(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233566
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】生分解性樹脂の分解方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/18 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
C08J11/18ZAB
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-202295(P2013-202295)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-67695(P2015-67695A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】片山 傳喜
【審査官】
大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−000099(JP,A)
【文献】
特開2005−162832(JP,A)
【文献】
特開2010−011876(JP,A)
【文献】
特開2006−087394(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/041715(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
至適pHが7.5以上の生分解性樹脂分解酵素を含む緩衝液中で生分解性樹脂を分解する方法であって、前記緩衝液は、pH9.5以上に調整されたトリスアミノメタンである、方法。
【請求項2】
緩衝液がpH10.0以上に調整されたトリスアミノメタンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
緩衝液がpH10.5以上に調整されたトリスアミノメタンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
生分解性樹脂分解酵素がアルカリプロテアーゼである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
生分解性樹脂がポリ乳酸系樹脂を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
生分解樹脂が、ペレット、フィルム、粉末、単層繊維、芯鞘繊維又はカプセルの形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂を効率的に分解する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸系樹脂などの生分解性樹脂は、包装資材をはじめ、農業分野のマルチフィルムや、地下資源掘削のための坑井掘削法にも使用されるなど、その用途が拡大されてきている。これに伴い、生分解性樹脂の分解速度の向上、分解トリガーあるいは分解速度制御技術の開発など、多様な用途に対応するための技術の開発が求められている。ロータリー式掘削法の場合、泥水を還流しながらドリルにより掘削する方法で、仕上げ流体として脱水調整剤が用いられ、泥壁と呼ばれる一種の濾過膜を形成し、坑壁を安定的に保って崩壊を防いだり摩擦軽減がなされる。また水圧破砕法は、坑井内を満たした流体を高圧で加圧することにより、坑井近傍に亀裂(フラクチュア)を生成せしめ、坑井近傍の浸透率(流体の流れ易さ)を改善し、坑井へのオイルやガスなどの資源の有効な流入断面を拡大し、坑井の生産性を拡大するというものである。
【0003】
仕上げ流体の場合、脱水調整剤として炭酸カルシウムや顆粒塩が主に用いられているが、取り除く際に酸処理を必要とすることや、坑井の地層に根詰まりすることによる生産障害をもたらしている。また水圧破砕法で用いられる流体は、フラクチュアリング流体とも呼ばれ、古くはジェル状のガソリンのような粘性流体が使用されていたが、最近では、比較的浅いところに存在する頁岩層から産出するシェールガスなどの開発に伴い、環境に対する影響を考慮し、水にポリマーを溶解乃至分散させた水性分散液が使用されるようになってきた。このようなポリマーとしては、ポリ乳酸が知られている。
【0004】
即ち、ポリ乳酸は加水分解性と酵素分解性を示す物質であり、地中に残存したとしても、地中の水分や酵素により分解するため環境に対して悪影響を与えることがない。また、分散媒として用いられている水も、ガソリンなどと比較すれば、環境に対する影響はほとんどないといってよい。
また、このようなポリ乳酸の水分散液を坑井中に満たし、これを加圧したとき、ポリ乳酸が坑井近傍に浸透していくが、このポリ乳酸は加水分解して樹脂の形態を失っていくこととなり、このポリ乳酸が浸透していた部分に空間(即ち、亀裂)が生成し、従って、坑井への資源の流入空間を増大することが可能となるわけである。
さらに、ポリ乳酸は、脱水調整剤としても機能し、分散媒として使用されている水の地中への過度の浸透を抑制し、地層に与える環境変化を最小限に抑制するという機能も有している。地中で分解するため酸処理も不要となる。
またポリ乳酸の分解物である乳酸は有機酸の一種であり、ポリ乳酸が分解後、乳酸が放出され、シェール層の頁岩を酸浸食することで、頁岩の多孔化を促進する機能もある。
【0005】
しかしながら、ポリ乳酸は、100℃以上の温度では比較的早く加水分解するものの、100℃未満での加水分解速度は遅く、従って、地中温度の低い箇所から産出するシェールガスなどの採取に適用する場合には、その効率が悪く、改善が求められている。
【0006】
一方、ポリ乳酸に代えて、ポリグリコール酸を使用することが提案されている。ポリグリコール酸も生分解性樹脂として知られており、しかも、ポリ乳酸に比して加水分解性が高く、例えば80℃程度の温度での加水分解速度がポリ乳酸に比してかなり速く、ポリ乳酸の代替えとして効果的である。
しかしながら、ポリグリコール酸は、ポリ乳酸に比してかなり高コストであるという問題があり、これは、多量のフラクチュアリング流体が使用される水圧破砕法では致命的な欠点となっている。また、特定の温度条件下では、十分満足する分解性が得られない。
【0007】
生分解性樹脂を効率的に分解するために、例えば、加水分解により酸を放出する脂肪族ポリエステルを配合することによって生分解性が向上された易分解性樹脂組成物が開発され(国際公開2008−038648号公報)、また、上記の易分解性樹脂組成物の分解方法などが報告されている(特開2010−138389号公報)。しかしながら、上記の技術に加えて、生分解性樹脂の分解速度をさらに向上させる技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2008−038648号公報
【特許文献2】特開2010−138389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、生分解性樹脂を効率的に分解する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、緩衝液中で生分解性樹脂を分解するに際して、所定の生分解性樹脂分解酵素及び緩衝液を使用することにより、生分解性樹脂を効率よく分解できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、至適pHが7.5以上の生分解性樹脂分解酵素を含む緩衝液中で生分解性樹脂を分解する方法であって、前記緩衝液は、その緩衝の平衡式の片側に緩衝成分由来の陰イオンが存在しないものであり、かつ、そのpHは前記陰イオンが存在しない側に平衡が傾く条件を与えるpH領域内に調整されている方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、生分解性樹脂を高速に分解することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】異なる種類及びpHの緩衝液を使用した、ポリ乳酸フィルムの分解の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、生分解性樹脂は特に限定されず、一般に生分解性を有する脂肪族ポリエステルなどが使用される。生分解性を有する脂肪族ポリエステルとしては、例えばポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体や上記脂肪族ポリエステルの共重合体、またポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステルと上記脂肪族ポリエステルとの共重合体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
上記脂肪族ポリエスエルの共重合体を形成する成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ビスフェノールA、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラセンジカルボン酸などのジカルボン酸;グリコール酸、L-乳酸、D-乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、マンデル酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸;グリコリド、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ポロピオラクトン、ウンデカラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
ブレンドするポリマーとしては、セルロース類、キチン、グリコーゲン、キトサン、ポリアミノ酸、澱粉などが挙げられる。なお、ポリ乳酸を用いる際の重合に用いられる乳酸は、L−体又はD−体のいずれかであってもよく、L−体とD−体の混合物であってもよい。
【0016】
好ましい生分解性を有する脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネートなどが挙げられ、ポリ乳酸系樹脂が特に好ましい。
生分解性を有する脂肪族ポリエステルの分子量としては、特に制限されるものではないが、脂肪族ポリエステルを含む生分解性樹脂を用いて容器等を製造する際の機械的特性や加工性を考えると、重量平均分子量で5,000〜1,000,000の範囲が好ましく、10,000〜500,000の範囲がより好ましい。
【0017】
本発明の方法により分解される生分解性樹脂には、必要に応じて、公知の可塑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、顔料、フィラー、充填剤、離型剤、帯電防止剤、香料、滑剤、発泡剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤などの添加剤を配合してもよい。また、生分解性を有する脂肪族ポリエステル以外の樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどの水溶性の樹脂の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、酸変性ポリオレフィン、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステルゴム、ポリアミドゴム、スチレンーブタジエンースチレン共重合体などを配合することができる。
【0018】
尚、上記の酵素分解性樹脂は、分解性を向上させるため、エステル分解促進性の加水分解樹脂(以下、単に「エステル分解性樹脂」と略すことがある)を配合してもよい。
このエステル分解性樹脂は、それ単独ではエステル分解能を示さないが、水分と混合したときにエステル分解の触媒として機能する酸或いはアルカリを放出するものである。
【0019】
このようなエステル分解性樹脂は、通常、上記の難加水分解性の加水分解性樹脂の内部に均一に分散され、このエステル分解性樹脂から放出される酸或いはアルカリによっての加水分解性樹脂の加水分解を迅速に促進するために、例えば、その重量平均分子量が1000乃至200000程度のものが使用される。
【0020】
また、かかるエステル分解樹脂において、アルカリ放出性のものとしては、アクリル酸ソーダ等のアクリル酸のアルカリ金属塩やアルギン酸ソーダ等を用いることができるが、アルカリ放出による環境への悪影響が大きいため、特に酸放出性のものが好適に使用される。
【0021】
酸放出性のエステル分解樹脂としては、特に、0.005g/ml濃度の水溶液乃至水分散液でのpH(25℃)が4以下、特に3以下を示すものであり、水と混合したときに容易に加水分解して酸を放出するポリマーが好適に使用される。
上記ポリマーとして、例えば、ポリオキサレート、ポリグリコール酸などが挙げられる。これらはコポリマー、単独での使用、2種以上を組み合わせての使用でもよい。
コポリマーを形成する成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ビスフェノールA、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラセンジカルボン酸などのジカルボン酸;グリコール酸、L-乳酸、D-乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、マンデル酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸;グリコリド、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ポロピオラクトン、ウンデカラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
【0022】
なお、本明細書では、ホモポリマー、共重合体、ブレンド体において、少なくとも一つのモノマーとしてシュウ酸を重合したポリマーをポリオキサレートとする。
【0023】
特に、上記のポリオキサレートやポリグルコール酸は易加水分解性の加水分解性樹脂であり、速やかに加水分解するため、難加水分解性樹脂の加水分解促進能に優れている。これらの中でも、ポリオキサレート、特にポリエチレンオキサレートは、ポリグリコール酸に比しても著しく高い加水分解促進能を示し、80℃以下の温度でもポリ乳酸等の難加水分解性樹脂の加水分解を著しく促進させることができ、しかもポリグリコール酸に比してもかなり安価であり、コストのメリットも極めて大きい。
【0024】
本発明の方法により分解される生分解樹脂は、ペレット、フィルム、粉末、単層繊維、芯鞘繊維、カプセルなどの形態を採用することが可能であるが、これらに限定されず、それ自体公知の方法により製造することができる。
【0025】
本発明に使用される生分解性樹脂分解酵素としては、至適pHが7.5以上であり、かつ、一般に生分解性樹脂を分解するものであれば特に限定はされず、当業者が任意のものを使用することができる。上記酵素の至適pHは、より好ましくは8.0以上であり、さらに好ましくは8.5以上である。このような酵素としてはアルカリプロテアーゼ、アルカリセルラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、リパーゼ等が好ましく、例えば、novozymes社製のSavinase を使用することが可能である。酵素の量は当業者が適宜決定することが可能であり、例えば使用する酵素ごとの活性単位を基準として分解しようとする生分解性樹脂の種類等に対応して決定することができる。
【0026】
本発明に使用される緩衝液として、その緩衝の平衡式の片側に緩衝成分由来の陰イオンが存在せず、かつ、そのpHは前記陰イオンが存在しない側に平衡が傾く条件を与えるpH領域内に調整された緩衝液が使用される。このような緩衝液としては、緩衝成分として例えばトリス-塩酸緩衝液(トリスアミノメタン)又は2-シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸(CHES)緩衝液やビストリス緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液などのグッド緩衝液を有するものなどが挙げられ、上記の緩衝液を、緩衝成分由来の陰イオンが存在しない側に平衡が傾く条件を与えるpH領域の範囲内となるように調整して使用する。また、上記のpH条件を満たすことを前提として、緩衝液のpHはさらに7.5以上であることが好ましく、8.0以上であることがより好ましく、8.5以上、9.0以上、9.5以上、10.0以上であることが特に好ましい。
【0027】
本発明においては、「(緩衝成分由来の)陰イオンが存在しない側に平衡が傾く条件を与えるpH領域」とは、緩衝液中に緩衝成分由来の陰イオンが存在することを完全に排除するものではない。典型的には、平衡が陰イオンを有しない側に傾く条件を与えるpH領域は、平衡のpKa値を基準として、(平衡式に応じて)当該pKa値よりも大きい又は小さい範囲として決定することが可能である。上記の条件を満たす限り、緩衝液のpHはその緩衝pH範囲外であっても構わない。
【0028】
例えば、緩衝液としてトリス-塩酸緩衝液(トリスアミノメタン)(pKa=8.06)(後述の実施例1参照)を使用した場合、pHを8.06より大きく、例えば8.5以上、9.0以上、10.0以上、10.5以上等とすることができる。同様に、CHES緩衝液(pKa=9.3)(後述の実施例2参照)を使用した場合には、pHを9.3より小さく、例えば9.0以下、8.5以下、8.0以下等とすることができるが、使用する酵素の活性pH領域を考慮すると、緩衝液のpHの下限としては7.5以上、8.0以上、8.5以上等であることが好ましい。
また、緩衝液の濃度は当業者が適宜決定することが可能であり、例えば塩濃度として10mM〜200mM、好ましくは50mM〜150mMとした緩衝液を使用することができる。
【0029】
さらに、生分解性樹脂を緩衝液中で分解する際の時間、温度等の条件は、使用する酵素や生分解性樹脂の種類や量に応じて当業者が適宜決定することが可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0031】
ポリ乳酸フィルムの作製
ポリ乳酸(Natureworks社製)をラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、210℃にて100μmのポリ乳酸フィルムを製膜した。
【0032】
使用した生分解性樹脂分解酵素は以下の通りである。
Savinase酵素液
Savinase 16.0L(novozymes社)を用いた。
【0033】
以下の緩衝液を使用した。
(i) Tris緩衝液(7.0〜9.0 pKa=8.06)
【化1】
【0034】
(ii) CHES緩衝液(8.6〜10.0 pKa=9.3)
【化2】
【0035】
(iii) リン酸緩衝液(5.8〜8.0 pKa1=2.12 pKa2=7.21 pKa3=12.67)
【化3】
(iv) Bicine緩衝液(7.0〜9.0 pKa=8.06)
【化4】
(v) TAPS緩衝液(7.5〜9.4 pKa=8.44)
【化5】
(vi) Tricine緩衝液(7.2〜9.1 pKa1=2.3 pKa2=8.15)
【化6】
【0036】
上記の(ii) CHES緩衝液については、pH9.0及びpH10.5の2種類を用意し、他の緩衝液についてはpH10.5に調整したものを使用した。
【0037】
生分解性フィルムに対する酵素分解試験
100mM、pH10.5(CHES緩衝液についてのみpH9.0及びpH10.5)に調製した各緩衝液30mlにSavinase酵素液100μLを加えて分解液とし、2cm×2cm(120mg)に切り出したポリ乳酸フィルムを浸し、45℃100rpmで16時間振とうさせた。16時間後にフィルムを取り出して70℃3時間で乾燥させ、フィルムの初期重量−分解後重量=分解量(mg)とした。
【0038】
(実施例1)
100mM、pH10.5に調製したTris緩衝液30mlにSavinase酵素液100μLを加えて分解液とし、2cm×2cm(120mg)に切り出したポリ乳酸フィルムを浸し、45℃100rpmで16時間振とうさせた。16時間後にフィルムを取り出して70℃3時間で乾燥させ、フィルムの初期重量−分解後重量=分解量(mg)とした。
(実施例2)
緩衝液を100mM、pH9.0に調製したCHES緩衝液としたほかは実施例1と同様に行った。
(比較例1)
緩衝液をリン酸緩衝液としたほかは実施例1と同様に行った。
(比較例2)
緩衝液をBicine緩衝液としたほかは実施例1と同様に行った。
(比較例3)
緩衝液をTAPS緩衝液としたほかは実施例1と同様に行った。
(比較例4)
緩衝液をTricine緩衝液としたほかは実施例1と同様に行った。
(比較例5)
CHES緩衝液のpHを10.5としたほかは実施例2と同様に行った。
【0039】
実施例1〜2及び比較例1〜5におけるポリ乳酸フィルムの分解の結果を下記の表2及び
図1に示す。
これらの結果より、本願所定の緩衝液を使用した実施例1、2は、ポリ乳酸フィルムを高度に分解できていることが理解される。
【0040】
【表1】