特許第6233597号(P6233597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6233597-エンジンの制御装置 図000002
  • 特許6233597-エンジンの制御装置 図000003
  • 特許6233597-エンジンの制御装置 図000004
  • 特許6233597-エンジンの制御装置 図000005
  • 特許6233597-エンジンの制御装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233597
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】エンジンの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   F02D45/00 364Z
   F02D45/00 364A
   F02D45/00 312E
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-195414(P2014-195414)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2016-65509(P2016-65509A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 康太朗
(72)【発明者】
【氏名】菅野 宏
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−132463(JP,A)
【文献】 特開2007−292031(JP,A)
【文献】 特開2011−231660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 43/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル操作状態に基づいて設定した目標トルクに到達させるようにエンジントルクを制御するエンジンの制御装置であって、
アクセル踏込速度が所定値以上であるときに、このアクセル踏込速度に応じてエンジントルクを変化させる第1のトルク制御手段と、
アクセル踏込速度が上記所定値未満であるときに、上記第1のトルク制御手段によるエンジントルクの変化率よりも小さな所定の変化率によって、エンジントルクを変化させる第2のトルク制御手段と、
を有し、
上記第2のトルク制御手段は、
上記目標トルクが所定値より大きい場合には、上記目標トルクが大きいほど、エンジントルクの変化率を大きくし、
上記目標トルクが上記所定値以下である場合には、上記目標トルクが小さいほど、エンジントルクの変化率を大きくする、
ことを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
アクセル操作状態に基づいて設定した目標トルクに到達させるようにエンジントルクを制御するエンジンの制御装置であって、
アクセル開度がアクセルペダルの踏み込み方向に変化しているときに、アクセル踏込速度に応じてエンジントルクを変化させる第1のトルク制御手段と、
アクセル開度がほぼ一定であるときに、上記第1のトルク制御手段によるエンジントルクの変化率よりも小さな所定の変化率によって、エンジントルクを変化させる第2のトルク制御手段と、
を有することを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項3】
上記第2のトルク制御手段は、上記目標トルクに向けて略一定の変化率でエンジントルクを変化させる、請求項1又は2に記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
上記第2のトルク制御手段は、エンジン回転数が大きいほど、エンジントルクの変化率を大きくする、請求項1乃至のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項5】
上記第1のトルク制御手段は、エンジントルクが負値から正値に転じるときに、エンジントルクを所定値に所定時間保持する、請求項1乃至のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの制御装置に係わり、特に、エンジントルクを目標トルクに到達させるよう制御するエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アクセル操作状態に基づいて目標トルクを設定し、この目標トルクにエンジントルク(エンジンの出力トルク)を到達させるように、燃料噴射量やスロットル開度や点火時期などを制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、アクセルペダル踏込速度が大きいほど、車両の前後加速度が大きくなるようにエンジントルクを制御して、加速感と車体前後の振動とをバランス良く両立させることを図った技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−155412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された技術では、アクセルペダルが踏み込まれている最中には良好な加速感が得られるが、アクセルペダルの踏み込みが終了した後(つまりアクセルペダルの踏込量が一定になった後)には良好な加速感が得られなかった。具体的には、特許文献1に記載された技術では、アクセルペダルの踏み込みが終了してから比較的短い時間後にエンジントルクが目標トルクに到達するため、つまりアクセルペダルの踏み込み終了後においてエンジントルクが上昇する時間が比較的短いため、加速の伸び感が得られなかった。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ドライバに与える加速感を向上させることが可能なエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、アクセル操作状態に基づいて設定した目標トルクに到達させるようにエンジントルクを制御するエンジンの制御装置であって、アクセル踏込速度が所定値以上であるときに、このアクセル踏込速度に応じてエンジントルクを変化させる第1のトルク制御手段と、アクセル踏込速度が所定値未満であるときに、第1のトルク制御手段によるエンジントルクの変化率よりも小さな所定の変化率によって、エンジントルクを変化させる第2のトルク制御手段と、を有し、第2のトルク制御手段は、目標トルクが所定値より大きい場合には、目標トルクが大きいほど、エンジントルクの変化率を大きくし、目標トルクが所定値以下である場合には、目標トルクが小さいほど、エンジントルクの変化率を大きくする、ことを特徴とする。
このように構成された本発明においては、アクセル踏込速度が所定値以上である場合には(具体的にはアクセルペダルが踏み込まれている最中)、アクセル踏込速度に応じてエンジントルクを変化させ、アクセル踏込速度が所定値未満である場合には(具体的にはアクセルペダルの踏み込みが終了した後)、アクセル踏込速度が所定値以上である場合に適用したエンジントルクの変化率よりも小さな所定の変化率によって、エンジントルクを変化させる。これにより、例えば、アクセルペダルの踏み込み終了後に、アクセルペダルが踏み込まれていた際と同等の変化率でエンジントルクを上昇させる比較例による構成よりも、エンジントルクが目標トルクに到達するまでの時間が長くなり、エンジントルクが上昇している時間が長くなるので、加速の伸び感をドライバに与えることができる。したがって、本発明によれば、ドライバに与える加速感と伸び感を向上することができる。
また、本発明においては、目標トルクが所定値より大きい場合には、目標トルクが大きいほど、エンジントルクの変化率を大きくするので、目標トルクの大きさに依らずに、エンジントルクが目標トルクに到達するまでの時間をほぼ一定にすることができる。したがって、目標トルクが大きい場合にもエンジントルクを速やかに目標トルクに到達させることができ、ドライバに与える加速感を確保することができる。
また、本発明においては、目標トルクが所定値未満の領域では、目標トルクが小さいほど、エンジントルクの変化率を大きくするので、この領域でのアクセル操作に対する応答性(初期応答性)及び車速追従性を確保することができる。
別の観点では、本発明は、アクセル操作状態に基づいて設定した目標トルクに到達させるようにエンジントルクを制御するエンジンの制御装置であって、アクセル開度がアクセルペダルの踏み込み方向に変化しているときに、アクセル踏込速度に応じてエンジントルクを変化させる第1のトルク制御手段と、アクセル開度がほぼ一定であるときに、第1のトルク制御手段によるエンジントルクの変化率よりも小さな所定の変化率によって、エンジントルクを変化させる第2のトルク制御手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明において、好ましくは、第2のトルク制御手段は、目標トルクに向けて略一定の変化率でエンジントルクを変化させる。
このように構成された本発明においては、アクセル踏込速度が所定値未満である場合に、つまりアクセル開度がほぼ一定である場合に、目標トルクに向けて略一定の変化率でエンジントルクを変化させるので、リニアな加速感をドライバに与えることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、第2のトルク制御手段は、エンジン回転数が大きいほど、エンジントルクの変化率を大きくする。
このように構成された本発明においては、エンジン回転数が大きいほど、エンジントルクの変化率を大きくするので、エンジン回転数が大きくなると車速が大きくなることで増大する走行抵抗に依らずに、良好な加速感を確保することができる。加えて、エンジン回転数が大きい場合には、車両の加速に対するドライバの期待度が高くなるが、本発明によれば、そのようなドライバの期待度を適切に満たすことが可能となる。
【0011】
本発明において、好ましくは、第1のトルク制御手段は、エンジントルクが負値から正値に転じるときに、エンジントルクを所定値に所定時間保持する。
このように構成された本発明においては、エンジントルクが負値から正値に転じるときに、エンジントルクを所定値に所定時間保持するので、この際にエンジンの傾き方向が変わることで発生し得る振動(ショック)を適切に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエンジンの制御装置によれば、ドライバに与える加速感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態によるエンジンの制御装置が適用されたエンジンシステムの概略構成図である。
図2】本発明の実施形態による基本制御を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態によるエンジントルク制御におけるタイムチャートである。
図4】本発明の実施形態によるエンジントルク制御フローを示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態によるベーストルク変化率マップ及び変化率補正係数マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置について説明する。
【0015】
<システム構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置が適用されたエンジンシステムについて説明する。図1は、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置が適用されたエンジンシステムの概略構成図である。
【0016】
図1に示すように、エンジンシステム200は、主に、ディーゼルエンジンとしてのエンジンEと、エンジンEに吸気を供給する吸気系INと、エンジンEに燃料を供給するための燃料供給系FSと、エンジンEの排気ガスを排出する排気系EXと、エンジンシステム200に関する各種の状態を検出するセンサ99〜122と、エンジンシステム200の制御を行うECU(Electronic Control Unit)60と、を有する。
【0017】
まず、吸気系INは、吸気が通過する吸気通路1を有しており、この吸気通路1上には、上流側から順に、外部から導入された空気を浄化するエアクリーナ3と、通過する吸気を圧縮して吸気圧を上昇させる、ターボ過給機5のコンプレッサ5aと、通過する吸気流量を調整する吸気シャッター弁7と、通水された冷却水を用いて吸気を冷却する水冷式のインタークーラ8と、インタークーラ8に通水する冷却水の流量を制御する電動ウォータポンプ9と、インタークーラ8と電動ウォータポンプ9とを接続し、これらの間で冷却水を循環させる通路である冷却水通路10と、エンジンEに供給する吸気を一時的に蓄えるサージタンク12と、が設けられている。
また、吸気系INにおいては、エアクリーナ3の直下流側の吸気通路1上には、吸入空気量を検出するエアフローセンサ101と吸気温度を検出する吸気温度センサ102とが設けられ、ターボ過給機5のコンプレッサ5aには、このコンプレッサ5aの回転数を検出するターボ回転数センサ103が設けられ、吸気シャッター弁7には、この吸気シャッター弁7の開度を検出する吸気シャッター弁位置センサ105が設けられ、インタークーラ8の直下流側の吸気通路1上には、吸気温度を検出する吸気温度センサ106と吸気圧を検出する吸気圧センサ107とが設けられ、サージタンク12には、吸気マニホールド温度センサ108が設けられている。これらの、吸気系INに設けられた各種センサ101〜108は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号S101〜S108をECU60に出力する。
【0018】
次に、エンジンEは、吸気通路1(詳しくは吸気マニホールド)から供給された吸気を燃焼室17内に導入する吸気バルブ15と、燃焼室17に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁20と、始動時などでの着火を確保するための補助熱源としてのグロープラグ21と、燃焼室17内での混合気の燃焼により往復運動するピストン23と、ピストン23の往復運動により回転されるクランクシャフト25と、燃焼室17内での混合気の燃焼により発生した排気ガスを排気通路41へ排出する排気バルブ27と、を有する。更に、エンジンEには、このエンジンEの出力を利用して発電するオルタネータ26が設けられている。
また、エンジンEには、エンジンEなどを冷却する冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ109と、クランクシャフト25のクランク角度を検出するクランク角センサ110と、油圧及び/又は油温を検出する油圧/油温センサ111と、オイルレベルを検出する光学式オイルレベルセンサ112と、が設けられている。これらの、エンジンEに設けられた各種センサ109〜112は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号S109〜S112をECU60に出力する。
【0019】
次に、燃料供給系FSは、燃料を貯蔵する燃料タンク30と、燃料タンク30から燃料噴射弁20に燃料を供給するための燃料供給通路38とを有する。燃料供給通路38には、上流側から順に、低圧燃料ポンプ31と、高圧燃料ポンプ33と、コモンレール35とが設けられている。また、低圧燃料ポンプ31には燃料ウォーマー32が設けられ、高圧燃料ポンプ33には燃圧レギュレータ34が設けられ、コモンレール35にはコモンレール減圧弁36が設けられている。
また、燃料供給系FSにおいては、高圧燃料ポンプ33には、燃料温度を検出する燃料温度センサ114が設けられ、コモンレール35には、燃圧を検出する燃圧センサ115が設けられている。これらの、燃料供給系FSに設けられた各種センサ114、115は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号S114、S115をECU60に出力する。
【0020】
次に、排気系EXは、排気ガスが通過する排気通路41を有しており、この排気通路41上には、上流側から順に、通過する排気ガスによって回転され、この回転によって上記したようにコンプレッサ5aを駆動する、ターボ過給機5のタービン5bと、排気ガスの浄化機能を有するディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)45及びディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel particulate filter)46と、通過する排気流量を調整する排気シャッター弁49と、が設けられている。
また、排気系EXにおいては、ターボ過給機5のタービン5bの上流側の排気通路41上には、排気圧を検出する排気圧センサ116と排気温度を検出する排気温度センサ117とが設けられ、DOC45の直上流側及びDOC45とDPF46との間には、それぞれ、排気温度を検出する排気温度センサ118、119が設けられ、DPF46には、このDPF46の上流側と下流側との排気圧の差を検出するDPF差圧センサ120が設けられ、DPF46の直下流側の排気通路41上には、酸素濃度を検出するリニアO2センサ121と排気温度を検出する排気温度センサ122とが設けられている。これらの、排気系EXに設けられた各種センサ116〜122は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号S116〜S122をECU60に出力する。
【0021】
ここで、本実施形態では、ターボ過給機5は、タービン5bの全周を囲むように複数の可動式のフラップ5cが設けられ、これらのフラップ5cによりタービン5bへの排気の流通断面積(ノズル断面積)を変化させるようにした可変ジオメトリーターボチャージャー(VGT:Variable Geometry Turbocharger)として構成されている。例えば、フラップ5cは、ダイヤフラムに作用する負圧の大きさが電磁弁により調節され、アクチュエータによって回動される。また、そのようなアクチュエータの位置により、フラップ5cの開度を検出するVGT開度センサ104が設けられている。このVGT開度センサ104は、検出した開度に対応する検出信号S104をECU60に出力する。
【0022】
また、本実施形態では、エンジンシステム200は、高圧EGR装置43及び低圧EGR装置48を有する。高圧EGR装置43は、ターボ過給機5のタービン5bの上流側の排気通路41とターボ過給機5のコンプレッサ5bの下流側(詳しくはインタークーラ8の下流側)の吸気通路1とを接続する高圧EGR通路43aと、高圧EGR通路43aを通過させる排気ガスの流量を調整する高圧EGRバルブ43bと、を有する。低圧EGR装置48は、ターボ過給機5のタービン5bの下流側(詳しくはDPF46の下流側で且つ排気シャッター弁49の上流側)の排気通路41とターボ過給機5のコンプレッサ5bの上流側の吸気通路1とを接続する低圧EGR通路48aと、低圧EGR通路48aを通過する排気ガスを冷却する低圧EGRクーラ48bと、低圧EGR通路48aを通過させる排気ガスの流量を調整する低圧EGRバルブ48cと、低圧EGRフィルタ48dと、を有する。
ここで、高圧EGR装置43によって吸気系INに還流される排気ガス量(以下「高圧EGRガス量」と呼ぶ。)は、排気通路41内における排気圧と、吸気シャッター弁7の開度によって作り出される吸気圧と、高圧EGRバルブ43bの開度とによって概ね決定される。また、低圧EGR装置48によって吸気系INに還流される排気ガス量(以下「低圧EGRガス量」と呼ぶ。)は、ターボ過給機5のコンプレッサ5a上流側の吸気圧と、排気シャッター弁49の開度によって作り出される排気圧と、低圧EGRバルブ48cの開度とによって概ね決定される。
【0023】
次に、ECU60は、上述した各種センサ101〜122の検出信号S101〜S122に加えて、外気温を検出する外気温センサ98、大気圧を検出する大気圧センサ99、及びアクセルペダル95の開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ100のそれぞれが出力した検出信号S98〜S100に基づいて、エンジンシステム200内の構成要素に対する制御を行う。具体的には、ECU60は、ターボ過給機5のタービン5bにおけるフラップ5cの開度を制御すべく、このフラップ5cを駆動するアクチュエータ(不図示)に対して制御信号S130を出力する。また、ECU60は、吸気シャッター弁7の開度を制御すべく、吸気シャッター弁7を駆動するアクチュエータ(不図示)に対して制御信号S131を出力する。また、ECU60は、インタークーラ8に供給する冷却水の流量を制御すべく、電動ウォータポンプ9に対して制御信号S132を出力する。また、ECU60は、エンジンEの燃料噴射量などを制御すべく、燃料噴射弁20に制御信号S133を出力する。また、ECU60は、オルタネータ26、燃料ウォーマー32、燃圧レギュレータ34及びコモンレール減圧弁36を制御すべく、これらのそれぞれに対して制御信号S134、S135、S136、S137を出力する。また、ECU60は、高圧EGRバルブ43bの開度を制御すべく、高圧EGRバルブ43bを駆動するアクチュエータ(不図示)に対して制御信号S138を出力する。また、ECU60は、低圧EGRバルブ48cの開度を制御すべく、低圧EGRバルブ48cを駆動するアクチュエータ(不図示)に対して制御信号S139を出力する。また、ECU60は、排気シャッター弁49の開度を制御すべく、排気シャッター弁49を駆動するアクチュエータ(不図示)に対して制御信号S140を出力する。
【0024】
<基本制御>
次に、図2を参照して、本発明の実施形態によるエンジンシステム200において実施される基本制御について説明する。図2は、本発明の実施形態による基本制御を示すフローチャートである。このフローでは、要求噴射量などに応じた目標酸素濃度及び目標吸気温度を実現するための制御がなされる。また、このフローは、ECU60によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0025】
まず、ステップS11では、ECU60は、上述した各種センサ98〜122が出力した検出信号S98〜S122のうちの少なくとも一以上を取得する。
次いで、ステップS12では、ECU60は、アクセル開度センサ100が検出したアクセル開度(検出信号S100に対応する)に基づいて、エンジンEから出力させるべき目標トルクを設定する。
次いで、ステップS13では、ECU60は、ステップS12で設定した目標トルクと、エンジン回転数とに基づいて、燃料噴射弁20から噴射させるべき要求噴射量を設定する。
次いで、ステップS14では、ECU60は、ステップS13で設定した要求噴射量と、エンジン回転数とに基づいて、燃料の噴射パターンと、燃圧と、目標酸素濃度と、目標吸気温度と、EGR制御モード(高圧EGR装置43及び低圧EGR装置48の両方又は一方を作動させるモード、或いは高圧EGR装置43及び低圧EGR装置48のいずれも作動させないモード)とを設定する。
次いで、ステップS15では、ECU60は、ステップS14で設定した目標酸素濃度及び目標吸気温度を実現する状態量を設定する。例えば、この状態量には、高圧EGR装置43によって吸気系INに還流させる排気ガス量(高圧EGRガス量)や、低圧EGR装置48によって吸気系INに還流させる排気ガス量(低圧EGRガス量)や、ターボ過給機5による過給圧などが含まれる。
次いで、ステップS16では、ECU60は、ステップS15で設定した状態量に基づいて、エンジンシステム200の各構成要素のそれぞれを駆動する各アクチュエータを制御する。この場合、ECU60は、状態量に応じた制限値や制限範囲を設定し、状態値が制限値や制限範囲による制限を遵守するような各アクチュエータの制御量を設定して制御を実行する。
【0026】
<エンジントルク制御>
次に、本発明の実施形態によるエンジントルク制御について説明する。
【0027】
まず、本発明の実施形態によるエンジントルク制御の概要について簡単に説明する。基本的には、ECU60は、アクセル開度センサ100が検出したアクセル開度に対応するアクセル操作状態に基づいて目標トルクを設定し、この目標トルクにエンジントルク(エンジンEの出力トルクを意味する。)を到達させるように、燃料噴射弁20の燃料噴射量や吸気シャッター弁7の開度など、エンジントルクの増減に寄与する種々の制御量を調整する制御を行う。
特に、本実施形態では、ECU60は、アクセルペダル95が踏み込まれている最中には(つまりアクセル開度がアクセルペダル95の踏み込み方向に変化している際)、アクセルペダル95の踏込速度などに応じてエンジントルクを上昇させる制御を行い、このアクセルペダル95の踏み込みが終了した後(つまりアクセル開度がほぼ一定になった際)、アクセルペダル95が踏み込まれていた際に適用したエンジントルクの変化率よりも小さな変化率(つまり緩やかな傾き)によって、エンジントルクを上昇させる制御を行う。車速が大きくなると走行抵抗が大きくなるため、車速が大きくなるにつれて車両に働く加速力が低下するので、本実施形態では、そのような走行抵抗の上昇に合わせて、つまり走行抵抗に依らずに良好な加速感が得られるように、エンジントルクを上昇させる制御を行っている。
【0028】
以上のように、ECU60は、本発明における「エンジンの制御装置」に相当し、本発明における「第1のトルク制御手段」及び「第2のトルク制御手段」として機能する。
【0029】
次に、図3を参照して、本発明の実施形態によるエンジントルク制御におけるタイムチャートについて説明する。図3は、本発明の実施形態によるエンジントルク制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示している。
【0030】
図3において上に示すグラフG1は、アクセル開度(アクセル開度センサ100によって検出されたもの)の時間変化を示している。また、図3において下に示すグラフG2、G3は、本発明の実施形態によるエンジントルク制御によって適用されたエンジントルクを示している。具体的には、グラフG2は、アクセル操作状態に応じて設定された目標トルクの時間変化を示し、グラフG3は、実際のエンジントルク(以下では適宜「実トルク」と呼ぶ。)の時間変化を示している。
より詳しくは、グラフG2に示す目標トルクは、アクセル開度及びエンジン回転数により一義的に決定される、エンジントルクが最終的に到達すべきトルクであり、後述する到達目標トルクに相当する。また、グラフG3に示す実トルクは、そのようなグラフG2に示す目標トルク(到達目標トルク)にエンジントルクを到達させるまでの過程において、エンジントルクが設定されるべき目標トルクによって制御した場合のエンジントルクに相当し、基本的には、実トルクは当該目標トルクに一致する。
【0031】
まず、時刻t1において、図3のグラフG1に示すように、アクセルペダル95の踏み込みが開始される。この時刻t1以降、ECU60は、グラフG2に示すように、アクセル開度及びエンジン回転数に応じた目標トルクを設定して、グラフG3に示すように、このような目標トルクに向けて実トルクを上昇させる(破線領域A1参照)。具体的には、ECU60は、目標トルク、エンジン回転数及びアクセル踏込速度に応じた変化率によって、実トルクを上昇させる。この場合、ECU60は、目標トルク、エンジン回転数及びアクセル踏込速度のそれぞれが大きいほど、大きな変化率を適用する。
【0032】
更に、ECU60は、上記のように実トルクを上昇させている最中において、実トルクが0付近を跨ぐときに、つまり実トルクが負値から正値に転じるときに、0.05〜0.15秒程度の所定時間、実トルクを0付近の所定値に保持する(破線領域A2参照)。こうしている理由は以下の通りである。エンジンブレーキを使用する全閉減速の状態からアクセルペダル95が踏み込まれた場合、当初のエンジントルクの値は負値になっている。そのため、エンジントルクが上昇していく過程で負値から正値に転じることとなるが、この際に、エンジンEの傾き方向が変わり、エンジンルーム内でエンジンEが動いて、車両に振動が生じる場合がある。本実施形態では、このような車両の振動を防止すべく、実トルクが負値から正値に転じるときに、実トルクを所定値に所定時間保持して、実トルクの変化率を小さくするようにしている。
【0033】
この後、時刻t2において、グラフG1に示すように、アクセルペダル95の踏み込みが終了し、時刻t2以降、アクセル開度がほぼ一定になる。ECU60は、この時刻t2以降、グラフG2に示すように、ほぼ一定となったアクセル開度、及びエンジン回転数に応じた目標トルクを設定する。この場合、ECU60は、目標トルクをほぼ一定に維持する。また、ECU60は、時刻t2以降、グラフG3に示すように、アクセルペダル95が踏み込まれている最中(時刻t1から時刻t2までの期間)における実トルクの変化率よりも小さな略一定の変化率によって、つまり緩やかな略一定の傾きによって、実トルクを上昇させる(破線領域A3参照)。
1つの例では、ECU60は、目標トルク及びエンジン回転数に応じた変化率を設定し(この場合には、アクセル踏込速度がほぼ0のため、アクセル踏込速度に応じて変化率を変化させない)、この設定した変化率に従って実トルクを上昇させる。この例でも、ECU60は、目標トルク及びエンジン回転数のそれぞれが大きいほど、大きな変化率を適用する。他の例では、ECU60は、アクセルペダル95の踏み込み終了時に(時刻t2)、実トルクを目標トルクに到達させるまでの時間T1(例えば1〜2秒)を決定し、この時間T1の経過時点において実トルクが目標トルクに到達するように、実トルクを上昇させる。この例では、目標トルクやエンジン回転数などの種々のパラメータに応じて時間T1を変化させてもよいし、時間T1として固定値を用いてもよい。
【0034】
以上述べたような実トルクの制御により、時刻t3において、実トルクが目標トルクに到達する。
なお、図3では、時刻t3以降において、実トルクが目標トルクにほぼ一致しているが、実際には、エアコンやオルタネータ26などの補機でのエネルギーの消費により、その分だけ、実トルクが目標トルクよりも下回ることとなる。
【0035】
次に、図4を参照して、本発明の実施形態によるエンジントルク制御の全体の流れについて具体的に説明する。図4は、本発明の実施形態によるエンジントルク制御フローを示すフローチャートである。このエンジントルク制御フローは、ECU60によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0036】
ここで、エンジントルク制御フローの概要について簡単に説明する。エンジントルク制御フローでは、ECU60は、まず、アクセル開度及びエンジン回転数から一義的に決定される到達目標トルクを設定し、この到達目標トルク、エンジン回転数及びアクセル踏込速度に基づいて、到達目標トルクに実トルクを到達させるまでの間に実トルクが設定されるべき変化率(傾き)を求め、この変化率から目標トルクを求める。そして、ECU60は、こうして得られた目標トルク及び到達目標トルクなどに関する判定を行って、最終的に適用する目標トルク(最終目標トルク)を設定して、この最終目標トルクに従ってエンジントルクを制御する。
【0037】
図4のエンジントルク制御フローについて具体的に説明する。まず、ステップS21では、ECU60は、各種センサから、エンジンEの運転状態を取得する。具体的には、ECU60は、アクセル開度センサ100が検出したアクセル開度と、クランク角センサ110が検出したクランク角から求まるエンジン回転数とを取得する。
【0038】
次いで、ステップS22では、ECU60は、ステップS21で取得したアクセル開度及びエンジン回転数に基づいて、到達目標トルクを設定する。例えば、ECU60は、所定の演算式、又は予め作成されて記憶されたマップを用いて、アクセル開度及びエンジン回転数から到達目標トルクを設定する。
【0039】
次いで、ステップS23では、ECU60は、ステップS21で取得したエンジン回転数と、ステップS22で設定した到達目標トルクとに基づいて、実トルクを上昇させる際の変化率のベースとなるベーストルク変化率を設定する。具体的には、ECU60は、予め作成されて記憶されたベーストルク変化率マップを用いて(図5(A)及び(B)参照)、エンジン回転数及び到達目標トルクからベーストルク変化率を設定する。
【0040】
また、ECU60は、上記したステップS22及びS23の処理と並行して、ステップS24において、ステップS21で取得したアクセル開度から求まるアクセル踏込速度(アクセル開度の変化量に相当する)に基づいて、上記したベーストルク変化率を補正するための係数である変化率補正係数(ゲインに相当する)を設定する。具体的には、ECU60は、予め作成されて記憶された変化率補正係数マップを用いて(図5(C)参照)、アクセル踏込速度から変化率補正係数を設定する。
【0041】
ここで、図5を参照して、本発明の実施形態によるベーストルク変化率マップ及び変化率補正係数マップについて説明する。図5(A)は、到達目標トルクによって規定されたベーストルク変化率マップを示し、図5(B)は、エンジン回転数によって規定されたベーストルク変化率マップを示し、図5(C)は、アクセル踏込速度によって規定された変化率補正係数マップを示している。
【0042】
図5(A)に示すベーストルク変化率マップは、到達目標トルクが所定値Tr1以上の領域では、到達目標トルクが大きいほど、ベーストルク変化率が大きくなるように規定されている。これは、アクセルペダル95の踏み込み終了後において、実トルクが到達目標トルクに到達するまでの時間が、到達目標トルクの大きさなどに依らずにほぼ一定になるようにしたものである。また、図5(A)に示すベーストルク変化率マップは、到達目標トルクが所定値Tr1未満の領域では、到達目標トルクが小さいほど、ベーストルク変化率が大きくなるように規定されている。これは、到達目標トルクが小さい領域では細かなアクセル操作が行わることはほとんどないという観点から、この領域では、実トルクに適用する変化率を大きくして、アクセル操作に対する応答性(初期応答性)及び車速追従性を確保しようとしたものである。
【0043】
図5(B)に示すベーストルク変化率マップは、エンジン回転数が大きくなると、ベーストルク変化率が少しだけ大きくなるように規定されている。これは、エンジン回転数が大きくなると車速が大きくなり、それにより走行抵抗も大きくなるため、そのように大きくなる走行抵抗に対処しようとしたものである。また、エンジン回転数が大きいほど、車両の加速に対する期待度が高くなるため、この期待度に応えようとしたものである。
【0044】
図5(C)に示す変化率補正係数マップは、アクセル踏込速度が大きいほど、変化率補正係数が大きくなるように規定されている。これは、アクセル踏込速度が大きいほど、ベーストルク変化率を大きく増幅して、実トルクを速やかに上昇させようとしたものである。また、変化率補正係数マップは、アクセル踏込速度が0である場合に、変化率補正係数として1が設定されるように規定されている。これは、アクセル踏込速度が0である場合、具体的にはアクセルペダル95の踏み込みが終了している場合に、ベーストルク変化率を増幅させないようにしたものである。
このような変化率補正係数マップによれば、アクセルペダル95が踏み込まれている時(アクセル踏込速度>0である時)には、1よりも大きな値の変化率補正係数が決定されるため、ベーストルク変化率が増幅されるが、アクセルペダル95の踏み込みが終了している時(アクセル踏込速度が0である時)には、1が変化率補正係数として決定されるため、ベーストルク変化率は増幅されない。そのため、図3で述べたように、アクセルペダル95が踏み込まれている時とアクセルペダル95の踏み込みが終了している時とで異なる変化率が実トルクに適用されることとなる。具体的には、アクセルペダル95の踏み込み終了後には、アクセルペダル95が踏み込まれている最中よりも小さな変化率が適用されることとなる。
【0045】
図4に戻って、ステップS25以降の処理について説明する。ステップS25では、ECU60は、前回の処理で設定した最終目標トルクと、ステップS23で設定したベーストルク変化率と、ステップS24で設定した変化率補正係数とに基づいて、目標トルクを算出する。具体的には、ECU60は、ベーストルク変化率と変化率補正係数とを乗算した値(変化率補正係数によって補正されたベーストルク変化率が得られ、この変化率は、実トルクに対して適用すべき、単位時間当たりのトルクの変化量に相当する)を、前回の最終目標トルクに対して加算して得た値を、目標トルクとして算出する。
なお、図5(A)に示すベーストルク変化率マップから、到達目標トルクに対応するベーストルク変化率が設定され、図5(B)に示すベーストルク変化率マップから、エンジン回転数に対応するベーストルク変化率が設定されることで、2つのベーストルク変化率が得られるが、ステップS25において目標トルクを算出するに当たっては、例えば、この2つのベーストルク変化率を乗算して得た値をベーストルク変化率として用いるとよい。
【0046】
次いで、ステップS26では、ECU60は、実トルクが0付近の所定値を跨いだか否かを判定する。例えば、ECU60は、実トルクが負値から正値に転じた否かを判定する。実トルクが所定値を跨いだと判定された場合(ステップS26:Yes)、ステップS27に進み、ECU60は、0付近の所定値を最終目標トルクに設定する。この後、ステップS31に進み、ECU60は、ステップS27で設定した最終目標トルクに基づいて実トルクを制御する。具体的には、ECU60は、0.05〜0.15秒程度の所定時間、実トルクを0付近の所定値に保持する制御を行う。
【0047】
一方で、実トルクが所定値を跨いだと判定されなかった場合(ステップS26:No)、ステップS28に進み、ECU60は、ステップS25で算出した目標トルクが、ステップS22で設定した到達目標トルク未満であるか否かを判定する。目標トルクが到達目標トルク未満であると判定された場合(ステップS28:Yes)、つまり目標トルクが到達目標トルクに到達していない場合、ステップS29に進み、ECU60は、ステップS25で算出した目標トルクを最終目標トルクに設定する。この後、ステップS31に進み、ECU60は、ステップS29で設定した最終目標トルクに基づいて実トルクを制御する。具体的には、ECU60は、ステップS25で算出した目標トルクが実現されるように、燃料噴射弁20の燃料噴射量や吸気シャッター弁7の開度などを制御する。
【0048】
一方で、目標トルクが到達目標トルク未満であると判定されなかった場合(ステップS28:No)、つまり目標トルクが到達目標トルクに到達している場合、ステップS30に進み、ECU60は、ステップS22で設定した到達目標トルクを最終目標トルクに設定する。この後、ステップS31に進み、ECU60は、ステップS30で設定した最終目標トルクに基づいて実トルクを制御する。具体的には、ECU60は、実トルクが到達目標トルクに維持されるように、燃料噴射弁20の燃料噴射量や吸気シャッター弁7の開度などを制御する。
【0049】
<作用効果>
次に、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置の作用効果について説明する。
【0050】
本実施形態によれば、アクセルペダル95が踏み込まれている最中には、アクセル踏込速度などに応じてエンジントルクを上昇させる制御を行い、このアクセルペダル95の踏み込みが終了した後に、アクセルペダル95が踏み込まれていた際に適用したエンジントルクの変化率よりも小さな変化率によってエンジントルクを上昇させる制御を行う。これにより、本実施形態によれば、アクセルペダル95の踏み込み終了後に、アクセルペダル95が踏み込まれていた際と同等の変化率でエンジントルクを上昇させる比較例による構成よりも、エンジントルクが目標トルクに到達するまでの時間が長くなり、エンジントルクが上昇している時間が長くなるので、加速の伸び感をドライバに与えることができる。特に、本実施形態によれば、アクセルペダル95の踏み込み終了後に、目標トルクに向けて略一定の変化率でエンジントルクを変化させるのでリニアな加速感をドライバに与えることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、目標トルク(到達目標トルク)が大きいほど、エンジントルクの変化率を大きくするので(図5(A)参照)、到達目標トルクの大きさに依らずに、実トルクが到達目標トルクに到達するまでの時間をほぼ一定にすることができる。加えて、本実施形態によれば、到達目標トルクが所定値Tr1未満の領域では、到達目標トルクが小さいほど、エンジントルクの変化率を大きくするので(図5(A)参照)、この領域でのアクセル操作に対する応答性(初期応答性)及び車速追従性を確保することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、エンジン回転数が大きいほど、エンジントルクの変化率を大きくするので(図5(B)参照)、エンジン回転数が大きくなると車速が大きくなることで増大する走行抵抗に依らずに、良好な加速感を確保することができる。加えて、エンジン回転数が大きい場合には、車両の加速に対するドライバの期待度が高くなるが、本実施形態によれば、そのようなドライバの期待度を適切に満たすことが可能となる。
【0053】
また、本実施形態によれば、エンジントルクが負値から正値に転じるときに、エンジントルクを所定値に所定時間保持するので(図3参照)、この際にエンジンEの傾き方向が変わることで発生し得る振動を適切に抑制することができる。
【0054】
<変形例>
上述した実施形態では、アクセルペダル95が踏み込まれている最中には、アクセル踏込速度などに応じてエンジントルクを上昇させる制御を行い、アクセルペダル95の踏み込みが終了した後には、アクセルペダル95が踏み込まれている最中よりも小さな変化率でエンジントルクを上昇させる制御を行っていたが(図3等参照)、他の実施形態では、アクセル踏込速度が所定値以上であるときに、アクセル踏込速度などに応じてエンジントルクを上昇させる制御を行い、アクセル踏込速度が所定値未満であるときに、アクセル踏込速度が所定値以上であるときに用いた変化率よりも小さな変化率でエンジントルクを上昇させる制御を行ってもよい。つまり、アクセル踏込速度が完全に0になっていなくても、比較的小さな値である場合に、緩やかな傾きでエンジントルクを上昇させる制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 吸気通路
5 ターボ過給機
5a コンプレッサ
5b タービン
41 排気通路
43 高圧EGR装置
48 低圧EGR装置
60 ECU
95 アクセルペダル
100 アクセル開度センサ
200 エンジンシステム
E エンジン
図1
図2
図3
図4
図5