(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233601
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】RFID回路のためのアンテナインタフェース
(51)【国際特許分類】
H04B 5/02 20060101AFI20171113BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20171113BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20171113BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
H04B5/02
G06K19/07 230
G06K19/077 252
G06K7/10 224
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-535180(P2014-535180)
(86)(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公表番号】特表2015-502677(P2015-502677A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】IB2012002447
(87)【国際公開番号】WO2013054195
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年9月29日
(31)【優先権主張番号】61/546,354
(32)【優先日】2011年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502188642
【氏名又は名称】マーベル ワールド トレード リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ゲイ、マイケル、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ドレル、フランソワ ルイス
(72)【発明者】
【氏名】デクラーク、フレデリック
【審査官】
木村 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−524156(JP,A)
【文献】
特開2001−022906(JP,A)
【文献】
特開2007−208972(JP,A)
【文献】
特開2010−182177(JP,A)
【文献】
特開2004−064283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/00 − 5/02
G06K 7/10
G06K 19/07 − 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数識別回路(RFID回路)であって、
アンテナと、前記アンテナと直列に結合される第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを含み、前記アンテナに結合されるアンテナインタフェースと、を有し、高周波を送受信するアンテナネットワークと、
前記アンテナインタフェースの前記第2のコンデンサの第1のノードおよび第2のノードにそれぞれ結合される第1のピンおよび第2のピンを有し、前記アンテナネットワークと組み合わせてリーダーおよびタグとして動作する集積回路と、
を備え、
前記集積回路は、(i)第1の入力、(ii)前記第1の入力の極性とは反対の極性を有する第2の入力、(iii)前記第1のピンに結合される第1の出力、および(iv)前記第2のピンに結合される第2の出力を有する増幅手段を有し、前記第1の入力と前記第1の出力との間、および前記第2の入力と前記第2の出力との間に、出力電流負帰還および出力電圧負帰還が形成され、少なくとも前記RFID回路がリーダーとして動作するときに、前記出力電流負帰還からの電流負帰還信号と前記出力電圧負帰還からの電圧負帰還信号との比率によって決定される出力アドミタンスを与えることにより、リーダーとして動作するときに、前記RFID回路の電力消費量を増大させることなく、組み合わされた前記集積回路および前記アンテナネットワークの周波数応答を選択的な特性に調整できる、
RFID回路。
【請求項2】
前記集積回路の電流負帰還信号および電圧負帰還信号は、組み合わされた前記集積回路および前記アンテナネットワークの動作帯域幅を選択された値まで増大させる抵抗成分を前記出力アドミタンスが含むように設定される、請求項1に記載のRFID回路。
【請求項3】
前記集積回路の電流負帰還信号および電圧負帰還信号は、組み合わされた前記集積回路および前記アンテナネットワークの共振周波数を選択された値に同調させる抵抗成分を前記出力アドミタンスが含むように設定される、請求項1に記載のRFID回路。
【請求項4】
前記アンテナインタフェースで前記集積回路により生み出される信号電圧は、自動レベル制御ループによって選択されたレベルに調整でき、
前記自動レベル制御ループは、
前記アンテナインタフェースの入力に結合される電圧レベル検出器と、
前記電圧レベル検出器の出力と基準電圧との間の差に応じて出力を与える電圧比較器と、
一定の入力信号電圧を受けて利得応答を前記電圧比較器の出力へ与え、前記増幅手段の入力に結合される出力を有する可変利得回路と、
を有する、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のRFID回路。
【請求項5】
前記増幅手段は、互いに比例する複数の出力電流信号を与え、第1の出力電流信号は、電力を前記アンテナネットワークに与えるために前記第1のピンと前記第2のピンとの間で流れるように結合され、第2の出力電流信号は、負帰還信号を与えるために回路手段を介して増幅器入力に結合され、第3の出力電流信号は、タグが前記アンテナに電磁気的に結合されるときに前記タグの負荷変調に応答して出力を生成する回路手段に入力を与えるように接続される、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のRFID回路。
【請求項6】
前記複数の出力電流信号のうちの1つは、前記アンテナネットワークの入力アドミタンスに比例する信号を与え、前記アンテナネットワークは、前記タグの負荷の変調によって、前記アンテナに電磁気的に結合される前記タグから送信されるデータを受信する、請求項5に記載のRFID回路。
【請求項7】
前記アンテナネットワークは、タグの負荷の変調によって、前記アンテナに電磁気的に結合される前記タグから送信されるデータを受信し、
前記集積回路は、前記増幅手段の入力から得られる信号を前記アンテナネットワークの入力アドミタンスに比例する信号から差し引いて、差し引かれた信号に基づいて前記タグからデータを回収する、請求項5に記載のRFID回路。
【請求項8】
無線周波数識別回路(RFID回路)であって、
アンテナと、前記アンテナに結合され、前記アンテナと直列に結合される第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを含み、高周波を送受信するアンテナインタフェースと、を含む、アンテナネットワークと、
前記アンテナインタフェースの前記第2のコンデンサの第1のノードおよび第2のノードにそれぞれ結合される第1の接点および第2の接点を含むアンテナポートを有し、前記アンテナネットワークと組み合わせてリーダーおよびタグとして動作する集積回路と、
を備え、
前記集積回路は、(i)第1の入力、(ii)前記第1の入力の極性とは反対の極性を有する第2の入力、(iii)前記第1の接点に結合される第1の出力、および(iv)前記第2の接点に結合される第2の出力を有する出力増幅器を有し、前記第1の入力と前記第1の出力との間、および前記第2の入力と前記第2の出力との間に、出力電流負帰還および出力電圧負帰還が形成され、
前記集積回路は、電力消費量を増大させることなく、前記集積回路および前記アンテナネットワークの周波数応答を選択された特性に調整できるように、リーダーとして動作するときに前記出力電流負帰還および前記出力電圧負帰還からの信号を前記出力増幅器に印加することによって、前記出力電流負帰還からの出力電流負帰還信号と前記出力電圧負帰還からの出力電圧負帰還信号との比率によって決定される出力アドミタンスに対応する出力コンダクタンスを前記アンテナポートでもたらす、
RFID回路。
【請求項9】
前記アンテナインタフェースの前記第1のコンデンサは、前記アンテナポートの前記第1の接点と前記第2のコンデンサの前記第1のノードとに接続される第1のノードを含み、前記第1のコンデンサの第2のノードが前記アンテナの第1のノードに接続され、
前記アンテナインタフェースの前記第2のコンデンサの前記第2のノードは、前記アンテナの第2のノードと前記アンテナポートの前記第2の接点とに接続される、
請求項8に記載のRFID回路。
【請求項10】
前記集積回路が前記出力アドミタンスに対応する出力インピーダンスを前記アンテナポートでもたらすことにより前記集積回路の動作帯域幅が制御される、請求項8または請求項9に記載のRFID回路。
【請求項11】
前記出力電流負帰還および前記出力電圧負帰還は、第1のトランジスタのゲートと第2のトランジスタのゲートとに接続され、前記第1のトランジスタのドレインが前記出力増幅器の前記第1の入力に接続され、前記第2のトランジスタのドレインが前記出力増幅器の前記第2の入力に接続される、請求項8から請求項10のいずれか1つに記載のRFID回路。
【請求項12】
前記集積回路は、高い変調指数を有する信号を生成するために、前記出力増幅器の入力から得られる信号から前記出力電流負帰還からの電流負帰還信号および前記出力電圧負帰還からの電圧負帰還信号を差し引き、差し引かれた信号に基づいて前記集積回路と通信するタグからデータを回収する、請求項8から請求項11のいずれか1つに記載のRFID回路。
【請求項13】
前記出力増幅器は、キャリア信号発生器に結合される入力ノードを有する差動演算相互コンダクタンス増幅器であり、前記出力増幅器は、前記アンテナポートの前記第1の接点と前記第2の接点との間で流れる第1の出力電流を与える、請求項8から請求項12のいずれか1つに記載のRFID回路。
【請求項14】
アンテナと、前記アンテナに結合され、前記アンテナと直列に結合される第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを含むアンテナインタフェースとを含むアンテナネットワークと、(i)第1の入力、(ii)前記第1の入力の極性とは反対の極性を有する第2の入力、(iii)第1の出力、および(iv)第2の出力を有する増幅手段と、前記アンテナインタフェースの前記第2のコンデンサの第1のノードおよび第2のノードにそれぞれ結合される第1のピンおよび第2のピンとを有し、前記第1のピンは、前記第1の出力に結合され、前記第2のピンは、前記第2の出力に結合され、前記第1の入力と前記第1の出力との間、および前記第2の入力と前記第2の出力との間に、出力電流負帰還および出力電圧負帰還が形成され、前記アンテナネットワークと組み合わせてリーダーおよびタグとして動作する集積回路とを用いて、高周波を受信するステップと、
前記出力電流負帰還からの出力電流負帰還信号および前記出力電圧負帰還からの出力電圧負帰還信号を前記集積回路へ与えるステップと、
電力消費量を増大させることなく、前記集積回路および前記アンテナネットワークの周波数応答を選択された特性に調整できるように、リーダーとして動作するときに出力電流負帰還信号と出力電圧負帰還信号との比率によって決定される出力アドミタンスをもたらすステップと、
を備える方法。
【請求項15】
前記集積回路の前記増幅手段の入力から得られる信号から前記出力電流負帰還信号および前記出力電圧負帰還信号を差し引き、差し引かれた信号に基づいて前記集積回路と通信するタグからデータを回収するステップを更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記出力電流負帰還信号および前記出力電圧負帰還信号を前記集積回路の出力増幅器に印加することによって前記集積回路と前記アンテナインタフェースとを接続するアンテナポートで出力コンダクタンスをもたらすステップと、
前記出力アドミタンスに対応する出力インピーダンスを前記アンテナポートでもたらすことにより前記集積回路の動作帯域幅を制御するステップと、
を更に備える、請求項14または請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許開示は、全ての目的のために参照することによりその全体が本願に組み込まれる発明者Gayらの「Antenna Interface for a Radio Frequency Identification Circuit」と題される2011年10月12日に出願された米国仮出願第61/546,354号の利益および優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中で与えられる背景技術の説明は、一般に開示の事情を与えるためのものである。現在名前が挙げられている発明者らの研究が、その研究の範囲で、この背景技術の節において記載され、また、さもなければ出願時に従来技術と見なされない可能性がある説明の態様は、本開示に対して従来技術として明示的にも暗示的にも認められない。
【0003】
無線自動識別(RFID)は、記憶データをタグからリーダーへと転送するために電波を介して通信を行う。リーダーは、タグからデータを収集するために高周波(RF)をタグへ送信するように構成され、また、タグは、送信されたRFをリーダーにより検出可能な理解される態様で変調することによって記憶データをリーダーへ転送するように構成されてもよい。送信されたRFを変調するように構成されるタグは、一般に、送信されたRFによって給電され、また、一般に、例えばバッテリーなどにより自己給電されない。あるいは、タグは、タグが自己給電される場合には、リーダーにより送信される既知のRF信号をタグが検出した後に、RFを元のリーダーへ独立に送信するように構成されてもよい。RFIDは通信のために電波を使用するため、タグおよびリーダーは互いに接触する必要がない。RFIDのこの非接触通信は、磁気ストライプ(マグストライプ)を有するカードとマグストライプリーダーとの間の典型的な通信であって、マグストライプリーダー内のピックアップコイルまたは同様のものがマグストライプ中にエンコードされた情報を読み取ることができるようにカードのマグストライプをマグストライプリーダーが通り抜ける通信とは対照的である。また、RFIDのこの非接触通信は、スマートカードとスマートカードリーダーとの間の典型的な通信であって、スマートカードリーダーがスマートカード上の情報を読み取ることができるあるいはスマートカード上に情報を書き込むことができるようにスマートカード上の電気接点がスマートカードリーダー上の対応する電気接点と電気的に接触する通信とも対照的である。
【0004】
RFIDの非接触通信に起因して、多数の用途がこの技術のために生み出されてきた。用途は、しばしば、タグ内に記憶される、例えば半導体メモリ内に記憶される固有の情報を収集することによってタグが固有であると識別できるリーダーを軸として展開する。例えば、タグは、しばしば、従業員バッジで使用され、これらの従業員バッジは、従業員が会社の建物に入るために自分の雇用バッジをリーダーにかざすことができるように会社の従業員に対して与えられる。会社の建物にアクセスするための特定の固有情報がエンコードされたタグを伴わない人は、一般に、建物に入るための特定の固有情報を収集しないリーダーによって、会社の建物に入ることが拒否される。従業者が建物へ安全に入る前述の例は、アクセス制御のより一般的な用途の1つの例である。
【0005】
アクセス制御に加えて、RFIDは、製品、自動車、動物の識別のためにも使用され、また、電子パスポートや電子発券のために使用される。例えば、製品がタグを含む場合に、ストアの棚の上の製品の検出により、比較的素早い正確な製品の棚卸しをすることができる。
【0006】
RFIDの更なる用途は、銀行業務用途、購入を行うための用途、スマートポスターに組み込まれたタグを読み取ることなどを含む。これらの更なる用途のため、モバイル機器(例えば、スマートフォン、携帯端末、アイポッドのような機器など)は、リーダーとタグとを含んでもよい。例えば、リーダーを含むモバイル機器は、スマートポスター中のタグを読み取って、スマートポスターと関連付けられるウェブサイトを表示するように構成されてもよい。あるいは、モバイル機器のタグは、モバイル機器のユーザが行っている購入のためにモバイル機器の外部のリーダーによって読み取られてもよく、また、リーダーは、購入のためのユーザの銀行口座への課金に影響を与えてもよい。
【0007】
近距離無線通信(NFC)は、リーダーとタグとの間の相互作用距離が比較的短い、例えば最大で約3cmであるRFIDの特定の1つのタイプである。NFCの比較的短い通信長さは、不正なユーザによりタグが密かに読み取られないようにするセキュリティの1つの指標を与える。したがって、NFCは、個人健康情報のやりとり、ペアリング機器(例えば、ヘッドセットをモバイル機器と一組にする、2つのモバイル機器を一組にするなど)、銀行取引、消費者購入、または、他の金融取引などの高レベルのセキュリティを必要とする用途のための使用に特に良く適している。
【0008】
RFIDおよびNFCのための標準規格を設定する標準化機関の1つの目標は、モバイル機器内のリーダーおよびタグが1つのアンテナを共有することである。この目標の1つの理由は、モバイル機器内のしばしば多数となるアンテナ間の干渉を最小限に抑えることができるようにモバイル機器内のアンテナの数を最小限に抑えるためである。例えば、典型的なスマートフォンは、携帯電話型通信(例えば、ボイス、メッセージングなど)のための高周波(RF)アンテナ、インターネット型通信のためのWiFiアンテナ、ブルートゥースアンテナ、および、GPS型通信のためのGPSアンテナを含んでもよい。リーダーおよびタグに1つのアンテナを設けると、アンテナ干渉を減らすための設計配慮が制限される。また、リーダーおよびタグが1つのアンテナを共有するようにすると、モバイル機器内に含まれる電子部品の数が制限され、それにより、モバイル機器を製造するコストが制限される。
【0009】
モバイル機器において1つのアンテナを共有するリーダーおよびタグに関しては多くの設計目標および懸案事項が存在する。例えば、ある1つの設計は、アンテナと組み合わせてリーダーとしておよびタグとして動作するように構成される単一の集積回路(本明細書中では、単一の集積回路が「IC」と称される)を与える。ICに関する幾つかの設計は、ICとアンテナとの間のアンテナインタフェースと接続するピンを可能な限り少なくしようと試みる。ICは、様々なアンテナサイズに対応するとともに他のRF信号との干渉を回避するべくアンテナを同調させるために周波数同調を行ってもよい。一部のモバイル機器メーカーは、モバイル機器の外周にある比較的大型のアンテナの使用を定め、一方、他のモバイル機器メーカーは、比較的小型のアンテナの使用を定める。また、ICは、比較的強いRF場を放つリーダーから比較的大きいRFエネルギーを収集するアンテナに関して比較的高いワット損をもたらす場合がある。一般に、比較的高い電力の放散は、比較的高いワット損をもたらすために比較的大きい半導体基板を必要とする。モバイル機器の多くの回路で一般的であるように、モバイル機器メーカーは、モバイル機器内のRFID回路のフットプリントを減少しようと試みる。
【0010】
1つのアンテナを共有するリーダーおよびタグに関する他の設計は、比較的古いISO動作標準規格にしたがった弱いタグ動作を伴ってリーダー動作用の比較的高い電力RF信号をもたらすためにICおよびアンテナが比較的高い送信駆動能力を有するようにすることを含んでもよい。ICおよびアンテナは、比較的感度が良い受信器感度を有するように構成されてもよく、そのため、タグとして動作するICおよびアンテナは、比較的弱いリーダーに対して感度が良く、および/または、そのリーダーから比較的大きい動作距離(例えば、最大で約2cm)をもたらす。リーダーモードにおいて、アンテナの駆動電流は、タグがリーダーによって検出されない場合には、比較的小さい値に設定されてもよく、また、タグがリーダーによって検出される場合には、より高い値に設定されてもよい。幾つかの設計において、タグとして動作するICおよびアンテナは、リーダーが例えば比較的大きな距離でタグを検出できるように、リーダーから受信された信号を十分に負荷変調する。リーダーとして動作するICおよびアンテナは、リーダーが比較的大きな距離でタグからデータを取得できるように、タグにより受信された信号の負荷変調に対して十分に感度が良くてもよい。これらのタイプの設計を単一のRFID回路設計で達成することは難しい。
【0011】
先に簡単に説明したように、RFID回路では、ICとアンテナとの間に位置する外部構成要素の組がしばしばアンテナインタフェースと称される。アンテナインタフェースは、リーダーおよびタグとして動作するRFID回路が適切に機能するかどうかに関して強い影響を及ぼす傾向がある。
図1は、既知のRFID回路100の簡略化された概略図である。RFID回路100は、単一のアンテナ110と、IC120と、アンテナインタフェース125とを含み、アンテナインタフェース125は一組の外部構成要素130を含む。アンテナインタフェース125は、アンテナ110とIC120との間に位置し、一般に、
図1に示されるブラケット125によって特定される。IC120は、アンテナ110およびアンテナインタフェース125と組み合わせてリーダーおよびタグの両方として動作するように構成される。IC120は、アンテナインタフェースおよびアンテナと接続するための第1および第2のピン120a、120bを含む。
【0012】
一組の外部構成要素のうちの特定の外部構成要素、および、外部構成要素の特定の構成により、RFID、特にNFCにおける前述した設計目標の多くがRFID回路100によって満たされない場合がある。具体的には、一組の外部構成要素は、第2のコンデンサ130bと直列の第1のコンデンサ130aを含み、この場合、第2のコンデンサは、第1のコンデンサのアンテナ側にあって、アンテナと並列である。より具体的には、第1のコンデンサはIC120の第1のピン120aに結合され、第2のコンデンサはIC120の第2のピン120bに結合される。また、一組の外部構成要素130は一組の抵抗器130cを含み、一組の抵抗器130cは、アンテナと第2のコンデンサとの間に結合されるとともに、IC120の第2のピン120bに結合される。
【0013】
外部構成要素および外部構成要素の構成により、例えば、比較的低い動作供給電圧(例えば、3ボルト未満)でNFCのためのNFCフォーラム仕様を満たすことができない。
【0014】
また、外部構成要素の構成に起因して、RFID回路100のアンテナおよびアンテナインタフェースは、IC120が比較的高いポートインピーダンスをもってタグとして作用するときにはNFCキャリア周波数で共振できないが、IC120が比較的低いポートインピーダンスをもってリーダーとして作用するときにはその周波数で共振する。共振周波数を維持できなければ、RFID回路は、干渉信号に対する感度高めるタグモードで誤同調される場合がある。
【0015】
RFID回路100の他の欠陥は、アンテナインタフェースおよびアンテナがアンテナポートで直列共振ネットワークを形成するという点である。その結果、RFID回路100がリーダーモードで動作する場合には、以下でアンテナネットワークと称されるアンテナとアンテナインタフェースとの組み合わせが正確に同調された後に動作Qに比例するときに、IC120の駆動電流が最大である。タグが存在しないときには、ネットワークが正確に同調されて、動作Qが最大である。したがって、IC120の駆動電流は、タグが読み取られるために存在しない場合にはほぼ最大であり、また、リーダーが読み取るためにタグが存在する場合には減少する。タグが存在しない場合にRFID回路の駆動電流がほぼ最大である場合には、RFID回路を含むモバイル機器のバッテリー電力は、モバイル機器の動作時間の大部分のために比較的高い比率で使用される。これは、動作時間の大部分にわたってタグが読み取られるために存在しないからである。また、アンテナインタフェースおよびアンテナの最大Qを減少させ、それにより、最大駆動電流を減少させる働きをするRFID回路100のアンテナインタフェースの抵抗器130cも、RFID回路100がタグとして作用するときに感度を低下させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
1つの実施形態において、無線自動識別(RFID)回路は、アンテナと、該アンテナに結合されるアンテナインタフェースとを含み、高周波を送受信するように構成されるアンテナネットワークを含み、アンテナインタフェースは第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを含み、これらのコンデンサがアンテナと直列に結合される。集積回路は、アンテナインタフェースの第2のコンデンサの第1のノードおよび第2のノードにそれぞれ結合される第1のピンおよび第2のピンを含み、アンテナネットワークと組み合わせてリーダーおよびタグとして動作するように構成される。また、集積回路は、出力電流負帰還ループおよび出力電圧負帰還ループに組み込まれる増幅手段を備え、少なくともRFIDがリーダーとして動作するときに、電流負帰還信号と電圧負帰還信号との比率によって決定される出力アドミタンスを与えるように構成され、それにより、リーダーとして動作するときに、RFIDの電力消費量を増大させることなく、組み合わされた集積回路およびアンテナネットワークの周波数応答を選択的な特性に調整できる。
【0017】
他の実施形態において、集積回路の電流負帰還信号および電圧負帰還信号は、組み合わされた集積回路およびアンテナネットワークの動作帯域幅を選択された値まで増大させる抵抗成分を出力アドミタンスが含むように設定される。他の実施形態において、集積回路の電流負帰還信号および電圧負帰還信号は、組み合わされた集積回路およびアンテナネットワークの共振周波数を選択された値に同調させる抵抗成分を出力アドミタンスが含むように設定される。
【0018】
他の実施形態において、無線自動識別(RFID)回路は、アンテナと、該アンテナに結合されるアンテナインタフェースとを含み、高周波を送受信するように構成されるアンテナネットワークを含み、アンテナインタフェースはアンテナと直列に結合される第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを含む。集積回路は、アンテナインタフェースの第2のコンデンサの第1のノードおよび第2のノードにそれぞれ結合される第1の接点および第2の接点を備えるアンテナポート含む。集積回路は、アンテナネットワークと組み合わせてリーダーおよびタグとして動作するように構成される。集積回路は、出力増幅器への入力である第1の接点および第2の接点からの出力電流負帰還ループおよび出力電圧負帰還ループを含む。集積回路は、出力電流負帰還ループおよび出力電圧負帰還ループからの信号を出力増幅器にわたって印加することによってアンテナポートで出力コンダクタンスをもたらすように更に構成される。
【0019】
他の実施形態において、方法は、アンテナと、該アンテナに結合されるアンテナインタフェースとを含むアンテナネットワークであって、アンテナインタフェースが、アンテナと直列に結合される第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを含む、アンテナネットワークと、アンテナネットワークと組み合わせてリーダーおよびタグとして動作するように構成される集積回路とを用いて、高周波を受信することを含む。出力電流負帰還信号および出力電圧負帰還信号がアンテナネットワークから集積回路へ与えられる。電力消費量を増大させることなく、集積回路およびアンテナネットワークの周波数応答を選択された特性に調整できるように、リーダーとして動作するときに出力電流負帰還信号と出力電圧負帰還信号との比率によって決定される出力アドミタンスがもたらされる。
【0020】
明細書に組み込まれて明細書の一部を構成する添付図面は、本開示の様々なシステム、方法、および、他の実施形態を例示する。図に示される要素境界(例えば、ボックス、ボックスのグループ、または、他の形状)は、境界の1つの例を表す。幾つかの例では、1つの要素が複数の要素として示されてもよく、あるいは、それらの複数の要素が1つの要素として示されてもよい。幾つかの例では、他の要素の内部構成要素として示される要素が外部構成要素として実施されてもよく、逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技術のRFID回路の簡略化された概略図である。
【0022】
【
図2】本開示の1つの実施形態に係るRFID回路の簡略化された概略図である。
【0023】
【
図3】本開示の第1の実施形態に係るRFID回路の一例の概略図である。
【0024】
【
図4】第2の実施形態に係るRFID回路の一例の概略図である。
【0025】
【
図5】第3の実施形態に係るRFID回路の一例の概略図である。
【0026】
【
図6】第4の実施形態に係るRFID回路の一例の概略図である。
【0027】
【
図7】第5の実施形態に係るRFID回路の一例の概略図である。
【0028】
【
図8】RFID回路と関連する方法の1つの実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書中には、アンテナに関連するシステム、方法、および、他の実施形態が記載される。特に、実施形態は、無線自動識別(RFID)のための回路を含むアンテナ用のアンテナインタフェースに関連する。
【0030】
図2は、RFID回路200の1つの実施形態の簡略化された概略図である。RFID回路200は、アンテナ210、集積回路IC220、および、アンテナインタフェース225を含む。アンテナインタフェース225は一組の外部構成要素230を含む。アンテナインタフェース225は、一般に、
図2に示されるブラケットにより特定される。IC220は、アンテナ210およびアンテナインタフェース225と組み合わせてリーダーおよびタグの両方として動作するように構成される。
【0031】
IC220は、アンテナネットワークに電気的に結合される第1のピン220aおよび第2のピン220bを含む。IC220はピンを有するように記載されるが、ピンは、ICパッケージのパッド、ICパッケージ上の半田バンプ、または、IC自体、ジャックなどの様々なタイプの電気接点であってもよい。第1のピン220aおよび第2のピン220bは、ICのための双方向送受信ポートを与える。外部構成要素230の組は第1のコンデンサ230aおよび第2のコンデンサ230bを含む。第1のコンデンサは、第1のピン220aに結合される第1のノード230a1を含み、アンテナ210の第1のノード210aに結合される第2のノード230a2を含む。本明細書中で使用される結合されるという用語は、直接に結合されることを含む。第1のコンデンサ230aの第1のノード230a1は、第2のコンデンサ230bの第1のノード230b1にも結合される。第2のコンデンサ230bの第1のノード230b1はICの第1のピン220aに結合され、また、第2のコンデンサ230bの第2のノード230b2はICの第2のピン220bに結合される。第2のコンデンサ230bの第2のノード230b2は、アンテナ210の第2のノード210bにも結合される。
【0032】
図2のアンテナネットワークは、IC220のポート220a、220bで並列共振回路を与える。したがって、ポートインピーダンスは、RFIDがリーダーとして作用するときおよびRFIDがタグとして作用するときのいずれにおいても高くなり得る。このとき、アンテナネットワークは、両方の動作モードにおいてキャリア周波数で共振し得る。
【0033】
アンテナネットワークがポート220a、220bで並列共振回路を与えるため、IC220がアンテナ210を通り抜ける所望の電流、したがって所望の電界強度をもたらすために供給すべき電流は、アンテナネットワークが正確に同調されるときに最小であり、また、アンテナネットワークの動作Qに反比例して変化する。
【0034】
タグの存在は共振周波数を変化させて動作Qを低下させるため、IC220が供給すべき電流は、タグが存在しない場合に最小であり、タグが接近するにつれて増大傾向にあるということになる。
【0035】
IC220がアンテナ210を通り抜ける所望の電流を生成するために供給すべき電流は、アンテナネットワークの動作Qに反比例して変化するため、ICの電力消費量を最小にするためにはQが高いことが望ましいということになる。Qは、RFIDがタグとして作用するときにRFIDの感度を最大にするためにも高いことが望ましい。しかしながら、Qが高すぎる場合、RFIDは、データ送信のために変調される出力信号でリーダーとして動作するときに特定の過渡応答要件を満たすことができない。
【0036】
Qは、
図1のRFIDの例の場合と同様に、アンテナインタフェースに抵抗器を加えることによって低下され得るが、これらの抵抗器はエネルギーを吸収するため、これらの抵抗器の組み込みは、IC220から必要とされる最小電流を増大させる可能性がある。また、これらの抵抗器の組み込みは、タグからの負荷変調データの検出を悪化させ、RFIDがタグとして作用するときに感度を低下させる。
【0037】
図3に示される実施形態および他の実施形態は、集積回路220をリーダーとして作用するときにアンテナポートで所望の出力アドミタンスを与えるように構成することによってこの問題を回避する。この出力アドミタンスは、集積回路およびアンテナネットワークが所望のQおよび共振などの選択された特性を有するように大きさを設定できる(例えば、調整できる)。
【0038】
アドミタンスが集積回路220によってもたらされるため、動作Qは、集積回路が供給する必要がある出力電流を何ら増大させることなく低下される。また、動作Qは、RFID回路200がリーダーモードで動作するときにだけ低下されてもよい。すなわち、タグモードでは、出力アドミタンスをもたらす回路が動作しなくてもよい。
【0039】
なお、図は、リーダーとしての動作のために使用されるIC220の部分であって、この実施形態に関連する部分のみを示す。言うまでもなく、ノード220a、220bは、タグとしての動作のために使用される機能を実施する図示しない要素にも結合される。
【0040】
図3は、IC220の1つの実施形態の詳細を示す
図2のRFID回路200の簡略化された概略図である。
【0041】
次の説明において、電圧および電流という用語は、信号電圧および信号電流のことを示す。また、明確にするために、絶対不可欠なバイアス電流発生器およびバイアス電圧発生器が省かれてしまっている。更にまた、グランド基準という用語は、信号電圧が生み出されないノードのことを示すことは言うまでもない。
【0042】
この実施形態では、IC220が差動演算相互コンダクタンス増幅器(OTA)250を含み、差動演算相互コンダクタンス増幅器(OTA)250は、キャリア信号発生器260に結合される入力ノード250a1、250a2を有し、ノード250b1、250b2間で流れる第1の出力電流I1を与え、また、アンテナポート220a、220bに結合される。増幅器(OTA)250は、従うことが望ましい場合があるNFC標準規格または他の規格で定められる磁場強度をもたらすのに十分な電流をアンテナネットワークへ与えるように構成される。
【0043】
OTA250は、ノード250c1、250c2間で流れる第2の出力電流I2、および、ノード250d1、250d2間で流れる第3の出力電流I3も与え、これらの出力電流は、第1の出力電流に比例するが、1つの実施形態ではかなり小さい(例えば、100〜1000倍小さい)。そのような小さい比例電流は、例えば、複数の大きい出力トランジスタの対応するノードに結合される入力ノードを有する複数の小さいトランジスタの出力によって生成されてもよい。無論、要素の他の構成を実施できる。
【0044】
OTA250のポート250a1、250a2における入力電圧は差分信号加算回路によって与えられ、この差分信号加算回路は、入力信号電圧V
inと、一方がアンテナポート電圧から得られ且つもう一方がアンテナポート電流から得られる負帰還信号の和と、の間の差に比例する出力を生成する。
【0045】
電圧加算機能を実施するための多くの回路構成が存在する。本明細書中に開示される方法および構成は、IC220の動作を説明するために使用される単なる1つの実施形態にすぎず、限定しようとするものではない。
【0046】
例示的な加算回路は第1および第2のトランジスタM1、M2を使用し、これらのトランジスタは、公称的に等しい負荷抵抗器R6、R7の第1のノードとOTA250の入力ノード250a1、250a2とにそれぞれ結合されるそれらのドレインノードを有する。負荷抵抗器R6、R7の第2のノードはグランド基準に結合される。入力電圧V
inは、公称的に等しい抵抗器R1、R2のそれぞれを介して第1および第2のトランジスタM1、M2のソースノードに結合される。
【0047】
一対の公称的に等しい抵抗器R4、R5が、アンテナポートピン220a、220bにそれぞれ結合される第1のノードと、第1および第2のトランジスタM1、M2のゲートノードにそれぞれ結合される第2のノードとを有する。抵抗器R3が第1および第2のトランジスタM1、M2のゲートノード間に結合される。したがって、R3の両端間で生み出されて第1および第2のトランジスタM1、M2のゲートノードに差動結合される電圧は、アンテナポート電圧のR3/(R4+R5)の比率分である。OTA相互コンダクタンスおよび前述した接続の向きは、R3の両端間で生み出される電圧が負帰還を与えるようになっている。
【0048】
OTA250の出力電流ノード250c1、250c2は、第1および第2のトランジスタM1、M2のソースノードにそれぞれ結合される。テブナンの定理を適用すると、これらの電流を抵抗器R1、R2と直列の実効電圧に置き換えることができる。これらの電圧は、アンテナポート電流をOTA250出力電流の比率Nで割ってそれに抵抗器の値を乗じたものに等しく、ここで、N=I1/I2である。電流および前述した接続の向きは、R1、R2の両端間で生み出される電圧が負帰還を与えるようになっている。
【0049】
1つの実施形態において、構成のループ利得は、入力電圧V
inが負帰還電圧の和にほぼ等しくなるようにするのに十分である。このとき、アンテナポート電圧がV
antであって、アンテナインタフェース225およびアンテナ210がアンテナポートでアドミタンスY
antを与える場合には、電圧関係は以下の通りである。
【数1】
【0050】
無負荷電圧利得Moは以下の通りである。
【数2】
【0051】
出力アドミタンスY
outは、電圧利得をその無負荷値の半分まで減少させるY
antの値である。すなわち、
【数3】
である。
【0052】
この実施形態では、出力アドミタンスが完全に実数である。出力アドミタンスは、効果的にコンデンサ230bと並列に接続される。したがって、パラメータは、変調過渡応答仕様を満たすことができるように、アンテナネットワークの動作Qを低下させるべく選択され得る。
【0053】
アンテナネットワークの動作Qが前述した態様で低下されてもよいが、ネットワーク自体は不変である。したがって、所望の磁場強度をもたらすために、OTA250から必要とされる電流を増大させることなく帯域幅が増大されてもよい。
【0054】
この実施形態において、負荷変調信号は、グランド基準に結合される第2のノードを有する公称的に等しい抵抗器R10、R11の第1のノードにノード250d1、250d2を結合させることによって得られる。
【0055】
図4は、複素出力アドミタンスを有するように構成される
図3からのIC220の他の実施形態を示す。この実施形態において、複素形式は、
図3の抵抗器R3を分岐R3a、C1、R3bに置き換えることによって得られる。
【0056】
このとき、電圧帰還率Bvは例えば以下のようになる。
【数4】
また、Tv=C1(R3a+R3b+R4+R5)であり、また、ωは、キャリア角周波数であり、また、jは、虚数演算子である。
【0057】
出力アドミタンスは以下のようになる。
【数5】
【0058】
これは、キャリア周波数において、並列のコンダクタンス成分およびインダクタンス成分を備えることができる。
【0059】
言うまでもなく、抵抗成分を有する出力アドミタンスをもたらすために、様々な構成の周波数依存ネットワークを電圧および/または電流帰還経路に組み込むことができる。
【0060】
また、可変要素を組み込むことにより、アンテナネットワーク共振周波数および帯域幅の可変同調が可能になる。
【0061】
図3および
図4に示される実施形態では、負荷変調信号がアンテナポート電流の像から一意的に得られる。1つの実施形態において、負荷変調信号は、アンテナポート電圧の一部とアンテナポート電流の一部とから得られる。
【0062】
アンテナ負荷の変調は、アンテナポート電流の対応する変調と反対の方向をなすアンテナポート電圧の変調をもたらす。したがって、それぞれの変調から得られる負荷変調信号の成分が差し引かれる。この減算は、
図5に示される実施形態で実施される。
【0063】
第1および第2のトランジスタM1、M2のゲートに結合されるアンテナポート220a、220b電圧帰還信号は、第3および第4のトランジスタM3、M4のゲートにもそれぞれ結合される。OTA250の出力電流ノード250d1、250d2は第3および第4のトランジスタM3、M4のソースノードにそれぞれ結合され、また、第3および第4のトランジスタM3、M4のソースノードは、グランド基準に結合される第2のノードを有する公称的に等しい抵抗器R8、R9の第1のノードにも結合される。
【0064】
OTA250の第3の出力電流I3は、第2の出力電流I2と反対の方向に流れる。回路は、抵抗器R1、R2を横切る第2の出力電流I2によって生み出される電圧が第1および第2のトランジスタM1、M2のゲートノード間にもたらされる差動電圧を増大させるように構成される。その結果、抵抗器R8、R9を横切る第3の出力電流I3により生み出される電圧は、第3および第4のトランジスタM3、M4のゲートノード間にもたらされる差動電圧から差し引く。これにより、この実施形態における負荷変調信号は、アンテナポート電流およびアンテナポート電圧(例えば、ポート220a、220b)の変調から付加的に得られる。
【0065】
他の実施形態において、第3および第4のトランジスタM3、M4のゲートノードは、第1および第2のトランジスタM1、M2のゲートノード間に与えられる電圧とは異なるアンテナポート電圧の一部を受けるように結合され得る。同様に、アンテナポート電圧およびアンテナポート電流から得られる信号の減算は、他の回路構成によって影響され得る。
【0066】
図5は、
図3および
図4の実施形態により与えられる負荷変調信号よりも大きい負荷変調信号を与えるように構成されるIC220の他の実施形態を示す。しかしながら、この信号のキャリアレベルが更に大きくてもよく、また、特に、アンテナ電流が小さいとき、例えばRFID回路200がほぼ最大動作距離だけ離間されるタグと通信しているときには、変調指数が減少されてもよい。
【0067】
図6に示される実施形態は、アンテナ電流が小さいときに性能の向上を与える。
【0068】
この向上は、抵抗器R8、R9の第2のノードをそれぞれ入力電圧発生器260のノード260a、260bに結合させることによって達成される。
【0069】
無負荷変調の場合であって、高いループ利得の場合、入力信号は、アンテナポート電圧およびアンテナポート電流から得られる帰還信号の和にほぼ等しい。
図5の実施形態における負荷変調信号は、対応する信号の差から得られる。
図6の実施形態では、第3および第4のトランジスタM3、M4のゲートノードがそれぞれ第1および第2のトランジスタM1、M2のゲートノードに結合されるため、アンテナポート電圧から得られる負荷変調信号は、対応する帰還信号成分に等しい。
【0070】
したがって、アンテナポート電圧から第3および第4のトランジスタM3、M4のゲートノード間で生み出される差動電圧は、アンテナ電圧帰還成分に匹敵する入力電圧の一部分によって合わせられる。
【0071】
したがって、この実施形態によりもたらされる負荷変調信号のキャリアレベルは、単にアンテナポート電流に比例し、電圧とは無関係である。そのため、キャリアレベルは、アンテナポート電流が低いときに低く、したがって、変調指数が改善される。
【0072】
なお、アンテナ電圧信号から得られるキャリア成分の削除は、対応する変調側波帯の削除を意味しない。これは、負荷が変調されないときには入力電圧の所定の一部分が電圧帰還信号と一致するが、負荷が変調されるときには電圧帰還成分と電流帰還成分との間の再区分が変化するからである。
【0073】
図3、
図4、
図5および
図6の実施形態におけるアンテナポート電圧は、アンテナポート負荷が変化する場合に変化する。これは、RFID回路200が有限の出力インピーダンスを与えるように設計されるからである。しかしながら、他の実施形態において、入力電圧V
inは、アンテナポート電圧を例えばIC製造プロセスが許容する最大レベルに近い好ましいレベルに維持するように適合されてもよい。
【0074】
これは、自動レベル制御(ALC)回路を組み込むことによって達成することができる。
【0075】
図7は、自動レベル制御(ALC)回路を伴って構成される
図6に示されるIC220の他の実施形態を示す。例えば、ALCは、電圧レベル検出器265、電圧比較器270、および、可変利得増幅器275を含む。これらの要素の詳細は図示されない。これは、それらの要素の機能を果たすために、それらの要素の特定の回路を多くの方法で実施できるからであり、また、構成が、IC製造プロセスの特徴に依存し、および/または、全体のRFIDユニットに関連する設計上の選択に依存し得るからである。
【0076】
1つの実施形態において、電圧レベル検出器265は、負荷変調が予期されるときに変調包絡線を含むピーク信号レベルを素早く突き止める出力を与えるように構成されてもよく、あるいは、電圧レベル検出器は、信号包絡線の増大に素早く応答するが減少には遅く応答する出力を与えるピーク検出器として作用するように構成されてもよい。概念的に、ピーク電圧検出器を使用するALCループは、リーダーがデータを送信する間、依然として動作し続けることができる。
【0077】
ピーク検出器が使用される場合、入力電圧V
inは、負荷変調がタグによって開始されるときに初期の負荷減少に適合されてもよいが、負荷変調区間中にわたってほぼ一定のままである。このとき、負荷変調信号は、前述した実施形態に関して説明した態様で生成される。
【0078】
変調包絡線を突き止める検出器が使用される場合、可変利得ブロックの出力での電圧は、アンテナポート電圧の負荷変調を抑制するように変調される。この抑制は、アンテナポート電流の変調を増大させる。これにより、ピーク検出器が使用されるときにもたらされる変調指数に等しいあるいはそれよりも高い変調指数を有する負荷変調信号が生成されるのが分かる。
【0079】
図8は、
図2および
図3に示されるRFID回路200によって無線信号を処理するための方法800の1つの実施形態を示す。810では、(
図2および
図3に示されるように)アンテナ210と該アンテナ210に結合されるアンテナインタフェース225とを含むアンテナネットワークにより高周波が受信される。既に説明したように、集積回路220は、アンテナネットワークと組み合わせてリーダーおよびタグとして動作するように構成される。820では、出力電流および出力電圧の負帰還信号がアンテナネットワークから集積回路220へと与えられる。例えば、2つの帰還経路が
図3に示されており、一方の経路は抵抗器R4を含み、他方の経路は抵抗器R5を伴う経路を含む。
【0080】
830では、リーダーとして動作するときに出力電流負帰還信号と出力電圧負帰還信号との比率によって出力アドミタンスがもたらされて決定される。これにより、電力消費量を増大させることなく、集積回路220およびアンテナネットワークの周波数応答を選択される特性に調整できる。これらの特徴は、
図3に関連して記載されており、ここでは繰り返さない。
【0081】
840では、集積回路220が隣接するタグと通信しているときに、より大きな変調指数を有する信号を生成するために出力電流負帰還信号および出力電圧負帰還信号を差し引くことによってタグからのデータが回収される。これらの特徴は、
図3に関連して記載されており、ここでは繰り返さない。
【0082】
本明細書中に開示されるようなIC220およびアンテナインタフェース225の実施形態に関して、IC220は、出力増幅器250にわたって電圧負帰還および電流負帰還を適用することによってアンテナポート220a、220bで出力コンダクタンスおよび/またはサセプタンスをもたらすように構成される。2つの帰還信号が加えられて、それらの比率が出力インピーダンスを決定する。出力コンダクタンスをこのようにしてもたらすことにより、電力消費をかけずに、システムの帯域幅を制御できる。これは、電力消費量をかなり増大させる
図1の場合のようなポートをはさんだ切り換え抵抗器の使用とは対照的である。
【0083】
他の実施形態において、IC220は、いわゆる「リーダー」として作用するときには、それが通信するタグによって生成される信号を抽出するように構成される。タグ(図示せず)は、そのアンテナコイルをはさんでコンデンサまたは抵抗器を効果的に切り換えることによりデータを戻す。これは、アンテナ210のインピーダンスの対応する変化をもたらす。
【0084】
従来技術では、このデータが出力電流の変化から回収された。このIC220を用いると、データは、電圧帰還信号および電流帰還信号を差し引くことにより回収され、それにより、より大きな変調指数を有する信号が与えられる。
【0085】
他の実施形態において、IC220は、回収された負荷変調信号からキャリア成分を差し引くことによりこの負荷変調信号の変調指数を更に増大させることができる。
【0087】
以下は、本明細書中で使用される選択された用語の定義を含む。これらの定義は、1つの用語の範囲内に入り且つ実施のために使用されてもよい構成要素の様々な例および/または形態を含む。これらの例は、限定しようとするものではない。用語の単数形および複数形の両方が定義の範囲内となり得る。
【0088】
「1つの実施形態」、「一実施形態」、「1つの例」、「一例」などへの言及は、そのように記載される実施形態または例が特定の機能、構造、特徴、特性、要素、または、限定を含んでもよいが、必ずしも全ての実施形態または例がその特定の機能、構造、特徴、特性、要素、または、限定を含むとは限らないことを示す。また、「1つの実施形態において」という語句の繰り返される使用は、必ずしも同じ実施形態に言及するとは限らないが、同じ実施形態であってもよい。
【0089】
本明細書中で使用される「論理」は、機能または動作を果たすため、および/または、他の論理、方法、および/または、システムから機能または動作を引き起こすために、ハードウェア、ファームウェア、持続性媒体に記憶されあるいはマシンで実行されている命令、および/または、それぞれの組み合わせを含むが、これらに限定されない。論理は、ソフトウェア制御されるマイクロプロセッサ、個別論理(例えばASIC)、アナログ回路、デジタル回路、プログラムされた論理デバイス、命令を含むメモリデバイスなどを含んでもよい。論理は、1つ以上のゲート、ゲートの組み合わせ、または、他の回路部品を含んでもよい。複数の論理が記載される場合には、複数の論理を1つの物理的論理へと組み込むことができてもよい。同様に、単一の論理が記載される場合には、その単一の論理を複数の物理的論理間で分配できてもよい。本明細書中に記載される構成要素および機能のうちの1つ以上は、論理要素のうちの1つ以上を使用して実施されてもよい。
【0090】
詳細な説明または特許請求の範囲で用語「含む」または「含んでいる」が使用される範囲で、その用語は、用語「備えている」と同様の態様で包括的であるように意図される。これは、その用語が特許請求の範囲で使用されるときに過渡的な単語として解釈されるからである。
【0091】
システム、方法などの例を幾つかの例を記載することによって説明してきたが、また、これらの例をかなり詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細な内容に制限するあるいは多少なりとも限定することは出願人の意図ではない。無論、本明細書中に記載されるシステムや方法などを記載する目的で構成要素または方法論の全ての考えられる組み合わせを記載することはできない。したがって、本開示は、図示して説明した特定の細部、典型的な装置、および、例示的な実施例に限定されない。そのため、本出願は、添付の特許請求の範囲内に入る変更、改変、および、変形を包含するように意図される。