特許第6233634号(P6233634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6233634銅線材、銅伸線材、銅平角線、被覆銅線、銅線材の製造方法、銅伸線材の製造方法、及び銅平角線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233634
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】銅線材、銅伸線材、銅平角線、被覆銅線、銅線材の製造方法、銅伸線材の製造方法、及び銅平角線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/02 20060101AFI20171113BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20171113BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20171113BHJP
   B21B 1/16 20060101ALI20171113BHJP
   B21C 1/00 20060101ALI20171113BHJP
   B21C 23/21 20060101ALI20171113BHJP
   B21C 37/04 20060101ALI20171113BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20171113BHJP
   B22D 11/04 20060101ALI20171113BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20171113BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20171113BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   H01B5/02 Z
   H01B7/02 C
   H01B13/00 501C
   B21B1/16 L
   B21C1/00 P
   B21C1/00 L
   B21C23/21 C
   B21C37/04 A
   B22D11/00 F
   B22D11/00 G
   B22D11/04 115
   C22C9/00
   C22F1/08 C
   !C22F1/00 604
   !C22F1/00 612
   !C22F1/00 625
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 630K
   !C22F1/00 661A
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/00 686A
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 694A
   !C22F1/00 694B
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-222582(P2013-222582)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-28903(P2015-28903A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-235930(P2012-235930)
(32)【優先日】2012年10月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-135065(P2013-135065)
(32)【優先日】2013年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】丹治 亮
(72)【発明者】
【氏名】西川 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 忠徳
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 清高
(72)【発明者】
【氏名】中富 大輔
(72)【発明者】
【氏名】草刈 美里
(72)【発明者】
【氏名】久保 範明
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−087381(JP,A)
【文献】 特開2006−070341(JP,A)
【文献】 特開2010−023090(JP,A)
【文献】 特開2005−313208(JP,A)
【文献】 特開2012−193417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00−7/42
13/00−13/34
B21B 1/00−1/46
B21C 1/00−1/34
23/00−23/32
37/00−37/30
B22D 11/00−11/22
C22C 9/00−9/10
C22F 1/00−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材にコンフォーム押出を施して製造された銅線材。
【請求項2】
前記銅線材の縦断面又は横断面における平均結晶粒径が1μm以上100μm以下である請求項1に記載の銅線材。
【請求項3】
酸素含有量が0.005質量%以下である無酸素銅から構成されている請求項1又は請求項2に記載の銅線材。
【請求項4】
請求項1に記載の銅線材に伸線加工を施して製造された銅伸線材。
【請求項5】
請求項に記載の銅伸線材に圧延加工を施して製造された銅平角線。
【請求項6】
請求項に記載の銅伸線材、又は請求項に記載の銅平角線を用いた導体と、この導体の表面に形成された絶縁被覆とを具える被覆銅線。
【請求項7】
上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材を用意する準備工程と、
前記アップキャスト材にコンフォーム押出を施して銅線材を製造する押出工程とを具える銅線材の製造方法。
【請求項8】
上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材を用意する準備工程と、
前記アップキャスト材にコンフォーム押出を施して押出材を製造する押出工程と、
前記押出材に伸線加工を施して銅伸線材を製造する伸線工程とを具える銅伸線材の製造方法。
【請求項9】
前記伸線加工が施される前の前記押出材、及び前記伸線工程における伸線途中の中間伸線材の少なくとも一方に皮剥ぎを施す皮剥ぎ工程を具える請求項に記載の銅伸線材の製造方法。
【請求項10】
上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材を用意する準備工程と、
前記アップキャスト材にコンフォーム押出を施して押出材を製造する押出工程と、
前記押出材に伸線加工を施して伸線材を製造する伸線工程と、
前記伸線材に圧延加工を施して銅平角線を製造する圧延工程とを具える銅平角線の製造方法。
【請求項11】
前記伸線加工が施される前の前記押出材、及び前記伸線工程における伸線途中の中間伸線材の少なくとも一方に皮剥ぎを施す皮剥ぎ工程を具える請求項10に記載の銅平角線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線や電線などの導体の素材に利用される銅線材、銅伸線材、銅平角線、巻線などに利用される被覆銅線、銅線材の製造方法、銅伸線材の製造方法、及び銅平角線の製造方法に関する。特に、表面性状に優れ、導体の素材に適した銅線材、銅伸線材、銅平角線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コイルの巻線などにエナメル線と呼ばれる被覆線が汎用されている。この被覆線は、銅(いわゆる純銅)や銅合金などからなる金属線を導体とし、この導体の表面にポリアミドイミドなどの樹脂からなる絶縁被覆を具える。
【0003】
上記導体には、代表的には、伸線材(代表的には横断面円形状の丸線)や、伸線材に圧延加工などを施して形状を変更させた異形線材(例えば、丸線を矩形状に成形した平角線など)に適宜熱処理を施した金属線が利用される。上記伸線材は、代表的には、連続鋳造材を含む鋳造材や、連続鋳造に引き続いて圧延を施した連続鋳造圧延材に伸線加工を施すことで製造される。特に、無酸素銅の鋳造には、上引き鋳造法(特許文献1の段落[0003]など)を利用すると、酸素濃度がより低い線材を連続的に製造できる。なお、無酸素銅は、酸素濃度が低いほど導電率が高い傾向にあり、導体に好ましい特性を有するといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−313208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上引き鋳造法によって得られた鋳造材(以下、アップキャスト材と呼ぶ)に伸線加工を施すと、伸線時、割れや破断が生じ易い。この理由は、アップキャスト材の表面に鋳造キズを含む表面欠陥が多い上に、鋳造過程などで深いキズが形成されることがあり、これらの表面欠陥が割れの起点になるためと考えられる。また、アップキャスト材は、結晶粒が非常に大きい上に(代表的には平均結晶粒径が200μm以上、更に300μm以上)、ばらつきも大きく、粗大な結晶粒が割れの起点になるためと考えられる。
【0006】
例えば、アップキャスト材に直接皮剥ぎを施すことが考えられる。この場合、上述の表面欠陥をある程度除去できると期待される。しかし、深いキズが存在する場合には、除去厚さを厚くしなければならず、歩留まりが低下する。また、アップキャスト材に直接皮剥ぎを施しても、アップキャスト材の内部組織は実質的に変化しない。つまり、アップキャスト材への皮剥ぎの有無に係わらず、粗大な結晶組織が維持される。そのため、粗大な結晶粒に起因する割れを低減することが難しい。
【0007】
また、アップキャスト材に伸線加工を施した伸線材を導体に用い、この導体の表面に絶縁被覆を形成すると、被覆の膨れなどの不良が生じ得る。この理由は、上述の表面欠陥が伸線後にも残存し、この欠陥部分が空気溜まりとなるためと考えられる。上記皮剥ぎを行ったとしても、深いキズなどが存在する場合には皮剥ぎによって十分に除去し切れずに、伸線後にもキズが残存する恐れがある。被覆の膨れ箇所は、電気的弱点になることから、膨れが存在する被覆線は、所望の耐電圧特性を満たさない恐れがある。
【0008】
更に、アップキャスト材に伸線加工を施した伸線材に上述の圧延加工を施す場合、この圧延時に割れや変形が生じ、形状精度や寸法精度に劣る異形線材が製造される恐れがある。この理由は、上記伸線材に残存し得る表面欠陥や、この伸線材の内部又は表面に残存し得る粗大な結晶粒が割れなどの起点になるためと考えられる。上述のように伸線前に皮剥ぎを行ったとしても、アップキャスト材に存在する表面欠陥の状態によっては、伸線後にもキズが残存する恐れがある。
【0009】
従って、導体、特に被覆線の導体に用いる金属線には、被覆形成時に被覆の膨れが生じ難いことが好ましい。また、この金属線に用いる素材には、伸線時や成形時(圧延時)などで割れなどが生じ難いことが好ましい。上記要求を満たすためには、表面性状に優れる素材、好ましくは表面性状に優れる上に微細な組織から構成される素材を伸線工程に供することが好ましいと考えられる。
【0010】
そこで、本発明の目的の一つは、表面性状に優れ、導体の素材に適した銅線材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記銅線材の製造に適した銅線材の製造方法を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、上記銅線材を素材に用いた銅伸線材、この銅伸線材を素材に用いた銅平角線、上記銅伸線材や銅平角線を導体に用いた被覆銅線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の銅線材は、上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材にコンフォーム押出を施して製造されている。
【0012】
本発明の銅線材の製造方法は、上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材を用意する準備工程と、前記アップキャスト材にコンフォーム押出を施して銅線材を製造する押出工程とを具える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の銅線材は、表面性状に優れ、導体の素材に好適に利用できる。本発明の銅線材の製造方法は、表面性状に優れる銅線材を生産性よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】試験例1で作製した試料No.1−1の銅線材を示す写真であり、(A)は外観、(B),(C)は縦断面の顕微鏡写真である。
図2】試験例1で作製した試料No.100のアップキャスト材を示す写真であり、(A)は外観、(B),(C)は縦断面の顕微鏡写真である。
図3】コンフォーム押出装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本発明の実施の形態の説明]
本発明者らは、上引き鋳造法によって得られた鋳造材(アップキャスト材)に対して、表面品質を向上可能な手段を検討した結果、アップキャスト材にコンフォーム押出を施すことが好ましい、との知見を得た。
【0016】
ここで、コンフォーム押出は、JIS規格における1000系アルミニウムといった純アルミニウムの押出(アルミニウム被覆鋼線、多孔偏心管など)に汎用されている。また、銅被覆鋼線や銅被覆アルミニウム線などの銅被覆にコンフォーム押出が利用されている。
【0017】
コンフォーム押出は、断面円形状の丸線は勿論、種々の外形(例えば、矩形、多角形、楕円など)を有する異形押出材を成形可能である。従って、伸線工程に供する素材の製造にコンフォーム押出を利用するよりも、最終形状に近いサイズの線材、好ましくは製品サイズを有する線材を直接製造するためにコンフォーム押出を利用する方が、コンフォーム押出後に伸線工程や圧延工程などを省略できて工程数が少なく工業的生産性に優れると考えられる。そこで、本発明者らは、上引き鋳造法によって製造された無酸素銅からなるアップキャスト材(直径8mm〜13mm程度)にコンフォーム押出を施して、製品サイズを有する巻線用の平角線(製品サイズ:厚さ0.5mm〜5mm程度、幅2mm〜20mm程度)の製造を試みた。その結果、所望の形状精度や寸法精度から外れた形状不良品や寸法不良品が得られた。この理由は、銅は、純アルミニウムよりも加工性に劣るためと考えられる。そこで、上記アップキャスト材にコンフォーム押出を施して、アップキャスト材とほぼ同形状で、同程度の断面積を有する線材を作製したところ、この押出線材は、表面性状に優れる上に、微細な結晶組織から構成されていた。この押出線材に伸線加工を施したり、得られた伸線材に圧延加工を施したり、又は押出線材に圧延加工を直接施したり、更に得られた線材に絶縁被覆を施したりしたところ、加工時に割れや破断が生じ難く加工性に優れており、被覆形成時に被覆の膨れが生じ難い、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0018】
(1) 実施形態に係る銅線材は、上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材にコンフォーム押出を施して製造されている。
【0019】
実施形態の銅線材は、アップキャスト材にコンフォーム押出が施されていることで、この押出加工に基づく塑性変形によって鋳造時に生じたキズなどの表面欠陥がない新生面が形成されており、表面性状に優れる。また、実施形態の銅線材は、粗大な結晶粒から構成される鋳造組織が押出加工によって消失し、微細な結晶粒から構成される加工組織となっている。この点からも、実施形態の銅線材は、表面性状に優れる。特に、実施形態の銅線材では、上述の塑性変形によって表面側領域を構成する結晶が内部領域を構成する結晶よりも微細であり、この点からも、表面性状に優れる。このような実施形態の銅線材は、割れや破断の起点となり得る表面欠陥や粗大粒が低減されているといえる。また、実施形態の銅線材は、微細な結晶組織であることで加工性にも優れる。そのため、実施形態の銅線材に例えば伸線加工を施した場合、割れや破断が生じ難く、良好に伸線加工が行えて、長尺な銅伸線材を製造できる。また、実施形態の銅線材に例えば伸線加工を施した場合、表面性状に優れ、かつ微細な結晶組織から構成される銅伸線材を製造できる。更に、実施形態の銅線材は、微細な結晶組織を有することに起因して強度や伸びも高いため、実施形態の銅線材を素材に利用することで、強度や伸びにも優れる銅伸線材を製造できる。この銅伸線材に上述の形状変更のための圧延加工などを施した場合又は実施形態の銅伸線材に上記圧延加工を直接施した場合にも、割れや破断が生じ難く、良好に圧延加工などが行えて、形状精度や寸法精度に優れる銅異形線材(例えば、平角線)を製造できる。この銅異形線材も、表面性状に優れ、かつ微細な結晶組織から構成される。そのため、これらの線材を被覆銅線の導体とする場合に導体の外周に絶縁被覆を形成した際、被覆の膨れが生じ難い。従って、実施形態の銅線材は、上述の銅伸線材や銅異形線材、被覆銅線の生産性の向上にも寄与することができる。また、この銅異形線材も、微細な結晶組織を有することに起因して、強度や伸びが高い。
【0020】
(2) 実施形態に係る銅線材の一例として、上記銅線材の縦断面又は横断面における平均結晶粒径が1μm以上100μm以下である形態が挙げられる。
【0021】
上記形態は、例えば、伸線加工や圧延加工を施す場合、均一的に変形でき、割れが生じ難く、表面性状に優れる銅伸線材や銅異形線材を製造できる。また、上記形態は、結晶粒径の大きさが特定の範囲であるため、押出時に過負荷になり難く、生産性に優れる。
【0022】
(3) 実施形態に係る銅線材の一例として、酸素含有量が0.005質量%以下である無酸素銅から構成された形態が挙げられる。
【0023】
上記形態は、酸素濃度が特定の範囲である無酸素銅で構成されることで導電性に優れるため、導体の素材に好適に利用することができる。
【0024】
(4) 実施形態に係る銅線材の一例として、引張強さが200MPa以上、かつ破断伸びが30%以上である形態が挙げられる。
【0025】
上記形態は、高強度でありながら伸びにも優れるため、例えば、伸線加工や圧延加工を施す場合、破断し難く、加工性に優れる。特に、上記形態は、伸びに優れることで圧延加工を良好に行えることから、形状精度や寸法精度に優れる平角線などの異形線材の素材に好適に利用できる。
【0026】
(5) 実施形態に係る銅伸線材は、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載される実施形態の銅線材に伸線加工を施して製造されている。
【0027】
実施形態の銅伸線材は、上述のように表面性状に優れ、更には微細な結晶組織から構成された銅線材を素材にしているため、伸線時、割れや破断が生じ難く、生産性に優れる。また、実施形態の銅伸線材は、実施形態の銅線材を素材にしているため、表面性状に優れる上に、微細な結晶組織から構成されて、圧延加工などの加工性、伸びなどの機械的特性に優れる。このような実施形態の銅伸線材は、導体の素材に好適に利用できる。
【0028】
(6) 実施形態に係る銅平角線は、上記実施形態の銅伸線材に圧延加工を施して製造されている。
【0029】
実施形態の銅平角線は、上述のように表面性状に優れ、更には微細な結晶組織から構成された伸線材を素材にしているため、圧延時、割れや破断が生じ難く、生産性に優れる。また、実施形態の銅平角線は、実施形態の銅伸線材を素材にしているため、表面性状に優れる上に、微細な結晶組織から構成されて、巻回といった曲げ加工などの加工性、伸びなどの機械的特性にも優れる。このような実施形態の銅平角線は、導体の素材に好適に利用できる。
【0030】
(7) 実施形態に係る被覆銅線は、上記実施形態の銅伸線材又は上記実施形態の銅平角線を用いた導体と、この導体の表面に形成された絶縁被覆とを具える。
【0031】
実施形態の被覆銅線は、上述のように表面性状に優れる上に、微細な結晶組織から構成された銅伸線材や銅平角線を素材にしているため、被覆形成時、被覆の膨れが生じ難く、生産性に優れる。また、実施形態の被覆銅線は、被覆の膨れなどなく表面性状に優れる。更に、銅伸線材や銅平角線が微細な結晶組織から構成されることで、伸びなどの機械的特性に優れることから、巻回などの曲げ加工が行い易い。従って、実施形態の被覆銅線は、巻回などされるコイルの巻線に好適に利用できる。特に、実施形態の被覆銅線が無酸素銅から構成されている場合には、導電性にも優れて、コイルの巻線などに更に好適に利用できる。
【0032】
(8) 実施形態に係る銅線材の製造方法は、上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材を用意する準備工程と、上記アップキャスト材にコンフォーム押出を施して銅線材を製造する押出工程とを具える。
【0033】
実施形態の銅線材の製造方法は、表面性状に優れていたり、粗大な結晶が少なく微細な結晶組織を有していたり、加工性に優れたりする銅線材(代表的には実施形態の銅線材)を製造できる。また、実施形態の銅線材の製造方法は、伸線工程に供する素材の製造にあたり、アップキャスト材に直接皮剥ぎを施す場合に比較して、材料の廃棄量を低減できる上に、表面品質に優れ、加工性にも優れる線材を製造できる。従って、実施形態の銅線材の製造方法は、伸線工程に供する素材(実施形態の銅線材)を生産性よく製造できる。
【0034】
(9) 実施形態に係る銅伸線材の製造方法は、上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材を用意する準備工程と、上記アップキャスト材にコンフォーム押出を施して押出材を製造する押出工程と、上記押出材に伸線加工を施して銅伸線材を製造する伸線工程とを具える。
【0035】
実施形態の銅伸線材の製造方法は、表面性状に優れ、加工性にも優れる押出材を伸線工程に供するため、伸線時、割れや破断などが生じ難く、良好に伸線加工を行えて、表面性状に優れる銅伸線材(代表的には実施形態の銅伸線材)を生産性よく製造できる。
【0036】
(10) 実施形態に係る銅伸線材の製造方法の一例として、上記伸線加工が施される前の上記押出材、及び上記伸線工程における伸線途中の中間伸線材の少なくとも一方に皮剥ぎを施す皮剥ぎ工程を具える形態が挙げられる。
【0037】
上記形態は、伸線加工前や伸線途中に少なくとも1回の皮剥ぎを施すことで、表面欠陥をより確実に除去できるため、表面性状により優れる銅伸線材を製造できる。
【0038】
(11) 実施形態に係る銅平角線の製造方法は、上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材を用意する準備工程と、上記アップキャスト材にコンフォーム押出を施して押出材を製造する押出工程と、上記押出材に伸線加工を施して伸線材を製造する伸線工程と、上記伸線材に圧延加工を施して銅平角線を製造する圧延工程とを具える。
【0039】
実施形態の銅平角線の製造方法は、表面性状に優れ、加工性にも優れる押出材を伸線工程に供するため、伸線時、割れや破断などが生じ難く良好に伸線加工を行える上に、得られた伸線材も表面性状及び加工性に優れており、この伸線材を圧延工程に供するため、圧延時、割れや破断などが生じ難く良好に圧延加工を行える。従って、実施形態の銅平角線の製造方法は、表面性状に優れる銅平角線(代表的には実施形態の銅平角線)を生産性よく製造できる。
【0040】
(12) 実施形態に係る銅平角線の製造方法の一例として、上記伸線加工が施される前の上記押出材、及び上記伸線工程における伸線途中の中間伸線材の少なくとも一方に皮剥ぎを施す皮剥ぎ工程を具える形態が挙げられる。
【0041】
上記形態は、伸線加工前や伸線途中に少なくとも1回の皮剥ぎを施すことで、表面欠陥をより確実に除去できるため、表面性状により優れる銅伸線材が得られる。この銅伸線材に圧延加工を施すことで、表面性状により優れる銅平角線を製造できる。
【0042】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施の形態をより詳細に説明する。
[銅線材]
(組成)
実施形態の銅線材、銅伸線材、銅平角線、及び被覆銅線に具える導体の構成材料は、いわゆる純銅とする。純銅は、無酸素銅(Cuを99.95質量%以上含有し、残部が不可避不純物(好ましくは不可避不純物の合計含有量が0.03質量%以下))が挙げられる。無酸素銅中の酸素含有量は、少ないほど導電性に優れることから、0.005質量%(50質量ppm)以下、更に0.002質量%以下(20質量ppm以下)が好ましい。酸素含有量は、溶解時に精錬したり、鋳造雰囲気を調整したりすることで調整できる。特に、実施形態の銅線材などの製造には、上引き鋳造法を利用するため、鋳造雰囲気を調整し易く、酸素含有量を低くし易い。
【0043】
(組織)
実施形態の銅線材は、表面から内部に至る実質的に全域に亘って、アップキャスト材よりも微細な結晶によって構成されている。特に、実施形態の銅線材のうち、内部領域を構成する結晶の粒径はアップキャスト材の結晶粒径よりも小さく、表面側領域を構成する結晶の粒径は、この内部領域の結晶粒径よりも更に小さい。従って、実施形態の銅線材の平均結晶粒径は、アップキャスト材の平均結晶粒径よりも十分に小さい。実施形態の銅線材の平均結晶粒径は、例えば、アップキャスト材の平均結晶粒径の1/2以下、更に1/4以下である。特に、実施形態の銅線材の平均結晶粒径が100μm以下であると、加工性に優れて伸線加工を施す場合や圧延加工を施す場合に銅線材全体を均一的に変形させられる。そのため、この形態は、伸線時、割れが生じ難く、長尺な銅伸線材や長尺な銅異形線材を生産性よく製造できる。この銅線材の平均結晶粒径は、小さいほど、伸線性や圧延性を向上できることから、50μm以下、更に30μm以下が好ましい。銅線材の結晶粒径は、押出条件によって調整できる。例えば、押出加工度を大きくすると、結晶粒径を小さくし易い。しかし、押出加工度を大きくし過ぎると、つまり、押出時の負荷を高め過ぎると、押出し難くなり、生産性の低下を招く。従って、銅線材の平均結晶粒径は、1μm以上が好ましく、伸線性や圧延性と押出時の加工性とを考慮すると、3μm以上、更に6μm以上が好ましい。なお、押出条件によっては、伸線加工を施した銅伸線材や圧延加工を施した銅異形線材よりも微細な組織を有する銅線材とすることができる。
【0044】
コンフォーム押出が施された実施形態の銅線材では、銅線材をその軸方向に平行な平面で切断した断面、いわゆる縦断面でも、銅線材をその軸方向に直交する平面で切断した断面、いわゆる横断面でも、粒状の組織を確認できる。従って、上記平均結晶粒径は、縦断面又は横断面によって観察した観察像を用いて測定する。測定方法の詳細は後述する。
【0045】
(形状)
実施形態の銅線材は、コンフォーム押出によって成形可能な種々の外形(断面形状)を有することができる。例えば、断面が円形状の丸線では、押出時の加工性に優れて、表面性状や形状精度、寸法精度に優れる銅線材となり易い。その他、断面が矩形状の銅線材、特に長方形などのアスペクト比(長径と短径との比、長径/短径)が10以下の矩形状の銅線材や、正方形などのアスペクト比が1に近い矩形状の銅線材、断面が多角形状、楕円状などの異形の銅線材とすることができる。
【0046】
(大きさ)
実施形態の銅線材は、種々の大きさを取り得る。例えば、実施形態の銅線材の一例として、断面積が8mm以上100mm以下程度であるものが挙げられる。実施形態の銅線材が丸線の場合には、例えば、線径(直径)が3mm以上13mm以下程度であるものが挙げられる。実施形態の銅線材が矩形状である場合には、例えば、厚さ1mm以上8mm以下程度、幅5mm以上35mm以下程度であるものが挙げられる。ここで、実施形態の銅線材は、後述のように伸びが高く加工性に優れるため、例えば、伸線加工を施すことなく圧延加工を施して平角線などの異形線材を製造可能である。そのため、上記の範囲の断面積を有する実施形態の銅線材を利用することで、断面積が大きな平角線などの異形線材を製造することができる。また、実施形態の銅線材は、断面積が100mm以下、更に90mm以下といった大きさでも軟化処理といった熱処理を別途施すことなく、後述するように高い伸びを有する形態とすることができる。
【0047】
(機械的特性)
実施形態の銅線材は、上述のように表面性状に優れる上に、微細な加工組織によって構成されることで、機械的特性にも優れる。具体的には、実施形態の銅線材は、強度が高く、伸びにも優れる。具体的には、実施形態の銅線材の一例として、室温における引張強さが200MPa以上を満たす形態が挙げられる。実施形態の銅線材の別の一例として、室温における破断伸びが30%以上を満たす形態が挙げられる。押出条件などによって、室温における引張強さが220MPa以上、更に240MPa以上を満たす形態や、室温における破断伸びが40%以上、45%以上、更に47%以上を満たす形態とすることができる。また、実施形態の銅線材は、室温における0.2%耐力も高く、一例として、100MPa以上を満たす形態が挙げられる。このような機械的特性に優れる銅線材を素材にすることで、機械的特性に優れる銅伸線材や銅異形線材、導体が得られる。また、このように高い伸びや強度を有する実施形態の銅線材をコンフォーム押出後に軟化処理といった熱処理を別途施すことなく製造できる点で、実施形態の銅線材は、生産性に優れる。
【0048】
(導電率)
実施形態の銅線材は、特に無酸素銅で構成される場合、高い導電率を有する。実施形態の銅線材の一例として、室温における導電率が98%IACS以上、更に99%IACS以上を満たす形態が挙げられる。
【0049】
[銅伸線材・銅異形線材]
(組織)
実施形態の銅伸線材、銅伸線材に更に圧延加工などを施した銅異形線材(例えば、実施形態の銅平角線)、実施形態の銅線材に圧延加工などを直接施した銅異形線材(以下、これらの銅異形線材をまとめて実施形態の銅異形線材等と呼ぶことがある)は、実施形態の銅線材や実施形態の銅伸線材を素材とすることで、銅線材と同等程度の微細な結晶組織によって構成される。また、伸線加工や圧延加工などの塑性加工が施されることで、実施形態の銅伸線材や実施形態の銅異形線材等は、内部領域に比較して、表面側領域がより微細な結晶組織から構成される。伸線条件や圧延加工などの加工条件によっては、銅線材よりも更に微細な結晶組織から構成される銅伸線材や銅異形線材とすることができる。
【0050】
(形状)
実施形態の銅伸線材は、代表的には横断面が円形状の丸線が挙げられる。伸線ダイスの形状を適宜選択することで、横断面が矩形状、多角形状、楕円状などの異形の伸線材とすることができる。圧延加工などが施された実施形態の銅異形線材等は、代表的には横断面が矩形状の角線が挙げられる。特に、厚さよりも幅が広い平角線が挙げられる。
【0051】
(大きさ)
実施形態の銅伸線材及び実施形態の銅異形線材等の断面の大きさ(丸線の場合には直径、平角線の場合には厚さ及び幅)は、適宜選択することができる。例えば、銅伸線材が丸線の場合、直径0.5mm以上12mm以下程度が挙げられる。銅異形線材が平角線(実施形態の銅平角線)の場合には、厚さ0.5mm以上5mm以下程度、幅1mm以上20mm以下程度が挙げられる。上述の圧延条件を調整することで、銅伸線材の断面積と平角線などの銅異形線材の断面積とを実質的に変更することなく、横断面形状(外形)のみを変形可能である。
【0052】
(機械的特性・導電率)
実施形態の銅伸線材や実施形態の銅異形線材等(例えば、実施形態の銅平角線)は、上述の銅線材に伸線加工や圧延加工といった塑性加工が施されることで、加工硬化によって強度が高められる傾向にある。従って、実施形態の銅伸線材や実施形態の銅異形線材等の代表的な形態として、室温における引張強さが上述の銅線材よりも高い形態が挙げられる。一方、上述の塑性加工に基づく加工歪みによって導電率や伸びが低くなる傾向にある。従って、実施形態の銅伸線材や実施形態の銅異形線材等の代表的な形態として、室温における導電率及び破断伸びの少なくとも一方が上述の銅線材よりも低い形態が挙げられる。
【0053】
[被覆銅線]
(導体)
実施形態の被覆銅線に具える導体は、代表的には、上述の実施形態の銅伸線材や実施形態の銅異形線材等(例えば、実施形態の銅平角線)に、加工歪みの除去などを目的とした熱処理を施したものが挙げられる。熱処理によって、若干、結晶粒が成長するものの、熱処理前の線材の結晶粒が上述のように微細であるため、熱処理後も微細な結晶組織から構成される。
【0054】
上記導体は、上述の実施形態の銅伸線材や実施形態の銅異形線材等の形状及び大きさを実質的に維持する。従って、導体を構成する線材は、代表的には、丸線や平角線が挙げられる。丸線の直径や平角線の厚さ及び幅は、上述の範囲が挙げられる。
【0055】
上記導体は、上述の熱処理によって、熱処理前の銅伸線材や銅異形線材よりも引張強さが低くなり、導電率や伸びが高くなる傾向にある。従って、実施形態の被覆銅線に具える導体の代表的な形態として、室温における引張強さが上述の銅伸線材又は上述の銅異形線材よりも低く、室温における導電率及び破断伸びの少なくとも一方が上述の銅伸線材又は上述の銅異形線材よりも高い形態が挙げられる。
【0056】
(絶縁被覆)
絶縁被覆の材質は、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリウレタン、ポリエステルなどの電気絶縁性に優れる樹脂が挙げられる。絶縁被覆の厚さは、所望の耐電圧特性に応じて選択するとよい。例えば、絶縁被覆の厚さは、0.01mm(10μm)以上0.5mm(500μm)以下程度が挙げられる。
【0057】
[銅線材の製造方法]
(準備工程)
上述の銅線材の製造にあたり、まず、上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材を用意する。上引き鋳造法による連続鋳造には、市販又は公知の上引き鋳造機を利用できる。アップキャスト材の素材には、上述のように純銅(特に無酸素銅)が挙げられる。無酸素銅から構成された市販のアップキャスト材を利用してもよい。
【0058】
アップキャスト材の形状、大きさ(線径(直径)、断面積、長さなど)は適宜選択することができる。アップキャスト材の形状は、断面円形状の丸線が代表的である。また、アップキャスト材の断面積は、例えば、50mm以上140mm以下程度(丸線の場合には、線径(直径)換算で7.5mm以上13.5mm以下程度)が挙げられる。このような大きさのアップキャスト材を用意することで、コンフォーム押出後に、断面積が8mm以上100mm以下程度の銅線材(実施形態の銅線材の一例)を良好に製造することができる。
【0059】
(押出工程)
実施形態の銅線材の製造方法などでは、上記アップキャスト材にコンフォーム押出を施して、伸線工程に供する素材(銅線材)を製造することを特徴の一つとする。コンフォーム押出による押出には、市販のコンフォーム押出装置を利用できる。以下、図3を参照してコンフォーム押出装置及び押出原理を説明する。
【0060】
コンフォーム押出装置200は、回転可能に支持された円筒状のホイール210と、ホイール210の周方向に設けられて、素材となる線材(ここではアップキャスト材100)が配置される溝212と、溝212の開口部の一部を覆って蓋として機能するシュー220と、溝212に取り付けられて上記素材を堰き止めるアバットメント232と、堰き止められた材料を押し出すダイス234と、ダイス234を収納するダイチャンバ230とを具える。
【0061】
回転するホイール210の溝212に、素材であるアップキャスト材100を挿入すると、ホイール210と素材との間の摩擦力によって素材が順次引き込まれる。引き込まれた素材がアバットメント232によって堰き止められ、かつ、溝212がシュー220によって閉塞されることによって、押出圧力が発生する。この押出圧力によって、ダイチャンバ230の材料溜まり箇所(アバットメント232とダイス234に囲まれた箇所)に素材が流れ込み、ダイス234によって、この素材を所望の形状に成形して押し出して、押出材(ここでは銅線材110)が製造できる。押出時、ダイス234近傍から屑(バリ)300が生じ得る。
【0062】
なお、押出時、素材は、摩擦熱や変形熱により発熱する。従って、別途、加熱手段を使用しなくても、高温状態(例えば、200℃以上)とすることができる。高温状態となることで、素材の塑性加工性(押出性)を高められる。冷却手段や加熱手段を別途用意して、ダイチャンバ230(ダイス234)の温度を調整することで、所望の押出状態とすることができる。得られた押出材(銅線材110)は、上述の熱によって、再結晶組織となっている。
【0063】
コンフォーム押出では、コンフォーム押出前後における大きさを実質的に変化させないこともできるし、変化させることもできる(押出前の素材に対して、押出材の方が大きいものも押出材の方が小さいものも押出できる)。所望の大きさの銅線材110が得られるようにダイス234の大きさを選択するとよい。
【0064】
[銅伸線材の製造方法、銅異形線材の製造方法]
(伸線工程)
上述の銅線材(押出材)に伸線加工を施して、銅伸線材を製造する伸線工程を具える製造方法によって、表面性状に優れ、微細な結晶組織から構成される銅伸線材(代表的には実施形態の銅伸線材)を製造することができる。伸線加工には、代表的には、伸線ダイスを用いる。
【0065】
伸線加工度(総加工度や1パスあたりの加工度)は、所望の大きさの銅伸線材が得られるように適宜選択するとよい。複数パスの伸線加工を行う場合には、中間熱処理を適宜施すと、伸線性の向上を図ることができる。中間熱処理条件は、公知の条件が利用できる。
【0066】
(皮剥ぎ工程)
伸線加工前の銅線材(押出材)や、最終線径までの伸線加工途中にある中間伸線材(少なくとも1パスの伸線加工が施された線材)に皮剥ぎを施すことができる。こうすることで、表面性状により優れる銅伸線材を製造できる。また、このような銅伸線材を用いることで、表面性状により優れる銅異形線材や、膨れなどが生じ難い被覆銅線を製造できる。上述の銅線材(押出材)に伸線加工を施さずに圧延加工を直接施す場合には、圧延途中に行ってもよいが、上述のように加工性に優れることから圧延加工前の銅線材(押出材)に皮剥ぎを施すことが好ましい。
【0067】
本発明者らが検討した結果、上述のようにアップキャスト材に直接皮剥ぎを施しても、伸線材や銅異形線材の表面性状を大幅に改善することが難しかった。しかし、アップキャスト材にコンフォーム押出を施した素材(押出直後でなくてもよい)に少なくとも1回の皮剥ぎを施すことで、後述する試験例に示すように、被覆の膨れが生じ難い、又は実質的に生じない被覆銅線が得られるとの知見を得た。この理由は、以下のように考えられる。押出材や中間伸線材の表面には経時的に酸化膜が形成されることがある。上記酸化膜や、伸線加工などの加工によって酸化膜が破砕されて生じた破片は、素材表面に付着していたり、素材表面から内部(表面から極薄い領域)に押し込まれていたりする恐れがある。また、コンフォーム押出材の表面にブリスター(気泡)が存在する恐れがある。これら酸化膜や上記破片、その他ブリスターなどの欠陥が、後段の伸線や圧延などの加工時にキズや割れの発生要因になり得ると考えられる。また、キズなどを有する伸線材や圧延線材などに被覆を形成することで、上述のようにキズ部分が空気溜まりになって膨れが生じ得ると考えられる。しかし、皮剥ぎを施して、上記酸化膜や破片、その他の欠陥などが存在し得る領域(素材の大きさなどにもよるが、例えば、表面から数十μm程度までの領域)を除去することで、コンフォーム押出後に存在し得る上記酸化膜や上記破片、その他の欠陥も良好に除去できる。従って、表面性状により優れる線材を製造できると考えられる。
【0068】
皮剥ぎは、1回だけ、又は複数回施すことができる。皮剥ぎを1回のみとする場合、歩留まりを低減し易い。また、皮剥ぎを1回のみ行う場合、伸線途中に皮剥ぎを行うことが好ましい。少なくとも1パスの伸線加工が施された伸線材は、伸線前の押出材に比較して真円度が高くなっている。そのため、伸線途中に皮剥ぎを行う形態では、素材の全周に亘って均一的な厚さの皮剥ぎを行える。また、コンフォーム押出直後の素材は軟らか過ぎることがあり、この素材に皮剥ぎを行うと、局所的に深く皮剥ぎされる恐れがある。しかし、少なくとも1パス、好ましくは複数パスの伸線加工が施された伸線材は、素材表面の全体が加工硬化によって硬くなっている。そのため、伸線途中に皮剥ぎを行う形態は、素材が局所的に深く皮剥ぎされることを効果的に防止できる。更に、素材表面の高硬度化によって皮剥ぎ屑の分断性も向上できるため、この形態は、皮剥ぎ作業性に優れる。そして、これらの点から、伸線途中に皮剥ぎを行う形態は、素材の全周・全長に亘って均一的に欠陥が除去されて表面性状に優れる線材を製造可能であり、長尺な線材を量産する場合に好適に利用できる。皮剥ぎを複数回行う場合には、キズなどの欠陥を良好に除去できる。皮剥ぎを複数回行う場合、例えば、(1)押出材と中間伸線材とにそれぞれ1回ずつ皮剥ぎを施す、(2)押出材に1回の皮剥ぎを施すと共に中間伸線材に複数回の皮剥ぎを施す、(3)押出材に皮剥ぎを行わず中間伸線材に複数回の皮剥ぎを施す、ことができる。
【0069】
皮剥ぎ深さ(除去厚さ)は、素材の大きさ、欠陥の状態などに応じて選択することができる。例えば、素材が直径5mm以上15mm以下程度の線材である場合、皮剥ぎ厚さ(複数回行う場合は合計厚さ)は、20μm以上150μm以下程度が好ましく、40μm以上100μm以下がより好ましい。上記の範囲の大きさの線材に対して、皮剥ぎ厚さを20μm以上(好ましくは40μm以上)とすることで、表面欠陥を十分に除去でき、150μm以下(好ましくは100μm以下)とすることで、歩留まりの低下を抑制できる。なお、皮剥ぎ後の線材の直径は、(皮剥ぎ前の素材の直径−皮剥ぎ厚さ×2)である。皮剥ぎには、例えば、皮剥ぎダイスを用いる。
【0070】
(圧延工程)
上記銅線材又は銅伸線材(伸線材)に圧延加工を施して、形状を変更する圧延工程を具える製造方法によって、銅異形線材を製造することができる。例えば、圧延工程は、上記伸線材に圧延加工を施して銅平角線を製造する工程とすることができる。例えば、圧延工程は、上記銅線材に圧延加工を施して銅平角線を製造する工程とすることができる。圧延条件は、所望の厚さ、幅、断面積、外形などを有する銅異形線材が得られるように適宜選択するとよい。アップキャスト材にコンフォーム押出を施す過程を経ることで、加工性に優れる上記銅線材や上記伸線材を素材とするため、上記圧延工程では、上述のように断面積が大きい平角線などの銅異形線材を容易に加工できる。
【0071】
[被覆銅線の製造方法]
上記銅伸線材又は上記銅異形線材に熱処理を施して熱処理線材を形成する熱処理工程と、上記熱処理線材を導体とし、この導体の表面に絶縁被覆を形成する被覆工程とを具える製造方法によって、被覆銅線を製造することができる。
【0072】
上記熱処理は、伸線加工や圧延加工によって導入された歪みの除去を主目的とする。歪みの除去によって、上述のように導電率や伸びの向上を図ることができる。熱処理条件は、加熱温度が100℃以上550℃以下程度、保持時間が0.2秒以上10時間以下程度、が挙げられる。熱処理は、バッチ処理及び連続処理のいずれを利用してもよい。連続処理とすると、長尺な銅伸線材や銅異形線材に対して熱処理を連続的に行える上に、保持時間を短くできる。この熱処理を省略することもできる。
【0073】
上記絶縁被覆の形成は、例えば、公知のエナメル線の製造に利用されている公知の手法を利用できる。代表的には、導体の表面に絶縁被覆を構成する樹脂を塗布する工程と、塗布された導体を焼付炉に通して上記樹脂を乾燥・硬化させて焼付する工程とを、絶縁被覆が所定の厚さに達するまで1回又は複数回繰り返すことが挙げられる。
【0074】
[試験例1]
無酸素銅からなる線材を種々の条件で作製し、得られた線材の表面状態、組織、機械的特性を調べた。更に、この線材から導体を作製し、この導体を具える被覆銅線を作製して、被覆状態を調べた。
【0075】
原料として、純銅(Cu:99.95質量%以上、酸素:0.001質量%以下の無酸素銅)を用意して、溶湯を作製した。作製した溶湯を上引き鋳造法によって連続鋳造を行って、表1に示す線径(直径、mm)及び断面積(mm)を有する断面円形状のアップキャスト材を作製した。試料No.1−1〜No.1−7では、このアップキャスト材に更にコンフォーム押出を施して、断面円形状の銅線材(コンフォーム押出材)又は断面矩形状の銅線材(コンフォーム押出材)を作製した。押出条件を表1に示す。押出速度(m/min)は、ホイールの回転速度を調整することで変化させた。チャンバ温度は、ダイチャンバの近傍に温度調整機構(ここでは冷却手段)を配置し、冷却状態を異ならせることで変化させた。断面円形状の銅線材の線径(直径、mm)及び断面積(mm)、断面矩形状の銅線材の幅(mm)×厚さ(mm)及び断面積(mm)を表1に示す。試料No.1−1〜No.1−3、No.1−7は、断面円形状の銅線材である。試料No.1−4〜No.1−6は、断面矩形状の銅線材である。試料No.100は、コンフォーム押出を施していないアップキャスト材である。
【0076】
得られた試料No.1−1〜No.1−7の銅線材、及び試料No.100のアップキャスト材について、目視による表面観察、及び金属顕微鏡による内部観察を行った。図1(A)は、試料No.1−1の外観写真、図1(B),図1(C)は、試料No.1−1の縦断面の顕微鏡写真である。図2(A)は、試料No.100の外観写真、図2(B),図2(C)は、試料No.100の縦断面の顕微鏡写真である。図1(B),図2(B)はいずれも、表面近傍を示し(200倍)、図1(C)は内部(100倍)、図2(C)は内部(25倍)を示す。
【0077】
得られた試料No.1−1〜No.1−7の銅線材、及び試料No.100のアップキャスト材について、室温における引張強さ(MPa)・破断伸び(%)、縦断面における平均結晶粒径(μm)を調べた。その結果を表1に示す。
【0078】
引張強さ・破断伸び・0.2%耐力(後述)は、JIS Z 2201(1998)に準じて試験片を作製し、市販の引張試験機を用いて測定した。ここでは、標点距離GL=250mmとした。試料No.1−1〜No.1−3の銅線材、No.100のアップキャスト材については、GL=100mmとした場合の破断伸びも表1に示す。試料No.1−1〜No.1−3の銅線材、No.100のアップキャスト材については、0.2%耐力も表1に示す。また、ここでは試料ごとに3個の試験片を用意した。そして、上述の各項目をそれぞれ測定し、各項目における3個の試験片の平均値を表1に示す。
【0079】
平均結晶粒径は、以下のように測定した。各試料の縦断面をとり、縦断面の任意の位置について光学顕微鏡、又は走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察像に試験線を引き、試験線を分断する結晶粒の数を数えた。そして、(試験線の長さ/結晶粒の数)をその断面における平均結晶粒径とする。ここでは、試験線の長さを3mmとした。また、ここでは各試料について3個の断面をとり、各断面における平均結晶粒径を測定し、3個の断面の平均値を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
図1(A)に示すように、上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材に、コンフォーム押出を施して得られた銅線材は、図2(A)に示す鋳造のままのアップキャスト材(試料No.100)と比較して、表面性状に優れることが分かる。詳しくは、図2(A)に示すようにアップキャスト材(試料No.100)は、線材の周方向に沿った環状の鋳造キズや、引き上げ方向(図2(A)では左右方向)に沿って連続する筋状のキズ、その他の表面欠陥が多く見られる。また、試料No.100は、図2(B)に示すように深さ40μm以上といった深いキズが存在することが分かる。一方、図1(A)に示すようにコンフォーム押出材(試料No.1−1)は、表面にキズが実質的になく、平滑な表面を有することが分かる。また、試料No.1−1は、図1(B)に示すように深いキズが無いことが分かる。なお、試料No.1−2〜No.1−7は試料No.1−1と同様の結果であることを確認している。
【0082】
更に、アップキャスト材(試料No.100)は、図2(C)に示すように粗大で不均一な大きさの結晶粒から構成されていることが分かる。一方、図1(C)に示すように、コンフォーム押出材(試料No.1−1)は、アップキャスト材(試料No.100)と比較して、微細で、かつ均一的な大きさの結晶粒から構成されていることが分かる。これらの点は、表1に示す結果からも裏付けられる。また、表1に示す結果から、試料No.1−2〜No.1−7も同様に微細な結晶組織から構成されることが分かる。
【0083】
更に、表1に示すように、上述のコンフォーム押出材:試料No.1−1〜No.1−7はいずれも、引張強さがアップキャスト材:試料No.100よりも高く、破断伸びがアップキャスト材:試料No.100と同程度又は同等以上と高く、機械的特性に優れることも分かる。具体的には、試料No.1−1〜No.1−7はいずれも、引張強さが200MPa以上、破断伸びが30%以上である。上記試料No.1−1〜No.1−7のうちの多くの試料は、引張強さ及び破断伸びの双方がアップキャスト材:試料No.100よりも高く、機械的特性により優れること、具体的には、引張強さが220MPa以上、破断伸びが40%以上であることが分かる。
【0084】
その他、この試験から、(1)押出条件を調整することで、結晶粒径や機械的特性を変更できること、(2)同じ大きさのコンフォーム押出材を製造する際に押出速度を速くする場合には、チャンバ温度を高めることで塑性加工性(押出性)を高められることが分かる。但し、チャンバ温度を高めることで、素材がなまされて強度が低下し易く、結晶粒が成長することで伸びも低下し易いと考えられる。
【0085】
得られた試料No.1−1〜No.1−3の銅線材(線径8mm)に伸線加工を施して銅伸線材(線径3.6mmの丸線)を作製した後、銅伸線材に圧延加工を施して平角線(厚さ2mm×幅3mm)を作製した。上記平角線に熱処理(400℃×30秒)を施してから、絶縁被覆(ポリイミド、厚さ70μm)を形成して、上記平角線を導体とする被覆銅線を得た。試料No.100では、上述のアップキャスト材(線径12.5mm)に、伸線加工(線径3.6mmの丸線)→圧延加工→熱処理→被覆形成を行って、被覆銅線を得た。伸線加工には、伸線ダイスを用いた。
【0086】
作製した各被覆銅線について、市販の探傷装置を用いて、被覆の膨れの発生状態を調べた。その結果を表1に示す。ここでは、被覆形成設備に併設して市販の探傷装置を配置し、長尺な線材(ここでは被覆銅線)を走行させることで、被覆の形成に連続して、傷(膨れ)の発生数をカウントできるようにした(インライン方式を利用した)。
【0087】
上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材にコンフォーム押出を施して得られた銅線材(試料No.1−1〜No.1−3)に伸線加工を施した場合、伸線時、割れや破断が生じ難かった。また、得られた銅伸線材に圧延加工を施した場合、圧延時、割れや破断が生じ難い上に、形状精度や寸法精度に優れる異形線材(ここでは平角線)を得ることができた。更に、この異形線材に絶縁被覆を形成した被覆銅線(試料No.1−1〜No.1−3)は、表1に示すように、被覆の膨れが生じ難く、発生率が非常に低いことが分かる。この理由は、表面性状に優れ、かつ微細な結晶組織から構成された銅線材を素材にしたことで、伸線や圧延を経た後も表面性状に優れており、表面欠陥に基づく空気溜まりが表面に形成され難かったためと考えられる。なお、試料No.1−4〜No.1−7の銅線材に圧延加工を直接施して銅平角線を作製し(例えば、試料No.1−7の銅線材を用いた銅平角線は、厚さ2mm×幅3mm)、試料No.1−1などと同様にして被覆銅線を作製した。その結果、試料No.1−1などと同様に被覆の膨れが生じ難く、発生率が非常に低いことを確認している。また、圧延時、割れや破断が生じ難かった。
【0088】
上記試験から、上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材にコンフォーム押出を施すことで、表面性状に優れる銅線材が得られることが確認された。また、この銅線材は、微細な結晶組織から構成されており、伸線加工、圧延加工などの塑性加工を順次施した場合や圧延加工を直接施した場合にも割れなどが生じ難いことが確認された。更に、この銅線材は、上記伸線後や圧延後に絶縁被覆を形成する場合にも不良が生じ難いことが確認された。
【0089】
[試験例2]
試験例1で作製した試料No.1−1の銅線材(コンフォーム押出材)と、試料No.100のアップキャスト材とを用意し、伸線途中に皮剥ぎを実施した以外の点は、試験例1と同様にして被覆銅線を作製し、被覆の膨れの発生状態を試験例1と同様にして調べた。
【0090】
試料No.1−1のコンフォーム押出材(線径8mm)に伸線加工を施し(伸線ダイスを使用)、線径6.3mmの中間伸線材を作製した。この中間伸線材に1回の皮剥ぎを施し(皮剥ぎダイスを使用)、線径6.1mmの皮剥ぎ材を作製した。この皮剥ぎ材に更に伸線加工を施し(伸線ダイスを使用)、線径3.6mmの丸線を作製した。この丸線に、試験例1と同様に、圧延加工→熱処理→被覆形成を順に施して、厚さ2mm×幅3mmの銅平角線を具える被覆銅線を得た。この被覆銅線を試料No.2−1とする。
【0091】
試料No.100のアップキャスト材についても、試料No.2−1と同様に、線径6.3mmまで伸線した後、線径6.1mmまで皮剥ぎし、更に線径3.6mmまで伸線を施して、線径3.6mmの丸線を作製した。この丸線を用いて、試料No.2−1と同様にして、厚さ2mm×幅3mmの銅平角線を具える被覆銅線を得た。この被覆銅線を試料No.200とする。
【0092】
試料No.2−1の膨れ発生率は、0.07個/km、試料No.200の膨れ発生率は、1.5個/kmであった。いずれの試料も皮剥ぎを行っていない場合(試料No.2−1に対しては試料No.1−1、試料No.200に対してはNo.100)と比較して、膨れが生じ難くなっていることが分かる。特に、この試験からは、アップキャスト材にコンフォーム押出を施したものを素材とし、この素材に少なくとも1回の皮剥ぎを行うことで、被覆銅線の導体に用いた場合に膨れが実質的に生じない銅平角線が得られることが分かる。また、膨れが実質的に生じないことから、この銅平角線は、表面にキズや割れなどが無く、表面性状に非常に優れるといえる。
【0093】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能であり、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、アップキャスト材・銅線材・銅伸線材の形状・線径・組成、銅線材の組織(結晶粒径など)、被覆銅線の導体の形状・大きさ、絶縁被覆の材質・厚さ、皮剥ぎ深さ、皮剥ぎ回数、皮剥ぎ対象などを変化させることができる。
【0094】
[付記]
上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材にコンフォーム押出を施して製造された実施形態の銅線材を素材に用いて得られる銅平角線として、例えば、以下の銅平角線が挙げられる。
(形態1)
前記実施形態の銅線材に圧延加工を施して製造された銅平角線。
【0095】
また、上記形態1の銅平角線が得られる製造方法として、例えば、以下の銅平角線の製造方法が挙げられる。
(形態2)
上引き鋳造法によって得られたアップキャスト材を用意する準備工程と、
前記アップキャスト材にコンフォーム押出を施して押出材を製造する押出工程と、
前記押出材に圧延加工を施して銅平角線を製造する圧延工程とを具える銅平角線の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の被覆銅線は、自動車、各種の家庭用電気機器、時計などに利用されるコイルの巻線などに好適に利用できる。本発明の銅伸線材、本発明の銅平角線及び本発明の銅線材は、上記被覆銅線の導体の素材に好適に利用できる。本発明の銅線材の製造方法は、銅線材(例えば、上記本発明の銅線材)の製造に好適に利用できる。本発明の銅伸線材の製造方法は、銅伸線材(例えば、上記本発明の銅伸線材)の製造に好適に利用できる。本発明の銅平角線の製造方法は、銅平角材(例えば、上記本発明の銅平角線)の製造に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0097】
100 アップキャスト材 110 銅線材
200 コンフォーム押出装置 210 ホイール 212 溝 220 シュー
230 ダイチャンバ 232 アバットメント 234 ダイス
300 屑(バリ)
図1
図2
図3