粉末の平均粒径以下の平均粒径を有する金ナノ粒子を担持させ、前記金ナノ粒子は5〜50nmの粒径の粒子が5〜50重量%で前記カーボン粉末に担持され、前記金ナノ粒子は5〜50nmの粒径の粒子の割合が90重量%以上となる粒度分布を有する貴金属触媒。
【請求項2】
前記カーボン粉末は、粒径が5〜300nmの範囲にある請求項1に記載の貴金属触媒。
【請求項3】
前記金ナノ粒子を担持させた前記カーボン粉末を250〜450℃で焼成して作製された請求項1または2に記載の貴金属触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる作用電極、前記作用電極に対する対極、前記作用電極の電位を制御する参照電極を、電解液を収容した電解槽の電解液収容部に臨んで備えた定電位電解式ガスセンサにおける前記各電極の貴金属触媒として使用される貴金属触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の定電位電解式ガスセンサは、電極を電解液が密に収容される電解槽の電解液収容部内に臨んで設けて構成してあり、例えば電極としては、ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる作用電極、当該作用電極に対する対極、作用電極の電位を制御する参照電極の3電極を設けてあり、また、これらが接触自在な電解液を収容した電解槽と、各電極の電位を設定するポテンシオスタット回路等を接続してある。前記3電極の材料としては撥水性を有するガス透過性の多孔質PTFE膜に白金や金、パラジウム等の貴金属触媒等を塗布したものが、電解液としては、硫酸やリン酸等の酸性水溶液等が用いられていた。
【0003】
また、定電位電解式ガスセンサは、周囲の環境変化に対して作用電極の電位を制御して一定に維持することによって、作用電極と対極との間に周囲の環境変化に相当する電流を生じさせる。そして、作用電極の電位が変化せず、またガス種によって酸化還元電位が異なることを利用することにより、ポテンシオスタット回路の設定電位によってはガスの選択的な検知が可能になる。また、ガス電極に用いる触媒を変えることで、目的とするガスに対して高い選択性を持たすことができる。
【0004】
電極に塗布する貴金属触媒としては、例えば粒径が数十nmのカーボンに、数百nm程度の金微粒子を付着させたものを使用することがあった。このようにカーボンに金微粒子を付着させるには、例えば浸漬担持法を使用することがある。当該浸漬担持法で貴金属粒子を担体に付着させる場合、当該担体を金属塩の水溶液中に浸して、金属成分を担体表面に吸着させ、乾燥・焼成・還元を行う。当該浸漬担持法で金付着カーボンを作製した後、多孔質PTFE膜に塗布して電極を作製していた。
【0005】
尚、本発明における従来技術となる上述した定電位電解式ガスセンサは、一般的な技術であるため、特許文献等の従来技術文献は示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の手法によって作製された金付着カーボンは、金微粒子の粒径が担体であるカーボンの粒径より大きく、水溶液中で凝集し易い傾向にあるため、金微粒子を均一に分散させるのが困難であった。このように金微粒子が不均一な状態で作製された金付着カーボンを貴金属触媒として使用すると、ガス検知性能がバラつくなどの影響を与えることがあった。
【0007】
従って、本発明の目的は、定電位電解式ガスセンサにおける前記各電極の貴金属触媒として使用するに際し、ガス検知性能にバラつきが発生しにくい貴金属触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る貴金属触媒の第一特徴構成は、
ガスを検知するガス電極として被検知ガスを化学反応させる作用電極、前記作用電極に対する対極、前記作用電極の電位を制御する参照電極を、電解液を収容した電解槽の電解液収容部に臨んで備えた定電位電解式ガスセンサにおける前記各電極の貴金属触媒として使用され、担体としてのカーボン粉末に、前記カーボン粉末の平均粒径以下の平均粒径を有する金ナノ粒子を担持させ
、前記金ナノ粒子は5〜50nmの粒径の粒子が5〜50重量%で前記カーボン粉末に担持され、前記金ナノ粒子は5〜50nmの粒径の粒子の割合が90重量%以上となる粒度分布を有する点にある。
【0009】
本構成の貴金属触媒は、カーボン粉末の平均粒径以下の平均粒径を有する金ナノ粒子を担持させることで、金ナノ粒子を分散させた状態で担体であるカーボンに担持させることができるため、金ナノ粒子の分散の程度を概ね均一な状態とすることができる。そのため、このような金担持カーボンを、例えばガスセンサにおける貴金属触媒として使用すれば、ガス検知性能にバラつきが生じるのを未然に防止することができる。
【0010】
尚、本明細書では、カーボン粉末の平均粒径以下の平均粒径を有する金ナノ粒子を付着させることを「担持」と称し、カーボン粉末の平均粒径より大きな平均粒径を有する金ナノ粒子が付着した従来の金付着カーボンと区別している。
【0011】
本発明
では、前記金ナノ粒子は、5〜50nmの
粒径の粒子が5〜50重量%で
カーボン粉末に担持され
、前記金ナノ粒子は5〜50nmの粒径の粒子の割合が90重量%以上となる粒度分布を有する。
【0012】
本構成であれば、金ナノ粒子をカーボン粉末に良好に分散させた状態でカーボン粉末に担持させることができる。
【0013】
また、後述の実施例では、各電極で使用する金担持カーボンにおいて、金ナノ粒子の含有量を5〜50重量%まで種々変更して、それぞれにおいて定電位電解式ガスセンサを作製した。この結果、当該金ナノ粒子の添加量が5重量%以上であれば安定したガス感度が得られ、金担持カーボンの製造コストを鑑みると、金担持カーボンにおける金ナノ粒子の添加量が50重量%までに抑制するのがよいものと認められた。
本構成の貴金属触媒は、金ナノ粒子を分散させた状態で担体であるカーボンに担持させることができるため、金ナノ粒子の分散の程度を概ね均一な状態とすることができる。そのため、このような金担持カーボンを貴金属触媒として使用すれば、定電位電解式ガスセンサにおいて、ガス検知性能にバラつきが生じるのを未然に防止することができる。
【0014】
本発明に係る貴金属触媒の
第二特徴構成は、前記カーボン粉末の粒径を5〜300nmの範囲にあるものとした点にある。
【0015】
本構成では、カーボン粉末の粒径を5〜300nmの範囲にある任意の粒径に設定し、金ナノ粒子の粒径を、当該任意の粒径以下に設定することができる。具体的には、例えばカーボンブラックの粒度を、このような粒径の範囲を有するように調整して使用することができる。
【0016】
本発明に係る貴金属触媒の
第三特徴構成は、前記金ナノ粒子を担持させた前記カーボン粉末を250〜450℃で焼成して作製した点にある。
【0017】
浸漬担持法における焼成の温度は600℃程度とすることがあるが、担体をカーボンとする場合に焼成の温度がこのように高温であると、担体であるカーボンが燃焼してしまう虞があった。
一方、本構成による貴金属触媒は、作製の過程で焼成の温度を250〜450℃に抑制することができるため、担体であるカーボンが燃焼する虞はない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】定電位電解式ガスセンサを示す断面図である。
【
図2】金担持カーボンの作製の概要を示す流れ図である。
【
図3】金ナノ粒子の粒度分布を示したグラフである。
【
図4】金担持カーボンの電子顕微鏡の写真図である(本発明例)。
【
図5】金担持カーボンの電子顕微鏡の写真図である(比較例)。
【
図6】定電位電解式ガスセンサにおいて、ホスフィンガス1ppm,0.5ppmに対するガス感度測定を行った結果を示したグラフである。
【
図7】定電位電解式ガスセンサにおいて、シラン、ホスフィン、ゲルマン、アルシン、ジボラン1ppmに対するガス感度測定を行った結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の貴金属触媒は、定電位電解式ガスセンサにおける各電極の貴金属触媒として使用される。
【0022】
当該貴金属触媒は、担体としてのカーボン粉末に、前記カーボン粉末の平均粒径以下の平均粒径を有する金ナノ粒子を担持させている。
【0023】
図1に示すように、定電位電解式ガスセンサXは、ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる作用電極11、当該作用電極11に対する対極12、作用電極の電位を制御する参照電極13を、電解液20を収容した電解槽30の電解液収容部31に臨んで備えている。
【0024】
作用電極11、対極12及び参照電極13は、撥水性を有する多孔質のガス透過膜14の表面に、公知の電極材料より作製したペーストを塗布・焼成して形成してある。作用電極11と、対極12及び参照電極13とは、対向して配置してある。
【0025】
電解槽30は側方に開口する開口部32を形成してガス導通部33を形成している。ガス透過膜14は二枚設けられ、一方のガス透過膜14には作用電極11が配設され、他方のガス透過膜14には対極12及び参照電極13が配設される。作用電極11の側に配設されたガス透過膜14は、開口部32に臨むように電解槽30に取り付けられる。被検知ガスはガス導通部33より導入され、作用電極11上で反応する。
【0026】
それぞれのガス透過膜14とOリング15とは蓋部材16によって固定される。電解槽30の底面には、電解液20の注入等のメンテナンスを行う電解液注入口34が形成されている。
【0027】
このような定電位電解式ガスセンサXは、被検知ガスの反応によって作用電極11上で生じた電子に基づく電流を検知自在な電流測定部と、作用電極11の電位制御自在な電位制御部とを備えたガス検知回路(図外)に接続して、ガス検知装置として用いられる。本発明の定電位電解式ガスセンサXは、例えばシラン、ホスフィン、ゲルマン、アルシン、ジボランなどの水素化物ガスの検知に用いられる。
【0028】
図2に示したように、定電位電解式ガスセンサXにおける各電極10は貴金属触媒を備えており、当該貴金属触媒は、溶媒にカーボン粉末および界面活性剤を添加して撹拌するカーボン粉末添加工程Aと、金ナノ粒子を分散させたコロイド溶液を添加する金ナノ粒子添加工程Bと、溶媒の沸点以下に維持した状態で乾燥させる乾燥工程Cと、乾燥して得られた粉末を250〜450℃で焼成を行う焼成工程Dと、を行って作製される。
【0029】
カーボン粉末添加工程Aでは、カーボン粉末を所定量秤量し、界面活性剤、溶媒である水を加え十分攪拌させる。
カーボン粉末は、公知のカーボン粉末、例えばカーボンブラック(粒径5〜300nm程度:平均粒径20nm)を使用することができ、特にアセチレンガスを熱分解して得るアセチレンブラックを使用するのがよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
界面活性剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用できる。
【0031】
金ナノ粒子添加工程Bでは、カーボン粉末添加工程Aで得られた溶液に金ナノ粒子を分散させたコロイド溶液を添加する。
金ナノ粒子(平均粒径10nm)を分散させたコロイド溶液は、上述した粒度を有する金ナノ粒子が溶液中に分散している状態となっている。当該コロイド溶液には、必要に応じて保護剤などの添加剤を添加してもよい。
金コロイド溶液は、例えばテトラクロロ金酸(III)などの塩化金酸溶液に還元剤としてクエン酸塩溶液を加えて加熱することにより、金属イオンを還元してコロイドとする溶液内還元反応を利用して作製することができるが、このような手法に限定されるものではない。当該方法においては、塩化金酸に対する還元剤の添加量を増減することにより、金コロイド粒子の大きさを変化させることができる。金ナノ粒子は、約5〜50nm程度の粒径を有する粒子であればよいが、この範囲に限定されるものではない。この場合、5〜50nmの粒子の割合が90重量%以上となるような粒度分布とするのがよい。
【0032】
乾燥工程Cでは、金ナノ粒子添加工程Bで得られた溶液を、溶媒(水)の沸点以下に維持した状態で乾燥させる。溶媒の沸点以下として設定する温度は、特に限定されるものではないが、溶媒が水の場合、80〜100℃程度とするのがよい。乾燥の手法は、例えば減圧乾燥、真空乾燥、吸引乾燥、熱風乾燥など、公知の手法を適用することができる。これら乾燥の手法における乾燥条件は、公知の条件を適用すればよい。
【0033】
焼成工程Dでは、乾燥して得られた粉末を250〜450℃で焼成を行う。
本実施形態における焼成温度は、空気雰囲気、大気圧下でカーボンの酸化が進まない温度で、使用した界面活性剤等の有機物が蒸発する温度(250〜450℃)としてある。
焼成時間は、界面活性剤、コロイドの保護剤等が蒸発、昇華、熱分解により完全になくなるまでの時間を適宜設定すればよい。そのため、焼成させる粉体の量で、その都度焼成時間の短縮・延長が可能である。しかし、金ナノ粒子の粒成長、焼結による活性の低下などを考慮して、例えば当該焼成時間の上限を3時間程度までと設定してもよい。また、焼成時間を設定せず、所定の温度に達すれば焼成工程Dを終了するように設定してもよい。
【0034】
上記手法によって、金ナノ粒子を分散させた状態で担持する金担持カーボンを作製することができる。即ち、定電位電解式ガスセンサXは、金ナノ粒子を分散させた状態で担持する金担持カーボンを貴金属触媒として使用することができる。当該金担持カーボンは、作製の過程でコロイド溶液を使用しているため、金ナノ粒子を分散させた状態で担体であるカーボンに担持させることができるため、金ナノ粒子の分散の程度を概ね均一な状態とすることができる。そのため、このような金担持カーボンを貴金属触媒として使用すれば、定電位電解式ガスセンサXにおいて、ガス検知性能にバラつきが生じるのを未然に防止することができる。
【0035】
また、本構成による金担持カーボンは、作製の過程で焼成の温度を250〜450℃に抑制することができるため、担体であるカーボンが燃焼する虞はない。
【0036】
さらに、上記手法で作製した金担持カーボンにおいて、金ナノ粒子は、約5〜50nm程度の粒径で分散させることが可能となる。その結果、従来の手法により作製した金担持カーボンにおける金微粒子の添加量が50重量%より多いのに対して、上記手法で作製した金担持カーボンにおける金ナノ粒子の添加量を5〜50重量%に減じることができる。従って、本発明の定電位電解式ガスセンサXは、貴金属触媒における金ナノ粒子の添加量を減じることができるため、センサの製造コストを削減することができる。
【実施例】
【0037】
〔実施例1〕
定電位電解式ガスセンサXの電極において貴金属触媒として使用する金担持カーボンを以下のようにして作製した。当該金担持カーボンに対する金ナノ粒子の含有量が25重量%になるように、各試薬を調整した。
【0038】
アセチレンブラック粉末3gと、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)2mLを水600mLに添加して十分撹拌した(カーボン粉末添加工程A)。
この撹拌溶液に、金ナノ粒子を分散させたコロイド水溶液(3重量%)を33.3gを添加した(金ナノ粒子添加工程B)。
その後、攪拌を続けながら80℃に保持し、さらに減圧乾燥(100hpa、80℃)させた(乾燥工程C)。
乾燥後、取り出した試料粉末を大気圧、空気雰囲気下で400℃、1時間の焼成を行い金担持カーボンの粉末を得た(本発明例1)。
【0039】
本発明例1の金ナノ粒子の粒度分布(X線小角散乱法による測定)を
図3に示し、金担持カーボンの電子顕微鏡写真を
図4に示した。
図5には、比較として従来の金担持カーボン(比較例)の電子顕微鏡写真を示した。
【0040】
図3より、当該金ナノ粒子の粉末は5〜50nm程度の粒径を有するものと認められた。また、本発明例1の金担持カーボンでは、金ナノ粒子が分散してカーボンに担持されていると認められた(
図4)。一方、比較例の金担持カーボンでは、金微粒子が凝集しているものと認められた(
図5)。
【0041】
〔実施例2〕
定電位電解式ガスセンサXの各電極を以下のようにして作製した。各電極で使用する金担持カーボンにおいて、金ナノ粒子の含有量を5〜50重量%まで種々変更して、それぞれにおいて定電位電解式ガスセンサXを作製した。
【0042】
金担持カーボンの粉末0.1g、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.1mL、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン:テフロン)ディスパージョン(PTFEの微粒子を含むコロイド溶液、比重1.5)0.35mLをそれぞれ加え、混錬して電極材料ペーストを調製した。得られた電極材料ペーストをPTFEシート上に印刷し、乾燥後、280℃で8時間焼成することで各電極10を得た。得られた各電極10を、それぞれ作用電極11、対極12及び参照電極13とし、電解液20を42重量%の硫酸水溶液とした定電位電解式ガスセンサXを作製した。
【0043】
得られたそれぞれの定電位電解式ガスセンサXにおいて、20℃、50%RH環境下で、ホスフィンガス1ppm,0.5ppmに対するガス感度測定を行った(
図6)。同様に、シラン、ホスフィン、ゲルマン、アルシン、ジボランの各ガス1ppmに対してのガス感度測定を行った(
図7)。
尚、ガス感度は、対象ガス雰囲気中で、作用電極11からガス検知回路40へ流れる電流値の大きさで定義した。
【0044】
この結果、金担持カーボンにおける金ナノ粒子の添加量が5重量%以上、特に20重量%以上である定電位電解式ガスセンサXであればガスに対する反応性が十分高い作用電極であることが認められた。また、金担持カーボンの製造コストを鑑みると、金担持カーボンにおける金ナノ粒子の添加量が50重量%、好ましくは30重量%までに抑制するのがよい。従って、ガス感度および製造コストを考慮すれば、金担持カーボンにおける金ナノ粒子の添加量は5〜50重量%とするのがよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる作用電極、前記作用電極に対する対極、前記作用電極の電位を制御する参照電極を、電解液を収容した電解槽の電解液収容部に臨んで備えた定電位電解式ガスセンサにおける前記各電極の貴金属触媒として使用される貴金属触媒に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
X 定電位電解式ガスセンサ
11 作用電極
12 対極
13 参照電極
20 電解液
30 電解槽
31 電解液収容部