(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233583
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】集中給脂部の取付構造及び作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20171113BHJP
E02F 9/14 20060101ALI20171113BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
E02F9/00 H
E02F9/14 C
E02F3/36 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-6480(P2014-6480)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2015-134997(P2015-134997A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136250
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 博臣
(72)【発明者】
【氏名】半田 勲
(72)【発明者】
【氏名】小坂 恭平
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−163824(JP,A)
【文献】
特開2004−137676(JP,A)
【文献】
特開平07−317104(JP,A)
【文献】
実開昭58−099341(JP,U)
【文献】
特開平02−204536(JP,A)
【文献】
米国特許第05839213(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 3/36
E02F 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械のブームに設けられる集中給脂部の取付構造であって、
複数の給脂管と、
前記複数の給脂管の一端にそれぞれ設けられる複数の給脂口と、
機械側方を向く取付面を有し、前記複数の給脂口が前記取付面に取り付けられた状態で前記ブームの上面に配置されるプレートと、
を備え、
前記プレートは、前記ブームを上側から見た際に、前記ブームの基端側に位置する第1端部が前記ブームの先端側に位置する第2端部に比べて前記ブームの中心軸に近くなるように配置されることを特徴とする集中給脂部の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の集中給脂部の取付構造において、
前記プレートは、前記ブームを上側から見た際に、前記ブームの上面に配設された複数の本体配管の間隙に配置されることを特徴とする集中給脂部の取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載の集中給脂部の取付構造において、
前記複数の本体配管は、固定具によって前記ブームの上面に固定されており、
前記取付面に垂直な方向であって前記取付面が向く方向から外れた位置に前記固定具が存在するように、前記プレートが配置されることを特徴とする集中給脂部の取付構造。
【請求項4】
作業機械であって、
機械本体と、
前記機械本体に接続されるブームと、
前記ブームに設けられる集中給脂部と、
を備え、
前記集中給脂部は、
複数の給脂管と、
前記複数の給脂管の一端にそれぞれ設けられる複数の給脂口と、
機械側方を向く取付面を有し、前記複数の給脂口が前記取付面に取り付けられた状態で前記ブームの上面に配置されるプレートと、
を有し、
前記プレートは、前記ブームを上側から見た際に、前記ブームの基端側に位置する第1端部が前記ブームの先端側に位置する第2端部に比べて前記ブームの中心軸に近くなるように配置されることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械のブームに設けられた集中給脂部の取付構造及びそれに関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械のブームには、当該ブームと他の部材(アームや機械本体等)とを連結ピンによって連結するためのピン結合部が複数備えられている。かかるピン結合部には、ピン孔の孔壁と連結ピンとの摩擦を抑えるために、定期的にグリスを給脂(供給)する必要が有る。
【0003】
ただし、上述の複数のピン結合部は、通常、ブームの長手方向に分散して配置されている。そのため、給脂作業において、作業者は分散配置された複数のピン結合部間を移動しながら給脂を行わなければならず、必ずしも作業効率がよくなかった。
【0004】
これに対して、ブームに複数の給脂管を配設し、各給脂管の一端部を各ピン結合部に接続すると共に、グリスを給紙するための給脂口を他端部に設け、当該給脂口を集中的に配置する配管構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
詳細には、特許文献1の
図6に示されるように、第1給脂管(127)〜第5給脂管(167)がブーム(115)の上面(115d)をブーム長手方向に延びるように配設されている。そして、第1給脂管(127)〜第5給脂管(167)の一端部がピン結合部に接続され、他端部に設けられた給脂口(127a〜167a)が固定ブロックによって結束され、等間隔を空けて集中配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−163824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、
図4に示すように、給脂作業では、通常、作業者WKは、右デッキ17の先端部に立って、ブーム15の上面に配置された集中給脂部150にグリスを供給する。
図4に示すように、右デッキ17の先端部がブーム15の基端部(ブームフット)よりも後方に位置する機種では、作業者WKは、集中給脂部150を後方から視認しなければならない。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、当該特許文献1の
図6に示されるように、給脂口(127a〜167a)の固定ブロック(プレート)がブーム(115)の側面に沿うように配置されている。換言すれば、固定ブロック(プレート)は、ブーム(115)の基端側に位置する一端が当該ブームの先端側に位置する他端に比べて当該ブームの中心軸から離れるように配置されている。この場合、
図5に示すように、集中給脂部150を後方から視認する作業者WKは、当該集中給脂部150の給脂口(特に、ブーム15の先端側の給脂口)を非常に視認し難い。特に、他の機種に比べ右デッキ17が後方に配置される機種においては、集中給脂部150の給脂口の視認性が大きく低下する。
【0009】
そこで本発明は、作業機械のブームに設けられた集中給脂部への給脂作業において、給脂口の視認性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、作業機械のブームに設けられる集中給脂部の取付構造であって、複数の給脂管と、前記複数の給脂管の一端にそれぞれ設けられる複数の給脂口と、機械側方を向く取付面を有し、前記複数の給脂口が前記取付面に取り付けられた状態で前記ブームの上面に配置されるプレートとを備え、前記プレートは、前記ブームを上側から見た際に、前記ブームの基端側に位置する第1端部が前記ブームの先端側に位置する第2端部に比べて前記ブームの中心軸に近くなるように配置されることを特徴とする集中給脂部の取付構造を提供している。
【0011】
また、前記プレートは、前記ブームを上側から見た際に、前記ブームの上面に配設された複数の本体配管の間隙に配置されるのが好ましい。
【0012】
また、前記複数の本体配管は、固定具によって前記ブームの上面に固定されており、前記取付面に垂直な方向であって前記取付面が向く方向から外れた位置に前記固定具が存在するように、前記プレートが配置されるのが好ましい。
【0013】
また、本発明は、作業機械であって、機械本体と、前記機械本体に接続されるブームと、
前記ブームに設けられる集中給脂部とを備え、前記集中給脂部は、複数の給脂管と、前記複数の給脂管の一端にそれぞれ設けられる複数の給脂口と、機械側方を向く取付面を有し、前記複数の給脂口が前記取付面に取り付けられた状態で前記ブームの上面に配置されるプレートとを有し、前記プレートは、前記ブームを上側から見た際に、前記ブームの基端側に位置する第1端部が前記ブームの先端側に位置する第2端部に比べて前記ブームの中心軸に近くなるように配置されることを特徴とする作業機械を更に提供している。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の集中給脂部の取付構造によれば、複数の給脂口が取り付けられたプレートの取付面がブームの基端側を向くので、給脂作業をブームの基端部後方から行う場合であっても、当該複数の給脂口の良好な視認性を確保し得る。
【0015】
請求項2記載の集中給脂部の取付構造によれば、プレートが複数の配管の間隙に配置されるので、作業者は、当該間隙を利用して給脂口のメンテナンス作業を容易に行うことが可能である。
【0016】
請求項3記載の集中給脂部の取付構造によれば、給脂作業において、給脂に用いるグリスガンが複数の本体配管を固定する固定具と干渉するのを防止することが可能である。
【0017】
請求項4記載の作業機械によれば、給脂作業をブームの基端部後方から行う場合であっても、当該複数の給脂口の良好な視認性を確保し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態による油圧ショベルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<1.実施形態>
本発明の実施形態による作業機械について
図1乃至
図3に基づき説明する。以下、作業機械の一例として、油圧ショベル1を例にとって説明する。
【0020】
図1に示すように、油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2と上部旋回体3とを備えて構成される。
図1では、図面右側が油圧ショベル1の前方を示しており、図面左側が当該油圧ショベル1の後方を示している。
【0021】
上部旋回体3は、下部走行体2上に搭載されており、下部走行体2に対して鉛直軸まわりに旋回することが可能である。上部旋回体3には、運転室(キャブ)4、ブーム5及び右デッキ7等が備えられている。また、ブーム5の上面には、集中給脂部50が設けられている。
【0022】
以下、
図2及び
図3を参照しながら、集中給脂部50について詳細に説明する。なお、
図2はブーム5の側面図であり、
図3は
図2のIII矢視図である。
【0023】
図3に示すように、集中給脂部50は、プレート51と、複数の給脂管52a〜52eと、複数の給脂口53a〜53eとを備えて構成される。
【0024】
プレート51は、ブーム5の上面5uに配置され、機械側方を向く取付面を有する板部材である。プレート51の取付面には、複数の給脂口53a〜53eが所定の間隔で並ぶように取り付けられている。
【0025】
給脂管52a〜52eは、給脂作業において供給されるグリスをブーム5に設けられたピン結合部に送るための管である。給脂管52a〜52eの一方の端部には、それぞれ、複数の給脂口53a〜53eが設けられている。なお、当該給脂管52a〜52eのもう一方の端部は、それぞれ、ブーム5に設けられた複数のピン結合部に接続されている。
【0026】
給脂口53a〜53eは、給脂作業において、グリスガンによってグリスを注入するための注入口である。給脂口53a〜53eは、プレート51の取付面に取り付けられており、当該取付面の法線方向を向いている。
【0027】
また、本実施形態では、
図3に示すように、プレート51は、ブーム5の上側から見た際に、ブーム5の基端側に位置する端部51aが当該ブーム5の先端側に位置する端部51bに比べて当該ブーム5の中心軸CAに近くなるように配置される。その結果、プレート51の取付面は、若干、ブーム5の基端側を向いている。
【0028】
ところで、プレート51に固定された給脂口53a〜53eは、定期的にメンテナンス作業を行う必要が有る。このメンテナンス作業は、通常、作業者がブーム5の上側から工具を挿入する等して行われる。
【0029】
これに対して、
図3に示すように、ブーム5の上面5uには、集中給脂部50以外にも複数の本体配管54a,54b等が配設されている。そのため、ブーム5の上側から見た際に、プレート51が本体配管54a,54b等と重なる位置に配置されると、メンテナンス作業の作業性が著しく低下する。
【0030】
そこで、本実施形態では、プレート51は、ブーム5を上側から見た際に、当該ブーム5の上面5uに固定された本体配管54a,54b等の間隙に配置されるように構成されている。
【0031】
また、給脂作業における給脂口53a〜53eの視認性に鑑みれば、プレート51の取付面は、できる限りブーム5の基端側を向くように傾けて配置されるのが好ましい。
【0032】
ただし、ブーム5の上面5uには、上述の本体配管54a,54b等を固定するための固定具(タップドブロックとも称する)が更に配置されている。たとえば、
図3に示すように、本体配管54a,54bは、タップドブロック55によってブーム5の上面5uに固定されている。ここでは、タップドブロック55は、集中給脂部50の位置よりもブーム5の基端側且つ当該ブーム5の側方側に配置されている。
【0033】
そのため、プレート51の取付面をブーム5の基端側を向くように極端に傾けた場合、当該取付面の向く方向にタップドブロック55が存在することになる。この場合、給脂作業を行う際に、給脂用のグリスガンがタップドブロック55に干渉し、その結果、給脂を行うことができない可能性が有る。
【0034】
そこで、本実施形態では、プレート51の取付面に垂直な方向であって当該取付面が向く方向から外れた位置にタップドブロック55があるように、当該プレート51を配置し、当該プレート51の傾斜を
図3の状態に留めている。
【0035】
以上のように、本実施形態では、給脂口53a〜53eが取り付けられたプレート51の取付面がブーム5の基端側を向いている。そのため、給脂作業をブーム5の基端部後方から行う場合であっても、当該給脂口53a〜53eの良好な視認性を確保し得る。
【0036】
特に、本実施形態では、ブーム5を上側から見た際に、プレート51が複数の本体配管54a,54b等の間隙に配置される。そのため、作業者は、当該間隙を利用して給脂口53a〜53eのメンテナンス作業を容易に行うことが可能である。
【0037】
また特に、本実施形態では、プレート51の取付面に垂直な方向であって当該取付面が向く方向から外れた位置にタップドブロック55があるように、当該プレート51が配置される。そのため、給脂作業において、給脂に用いるグリスガンがタップドブロック55と干渉するのを防止することが可能である。
【0038】
<2.変形例>
本発明による集中給脂部及び作業機械は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、本発明の思想を作業機械の一例である油圧ショベルに適用する場合を例示したが、これに限定されず、他の作業機械(解体機等)に本発明の思想を適用してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、複数の給脂口53a〜53eが所定の間隔で直線的に並ぶように取り付けられている場合を例示したが、これに限定されず、複数の給脂口が直線的に配置されていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように本発明にかかる集中給脂部の取付構造は、例えば、作業機械のブームに設けられる集中給脂部に適している。
【符号の説明】
【0042】
1 油圧ショベル、2 下部走行体、3 上部旋回体、5 ブーム、5u 上面、
7 右デッキ、15 ブーム、17 右デッキ、50 集中給脂部、51 プレート、
51a,51b 端部、52a〜52e 給脂管、53a〜53e 給脂口、
54a,54b 本体配管、55 タップドブロック、CA 中心軸、WK 作業者