(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部で用いる、前記変形したパルスレーザ光の受光波形形状と識別対象物体候補とを関連付けたデータを保持したデータベースを更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の目標識別レーザ観測システム。
前記レーザ装置は、集光した任意の反射レーザ光を 波長の異なる複数のレーザ光に分光した後に、分光したそれぞれの波長の目標物体で散乱して変形したパルスレーザ光をそれぞれ波形信号に変換し、
前記波形取得部は、少なくとも何れかの波長の波形信号を参照して、前記変形したパルスレーザ光の波形形状及び該波形形状の変化量を取得する
ことを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の目標識別レーザ観測システム。
前記レーダ装置による波長の異なる複数のパルスレーザ光の発射 及び/又は 散乱光の集光を複数の観測点で連続実施して、複数の観測点で得られた異なるタイミングの異なる波長の受光波形形状及び目標物体との距離を参照して物体識別処理を継続進行することを特徴とする請求項1ないし8の何れか一項に記載の目標識別レーザ観測システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の複数の実施形態を図面を参照しながら説明する。
実施形態を用いて説明するレーザ観測システムは、既存のレーザ測距システムと同様にレーザパルス光を目標に向けて送出し、その反射波たる反射レーザ光を受光する仕組みを具備する。目標対象物の初期捕捉は、目標対象物の軌道が予め記録されたデータベースを参照してもよいし、目標対象物が現れる座標を常時的に捕捉することとしても構わない。また、レーダ観測手法、光学観測手法の一方若しくは両方を用いて初期捕捉を実施することとしてもかまわない。
【0021】
以下の説明では、実施形態間で同様な部分の説明を簡略化もしくは省略する。また、以下の説明では、パルスレーザ光の送出タイミングと受光タイミングの差(時間)による測距手法について簡略化もしくは省略する。各レーザ観測システムは、無論 目標までの距離を測距可能に構成することが望ましい。
【0022】
図1は、第1の実施形態にかかるレーザ観測システム1を示すブロック図である。
図2は、デブリ観測を例にレーザ観測システム1の運用態様を示した説明図である。
図2(a)では観測対象デブリに照準を合わせた状態を示し、
図2(b)ではレーザパルスの受信波形変化例を模式的に示している。
【0023】
図3は、複数波長を用いる運用態様のレーザパルスの受信波形変化例を模式的に示している。
【0024】
レーザ観測システム1は、図示するように、レーザ装置10、制御部20(波形取得部21、判定部22)、及び望遠鏡30を含み構成される。
【0025】
レーザ装置10は、パルスレーザ光を生成して目標に送出する仕組みと、目標で散乱した反射レーザ光を集光する仕組みを具備する。レーザ装置10は、送出するパルスレーザ光を極短時間あけて連続して送出可能に構成されることが望ましい。また、レーザ装置10は、パルスレーザ光の波長を可変可能に構成されることが望ましい。波長の可変は、生成するレーザ媒体自体を変更して行ってもよいし、波長変換素子等で変更しても構わない。なお、後述する説明のように、全ての観測点(受光地点)でパルスレーザ光を目標に送出する必要は必ずしもなく、観測(受光)のみを行うレーザ観測システムとして構成してもよい。
【0026】
レーザ装置10は、内部構成を例示すれば、レーザ制御器、レーザ発振器、光学系経路、受光センサ(光検知器)を具備する。また必要に応じた分光器やフィルタ、光増幅器、電気信号増幅器、測距用カウンタなどを具備すればよい。レーザ装置10は、制御部20からのレーザ制御信号をレーザ制御器が受けつけて、レーザ制御器がレーザ発振器を稼働させ、光学系経路から望遠鏡30に送出レーザ光(パルスレーザ光)を送る。その直後、レーザ装置10は、望遠鏡30から送られた反射レーザ光(変形したパルスレーザ光)を光学系経路を介して受光センサで信号化する。この波形信号は、波形取得部21に伝達される。測距を実施する場合、レーザ装置10は、送出レーザ光の送出から反射レーザ光の受光までの時間(時間情報)も制御部20に通知する。波形信号は、デジタル化してデジタル信号として制御部20に通知してもよいし、アナログ信号で通知することとしても構わない。
【0027】
制御部20は、レーザ観測システム1の全体動作を統括的に管理する。例えば、時間管理や、送出パルスレーザ光の生成タイミング、望遠鏡30の角度等の調整、測距、他のシステムとの通信などを管理する。また、制御部20は、波形取得部21と判定部22を含み構成されている。なお、測距部や通信部などは、必要に応じて設ければよい。通信部は、有線/無線を問わず、適宜必要な通信インタフェースで通信相手と通信すればよい。
【0028】
制御部20は、所望する目標対処物の物体識別処理(軌道決定や形状識別など)に応じて、レーザ装置10から波形信号や時間情報を取得し、必要に応じて過去の観測データや予測軌道、目標対処物の特徴を記録したデータベース等を用いて、目標対処物及びその状態を精度よく判別する。
【0029】
また、自動追尾機能を設ける場合、制御部20は、軌道情報(位置,速度など)の入力を受け付けて 望遠鏡30の角度を自動制御するプログラム追尾と、レーザ装置10内でアレイセンサ等による反射波の受光結果から目標移動方向を自動計算して追尾する自律追尾とを設けることが望ましい。
【0030】
波形取得部21は、反射レーザ光の波形を取得する。ここでは、反射レーザ光がレーザ装置10内で電気信号に変換されることを前提に説明する。なお、レーザ装置10から光信号の状態で受け付けて反射レーザ光の波形を取得するように構成することとしてもよい。
【0031】
また、波形取得部21は、反射レーザ光の波形を取得する際に、レーザ光の波長ごとに分けて反射レーザ光の波形を取得可能に構成することが望ましい。多くの物体は、その表面状態により波長毎の反射特性に異なる特徴を表す。この波長毎の反射特性の違いを、波長ごとに分けた波形を観測することで、物体識別の弁別に使用する。
【0032】
また、波形取得部21では、反射光(集光した散乱光)の波形形状と共にその変化を数値化する仕組みを具備することが望ましい。反射光波形の時間変化は、反射面の物理的な奥行(形状)を表す。また、反射光強度の相対変化は、表面状態の反射特性や反射面の面積を表す。これらの変化は、一群の反射光内での変化量と、送出レーザ波形と反射レーザ波形の変化量の両方を数値化できることが望ましい。
【0033】
また、波形取得部21では、反射レーザ光と共に送出レーザ光(パルスレーザ光)の波形形状と共にその変化を数値化する仕組みを具備することが望ましい。送出レーザ光は、波長毎にその波形形状を取得可能で且つ合成波の形状も取得可能に構成することが望ましい。
【0034】
判定部22は、反射レーザ光の受光波形形状から物体識別を実行する。物体識別は、波形変化率を用いて目標の表面状態(素材推定)や、パターンマッチング手法による一般物体認識、特定候補内での物体照合などを適宜組み合わせて実施すればよい。例えば、レーザ装置から見て線対称の物体が、線を中心に回転した場合(ターゲットが傾いた場合)を想定する。回転中心から最も離れた両端にはレーザ装置10(望遠鏡30)から見て前後に光路差ができ、両端からの反射光に到達時間差ができる。形状と共に表面の反射特性も線対称と仮定した場合、得られる反射光の形状は時間的に線対称になる(
図6参照)。
【0035】
また、パターンマッチングに用いるデータベースは、制御部20内に設けてもよいし、通信回線を介して遠隔地に配置されたデータベースを参照するようにしてもよい。また、両方のデータベースを適宜使用できるように構成されることが望ましい。このデータベースには、散乱光(反射レーザ光)の受光波形形状と識別対象物体候補とを関連付けたデータを保持したり、識別対象物体の大きさ、反射特性、現在の推定姿勢などを適宜記録すればよい。
【0036】
望遠鏡30は、光学系経路を具備して、レーザ装置10の光学系経路と光学的に接続されて、目標物体に少なくとも集光光路を向けるために使用される。望遠鏡30は、焦点調整機構や、駆動機構を具備することが望ましい。焦点調整機構や駆動機構は、制御部20の指示に従って動作する。駆動機構としては、目標位置のLOS(Line of Sight)角にレーザ光軸を向けるために2軸若しくは3軸の駆動機構を用いることが望ましい。
【0037】
このような構成を有するレーザ観測システム1は以下の順序で動作させて物体識別を実行する。ここでは、
図2を参照して、レーザ目標識別方法の順序を簡単に説明する。
【0038】
1.レーザ発射工程:
図2のレーザパルス光(A)を目標に向けて照射
2.レーザ受光工程:
図2の変形したレーザパルス光(B)を集光
3.波形取得工程 :レーザパルス光(B)の波形取得
4.物体識別工程 :レーザパルス光(B)の波形取得に基づいて物体識別
必要に応じて1.から4.の工程を適宜繰り返し、識別精度を向上させる。またこの際に、異なる波長のレーザ光に逐次的に切り替えたり、レーザ光の強度を逐次的に切り替えてもよい。また、反射波を用いた測距工程を同時進行で実施してもよい。また、レーザ発射工程とレーザ受光工程を別々の地点で実施するようにしてもよい。また、自システムでレーザ発射工程を行わずに、レーザ受光工程以後を1ないし複数の観測点で実施するようにしてもよい。また、
図3に示したように、複数波長のパルスレーザ光を同時的に用いて観測してもよい。なお、
図3では、2波長のパルスレーザ光を連続して送出する例を示している。複数波長のパルスレーザ光の送受信は、この例に限定されず、3波長以上のパルスレーザ光を連続して用いたり、波長の異なるパルスレーザ光を重ねて(同時タイミングで)送出するようにしてもよい。また、異なる地点から送出された波長の異なる複数のパルスレーザ光を1ないし複数の観測点で観測するようにしてもよい。
【0039】
このように、波長を異ならせることで、集光波に 波長毎の目標物体の有する散乱特徴が反映され、またそれぞれの波長帯の反射波が同時的に望遠鏡に到達したとしても、容易に分離が可能になる。例えば、波長の異なる集光波毎のパターンマッチングと、幾つかの波長の集光波を合わせた合成波のパターンマッチングと、をそれぞれ分けて実施することも可能になる。結果的に、物体識別に有益な特徴情報をより得られうる可能性が高まり、識別能力の向上が図れる。
【0040】
また、測距距離、前観測結果、予測値などを用いて目標対象物の軌道を算出して、その軌道予測に従って望遠鏡30を調整し、常に最適な方向で自動追尾させてもよい。
【0041】
このような順序で目標対象物をレーザ光で識別することで、パルスレーザ光を用いた目標観測手法として、目標対象物に関する既存手法で取得していなかった特徴情報を取得可能になる。
【0042】
例えば、目標対象物をデブリとした場合に、これらのデブリから取得した受光波形について、予め構築されたデータベースに照合することで、デブリの形状や素材、回転状態などをより高精度に識別することが可能になる。また、測距距離と合わせてデブリの大きさの識別や、既知の目標対象物候補との全体マッチングや部分マッチングも可能になる。結果、レーザ光から目標対象物の素材、運動、物体認識まで識別可能に成り得る。
【0043】
ここで、物体状態(大きさや形状など)を識別する観測手法を模式的な波形を例示して説明する。
【0044】
図4は、単一周波のパルスレーザ光を用いた複数観測点で受信したときの受信パルス幅の変化を模式化して記載している。なお、波形形状の変化を説明するために観測点1から送出された単一周波のパルスレーザ光を十分に距離が離れた観測点2(別の地点)で観測した場合を説明する。
【0045】
以下の手法では、パルス長の変化から目標対象物の大きさを識別する。本説明では、目標としてロケットエンジンを図示しているものの、説明上、単一素材で平面板が相対的に静止した関係を維持するとした際に、観測点2の望遠鏡でどのように波形が変化するかを説明する。
【0046】
図中の各変数は以下の通りである。
D:ターゲットデブリの投影幅(未知の値)
t1:観測点1の照射レーザ光のパルス幅(受光レーザ光のパルス幅)
t2:観測点2の集光レーザ光のパルス幅
θ:観測点1、ターゲット、測定点2のなす角
L1:観測点2から見たときのターゲット反射面内で発生する散乱光の光路差
c:光速
図示した関係から数学的に判別できるように、集光レーザ光のパルス幅t2と、照射レーザ光のパルス幅t1の関係は次式で表せる。
t2 ≒ t1+(L1/c) = t1+(D・sinθ)/c ・・・(1)
この関係式から理解できるように、観測点2の集光レーザ光のパルス幅t2と、目標対象物を基準にした観測点1と観測点2のなす角θとを用いることで、観測点2の散乱光の観測結果から、未知の目標対象物の幅Dが推定できる。目標対象物の幅Dは、観測点1の観測結果でも同様に推定できる。
【0047】
この関係は、更に別の観測点を設けても同様に成り立つ。この目標対象物の幅Dの推定値を重畳して推定に用いることで、確度の高い値Dを求めることが可能になる。
【0048】
この送出パルス幅に対する集光パルス幅の変化の関係は、
図5のように、目標対象物の角度が変化しても同様である。なお、目標対象物の角度変化は、集光レーザ光の波高や波形形状(波の形状)に変化を与える。
【0049】
この説明では、ある1つのパルス光について その散乱光と観測点間の角度について目標対象物の特徴情報を取得する手法を説明した。より高精度に目標対象物を観測するために、照射パルス光を連続したパルス光に変更し、また異なる波長のパルス光を用いて複数測定点で目標対象物を連続的に観測することが望ましい。
【0050】
また、上記説明は十分に距離が離れた観測点間の送受レーザ光に現れる関係を説明したが、例えば双眼鏡や複数の望遠鏡をアレイ化して、近傍に複数の観測点を設けるようにレーザ観測システムを構成することとしてもよい。
【0051】
照射パルスレーザ光の拡張幅はデブリ反射面まではほぼ一定に保たれるが、デブリ反射面が傾いていたり、凸凹していた場合、一つの照射パルス内での到達時間が変わり反射光のパルス波形が照射パルス波形と異なる波形になる。このため、ターゲットが大きく3つ部位に別れて線対称に配置している場合であって、ターゲット両端の2つの部位と中心の部位でそれぞれ第1波長と第1波長の反射率が相反していた場合、デブリの姿勢に応じて
図6に模式的に示すような反射光を得られる。
【0052】
図6(a)では単一周波、
図6(b)では複数周波の照射パルス波と集光パルス波の関係を模式的に示している。
図6(b)に示すように、第1波長と第2波長の受信波形の形状は、それぞれ時間的に線対称になることは共通であるが、両端と中心の波形の強度が反射率に応じて相反する波形になる。
【0053】
このように、必要に応じて複数観測地点で散乱光の集光及びそれぞれの波長への分離を行うことで、目標対象物の特徴情報を含む反射波から波形情報を取得する。この波形情報から、目標対象物の特徴情報を取り出す。
【0054】
また、多くのデブリは姿勢が固定されていないため、回転してレーザ光が照射される反射面が時間経過と共に異なる形状(大きさ)になる。
【0055】
これらのデブリからの反射レーザ光の集光波形について、予めデータベースを保持することで、目標対象物の形状を正確に識別することが可能になる。既知の衛星部品やロケットであれば、全体形状や素材の反射率をも地上で準備できる。また、未知の物体であっても、観測を重ねることで、形状の特定を逐次的に明瞭化できる。
【0056】
また、異なる波長のレーザ光を使用することで、波長ごとの強度分布の変化を各観測点で観測できる。この際、目標対象物の現在の状態を反映したデータベースで逐次的に物体識別の推考を進めることで、より確度の高い識別結果を得られる。
【0057】
このように、パルスレーザ光の照射地点とは異なる測定点でレーザ観測システムで目標表面で生じた散乱光を集光してその波形形状を観測する。
【0058】
また、複数の測定点から同一デブリ(目標)に対して1ないし複数のパルスレーザ光を照射することで、入射角の異なる複数送信パルスから、それぞれの測定点で複数の受信パルスを得ることで、デブリの回転方向などをより精確に抽出可能になる。
【0059】
更に、使用するレーザ波長を変えた複数のレーザ装置により同時観測することで、それぞれの装置で他のレーザ装置から照射されたパルスレーザ光の散乱光を集光し、複数の受信波形の情報から目標形状を高精度に導出できる。
【0060】
また、上記散乱光を集光する複数の観測点/連続観測の観測結果から、目標対象物の高精度な速度検出が可能になる。
【0061】
この検出結果から目標対象物の伝搬方向を計算することで、不明な軌道を伝搬するデブリに対してもその軌道を正確に推定できる。結果、自動追尾を行う仕組みに的確な情報を入力でき、その追尾性能を向上させ得る。
【0062】
このように、目標対象物について、パルスレーザ光の散乱光の変化を観測することで、レーザ光が照射された目標対象物の特徴(反射面の形状、運動、物体特定)を確度よく推定可能になる。
【0064】
図7は、第2の実施形態にかかるレーザ観測システム2の構成及び運用態様を示した説明図である。
【0065】
レーザ観測システム2は、複数のレーザ装置10及び望遠鏡30を含む構成である。制御部20は、複数のレーザ装置10と通信回線を介して接続されている。また、通信回線を介して他の観測システムと観測結果や識別対象物体候補を共有する。図中では、2組のレーザ装置10及び望遠鏡30を示しているが、所望数の組み合わせで運用すればよい。
【0066】
レーザ装置10群は、システム全体として複数の波長のパルスレーザ光を目標対象物に照射する。制御部20たるシステム制御コンピュータは、各レーザ装置10で集光された反射レーザ光の受光波形形状から物体識別を実行する。システム制御コンピュータは、複数レーザ装置10からの測定結果を受け付けるほか、必要に応じてそれぞれのレーザ測距機能も制御する。この際、他の観測システムで取得された観測結果を反映して物体識別を実行する。
【0067】
使用するレーザ光に縦シングルモードレーザを用いると、波長のドップラーシフトをヘテロダインによって検出でき、ターゲットの移動速度や方向が測定できる。ヘテロダイン検波は単一素子の光検知器があれば可能である。また、ヘテロダイン検波は必要な受信エネルギーを最小限に低減することに役立つ。
【0068】
目標対象物の伝搬方向(軌道)が精確に識別できると、システム制御コンピュータは、その情報を基に各望遠鏡30のLOS角を制御して、常に最適な方向で目標対象物の追尾が維持できる。
【0069】
結果、レーザ観測システム2として、目標対象物を良好に追尾可能になる。
【0070】
図8(a)には、複数波長のレーザ光を使用したときの各波長の波形信号に分ける周波数弁別方式の回路構成例を示す。この構成例では、2つのレーザ波長をダイクロックミラーで波長毎に弁別する方式を示している。
【0071】
光学系回路の構造は、この他にも時間的に受信タイミングをシフトさせる手法で複数の波長を取り扱えるようにしてもよい。時間のシフトで信号を弁別する場合、観測点から目標対象物までの距離によって複数の反射波が重ならないよう、制御部20は、各観測点からのパルスレーザの送信タイミングを制御するようにすればよい。
【0072】
図8(b)は軌道情報が不明な目標対象物に対する自律追尾方式の回路構成例である。自律追尾では、目標対象物のLOS角の変化を常に検出するため、受信信号の一部をCCD(Charge Coupled Device)カメラや4分割検知器などのアレイセンサで受信し、LOS角変化量を算出し望遠鏡30の角度を制御する。
【0073】
ここで、アレイセンサを用いた場合、LOS角変化量を得るために必要な受信光量が大きくなってしまう問題が発生する。より少ない受信エネルギーでターゲットの伝搬を検出する方式として、ヘテロダインにより目標対象物の速度検出を実施する方式を検討する。
【0074】
目標対象物の移動速度を検出することで、LOS角変化量を計算して自律追尾を実施する。
【0075】
図9にはヘテロダインを実施するためのレーザ装置10の構成例を示す。
【0076】
図9内の受信系の光学経路は、受信光の一部を分岐するパーシャルミラー1と縦シングルモードレーザ発振器から送られてくる参照光を混合するミキサーと、混合された光信号のビート波形を検出するビート信号検知器を具備する。ビート信号検知器で光電変換されたビート信号は、制御部20で光周波数のドップラーシフト量の測定に使用される。
【0077】
制御部20は、ビート信号から得られたドップラーシフト量を、測距データや望遠鏡30のLOS角と共に計算に使用して、観測点と目標対象物の相対速度を算出する。
【0078】
ここで、1つの観測点でのドップラーシフト量のみでは3次元の移動を測定できない。この対策は、3ヵ所以上の測定点での情報を取得し、三次元方程式によりターゲットの移動方向と移動速度を計算で導出するようにすればよい。
【0079】
この計算は、
図6に示したシステム制御コンピュータ(制御部20)で実行すればよい。システム制御コンピュータは、導出した目標対象物の軌道伝搬情報に従い各レーザ装置10及び望遠鏡30を逐次制御して、目標対象物の自律追尾を実行する。
【0080】
以上説明したように、本発明を適用した目標識別レーザ観測システムは、目標対象物をレーザ光で良好に識別できる。また、本発明を適用した目標識別レーザ観測システムは、目標対象物を良好に追尾可能になる。
【0081】
また、目標識別レーザ観測システムは、レーダ観測システムに対しても様々な利点がある。例えば、昼夜を問わず観測が可能である。また、レーザ観測を利用することで、その観測レンジを高高度若しくは遠方に設定できる。結果、高高度若しくは遠方に存在する目標対象物の軌道を高精度に識別可能になる。
【0082】
また、目標対象物の形状認識が1ないし複数の受信波形から識別することが可能になる。物体を特定できない場合でも大きさや形状、運動、素材などの推定が可能になり、物体識別の推考に利用できる。
【0083】
尚、レーザ観測システムの制御部は、コンピュータシステムのハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて実現すればよい。また、このコンピュータシステムの制御部は、上記メモリーにレーザ波形観測用プログラムが展開され、このプログラムに基づいて1ないし複数のプロセッサー等のハードウェアを動作させることによって実現すればよい。この際、必要に応じて、このプログラムは、オペーレティングシステムや、マイクロプログラム、ドライバなどのソフトウェアが提供する機能と協働して、所望機能を実現することとしてもよい。
【0084】
また、このコンピュータシステムは、必ずしも一つの装置として構築される必要はなく、複数のサーバ/コンピュータ/仮想マシンなどが組み合わさって構築されてもよい。また、コンピュータシステムの一部/全ての各部をハードウェアやファームウェア(例えば、一ないし複数のLSI:Large-Scale Integration,FPGA:Field Programmable Gate Array,電子素子の組み合わせ)で置換することとしてもよい。同様に、各部の一部のみをハードウェアやファームウェアで置換することとしてもよい。
【0085】
また、このプログラムは、記録媒体に非一時的に記録されて頒布されても良い。当該記録媒体に記録されたプログラムは、有線、無線、又は記録媒体そのものを介してメモリーに読込まれ、プロセッサー等を動作させる。
【0086】
なお、実施形態及び/又は実施例を例示して本発明を説明した。しかし、本発明の具体的な構成は前述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があってもこの発明に含まれる。例えば、上述した実施形態及び/又は構成例のブロック構成の分離併合、手順の入れ替えなどの変更は本発明の趣旨および説明される機能を満たせば自由であり、上記説明が本発明を限定するものではない。
【0087】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載されうる。尚、以下の付記は本発明をなんら限定するものではない。
[付記1]
目標物体に向けられる望遠鏡と、
前記望遠鏡を介して目標で散乱した反射レーザ光を受光するレーザ装置と、
前記反射レーザ光の波形を取得する波形取得部と、
前記反射レーザ光の受光波形形状から物体識別を実行する判定部と、
を備えることを特徴とする目標識別レーザ観測システム。
【0088】
[付記2]
前記レーザ装置で生成して照射したパルスレーザ光と目標に当たって返ってきた反射レーザ光との送受信タイミングから目標までの距離を演算する測距部を含むことを特徴とする上記付記記載の目標識別レーザ観測システム。
【0089】
[付記3]
前記判定部で用いる、前記反射レーザ光の受光波形形状と識別対象物体候補とを関連付けたデータを保持したデータベースを更に含むことを特徴とする上記付記記載の目標識別レーザ観測システム。
【0090】
[付記4]
前記レーザ装置は、複数波長の同一目標で散乱した反射レーザ光を受光し、
前記波形取得部は、前記複数波長の反射レーザ光の波形をそれぞれ取得し、
前記判定部は、複数波長の反射レーザ光の受光波形形状から物体形状を導出処理する
ことを特徴とする上記付記記載の目標識別レーザ観測システム。
【0091】
[付記5]
前記波形取得部は、複数の観測点で取得された同一目標で散乱した反射レーザ光の波形をそれぞれ取得し、
前記判定部は、複数の反射レーザ光の受光波形形状から物体形状を導出処理する
ことを特徴とする上記付記記載の目標識別レーザ観測システム。
【0092】
[付記6]
前記レーザ装置は、集光した任意の反射レーザ光を 波長の異なる複数のレーザ光に分光した後に、分光したそれぞれの反射レーザ光をそれぞれ波形信号に変換することを特徴とする上記付記記載の目標識別レーザ観測システム。
【0093】
[付記7]
前記レーザ装置は、目標で反射した反射レーザ光を捉えるアレイセンサを含み、
該目標識別レーザ観測システムは、
前記アレイセンサの分解能で出力されたセンサ出力に基づいて、目標の移動方向及び/又は移動速度を導出処理して、前記望遠鏡の向きを調整する自律追跡部を更に含む、
ことを特徴とする上記付記記載の目標識別レーザ観測システム。
【0094】
[付記8]
前記レーザ装置は、
目標に照射するパルスレーザ光に縦シングルモードレーザを採用し、
照射するパルスレーザ光から参照光を分岐すると共に、
集光した反射レーザ光を 前記参照光を用いてヘテロダイン方式で混合した光信号のビート波形を検知し、
該目標識別レーザ観測システムは、
前記ビート波形の変化に基づいて、観測点と目標との相対速度を導出処理する速度検出部を更に含む、
ことを特徴とする上記付記記載の目標識別レーザ観測システム。
【0095】
[付記9]
複数の観測点で、パルスレーザ光に縦シングルモードレーザを採用して前記参照光を生成し、集光した反射レーザ光と前記参照光を混合した光信号のビート波形を取得し、
複数の観測点で取得された前記ビート波形の変化に基づいて、目標との現在位置を導出処理する
ことを特徴とする上記付記記載の目標識別レーザ観測システム。
【0096】
[付記10]
前記レーザ装置による波長の異なる複数のパルスレーザ光の発射 及び/又は 散乱光の集光を 連続的に複数の観測点で実施して、複数の観測点で得られた異なるタイミングの異なる波長の受光波形形状及び目標物体との距離から物体識別の推考を進めることを特徴とする上記付記記載の目標識別レーザ観測システム。
【0097】
[付記11]
目標物体にレーザパルス光を照射するレーザ発射工程と、
目標物体に向けられた望遠鏡を介して目標で散乱した反射レーザ光を集光するレーザ受光工程と、
前記反射レーザ光の波形を取得する波形取得工程と、
前記反射レーザ光の受光波形形状から物体識別を実行する目標識別工程と、
を含むことを特徴とするレーザ目標識別方法。
【0098】
[付記12]
レーザ発射工程で照射したレーザ光と目標に当たって返ってきた反射レーザ光との送受信タイミングから目標までの距離を演算するレーザ測距工程を更に含むことを特徴とする上記付記記載のレーザ目標識別方法。
【0099】
[付記13]
前記目標識別工程では、前記反射レーザ光の受光波形形状と識別対象物体候補とを関連付けたデータを保持したデータベースを参照することを特徴とする上記付記記載のレーザ目標識別方法。
【0100】
[付記14]
前記レーザ受光工程では、複数波長の同一目標で散乱した反射レーザ光を受光し、
前記波形取得工程では、前記複数波長の反射レーザ光の波形をそれぞれ取得し、
前記目標識別工程では、複数波長の反射レーザ光の受光波形形状から物体形状を導出処理する
ことを特徴とする上記付記記載のレーザ目標識別方法。
【0101】
[付記15]
前記波形取得工程では、複数の観測点で取得された同一目標で散乱した反射レーザ光の波形をそれぞれ取得し、
前記目標識別工程では、複数の反射レーザ光の受光波形形状から物体形状を導出処理する
ことを特徴とする上記付記記載のレーザ目標識別方法。
【0102】
[付記16]
前記レーザ受光工程では、集光した任意の反射レーザ光を 波長の異なる複数のレーザ光に分光した後に、分光したそれぞれの反射レーザ光をそれぞれ波形信号に変換することを特徴とする上記付記記載のレーザ目標識別方法。
【0103】
[付記17]
前記レーザ受光工程では、目標で反射した反射レーザ光を捉えるアレイセンサを用い、
前記目標識別工程では、該アレイセンサの分解能で出力されたセンサ出力に基づいて、目標の移動方向及び/又は移動速度を導出処理して、前記望遠鏡の向きを調整することを特徴とする上記付記記載のレーザ目標識別方法。
【0104】
[付記18]
前記レーザ発射工程では、目標に縦シングルモードパルスレーザ光を照射すると共に、照射するパルスレーザ光から参照光を分岐し、
前記レーザ受光工程では、集光した反射レーザ光を 前記参照光を用いてヘテロダイン方式で混合した光信号のビート波形を検知し、
前記目標識別工程では、前記ビート波形の変化に基づいて、観測点と目標との相対速度を導出処理する
ことを特徴とする上記付記記載のレーザ目標識別方法。
【0105】
[付記19]
前記レーザ発射工程及び前記レーザ受光工程では、複数の観測点で、パルスレーザ光に縦シングルモードレーザを照射すると共に前記参照光を生成し、集光した反射レーザ光と前記参照光を混合した光信号のビート波形を取得し、
前記目標識別工程では、複数の観測点で取得された前記ビート波形の変化に基づいて、目標との現在位置を導出処理する
ことを特徴とする上記付記記載のレーザ目標識別方法。
【0106】
[付記20]
前記レーザ発射工程及び前記レーザ受光工程では、レーザ装置による波長の異なる複数のパルスレーザ光の発射 及び/又は 散乱光の集光を 連続的に複数の観測点で実施し、
前記目標識別工程では、複数の観測点で得られた異なるタイミングの異なる波長の受光波形形状及び目標物体との距離から物体識別の推考を進める
ことを特徴とする上記付記記載のレーザ目標識別方法。