(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(ノズル管および絞り機構を含む混合器を備えた希釈溶液供給装置の例)
2.変形例
変形例1(実施の形態において絞り機構を3段構成にした混合器の例)
変形例2(実施の形態において絞り機構を設けないようにした混合器の例)
変形例3(実施の形態においてノズル管の外壁面に周回溝を設けた混合器の例)
変形例4(混合促進機構として螺旋状流路を設けた混合器の例)
3.その他の変形例
【0020】
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機(耐候性試験機3)の概略構成例を模式的に表したものである。耐候性試験機3は、試験槽1内に配置された各種の材料からなる試料(試験片)9について、促進的環境条件下での耐候性試験を行うものである。この耐候性試験機3は、試験槽1と、本発明の一実施の形態に係る希釈溶液供給装置(希釈溶液供給装置2)とを備えている。
【0021】
(試験槽1)
試験槽1は、その内部の温度および湿度等の調節が可能となっており、光源11と、1または複数(この例では複数)の試料ホルダ12と、噴霧機構13とを内蔵している。
【0022】
光源11は、
図1に示したように、試験槽1内において、周囲に(試料ホルダ12上の各試料9へ向けて)放射光Loutを放射するものである。この光源11は、例えば、キセノンアークランプ、サンシャインカーボンアークランプ、紫外線カーボンアークランプ、メタルハライドランプまたは蛍光ランプ等を用いて構成されている。
【0023】
試料ホルダ12は、例えば、図示しない円環状の試料取付枠に取り付けられており、この試料取付枠に対して着脱可能となっている。また、例えば、この試料取付枠が光源11を中心とした回転動作を行うことで、各試料ホルダ12もまた、光源11を中心とした回転動作が可能となっている。各試料ホルダ12では、光源11と対向する試料取付面上に、1または複数(この例では3つ)の試料9が配置されている。なお、この試料ホルダ12における試料取付面上に、例えば図示しないブラックパネル温度計や照度計などが配置されていてもよい。このような複数の試料ホルダ12全体では、例えば、それらの個数に応じた多角形状をなしている。換言すると、これら複数の試料ホルダ12は、上記した試料取付枠上で多角形を構成するように並んで配置されている。
【0024】
噴霧機構13は、各試料9に対して後述する所定の希釈溶液Wdを噴霧させるための部材である。この噴霧機構13は、基体としての支持部材131と、この支持部材131上に並んで配置された複数のノズル132(スプレノズル)とを有している。複数のノズル132はそれぞれ、希釈溶液Wdを噴出する部材であり、この例では複数の試料9の対向位置に1対1の対応関係にて配置されている。ただし、この例には限られず、1つの試料9に対して複数のノズル132が配置されるような対応関係であってもよい。なお、
図1中には、このような噴霧機構13が1つだけ図示されているが、これには限られず、試験槽1内に噴霧機構13が複数設けられていてもよい。
【0025】
(希釈溶液供給装置2)
希釈溶液供給装置2は、試験槽1内の噴霧機構13に対して希釈溶液Wdを供給する装置である。この希釈溶液供給装置2は、この例では、純水タンク211、原液タンク221、補給ポンプP0、送液ポンプP1、送液用定量ポンプP2、フローメーター212,222、電磁弁213,223、混合器23、溶液タンク24、一対の水位センサ25a,25b、供給ポンプP3、電磁弁26および排水処理タンク27を有している。
【0026】
ここで、本実施の形態では一例として、希釈溶液Wdが過酸化水素水(H
2O
2)の希釈溶液(過酸化水素水希釈溶液;H
2O
2+H
2O)となっている。また、この過酸化水素水希釈溶液の濃度としては、例えば1%程度が挙げられる。
【0027】
純水タンク211は、外部から供給される純水(H
2O)W1を貯蔵するタンクである。この純水タンク211における貯蔵容量は、例えば3リットル(L)〜6リットル程度(例えば4.5リットル)である。
【0028】
原液ポリタンク220は、例えば市販品である過酸化水素水の原液W2(濃度=30%〜35%程度(例えば35%))を貯蔵するポリタンクであり、希釈溶液供給装置2の外部に配置されている。一方、原液タンク221は、原液ポリタンク220から補給される原液W2を貯蔵するタンクである。原液ポリタンク220における貯蔵容量は、例えば18リットル程度であり、原液タンク221における貯蔵容量は、例えば25リットル程度である。
【0029】
補給ポンプP0は、原液ポリタンク220から原液タンク221に対して原液W2の補給を行う際に用いられるポンプであり、例えば原液吸引パイプを介して原液W2の補給がなされるようになっている。
【0030】
送液ポンプP1は、純水タンク211からフローメーター212および電磁弁213をこの順に経由して混合器23へと純水W1を送液する際に用いられるポンプである。一方、送液用定量ポンプP2は、原液タンク221からフローメーター222および電磁弁223をこの順に経由して混合器23へと原液W2を送液する際に用いられる定量ポンプである。
【0031】
フローメーター212は、純水タンク211から送液ポンプP1を介して供給される純水W1の流量を計測するための流量計である。一方、フローメーター222は、原液タンク221から送液用定量ポンプP2を介して供給される原液W2の流量を計測するための流量計である。なお、これらのフローメーター212,222ではそれぞれ、希釈溶液Wdの濃度が予め設定された値(例えば1%の値)となるように、それらの調整バルブが調整され、純水W1および原液W2の各流量(流量比,混合比率)が予め設定されるようになっている。
【0032】
電磁弁213は、フローメーター212と混合器23との間の純水W1の供給路上に配置されており、この純水W1の送液の制御(送液の遮断切換など)を行うための弁である。一方、電磁弁223は、フローメーター222と混合器23との間の原液W2の供給路上に配置されており、この原液W2の送液の制御(送液の遮断切換など)を行うための弁である。
【0033】
混合器23は、純水タンク211から送液ポンプP1、フローメーター212および電磁弁213をこの順で経由して流入された純水W1と、原液タンク221から送液用定量ポンプP2、フローメーター222および電磁弁223をこの順で経由して流入された原液W2とを、自動的に混合する機器である。これにより混合器23では、これら純水W1と原液W2との混合溶液である、原液W2の希釈溶液Wdが生成されるようになっている。なお、この混合器23の詳細な構成例については後述する(
図2)。
【0034】
溶液タンク24は、混合器23と試験槽1内の噴霧機構13との間の希釈溶液Wdの溶液供給路Ld上に配置されており、混合器23により生成された希釈溶液Wdを貯蔵するタンクである。溶液タンク24は、この例では、混合器23の直後(具体的には、混合器23と後述する供給ポンプP3との間)の溶液供給路Ld上に配置されている。溶液タンク24における貯蔵容量は、例えば6リットル〜18リットル程度(例えば6リットル)である。なお、詳細は後述するが、この溶液タンク24には、貯蔵されている溶液Wdを撹拌するための撹拌ポンプ等は設けられていない。
【0035】
水位センサ25a,25bはそれぞれ、溶液タンク24内に貯蔵されている希釈溶液Wdの水位(溶液タンク24内での希釈溶液Wdの貯蔵量)を検知するためのセンサである。このうち、水位センサ25aは、希釈溶液Wdの検知水位Lwaが所定の閾値水位Lth1を超えている(Lwa>Lth1)か否かを検知するためのものである。一方、水位センサ25bは、希釈溶液Wdの検知水位Lwbが所定の閾値水位Lth2(<Lth1)を下回っている(Lwb<Lth2)か否かを検知するためのものである。なお、詳細は後述するが、このようにして検知された希釈溶液Wdの水位(検知水位Lwa,Lwb)はそれぞれ、送液ポンプP1、送液用定量ポンプP2、フローメーター212,222および電磁弁213,223などへフィードバックされ、これらの動作制御に利用されるようになっている。
【0036】
供給ポンプP3は、溶液タンク24から電磁弁26を経由して試験槽1内の噴霧機構13へと希釈溶液Wdを送液(供給)する際に用いられるポンプである。
【0037】
電磁弁26は、供給ポンプP3と噴霧機構13との間の希釈溶液Wdの溶液供給路Ld上に配置されており、この希釈溶液Wdの送液の制御(送液の遮断切換など)を行うための弁である。
【0038】
排水処理タンク27は、試験槽1内からの排水Wout(噴霧機構13から各試料9への噴霧後の希釈溶液Wdなど)に対して所定の排水処理を施して無害化する際に、この排水Woutを一時的に貯蔵しておくためのタンクである。この排水処理としては、例えば、活性炭などを利用した化学分解処理(2H
2O
2→2H
2O+O
2)などが挙げられる。なお、このような排水処理後の排水(処理済排水Wtout)は、排水処理タンク27から希釈溶液供給装置2の外部へと出力されるようになっている。
【0039】
(混合器23)
図2は、混合器23の概略構成例を断面図で模式的に表したものである。この例では、混合器23は、純水流入管231、原液流入管232および溶液出力管233を有している。なお、この
図2では、II−II線に沿った矢視断面構成例を、
図2中の右下部分の破線内に模式的に図示している。
【0040】
純水流入管231は、純水W1(原液W2と比べて相対的に流量が大きい)が流入される管状の部材であり、この例では垂直方向Vに沿って延伸するように配置されている。純水流入管231は、この例では、その流出口側(下方側)が溶液出力管233内に挿入されるように配置されており、この流出口から純水W1が噴出されるノズル管として機能するようになっている。換言すると、純水流入管231は、その流出口側が溶液出力管233内に包み込まれるように配置されている。この純水流入管231は、この例では
図2中に示したように、純水W1の進行方向(この例では垂直方向V)に沿って徐々に外径Deが小さくなるテーパ状の外壁面Seと、純水W1の進行方向に依存しない一定の内径Diを有する非テーパ状の内壁面Siとを有している。なお、純水流入管231は、例えば塩化ビニルなどの材料により構成されており、外径De=10mm〜18mm程度、内径Di=4mm〜8mm程度である。
【0041】
原液流入管232は、原液W2(純水W1と比べて相対的に流量が小さい)が流入される管状の部材であり、この例では水平方向Hに沿って延伸するように配置されている。すなわち、この例では、純水W1に対して原液W2が直交して流入されるよう、この原液流入管232と純水流入管231とが互いに直交するように延伸配置されている。また、この例では、原液流入管232は、純水流入管231(ノズル管)の外壁面Seへ向けて原液W2を流出させるように配置されており、これにより純水流入管231が純水W1と原液W2との混合時の緩衝体として機能するようになっている。なお、原液流入管232は、例えば塩化ビニルなどの材料により構成されており、外径=8mm〜18mm程度、内径=3mm〜6mm程度である。
【0042】
溶液出力管233は、純水W1と原液W2とが混合されることで得られる希釈溶液Wdを出力する管状の部材であり、この例では垂直方向Vに沿って延伸するように配置されている。すなわち、この例では、希釈溶液Wdが垂直方向Vに沿って混合器23から出力されるようになっている。また、溶液出力管233は、前述した溶液供給路Ldに接続されている。このような溶液出力管233は、
図2中に示したように、純水流入管231から流出される純水W1と原液流入管232から流出される原液W2とが混合される、混合スペースSmix(混合室)を内蔵している。なお、溶液出力管233は、例えば塩化ビニルなどの材料により構成されており、外径=14mm〜18mm程度、内径=9mm〜13mm程度である。
【0043】
ここで、混合スペースSmixでは、例えば
図2中の矢印で示したように、純水流入管231(ノズル管)から流出される純水W1と、原液流入管232から純水流入管231と溶液出力管233との間隙G(ギャップ領域)を経由して流出される原液W2とが、混合されるようになっている。
【0044】
溶液出力管233はまた、この例では、混合スペースSmixの出力側(溶液タンク24側)に、純水W1と原液W2との混合を促進する(より良く混合するように作用させる)絞り機構A1,A2を更に内蔵している。これらの絞り機構A1,A2は、希釈溶液Wdの進行方向(出力方向)である垂直方向Vに沿って配置されており、多段構成(この例では2段構成)の絞り機構となっている。なお、絞り機構A1,A2はそれぞれ、本発明における「混合促進機構」の一具体例に対応している。
【0045】
[作用・効果]
(A.基本動作)
この耐候性試験機3では、
図1に示したように、試験槽1内において、光源11から放射光Loutが放射される。また、複数の試料9などが取り付けられた試料ホルダ12が、例えば、この光源11を中心とした回転動作を行う。これにより、試料ホルダ12上の各試料9に対して放射光Loutが照射される。このような放射光Loutの連続照射や、照射期間と非照射期間との周期的動作(サイクル)が、所定の試験時間(例えば数十時間〜数千時間程度)の間連続して行われることで、耐候性試験が行われる。
【0046】
ここで、例えば放射光Loutの非照射期間において、試験槽1内では、噴霧機構13から各試料9に対して希釈溶液Wdが噴霧され、スプレ試験が行われる。なお、このようなスプレ試験の際の各種設定は、例えば耐候性試験機3の本体部に設置されたタッチパネル(図示せず)を用いてなされる。
【0047】
このような希釈溶液Wdは、希釈溶液供給装置2において生成され、試験槽1内の噴霧機構13へと供給される。具体的には、この希釈溶液供給装置2では、純水タンク211から供給される純水W1と原液タンク221から供給される原液W2とが混合されて希釈溶液Wdが生成され、溶液タンク24に貯蔵される。そして、この溶液タンク24に貯蔵されている希釈溶液Wdが、供給ポンプP3などを介して噴霧機構13へと供給される。
【0048】
この際、スプレ試験の実施によって溶液タンク24内の希釈溶液Wdが消費され、この希釈溶液Wdの水位が低下すると(水位センサ25bからの検知水位Lwb<閾値水位Lth2であることが検知されると)、図示しない制御部によって以下の動作制御が行われる。すなわち、送液ポンプP1、送液用定量ポンプP2、フローメーター212,222および電磁弁213,223などが作動し、純水W1および原液W2の供給動作が開始されることで、溶液タンク24への希釈溶液Wdの補給動作が開始される。
【0049】
一方で、逆に、溶液タンク24内の希釈溶液Wdの水位が上限に到達すると(水位センサ25aからの検知水位Lwa>閾値水位Lth1であることが検知されると)、図示しない制御部によって以下の動作制御が行われる。すなわち、送液ポンプP1、送液用定量ポンプP2、フローメーター212,222および電磁弁213,223などが作動し、純水W1および原液W2の供給動作が停止されることで、溶液タンク24への希釈溶液Wdの補給動作が停止される。
【0050】
(B.希釈溶液供給装置2の作用)
ここで、本実施の形態の希釈溶液供給装置2では、混合器23において、純水タンク211から供給される純水W1と原液タンク221から供給される原液W2とが自動的に混合されて希釈溶液Wdが生成され、溶液タンク24に貯蔵される。そして、このようにして生成および貯蔵されている希釈溶液Wdが、溶液供給路Ldを経由して噴霧機構13へ供給される。
【0051】
このようにして本実施の形態では、混合器23において自動的に希釈溶液Wdが生成されて利用されるため、希釈溶液Wdが手動で生成されて利用される場合と比べ、希釈溶液Wdが容易に利用可能となる。具体的には、例えば、人手を省いて作業時間を短縮することができると共に、作業中に希釈溶液Wdが作業者へ飛散する危険性を回避することも可能となる。
【0052】
また、例えば
図3に示した比較例に係る耐候性試験機(耐候性試験機103)における希釈溶液供給装置102のように、溶液タンク104内において、撹拌ポンプP104などを用いて希釈溶液Wdの撹拌を行う場合と比べ、以下の利点が得られる。すなわち、混合器23を設けることにより、撹拌ポンプP104を使用した混合および濃度維持を図る必要がなくなるため(撹拌ポンプP104が不要となるため)、溶液タンク104と比べて溶液タンク24の小型化(ひいては希釈溶液供給装置2の小型化)が実現され、コストダウンも図られる。また、溶液タンク24が小型化されることから、溶液タンク104の場合と比べて希釈溶液Wdの貯蔵時間が短くなるため、例えば希釈溶液Wdが過酸化水素水希釈溶液の場合などに、化学分解(化学的不安定性)に起因した希釈溶液Wdの濃度変動が抑えられる。
【0053】
特に、本実施の形態の混合器23では、
図2に示したように、純水流入管231が、その流出口側が溶液出力管233内に挿入配置されたノズル管となっていると共に、原液流入管232が、このノズル管の外壁面Seへ向けて原液W2を流出させるように配置されている。また、溶液出力管233内の混合スペースSmixにおいて、純水流入管231(ノズル管)から流出される純水W1と、原液流入管232から前述した間隙Gを経由して流出される原液W2とが、混合される。このようにして混合器23では、ベンチュリー効果を利用することで、原液W2が間隙Gにおいて移動していくため、混合スペースSmixにおいて純水W1と原液W2とが混合し易くなり、希釈溶液Wdにおける濃度ばらつきが抑えられる。また、ベンチュリー効果によって原液流入管232の流出口付近が負圧となるため、原液流入管232内に原液W2および純水W1が逆流することが防止される。
【0054】
また、この混合器23では、
図2に示したように、純水流入管231(ノズル管)が、純水W1の進行方向に沿って徐々に外径Deが小さくなるテーパ状の外壁面Seと、非テーパ状の内壁面Siとを有している。これにより、間隙Gを経由して流出される原液W2の流出方向が、ノズル管から流出される純水W1の流出方向に対して非平行となる(斜入射することになる)。このため、純水W1と原液W2とが、更に混合し易くなる(純水W1と原液W2とが、互いに層流状態になり難くなる)。その結果、希釈溶液Wdにおける濃度ばらつきが更に抑えられる。また、非テーパ状の内壁面Siに沿って純水W1が進行するため、純水W1の流量(流速)の変動も抑制される。
【0055】
加えて、混合器23内の溶液出力管233には、
図2に示したように、混合スペースSmixの溶液タンク24側に、絞り機構A1,A2が内蔵されている。これらの絞り機構A1,A2ではそれぞれ、希釈溶液Wdが流れる際に乱流が生じる(渦流の溜り場となる)ため、純水W1と原液W2とが互いに層流状態になり難くなる結果、純水W1と原液W2との混合促進が図られる。このようにして混合器23では、希釈溶液Wdが混合スペースSmixから溶液タンク24へ流れる過程においても、純水W1と原液W2との混合促進が図られるため、希釈溶液Wdにおける濃度ばらつきが更に抑えられる。
【0056】
また、この絞り機構A1,A2は、
図2に示したように、溶液出力管233の延在方向に沿って多段に配置されている。これにより、上記した希釈溶液Wdにおける乱流発生が複数回なされるため、純水W1と原液W2との更なる混合促進が図られ、希釈溶液Wdにおける濃度ばらつきがより一層抑えられる。
【0057】
更に、
図1に示したように、この例では溶液タンク24が、混合器23の直後の溶液供給路Ld上に配置されている。これにより、混合器23での生成直後に希釈溶液Wdが溶液タンク24に貯蔵されるため、希釈溶液Wdにおける経時的な濃度変動が抑えられる。
【0058】
以上のように本実施の形態では、混合器23において純水W1と原液W2とを自動的に混合して希釈溶液Wdを生成し、この希釈溶液Wdを溶液タンク24へ貯蔵すると共に、希釈溶液Wdを試験槽1内の噴霧機構13へ供給するようにしたので、希釈溶液Wdを容易に利用することができる。よって、利便性を向上させることが可能となる。
【0059】
また、原液W2として過酸化水素水を用いる(希釈溶液Wdとして過酸化水素水希釈溶液を用いる)ようにしたので、以下の効果を得ることも可能となる。すなわち、例えば上記比較例のように、溶液タンク内において希釈溶液Wdの撹拌を行う場合とは異なり、撹拌熱による温度上昇に起因した過酸化水素水の化学分解(化学的不安定性に起因した分解)が最小限に抑えられる。その結果、噴霧機構13へ供給される過酸化水素水希釈溶液において、化学分解に起因した濃度変動を低減することが可能となる。
【0060】
更に、希釈溶液供給装置2内に、試験槽1内からの排水Woutに対して所定の排水処理を施す際に用いられる排水処理タンク27を設けるようにしたので、以下の効果を得ることも可能となる。すなわち、噴霧機構13による噴霧後の希釈溶液Wdなどを回収して無害化し、処理済排水Wtoutとして外部へ出力することが可能となる。
【0061】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1〜4)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0062】
[変形例1]
図4は、変形例1に係る混合器(混合器23A)の概略構成例を、断面図で模式的に表したものである。本変形例の混合器23Aは、実施の形態の混合器23において、溶液出力管233の代わりに溶液出力管233Aを設けたものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0063】
この溶液出力管233Aは、溶液出力管233において、絞り機構A1,A2に加えて絞り機構A3を更に設けることで3段構成の絞り機構としたものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。この絞り機構A3は、純水流入管231における純水W1の流出口直後(絞り機構A1,A2よりも上流側である混合スペースSmix側)に配置されている。なお、絞り機構A3も絞り機構A1,A2と同様に、本発明における「混合促進機構」の一具体例に対応している。
【0064】
このような構成により本変形例では、上記実施の形態における効果に加え、以下の効果も得ることが可能となる。すなわち、上記した位置の絞り機構A3を更に設けることによって、原液W2が間隙Gから純水流入管231の流出口へ向けて流れるようになるため、原液W2と純水W1との混合効率を向上させることが可能となる。
【0065】
[変形例2]
図5は、変形例2に係る混合器(混合器23B)の概略構成例を、断面図で模式的に表したものである。本変形例の混合器23Bは、実施の形態の混合器23において、溶液出力管233の代わりに溶液出力管233Bを設けたものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0066】
この溶液出力管233Bは、溶液出力管233において、混合スペースSmixの出力側に絞り機構A1,A2のいずれをも設けないようにしたものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0067】
このような構成の本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、このような混合器23Bを設けることによって希釈溶液Wdを容易に利用することができ、利便性を向上させることが可能となる。
【0068】
[変形例3]
図6は、変形例3に係る混合器(混合器23C)の概略構成例を、断面図で模式的に表したものである。本変形例の混合器23Cは、実施の形態の混合器23において、純水流入管(ノズル管)231および原液流入管232の代わりに、純水流入管(ノズル管)231Cおよび原液流入管232Cをそれぞれ設けたものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0069】
純水流入管231Cは、純水流入管231において、この純水流入管231Cの外壁面Se上に周回溝Geが形成されたものに対応している。この周回溝Geは、外壁面Se上における、原液流入管232Cからの原液W2の流出領域付近に形成されており、この外壁面Seを周回(この例では水平方向Hに沿って周回)する形状となっている。また、この例では、周回溝Geの内部にまで、原液流入管232Cの先端部分(流出口付近)が挿入されるようになっている。なお、
図6では、このような周回溝Ge付近の断面構成例(III−III線に沿った矢視断面構成例)を、
図6中の左下部分の破線内に模式的に図示している(II−II線に沿った矢視断面構成例と、III−III線に沿った矢視断面構成例とでは、便宜上、縮尺が多少異なっている)。
【0070】
このような構成により本変形例では、上記実施の形態における効果に加え、以下の効果も得ることが可能となる。すなわち、周回溝Geによって、原液W2が純水流入管231Cの外壁面Seの周囲(望ましくは全周)へ一旦拡散した後に純水W1と混合することになるため、純水W1と原液W2とがより一層混合し易くなる。よって、希釈溶液Wdにおける濃度ばらつきの更なる低減を図ることが可能となる。また、原液流入管232Cの先端部分が周回溝Geの内部にまで挿入されているため、純水流入管231Cの外壁面Seの周囲に原液W2がより拡散し易くなり、純水W1と原液W2との更なる混合促進を図ることが可能となる。
【0071】
[変形例4]
図7は、変形例4に係る混合器(混合器23D)の概略構成例を、断面図で模式的に表したものである。本変形例の混合器23Dは、純水流入管231D、原液流入管232Dおよび溶液出力管233Dを有している。
【0072】
純水流入管231Dは、純水流入管231と同様に、純水W1が流入される管状の部材であり、垂直方向Vに沿って延伸するように配置されている。ただし、この純水流入管231Dは純水流入管231とは異なり、ノズル管の構造とはなっておらず、また、その流出口側が溶液出力管233D内に包み込まれる配置ともなっていない。
【0073】
原液流入管232Dは、原液流入管232と同様に、原液W2が流入される管状の部材であり、水平方向Hに沿って延伸するように配置されている。ただし、この原液流入管232Dは原液流入管232とは異なり、純水流入管231Dの外壁面へ向けて原液W2を流出させる配置とはなっていない。
【0074】
溶液出力管233Dは、溶液出力管233,233A,233Bと同様に、希釈溶液Wdを出力する管状の部材であり、垂直方向Vに沿って延伸するように配置されている。また、溶液出力管233Dは、
図7中に示したように、純水流入管231Dから流出される純水W1と原液流入管232Dから流出される原液W2とが混合される、混合スペースSmixを内蔵している。ただし、この溶液出力管233Dは溶液出力管233,233Aとは異なり、この混合スペースSmixの出力側に、絞り機構A1,A2等の代わりに、垂直方向Vに沿って形成された螺旋状流路Fhを内蔵している。この螺旋状流路Fhもまた、本発明における「混合促進機構」の一具体例に対応している。このような螺旋状流路Fhでは、混合スペースSmix側から希釈溶液Wdがこの螺旋状流路Fhを流れる過程で、純水W1と原液W2との混合促進が図られるようになっている。
【0075】
このような構成の本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、このような混合器23Dを設けることによって希釈溶液Wdを容易に利用することができ、利便性を向上させることが可能となる。
【0076】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0077】
例えば、試験槽や希釈溶液供給装置の構成等は、上記実施の形態等において説明したものには限られず、他の構成としてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態等では、混合器の構成を具体的に挙げて説明したが、混合器の構成はこれには限られず、他の構成としてもよい。具体的には、例えば実施の形態および変形例1〜3において、純水流入管をノズル管以外の構造としてもよい。また、逆に変形例4において、実施の形態および変形例1〜3と同様に、純水流入管をノズル管の構造としてもよい。更に、純水流入管がノズル管の構造である場合において、その内壁面や外壁面の形状、各管同士の接続関係(配置角度など)等についても、実施の形態や変形例1〜3で説明したもの以外の他の形状や接続関係等としてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態等では、混合器内の混合促進機構の構成を具体的に挙げて説明したが、混合促進機構の構成はこれには限られず、他の構成としてもよい。具体的には、例えば実施の形態および変形例1〜3の混合器において、変形例4で説明した螺旋状流路を混合促進機構として用いてもよい。逆に、変形例4の混合器において、実施の形態や変形例1,3で説明した絞り機構を混合促進機構として用いてもよい。更に、変形例3の混合器において、変形例1で説明した3段構成の絞り機構を用いるようにしてもよい。加えて、絞り機構の段数が例えば1段だけや4段以上であってもよく、螺旋状流路が例えば多段(2段以上)に配置されていてもよい。また、混合促進機構として、このような絞り機構および螺旋状流路以外の構造を採用してもよい。
【0080】
加えて、上記実施の形態等では、原液が過酸化水素水であると共に希釈溶液が過酸化水素水希釈溶液である場合を例に挙げて説明したが、これには限られない。すなわち、本発明の希釈溶液供給装置は、過酸化水素水以外の他の原液の希釈に適用することも可能である。
【0081】
また、上記実施の形態等では、本発明の希釈溶液供給装置を耐候性試験機に適用した場合を例に挙げて説明したが、これには限られず、本発明の希釈溶液供給装置を、耐候性試験機以外の他の試験機(例えば腐食促進試験機など)や他の装置に適用してもよい。