(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機などの回転機械は、一般に、回転軸などの回転体と、その周囲のケーシングなどの静止体との間に隙間がある。そのため、回転体と静止体との隙間には、作動流体が流入することを抑制するシール装置が設けられている場合が多い。遠心圧縮機の場合、シール装置は、インペラの入口の口金部、多段インペラの各段間、および、多段インペラの最終段に設けられたバランスピストン部などに設けられている。そして、このような各種シールには、例えば、ダンパーシールやラビリンスシール等が用いられている。
【0003】
ラビリンスシールは、回転する回転軸と間隙を有して対向する環状の静止側部材から、回転軸に向かって突出する突出部を複数配設したものである。このラビリンスシールでは、突出部の先端近傍を流れる流体に圧力損失を生じさせることにより流体の漏れを低減することができる。また、ダンパーシールは、ハニカムシール、ホールパターンシール等が知られており、例えばホールパターンシールでは、回転軸と間隙を有して配される環状の静止側部材において、回転軸に対向する対向面に複数の穴部が形成され、この穴部で生じる圧力損失により流体の漏れを低減可能である。
ダンパーシールはラビリンスシールと比較して減衰効果が大きく、回転軸の振動の安定化の点で優位である一方、ラビリンスシールはダンパーシールと比較して流体の漏れ量をより低減できる。
【0004】
特許文献1では、回転軸の軸線方向における回転機械の高圧側にダンパーシールを配置し、低圧側に回転軸の外周面と対向する面が滑らかな面で形成された環状シールを配置するシール装置が開示されている。このようなシール装置とすることで、ダンパーシールによって減衰付与機能を効果的に発揮しつつ、環状シールの長さを長くすることでシールと回転軸との間の流体の剛性効果により固有振動数の低下を抑制して、回転軸の安定性を向上させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したようなシール装置は、回転機械内で圧縮される流体の一部がシール装置との回転軸の間の隙間に旋回しながら流入する。
しかしながら、上述したようなシール装置では、この旋回流により生じる影響を十分に低減させることが難しい。即ち、流体がシール装置と回転軸との隙間に旋回しながら流入する事により、不安定化力が増加して回転軸の不安定振動を増大させたり、シールからの漏れ量が増加したりしてしまうことを低減させることが難しい。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、漏れ流れの影響を低減することが可能なシール装置、及びこれを備えた回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様におけるシール装置は、回転軸の外周面上で、前記回転軸の軸線に沿う方向の流体の流れを封止するシール装置であって、前記回転軸の前記外周面を覆って配置される内周面に前記回転軸の前記外周面に対向するように開口する複数の孔が形成された環状の本体部を備え、複数の前記孔の少なくとも一部は、前記孔の中心軸の方向が前記孔の開口から底部に向かうにしたがって、前記回転軸の回転方向前方側、及び前記回転軸の軸線方向に沿って流体の流れの下流側、の少なくとも一方側に向けて傾斜し
、複数の前記孔は、前記内周面において、該内周面の周方向に並んで配置され、前記内周面の水平方向の位置から周方向に90度異なる鉛直方向の位置に向かうにしたがって、前記孔の中心軸の前記回転軸の回転方向前方側に向けて傾斜する角度が次第に大きく形成される。
【0009】
このようなシール装置によれば、孔から隙間に流出する流体に、本体部の内周面と回転軸との隙間を流れる流体の流れに対向する成分を持たせて衝突させることができ、隙間を流れる流体の流れの勢いを低減することができる。したがって、回転軸の外周面の周りの旋回流れによる不安定化力を低減し、回転軸の不安定振動を軽減することができる。さらに、回転軸の外周面と本体部の内周面との間の隙間を通って下流側に向かって流出する流体の漏れ量を低減することができる。即ち、回転軸の外周面と本体部の内周面との間の隙間の漏れ流れの影響を低減することができる。
【0011】
このようなシール装置によれば、本体部の内周面の一側の位置における旋回流速を周方向に90度異なる他側の位置における旋回流速に比べてより低減することができる。したがって、旋回流速がシールの周方向で異方性を持ち、旋回流速の影響を受ける内周面と回転軸との間の流体による剛性効果、減衰効果も周方向の直交2方向で異方性を持つ。このシール特性の異方性は、軸の不安定振動時の軸回りの真円振れ回りを弱める働きをするため、回転軸の不安定振動を低減することができる。
【0012】
また、本発明の一態様における回転機械は、前記シール装置を備える。
【0013】
このような回転機械によれば、回転軸の不安定振動の抑制効果が高く、かつ漏れ流量低減により回転機械として効率を高めて、性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシール装置によれば、本体部に傾斜させて複数の孔を形成することで、漏れ流れの影響を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《第一実施形態》
以下、本発明に係る第一実施形態のシール装置5を備えた回転機械1について
図1から
図5を参照して説明する。
本実施形態における回転機械1は、複数のインペラ4を備えた多段式遠心圧縮機である。
【0017】
回転機械1は、軸線Pを中心とした回転軸2と、回転軸2を軸線P回りに回転可能に支持する軸受3と、回転軸2に取り付けられて遠心力を利用してプロセスガスG(流体)を圧縮するインペラ4と、インペラ4同士の間に配されて回転軸2の外周面2aに沿って設けられたシール装置5と、これらを外周側から覆うケーシング6とを備えている。
【0018】
回転軸2は、柱状をなして軸線Pの方向に延在し、軸線Pの方向の両端で軸受3によって回転可能に支持されている。
軸受3は、回転軸2の両端部に一つずつ設けられ、回転軸2を回転可能に支持している。これらの軸受3は、それぞれケーシング6に取り付けられている。
【0019】
インペラ4は、回転による遠心力を利用してプロセスガスG(流体)を圧縮する。インペラ4は、ディスク4aと、ブレード4cと、カバー4bとを備えた、いわゆるクローズ型のインペラ4である。
ディスク4aは、それぞれ回転軸2における軸線P方向の中央位置Cに向かって、軸線Pの径方向外側に漸次拡径する円盤状に形成されている。
ブレード4cは、ディスク4aから軸線P方向における中央位置Cとは反対側の端部側に突出するように形成されている。ブレード4cは、軸線Pの周方向に所定間隔をあけて複数形成されている。
カバー4bは、軸線P方向における端部側から複数のブレード4cを覆う。カバー4bは、ディスク4aに対向する円盤状に形成されている。
【0020】
インペラ4は、軸線P方向両側に配された各軸受3の間の回転軸2に複数取り付けられている。これらインペラ4は、軸線P方向においてブレード4cの向きが互いに反対側を向く二組の三段式インペラ群4A、4Bを構成している。これら三段式インペラ群4A、三段式インペラ群4Bにおいては、それぞれ軸線P方向の中央位置C側のプロセスガスGの圧力が最も高くなる。つまり、プロセスガスGは、三段式インペラ群4A、三段式インペラ群4B各々を軸線Pの方向の中央位置Cに向かって段階的に圧縮されながら流れる。
【0021】
ケーシング6は、軸受3を支持するとともに回転軸2、インペラ4、シール装置5をそれぞれ外周側から覆う。ケーシング6は、筒状に形成されている。
【0022】
ケーシング6は、軸線P方向の一方側(
図1中、紙面左側)に、吸込口6bAを備えている。吸込口6bAは、環状に形成された吸込流路6cAに接続されている。吸込流路6cAは、三段式インペラ群4Aの最も一方側に配されるインペラ4の流路と接続されている。つまり、吸込口6bAから流入するプロセスガスGは、吸込流路6cAを介して三段式インペラ群4Aへと導入される。
【0023】
ケーシング6は、各インペラ4のブレード4c間に形成された流路同士を接続するケーシング流路6aA、6aBを備えている。
【0024】
ケーシング6は、軸線P方向の中央位置C側に、排出口6eAを備えている。この排出口6eAは、環状に形成された排出流路6dAに接続されている。排出流路6dAは、三段式インペラ群4Aの最も他方側(
図1中、紙面右側)に配されるインペラ4の流路に接続されている。つまり、三段式インペラ群4Aの最も他方側に配されるインペラ4で圧縮されたプロセスガスGは、排出流路6dAを介して排出口6eAからケーシング6の外部に排出される。
【0025】
ケーシング6は、中央位置Cを境にして、軸線P方向の一方側と他方側とが対称に形成されている。ケーシング6の他方側には、ケーシング流路6aB、吸込口6bB、吸込流路6cB、排出流路6dB、排出口6eBが形成されている。このケーシング6の他方側に配された三段式インペラ群4Bは、一方側の三段式インペラ群4Aで圧縮したプロセスガスGを更に圧縮する。
【0026】
つまり、ケーシング6の他方側においては、排出口6eAから排出されたプロセスガスGが吸込口6bBに送り込まれる。その後、吸込口6bBから流入したプロセスガスGは、吸込流路6cBを介して三段式インペラ群4Bに供給されて段階的に圧縮される。
三段式インペラ群4Bによって圧縮されたプロセスガスGは、排出流路6dBを介して排出口6eBからケーシング6の外部に排出される。
【0027】
上述したように三段式インペラ群4Aにおいて圧縮されたプロセスガスGは、三段式インペラ群4Bに導入されて更なる圧縮が行われて中央位置C付近に到達する。そのため、三段式インペラ群4Aと三段式インペラ群4Bとの間には圧力差が生じている。具体的には、三段式インペラ群4Bの方が三段式インペラ群4Aよりも高い圧力となっている。さらに、中央位置C付近においては、回転軸2の外周面2aとケーシング6の内周面との間に、隙間Sが形成されている。そのため、プロセスガスGは、隙間Sを通じて三段式インペラ群4Bが配置されている軸線P方向の他方側を上流側として、三段式インペラ群4Aが配置されている軸線P方向の一方側の下流側に向かって流れようとしてしまう。
そこで、この実施形態におけるシール装置5は、上流側である三段式インペラ群4Bから下流側である三段式インペラ群4AへのプロセスガスGの流れを抑制するために、中央位置C付近に設けられている。
【0028】
シール装置5は、回転軸2の外周側に設けられて、三段式インペラ群4Aと三段式インペラ群4Bとの間でのプロセスガスGの流通を封止する。シール装置5は、回転軸2の外周面2aを覆って配置される
図2に示す本体部5aを有している。
【0029】
本体部5aは、
図3及び
図4に示すように、回転軸2の外周面2aとの間に回転軸2を回転させるための所定の隙間Sを有して対向配置される環状部材である。本体部5aは、回転軸2の外周面2aと対向する面である内周面5cに、回転軸2の外周面2aに対向するように開口する複数の孔が形成されている。本実施形態の本体部5aは、内周面5cから径方向外側に向かって凹む円形状の孔である第一傾斜孔5b(孔)が複数形成されている。即ち、本実施形態の本体部5aは、複数の第一傾斜孔5bが、本体部5aの内周面5cに対して周方向及び軸線P方向に互いに隣接して配置されたホールパターンシールである。
【0030】
第一傾斜孔5bは、中心軸O1と直交する断面形状が円形状をなすように本体部5aの内周面5cから窪んで形成されている。第一傾斜孔5bは、第一傾斜孔5bの中心軸O1の方向が第一傾斜孔5bの開口から底部に向かうにしたがって、回転軸2の回転方向Rの前方側に向けて傾斜している。本実施形態でいる回転軸2の回転方向Rとは、
図3における紙面上時計回りの方向である。具体的には、
図5に示すように、第一傾斜孔5bは、その中心軸O1と、第一傾斜孔5bを形成する前の本体部5aの内周面5cとの交点を通過して回転軸2と直交する直交軸Oaに対して中心軸O1の角度が回転軸2の周方向に向かって所定の角度αとなるように傾斜して形成されている。本実施形態では、所定の角度αが10度から40度となるように形成されていることが好ましい。これは、第一傾斜孔5bを傾斜させる角度αを大きくすればするほど、本体部5aの内周面5cにおける開口が大きくなることで、配置可能な第一傾斜孔5bの数が低減してしまう点と、傾斜させるほどドリル加工等による加工が困難になる点を考慮したものである。
【0031】
次に、上記構成のシール装置5の作用について説明する。
上記のような回転機械1では、流体であるプロセスガスGを圧縮することで、回転軸2の外周面2aと本体部5aの内周面5cとの間の隙間SにもプロセスガスGの一部が流入し、回転軸2の外周面2aの周りにらせん状をなして軸線P方向に向かう漏れ流れが生じる。この漏れ流れは、回転軸2の回転方向Rに向かう周方向の分である漏れ旋回流れと、回転軸2の軸線P方向に向かう成分である漏れ軸線方向流れとによって構成されている。そして、本実施形態の回転機械1では、この漏れ流れを生じさせているプロセスガスGが本体部5aに形成された複数の第一傾斜孔5bの内部に流入することで、回転軸2の軸線P方向に沿って上流側から下流側に向かってプロセスガスGが流出してしまうことが抑制されている。
【0032】
上記のようなシール装置5によれば、本体部5aに形成される第一傾斜孔5bの中心軸O1が直交軸Oaに対して所定の角度αとなるように回転軸2の回転方向Rの前方側に向けて傾いて形成されていることで、本体部5aの内周面5cにおける第一傾斜孔5bの開口の大きさが、中心軸O1が傾斜せずに直交軸Oaと一致している場合の孔の開口に比べて大きくなる。そのため、より多くのプロセスガスGが第一傾斜孔5b内に流入することができる。したがって、回転軸2の外周面2aと本体部5aの内周面5cとの間の隙間Sを通って下流側である軸線P方向の他方側に向かって流出するプロセスガスGの漏れ量を低減することができる。
【0033】
また、第一傾斜孔5bが回転軸2の回転方向Rの前方側に向けて傾いて形成されていることで、第一傾斜孔5bに流入したプロセスガスGが第一傾斜孔5bの底部に衝突して再び第一傾斜孔5bの開口から隙間Sに流出する際に、
図5に示すように、回転軸2の外周面2aに直交する軸線Pに向かう成分X1と、漏れ旋回流れに対向する回転軸2の回転方向Rに対して逆向きの成分X2とを有した状態で隙間Sに向かって流出させることができる。そのため、隙間Sを流れるプロセスガスGの漏れ旋回流れに対して漏れ旋回流れに対向する成分を有する流れを衝突させることができ、漏れ旋回流速を低減することができる。したがって、回転軸2の外周面2aの周りの隙間Sの漏れ旋回流れによる不安定化力を低減し、回転軸2の不安定振動を軽減することができる。即ち、回転軸2の外周面2aと本体部5aの内周面5cとの間の隙間Sの漏れ流れの影響を低減することができる。
【0034】
さらに、このようなシール装置5を用いた回転機械1によれば、回転軸2の不安定振動を抑制することができ、かつ漏れ低減により回転機械1として効率を高めて、性能を向上させることができる。
【0035】
《第二実施形態》
次に、
図6から
図8を参照して第二実施形態のシール装置51について説明する。
第二実施形態においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第二実施形態のシール装置51は、孔が傾斜する方向について、第一実施形態と相違する。
【0036】
即ち、第二実施形態のシール装置51は、本体部51aに軸線P方向に傾斜する第二傾斜孔51b(孔)が形成されている。
【0037】
第二傾斜孔51bは、第一実施形態の第一傾斜孔5bと同様に、中心軸O2と直交する断面形状が円形状をなすように本体部51aの内周面51cから窪んで形成されている。第二傾斜孔51bは、
図6及び
図7に示すように、第二傾斜孔51bの中心軸O2の方向が第二傾斜孔51bの開口から底部に向かうにしたがって、回転軸2の軸線P方向に沿って隙間Sを流れるプロセスガスGの流れの下流側である軸線P方向の一方側に向けて傾斜している。具体的には、
図8に示すように、第二傾斜孔51bは、直交軸Oaに対する中心軸O2の角度が回転軸2の軸線P方向に向かって所定の角度αとなるように傾斜して形成されている。本実施形態では、所定の角度αが10度から40度となるように形成されていることが好ましい。
【0038】
上記のようなシール装置51によれば、本体部51aに形成される第二傾斜孔51bの中心軸O2が直交軸Oaに対して所定の角度αとなるように回転軸2の軸線P方向に沿ってプロセスガスGの流れの下流側に向けて傾いて形成されていることで、本体部51aの内周面51cにおける第二傾斜孔51bの開口の大きさが、中心軸O2が傾斜せずに直交軸Oaと一致している場合の孔の開口に比べて大きくなる。そのため、より多くのプロセスガスGが第二傾斜孔51b内に流入することができる。したがって、回転軸2の外周面2aと本体部51aの内周面51cとの間の隙間Sを通って下流側である軸線P方向の他方側に向かって流出するプロセスガスGの漏れ量を低減することができる。
【0039】
また、第二傾斜孔51bが回転軸2の軸線P方向に沿ってプロセスガスGの流れの下流側に向けて傾いて形成されていることで、第二傾斜孔51bに流入したプロセスガスGが第二傾斜孔51bの底部に衝突して再び第二傾斜孔51bの開口から隙間Sに流出する際に、
図8に示すように、回転軸2の外周面2aに直交する軸線Pに向かう成分X1と、漏れ軸線方向流れに対向する上流側に向かう成分X3とを有した状態で隙間Sに向かって流出させることができる。そのため、隙間Sを流れるプロセスガスGの漏れ軸線方向流れに対して、この漏れ軸線方向流れに対向する成分を有する流れを衝突させることができ、漏れ軸線方向流速を低減することができる。したがって、隙間Sを流れるプロセスガスGの流速を低減させて、隙間Sを通って下流側である軸線P方向の他方側に向かって流出するプロセスガスGの漏れ量をより一層低減することができる。即ち、回転軸2の外周面2aと本体部51aの内周面51cとの間の隙間Sの漏れ流れの影響を低減することができる。
【0040】
《第三実施形態》
次に、
図9及び
図10を参照して第三実施形態のシール装置52について説明する。
第三実施形態においては第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第三実施形態のシール装置52は、孔が傾斜する方向について、第一実施形態及び第二実施形態と相違する。
【0041】
即ち、第三実施形態のシール装置52は、本体部52aに回転軸2の回転方向Rの前方側に向けて傾斜し、かつ、回転軸2の軸線P方向に沿ってプロセスガスGの流れの下流側に向けて傾斜する第三傾斜孔52b(孔)が形成されている。
【0042】
第三傾斜孔52bは、第一実施形態及び第二実施形態と同様に、中心軸O3と直交する断面形状が円形状をなすように本体部52aの内周面52cから窪んで形成されている。第三傾斜孔52bは、
図9及び
図10に示すように、第三傾斜孔52bの中心軸O3の方向が第三傾斜孔52bの開口から底部に向かうにしたがって、回転軸2の回転方向Rの前方側に向けて傾斜ながら、回転軸2の軸線P方向に沿って軸線P方向の一方側に向けて傾斜している。即ち、第三傾斜孔52bは、第一実施形態の第一傾斜孔5bと第二実施形態の第二傾斜孔51bと組み合わせた形状を有している。具体的には、第三傾斜孔52bは、直交軸Oaに対する中心軸O3の角度が、回転軸2の周方向及び軸線P方向に対してそれぞれ所定の角度αとなるように傾斜して形成されている。本実施形態では、所定の角度αがそれぞれ10度から40度の範囲で同じ角度となるように形成されていることが好ましい。
【0043】
上記のようなシール装置52によれば、第三傾斜孔52bが回転軸2の回転方向Rの前方側及び回転軸2の軸線P方向の下流側に向けて傾いて形成されていることで、第三傾斜孔52bに流入したプロセスガスGが隙間Sに流出する際に、漏れ旋回流れに対向する成分X2だけでなく漏れ軸線方向流れに対向する成分X3も有した状態で隙間Sに向かって流出させることができる。そのため、隙間Sを流れるプロセスガスGの漏れ旋回流れ及び漏れ軸線方向流れに対して、それぞれ対向する成分を有する流れを衝突させることができ、漏れ旋回流れ及び漏れ軸線方向流れの両方を含む漏れ流れの勢いを低減することができる。したがって、回転軸2の外周面2aの周りの漏れ流れによる不安定化力を低減し、回転軸2の不安定振動を軽減しながら、プロセスガスGの漏れ量をより一層低減することができる。即ち、回転軸2の外周面2aと本体部52aの内周面52cとの間の隙間Sの漏れ流れの影響をより一層低減することができる。
【0044】
《第四実施形態》
次に、
図11及び
図12を参照して第四実施形態のシール装置53について説明する。
第四実施形態においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第四実施形態のシール装置53は、孔が傾斜する角度が周方向で異なる点について、第一実施形態と相違する。
【0045】
即ち、第四実施形態のシール装置53は、本体部53aに回転軸2の回転方向Rの前方側に向けて傾斜する角度が周方向の位置によって異なる第四傾斜孔53b(孔)が形成されている。
【0046】
第四傾斜孔53bは、中心軸O4と直交する断面形状が円形状をなすように本体部53aの内周面53cから窪んで形成されている。第四傾斜孔53bは、内周面53cにおいて軸線Pの周方向の形成される位置によって、第四傾斜孔53bの中心軸O4の方向が第四傾斜孔53bの開口から底部に向かうにしたがって、回転軸2の回転方向Rの前方側に向けて傾斜する角度を変化させて形成されている。具体的には、第四傾斜孔53bは、内周面53cにおいて、内周面53cの周方向に並んで配置され、内周面53cの一側である水平方向D2の位置から周方向に90度異なる他側である鉛直方向D1の位置に向かうにしたがって中心軸O4の回転軸2の回転方向Rの前方側に向けて傾斜する角度が次第に大きく形成される。つまり、第四傾斜孔53bは、内周面53cにおいて回転軸2の軸線Pの径方向の一方向である水平方向D2から、水平方向D2に対して90度回転した他方向である鉛直方向D1に向かうにしたがって傾斜する角度が次第に大きくなるよう形成されている。より具体的には、回転軸2の周方向に向かって傾斜して形成される中心軸O4の直交軸Oaに対する角度が、本体部53aの内周面53cにおいて水平方向D2に開口が形成された第四傾斜孔53bは、10度に形成される。そして、本体部53aの内周面53cにおいて鉛直方向D1に開口が形成された第四傾斜孔53bでは40度に形成される。したがって、
図11に示すように、水平方向D2の紙面右側では中心軸O4の直交軸Oaに対する角度が10度に形成されて、徐々に角度が大きくなりながら鉛直方向D1の上方である紙面上側では中心軸O4の直交軸Oaに対する角度が40度に形成される。そして、また、水平方向D2の紙面左側に向かうにしたがって徐々に角度が小さくなり、水平方向D2の紙面左側では中心軸O4の直交軸Oaに対する角度が10度に形成される。同様に、鉛直方向D1の下方である紙面下側に向かうにしたがって徐々に角度が大きくなり、水平方向D2の紙面右側に向かうにしたがって徐々に角度が小さくなる。
【0047】
上記のようなシール装置53によれば、第四傾斜孔53bが水平方向D2から鉛直方向D1に向かうにしたがって傾斜する角度が次第に大きくなるよう形成されていることで、第四傾斜孔53bに流入したプロセスガスGが隙間Sに流出する際の漏れ旋回流れに対向する回転軸2の回転方向Rに対して逆向きの成分の大きさを軸線Pの周方向の位置によって変化させことができる。具体的には、水平方向D2に形成された第四傾斜孔53bにおいて最も漏れ旋回流れに対向する成分を小さくして、鉛直方向D1に形成された第四傾斜孔53bにおいて最も漏れ旋回流れに対向する成分を大きくすることができる。そのため、鉛直方向D1の位置における漏れ旋回流速を水平方向D2の位置における漏れ旋回流速に比べて大きく低減することができる。したがって、旋回流速がシールの周方向で異方性を持ち、旋回流速の影響を受ける内周面53cと回転軸2との間の流体による剛性効果、減衰効果も周方向の直交2方向で異方性を持つ。このシール特性の異方性は、回転軸2の不安定振動時の軸線P回りの真円振れ回りを弱める働きをするため、回転軸2の不安定振動を低減することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0049】
なお、本実施形態では、本体部5a、51a、52a、53aに形成される孔を円形状としたがこれに限定されるものではなく、例えば、六角形状や四角形であってもよい。
また、シール装置5、51、52、53として、孔が本体部5a、51a、52a、53aの内周面53cにおいて周方向及び軸線P方向に互いに隣接して形成されることに限定されるものでなく、一定の間隔を開けて形成されていてもよい。
【0050】
さらに、上述した各実施形態においては、シール装置5、51、52、53が、三段式インペラ群4Bと三段式インペラ群4Aとの間の回転軸2周りに設けられる場合について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、インペラ4の入口の口金部、および、多段式インペラの最終段に設けられたバランスピストン部などに設けてもよい。
また、インペラ4はクローズ型のインペラに限られず、オープン型のインペラであっても良い。
【0051】
さらに、インペラ4は三段式に限られるものではない。また、上述した各実施形態においては、シール装置5、51、52、53を設ける回転機械1として遠心圧縮機を一例に説明した。しかし、回転機械1は遠心圧縮機に限られるものではない。この発明のシール装置5、51、52、53は、例えば、軸流圧縮機、半径流タービン、軸流タービン、各種産業用圧縮機、および、ターボ冷凍機などにも適用可能である。