特許第6233590号(P6233590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233590
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/00 20110101AFI20171113BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20171113BHJP
   B03C 3/40 20060101ALI20171113BHJP
   B03C 3/47 20060101ALI20171113BHJP
   B03C 3/10 20060101ALI20171113BHJP
   B03C 3/09 20060101ALI20171113BHJP
   B01D 46/18 20060101ALI20171113BHJP
   B03C 3/155 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F24F1/00 371B
   F24F1/00 371A
   B03C3/40 A
   B03C3/47
   B03C3/10 Z
   B03C3/09 A
   B01D46/18 A
   B03C3/155 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-66210(P2014-66210)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-190642(P2015-190642A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100105094
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 薫
(72)【発明者】
【氏名】岩野 俊
(72)【発明者】
【氏名】奥野 大樹
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−154621(JP,A)
【文献】 実開昭62−075846(JP,U)
【文献】 特開平10−009661(JP,A)
【文献】 特公平03−033379(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00
B01D 46/18
B03C 3/09
B03C 3/10
B03C 3/155
B03C 3/40
B03C 3/47
F24F 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流の通路を形成する筐体と、
前記通路内に配置されて前記気流に放電して前記気流中の物質を帯電させる帯電電極と、
環状に連結されて連続し、前記気流の流通方向の前後で前記通路を横切る第1部位および第2部位を有する絶縁性のメッシュシートで形成され上流側の前記第1部位で少なくとも前記気流を受ける第1面の反対側の第2面に形成される導電材を有し、下流側の前記第2部位で、前記上流側の前記第1部位の前記導電材に向き合わせられる導電材で前記帯電電極と同極性の電気的な障壁を形成するフィルタと、
前記フィルタに形成されて、前記導電材にグラウンドを接続するグラウンド端子と
を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項に記載の空気調和機において、前記第1部位の前記導電材は前記第2部位の前記導電材に等間隔で向き合わせられることを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されるように、空気調和機には一般にプレフィルタが組み込まれる。プレフィルタは気流から塵埃を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4270234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレフィルタのメッシュよりも大きい塵埃はプレフィルタのメッシュシートに絡め捕られる。その一方で、メッシュよりも小さい塵埃などの微粒子はメッシュシートをすり抜ける。メッシュシートのメッシュが微小化すればメッシュシートを通り抜ける気流の清浄度は高まるものの、気流の通風抵抗が増大し空気調和機の冷房や暖房の能力は低下してしまう。
【0005】
本発明のいくつかの態様によれば、通風抵抗を増やさずに気流の清浄度を高めることができる空気調和機は提供されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、気流の通路を形成する筐体と、前記通路内に配置されて前記気流に放電して前記気流中の物質を帯電させる帯電電極と、環状に連結されて連続し、前記気流の流通方向の前後で前記通路を横切る第1部位および第2部位を有する絶縁性のメッシュシートで形成され上流側の前記第1部位で少なくとも前記気流を受ける第1面の反対側の第2面に形成される導電材を有し、下流側の前記第2部位で、前記上流側の前記第1部位の前記導電材に向き合わせられる導電材で前記帯電電極と同極性の電気的な障壁を形成するフィルタと、前記フィルタに形成されて、前記導電材にグラウンドを接続するグラウンド端子とを備える空気調和機に関する。
【0007】
帯電電極から放電が行われると、気流中の塵埃などの物質は特定の極性で帯電する。メッシュシートのメッシュよりも大きい塵埃はメッシュシートに絡め捕られる。帯電し、メッシュよりも小さい塵埃などの微粒子は、極性がグラウンドとなっているフィルタの導電材に付着する。こうしてメッシュよりも大きい塵埃だけでなくメッシュよりも小さい微粒子はフィルタで捕獲される。メッシュシートは樹脂繊維を格子状に組み合わせたもので、フィルタのメッシュシートの圧力損失は著しく抑制される。フィルタは圧力損失を回避しながら効果的に微粒子を捕獲することができる。気流の通風抵抗を増やさずに気流の清浄度は高められることができる。
【0008】
このとき、微粒子がフィルタの導電材に付着すると、微粒子とグラウンドとの間で電荷がやりとりされる。導電材の帯電した状態は解消される。こうしてフィルタが帯電電極と同極性の電位となることを防止できる。微粒子の付着量が増加しても、確実に新たな微粒子はフィルタに付着していくことができる。仮にフィルタでグラウンドと電荷をやりとりする経路が設けられていないと、電荷の付着量の増加に伴ってフィルタ上で帯電電極と同極性の電位が生成され、同極性の反発力に応じて微粒子の付着は妨げられてしまう。
【0009】
フィルタは、気流の流通方向の前後で通路を横切る第1部位および第2部位を有するメッシュシートで形成される。気流は、流通方向に対して複数枚配置されたメッシュシートを相次いで通過する。1枚のメッシュシートに比べて帯電した微粒子が導電材に付着する確率は増加する。その一方で、メッシュシートの通風抵抗は小さい。気流の通風抵抗を増やさずに気流の清浄度は高められることができる。
【0010】
メッシュシートは環状に連結されて連続する。したがって、メッシュシートは1つの軌道をぐるぐると移動することができる。
【0011】
下流側の第2部位で、上流側の第1部位の導電材に向き合わせられる導電材に電圧を印加することで、第2部位の上流側には帯電電極と同極性の電気的な障壁が形成される。帯電電極から放電が行われると、気流中の塵埃などの微粒子は特定の極性で帯電する。気流は相次いで前後1対のメッシュシートを通過する。帯電した微粒子は気流に乗って上流側の第1部位のメッシュシートのメッシュを通過しても電気的な障壁に衝突する。帯電した微粒子と電気的な障壁とは同極性を有することから、帯電した微粒子は電気的な障壁で跳ね返される。これによって微粒子の進行速度は減じられるとともに進行方向が逆方向となり、帯電した微粒子は容易く第2部位のメッシュシートの導電材に付着する。こうして空気調和機は圧力損失を回避しながら効果的に微粒子を捕獲することができる。
【0012】
メッシュシートは絶縁材で形成され。このとき、上流側の第1部位のメッシュシートの第1面に絶縁材が配置され、下流側の第2部位のメッシュシートで上流側の第1部位に向き合わせられる面の反対側の面に絶縁材が配置され。メッシュシートが気流の流通方向に沿って順番に配置されると、上流側のメッシュシート上の導電材に下流側のメッシュシート上の導電材は向き合わせられる。こうしてメッシュシートの導電材同士は絶縁材同士の間に配置される。高電圧が供給される導電材に対して、ユーザーが外側から直接接触することを防止できる。
【0013】
第1部位の導電材は第2部位の導電材に等間隔で向き合わせられればよい。こうして電気的な障壁では電位の分布の偏りはできる限り抑制されることができる。その結果、集塵電極上に満遍なく微粒子は付着することができる。微粒子がフィルタ上に偏在しないため、上流側のメッシュシートの下流側のメッシュシートに向き合う箇所の全体で効率的に微粒子を捕獲することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように開示の空気調和機によれば、気流の通風抵抗を増やさずに気流の清浄度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機の構成を概略的に示す概念図である。
図2】第1実施形態に係る室内機の外観を概略的に示す斜視図である。
図3】室内機の本体の構成を概略的に示す斜視図である。
図4】室内機の構造を概略的に示す分解斜視図である。
図5】エアフィルタの構造を概略的に示す拡大斜視図である。
図6】室内機の本体の拡大垂直断面図である。
図7】第2実施形態に係る室内機に関し電気集塵の原理を概略的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0017】
(1)空気調和機の構成
図1は本発明の一実施形態に係る空気調和機11の構成を概略的に示す。空気調和機11は室内機12および室外機13を備える。室内機12は例えば建物内の室内空間に設置される。その他、室内機12は室内空間に相当する空間に設置されればよい。室内機12には室内熱交換器14が組み込まれる。室外機13には圧縮機15、室外熱交換器16、膨張弁17および四方弁18が組み込まれる。室内熱交換器14、圧縮機15、室外熱交換器16、膨張弁17および四方弁18は冷凍回路19を形成する。
【0018】
冷凍回路19は第1循環経路21を備える。第1循環経路21は四方弁18の第1口18aおよび第2口18bを相互に結ぶ。第1循環経路21には、圧縮機15が設けられている。圧縮機15の吸入管15aは四方弁18の第1口18aに冷媒配管を介して接続される。第1口18aからガス冷媒は圧縮機15の吸入管15aに供給される。圧縮機15は低圧のガス冷媒を所定の圧力まで圧縮する。圧縮機15の吐出管15bは四方弁18の第2口18bに冷媒配管を介して接続される。圧縮機15の吐出管15bからガス冷媒は四方弁18の第2口18bに供給される。冷媒配管は例えば銅管であればよい。
【0019】
冷凍回路19は第2循環経路22をさらに備える。第2循環経路22は四方弁18の第3口18cおよび第4口18dを相互に結ぶ。第2循環経路22には、第3口18c側から順番に室外熱交換器16、膨張弁17および室内熱交換器14が組み込まれる。室外熱交換器16は、通過する冷媒と周囲の空気との間で熱エネルギーを交換する。室内熱交換器14は、通過する冷媒と周囲の空気との間で熱エネルギーを交換する。第2循環経路22は例えば銅管などの冷媒配管で形成されればよい。
【0020】
室外機13には送風ファン23が組み込まれる。送風ファン23は室外熱交換器16に通風する。送風ファン23は例えば羽根車の回転に応じて気流を生成する。気流は室外熱交換器16を通り抜ける。通り抜ける気流の流量は羽根車の回転数に応じて調整される。
【0021】
室内機12には送風ファン24が組み込まれる。送風ファン24は室内熱交換器14に通風する。送風ファン24は羽根車の回転に応じて気流を生成する。送風ファン24の働きで室内機12には室内空気が吸い込まれる。室内空気は室内熱交換器14を通り抜け冷媒と熱交換する。熱交換された冷気または暖気の気流は室内機12から吹き出される。通り抜ける気流の流量は羽根車の回転数に応じて調整される。
【0022】
冷凍回路19で冷房運転が実施される場合には、四方弁18は第2口18bおよび第3口18cを相互に接続し第1口18aおよび第4口18dを相互に接続する。したがって、圧縮機15の吐出管15bから高温高圧の冷媒が室外熱交換器16に供給される。冷媒は室外熱交換器16、膨張弁17および室内熱交換器14を順番に流通する。室外熱交換器16では冷媒から外気に放熱する。膨張弁17で冷媒は低圧まで減圧される。減圧された冷媒は室内熱交換器14で周囲の空気から吸熱する。冷気が生成される。冷気は送風ファン24の働きで室内空間に吹き出される。
【0023】
冷凍回路19で暖房運転が実施される場合には、四方弁18は第2口18bおよび第4口18dを相互に接続し第1口18aおよび第3口18cを相互に接続する。圧縮機15から高温高圧の冷媒が室内熱交換器14に供給される。冷媒は室内熱交換器14、膨張弁17および室外熱交換器16を順番に流通する。室内熱交換器14では冷媒から周囲の空気に放熱する。暖気が生成される。暖気は送風ファン24の働きで室内空間に吹き出される。膨張弁17で冷媒は低圧まで減圧される。減圧された冷媒は室外熱交換器16で周囲の空気から吸熱する。その後、冷媒は圧縮機15に戻る。
【0024】
(2)第1実施形態に係る室内機の構成
図2は第1実施形態に係る室内機12の外観を概略的に示す。室内機12の本体(筐体)26にはアウターパネル27が覆い被さる。本体26の下面には吹出口28が形成される。吹出口28は室内に向けて開口される。本体26は例えば室内の壁面に固定されることができる。吹出口28は、室内熱交換器14で生成される冷気または暖気の気流を吹き出す。
【0025】
吹出口28には前後1対の上下風向板31a、31bが配置される。上下風向板31a、31bはそれぞれ水平軸線32a、32b回りに回転することができる。回転に応じて上下風向板31a、31bは吹出口28を開閉することができる。上下風向板31a、31bの角度に応じて、吹き出される気流の方向は変えられる。
【0026】
図3に示されるように、本体26には吸込口33が形成される。吸込口33は本体26の正面および上面で開口する。アウターパネル27は本体26の正面で吸込口33に覆い被さることができる。室内熱交換器14に流入する空気は吸込口33から取り込まれる。
【0027】
吸込口33には、吸込口33の長手方向にわたって同形状のエアフィルタアセンブリ34が複数配置される。エアフィルタアセンブリ34はエアフィルタ(フィルタ)35および保持部36を備える。エアフィルタ35は保持部36に保持される。保持部36は枠体37を有する。保持部36は枠体37で本体26に固定される。保持部36が本体26にセットされると、エアフィルタ35は吸込口33の全面にわたって配置される。
【0028】
図4に示されるように、本体26には送風ファン24が回転自在に支持される。送風ファン24には例えばクロスフローファンが用いられる。送風ファン24は水平軸線32a、32bに平行な回転軸38回りで回転することができる。送風ファン24の回転軸38は本体26の設置時の水平方向に延びる。送風ファン24は吹出口28に平行に配置される。送風ファン24には駆動源(図示せず)から回転軸38回りの駆動力が伝達される。駆動源は本体26に支持される。送風ファン24の回転に応じて気流は室内熱交換器14を通過する。その結果、冷気または暖気の気流が生成される。冷気または暖気の気流は吹出口28から吹き出される。
【0029】
室内熱交換器14は前側体14aおよび後側体14bを備える。前側体14aは送風ファン24の前側から送風ファン24に被さる。後側体14bは送風ファン24の後側から送風ファン24に被さる。前側体14aおよび後側体14bは上端で相互に連結される。前側体14aおよび後側体14bは冷媒管39を有する。冷媒管39は水平方向に往復する。すなわち、冷媒管39は、水平軸線32a、32bに平行に延び、本体26の正面視左右端で折り返され、再び水平軸線32a、32bに平行に延び、再び本体26の正面視左右端で折り返され、これらが繰り返される。冷媒管39は第2循環経路22の一部を構成する。冷媒管39には複数の放熱フィン41が結合される。放熱フィン41は水平軸線32a、32bに直交しつつ相互に平行に広がる。冷媒管39および放熱フィン41は例えば銅やアルミニウムといった金属材料から成形されることができる。冷媒管39および放熱フィン41を通じて冷媒と空気との間で熱交換が実現される。
【0030】
図4に示されるように、エアフィルタアセンブリ34にはフィルタ清掃ユニット43および電気集塵ユニット44が関連づけられる。フィルタ清掃ユニット43はダストボックス45を備える。ダストボックス45は例えば本体26に支持される。本体26にダストボックス45およびエアフィルタアセンブリ34がセットされると、エアフィルタアセンブリ34の下端でエアフィルタ35はダストボックス45に向き合わせられる。ダストボックス45はエアフィルタ35に対して水平方向に配置されている。エアフィルタ35の清掃時、エアフィルタ35の塵埃はダストボックス45に回収される。
【0031】
フィルタ清掃ユニット43は第1従動ギア46および第2従動ギア47を備える。第1従動ギア46はエアフィルタアセンブリ34の保持部36に取り付けられる。第1従動ギア46は水平軸48回りで回転する。第1従動ギア46は保持部36の外側に配置される。エアフィルタアセンブリ34が本体26にセットされると、第1従動ギア46は本体26に搭載の第1駆動ギア(図示されず)に噛み合う。第1駆動ギアには電動モータといった駆動源(図示されず)が連結される。駆動源から供給される駆動力に応じて第1従動ギア46は回転する。
【0032】
第2従動ギア47はダストボックス45に取り付けられる。第2従動ギア47は水平軸49回りで回転する。第2従動ギア47の歯はダストボックス45の外面から少なくとも部分的に露出する。第2従動ギア47は本体26に搭載の第2駆動ギア(図示されず)に噛み合う。第2駆動ギアには電動モータといった駆動源(図示されず)が連結される。駆動源から供給される駆動力に応じて第2従動ギア47は回転する。
【0033】
電気集塵ユニット44はイオナイザ51を備える。イオナイザ51はエアフィルタアセンブリ34の前面で例えば保持部36の枠体37に固定される。イオナイザ51の筐体52は枠体37に一体化されればよい。イオナイザ51の筐体52には上下に開口53が形成される。開口53からイオンおよびオゾンは放出される。放出されたイオンおよびオゾンはアウターパネル27とエアフィルタ35との間の空間に拡散する。イオナイザ51は配線(図示されず)で本体26内の制御部(図示されず)に電気的に接続される。イオナイザ51の配線は着脱可能な電気接点を有し、エアフィルタアセンブリ34の取り付けおよび取り外しの際には、配線の結合および分断が行われる。配線を通じてイオナイザ51には動作電力が供給される。
【0034】
図5に示されるように、エアフィルタ35は帯体55およびメッシュシート56を備える。メッシュシート56は例えばポリエチレンテレフタラートの繊維(樹脂繊維)を格子状に組み合わせて構成される。メッシュシート56は帯体55に支持される。帯体55はメッシュシート56の左右両側を保持する。帯体55およびメッシュシート56は絶縁体57を構成する。メッシュシート56のメッシュは気流に対して交差するように設けられ、通気路を区画する。
【0035】
帯体55およびメッシュシート56は可撓性を有する。帯体55およびメッシュシート56は環状に形成される。帯体55およびメッシュシート56はローラー軸58および複数の細軸59a、59bに巻きかけられる。ローラー軸58および細軸59a、59bは保持部36の枠体37に支持される。ローラー軸58および細軸59a、59bの働きでメッシュシート56の形状が保持される。ローラー軸58と最上端の細軸59aとの間でメッシュシート56は二重に重ねられる。こうして前後1対のメッシュシート61a、61bが確立される。帯体55は例えば大きい摩擦力でローラー軸58の円筒面に連結される。その結果、ローラー軸58が回転すると、メッシュシート56はぐるぐると1つの軌道を移動することができる。こうしてダストボックス45に対してメッシュシート56の相対移動は実現される。メッシュシート56の軌道はローラー軸58および細軸59a、59bで規定される。ローラー軸58には前述の第1従動ギア46が固定される。
【0036】
メッシュシート56の表面には導電材の被膜が形成される。導電材には例えばアルミニウムといった金属材料が用いられることができる。被膜は絶縁体57の表面に積層される。被膜の形成には例えばスパッタリング法が用いられればよい。気流の流通方向に貫通する通気路はそのまま確保される。
【0037】
帯体55にはグラウンド端子62が形成される。グラウンド端子62は被膜から連続する。エアフィルタアセンブリ34が本体26にセットされると、グラウンド端子62は本体26のグラウンドに接続される。こうした接続にあたって、本体26にはグラウンド端子62に接触する電気的な接点(図示されず)が形成されればよい。接点から被膜の電位はグラウンドに落とされればよい。グラウンド端子62に接触する電気的な接点は保持部36の枠体37に形成されてもよく、その場合には、枠体37の接点から延びる配線が本体26上の接点に接続されればよい。
【0038】
図6に示されるように、フィルタ清掃ユニット43は清掃ブラシ64を備える。清掃ブラシ64はダストボックス45内に収納される。清掃ブラシ64はブラシ台座65を備える。ブラシ台座65は水平軸66回りに回転することができる。ブラシ毛67はブラシ台座65の筒面上に所定の中心角範囲にわたって配置される。ブラシ毛67の植毛範囲はブラシ台座65の軸方向にエアフィルタ35を横切る広がりを有する。清掃ブラシ64は所定の回転位置でブラシ毛67をエアフィルタ35に接触させ当該回転位置以外ではブラシ毛67をエアフィルタ35から離脱させる。ブラシ毛67がエアフィルタ35に接触する状態で水平軸線32a、32bに直交する垂直面に沿った方向にエアフィルタ35が移動すると、エアフィルタ35の前面に付着した塵埃はブラシ毛67に絡め捕られることができる。絡め捕られた塵埃はダストボックス45内に回収される。
【0039】
電気集塵ユニット44のイオナイザ51は帯電電極68を有する。帯電電極68は本体26の帯電電極用高電圧電源69から高電圧の供給を受けて空気中に放電する。放電によりイオンおよびオゾンが生成される。こうして生成されたイオンおよびオゾンがイオナイザ51の開口53から放出される。
【0040】
本体26内では吸込口33から吹出口28に向かって気流の通路71が形成される。通路71内に室内熱交換器14は配置される。室内熱交換器14の上流には通路71を横切る横断面72(吸込口33の上面後端側から全面下側)に沿ってエアフィルタ35が配置される。エアフィルタ35の上流側にはイオナイザ51が配置される。
【0041】
(3)室内機の動作
通常の冷房運転時や暖房運転時に送風ファン24が動作すると、本体26内では吸込口33から吹出口28に向かって通路71に沿って気流が生成される。吸込口33から吸引された空気はエアフィルタ35を通過して室内熱交換器14を通過する。室内熱交換器14は気流と冷媒との間で熱交換を実施する。冷房運転時には空気は室内熱交換器14で冷却されて吹出口28から吹き出される。暖房運転時には空気は室内熱交換器14で暖められて吹出口28から吹き出される。こうして冷気や暖気は生成される。
【0042】
気流がエアフィルタ35を通過する際にメッシュシート56のメッシュの大きさよりも大きい塵埃はメッシュを通過することができない。大きい塵埃はエアフィルタ35の前面に捕獲される。その一方で、帯電電極68から放電が行われると、気流中の塵埃などの微粒子は特定の極性で帯電する。帯電した微粒子はクーロン力によりメッシュシート56上の導電材に付着する。こうしてメッシュよりも大きい塵埃だけでなくメッシュよりも小さい微粒子はエアフィルタ35で捕獲される。いわゆるメッシュシート56のメッシュでは気流の流通経路の長さに比べて開口の広がりは大きく設定されることができる。その結果、エアフィルタ35のメッシュシート56の圧力損失は著しく抑制される。エアフィルタ35は圧力損失を回避しながら効果的に微粒子を捕獲することができる。気流の通風抵抗を増やさずに気流の清浄度は高められることができる。ここでは、気流は前メッシュシート61aおよび後メッシュシート61bを相次いで通過する。したがって、1枚のメッシュシートに比べて帯電した微粒子が導電材の被膜に付着する確率は増加する。その一方で、メッシュシート56の通風抵抗は小さい。気流の通風抵抗を増やさずに気流の清浄度は高められることができる。前後1対のメッシュシート61a、61bに代えて、それ以上に気流の流通方向に直列に配置されたメッシュシート56が用いられてもよい。
【0043】
このとき、微粒子がエアフィルタ35の導電材に付着すると、微粒子とグラウンドとの間で電荷がやりとりされる。微粒子の帯電した状態は解消される。こうしてエアフィルタ35が帯電電極68と同極性の電位となることを防止できる。微粒子の付着量が増加しても、確実に新たな微粒子はエアフィルタ35上の導電材に付着していくことができる。なお、ここでは、集塵電極としてのエアフィルタ35の極性をグラウンドとしたが、微粒子を付着させられる極性を持っていればよく、微粒子と逆の極性すなわち負の極性となるようにしてもよい。
【0044】
エアフィルタ35の清掃が行われる際にはフィルタ清掃ユニット43が動作する。ブラシ台座65の回転動作に応じて清掃ブラシ64のブラシ毛67はエアフィルタ35の前面に接触する。このとき、メッシュシート56はローラー軸58に受け止められる。メッシュシート56はブラシ毛67とローラー軸58との間に挟まれる。第1従動ギア46が駆動されると、軌道上でメッシュシート56の移動は引き起こされる。水平軸線32a、32bに直交する垂直面に沿った方向にブラシ毛67およびローラー軸58に対してメッシュシート56の相対移動は実現される。相対移動に応じてブラシ毛67はメッシュシート56の前面をなぞる。こうしてブラシ毛67はメッシュシート56の前面から大きな塵埃を絡め取る。絡め捕られた塵埃はダストボックス45に回収される。
【0045】
(4)第2実施形態に係る室内機の構成
図7は第2実施形態に係る室内機12で電気集塵の原理を概略的に示す。この第2実施形態では、前述の第1実施形態と同様に、エアフィルタ35は前後1対のメッシュシート61a、61bを有する。メッシュシート61a、61bは、絶縁材を介して環状に連結されて連続する。上流側の前メッシュシート61aには、少なくとも気流を受ける第1面の反対側の第2面に導電材の被膜75が形成される。下流側の後メッシュシート61bには、上流側の前メッシュシート61aの被膜75に向き合わせられる面に導電材の被膜76が形成される。導電材には例えばアルミニウムといった金属材料が用いられることができる。被膜75、76はメッシュシート61a、61bの表面に積層される。被膜75、76の形成には例えばスパッタリング法が用いられればよい。気流の流通方向に貫通する通気路はそのまま確保される。
【0046】
前メッシュシート61aの被膜75と後メッシュシート61bの被膜76とは相互に電気的に分離される。前述と同様に、前メッシュシート61aの被膜75はグラウンド端子62でグラウンド77に接続される。後メッシュシート61bの被膜76は配線(図示されず)で本体26の高電圧電源78に接続される。後メッシュシート61bの被膜76は帯電電極68と同極性の電気的な障壁79を形成する。ここでは、前メッシュシート61aの被膜75は集塵電極として機能し、後メッシュシート61bの被膜76は反発電極として機能する。
【0047】
送風ファン24で生成される気流中に、帯電電極68、前メッシュシート61aおよび後メッシュシート61bが配置される。気流の流通方向に沿って、帯電電極68の下流に前メッシュシート61aが配置され、前メッシュシート61aの下流に後メッシュシート61bが配置される。帯電電極68は気流に放電する。ここでは、放電により気流中に正のイオン81が生成される。正のイオン81は気流中の塵埃などの微粒子82に付着する。こうして微粒子82は正極に帯電する(以下、帯電した微粒子を「帯電微粒子83」という)。
【0048】
後メッシュシート61bの被膜76に高電圧が供給されると、後メッシュシート61bの表面は正に帯電する。正に帯電したメッシュシート61bは、気流の流通方向に交差する姿勢の電気的な障壁79を形成する。ここでは、電気的な障壁79は気流の流通方向に直交する。電気的な障壁79は後メッシュシート61bの表面に沿って連続する。ここで、電気的な障壁79は帯電電極68と同極性すなわち正極としている。メッシュシート61a、61bは、絶縁材を介して環状に連結されているため、被膜76に高電圧を供給しても、前メッシュシート61aの被膜75は電気的に分離される。
【0049】
気流は、メッシュシート61aのメッシュで区画される通気路を通過する。気流に乗った帯電微粒子83は、メッシュシート61aのメッシュよりも小さいことからエアフィルタ35の前メッシュシート61aを通過する。帯電微粒子83は電気的な障壁79に衝突する。帯電微粒子83と電気的な障壁79とは同極性を有することから、帯電微粒子83は電気的な障壁79で跳ね返される。これによって帯電微粒子83の進行速度が減じられるとともに進行方向が逆方向となり、帯電微粒子83は前メッシュシート61aに向かって移動し被膜75に付着する。
【0050】
前メッシュシート61aの被膜75はグラウンド77に接続される。帯電微粒子83が前メッシュシート61aの被膜75に付着すると、帯電微粒子83とグラウンド77との間で電荷がやりとりされる。帯電微粒子83の帯電した状態は解消される。こうして前メッシュシート61aが帯電電極68と同極性の電位となることを防止できる。帯電微粒子83の付着量が増加しても、確実に新たな帯電微粒子83は前メッシュシート61aの被膜75に付着していくことができる。なお、ここでは、集塵電極としての前メッシュシート61aの極性をグラウンドとしたが、帯電微粒子83を付着させられる極性を持っていればよく、帯電微粒子83と逆の極性すなわち負の極性となるようにしてもよい。
【0051】
後メッシュシート61bの被膜76は前メッシュシート61aの被膜75に等間隔に向き合わせられることが望ましい。そうすれば電気的な障壁79では電位の分布の偏りが抑制される。その結果、前メッシュシート61aの被膜75上に満遍なく帯電微粒子83は付着することができる。帯電微粒子88がエアフィルタ35上に偏在しないため、エアフィルタ35の電気的な障壁89に向き合う箇所の全体で効率的に帯電微粒子88を捕獲することができる。ここで、被膜76と被膜75との距離が一定でない場合には、エアフィルタ35上に付着する帯電微粒子88の量に偏りが生じてしまい、エアフィルタ35が効率的に帯電微粒子88を捕獲することができない。さらに、近接した個所でスパークが生じる可能性がある。しかし、上述のように等間隔とすることで、後メッシュシート61bの被膜76と前メッシュシート61aの被膜75との間でスパークが発生することを防止できる。
【0052】
ここでは、エアフィルタ35では前メッシュシート61aは前面(第1面)で気流を受け後面(当該第1面の反対側の第2面)で被膜75を支持する。同様に、後メッシュシート61bは前メッシュシート61aの被膜75に向き合わせられる面で被膜76を支持する。こうして前メッシュシート61a上の被膜75に後メッシュシート61b上の被膜76は向き合わせられる。前メッシュシート61aの被膜75および後メッシュシート61bの被膜76は絶縁体の間に配置される。これにより、高電圧が供給される被膜76に対して、ユーザーが外側から直接接触することを防止できる。
【符号の説明】
【0053】
11 空気調和機、26 筐体(本体)、35 フィルタ(エアフィルタ)、56 メッシュシート、61a 前メッシュシート、61b 後メッシュシート、62 グラウンド端子、68 帯電電極、71 通路、72 横断面、75 被膜、76 被膜、77 グラウンド、79 電界。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7