(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸流ファンを駆動するモータ、外側から空気を取り込む空気取込口、および内側に冷却風を送出する空気送出口を有する風発生手段が装着される取付け孔が、背面に形成された冷却衣服において、
着丈方向において、前記風発生手段の下端部よりも上側に設けられた冷却材と、
襟元の下部分であって、裾口幅方向の中心線の両側にそれぞれ設けられた冷却風排出機構によって構成され、前記冷却風が通過する冷却風排出路と、を備え、
前記風発生手段が、前記取付け孔に対して、斜め下方向に5度〜35度傾斜して装着され、前記風発生手段を作動させたときに、前記風発生手段の斜め下方向から前記空気取込口を介して前記空気が取り込まれ、前記空気送出口から前記風発生手段の斜め上方向に前記冷却風が送出され、
前記冷却風排出機構は、裏地に固定された取付部と、一端が前記裏地に固定され、係合部が形成されているバンド部とを有し、
一方の前記冷却排出機構の前記係合部と前記取付部とを係合し、前記バンド部の固定位置から前記取付部の固定位置までの直線の長さを、前記バンド部の固定位置から前記取付部の固定位置までの前記裏地に沿った長さよりも短くするとともに、前記裏地を弛ませることで、一方の前記冷却風排出路を開口させ、
前記冷却風が、一方の前記冷却風排出路を介して、外側に排出される、
ことを特徴とする冷却衣服。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却衣服の内側に送出される冷却風は、外側から取り込んだ空気であるため、外部の温度が高い場合、温度の高い冷却風が冷却衣服の内部に送出される。この冷却風は、冷却衣服の襟元や袖口の隙間から外側に排出される。この隙間は、着用者が作業する体勢によっては塞がれてしまい、冷却風が外側に排出されない場合がある。この場合、冷却衣服の鬱側には温度の高い冷却風が滞留すると共に、着用者の身体には温度の高い冷却風が送出され続け、着用者に不快感を与える。
【0006】
外部の温度が高い場合、着用者は、風発生装置を操作し、冷却風の風量を増加させる。冷却風の風量を増加させると、軸流ファンの回転数が増加し、主に以下の問題が生じる。
一つ目は、軸流ファンの回転数が増加すると、軸流ファンを回転させる駆動源であるモータから発生する熱量が増加するため、外部の空気よりも温度の高い冷却風が内部に送出され、着用者に不快感を与えるおそれがある。そうすると、冷却衣服としての機能が失われる。
二つ目は、軸流ファンの回転数が増加すると、その分、モータのエネルギーが消費されるため、軸流ファンの回転数が少ない場合よりも、軸流ファンが機能する時間が短くなる。一般的に、軸流ファン(モータ)は、充電式のものが使用される。そのため、軸流ファンの充電がなくなった場合、再度、充電するために一旦作業を停止しなければならず、作業時間が長くなる。
三つ目は、軸流ファンの回転数が増加すると、軸流ファンの回転音が大きくなる。軸流ファンの回転音は、着用者へ不快感を与えるため、この回転音は、できるだけ小さい方が良い。
【0007】
また、冷却衣服の背中部分と襟元部分の繋ぎ目は、身体に密着するように作製させている場合があり、冷却風が冷却衣服の外側に排出されにくい。冷却風が外側に排出されにくいと、冷却風が冷却衣服の内部に滞留してしまい、着用者の身体を効率的に冷却できないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、軸流ファンを駆動するモータへの負担を軽減でき、身体を効率的に冷却することができる冷却衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の冷却衣服は、軸流ファンを駆動するモータ、外側から空気を取り込む空気取込口、および内側に冷却風を送出する空気送出口を有する風発生手段が装着される取付け孔が背面に形成され、着丈方向において風発生手段の下端部よりも上側に設けられた冷却材と、肩部分に設けられた冷却風排出機構によって構成され、冷却風が通過する冷却風排出路とを備える。そして、この冷却衣服は、風発生手段が取付け孔に対して斜め下方向に5
度〜35
度傾斜して装着され、風発生手段を作動させたときに、風発生手段の斜め下方向から空気取込口を介して空気が取り込まれ、空気送出口から風発生手段の斜め上方向に冷却風が送出され、この冷却風が冷却風排出路を介して、外側に排出されることを特徴とする。
【0010】
本発明の冷却衣服は、冷却風排出機構が、係合部が設けられ、一端が裏地に固定されたバンド部と、裏地に固定された取付部とを有し、係合部と取付部とを係合し、バンド部の固定位置から取付部の固定位置までの直線の長さを、バンド部の固定位置から取付部の固定位置までの裏地に沿った長さよりも短くするとともに、裏地を弛ませることで、冷却風排出路が形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の冷却衣服は、冷却風排出機構が、一端が裏地に固定された一対のバンド部を有し、一方のバンド部と他方のバンド部を連結し、一方のバンド部の固定位置から他方のバンド部の固定位置までの直線の長さを、一方のバンド部の固定位置から他方のバンド部の固定位置までの裏地に沿った長さよりも短くするとともに、裏地を弛ませることで、冷却風排出路が形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の冷却衣服は、冷却風排出機構が肩部分かつ裾口幅方向の中心線の両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の冷却衣服は、フック部材を連結するための連結部材が前面に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の冷却衣服は、取付孔を覆うネットが設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の冷却衣服は、風発生手段が取付け孔に回転可能に取り付けられ、風発生手段を回転させたときに、空気取込口を介して取り込まれる空気の方向が変更されると共に、空気送出口を介して送出される冷却風の方向が変更されることを特徴とする。
【0016】
本発明の冷却衣服は、風発生手段が裾口幅方向の中心線の両側に設けられ、冷却材が風発生手段から中心線に向かって斜め上方向、かつ、着丈方向において肩部分よりも下側に設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明の冷却衣服は、内側と外側を連通し、命綱が挿入される開口部を有する取出し筒部が背面に設けられ、取出し筒部に、命綱の周囲を緊縛し、開口部を密閉する口紐が設けられていることを特徴とする。この冷却衣服には、取出し筒部を収容可能な収納片が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の冷却衣服は、冷却材によって冷却された冷却風を肩部分の方向に送出し、肩部分に形成された冷却風排出路を介して、冷却衣服の外側に円滑に排出する。そのため、高温環境下でも、冷却衣服の内側には温度の低い冷却風が流れ、身体を効率よく冷却できる。
また、冷却風は、冷却風排出路を介して外側に円滑に排出されるため、冷却衣服の内側に冷却風が滞留することがなくなり、モータへの負担が軽減される。
【0019】
本発明の冷却衣服は、裾幅方向の中心線の両側にそれぞれ冷却風排出機構を備えているため、着用者の選択によって、例えば、右側の肩部分にのみ冷却風排出路を形成することができる。そうすると、風発生装置から送出された冷却風は、右肩部分の冷却風排出路を介して外側に排出され、右上半身を集中的に冷却することができる。
そのため、着用者が、身体の特に右上半身を冷却したい場合、所望の領域を集中的に冷却することができる。また、この場合、モーターの回転数を増加させずに、右上半身を冷却できるため、モータへの負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の使用状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の背面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の冷却風排出機構の概略拡大図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の冷却風排出機構の概略拡大図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の冷却風排出機構の概略断面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の取出し筒部および収納片を説明するための図である。(a)収納片の閉状態、(b)収納片の開状態
【
図7】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の取出し筒部の斜視図である。
【
図8】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の取出し筒部の使用状態を説明するための図である。
【
図9】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の取付け孔に装着された風発生手段の断面図である。
【
図10】本発明の第一実施形態に係るネットが設けられた冷却衣服の背面図である。
【
図11】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の正面図及び連結部材を示す図である。
【
図12】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服における冷却風の流れを説明するための図である。
【
図13】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の任意の角度に設定可能な風発生手段の断面図である。
【
図14】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服における冷却風の流れを説明するための図である。
【
図15】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服における冷却風の流れを説明するための図である。
【
図16】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の冷却風排出機構の他の例を示す概略図である。
【
図17】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の冷却風排出機構の他の例を示す概略図である。
【
図18】本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の背面図である。
【
図19】本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の冷却風排出機構の概略拡大図である。
【
図20】本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の冷却風排出機構の概略拡大図である。
【
図21】本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の冷却風排出機構の概略断面図である。
【
図22】本発明の第二実施形態に係る冷却衣服における冷却風の流れを説明するための図である。
【
図23】本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の冷却風排出機構の他の例を示す図である。
【
図24】本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の冷却風排出機構の他の例を示す図である。
【
図25】本発明の第一及び第二実施形態に係る冷却衣服の変形例を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第一実施形態]
本実施形態に係る冷却衣服を、
図1〜
図17を参照し、説明する。
本実施形態では、
図1に示すように、高所で作業する着用者がフルハーネス安全帯10(以下、ハーネス10と記す。)を身につけ、その上から着用する冷却衣服1について説明する。このハーネス10の背中部分には、冷却衣服1の外側(外部)から命綱7が取り付けられる。
なお、図面上、裾口幅方向を幅方向X、幅方向Xと直交する着丈方向を高さ方向Yとし、
図2以降、冷却衣服1のフードの記載は省略する。
【0022】
冷却衣服1は、
図2に示すように、取付け孔3に装着される風発生手段としての風発生装置2と、風発生装置2よりも上側に形成された冷却材収容部5と、この冷却材収容部5に収容される冷却材4と、背面に形成された収納片8に収納された取出し筒部6と、肩部分に形成された冷却風排出機構40を備えている。
取付け孔3は、冷却衣服1の腰部分に形成され、冷却衣服1の裾口幅を略二等分する中心線Lの両側に形成されている。そのため、取付け孔3に装着される風発生装置2は、中心線Lの両側にそれぞれ設けられている。そして、これらの風発生装置2のすぐ上側に冷却材収容部5が形成されている。
【0023】
冷却風排出機構40は、
図3に示すように、一端が冷却衣服1の裏地の肩部分に固定された第一バンド部41及び第二バンド部42によって構成される。
第一バンド部41は、裏地に固定された位置(以下、固定位置41Aと記す。)から第二ハンド部42が固定されている方向に向けて設けられている。この第一バンド部41には、係合部としてのボタン43が設けられている。
一方、第二バンド部42は、裏地に固定された位置(以下、固定位置42Aと記す。)から第一バンド41が固定されている方向に向けて設けられている。第二バンド部42には、ボタン43を係合するための係合孔44が形成されている。この係合孔44は、第二バンド部42の長手方向に沿って、複数形成されている。
また、第一バンド部41の固定位置41Aからボタン43までの直線の長さL1と第二バンド部42の固定位置42Aから係合孔44までの直線の長さL2を足し合わせた長さは、固定位置41Aから固定位置42Aまでの裏地に沿った長さL3よりも短くなるように設計されている。
【0024】
第一バンド部41は、
図4に示すように、ボタン43を係合孔44に係合させることで第二バンド部42と連結される。長さL1と長さL2を足した長さは、長さL3よりも短いため、第一バンド部41と第二バンド部42が連結されると、
図5に示すように、冷却衣服1の裏地が弛み、冷却排出路40Aが形成される。この冷却排出路40Aが形成されることで、冷却衣服1の内側と外側が連通される。
なお、冷却排出路40Aを形成する際、係合孔44の位置を適宜選択し、ボタン43を係合することで、冷却風排出路40Aの面積(大きさ)を適宜選択できる。
【0025】
冷却材収容部5は、冷却衣服1の内側にメッシュ状の布地を縫合することによって、ポケット状に形成され、高さ方向Yにおいて、後述する風発生装置2の下端部26よりも上側に1つずつ、合計2つ設けられている(
図2)。
また、冷却材収容部5は、高さ方向Yにおいて背中部分よりも下側に設けられている。
【0026】
冷却材4は、冷却材収容部5に収容され、この冷却材4には、例えば、液体を凍結させた保冷剤や凍結させたゲル状の保冷剤を使用することができる。冷却材4は、冷却機能が低下したり、あるいは冷却機能を失った場合、適宜交換することで、冷却機能を維持することができる。冷却材4は、冷却収容部5に収容されるため、冷却衣服1における冷却収容部5の位置に設けられる。
なお、この冷却材4は、風発生装置2の風下であって、冷却風が通過する風量が多い部分に設けられていることが好ましい。
【0027】
取出し筒部6は、
図6(a)に示すように、収納片8に収納されている。この収納片8は、矩形状であり、その長辺が幅方向Xに沿って形成されている。また、
図6(b)に示すように、収納片8及び冷却衣服1の収納片8に対応する位置には、それぞれ面ファスナ8A、8Bがそれぞれ設けられている。
取出し筒部6は、
図7に示すように、命綱7をハーネスに取り付ける際、冷却衣服1の外側に引き出される。取出し筒部6の基端は、冷却衣服1の背面に固定されている。この取出し筒部6は、冷却衣服1の内側と外側を連通し、命綱7が挿入される開口部31を有している。この命綱7は、取出し筒部6を介して、着用者に取り付けられたハーネス10に接続される。
取出し筒部6の先端には、切欠き部33を有する環状袋32が形成されており、この環状袋32に口紐34が収納されている。切欠き部33から口紐34の両端が、環状袋32の外側に延出している。この口紐34は、
図8に示すように、切欠き部33から引き出されることで、開口部31が閉じられ、命綱7の周囲が緊縛される。そして、引き出した口紐34で取出し筒部6の周囲を巻き回し、開口部31を密閉する。
【0028】
風発生装置2は、冷却衣服1の胴体の腰部に形成された取付け孔3に装着されている(
図2)。
この風発生装置2は、
図9に示すように、冷却衣服1の外側から空気を取り込むための空気取込口11と、冷却衣服1の内側に冷却風を送出するための空気送出口12と、空気取込口11が形成されている外側ファンガード13と、空気送出口12が形成されている内側ファンガード14と、冷却衣服1の外側から空気を取込み、冷却衣服1の内部に冷却風を送出する軸流ファン15、軸流ファン15を駆動させ、使用者の身体9の側で軸流ファン15を駆動し、支持するモータ16と、モータ16を覆うキャップ17とを備えている。
この風発生装置2は、環状の固定リング18を使用し、取付け孔3に対して、斜め下方向に5°から35°の角度だけ傾斜させて、取付け孔3に装着されている。そのため、風発生装置2は、その上端部25が外側に突出し、かつその下端部26が冷却衣服1の内側に配置されている。
【0029】
外側ファンガード13は、有底円筒状を有し、その側面が内側ファンガード14に嵌め合わされる。外側ファンガード13の前面には、空気取込口11が複数形成されている。内側ファンガード14は、ドーム型のカバー部20と円環部21を有する有底円筒状をしている。また、内側ファンガード14の側面には、フランジ19が、内側ファンガード14と一体として形成されている。このフランジ19は、円環部21に対して斜めに形成されている。カバー部20には、空気送出口12が複数形成されている。この空気送出口12は、空気取込口11の位置と対向する位置に形成されている。
風発生装置2を、取付け孔3に対して斜め下方向に所定の角度だけ傾斜させて装着することで、空気取込口11は取付け孔3に対して斜め下方向に所定の角度だけ傾斜している。そのため、風発生装置2は、軸流ファン15を回転させることで、斜め下方向から外部の空気を取り込み、その空気は軸流ファン15の軸方向に沿って斜め上方向に移動し、空気送出口12から身体9に向けて冷却風として送出される。
【0030】
また、冷却衣服1において、風発生装置2を装着する取付け孔3の周囲には、
図10に示すように、取付け孔3を取り囲むようにネット45を設けることもできる。このネット45は、着脱可能に設けられている。
【0031】
また、冷却衣服1の前面には、
図11(a)に示すように、フックを取り付けるための連結部材としてのD管50が設けられている。このD管50は、取付部材51を介して、左右の胸元に一つずつ設けられる。D管51には、
図11(b)に示すように、フックを接続する半円形状のフック接続孔52と、取付部材51を通す矩形状の挿入孔53とが形成されている。
取付部材51は、
図11(c)に示すように、帯状であり、一端が冷却衣服1に縫い付けられることで固定されている。この取付部材51には、面ファスナ54,55が設けられている。取付部材51の開放端側が挿入孔53に通された後、取付部材51を折り返し、面ファスナ54,55同士を貼り付けることで、D管50は取付部材51に取り付けられる。
【0032】
次に、本実施形態に係る冷却衣服1の作用効果について、説明する。
使用者が冷却衣服1を着用すると、冷却衣服1と身体9の間に形成される流路30が形成される。そして、風発生装置2を稼働させると、風発生装置2から送出された冷却風は、流路30を移動する。
本実施形態の冷却衣服1は、風発生装置2のすぐ上側に冷却材4を備えているため、風発生装置2の上側の位置に形成される流路30の雰囲気は冷却状態となる。また、風発生装置2は、取付け孔3に対し傾斜して設けられているため、風発生装置2よりも上側の流路30に多量の冷却風を送出する。さらに、冷却風排出路40Aが形成されているため、冷却衣服1の内側と外側は確実に連通される。
そうすると、風発生装置2から排出された冷却風は、
図12に示すように、流路30で冷却され、冷却風排出路40Aを通過し、外側に円滑に排出される(F2)。
そのため、本実施形態の冷却衣服1は、外側から取り込まれる空気(F)の温度が高い場合でも、温度の低い冷却風を流路30に流すことができ、かつ、冷却風排出路40Aを介して、襟元から冷却衣服1の外側に円滑に排出することができ、身体9を効率的に冷却することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る冷却衣服1は、冷却風排出路40Aを介して襟元から冷却風を外側に円滑に排出できるため、冷却衣服1の内側に滞留している冷却風を排出させるための余分な冷却風を送出する必要がなくなる。したがって、モータ16への負担を低減できる。
【0034】
さらに、作業環境の温度が高い場合でも、温度の低い冷却風を流路30に流し、冷却風排出路40Aから効率的に外側に排出することができるため、着用者は、冷却風の風量を増加させる必要がない。そうすると、軸流ファン15の回転数を増加させる必要がなくなり、軸流ファン15を回転させる駆動源であるモータ16から熱が発生することが抑制される。モータ16からの熱の発生が抑制されることで、冷却風の温度が高くなることを防止できる。
【0035】
冷却衣服1の内側に送出される冷却風の温度が高い場合、着用者は不快に感じ、冷却風の風量を増加させるように調節する。そうすると、軸流ファン15の回転数が増加し、モータ16への負担が大きくなり、長期で作業する場合にモータ16の充電が切れてしまうおそれがある。そうすると、モータ16を充電するために一旦作業を中止し、モータ16の充電が完了された後に作業を開始しなければいけないため、作業時間が長くなる。
本実施形態の冷却衣服1は、外側の空気よりも温度が低い冷却風を送出でき、かつ冷却風排出路40Aから外側に冷却風を円滑に排出できるため、着用者は、冷却風の風量を増加させる必要がなくなり、モータ16への負担を軽減でき、冷却衣服1の機能をより長い時間維持することができる。そのため、モータ16を充電する回数を減らすことでき、作業時間を短縮することができる。
【0036】
また、風発生装置2において、軸流ファン15の回転数を増加させると、軸流ファン15の回転音が大きくなる。本実施形態の冷却衣服1は、温度の低い冷却風を流路30に送出し、この冷却風は冷却風排出路40Aから外側に効率的に排出されるため、軸流ファン15の回転数を増加させる必要がなくなり、軸流ファン15の回転音が大きくなることを防止できる。そのため、軸流ファン15の回転音により、着用者へ不快感を与えることがなくなる。
【0037】
冷却衣服1において、第二バンド部42には、ボタン43を係合するための係合孔44が、第二バンド部42の長手方向に沿って、複数形成されているため、ボタン43を係合させる位置を変更することができる。そうすると、冷却風排出路40Aの面積(大きさ)を適宜変更でき、冷却風を通過させる風量を調節できる。そのため、風発生装置2の操作により、冷却風の風量を増加させずに、最適な風量の冷却風を冷却衣服1の内側に流すことができる。
【0038】
冷却材4は、その冷却機能を失った場合に、他の冷却材4と取替える。本実施形態の冷却衣服1において、冷却材4は、腰部に形成された冷却材収容部5に設けられているため、着用者の手が届きやすい部分に設けられている。そのため、着用者は、冷却材4を容易に取替えることができる。また、冷却材4を風発生装置2の近傍に設けることによって、冷却材4がモータ16を冷却する効果も生じる。そうすると、例えば、冷却材4を正面に設けた場合に比べ、モータ16の負担を軽減し、劣化の進行を防止できる。
【0039】
本実施形態の冷却衣服1の取付け孔3の周囲には、風発生装置2を取り囲むようにネット45を設けることもできる。このネット45を設けることで、風発生装置2が地面に落下することを防ぐことができる。
また、網目の小さいネット45を使用することで、外側から風発生装置2に小さなゴミが侵入することを防ぐことができる。そのため、ゴミが侵入することによって、風発生装置2に不具合が生じることを防止できる。
【0040】
また、風発生手段には、空気取込口11を介して取り込まれる空気の方向が変更されると供に、空気排出口12を介して送風される冷却風の方向を変更できる風発生装置2を使用することもできる。この風発生装置2が回転可能に取り付けられた冷却衣服1は、冷却風が流れる向き、および冷却材4(冷却材収容部5)を設ける位置が異なる。
図13に示すように、風発生装置2のフランジ19と内側ファンガード14は、別個の部材で構成され、この内側ファンガード14の円環部21の外周は球面を有している。そのため、円環部21とフランジ19は、球面で接触し、風発生装置2(空気取込口11)の下向きの角度を5〜35°の範囲で任意の角度に設定できる。さらに、風発生装置2は、上下方向の角度だけでなく、左側または右側にも回転することができる。
風発生装置2を左側または右側に回転させると、空気取込口11を介して取り込まれる空気の方向が変更されると供に、空気排出口12を介して送風される冷却風の方向が変更される。そのため、着用者は、冷却風の流れる方向を自在に選択できる。
したがって、風発生装置2全体を円周方向に回転させなくとも、身体9の冷却したい部位を選択的に冷却することができる。
【0041】
さらに、風発生装置2は、取付け孔3に装着した後、取付け孔3の周方向に回転させることができる。風発生装置2を取付け孔3の周方向へ回転させる場合、風発生装置2全体を回転させるため、風発生装置2の上端部25や空気取込口11等も所定の方向に回転する。そのため、空気取込口11を傾斜させる角度を自由に変更することができる。そうすると、空気取込口11を介して取り込まれる空気の方向が変更されると供に、空気排出口12を介して送風される冷却風の方向が変更される。
なお、身体9の全体をむらなく冷却するには、風発生装置2の取付け孔3に対する回転角度は、0°〜45°とすることが好ましい。
【0042】
冷却剤収容部5(冷却材4)は、
図14に示すように、風発生装置2から中心線Lに向かって斜め上方向、かつ、高さ方向Yにおいて背中部分よりも下側に1つ、各風発生装置2の斜め上側に1つずつ、合計3つ設けられている。また、中心の冷却材収容部5は、幅方向Xにおいて、風発生装置2,2の間に設けられている。
【0043】
各風発生装置2を内側(右側の風発生装置2は左回り、左側の風発生装置2は右回り)に所定の角度だけ回転させ装着させた場合、風発生装置2から排出される空気の大部分が背中の中央付近を通過し(空気の流れF1)、冷却風排出路40Aを介して、襟元から冷却衣服1の外側に排出される(空気の流れF2)。
そのため、身体9の背中部分が重点的に冷却し、襟元から流出した冷却風は後頭部を冷却することができる。この場合、冷却材4が設けられている部分の流路30を多量の冷却風が通過する。そのため、外部よりも温度の低い冷却風を冷却風排出路40Aに向けて送出でき、身体9を効率的に冷却することができる。
また、送出される冷却風の方向が変更されると、流路30内での冷却風の流れる方向や流れる経路が変更されるため、空気の流れる方向を自在に選択でき、身体9の冷却したい部位を選択的に冷却することもできる。
【0044】
一方、
図15に示すように、各風発生装置2を外側(右側の風発生装置2は右回り、左側の風発生装置2は左回り)に所定の角度だけ回転させ装着させた場合、風発生装置2から排出される空気の大部分が、冷却衣服1の脇の下を通過して(空気の流れF1)、身体9の表面に回りこみ(空気の流れF2)、冷却風排出路40Aを通過して、襟元から流出される(空気の流れF3)。
この場合、冷却材4が設けられている部分の流路30を多量の冷却風が通過するため、外部よりも温度の低い冷却風を冷却風排出路40Aに向けて送出でき、身体9を効率的に冷却することができる。また、冷却風により、身体9全体を包み込むように冷却し、空気の流れF3に示すように、襟元から流出されるため、使用者の顔も冷却することができる。
【0045】
また、冷却風排出機構40は、
図16に示すように、係合部としてのボタン46を有し、一端が冷却衣服1の裏地に固定されバンド部47と、係合孔48を有し、裏地に固定された取付部49とによって構成することもできる。バンド部47は、伸縮性のある素材、例えば、ゴムで構成することができる。
バンド部47は、襟元の下部分、かつ、中心線Lから所定の距離だけ離れた位置に固定されている(以下、固定位置47Aと記す。)
一方、取付部49は、中心線Lを中心として、固定位置47Aと対向する位置に固定されている(以下、固定位置49Aと記す。)。
なお、ボタン46は、バンド部47に沿って、複数設けてもよい。
【0046】
冷却風排出路40Aは、
図17に示すように、バンド部47のボタン46を係合孔48に係合し、バンド部47の固定位置47Aから取付部49の固定位置49Aまでの直線の長さを、バンド部47の固定位置から取付部49までの裏地に沿った長さよりも短くするとともに、裏地を弛ませることにより、形成される。
この冷却衣服1は、片側の肩部分にのみバンド部47が設けられているため、バンド部が両肩部分に設けられている場合と比べ、着用者に違和感を生じさせることが少なくなる。
【0047】
[第二実施形態]
本実施形態では、冷却風排出機構60が幅方向Xに2つ設けられた冷却衣服1について説明する。なお、第一実施形態の冷却衣服1と同様な構成については、説明を省略する。
本実施形態の冷却衣服1には、
図18に示すように、肩部分、かつ冷却衣服の幅方向Yの中心線Lの左側および右側に冷却風排出機構60がそれぞれ設けられている。この冷却風排出機構60は、第一冷却風排出機構61及び第二冷却風排出機構62を備えている。
【0048】
第一冷却風排出機構61は、
図19に示すように、幅方向Xの中心線Lの近傍の裏地に固定された取付部としてのボタン63と、中心線Lから幅方向Xに所定の間隔を空けて裏地に固定されたバンド部64とを有する。
第二冷却風排出機構62は、第一冷却風排出機構61と同様に、幅方向Xの中心線L側の裏地に固定された取付部としてのボタン65と、中心線Lから幅方向Xに所定の間隔を空けて裏地に固定されたバンド部66とを有する。
なお、各ボタン63,65は、バックネックポイントに設けることが好ましい。バックネックポイントとは、首を前に倒したときに骨が出る位置を示す。
各バンド部64,66には、その長手方向に沿って、係合孔67が複数形成されている。
【0049】
冷却風排出路60Aは、
図20に示すように、バンド部66はボタン65に係合することにより形成される。具体的には、バンド部66を引っ張り、ボタン65を係合孔67に係合させると、
図21に示すように、バンド部64の固定位置からボタン63の固定位置までの直線の長さL4が、バンド部64の固定位置からボタン63までの裏地に沿った長さL5よりも短くなる。そうすると、裏地が弛み、冷却風排出路60Aが中心線Lの片側にのみ形成される。
【0050】
次に、本実施形態の冷却衣服1の作用効果について説明する。
本実施形態の冷却衣服1は、第一実施形態で述べた作用効果に加え、以下の作用効果が生じる。
本実施形態に係る冷却衣服1は、中心線Lの片側にのみ冷却風排出路60Aを形成することができ、例えば、第一冷却風排出機構61によって構成される冷却風排出路60Aを形成したとする。そうすると、流路30を通過し、冷却された冷却風は、
図22に示すように、冷却風排出路60Aから外側に排出される。そのため、冷却風排出路60Aが形成されている側(
図22上、右側)が集中的に冷却される。
つまり、冷却風排出路60Aを冷却衣服の片側にのみ形成することで、この冷却風排出路60Aに冷却風を誘導することができ、冷却したい領域を選択することができる。
このように冷却風の流れる領域を選択できることにより、例えば、着用者の右側部分に熱源があった場合や、着用者の右側部分に強い日差しが当たっている場合、着用者の右側部分を集中的に冷却でき、身体を効率的に冷却できる。
【0051】
また、冷却風排出機構60は、
図23に示すように、襟元よりも下部分、かつ、中心線L上に固定された2つのバンド部64,66と、中心線Lから所定の距離離れた位置に固定された2つの取付部68,69とから構成することもできる。なお、バンド部64,66の固定位置は、中心線L上に限定されず、中心線Lから幅方向Xにずらした位置でもよい。
冷却風排出路60Aは、
図24に示すように、バンド部64,66を取付部68,69に係合することで形成することができる。
【0052】
以上、第一実施形態および第二実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
例えば、冷却材収容部5は、
図25に示すように、線ファスナが設けられ挿入口を形成し、この挿入口の周囲は玉縁飾りが施すこともできる。さらに、収納片8は、その長辺が高さ方向Yに沿って形成することもできる。この場合、収納片8は、一辺が冷却衣服1に対して接続され、自在に開閉できる構造を有している。
【0053】
また、冷却材収容部5は、冷却衣服1の生地に縫合して形成されているが、冷却材収容部5を別体として作成し、面ファスナを介して冷却衣服1に取り付けることもでき、冷却材4の取替えが容易になる。
さらに、冷却材4を設ける位置は、背面であれば限定されないが、風発生装置2の近傍であって、冷却風の風下となる位置が最も好ましい。
風発生装置2は、取付け孔3に対して傾斜して装着されていない風発生手段も使用することができる。この場合でも、温度の低い冷却風を流路30に流すことができ、冷却風排出路40Aから排出できるため、身体9を効率よく冷却できる。
【解決手段】冷却衣服1は、空気を取り込む空気取込口11、冷却風を送出する空気送出口12を有する風発生装置2が装着される取付け孔3が背面に形成され、着丈方向において風発生装置2の下端部よりも上側に設けられた冷却材4と、冷却風が通過する冷却風排出路40Aを構成し、肩部分に設けられた冷却風排出機構40とを備える。そして、この冷却衣服1は、風発生装置2が取付け孔3に対して斜め下方向に5ー〜35ー傾斜して装着され、風発生装置2を作動させたときに、空気送出口12から風発生装置2の斜め上方向に冷却風が送出され、この冷却風が冷却風排出路40Aを介して、外側に排出されることを特徴とする。