特許第6233584号(P6233584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233584
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】排熱回収ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/18 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   F22B1/18 J
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-25433(P2014-25433)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-152208(P2015-152208A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】関根 昌之
(72)【発明者】
【氏名】高田 容臣
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−42960(JP,A)
【文献】 特開2014−115046(JP,A)
【文献】 特開2008−82626(JP,A)
【文献】 特開昭57−31702(JP,A)
【文献】 特開2003−222302(JP,A)
【文献】 米国特許第6092591(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0119388(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを水平方向に流す箱型を成すケーシングと、
前記ケーシング内に前記排ガスの流れを横切る方向に互いに間隔をもって並べて配置されて該排ガスから熱を回収する複数の伝熱管パネルと、
前記ケーシングの天井壁に前記伝熱管パネルに沿う方向に配置されて該天井壁を補強する補強梁を備え、
前記補強梁は、前記ケーシングの天井壁に前記伝熱管パネルに沿う方向で且つ該伝熱管パネルの上端部に隣接して形成された凹溝内に配置され、
前記補強梁と前記凹溝との間、又は、前記補強梁には、該凹溝内で熱せられた空気を前記ケーシングの外部に逃がす排気部が設けられている排熱回収ボイラ。
【請求項2】
前記補強梁は、長尺ウェブ及び該長尺ウェブの両側縁に位置して互いに対向する一対のフランジを有する断面I型の補強梁であり、該補強梁の一方のフランジが前記凹溝の溝底上に位置すると共に他方のフランジが前記凹溝の両溝壁間に位置し、前記補強梁の前記他方のフランジと前記凹溝の前記溝壁との間に排気部としての排気用隙間が設けられている請求項1に記載の排熱回収ボイラ。
【請求項3】
前記補強梁は、前記凹溝に嵌合する断面口型の補強梁であり、該補強梁の互いに向き合う対向壁のうちの一方の対向壁が前記凹溝の溝底上に位置すると共に他方の対向壁が前記凹溝の両溝壁間に位置し、前記補強梁の前記他方の対向壁に排気部としての排気用配管が設けられている請求項1に記載の排熱回収ボイラ。
【請求項4】
前記補強梁は、前記凹溝に嵌合する断面口型の補強梁であり、該補強梁の互いに向き合う対向壁のうちの一方の対向壁が前記凹溝の溝底上に位置すると共に他方の対向壁が前記凹溝の両溝壁間に位置し、前記補強梁の前記他方の対向壁に排気部としての排気用スリットが設けられている請求項1に記載の排熱回収ボイラ。
【請求項5】
前記凹溝内の前記補強梁に、前記複数の伝熱管パネルの配列方向の移動を規制する固定機構を設けた請求項1〜4のいずれか一つの項に記載の排熱回収ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンから排出された排ガスの熱を回収して蒸気を発生させる排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記したような排熱回収ボイラとしては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
この排熱回収ボイラは、ガスタービンから排出された排ガスが水平方向に流れる箱型を成すケーシングと、このケーシング内に排ガスの流れを横切る方向に互いに間隔をもって並べて収容されて排ガスから熱を回収する複数の伝熱管パネルと、ケーシングの天井壁に伝熱管パネルに沿う方向に配置されて天井壁を補強する天井壁補強梁を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-082626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような排熱回収ボイラは、高さが20m以上、幅が10m以上の大型構造物であることから、建設スペースを確保するうえで、常々全体サイズの縮小化が求められている。
【0005】
最近において、ケーシングの天井壁に、伝熱管パネルに沿い且つ下方に凹ませた凹溝を設けて、この凹溝に天井壁補強梁(高さ寸法1000〜1500mm)を収容することで、排熱回収ボイラの高さ寸法を小さくする試みが成されているが、ケーシングの内部に突出する凹溝がケーシング内を流れる高温(600〜700℃)の排ガスに晒されることとなり、その結果、凹溝内に止まる高温の空気によって凹溝内の補強梁が熱影響を受けて変形してしまう虞があるという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0006】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、省スペース化を図ったうえで、ケーシングの天井壁の補強梁に及ぶ熱による影響を少なく抑えることが可能である排熱回収ボイラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、排ガスを水平方向に流す箱型を成すケーシングと、前記ケーシング内に前記排ガスの流れを横切る方向に互いに間隔をもって並べて配置されて該排ガスから熱を回収する複数の伝熱管パネルと、前記ケーシングの天井壁に前記伝熱管パネルに沿う方向に配置されて該天井壁を補強する補強梁を備え、前記補強梁は、前記ケーシングの天井壁に前記伝熱管パネルに沿う方向で且つ該伝熱管パネルの上端部に隣接して形成された凹溝内に配置され、前記補強梁と前記凹溝との間、又は、前記補強梁には、該凹溝内で熱せられた空気を前記ケーシングの外部に逃がす排気部が設けられている構成としている。
【0008】
また、本発明の第2の態様において、前記補強梁は、長尺ウェブ及び該長尺ウェブの両側縁に位置して互いに対向する一対のフランジを有する断面I型の補強梁であり、該補強梁の一方のフランジが前記凹溝の溝底上に位置すると共に他方のフランジが前記凹溝の両溝壁間に位置し、前記補強梁の前記他方のフランジと前記凹溝の前記溝壁との間に排気部としての排気用隙間が設けられている構成としている。
【0009】
さらに、本発明の第3の態様において、前記補強梁は、前記凹溝に嵌合する断面口型の補強梁であり、該補強梁の互いに向き合う対向壁のうちの一方の対向壁が前記凹溝の溝底上に位置すると共に他方の対向壁が前記凹溝の両溝壁間に位置し、前記補強梁の前記他方の対向壁に排気部としての排気用配管が設けられている構成としている。
【0010】
さらにまた、本発明の第4の態様において、前記補強梁は、前記凹溝に嵌合する断面口型の補強梁であり、該補強梁の互いに向き合う対向壁のうちの一方の対向壁が前記凹溝の溝底上に位置すると共に他方の対向壁が前記凹溝の両溝壁間に位置し、前記補強梁の前記他方の対向壁に排気部としての排気用スリットが設けられている構成としている。
【0011】
さらにまた、本発明の第5の態様は、前記凹溝内の前記補強梁に、前記複数の伝熱管パネルの配列方向の移動を規制する固定機構を設けた構成としている。
【0012】
本発明に係る排熱回収ボイラでは、ケーシングの天井壁に形成した凹溝内に補強梁を配置しているので、天井壁上に補強梁を配置する場合と比べて、全体の高さ寸法が減る分だけ(側壁に上下方向に配置される補強梁が短くなる分だけ)鋼材重量を減らし得ると共に、省スペース化が図られることとなる。
【0013】
また、ケーシングの天井壁に形成した凹溝内に補強梁を配置すると、ケーシングの内部に突出する凹溝がケーシング内を流れる高温の排ガスに晒される分だけ、凹溝内の補強梁が熱影響を受けやすくなるが、凹溝内に止まろうとする高温の空気を補強梁と凹溝との間、又は、補強梁に設けた排気部を通して外部に逃がすようにしているので、補強梁が熱によって変形するのを回避し得ることとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る排熱回収ボイラでは、省スペース化を実現しつつ、ケーシングの天井壁の補強梁に及ぶ熱影響を少なく抑えることが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例による排熱回収ボイラを概略的に示す断面説明図である。
図2図1の円内を拡大して示す部分拡大斜視説明図である。
図3】本発明の他の実施例による排熱回収ボイラの図1円内に相当する部分における部分拡大斜視説明図である。
図4】本発明のさらに他の実施例による排熱回収ボイラの図1円内に相当する部分における部分拡大斜視説明図である。
図5】本発明のさらに他の実施例による排熱回収ボイラの図1円内に相当する部分における部分拡大断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施例による排熱回収ボイラを示している。
図1に示すように、この排熱回収ボイラ1は、ガスタービンから排出された排ガスをガス導入口INからガス排出口OUTにかけて水平方向に流す箱型のケーシング2を備えており、このケーシング2の内部におけるガス導入口INの下流側には、バーナ3及び排ガスから熱を回収する伝熱管群4が順次配置されている。
【0017】
伝熱管群4は、ケーシング2内において排ガスの流れを横切る方向に互いに間隔をもって並べて配置された複数の伝熱管パネル4a,4b,4c,4dから構成されており、これらの伝熱管パネル4a,4b,4c,4dは、ケーシング2の天井壁21上に配置した図示しない支持梁に吊り下げられた状態で支持されている。
【0018】
ケーシング2は大型の構造物なので、強度を確保するべくその周囲が互いに端部で連結される天井壁補強梁5,図示しない側壁補強梁及び床補強梁6で囲まれており、ケーシング2は、側壁補強梁を基礎E上の柱7に乗せた状態で設置されている。
【0019】
また、排熱回収ボイラ1は、ケーシング2の内部における熱回収効率を向上させると共に、外部との熱遮蔽を確実に行うために、ケーシング2の天井壁21,床22及び側壁23には断熱材8及び内貼り9が施工されている。なお、天井壁21,床22及び側壁23には、例えば圧延鋼板SS400が用いられ、一方、内貼り9には、例えば、ステンレス鋼板が用いられる。
【0020】
この場合、ケーシング2の天井壁21には、幅方向(伝熱管パネル4a〜4dの各々に沿う方向)の凹溝24が、伝熱管パネル4a〜4dの上端部に隣接するようにして形成されており、この凹溝24内に、上記した天井壁補強梁5が配置されている。
【0021】
この実施例において、図2に示すように、天井壁補強梁5は、長尺ウェブ5a及びこの長尺ウェブ5aの両側縁に位置して互いに対向する一対のフランジ5b,5cを有するI型鋼より成っており、天井壁補強梁5の一方のフランジ5bが凹溝24の溝底24a上に位置していると共に、他方のフランジ5cが凹溝24の両溝壁24b,24b間に位置している。
【0022】
そして、天井壁補強梁5の他方のフランジ5cと凹溝24の両溝壁24b,24bとの間に、排気部としての排気用隙間10,10をそれぞれ設けることで、ケーシング2内を流れる高温(600〜700℃)の排ガスに晒されて温度が上昇する凹溝24内の空気を図2に矢印で示すようにして外部に排出するようにしている。
【0023】
なお、天井壁補強梁5の他方のフランジ5cと凹溝24の両溝壁24b,24bとは、構造強度を維持するべく幅方向の複数箇所で互いに連結されている。
【0024】
このような排熱回収ボイラ1では、凹溝24内に天井壁補強梁5を配置しているので、天井壁21上に天井壁補強梁5を配置する場合と比べて、全体の高さ寸法が減る分だけ(側壁補強梁が短くなる分だけ)鋼材重量を減らし得ると共に、省スペース化が図られることとなる。
【0025】
また、凹溝24内に天井壁補強梁5を配置することで、天井壁補強梁5がケーシング2内を流れる高温の排ガスに熱影響を受けやすくなるが、凹溝24内に止まろうとする熱せられた空気を天井壁補強梁5の他方のフランジ5cと凹溝24の両溝壁24b,24bとの間の排気用隙間10,10から外部に逃がすようにしているので、天井壁補強梁5が熱によって変形するのを回避し得ることとなる。
【0026】
さらに、この実施例による排熱回収ボイラ1では、天井壁補強梁5をI型鋼より成るものとしているので、天井壁補強梁5を凹溝24内に配置した状態でのメンテナンス等の作業性が優れたものとなる。
【0027】
図3は、本発明の他の実施例による排熱回収ボイラを示している。
図3に部分的に示すように、この実施例による排熱回収ボイラ1Aが、先の実施例による排熱回収ボイラ1と相違するところは、天井壁補強梁51を凹溝24に嵌合する角鋼管(いわゆる口型鋼)より成るものとしたうえで、天井壁補強梁51の互いに向き合う対向壁51a,51bのうちの一方の対向壁51aを凹溝24の溝底24a上に位置させると共に、他方の対向壁51bを凹溝24の両溝壁24b,24b間に位置させて、この他方の対向壁51bに排気部としてのU字状の排気用配管11を設けた点にある。
【0028】
このような排熱回収ボイラ1Aにおいても、凹溝24内に天井壁補強梁51を配置しているので、天井壁補強梁51を天井壁21上に配置する場合と比べて、全体の高さ寸法が減る分だけ(側壁補強梁が短くなる分だけ)鋼材重量を減らし得ると共に、省スペース化が図られることとなる。
【0029】
また、凹溝24内に天井壁補強梁51を嵌合することで、天井壁補強梁51がケーシング2内を流れる高温の排ガスに熱影響を受けやすくなるが、凹溝24内の天井壁補強梁51の内部空間に止まろうとする熱せられた空気を天井壁補強梁51の他方の対向壁51bに設けた排気用配管11から、図3に矢印で示すようにして、外部に逃がすようにしているので、天井壁補強梁51が熱によって変形するのを回避し得ることとなる。
【0030】
さらに、この実施例による排熱回収ボイラ1Aでは、天井壁補強梁5を口型鋼より成るものとしているので、高い構造強度を確保し得ることとなる。
【0031】
図4は、本発明のさらに他の実施例による排熱回収ボイラを示している。
図4に部分的に示すように、この実施例による排熱回収ボイラ1Bが、先の実施例による排熱回収ボイラ1Aと相違するところは、凹溝24に嵌合する角鋼管より成る天井壁補強梁51の他方の対向壁51bに、排気部としての排気用スリット12を設けた点にある。
【0032】
このような排熱回収ボイラ1Bにおいても、鋼材重量を減らし得ると共に、省スペース化が図られることとなる。加えて、凹溝24内の天井壁補強梁51の内部空間に止まろうとする熱せられた空気を天井壁補強梁51の他方の対向壁51bに設けた排気用スリット12から、図4に矢印で示すようにして、外部に逃がすようにしているので、天井壁補強梁51が熱によって変形するのを回避し得ることとなる。
【0033】
さらに、この実施例による排熱回収ボイラ1Bにおいても、高い構造強度を確保し得ることとなる。
【0034】
図5は、本発明のさらに他の実施例による排熱回収ボイラを示している。
図5に部分的に示すように、この実施例による排熱回収ボイラ1Cが、先の実施例による排熱回収ボイラ1と相違するところは、凹溝24内のI型鋼より成る天井壁補強梁5に、伝熱管パネル4a〜4dの配列方向の埋め込みナット(固定機構)31を天井壁21,断熱材8及び内貼り9を貫通して設け、埋め込みナット31にねじ込んだボルト(固定機構)32により、伝熱管群4をその配列方向に引張又は押圧固定するようにした点にある。
【0035】
このような排熱回収ボイラ1Cでは、上記した効果が得られるのに加えて、地震発生時における伝熱管パネル4a〜4d同士の接触を阻止し得ることとなる。
【0036】
本発明に係る排熱回収ボイラの構成は、上記した実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1,1A,1B,1C 排熱回収ボイラ
2 ケーシング
4a〜4d 伝熱管パネル
5 天井壁補強梁
5a 長尺ウェブ
5b 一方のフランジ
5c 他方のフランジ
10 排気用隙間(排気部)
11 排気用配管(排気部)
12 排気用スリット(排気部)
21 ケーシングの天井壁
24 凹溝
24a 凹溝の溝底
24b 凹溝の溝壁
30 固定機構
31 埋め込みナット(固定機構)
32 ボルト(固定機構)
図1
図2
図3
図4
図5