特許第6233564号(P6233564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233564
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   H01L21/306 R
   H01L21/306 E
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-184214(P2013-184214)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-53333(P2015-53333A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137062
【弁理士】
【氏名又は名称】五郎丸 正巳
(72)【発明者】
【氏名】日野出 大輝
(72)【発明者】
【氏名】太田 喬
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−066400(JP,A)
【文献】 特開昭63−211725(JP,A)
【文献】 特開2012−023366(JP,A)
【文献】 特開2012−204777(JP,A)
【文献】 特開平04−048630(JP,A)
【文献】 特開昭62−177928(JP,A)
【文献】 特開平02−172225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304−21/3063
H01L 21/308
H01L 21/465−21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が外部から密閉された密閉チャンバと、
前記密閉チャンバ内で、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜を上面に含む基板を水平姿勢に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板の上面にリン酸水溶液の液膜を形成するために、当該上面にリン酸水溶液を供給するリン酸供給手段と、
前記リン酸水溶液の液膜を加熱するためのリン酸液膜加熱手段と、
前記密閉チャンバ内を加圧するための加圧手段と、
前記リン酸液膜加熱手段および前記加圧手段を制御して、前記基板の上面に保持されている前記リン酸水溶液の液膜加熱するリン酸液膜加熱ステップと、前記リン酸液膜加熱ステップに並行して、前記密閉チャンバ内加圧する加圧ステップとを実行する制御手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記基板の上面に水を供給するための水供給手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記水供給手段を制御して、前記リン酸水溶液の液膜の加熱に並行して、前記リン酸水溶液の液膜に水を供給させる水供給ステップを実行する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記リン酸液加熱手段は、前記基板保持手段に保持されている基板の下方から当該基板を加熱する基板加熱手段を含む、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記基板の上面に保持されている基板の上面にリン酸水溶液を供給してパドル状のリン酸水溶液の液膜を形成する液膜形成ステップをさらに実行し、かつ前記リン酸液膜加熱ステップにおいて、基板の上面に保持されているパドル状の前記リン酸水溶液の液膜を加熱する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記密閉チャンバ内を所定圧に達するまで加圧した後に、前記リン酸水溶液の液膜の加熱を開始させる、請求項1〜のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記加圧手段による加圧時の前記密閉チャンバ内の気圧および前記リン酸水溶液加熱手段による加熱時の前記液膜の温度は、前記基板の上面に形成されるリン酸水溶液の液膜が沸騰することのない気圧および温度に設定されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記密閉チャンバは、前記基板を前記内部空間に対して搬出入するための開口が形成されたカップ部と、当該カップ部の開口を閉塞可能な蓋部材と、前記蓋部材を昇降させる蓋部材昇降機構とを含み、
前記蓋部材昇降機構は、前記蓋部材が下降し前記密閉チャンバの内部空間が外部から密閉された閉状態と、前記蓋部材が上昇し前記密閉チャンバの内部空間が外部に開放された開状態との間で前記蓋部材を昇降させる、請求項1〜のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記リン酸供給手段は、前記蓋部材昇降機構により前記密閉チャンバの内部空間が外部に開放された状態で、前記基板保持手段に保持された前記基板の上面にリン酸水溶液の液膜を形成し、
前記加圧手段は、前記蓋部材昇降機構により前記密閉チャンバの内部空間が外部から密閉された状態で前記液膜が加圧されるように、前記密閉チャンバ内を加圧する、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
密閉チャンバ内で基板保持手段に水平姿勢に保持された基板の上面であって、当該基板の上面にシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜が含まれた基板の上面にリン酸水溶液の液膜を形成するために、当該上面にリン酸水溶液を供給するリン酸供給ステップと、
前記リン酸水溶液の液膜を加熱するリン酸液膜加熱ステップと、
前記リン酸液膜加熱ステップに並行して実行され、前記密閉チャンバ内を加圧する加圧ステップとを含む、基板処理方法。
【請求項10】
前記リン酸供給ステップは、パドル状のリン酸水溶液の液膜を形成するステップを含み、
前記リン酸液膜加熱ステップは、基板の上面に保持されているパドル状の前記リン酸水溶液の液膜を加熱するステップを含む、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記リン酸液膜加熱ステップに並行して実行され、前記リン酸水溶液の液膜に水を供給する水供給ステップをさらに含む、請求項9または10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記加圧ステップによる加圧により前記密閉チャンバ内を所定圧にまで達した後に、前記リン酸液膜加熱ステップの実行を開始する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記リン酸供給ステップにより前記基板の上面に前記リン酸水溶液の液膜が形成された後に、前記加圧ステップを開始する、請求項9〜12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸水溶液を用いて基板の表面を処理するための基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、シリコン窒化膜(SiN)とシリコン酸化膜(SiO)とが形成された基板の表面にエッチング液としての高温のリン酸水溶液を供給して、シリコン窒化膜を選択的に除去するエッチング処理が必要に応じて実行される。特許文献1には、沸点付近のリン酸水溶液をスピンチャックに保持されている基板に供給する枚葉式の基板処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−074601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の基板処理装置では、100℃以上の高温のリン酸水溶液が基板に供給されるので、リン酸水溶液中から水分が徐々に蒸発する。その際、リン酸水溶液中で2HPO→H+HOの反応がおこり、リン酸(HPO)からピロリン酸(pyrophosphoric acid:H)が生成される。このピロリン酸は、シリコン酸化膜と反応する性質を有しており、SiO+H→HSiP+HOの反応が起こってシリコン酸化膜をエッチングする。
【0005】
エッチング選択比(シリコン窒化膜のエッチング量/シリコン酸化膜のエッチング量)の値を高めるには、シリコン窒化膜のみをエッチングし、シリコン酸化膜はエッチングせずできるだけ多く残存させることが必要である。しかし、前記のピロリン酸が発生すると残存させたいシリコン酸化膜もエッチングされてしまうため、エッチング選択比を高くすることができない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、リン酸エッチングにおいて、エッチングレート(単位時間当たりのシリコン窒化膜のエッチング量)を高めるとともに、エッチング選択比の低下を抑制できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、内部が外部から密閉された密閉チャンバ(3)と、前記密閉チャンバ内で、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜を上面に含む基板(W)を水平姿勢に保持する基板保持手段(4)と、前記基板保持手段に保持されている基板の上面にリン酸水溶液の液膜(60)を形成するために、当該上面にリン酸水溶液を供給するリン酸供給手段(35)と、前記リン酸水溶液の液膜を加熱するためのリン酸液膜加熱手段(24)と、前記密閉チャンバ内を加圧するための加圧手段(50)と、前記リン酸液膜加熱手段および前記加圧手段を制御して、前記基板の上面に保持されている前記リン酸水溶液の液膜加熱するリン酸液膜加熱ステップと、前記リン酸液膜加熱ステップに並行して、前記密閉チャンバ内加圧する加圧ステップとを実行する制御手段(55)とを含む、基板処理装置(1)である。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
この構成によれば、基板保持手段により水平姿勢に保持されている基板の上面にリン酸水溶液が供給され、基板の上面にリン酸水溶液の液膜が形成される。リン酸水溶液の液膜は、リン酸液膜加熱手段により加熱され、昇温させられる。これにより、リン酸水溶液のシリコン窒化膜に対する反応速度が高められる結果、エッチングレート(単位時間当たりのシリコン窒化膜のエッチング量)を高めることができる。
【0009】
また、リン酸水溶液の液膜の加熱に並行して、密閉チャンバ内の加圧が実行される。密閉チャンバ内が加圧されることにより、基板の上面に供給されたリン酸水溶液中に含まれる水の沸点を上昇させることができる。したがって、リン酸水溶液が100℃以上の高温に昇温させられても、リン酸水溶液からの水の蒸発を抑制できる結果、リン酸からピロリン酸が生成されること(つまり、リン酸水溶液中で2HPO→H+HOの反応がおこること)を抑制できる。これにより、シリコン酸化膜のエッチング量を抑制することができる。その結果、エッチング選択比(シリコン窒化膜のエッチング量/シリコン酸化膜のエッチング量)の値を高くすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記基板の上面に水を供給するための水供給手段(45)をさらに含み、前記制御手段は、前記水供給手段を制御して、前記リン酸水溶液の液膜の加熱に並行して、前記リン酸水溶液の液膜に水を供給させる水供給ステップを実行する、請求項1に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、リン酸水溶液の液膜の加熱に並行してリン酸水溶液の液膜に水が供給される。そのため、リン酸水溶液の液膜に含まれる水分量が増加する。これにより、リン酸水溶液中でH+HO→2HPOの反応が起こり、リン酸水溶液中のピロリン酸をリン酸に変える反応を促進することができる。その結果、エッチング選択比の低下をより一層抑制できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記リン酸液加熱手段は、前記基板保持手段に保持されている基板の下方から当該基板を加熱する基板加熱手段(24)を含む、請求項1または2に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板が、基板加熱手段によって下方側から加熱される。これにより、リン酸によるシリコン窒化膜のエッチングレートを向上させることができる。また、基板の上面とリン酸水溶液とが接する基板界面は界面以外の領域よりも極めて高温となり水分の蒸発によりピロリン酸が発生しやすい状態となる。しかし、基板界面以外の領域から基板界面への水分の補給により一旦発生したピロリン酸がリン酸に戻されるため、ピロリン酸によるシリコン酸化膜のエッチングを抑制することができる。
【0012】
このように基板界面温度を高めることにより、シリコン窒化膜のエッチングレートだけでなく、エッチング選択比も改善することができる。
請求項4に記載のように、前記制御手段は、前記基板の上面に保持されている基板の上面にリン酸水溶液を供給してパドル状のリン酸水溶液の液膜を形成する液膜形成ステップをさらに実行し、かつ前記リン酸液膜加熱ステップにおいて、基板の上面に保持されているパドル状の前記リン酸水溶液の液膜を加熱するようにしてもよい。
請求項に記載の発明は、前記制御手段は、前記密閉チャンバ内を所定圧に達するまで加圧した後に、前記リン酸水溶液の液膜の加熱を開始させる、請求項1〜のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0013】
この構成によれば、密閉チャンバ内を所定圧に達するまで加圧した後に、リン酸水溶液の液膜の加熱が実行される。換言すると、密閉チャンバ内が十分な高圧になってから、リン酸水溶液の液膜の加熱が開始される。そのため、リン酸水溶液の液膜の加熱の全期間に亘って、当該液膜に含まれる水の蒸発を抑制できる。その結果、リン酸水溶液中の水が蒸発してリン酸からピロリン酸が生成されることを効果的に抑制できる。
【0014】
請求項に記載の発明のように、前記加圧手段による加圧時の前記密閉チャンバ内の気圧および前記リン酸水溶液加熱手段による加熱時の前記液膜の温度は、前記基板の上面に形成されるリン酸水溶液の液膜が沸騰することのない気圧および温度に設定されていることが好ましい。
請求項に記載の発明は、前記密閉チャンバは、前記基板を前記内部空間に対して搬出入するための開口が形成されたカップ部と、当該カップ部の開口を閉塞可能な蓋部材と、前記蓋部材を昇降させる蓋部材昇降機構とを含み、前記蓋部材昇降機構は、前記蓋部材が下降し前記密閉チャンバの内部空間が外部から密閉された閉状態と、前記蓋部材が上昇し前記密閉チャンバの内部空間が外部に開放された開状態との間で前記蓋部材を昇降させる、請求項1〜のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0015】
この構成によれば、蓋部材は、蓋部材昇降機構により、蓋部材が下降して内部空間が外部から密閉された閉状態と、蓋部材が上昇し密閉チャンバの内部空間が外部に開放された開状態との間で昇降可能に設けられている。そのため、密閉チャンバを開状態にすることにより、密閉チャンバ内に対する基板の搬出入を良好に行うことができ、また、密閉チャンバを閉状態にすることにより、当該密閉チャンバの内部空間を密閉状態に維持できる。
【0016】
請求項に記載の発明のように、前記リン酸供給手段は、前記蓋部材昇降機構により前記密閉チャンバの内部空間が外部に開放された状態で、前記基板保持手段に保持された前記基板の上面にリン酸水溶液の液膜を形成し、前記加圧手段は、前記蓋部材昇降機構により前記密閉チャンバの内部空間が外部から密閉された状態で前記液膜が加圧されるように、前記密閉チャンバ内を加圧してもよい。
【0017】
請求項に記載の発明は、密閉チャンバ(3)内で基板保持手段(4)に水平姿勢に保持された基板(W)の上面であって、当該基板の上面にシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜が含まれた基板の上面にリン酸水溶液の液膜(60)を形成するために、当該上面にリン酸水溶液を供給するリン酸供給ステップと、前記リン酸水溶液の液膜を加熱するリン酸液膜加熱ステップと、前記リン酸液膜加熱ステップに並行して実行され、前記密閉チャンバ内を加圧する加圧ステップとを含む、基板処理方法である。
【0018】
この発明の方法によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる基板処理方法を提供することができる。
請求項10に記載のように、前記リン酸供給ステップは、パドル状のリン酸水溶液の液膜を形成するステップを含み、前記リン酸液膜加熱ステップは、基板の上面に保持されているパドル状の前記リン酸水溶液の液膜を加熱するステップを含んでいてもよい。
また、請求項11に記載のように、前記リン酸液膜加熱ステップに並行して実行され、前記リン酸水溶液の液膜に水を供給する水供給ステップをさらに含んでいてもよい。
請求項12に記載の発明は、前記加圧ステップによる加圧により前記密閉チャンバ内を所定圧にまで達した後に、前記リン酸液膜加熱ステップの実行を開始する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
【0019】
この発明の方法によれば、請求項の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる基板処理方法を提供することができる。
また、請求項13に記載の発明のように、前記リン酸供給ステップにより前記基板の上面に前記リン酸水溶液の液膜が形成された後に、前記加圧ステップを開始してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を示す模式的な断面図である。
図2図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3図1に示す基板処理装置によるエッチング処理の処理例を示すフローチャートである。
図4図3に示す処理例の主要な工程を説明するためのタイムチャートである。
図5A-5B】図3に示す処理例の一工程を説明するための図解的な図である。
図5C-5D】図5Bに次いで実行される工程を説明するための図解的な図である。
図5E-5F】図5Dに次いで実行される工程を説明するための図解的な図である。
図5G図5Fに次いで実行される工程を説明するための図解的な図である。
図6図1に示す内部空間の気圧および加熱温度の第1の設定方法を示すフローチャートである。
図7図6に示す第1の設定方法の気圧とリン酸水溶液の沸点との関係を示すグラフである。
図8図1に示す内部空間の気圧および加熱温度の第2の設定方法を示すフローチャートである。
図9図8に示す第2の設定方法の気圧とリン酸水溶液の沸点との関係を示すグラフである。
図10図1に示す内部空間の気圧および加熱温度の第3の設定方法を示すフローチャートである。
図11図10に示す第3の設定方法の気圧とリン酸水溶液の沸点との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を示す模式的な断面図である。
基板処理装置1は、基板の一例としての円形の半導体ウエハ(以下、単に「ウエハW」という)におけるデバイス形成領域側の表面(上面)に対して、シリコン窒化膜(SiN)のエッチング処理を施すための枚葉型の装置である。このエッチング処理は、ウエハWの表面から、シリコン窒化膜を選択的にエッチングするための処理であり、エッチング液としてリン酸水溶液が用いられる。
【0022】
図1に示すように、基板処理装置1は、隔壁(図示せず)により区画された処理室6内に、1枚のウエハWを水平に保持して回転させるスピンチャック4(基板保持手段)と、処理室6内で、スピンチャック4を収容し、内部に密閉空間を形成可能な密閉カップ3(密閉チャンバ)と、スピンチャック4に保持されているウエハWの下面に対向配置され、ウエハWを下方から加熱するためのホットプレート24(基板加熱手段)とを備えている。
【0023】
基板処理装置1は、さらに、スピンチャック4に保持されているウエハWの表面にリン酸水溶液を供給するためのリン酸供給機構35(リン酸供給手段)と、スピンチャック4に保持されているウエハWの表面にリンス液を供給するためのリンス液供給機構40と、スピンチャック4に保持されているウエハWの表面にDIW(脱イオン水)を供給するためのDIW供給機構45(水供給手段)と、密閉カップ3の内部空間2に窒素ガスを供給して、当該内部空間2を加圧するための窒素ガス供給機構50(加圧手段)とを備えている。
【0024】
スピンチャック4は、この実施形態では、挟持式のものが採用されている。スピンチャック4は、鉛直に延びる筒状の回転軸18と、回転軸18の上端に水平姿勢に取り付けられた円板状のスピンベース19と、スピンベース19に等間隔で配置された複数個(少なくとも3個。たとえば6個)の挟持部材20と、回転軸18に連結された回転駆動機構21を備えている。
【0025】
各挟持部材20は、側面視L形の支持アーム25の先端に、ウエハWの周縁部を挟持するための挟持ピン26を下向きに配設して構成されている。複数の挟持ピン26には、挟持ピン駆動機構27が結合されている。挟持ピン駆動機構27は、複数の挟持ピン26を、ウエハWの周縁部と当接してウエハWを挟持することができる挟持位置と、この挟持位置よりもウエハWの径方向外方の開放位置とに導くことができるようになっている。スピンチャック4は、各挟持ピン26をウエハWの周縁部に当接させて挟持することにより、ウエハWがスピンチャック4に強固に保持される。
【0026】
なお、挟持部材として、挟持部材20に代えて、上向きの挟持ピン(下側が支持された挟持ピン)を有する挟持部材を採用することもできる。
回転駆動機構21は、たとえば電動モータである。挟持部材20によって保持されたウエハWは、回転駆動機構21からの回転駆動力が回転軸18に伝えられることにより、ウエハWの中心を通る鉛直な回転軸線Lまわりにスピンベース19と一体的に回転させられる。
【0027】
ホットプレート24は、たとえば水平平坦な表面を有する円板状に形成されており、ウエハWの外径と同等の外径を有している。ホットプレート24は、円形を有する表面(上面)が、スピンチャック4に保持されたウエハWの下面に対向している。ホットプレート24は、スピンベース19の上面と、スピンチャック4に保持されるウエハWの下面との間に水平姿勢で配置されている。ホットプレート24は、セラミックや炭化ケイ素(SiC)を用いて形成されており、その内部にヒータ32が埋設されている。ヒータ32の加熱によりホットプレート24全体が温められて、ホットプレート24がウエハWを加熱するように機能する。ホットプレート24の上面の全域において、ヒータ32のオン状態における当該上面の単位面積当たりの発熱量は均一に設定されている。ホットプレート24は、スピンベース19および回転軸18を上下方向に貫通する貫通穴30を回転軸線Lに沿って鉛直方向(スピンベース19の厚み方向)に挿通する支持ロッド31により支持されている。
【0028】
貫通孔30の内壁には複数のシール31aが上下方向に適宜の間隔をあけて配設され、貫通孔30の内部で支持ロッド31を支持するとともに、密閉カップ3の内部空間2を処理室6における密閉カップ3外の空間から遮断(密閉)している。シール31aは例えば磁気流体シールである。シール31は支持ロッド31を、貫通穴30においてスピンベース19または回転軸18から離隔させている。支持ロッド31の下端は、スピンチャック4の下方の周辺部材に固定され、これにより、支持ロッド31が姿勢保持されている。このように、ホットプレート24がスピンチャック4に支持されていないので、ウエハWの回転中であっても、ホットプレート24は回転せずに静止(非回転状態)している。
【0029】
支持ロッド31には、ホットプレート24を昇降させるためのヒータ昇降機構34が結合されている。ホットプレート24は、ヒータ昇降機構34により水平姿勢を維持したまま昇降される。ヒータ昇降機構34は、たとえばボールねじやモータによって構成されている。ホットプレート24は、ヒータ昇降機構34の駆動により、スピンチャック4に保持されたウエハWの下面から離間する下位置(図5A等参照)と、スピンチャック4に保持されたウエハWの下面に微小間隔を隔てて接近する上位置(図5E等参照)との間で昇降させられる。
【0030】
ホットプレート24の上面が上位置にある状態で、スピンチャック4に保持されたウエハWの下面とホットプレート24の上面との間の間隔は、たとえば3.0mm程度に設定されている。このように、ホットプレート24とウエハWとの間隔を変更させることができ、これにより、ホットプレート24がウエハWに与える熱量を調整することができる。
リン酸供給機構35は、リン酸ノズル36を含む。リン酸ノズル36は、たとえば連続流の状態で液を吐出するストレートノズルによって構成されていて、その吐出口を、ウエハWの表面中央部に向けた状態で、処理室6内の密閉カップ3の外側に固定的に配置されている。リン酸ノズル36には、リン酸水溶液供給源から沸点(たとえば約140℃)近くのリン酸水溶液が供給されるリン酸配管37が接続されている。リン酸配管37には、リン酸配管37を開閉するためのリン酸バルブ38が介装されている。リン酸バルブ38が開かれると、リン酸配管37からリン酸ノズル36にリン酸水溶液が供給され、また、リン酸バルブ38が閉じられると、リン酸配管37からリン酸ノズル36へのリン酸水溶液の供給が停止される。
【0031】
なお、この実施形態では、リン酸ノズル36は、処理室6内の密閉カップ3の外側に固定的に配置されている例を示しているが、リン酸ノズル36は、必ずしも処理室6内の密閉カップ3の外側に固定的に配置されている必要はなく、たとえば、スピンチャック4の上方において水平面内で揺動可能なアームに取り付けられて、このアームの揺動によりウエハWの表面におけるリン酸水溶液の着液位置がスキャンされる、いわゆるスキャンノズルの形態が採用されてもよい。
【0032】
リンス液供給機構40は、リンス液ノズル41を含む。リンス液ノズル41は、たとえば連続流の状態で液を吐出するストレートノズルによって構成されていて、その吐出口を、ウエハWの表面中央部に向けた状態で、処理室6内の密閉カップ3の外側に固定的に配置されている。リンス液ノズル41には、リンス液供給源からリンス液が供給されるリンス液配管42が接続されている。リンス液配管42には、リンス液配管42を開閉するためのリンス液バルブ43が介装されている。リンス液バルブ43が開かれると、リンス液配管42からリンス液ノズル41にリンス液が供給され、また、リンス液バルブ43が閉じられると、リンス液配管42からリンス液ノズル41へのリンス液の供給が停止される。リンス液は、たとえばDIWであるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水および希釈濃度(たとえば、10ppm〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0033】
なお、リンス液ノズル41についても、リン酸ノズル36の場合と同様に、必ずしも処理室6内の密閉カップ3の外側に固定的に配置されている必要はなく、いわゆるスキャンノズルの形態が採用されてもよい。
密閉カップ3は、上面に円形の開口5を有し、略円筒の有底容器状をなすカップ10と、開口5を開閉するための蓋部材11とを備えている。蓋部材11がカップ10の開口5を閉塞した状態で、密閉カップ3の内部空間2が外部から密閉される。
【0034】
カップ10は、略円板状の底壁部14と、底壁部14の周縁部から上方に立ち上がる周壁部15とを一体的に含む隔壁13を備えている。周壁部15は、スピンチャック4の周囲を取り囲んでいる。底壁部14は、周壁部15により取り囲まれた領域を下側から閉塞している。底壁部14の中央部には、スピンチャック4の回転軸18を挿通させるための挿通穴14aが形成されている。回転軸18の外周面における当該挿通穴14aと対応する位置には、円環状の第1シール部材9が固定的に配置されている。
【0035】
第1シール部材9は、回転軸18が底壁部14と接触することなく回転軸線L周りに回転可能となるように、回転軸18の外周面と底壁部14の挿通穴14aとをシールしている。第1シール部材9の一例としては磁性流体シールが挙げられる。つまり、カップ10(密閉カップ3)は、回転軸18と一体的に回転しない構造となっている。また、第1シール部材9により、密閉カップ3の内部空間2を、処理室6における密閉カップ3外の空間から遮断(密閉)することができる。
【0036】
周壁部15の周囲には、スピンチャック4に保持されたウエハWから飛び散るエッチング液を捕獲するための捕獲用カップ(図示せず)が配設され、当該捕獲用カップは機外の廃液設備(図示せず)に接続されている。
蓋部材11は、ウエハWよりもやや大径の略円板状をなし、スピンチャック4の上方において、ほぼ水平な姿勢で配置されている。蓋部材11は、その中心がウエハWの回転軸線L上に位置するように配置されている。蓋部材11の周縁部には、当該周縁部から下方に垂下する円筒状の鍔部16が形成されている。鍔部16の下面は、カップ10の周壁部15の上面に対向している。蓋部材11は、カップ10の開口5をスピンチャック4の上側から閉塞可能に構成されている。蓋部材11の鍔部16の下端面には、第2シール部材12が固定的に配置されている。第2シール部材12は、たとえばシール環である。第2シール部材12は、たとえば樹脂製の弾性材料を用いて形成されている。
【0037】
蓋部材11には、蓋部材11をカップ10に対して昇降させるための蓋部材昇降機構17が取り付けられている。蓋部材昇降機構17の駆動により、蓋部材11は、蓋部材11がカップ10の開口5を閉塞する閉位置(図1に示す位置)と、蓋部材11がカップ10から所定の間隔を隔てて離間する開位置(図5Aに示す位置)との間で昇降可能となる。蓋部材11が閉位置にある状態(以下、この状態を、「閉状態」という。)で、蓋部材11の鍔部16の下端面に配置された第2シール部材12が、その周方向全域において、カップ10の周壁部15の上端面に当接し、これにより、カップ10と蓋部材11との間を上下にシールできる。この閉状態では、密閉カップ3の内部空間2が、処理室6における密閉カップ3外の空間から遮断(密閉)される。
【0038】
なお、密閉カップ3において第1シール部材9および第2シール部材12を設け、これにより内部空間2内の密閉状態を維持している。しかし、窒素ガス供給機構50が十分な供給容量を有していれば、密閉カップ3に第1シール部材9および第2シール部材12がなく、密閉カップ3が密閉されていなくても、密閉カップ3の内部空間2を加圧状態に遷移させることができる。したがって、密閉カップ3に第1シール部材9および第2シール部材12は必須の構成ではなく、第1シール部材9および第2シール部材12を省略することも可能である。
【0039】
DIW供給機構45は、DIWノズル46を含む。DIWノズル46は、密閉カップ3の蓋部材11の中心部に固定的に取り付けられており、当該中心部を、鉛直方向に挿通するように延びている。DIWノズル46には、DIW供給源からDIWが供給されるDIW配管47が接続されている。DIW配管47には、DIW配管47を開閉するためのDIWバルブ48が介装されている。DIWバルブ48が開かれると、DIW配管47からDIWノズル46に供給されたDIWが、DIWノズル46の下端に設定された吐出口から吐出される。DIW配管47に供給されるDIWの流量は、DIWノズル46の吐出口からDIWが液滴として吐出される(滴下される)ような流量に設定されている。また、DIWバルブ48が閉じられると、DIW配管47からDIWノズル46へのDIWの供給が停止される。
【0040】
窒素ガス供給機構50は、窒素ガスノズル51を含む。窒素ガスノズル51は、密閉カップ3の蓋部材11の中心部に、DIWノズル46に隣接して固定的に取り付けられており、当該中心部を、鉛直方向に挿通するように延びている。窒素ガスノズル51には、窒素ガス供給源から窒素ガスが供給される窒素ガス配管52が接続されている。窒素ガス配管52には、窒素ガス配管52を開閉するための窒素ガスバルブ53が介装されている。窒素ガスバルブ53が開かれると、窒素ガス配管52から窒素ガスノズル51に窒素ガスが供給され、また、窒素ガスバルブ53が閉じられると、窒素ガス配管52から窒素ガスノズル51への窒素ガス供給が停止される。
【0041】
図2は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置55を備えている。制御装置55には、蓋部材昇降機構17、回転駆動機構21、挟持ピン駆動機構27、ヒータ32、ヒータ昇降機構34、リン酸バルブ38、リンス液バルブ43、DIWバルブ48、窒素ガスバルブ53等が制御対象として接続されている。
【0042】
図3は、図1に示す基板処理装置1によるエッチング処理の処理例を示すフローチャートである。
図3を参照すれば、基板処理装置1は、ウエハWの表面にリン酸水溶液を供給して、シリコン窒化膜をリン酸エッチングするステップS1のリン酸エッチング処理と、ウエハWの表面にリンス液を供給してウエハWの表面に付着したリン酸を洗い流すステップS2のリンス処理と、ウエハWを高速に回転させてウエハWの表面に付着したリンス液を乾燥させるステップS3のスピンドライとを順に実行する。
【0043】
以下、図1図5Gを参照しつつ、基板処理装置1によるエッチング処理の処理例についてより具体的に説明する。
図4は、図3に示すステップS1のリン酸エッチング処理およびステップS2のリンス処理を説明するためのタイムチャートである。図5A図5Gは、図3に示す処理例の一工程を説明するための図解的な図である。
【0044】
まず、リン酸によるエッチング処理を開始するに際して、制御装置55は、搬送ロボット(図示せず)を制御して、その表面にシリコン酸化膜(SiO)上にシリコン窒化膜(SiN)が部分的に積層されたウエハWを密閉カップ3内に搬入させる。密閉カップ3内に搬入されたウエハWは、挟持ピン26が開放位置から挟持位置に駆動するように挟持ピン駆動機構27が制御されることにより、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜が形成された表面を上方に向けた状態で挟持ピン26に挟持される。図5Aに示すように、エッチング処理の開始時には、密閉カップ3の蓋部材11は、カップ10から所定の間隔を隔てて離間する開位置に配置されている。また、ホットプレート24は、ウエハWの下面から離間する下位置に配置されている。なお、このとき、ヒータ32のオフ状態である。
【0045】
スピンチャック4にウエハWが保持された後、制御装置55は、回転駆動機構21を制御して、ウエハWを回転開始させる。ウエハWは予め定める第1回転速度ω1(たとえば、20rpm)まで上昇され、その第1回転速度ω1に維持される。また、制御装置55は、ヒータ32を制御してヒータ32をオン状態にする。ヒータ32の発熱によりホットプレート24の表面(上面)温度が予め定める所定の温度(たとえば、200℃以上)まで昇温させられる。なお、ヒータ32のオンによりホットプレート24の表面は高温状態になるのであるが、ホットプレート24が、下位置に配置されているので、ホットプレート24からの熱によってウエハWが過度に温められることはない。
【0046】
ウエハWの回転開始から予め定める時間が経過すると、図5Bに示すように、制御装置55は、リン酸バルブ38を開いて、リン酸ノズル36から高温のリン酸水溶液をウエハWの表面中央部に向けて吐出させる(図3のステップS1:リン酸エッチング処理(リン酸供給ステップ))。このとき、ウエハWは低速の第1回転速度ω1で回転しているため、ウエハWの表面中央部に着液したリン酸水溶液は、ウエハWの表面中央部からウエハWの表面周縁部に拡がり、パドル状のリン酸水溶液の液膜60が形成される。
【0047】
リン酸水溶液の供給開始から予め定める時間が経過すると、制御装置55は、リン酸バルブ38を閉じて、ウエハWの表面へのリン酸水溶液の供給を停止する。
リン酸水溶液の供給停止に併せて、制御装置55は、回転駆動機構21を制御して、ウエハWの回転速度を第1回転速度ω1から第1回転速度ω1よりも速い第2回転速度ω2(たとえば40rpm)に上昇させる。その後、ウエハWの回転速度は、第2回転速度ω2に維持される。
【0048】
また、制御装置55は、図5Cに示すように、蓋部材昇降機構17を制御して、密閉カップ3の蓋部材11を開位置(図5B参照)から閉位置(図5C参照)まで下降させる。これにより、蓋部材11が閉位置に配置され、密閉カップ3が閉状態となる。この閉状態において、密閉カップ3の内部空間2は密閉状態になる。
密閉カップ3が閉状態に遷移させられると、制御装置55は、図5Dに示すように、窒素ガスバルブ53を開いて密閉カップ3の内部空間2に窒素ガスを供給する(加圧ステップ)。このとき、窒素ガスノズル51から吐出された窒素ガスは、当該内部空間2に滞留するため、密閉カップ3内(内部空間2)は、継続的な窒素ガスの供給に伴って加圧される。これにより、密閉カップ3内の気圧は、大気圧(1013.25hpa)よりも高い気圧に上昇させられる。この実施形態では、窒素ガスの供給の結果、密閉カップ3内の気圧がたとえば5800hpa程度にまで達する。密閉カップ3内の気圧の上昇により、密閉カップ3内では、液体の沸点が上昇する。密閉カップ3内の気圧がたとえば5800hpa程度にまで高まると、密閉カップ3内では、水の沸点がたとえば160℃程度にまで上昇する。なお、密閉カップ3内の気圧およびウエハWの加熱温度は、使用するリン酸水溶液の濃度に基づいてリン酸水溶液の液膜の沸騰が防止できる限度で設定される。密閉カップ3内の気圧およびウエハWの加熱温度の設定方法については後述する。
【0049】
密閉カップ3内の気圧が所望の高圧にまで上昇させられた後、制御装置55は、図5Eに示すように、ヒータ昇降機構34を制御して、ホットプレート24が下位置(図5D参照)から上位置(図5E参照)まで上昇させる。また、制御装置55は、図5Eに示すように、DIWバルブ48を開き、DIWノズル46からDIWの液滴をウエハWの表面上に、パドル状態のリン酸水溶液の液膜60に向けて滴下させる。
【0050】
ホットプレート24が上位置(図5E参照)に配置されることにより、上位置にあるホットプレート24の表面からの熱輻射によりウエハWが加熱される。ウエハWは、たとえば約160℃まで昇温させられる。また、ウエハWが高温に熱せられるから、ウエハWの表面のリン酸水溶液の液膜60も高温に昇温される。これにより、ウエハWとの境界部分のリン酸水溶液にウエハWの表面に近づくほど高くなる温度勾配が形成される結果、ウエハWの表面とリン酸水溶液とが接する境界において、局所的には極めて高温(一例として約160℃)を実現することができる。
【0051】
また、リン酸水溶液の液膜60へのDIWの液滴の供給により、リン酸水溶液の液膜60に含まれる水分の量が多くなる。しかも、前述のように密閉カップ3内は加圧されており、そのため、密閉カップ3内における水の沸点はたとえば160℃程度である。したがって、リン酸水溶液が160℃程度の高温にまで加熱されても、当該リン酸水溶液に含まれる水の蒸発を抑制できる。また、ステップS1のリン酸エッチング処理において、リン酸水溶液の液膜60に含まれる水分の量を多く保つことができる。そして、リン酸水溶液の液膜に含まれる水分の量が多いから、リン酸水溶液の液膜60においてH+HO→2HPOの反応が促進される。
【0052】
次いで、予め定めるリン酸水溶液の液膜60の加熱時間が経過すると、制御装置55は、図5Fに示すように、窒素ガスバルブ53およびDIWバルブ48を閉じて窒素ガスおよびDIWの供給を停止させる。その後、制御手段55は図示しないリーク手段により内部空間2内の雰囲気を外気に放出させることにより、内部空間2の気圧を大気圧まで下げる。また、制御装置55は、蓋部材昇降機構17を制御して、蓋部材11の位置を閉位置(図5D参照)から開位置(図5F参照)まで上昇させる。また、制御装置55は、ヒータ昇降機構34を制御して、ホットプレート24の位置を上位置(図5D参照)から下位置(図5F参照)まで下降させる。これにより、ホットプレート24によるウエハWの加熱は終了する。
【0053】
次いで、制御装置55は、図5Gに示すように、回転駆動機構21を制御して、ウエハWの回転速度を第2回転速度ω2から第2回転速度ω2よりも高速の第3回転速度ω3(たとえば500rpm)まで上昇させる。また、制御装置55は、リンス液バルブ43を開いて、リンス液ノズル41からウエハWの表面中央部に向けてリンス液を吐出させる(図3のステップS2:リンス処理)。
【0054】
ウエハWの表面に供給されたリンス液は、ウエハWの回転遠心力によりウエハWの表面中央部からウエハWの表面周縁部に拡がる。これにより、リンス液は、ウエハWの表面の全域に行き渡り、ウエハWの表面に残留したリン酸水溶液を洗い流す。
予め定める洗浄時間が経過すると、制御装置55は、リンス液バルブ43を閉じて、ウエハWの表面へのリンス液の供給を停止する。その後、制御装置55は、回転駆動機構21を制御して、ウエハWの回転速度を第3回転速度ω3よりも高速の回転速度(たとえば1500rpm〜2500rpm)に上昇させて、ウエハWに付着しているリンス液を振り切って乾燥されるスピンドライ処理が行われる(図3のステップS3:スピンドライ)。
【0055】
ステップS3のスピンドライが実行された後、制御装置55は、搬送ロボットを制御して、処理済みのウエハWを密閉カップ3の内部空間2から搬出させる。
以上のように、この実施形態によれば、ウエハWの表面に形成されたリン酸水溶液の液膜60は、ホットプレート24により加熱され、昇温させられる。これにより、リン酸水溶液のシリコン窒化膜に対する反応速度が高められる結果、エッチングレート(単位時間当たりのシリコン窒化膜のエッチング量)を高めることができる。
【0056】
また、リン酸水溶液の液膜60の加熱に並行して、密閉カップ3の内部空間2の加圧が実行される。密閉カップ3の内部空間2が加圧されることによりウエハWの表面に供給されたリン酸水溶液中に含まれる水の沸点を上昇(たとえば160℃近程度まで上昇)させることができる。したがって、リン酸水溶液が沸点近くの高温(たとえば、約160℃)に昇温させられても、リン酸水溶液からの水の蒸発を抑制できる結果、リン酸からピロリン酸が生成されること(つまり、リン酸水溶液中で2HPO→H+HOの反応がおこること)を抑制できる。これにより、シリコン酸化膜のエッチング量を抑制することができる。その結果、エッチング選択比(シリコン窒化膜のエッチング量/シリコン酸化膜のエッチング量)の値を高くすることができる。
【0057】
次に、密閉カップ3の内部空間2の気圧およびリン酸水溶液の液膜60(図5B図5E参照)の加熱温度(以下、「加熱温度」と言う。)の設定方法について説明する。内部空間2の気圧および加熱温度は三通りの方法で設定することができる。図6は第1の設定方法、図8は第2の設定方法、図10は第3の設定方法を示すフローチャートである。
図6は、内部空間2の気圧および加熱温度の第1の設定方法を示すフローチャートである。図7は、図6に示す第1の設定方法の気圧とリン酸水溶液の沸点との関係を示すグラフである。
【0058】
図7において、横軸は密閉カップ3の内部空間2の気圧(hpa)を表し、縦軸はリン酸水溶液の沸点温度(℃)を表している。なお、図7には、リン酸濃度が0%の溶液(純水)の曲線aと、リン酸濃度85%のリン酸水溶液の曲線bと、リン酸濃度90%の曲線cとが例示的にプロットされている。図7には3本の曲線しか示されていないが、実際にはより多くのリン酸濃度の曲線をプロットすることが望ましい。
【0059】
まず、作業者は、図6に示すように、所望するエッチングレート等に基づいてこの基板処理装置1で使用するリン酸水溶液の濃度を決定する(ステップS11)。
次に、作業者は、ステップS11で決定されたリン酸水溶液の濃度に基づいて、当該濃度に対応する気圧・沸点曲線(例えば、図7に示す曲線b)を選択する(ステップS12)。
【0060】
次に、作業者は、密閉カップ3に適用する上限の気圧(以下、「上限気圧」という。)を密閉カップ3の耐圧性能等を考慮して決定し、気圧・沸点曲線にプロットする(ステップS13)。ここでは例えば、上限気圧を5hpaに決定する(ステップS13)。
次に、作業者は、図7に示すグラフに基づいて、上限気圧(5hpa)の環境下において、リン酸水溶液の液膜60が沸騰しない上限の温度(以下、「上限温度」という。)を設定する(ステップS14)。上限温度は、ステップS13において決定された上限気圧(5hpa)と曲線bとの交点P10により求めることができる。図7に示す曲線bを参照することにより、上限気圧(5hpa)の環境下では、使用するリン酸濃度が85%のとき、リン酸水溶液が約215℃以上で沸騰することが分かる。したがって、この例における上限温度は、約215℃となる。
【0061】
作業者は、この温度を最大圧力(5hpa)下での上限温度に設定し、ウエハW上のリン酸水溶液の液膜60がこの温度以上に加熱されないように、ステップS1のリン酸エッチング処理時におけるホットプレート24の温度やホットプレート24とウエハWとの間隔を設定する。これにより、リン酸水溶液の液膜60が使用中に沸騰することを防止することができる。図7に図式的に示すと、交点P10から垂直に降ろした直線L10上でリン酸水溶液の液膜60の温度を調整することになる。作業者は、直線L10上で、リン酸水溶液からの水の蒸発を効果的に抑制できる温度を探索し、加熱温度を設定する(ステップS15)。
【0062】
ウエハW上のリン酸水溶液の液膜60の沸騰を防止しているのは、リン酸水溶液の液膜60が沸騰していると、液膜60の上方から滴下された液滴が液膜60の表面ではじかれて液膜60に液滴が良好に吸収されなくなるためである。また、液膜60が沸騰していると、リン酸水溶液のエッチングレートが不安定となり、ウエハWのエッチング均一性が損なわれるという問題も生じる。
【0063】
なお、リン酸エッチング処理をステップS13で決定した上限気圧(5hpa)以下の気圧下で実施する場合には、作業者は、その気圧と曲線bとの交点P11を改めて求め、交点P11から垂直に降ろした直線L11上で加熱温度を調整すればよい(ステップS16)。
図8は、内部空間2の気圧および加熱温度の第2の設定方法を示すフローチャートである。図9は、図8に示す第2の設定方法の気圧とリン酸水溶液の沸点との関係を示すグラフである。なお、図9には、前述の図7と同様に、リン酸濃度が0%の溶液(純水)の曲線aと、リン酸濃度85%のリン酸水溶液の曲線bと、リン酸濃度90%のリン酸水溶液の曲線cとが例示的にプロットされている。
【0064】
作業者は、所望するエッチングレート等に基づいてこの基板処理装置1で使用するリン酸水溶液の濃度を決定する(ステップS21)。
次に、作業者は、ステップS21で決定されたリン酸水溶液の濃度に基づいて、当該濃度に対応する気圧・沸点曲線(例えば、図9に示す曲線b)を選択する(ステップS22)。
【0065】
次に、作業者は、ホットプレート24の加熱能力等を考慮してリン酸水溶液の液膜60の上限温度を決定し、気圧・沸点曲線にプロットする(ステップS23)。ここでは例えば、上限温度を200℃に決定する。
次に、作業者は、上限温度(200℃)の環境下において、リン酸水溶液が沸騰しない下限の気圧(以下、「下限気圧」という。)を設定する(ステップS24)。下限気圧は、ステップ23において決定された上限温度(200℃)と曲線bとの交点P20を求めるができる。図9に示す曲線bを参照することにより、上限温度(200℃)の環境下では、使用するリン酸濃度が85%のとき、リン酸水溶液が約3.5hpa以下の気圧で沸騰することが分かる。したがって、この例における下限気圧は、約3.5hpaとなる。
【0066】
作業者はこの気圧を下限圧力に設定し、密閉カップ3内の内部空間2がこの気圧以下とならないように、窒素ガス供給機構50の供給容量やステップS1のリン酸エッチング処理時における窒素ガスバルブ53の開度を設定する。これによりリン酸水溶液の液膜60が使用中に沸騰することを防止することができる。図9に図式的に示すと、作業者は、交点P20から水平に伸ばした直線L20上でリン酸水溶液からの水の蒸発を効果的に抑制できる気圧を探索し、使用する気圧に設定する(ステップS25)。
【0067】
なお、リン酸エッチング処理をステップS23で決定した上限温度(200℃)以下の温度で実施する場合には、作業者は、その使用温度と曲線bとの交点P21を改めて求め、交点P21水平に伸ばした直線L21上で気圧を調整すればよい(ステップS26)。
図10は、内部空間2の圧力および加熱温度の第3の設定方法を説明するフローチャートである。図11は、図10に示す第3の設定方法の気圧とリン酸水溶液の沸点との関係を示すグラフである。なお、図11には、前述の図7と同様に、リン酸濃度が0%の溶液(純水)の曲線aと、リン酸濃度85%のリン酸水溶液の曲線bと、リン酸濃度90%のリン酸水溶液の曲線cとが例示的にプロットされている。
【0068】
まず、作業者は、所望するエッチングレート等に基づいてこの基板処理装置1で使用するリン酸水溶液の濃度を決定する(ステップS31)。
次に、作業者は、ステップS11で決定されたリン酸水溶液の濃度に基づいて、当該濃度に対応する気圧・沸点曲線(例えば、図11に示す曲線b)を選択する(ステップS32)。
【0069】
次に、作業者は、ホットプレート24の加熱能力等を考慮してリン酸水溶液の液膜60の上限温度を決定する。ここでは例えば、上限温度を200℃に決定する(ステップS33)。
次に、作業者は、密閉カップ3に適用する上限気圧を密閉カップ3の耐圧性能等を考慮して決定する。ここでは例えば、上限気圧を5hpaに決定する(ステップS34)。
【0070】
次に、作業者は、図11に示す曲線b上の任意の点よりも低温かつ低圧の点からなる領域であって、上限気圧(5hpa)よりも低圧で、かつ上限温度(200℃)よりも低温の領域Aを画定する(ステップS35)。
作業者は、領域Aの中でリン酸水溶液からの水の蒸発を効果的に抑制できる、気圧および加熱温度の組み合わせ(例えば点P3)を探索し、その気圧および加熱温度の組み合わせを、使用する気圧と加熱温度とに設定する(ステップS36)。
【0071】
以上により、エッチングレートを高めるとともに、エッチング選択比の低下を抑制できる基板処理装置1および基板処理方法を提供することができる。
さらには、リン酸水溶液の液膜60において、ウエハWの表面との境界部分のリン酸水溶液に、ウエハWの表面に近づくほど高くなる温度勾配が形成される。これにより、ウエハWの表面とリン酸水溶液とが接する境界において、局所的には極めて高温(一例として約160℃)を実現することができる。しかも、このような境界においても、リン酸濃度は、当該境界以外の領域と同程度に低く維持されている。このような高温かつ低濃度のリン酸水溶液を、ウエハWの表面に作用させることができる。その結果、エッチングレートを非常に高めることができ、同時にエッチング選択比を高くすることができる。
【0072】
また、密閉カップ3の内部空間2が十分な高圧になってから、リン酸水溶液の液膜60の加熱が開始されるので、リン酸水溶液の液膜60の加熱の全期間に亘って、当該液膜60に含まれる水の蒸発を抑制できる。その結果、リン酸水溶液中の水が蒸発してリン酸からピロリン酸が生成されることを効果的に抑制できる。
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。
【0073】
たとえば、前述の実施形態では、ウエハWの外径と同等の外径を有しているホットプレート24の例について説明したが、ウエハWの外径よりも大きい外径を有するホットプレート24を採用してもよい。このような構成であれば、より確実に、ウエハWの下面全域を加熱することができる。
また、ホットプレート24に代えて、ウエハWの上方側からリン酸水溶液の液膜60を加熱するためのヒータを設けてもよい。この場合、ウエハWの上方側からウエハWの表面に対して赤外線を照射する赤外線ヒータであってもよい。赤外線ヒータを採用する場合、当該赤外線ヒータをウエハWの表面に対向配置しつつ、ウエハWの表面に沿って移動させることが好ましい。
【0074】
この場合には、ウエハWの下方側にホットプレート24を配置する必要がないので、スピンチャック4に代えて、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で回転軸線Lまわりに回転することによって、その保持したウエハWを回転させる真空吸着式のスピンチャックが採用されてもよい。
また、前述の実施形態では、DIWの液滴をウエハWの表面中央部に吐出(滴下)するためのDIW供給機構45について説明したが、DIW供給機構45は、水の液滴を吐出(滴下)する多数の吐出口を有する多孔ノズルを含んでいてもよい。この場合、多数の吐出口のそれぞれからDIWの液滴が吐出(滴下)されるので、ウエハWの表面に形成されたリン酸水溶液の液膜60に、ほぼ均一にDIWを供給することができる。これにより、リン酸水溶液のリン酸濃度を均一に保つことができるので、ウエハWの全域でエッチング選択比を一様に保つことができる。また、DIW供給機構45は、スプレー状のDIWを噴射するスプレーノズルを含んでいてもよい。
【0075】
また、前述の実施形態では、リン酸水溶液がウエハWに供給された後に、ホットプレート24によるウエハWの加熱が開始される場合について説明したが、リン酸水溶液がウエハWに供給される前にホットプレート24を上位置(図5Dに示す位置)に配置させて、ホットプレート24によるウエハWの加熱が開始されてもよい。この場合、ウエハWが加熱されている状態で、リン酸水溶液がウエハWに供給されるので、リン酸水溶液の温度を所定温度まで上昇させる時間を短縮できる。
【0076】
また、前述の実施形態では、処理室6内における密閉カップ3外に固定的に配置されたリン酸ノズル36の例について説明したが、リン酸ノズル36は、DIWノズル46および窒素ガスノズル51と同様に、密閉カップ3の蓋部材11の中心部に固定的に取り付けられており、当該中心部を、鉛直方向に挿通するように延びている構成であってもよい。また、リンス液ノズル41についても、処理室6内における密閉カップ3外に、固定的に配置されている必要はなく、DIWノズル46および窒素ガスノズル51と同様に、密閉カップ3の蓋部材11の中心部に固定的に取り付けられており、当該中心部を、鉛直方向に挿通するように延びている構成であってもよい。
【0077】
また、前述の実施形態では、ウエハWの表面にパドル状のリン酸水溶液の液膜60を形成してステップS1のリン酸エッチング処理を実施する場合について説明したが、リン酸水溶液を貯留するための貯留槽を備えたスピンチャックを採用して、リン酸水溶液で満たされた貯留槽内にウエハWを浸漬させた状態で、ステップS1のリン酸エッチング処理を実施してもよい。
【0078】
また、前述の実施形態では、処理室6内に、内部に密閉空間を形成可能な密閉カップ3を設け、密閉カップ3内で、ウエハWにエッチング処理を施す場合を例に挙げて説明したが、処理室6全体が、密閉チャンバに形成されており、その内部が外部から密閉された構成が採用されていてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 基板処理装置
2 内部空間(内部空間)
3 密閉カップ(密閉チャンバ)
4 スピンチャック(基板保持手段)
24 ホットプレート(基板加熱手段)
35 リン酸供給機構(リン酸供給手段)
45 DIW供給機構(水供給手段)
50 窒素ガス供給機構(加圧手段)
55 制御装置(制御手段)
60 リン酸水溶液の液膜
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5A-5B】
図5C-5D】
図5E-5F】
図5G
図6
図7
図8
図9
図10
図11