特許第6233604号(P6233604)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233604
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/14 20060101AFI20171113BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20171113BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G03G15/14 101Z
   G03G15/16 103
   G03G15/00 303
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-39148(P2015-39148)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-161694(P2016-161694A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】道下 恭弘
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−121038(JP,A)
【文献】 特開2001−22191(JP,A)
【文献】 特開2003−107919(JP,A)
【文献】 特開2004−145021(JP,A)
【文献】 特開2001−117378(JP,A)
【文献】 米国特許第04055380(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/14
G03G 15/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、上記像担持体と接触してニップを形成し、該ニップ位置を経由してシートを搬送する搬送ベルトと、トナーの帯電極性と逆極性の電流が印加されて、上記ニップ位置において上記トナー像を上記シートに転写させる転写ローラーと、上記ニップ位置よりもシート搬送方向の下流側であって上記シートが上記搬送ベルトから剥離する剥離位置において該搬送ベルトを張架する張架ローラーと、該張架ローラーよりもシート搬送方向の下流側において上記シートをガイドするガイド部材とを備えた画像形成装置であって、
上記ガイド部材と上記張架ローラーとに接続され、該ガイド部材及び張架ローラーのそれぞれに対してトナーの帯電極性と逆極性の電流を印加する共通電源と、
上記張架ローラーと上記共通電源とを接続する第一電流路と、
上記第一電流路上の分岐点から分岐して上記ガイド部材に接続される第二電流路とをさらに備え、
上記第二電流路には、上記第一電流路に印加される電流と該第二電流路に印加される電流との比率を調整するための抵抗部が設けられている、画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
上記抵抗部の抵抗値は、上記搬送ベルトの抵抗値に略等しい、画像形成装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、感光体ドラムとシートを搬送する搬送ベルトと感光体ドラムに対して搬送ベルトを挟んで圧接される転写ローラーとを備えた画像形成装置は知られている(例えば特許文献1参照)。上記シートは、搬送ベルトと感光体ドラムとによりニップされつつ下流側に搬送される。転写ローラーには、シートがニップ位置を通過する際にトナーの帯電極性と逆極性の転写電流が印加される。これにより、感光体ドラムに担持されたトナー像がシートに転写される。ニップ位置よりもシート搬送方向の下流側には張架ローラーが設けられている。張架ローラーは、シートが搬送ベルトから剥離する剥離位置において搬送ベルトを張架している。張架ローラーよりもシート搬送方向の下流側には、シートを定着装置へと導くガイド部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−031960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬送ベルトを使用した上述の画像形成装置において張架ローラーが接地されていると、シートの後端が搬送ベルトから離れる際に、シート及び搬送ベルトに保持されていた電荷(トナーの帯電極性と逆極性の電荷)が上記張架ローラーを通じてグランドへと放電されてしまう。この放電(いわゆる剥離放電)が生じると、トナーの帯電極性と逆極性の電荷によってトナーをシートに保持することができなくなり、トナーの一部が飛散するという問題がある。
【0005】
この問題を解決するべく、上記張架ローラーに対してトナーの帯電極性と逆極性の電流(トナー飛散抑制電流)を印加することが考えられる。これにより、シートの後端が搬送ベルトから剥離する際の剥離放電を抑制し、延いてはトナーの飛散を抑制することができる。
【0006】
さらにガイド部材に対してもトナーの帯電極性と逆極性のバイアスを印加しておくことで、ガイド部材のシート搬送方向の下流側のエッジ部からの微小放電によりシートに対してトナーの帯電極性と逆極性の電荷を付与することができる。これにより、シートに対するトナー像の吸着力を高めて画像オフセット等の問題を回避することができる。
【0007】
張架ローラー及びガイド部材に対する電流印加には、コスト削減の観点から共通の電源を使用することが好ましい。しかし、共通の電源を使用した場合、電源に接続される電流路を二手に分岐させて各電流路をそれぞれ張架ローラーとガイド部材とに接続する必要がある。このため、各電流路に流れる電流値の割合が、張架ローラーの表面の湿度や搬送ベルトの劣化等の様々な要因により変化して、トナー飛散抑制電流が不足するという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、廉価な構成により、張架ローラーに印加される電流の不足を防止しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、トナー像を担持する像担持体と、上記像担持体と接触してニップを形成し、該ニップ位置を経由してシートを搬送する搬送ベルトと、トナーの帯電極性と逆極性の電流が印加されて、上記ニップ位置において上記トナー像を上記シートに転写させる転写ローラーと、上記ニップ位置よりもシート搬送方向の下流側であって上記シートが搬送ベルトから剥離する剥離位置において上記搬送ベルトを張架する張架ローラーと、該張架ローラーよりもシート搬送方向の下流側において上記シートをガイドするガイド部材とを備えている。
【0010】
そして、上記ガイド部材と上記張架ローラーとに接続され、該ガイド部材及び張架ローラーのそれぞれに対してトナーの帯電極性と逆極性の電流を印加する共通電源と、上記張架ローラーと上記共通電源とを接続する第一電流路と、上記第一電流路上の分岐点から分岐して上記ガイド部材に接続される第二電流路とをさらに備え、上記第二電流路には、上記第一電流路に印加される電流と該第二電流路に印加される電流との比率を調整するための抵抗部が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、廉価な構成により、張架ローラーに印加されるトナー飛散電流の不足を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図である。
図2図2は、転写装置の構成を示す概略図である。
図3図3は、転写装置に接続された第一及び第二電源部を制御する制御系の構成を示すブロック図である。
図4図4は、第一及び第二電源部の出力電流制御の一例を示すタイムチャートである。
図5図5は、抵抗部材の抵抗値を種々の値に変化させて連続印刷試験を行った結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
《実施形態》
図1は、本実施形態における画像形成装置1の一例であるモノクロ複写機を示している。画像形成装置1は、筐体2と画像読取部3とADF(automatic document feeder)4とを備えている。画像読取部3は筐体2の上端部に取付けられており、ADFは画像読取部3の原稿載置面を覆うように配置されている。画像読取部3は、光源、反射ミラー及びCCD(Charge Coupled Device)等を有していて、原稿載置面にセットされた原稿の画像又はADFより供給される原稿の画像を光学的に読取る。画像読取部3は読取った原稿画像をデータ化して後述する画像形成部20へと送信する。
【0015】
上記筐体2内には、給紙部10と画像形成部20と定着部30とが収容されている。給紙部10は、筐体2の底部に設けられている。給紙部10は、互いに重ねられた複数のシートSを収容する給紙カセット11と、給紙カセット11内のシートSを1枚ずつ取り出すピックローラー12と、取り出されたシートSを1枚ずつ分離して搬送路Tへと送り出すフィードローラ13及びリタードローラ14とを備えている。
【0016】
画像形成部20は、筐体2内における給紙部10の上方に設けられている。画像形成部20は、筐体2内に回転可能に設けられた像担持体である感光体ドラム21と、感光体ドラム21の周囲に配置された帯電器22、現像装置23、転写装置24及びクリーニング部25と、感光体ドラム21の上方に配置された光走査装置26とを備えている。
【0017】
定着部30は、画像形成部20の上方に配置されている。定着部30は、ヒーター等の加熱手段により加熱される定着ローラー31と定着ローラー31に圧接される加圧ローラー32とを有している。
【0018】
画像形成部20では、画像読取部3より画像データを受信すると、不図示のモーターにより感光体ドラム21が回転駆動されると共に、帯電器22によって感光体ドラム21の表面が所定電位に帯電される。本実施形態では、帯電器22は、感光体ドラム21の表面を正極性に帯電させる。そうして感光体ドラム21の表面が帯電された後、画像読取部3からの画像データに基づいて、レーザ光が光走査装置26から感光体ドラム21へ出射される。感光体ドラム21の表面には、レーザ光が照射されることによって静電潜像が形成される。感光体ドラム21上に形成された静電潜像は、現像装置23にて帯電されたトナーにより現像されてトナー像として可視化される。本実施形態では、いわゆる反転現像によりトナー像を形成するようにしており、現像装置23にて帯電されるトナーの帯電極性は正極性(感光体ドラム21の表面の帯電極性と同極性)となる。尚、反転現像に限らず正規現像によりトナー像を形成するようにしてもよく、この場合、トナーの帯電極性は負極性(感光体ドラム21の表面の帯電極性と逆極性)となる。
【0019】
感光体ドラム21の表面にトナー像が形成された後、レジストローラー対16から送出されたシートSは、転写装置24により感光体ドラム21の表面に押し付けられる。そして、転写装置24より当該シートSに対してトナーと逆帯電極性(本実施形態では負極性)の転写電圧が印加されることで、感光体ドラム16のトナー像がシートSへ転写される。トナー像が転写されたシートSは、定着部30において定着ローラー31と加圧ローラー32とにより加熱及び加圧される。これによりトナー像がシートSに定着する。
【0020】
図2に示すように、転写装置24は、無端状の搬送ベルト241、転写ローラー242、上流側ローラー243、下流側ローラー244、第一電源部246、及び第二電源部247を有している。
【0021】
搬送ベルト241は、外周面にシートSを静電吸着させつつシートSを搬送する。搬送ベルト241の外周面は感光体ドラム21に接触して該感光体ドラム21との間にニップを形成している。搬送ベルト241は、上流側ローラー243及び下流側ローラー244に所定の張力で張架されている。搬送ベルト241は、不図示のモーターにより上流側ローラー243又は下流側ローラー244が回転駆動されることで図2の矢印の向きに駆動される。搬送ベルト241は、例えばゴム製のベルト状部材の外周面にフッ素系樹脂によるコーティングを施して形成される。
【0022】
転写ローラー242は、感光体ドラム21に対向して配置されている。転写ローラー242の外周面は搬送ベルト241の内周面に接している。転写ローラー242は、感光体ドラム21に対して搬送ベルト241を挟んで所定荷重で圧接される。これにより、シートSがニップ位置A1において搬送ベルト241と感光体ドラム21との間にニップされる。そして、転写ローラー242は、ニップ位置A1を通過するシートSに対してトナーの帯電極性と逆極性の転写電流C1を印加することでシートSに対してトナー像を転写させる。
【0023】
上流側ローラー243は、ニップ位置A1よりもシート搬送方向の上流側であってシートSの前端が搬送ベルト241に差し掛かる搬送開始位置A2において搬送ベルト241を張架する。上流側ローラー243は、金属などの導電性部材で形成されていて、軸受け等を介して接地されている。尚、本実施形態において、シートの前端、後端は、シート搬送方向におけるシートの前端、後端を意味する。
【0024】
下流側ローラー(張架ローラー)244は、ニップ位置A1よりもシート搬送方向の下流側であってシートSの後端が搬送ベルト241から剥離する剥離位置A3において搬送ベルト241を張架する。下流側ローラー244は、金属などの導電性部材で形成されている。
【0025】
下流側ローラー244のシート搬送方向の下流側にはガイド部材245が設けられている。ガイド部材245は、剥離位置A3において搬送ベルト241から離れたシートSを定着部30まで導く。ガイド部材は、金属などの導電性部材で構成されている。
【0026】
第一電源部246は、転写電流C1と待機電流C2とを選択的に切り替えて転写ローラー242へ印加する。第一電源部246の負極側端子は転写用電流路L1を介して転写ローラー242に接続され、第一電源部246の正極側端子は接地配線Gを介して接地されている。第一電源部246は、図3に示すように、電流検出回路246a、定電流制御回路246b及び電圧制御回路246cを有している。電流検出回路246aは、第一電源部246の出力電流(つまり電流路L1を介して転写ローラー242に印加される電流)を検出する。定電流制御回路246bは、電流検出回路246aが検出した電流が、コントローラー100にて決定された目標電流に等しくなるように電圧制御回路246cの出力電圧を調整する。そうして、第一電源部246は、上記各電流C1,C2を定電流制御によって転写ローラー242に印加する。
【0027】
ここで、転写電流C1は、トナーの帯電極性と逆極性の電流であって、感光体ドラム21のトナー像をシートSに転写させるための電流である。待機電流C2は、トナーの帯電極性と同極性の電流であって、非画像形成時に搬送ベルト241にトナーが付着するのを阻止するための電流である。転写電流C1、待機電流C2の大きさ及び印加タイミングはコントローラー100により制御される。
【0028】
第二電源部247は、下流側ローラー244に対して第一トナー飛散抑制電流C3を印加するとともに、ガイド部材245に対して第二トナー飛散抑制電流C4を印加する。すなわち、第二電源部247は、下流側ローラー244及びガイド部材245のそれぞれに対してトナーの帯電極性と逆極性の電流を印加する共通電源として機能する。
【0029】
第二電源部247の負極側端子は第一電流路L2を介して下流側ローラー244に接続されるとともに、第二電流路L3を介してガイド部材245に接続されている。第二電源部247の正極側端子は接地配線Gを介して接地されている。上記第二電流路L3は、第一電流路L2上の分岐点Yから分岐してガイド部材245に接続されている。第二電流路L3は抵抗部250を有している。抵抗部250は、例えば搬送ベルト241と同じ材質で且つ同じ厚みの材料を電流路に対して直列に配置して構成される。
【0030】
第二電源部247は、第一電源部246と同様に、電流検出回路247aと定電流制御回路247bと電圧制御回路247cとを有している。そして、第二電源部247は、予め設定された設定電流C5を定電流制御によって出力する。この設定電流C5の一部(=C3)が第一トナー飛散抑制電流C3として下流側ローラー244に供給され、残りの電流(=C4)が第二トナー飛散抑制電流C4としてガイド部材245に供給される。
【0031】
第一トナー飛散抑制電流C3はトナーの帯電極性と逆極性の電流であって、シートSからトナーの帯電極性と逆極性の電荷が流出するのを防止することで、シートSが剥離位置A3にて剥離する際の剥離放電を抑制し延いてはトナーの飛散を抑制する。第二トナー飛散抑制電流C4は、トナーの帯電極性と逆極性の電流であって、シートSにトナーの帯電極性と逆極性の電荷を注入することで、シートSに対するトナーの静電的な付着力を向上させる。
【0032】
第一及び第二トナー飛散抑制電流C3,C4の印加タイミングはコントローラー100により制御される。第一トナー飛散抑制電流C3と第二トナー飛散抑制電流C4との比率は、第二電流路L3に設けられた抵抗部250の抵抗値によって決まる。
【0033】
図4は、コントローラー100により実行される印刷制御の一例を示すタイムチャートである。このタイムチャートでは、2枚のシートSに対して連続印刷を行った例を示している。画像形成装置1が印刷開始要求を受け付けると、印刷動作開始して感光体ドラム21の表面に帯電電圧が印加され、しかる後に現像部23において現像電圧が印加される。時刻t1では、画像形成装置1の印刷動作が開始するのと同時に、転写ローラー242に対してトナーの帯電極性と同極性(本実施形態では正極性)の待機電流C2が印加される。時刻t2ではシートSの前端がニップ位置A1に到達するのと同時に転写ローラー242に対してトナーの帯電極性と逆極性(本実施形態では負極性)の転写電流C1が印加され、さらに下流側ローラー244及びガイド部材245に対して、トナーの帯電極性と逆極性(本実施形態では負極性)の第一トナー飛散抑制電流C3及び第二トナー飛散抑制電流C4がそれぞれ印加される。時刻t2"では、シートSの前端が上記剥離位置A3に到達し、この時点で下流側ローラー244及びガイド部材245には既に、第一トナー飛散抑制電流C3及び第二トナー飛散抑制電流C4がそれぞれ印加されている。時刻t3では、シートSの後端がニップ位置A1を通過するのと同時に転写ローラー242に対する印加電流が転写電流C1から待機電流C2に切り替わる。時刻t4では、シートSの後端が剥離位置A3を通過した時に、下流側ローラー244及びガイド部材245に対するトナー飛散抑制電流C4の印加が停止される。時刻t5〜t7では、後続のシートSの印刷に際して時刻t2〜t3と同じ処理が実行される。時刻t8では、転写ローラー242に対する電流の印加が停止されて印刷動作が終了する。
【0034】
上記画像形成装置1では、少なくともシートSの前端が上記剥離位置A3を通過した時(時刻t2")からシートSの後端が剥離位置A3を通過する時(時刻t4)までの間、下流側ローラー244及びガイド部材245に対してトナーの帯電極性と逆極性の第一トナー飛散抑制電流C3及び第二トナー飛散抑制電流C4がそれぞれ印加される。これにより、シートSの後端が剥離位置A3にて搬送ベルト241から剥離する際に、シートSの後端からトナーの帯電極性と逆極性の電荷が下流側ローラー244に流出して放電するのを防止することができる。また、シートSがガイド部材245上を通過する際に、シートSに対してガイド部材245を介してトナーの帯電極性と逆極性の電荷を供給することができる。よって、シートSに対するトナー像の静電吸着力を高めて画像オフセット等の問題を回避することができる。
【0035】
ここで、上記画像形成装置1では、ガイド部材245及び下流側ローラー244に対する電流の印加を共通電源である第二電源部247によって行うようにしている。これにより、ガイド部材245及び下流側ローラー244に対して別個独立の電源を設ける場合に比べて電源コストを削減することができる。しかし、電源を共通化した場合、例えば搬送ベルト241の劣化等により下流側ローラー244を含む電気経路の総抵抗が増加すると、下流側ローラー244に印加される第一トナー飛散抑制電流C3が必要な電流に対して不足する場合がある。第一トナー飛散抑制電流C3が不足すると、シートSが剥離位置A3において搬送ベルト241から剥離する際に剥離放電が生じて、シートSに対するトナーの静電吸着力が一気に失われてしまう。この結果、シートSに担持されたトナーが一気に飛散して、その後ガイド部材245からシートSに対して第二トナー飛散抑制電流C4をいくら供給したとしても、既に飛散したトナーによる機内汚染を改善することはできない。
【0036】
これに対して本実施形態では、ガイド部材245に接続される第二電流路L3(図2参照)に抵抗部250を設けることで、下流側ローラー244に接続された第一電流路L2と、ガイド部材245に接続された第二電流路L3との電流比率を調整して、下流側ローラー244に印加される第一トナー飛散抑制電流C3を十分に確保するようにした。これにより、上述の飛散トナーによる機内汚染を確実に防止することができる。
【0037】
ここで、下流側ローラー244及びガイド部材245は共に金属製の導電部材により構成されているので、これらの抵抗は無視し得る。したがって、第一電流路L2と第二電流路L3との電流比率は、下流側ローラー244に張架された搬送ベルト241の抵抗値と抵抗部250の抵抗値との比率によって決まる。上記実施形態ではこの点に着目して、抵抗部250を搬送ベルト241と同じ材質で且つ同じ厚みの材料で構成するようにした。
【0038】
これにより、第一電流路L2と第二電流路L3とに流れる電流比率を同じ(1:1)にして、印加電流がガイド部材245に偏るのを防止することができる。よって、下流側ローラー244に印加される第一トナー飛散抑制電流C3が不足するのを確実に防止することができる。
【0039】
《実施例》
図5は、第二電流路L3に抵抗部250が設けられた上述の画像形成装置1による連続印刷試験の結果を示す表である。試験で使用した第二電源部247の出力電流は15μAであり上限電圧は4.5kVである。転写ローラー242にはアルミを使用し、ガイド部材245には厚さ0.2mmのSUSを使用した。そして、連続印刷を700K(K=1000)枚行った後に、第一電流路L2及び第二電流路L3に流れる電流値を測定するとともに、機内の飛散トナーの量を測定した。表中の「×」は、飛散トナーの量が基準量を超えていることを意味し、「△」は、飛散トナーの量がほぼ基準量と同様であることを意味し、「○」は、飛散トナーの量が基準量よりも十分に少ないことを意味している。
【0040】
この表によれば、抵抗部250を有さない比較例1では、下流側ローラー244に印加される第一トナー飛散抑制電流C3が少ないために飛散トナーの量が基準量を上回っていることがわかる。これに対して、抵抗部250を設けた実施例2〜実施例4では、搬送ベルト241の抵抗値と抵抗部250の抵抗値とを略等しくすることにより、下流側ローラー244に印加される第一トナー飛散抑制電流C3の不足が解消されて、飛散トナーの量も基準量以下に抑制されていることがわかる。ここで、「略等しい」とは、搬送ベルト241の抵抗値R1の常用対数と抵抗部250の常用対数との比率(log(R2/R1)が0.8〜1.2の範囲内にある場合を言う。実施例5では、抵抗部250を搬送ベルト241と同じ材料で構成したことで両者の抵抗値が等しくなり、実施例2〜4と同様に、下流側ローラー244に印加される第一トナー飛散抑制電流C3の不足が解消されていることがわかる。
【0041】
《他の実施形態》
上記実施形態では、画像形成装置1の一例として複写機を挙げて説明を行ったが、これに限ったものではなく、画像形成装置1はプリンターや複合機(MFP)等であってもよい。
【0042】
上記実施形態では、現像剤であるトナーの極性が正極性である例ついて説明したが、これに限ったものではなく、本発明はトナーの帯電極性が負極性である場合にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は、画像形成装置について有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 画像形成装置
A2 ニップ位置
A3 剥離位置
21 感光体ドラム(像担持体)
101 温湿度センサー
241 搬送ベルト
242 転写ローラー
244 下流側ローラー(張架ローラー)
246 電源部
図1
図2
図3
図4
図5