特許第6233677号(P6233677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233677
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】放熱板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20171113BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20171113BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20171113BHJP
   B22F 3/26 20060101ALI20171113BHJP
   B22F 7/06 20060101ALI20171113BHJP
   C22C 27/04 20060101ALI20171113BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20171113BHJP
   C22F 1/18 20060101ALI20171113BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   H01L23/36 M
   B22F3/10 D
   B22F3/24 C
   B22F3/24 F
   B22F3/26 C
   B22F7/06 Z
   C22C27/04 102
   C22C1/04 D
   C22F1/18 C
   !C22F1/00 613
   !C22F1/00 623
   !C22F1/00 627
   !C22F1/00 628
   !C22F1/00 630M
   !C22F1/00 650E
   !C22F1/00 650F
   !C22F1/00 685A
   !C22F1/00 687
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 694A
【請求項の数】27
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-158064(P2017-158064)
(22)【出願日】2017年8月18日
【審査請求日】2017年8月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-170339(P2016-170339)
(32)【優先日】2016年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-156796(P2017-156796)
(32)【優先日】2017年8月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593178340
【氏名又は名称】JFE精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083253
【弁理士】
【氏名又は名称】苫米地 正敏
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 星明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 功一
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−358266(JP,A)
【文献】 特開2000−323632(JP,A)
【文献】 特開2007−115731(JP,A)
【文献】 特開2003−37230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F1/00−8/00
C22C1/04−1/05
5/00−25/00
27/00−28/00
30/00−30/06
33/02
35/00−45/10
C22F1/00−3/02
H01L23/29
23/34−23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
H05K7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向において、Cu−Mo複合体層、Cu層、Cu−Mo複合体層がこの順に積層した放熱板であって、
Cu−Mo複合体層は、Cuマトリクス中に扁平なMo相が分散した板厚断面組織を有することを特徴とする放熱板。
【請求項2】
板厚方向において、Cu−Mo複合体層とCu層が交互に積層することで3層以上のCu−Mo複合体層と2層以上のCu層で構成されるとともに、両面の最外層がCu−Mo複合体層からなる放熱板であって、
Cu−Mo複合体層は、Cuマトリクス中に扁平なMo相が分散した板厚断面組織を有することを特徴とする放熱板。
【請求項3】
Cu−Mo複合体層はCu含有量が10〜50質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱板。
【請求項4】
Cu−Mo複合体層はCu含有量が20〜30質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱板。
【請求項5】
板厚方向の熱伝導率が200W/m・K以上、50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率が10.0ppm/K以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放熱板。
【請求項6】
板厚方向の熱伝導率が250W/m・K以上、50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率が8.0ppm/K以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放熱板。
【請求項7】
積層したCu−Mo複合体層とCu層とからなる放熱板本体の片面又は両面に、板厚方向の熱伝導率が放熱板本体よりも10W/m・K以上低くならないような膜厚のめっき皮膜が形成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の放熱板。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の放熱板の製造方法であって、
Cuマトリクス中にMo相が分散した板厚断面組織を有するCu−Mo複合材(a)とCu材(b)を積層させ、該積層体を拡散接合した後、冷間圧延(x)を施すことにより、Cu−Mo複合材(a)によるCu−Mo複合体層とCu材(b)によるCu層が積層した放熱板を得ることを特徴とする放熱板の製造方法。
【請求項9】
Cu−Mo複合材(a)は、Mo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程を経て得られたものであることを特徴とする請求項8に記載の放熱板の製造方法。
【請求項10】
Cu−Mo複合材(a)は、Mo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体を緻密化処理する工程を経て得られたものであることを特徴とする請求項8に記載の放熱板の製造方法。
【請求項11】
Cu−Mo複合材(a)は、Mo粉末又はMo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体に非酸化性雰囲気中又は真空中で溶融したCuを含浸させる工程を経て得られたものであることを特徴とする請求項8に記載の放熱板の製造方法。
【請求項12】
冷間圧延(x)の圧下率が70〜99%であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の放熱板の製造方法。
【請求項13】
冷間圧延(x)の圧下率が90〜96%であることを特徴とする請求項12に記載の放熱板の製造方法。
【請求項14】
冷間圧延(x)をクロス圧延で行うことを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の放熱板の製造方法。
【請求項15】
Cu−Mo複合材(a)は、Mo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体を緻密化処理する工程と、前記緻密化処理されたCu−Mo複合材に圧延(y)を施す工程を経て得られたものであることを特徴とする請求項8に記載の放熱板の製造方法。
【請求項16】
Cu−Mo複合材(a)は、Mo粉末又はMo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体に非酸化性雰囲気中又は真空中で溶融したCuを含浸させる工程と、前記Cuを含浸させたCu−Mo複合材に圧延(y)を施す工程を経て得られたものであることを特徴とする請求項8に記載の放熱板の製造方法。
【請求項17】
冷間圧延(x)と圧延(y)を合わせたCu−Mo複合材(a)の総圧下率が70〜99%であることを特徴とする請求項15又は16に記載の放熱板の製造方法。
【請求項18】
冷間圧延(x)と圧延(y)を合わせたCu−Mo複合材(a)の総圧下率が90〜96%であることを特徴とする請求項17に記載の放熱板の製造方法。
【請求項19】
圧延(y)をクロス圧延で行うことを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載の放熱板の製造方法。
【請求項20】
圧延(y)でCu−Mo複合材(a)を一方向圧延した場合に、冷間圧延(x)では、Cu−Mo複合材を圧延(y)の圧延方向と直交する方向に圧延することを特徴とする請求項15〜19のいずれかに記載の放熱板の製造方法。
【請求項21】
Cu−Mo複合材(a)はCu含有量が10〜50質量%であることを特徴とする請求項8〜20のいずれかに記載の放熱板の製造方法。
【請求項22】
Cu−Mo複合材(a)はCu含有量が20〜30質量%であることを特徴とする請求項8〜20のいずれかに記載の放熱板の製造方法。
【請求項23】
Cu−Mo複合材(a)のCu含有量が20mass%未満であり、冷間圧延(x)と圧延(y)を合わせたCu−Mo複合材(a)の総圧下率が70%以上である製造方法(但し、Cu−Mo複合材(a)の圧延(y)を行わない製造方法を含む。)であって、
下記(1)又は/及び(2)の温間圧延を行うことを特徴とする請求項21に記載の放熱板の製造方法。
(1)冷間圧延(x)に代えて温間圧延を行う。
(2)圧延(y)を温間圧延で行う。
【請求項24】
冷間圧延(x)と圧延(y)を合わせたCu−Mo複合材(a)の総圧下率が96%以上である製造方法(但し、Cu−Mo複合材(a)の圧延(y)を行わない製造方法を含む。)であって、
下記(1)又は/及び(2)の温間圧延を行うことを特徴とする請求項22に記載の放熱板の製造方法。
(1)冷間圧延(x)に代えて温間圧延を行う。
(2)圧延(y)を温間圧延で行う。
【請求項25】
積層したCu−Mo複合体層とCu層とからなる放熱板本体の片面又は両面に、板厚方向での熱伝導率が放熱板本体よりも10W/m・K以上低くならないような膜厚のめっき皮膜を形成することを特徴とする請求項8〜24のいずれかに記載の放熱板の製造方法。
【請求項26】
請求項1〜7のいずれかに記載の放熱板を備えたことを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項27】
請求項26に記載の半導体パッケージを備えたことを特徴とする半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの発熱体から発生する熱を効率的に放散させるために用いる放熱板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子から発生する熱を半導体機器から効率的に放散させるために、放熱板(ヒートシンク)が用いられている。この放熱板は、その機能上高い熱伝導率が求められるとともに、半導体やセラミック回路基板、金属パッケージ部材などにはんだ付けやろう付けで接合されるため、接合される部材に近い熱膨張率(低熱膨張率)であることが求められる。
【0003】
従来、高熱伝導率、低熱膨張率の放熱板として、Mo−Cu複合材が用いられている(例えば、特許文献1)。一般に、放熱板に用いるMo−Cu複合材は、Mo粉末又はMo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とし、この圧粉体に必要に応じて還元焼結を施した後、Cu溶浸或いは緻密化処理を施すことによりMo−Cu複合材とし、このMo−Cu複合材を圧延することで製造される。MoはCuとはほとんど固溶しないことから、このMo−Cu複合材はMoとCuの2相組織となり、低熱膨張率であるMoと高熱伝導率であるCuの特性を活かした放熱板とすることができる。
特許文献2には、上記のようなMo−Cu複合材をベースとした放熱板として、特定の圧延工程を経て得られたMo−Cu複合材の両面にCu板を圧着したものが示されており、この放熱板は、[Cu/Mo/Cu]クラッド材よりも高い熱伝導率を有し、プレス打ち抜き性にも優れているとしている。
【0004】
また、Mo−Cu複合材は、圧延することにより熱膨張率が低下することが定性的に知られており、このため上記のように圧延工程を経て製造される。従来、Mo粒子は硬くて1次粒子が小さいことから、圧延で変形されにくいと考えられており、このためMo−Cu複合材の圧延は、200〜400℃程度の温間圧延で実施されている(特許文献1)。また、特許文献2には、一次圧延で温間圧延を実施し、二次圧延で冷間圧延を実施する製造方法が示されているが、この製造方法においても、Mo粒子は変形されにくいという前提で、温間圧延(一次圧延)を必須の工程としている。
近年、半導体の高出力化により放熱板の放熱性がより重要になっている。一方、半導体モジュールの小型化へのニーズも高く、放熱板もより小さな面積からの放熱が求められている。そのため、板面方向での放熱よりも、厚さ方向での放熱性がより重要となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−307701号公報
【特許文献2】特開2001−358266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者が検討したところによれば、特許文献2のようなMo−Cu複合材とCu材のクラッド構造では、厚さ方向での熱伝導率の向上は十分ではなく、厚さ方向でのより高い熱伝導率が得られる最適なクラッド構造があることが判った。
したがって本発明の目的は、Mo−Cu複合材とCu材のクラッド構造を有する低熱膨張率、高熱伝導率の放熱板を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、そのような優れた熱特性を有する放熱板を安定して且つ低コストに製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献2に記載の放熱板のクラッド構造は、Cu/(Cu−Mo)/Cu構造であるが、本発明者が検討したところによれば、(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)構造とした方が、同程度の低熱膨張率でありながら、より高い熱伝導率が得られることが判った。具体的には、(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)構造では、同じCu比率で圧下率が同じでも、Cu/(Cu−Mo)/Cu構造に較べて板厚方向の熱伝導率が10W/m・K以上高くなり、条件によってはさらに高くなることが判った。また、そのような(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)構造のクラッド材を製造する際に、材料を高圧下率(総圧下率)で冷間圧延することにより、熱膨張率がより効果的に低下することが判った。さらに、そのような(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)構造のクラッド材において、特にCu−Mo複合体層のCu含有量を最適化することにより、高熱伝導率と低熱膨張率を高度に満足したものとなることが判った。
【0008】
本発明は、以上のような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]板厚方向において、Cu−Mo複合体層、Cu層、Cu−Mo複合体層がこの順に積層した放熱板であって、
Cu−Mo複合体層は、Cuマトリクス中に扁平なMo相が分散した板厚断面組織を有することを特徴とする放熱板。
[2]板厚方向において、Cu−Mo複合体層とCu層が交互に積層することで3層以上のCu−Mo複合体層と2層以上のCu層で構成されるとともに、両面の最外層がCu−Mo複合体層からなる放熱板であって、
Cu−Mo複合体層は、Cuマトリクス中に扁平なMo相が分散した板厚断面組織を有することを特徴とする放熱板。
[3]上記[1]又は[2]の放熱板において、Cu−Mo複合体層はCu含有量が10〜50質量%であることを特徴とする放熱板。
【0009】
[4]上記[1]又は[2]の放熱板において、Cu−Mo複合体層はCu含有量が20〜30質量%であることを特徴とする放熱板。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの放熱板において、板厚方向の熱伝導率が200W/m・K以上、50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率が10.0ppm/K以下であることを特徴とする放熱板。
[6]上記[1]〜[4]のいずれかの放熱板において、板厚方向の熱伝導率が250W/m・K以上、50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率が8.0ppm/K以下であることを特徴とする放熱板。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの放熱板において、積層したCu−Mo複合体層とCu層とからなる放熱板本体の片面又は両面に、板厚方向の熱伝導率が放熱板本体よりも10W/m・K以上低くならないような膜厚のめっき皮膜が形成されたことを特徴とする放熱板。
【0010】
[8]上記[1]〜[6]のいずれかの放熱板の製造方法であって、
Cuマトリクス中にMo相が分散した板厚断面組織を有するCu−Mo複合材(a)とCu材(b)を積層させ、該積層体を拡散接合した後、冷間圧延(x)を施すことにより、Cu−Mo複合材(a)によるCu−Mo複合体層とCu材(b)によるCu層が積層した放熱板を得ることを特徴とする放熱板の製造方法。
[9]上記[8]の製造方法において、Cu−Mo複合材(a)は、Mo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程を経て得られたものであることを特徴とする放熱板の製造方法。
【0011】
[10]上記[8]の製造方法において、Cu−Mo複合材(a)は、Mo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体を緻密化処理する工程を経て得られたものであることを特徴とする放熱板の製造方法。
[11]上記[8]の製造方法において、Cu−Mo複合材(a)は、Mo粉末又はMo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体に非酸化性雰囲気中又は真空中で溶融したCuを含浸させる工程を経て得られたものであることを特徴とする放熱板の製造方法。
[12]上記[8]〜[11]のいずれかの製造方法において、冷間圧延(x)の圧下率が70〜99%であることを特徴とする放熱板の製造方法。
【0012】
[13]上記[12]の製造方法において、冷間圧延(x)の圧下率が90〜96%であることを特徴とする放熱板の製造方法。
[14]上記[8]〜[13]のいずれかの製造方法において、冷間圧延(x)をクロス圧延で行うことを特徴とする放熱板の製造方法。
[15]上記[8]の製造方法において、Cu−Mo複合材(a)は、Mo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体を緻密化処理する工程と、前記緻密化処理されたCu−Mo複合材に圧延(y)を施す工程を経て得られたものであることを特徴とする放熱板の製造方法。
【0013】
[16]上記[8]の製造方法において、Cu−Mo複合材(a)は、Mo粉末又はMo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体に非酸化性雰囲気中又は真空中で溶融したCuを含浸させる工程と、前記Cuを含浸させたCu−Mo複合材に圧延(y)を施す工程を経て得られたものであることを特徴とする放熱板の製造方法。
[17]上記[15]又は[16]の製造方法において、冷間圧延(x)と圧延(y)を合わせたCu−Mo複合材(a)の総圧下率が70〜99%であることを特徴とする放熱板の製造方法。
[18]上記[17]の製造方法において、冷間圧延(x)と圧延(y)を合わせたCu−Mo複合材(a)の総圧下率が90〜96%であることを特徴とする放熱板の製造方法。
【0014】
[19]上記[15]〜[18]のいずれかの製造方法において、圧延(y)をクロス圧延で行うことを特徴とする放熱板の製造方法。
[20]上記[15]〜[19]のいずれかの製造方法において、圧延(y)でCu−Mo複合材(a)を一方向圧延した場合に、冷間圧延(x)では、Cu−Mo複合材を圧延(y)の圧延方向と直交する方向に圧延することを特徴とする放熱板の製造方法。
[21]上記[8]〜[20]のいずれかの製造方法において、Cu−Mo複合材(a)はCu含有量が10〜50質量%であることを特徴とする放熱板の製造方法。
[22]上記[8]〜[20]のいずれかの製造方法において、Cu−Mo複合材(a)はCu含有量が20〜30質量%であることを特徴とする放熱板の製造方法。
【0015】
[23]上記[21]の製造方法において、Cu−Mo複合材(a)のCu含有量が20mass%未満であり、冷間圧延(x)と圧延(y)を合わせたCu−Mo複合材(a)の総圧下率が70%以上である製造方法(但し、Cu−Mo複合材(a)の圧延(y)を行わない製造方法を含む。)であって、
下記(1)又は/及び(2)の温間圧延を行うことを特徴とする放熱板の製造方法。
(1)冷間圧延(x)に代えて温間圧延を行う。
(2)圧延(y)を温間圧延で行う。
[24]上記[22]の製造方法において、冷間圧延(x)と圧延(y)を合わせたCu−Mo複合材(a)の総圧下率が96%以上である製造方法(但し、Cu−Mo複合材(a)の圧延(y)を行わない製造方法を含む。)であって、
下記(1)又は/及び(2)の温間圧延を行うことを特徴とする放熱板の製造方法。
(1)冷間圧延(x)に代えて温間圧延を行う。
(2)圧延(y)を温間圧延で行う。
【0016】
[25]上記[8]〜[24]のいずれかの製造方法において、積層したCu−Mo複合体層とCu層とからなる放熱板本体の片面又は両面に、板厚方向での熱伝導率が放熱板本体よりも10W/m・K以上低くならないような膜厚のめっき皮膜を形成することを特徴とする放熱板の製造方法。
[26]上記[1]〜[7]のいずれかに記載の放熱板を備えたことを特徴とする半導体パッケージ。
[27]上記[26]に記載の半導体パッケージを備えたことを特徴とする半導体モジュール。
【発明の効果】
【0017】
本発明の放熱板は、低熱膨張率、高熱伝導率の優れた熱特性を有する。また、本発明の製造方法によれば、そのような優れた熱特性を有する放熱板を安定して且つ低コストに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】3層クラッド構造を有する本発明の放熱板の板厚断面を模式的に示す説明図
図2】5層クラッド構造を有する本発明の放熱板の板厚断面を模式的に示す説明図
図3】実施例の放熱板の熱特性(板厚方向の熱伝導率、50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率)を示すグラフ
図4】実施例の放熱板の熱特性(板厚方向の熱伝導率、50℃から400℃までの板面内平均熱膨張率)を示すグラフ
図5】実施例の放熱板の熱特性(板厚方向の熱伝導率、50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率)を示すグラフ
図6】実施例の放熱板の熱特性(板厚方向の熱伝導率、50℃から400℃までの板面内平均熱膨張率)を示すグラフ
図7】実施例の放熱板であって、製造時における冷間圧延の圧下率が異なる放熱板の熱特性(板厚方向の熱伝導率、50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率)を示すグラフ
図8】実施例の放熱板であって、製造時における冷間圧延の圧下率が異なる放熱板の熱特性(板厚方向の熱伝導率、50℃から400℃までの板面内平均熱膨張率)を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の放熱板のうち3層クラッド構造のものは、板厚方向において、Cu−Mo複合体層、Cu層、Cu−Mo複合体層がこの順に積層した放熱板であって、Cu−Mo複合体層は、Cuマトリクス中に扁平なMo相が分散した板厚断面組織を有する。図1は、この3層クラッド構造を有する本発明の放熱板の板厚断面を模式的に示している。
本発明の放熱板のCu−Mo複合体層とCu層は、積層させたCu−Mo複合材とCu材を拡散接合させることにより構成されるものであり、両層間には拡散接合部を有するが、両部材のCuどうし(Cu−Mo複合材のCuとCu材)が拡散接合したものであるため、健全な拡散接合部が得られる。例えば、Mo(Mo材)とCu(Cu材)をクラッドする場合を考えると、MoとCuは合金化しないため、両部材の接合は拡散接合ではなく機械的接合になるが、このような接合では、接合界面に酸化膜や微細な空隙が残存しやすく、これらを起点として割れなどを生じやすい。これに対して本発明のように両部材のCuどうし(Cu−Mo複合材のCuとCu材)が拡散接合することにより、接合界面に酸化膜や微細な空隙が残存するようなことがなく、健全な接合部が得られる。
【0020】
本発明の放熱板は5層以上のクラッド構造としてもよく、このクラッド構造のものは、板厚方向において、Cu−Mo複合体層とCu層が交互に積層することで3層以上のCu−Mo複合体層と2層以上のCu層で構成されるとともに、両面の最外層がCu−Mo複合体層からなる放熱板であって、Cu−Mo複合体層は、Cuマトリクス中に扁平なMo相が分散した板厚断面組織を有する。図2は、5層クラッド構造を有する本発明の放熱板の板厚断面を模式的に示している。
【0021】
以上のような両面の最外層がCu−Mo複合体層からなる本発明の放熱板(例えば(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)構造の放熱板)は、特許文献2に示されるCu/(Cu−Mo)/Cu構造の放熱板に較べて高い熱伝導率を有するが、これは、以下のような作用効果の違いによるものと考えられる。すなわち、特許文献2に示されるCu/(Cu−Mo)/Cu構造の場合には、熱伝導率が外層(Cu層)>内層(Cu−Mo複合体層)であるため外層・内層間の界面の熱抵抗が高く、外層(Cu層)に入った熱が外層・内層間の界面で反射・散乱して熱流が乱れるため、熱が内層(Cu−Mo複合体層)側にうまく伝わらず、その分、板厚方向の熱伝導率は低くなるものと考えられる。これに対して本発明の(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)構造の場合には、熱伝導率が外層(Cu−Mo複合体層)<内層(Cu層)であるため、外層・内層間の界面の熱抵抗がほとんどなく、外層(Cu−Mo複合体層)に入った熱がそのまま内層(Cu層)側に伝わるので、板厚方向での高い熱伝導率が得られるものと考えられる。
【0022】
クラッド構造における積層数は特に制限はなく、積層数が多い方が熱膨張率が低くなり、また、プレス加工性も良くなるのでプレス加工には有利になる。但し、積層数が増えると厚さ方向の熱伝導率が若干低下傾向になることから、全積層数で11層程度が事実上の上限となる。
Cu−Mo複合体層のCu含有量は特に制限はないが、一般には10〜50質量%程度が適当である。後述するように、Cu含有量が比較的多い方(例えば、40質量%以上)が高圧下率で冷間圧延する場合に冷間圧延性が向上し、高圧下率で冷間圧延することによる熱膨張率の低下効果が得られやすい。一方、Cu層の熱膨張を拘束する効果(Cu層を両側から挟んで物理的に拘束する効果)を高める点では、圧延の圧下率だけでなく、Mo含有量が多いほうが好ましいが、熱伝導率がトレードオフの関係にあり、また、Mo含有量が多すぎると冷間圧延が難しくなる。このため主に冷間圧延性などの加工性の観点からは、Cu含有量は30〜45質量%程度が好ましいと言える。これに対して、放熱板の熱特性の観点からは、Cu−Mo複合体層のCu含有量は15〜30質量%程度が好適であり、高熱伝導率と低熱膨張率を高度に満足する優れた熱特性が得られることが判った。このため放熱板の熱特性の観点からは、Cu−Mo複合体層のCu含有量は15〜30質量%程度とすることが好ましい。一方、後述するように、Cu−Mo複合体層(Cu−Mo複合材)のCu含有量が20質量%未満では冷間圧延性に問題を生じる可能性もあるので、放熱板の熱特性と冷間圧延性の観点からは、Cu−Mo複合体層のCu含有量は20〜30質量%程度とすることがより好ましい。
【0023】
図3及び図4は、後述する実施例の放熱板の一部について、それらの熱特性を整理して示したものであり、図3は板厚方向の熱伝導率(室温での熱伝導率)と50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率を、図4は板厚方向の熱伝導率(室温での熱伝導率)と50℃から400℃までの板面内平均熱膨張率を、それぞれ示している。ここで、板面内熱膨張率は押棒式変位検出法で測定されたものであり、50℃−800℃と50℃−400℃における各伸び量の差を温度差で割り算して、50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率と50℃から400℃までの板面内平均熱膨張率を求めた。また、板厚方向の熱伝導率(室温での熱伝導率)はフラッシュ法で測定した。この熱特性の測定・算出方法は、後述する図5図8の熱特性についても同様である。
【0024】
図3及び図4には、Cu−Mo複合材単体からなる放熱板(比較例)、特許文献2のCu/(Cu−Mo)/Cu構造の3層クラッド材からなる放熱板(比較例)、本発明の3層〜7層クラッド材からなる放熱板(発明例)について、それらの熱特性を示している。図中、丸で囲い、矢印でつないだものが、ほぼ同等の密度を有する放熱板である。これによれば、ほぼ同等の密度を有する放熱板の熱特性を較べた場合、特許文献2のCu/(Cu−Mo)/Cu構造の放熱板は、Cu−Mo複合材単体の放熱板に較べて板厚方向の熱伝導率が若干低いが、板面内熱膨張率が大きく低下している。そして、このCu/(Cu−Mo)/Cu構造の放熱板の熱特性に対して、本発明の放熱板は、板面内熱膨張率はほぼ同等でありながら、板厚方向の熱伝導率が大幅に高く(この例では約50〜70W/m・K程度高い)なっている。
【0025】
図5及び図6は、本発明の放熱板について、Cu−Mo複合体層のCu含有量が熱特性に及ぼす影響を示したもので、後述する実施例の放熱板(本発明例の3層クラッド材)の一部について、それらの熱特性を整理して示したものである。図5は板厚方向の熱伝導率(室温での熱伝導率)と50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率を、図6は板厚方向の熱伝導率(室温での熱伝導率)と50℃から400℃までの板面内平均熱膨張率を、それぞれ示している。また、図5及び図6には、Cu−Mo複合体のCu含有量が本発明例の放熱板とほぼ同等であるCu−Mo複合体単体からなる放熱板(比較例)の熱特性も示してあり、図中、実線の矢印でつないだものが、Cu−Mo複合体のCu含有量がほぼ同等である「Cu−Mo複合体単体からなる放熱板」と「本発明例の放熱板」である。
【0026】
図5及び図6によれば、本発明例の放熱板は、Cu−Mo複合体層のCu含有量が15〜45mass%の範囲において、Cu含有量が低いほど(Mo含有量が高いほど)板厚方向の熱伝導率が高く、且つ板面内平均熱膨張率は低くなっている。なお、後述するようにCu−Mo複合体層(Cu−Mo複合材)のCu含有量が20mass%未満となると冷間圧延性が低下するので、Cu−Mo複合体層のCu含有量が15mass%のものは温間圧延で製造したものである。また、本発明例の放熱板の板厚方向の熱伝導率は、Cu−Mo複合体のCu含有量がほぼ同等であるCu−Mo複合体単体からなる放熱板(比較例)に較べてかなり高いが、その程度は、Cu−Mo複合体のCu含有量が比較的低い場合(15mass%、25mass%)に特に顕著である。この図5及び図6の結果から、Cu−Mo複合体層のCu含有量が15〜30質量%(さらに冷間圧延性を考慮すると20〜30質量%)の場合に、特に優れた熱特性が得られるものと考えられる。
【0027】
Cu−Mo複合体層とCu層の各厚さ、Cu−Mo複合体層とCu層の層厚比、放熱板の板厚なども特に制限はないが、5層以上(特に7層以上)の多層のクラッド材の場合には、Cu−Mo複合体層によるCu層の拘束力を強くするため、複数のCu層の厚さは同じであることが好ましい。また、5層以上の多層の場合は、熱特性を確保するとともに、圧延時や実用時に反りやゆがみ等が発生しないように、厚さ方向中央のCu−Mo複合体層を中心として厚さ方向で対称形の構造(Cu−Mo複合体層とCu層の厚さが対称形の構造)が好ましい。また、放熱板の板厚は1mm前後の場合が多いが、特に制限はない。
【0028】
Cu−Mo複合体層とCu層の層厚比については、Cu−Mo複合体層に対してCu層の層厚比が大きいと、Cu−Mo複合体層によるCu層の拘束が弱くなるので熱膨張率が高くなり、一方、Cu層の層厚比が小さいと熱伝導率が低くなる。したがって、得ようとする熱特性に応じて、Cu−Mo複合体層とCu層の層厚比を適宜選択すればよいが、低温(例えば200℃、400℃)での熱膨張率を低くするという観点からは、Cu−Mo複合体層に対してCu層をあまり厚くしない方がよい。
また、Cu−Mo複合体層のCu含有量やCu−Mo複合体層とCu層の層厚比は放熱板の密度にリンクするので、この密度は9.25〜9.55g/cm程度であることが好ましく、9.30〜9.45g/cm程度であることが特に好ましい。
【0029】
本発明の放熱板は、事前に製作されたCu−Mo複合材とCu材を拡散接合した後、圧延することにより製造され、また、Cu−Mo複合材の製造工程でも圧延が行われることがあるので、全体が圧延組織であり、また、Cu−Mo複合体層のCuマトリクス中に分散するMo相は扁平に延伸された形態を有し、通常、板厚断面組織中でのMo相のアスペクト比(圧延方向でのアスペクト比)は2超となる。また、このように圧延(特に冷間圧延)によってMo相が扁平となることにより熱膨張率が低下するので、アスペクト比(圧延方向でのアスペクト比)は3以上がより好ましい。
【0030】
ここで、アスペクト比とは、圧延方向における板厚断面組織中でのMo相の長軸/短軸(長さ比)であり、本発明では、圧延方向での板厚断面組織(イオンミリング仕上げした板厚断面組織)をSEMなどで観察し、任意の1視野に含まれる各Mo相の長軸/短軸を求め、それらの平均値をもって「板厚断面組織中でのMo相のアスペクト比」とする。また、Cu−Mo複合体層が板面内で直交する方向(X軸方向、Y軸方向)での圧延工程を経ている場合には、両圧延方向でのアスペクト比が上記条件を満すようにすることが好ましい。
【0031】
なお、Cu−Mo複合体層のCuマトリクス中に分散するMo相は、Cu−Mo複合体層のMo含有量や圧延の形態(一方向圧延、クロス圧延)などにより、扁平に延伸された形態が異なり、例えば、Cu−Mo複合体層のMo含有量が比較的少ない場合には、扁平に延伸されたMo相は、個々が独立した島状に近い形態を有するが、Mo含有量が多くなると、扁平に延伸されたMo相どうしが繋がり、このようなMo相とCuマトリクスが混在した縞状なしはマーブル状のような形態(圧延組織)となる。したがって、後者の場合には、アスペクト比は明らかに2超となるが、具体的に定量化することができない場合がある。
【0032】
本発明の放熱板が主に適用される半導体パッケージは、半導体が作動と休止を繰り返すことから、常温(寒冷地の場合には−50℃程度の場合もある)から半導体作動時の200℃程度までの昇温を繰り返す。このため放熱板は、熱疲労対応のために熱膨張率が低いことが必要である。また、ロウ付け接合を行う用途では800℃程度、はんだ付け接合を行う用途では400℃程度までの熱膨張率が低いことが重要である。一方、放熱板は、高い放熱性を得るために高い熱伝導率、特に板厚方向での高い熱伝導率を有することが必要である。
【0033】
本発明の放熱板は、高熱伝導率と低熱膨張率を兼ね備えた優れた熱特性を有するものであるが、具体的には、板厚方向での熱伝導率(室温での熱伝導率)が200W/m・K以上であることが好ましく、250W/m・K以上であることがより好ましく、260W/m・K以上であることが特に好ましい。また、50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率が10.0ppm/K以下であることが好ましく、8.0ppm/K以下であることがより好ましく、7.5ppm/K以下であることが特に好ましい。
【0034】
本発明の放熱板が主に適用される半導体パッケージでは、放熱板はアルミナ基板などのようなセラミックと接合されるが、従来のSi半導体パッケージでは、220W/m・K程度の放熱板が使用されてきた。これに対して本発明の放熱板は、SiC半導体やGaN半導体などの高出力半導体に対応するため、板厚方向での熱伝導率(室温での熱伝導率)が260W/m・K以上、50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率が7.5ppm/K以下の熱特性を有することが特に好ましい。特に、Cu−Mo複合体層のCu含有量を20〜30質量%とした場合には、そのような特に優れた熱特性を容易に得ることができる。
【0035】
本発明の放熱板は、防食目的や他の部材との接合(ロウ付け接合やはんだ付け接合)のために、その表面にNiめっきなどのめっきを施してもよい。この場合、めっき皮膜は放熱板の熱特性に大きく影響しない程度の膜厚で形成される。めっきの種類に特別な制限はなく、例えば、Niめっき、Cuめっき、Auめっき、Agめっきなどが適用でき、これらの中から選ばれるめっきを単独で或いは2層以上を組み合わせて施すことができる。めっき皮膜は、放熱板の片面(最外層である両Cu−Mo複合体層のうちの一方の表面)のみに設けてもよいし、放熱板の両面に設けてもよい。また、放熱板表面にNiめっきなどのめっきを施す際のめっき性の改善のために、放熱板表面(最外層であるCu−Mo複合体層の表面)に、熱特性に影響しない程度の厚さ(例えば数μm程度の厚さ)のCu膜(めっき皮膜など)を形成してもよい。
【0036】
めっき皮膜は、Cu−Mo複合体層とCu層とからなる放熱板本体の熱特性に大きな影響を与えないような膜厚で形成する必要がある。具体的には、一般にめっき皮膜が厚くなると板厚方向での熱伝導率が低下するので、めっき皮膜は、板厚方向での熱伝導率が放熱板本体(めっき皮膜を有しない当該放熱板)のそれよりも10W/m・K以上低くならないような膜厚で形成されることが好ましい。このため、例えば、めっき皮膜がCuめっき皮膜の場合、一般には20μm以下の膜厚とすることが好ましい。
【0037】
次に、以上述べた本発明の放熱板の製造方法について説明する。
本発明の放熱板の製造方法の一実施形態では、Cuマトリクス中にMo相が分散した板厚断面組織を有するCu−Mo複合材(a)とCu材(b)を積層させ、この積層体を拡散接合した後、冷間圧延(x)を施すことにより、Cu−Mo複合材(a)によるCu−Mo複合体層とCu材(b)によるCu層が積層した放熱板を得る。ここで、Cu−Mo複合材(a)は予め製作されたものであるが、このCu−Mo複合材(a)は圧延を行わない方法(例えば、後述する(i)〜(iii)の方法)で製作したものでもよいし、圧延(y)を行う方法(例えば、後述する(iv)、(v)の方法)で製作したものでもよい。
また、本発明の放熱板の製造方法の他の実施形態では、Cu−Mo複合材(a)のCu含有量が比較的低い場合に、冷間圧延による耳ワレなどを防止するために下記(1)又は/及び(2)の温間圧延を行う。なお、この製造方法については、後に詳述する。
(1)冷間圧延(x)に代えて温間圧延を行う。
(2)圧延(y)を温間圧延で行う。
【0038】
Cu−Mo複合材(a)とCu材(b)の厚さは、製造しようとする放熱板のCu−Mo複合体層とCu層の厚さに応じて選択され、したがって、Cu層の厚さによっては、Cu材(b)としてCu箔を用いてもよい。
なお、Cu−Mo複合材(a)を積層した複数枚の薄いCu−Mo複合材で構成してもよいし、Cu材(b)を積層した複数枚の薄いCu材で構成してもよい。したがって、その場合には、(1)複数枚のCu−Mo複合材からなるCu−Mo複合材(a)と単体のCu材(b)を積層させる、(2)単体のCu−Mo複合材(a)と複数枚のCu材からなるCu材(b)を積層させる、(3)複数枚のCu−Mo複合材からなるCu−Mo複合材(a)と複数枚のCu材からなるCu材(b)を積層させる、のいずれかによる積層体とし、この積層体を拡散接合する。
積層体の拡散接合を行う方法に特に制限はないが、放電プラズマ焼結(SPS)、ホットプレスによる拡散接合が好ましい。
Cu−Mo複合材(a)は、下記のようなものを用いることができる。また、Cu材(b)としては、通常、純Cu板(純Cu箔を含む)を用いる。
【0039】
さきに述べたように、Cu−Mo複合材は、圧延することにより熱膨張率が低下することが定性的に知られており、従来技術でもCu−Mo複合材の圧延が行われているが、Mo粒子は硬くて1次粒子が小さいことから、圧延で変形されにくいと考えられており、このためCu−Mo複合材の圧延は、専ら200〜400℃程度の温間圧延で実施されている。また、65mass%Mo−35mass%Cu複合材について二次圧延で冷間圧延を実施する方法も提案されているが、一次圧延では温間圧延を行っている。
【0040】
しかし、以上のような従来の認識とこれに基づく製造方法に対して、Cu−Mo複合材(特にCu含有量がそれほど低くないCu−Mo複合材)の圧延を温間圧延で行うと、Mo粒子の変形が適切に進まないため熱膨張率を低下させる効果が乏しいこと、これに対して圧延を冷間圧延で行うと、Mo粒子の変形が適切に進行して熱膨張率が効果的に低下することが判った。また、Cu−Mo複合材のCu含有量が比較的低い(例えば20質量%未満)場合は、冷間圧延を行うと圧下率によっては耳ワレなどを生じるおそれがあるため、一部又は全部の圧延を温間圧延とした方がよい場合があるが、Cu含有量が20質量%以上(特に25質量%以上)で且つ圧下率が極端に高くない場合は、Cu−Mo複合材の圧延を冷間圧延だけで行っても、大きな耳ワレが生じることもなく良好な圧延板が得られることが判った。このように温間圧延と冷間圧延でMo粒子の塑性変形形態が大きく異なるのは、次のような理由によるものと考えられる。
【0041】
Cu−Mo複合材を圧延した場合、MoとCuの降伏応力の違いから、圧延初期には、Mo粒子は変形するよりも、Cuマトリックス内での相対位置を変化させ、圧延が進んで板厚方向でMo粒子どうしが接触していくと変形を生じる傾向にある。冷間圧延では、Cuの加工硬化が生じることから、圧延の進行に伴ってMo粒子をCu相により変形させることができるようになっていき、このためMo粒子の変形が適切に進行するものと考えられる。これに対して、温間圧延ではMo粒子のCuマトリックス内での相対位置変化がより容易となり、Cuの加工硬化も生じにくいため、冷間圧延に較べてMo粒子をCu相によって変形させる作用が十分に得られず、このためMo粒子の変形が適切に進行しないものと考えられる。
【0042】
このようなCu−Mo複合材におけるMo粒子の塑性変形形態の違いは、Cu−Mo複合材のCu含有量が多くなるほど顕著になる。これは、温間圧延ではCuの加工硬化を利用できないことに加えて、Cuが多い分、Mo粒子がCuマトリックス内で相対位置を変化させやすくなるのに対して、冷間圧延では、Cuが多い分、Cuの加工硬化の影響をより多く受けるためであると考えられる。Cuは熱伝導率が高いが熱膨張率も高いため、Cu−Mo複合材のCu含有量が多くなると熱膨張率の面で問題を生じやすいが、所定の高圧下率で冷間圧延を行うことにより、Cu−Mo複合材の熱膨張率を効果的に低下させることができることが判った。また、後述するように、圧延の一部に温間圧延を取り入れ、冷間圧延と温間圧延を併用する場合でも、その冷間圧延により熱膨張率の低下効果が期待できる。
また、Cu−Mo複合材のCu含有量が比較的少ない場合(例えば、Cu含有量30%質量以下)でも、その程度は相対的に小さくなるものの、上記と同様の効果が得られる。一方、Cu−Mo複合材のCu含有量が比較的少ない場合には、上述したようにMoによる拘束が強化されるので、この面からの熱膨張率の低下効果が期待できる。
【0043】
Cu−Mo複合材(a)は事前に製作されるものであるが、Cu−Mo複合材(a)としては、例えば、下記(i)〜(iii)のいずれかの方法で得られたものを用いることができる。
(i)Mo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程を経て得られたCu−Mo複合材(a)
(ii)Mo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体を緻密化処理する工程を経て得られたCu−Mo複合材(a)
(iii)Mo粉末又はMo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体に非酸化性雰囲気中又は真空中で溶融したCuを含浸させる工程を経て得られたCu−Mo複合材(a)
【0044】
以上の(i)〜(iii)のいずれかの方法で得られたCu−Mo複合材(a)は、冷間圧延が施されていないため、クラッド材の冷間圧延(x)では、圧下率70〜99%、より好ましくは80〜99%、特に好ましくは90〜96%で圧延することが望ましい。この圧下率はCu−Mo複合材(a)の圧下率でもある。このように高圧下率で冷間圧延することにより熱膨張率を低下させる効果が得られ、また、圧下率が過剰に高いと熱伝導率が低下する傾向があるため、圧下率の上限を99%、好ましくは96%とすることにより、熱伝導率の低下を抑制しつつ熱膨張率を効果的に低下させることができる。冷間圧延(x)は複数パスで実施される。
【0045】
冷間圧延(x)は、一方向圧延としてもよいが、板面内で直交する2方向(X軸方向、Y軸方向)間の熱膨張率の差を小さくして面内異方性を減ずるために、直交する2方向で圧延を行うクロス圧延を行ってもよい。ここで、直交する2方向での圧延は、異なる圧下率で行ってもよいが、X軸方向とY軸方向で熱膨張率差のない均一な熱特性を有する圧延板を得たい場合には、同じ圧下率で圧延するのが好ましい。
【0046】
また、Cu−Mo複合材(a)としては、下記(iv)又は(v)の方法で得られたものを用いてもよい。
(iv)Mo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体を緻密化処理する工程と、前記緻密化処理されたCu−Mo複合材に圧延(y)を施す工程を経て得られたCu−Mo複合材(a)
(v)Mo粉末又はMo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程と、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程と、前記焼結体に非酸化性雰囲気中又は真空中で溶融したCuを含浸させる工程と、前記Cuを含浸させたCu−Mo複合材に圧延(y)を施す工程を経て得られたCu−Mo複合材(a)
【0047】
圧延(y)は冷間圧延で行うことできる。Cu−Mo複合材(a)のCu含有量が40質量%未満(特に30質量%以下)の場合も圧延(y)を冷間圧延で行うことができるが、場合によっては温間圧延で行ってもよい。また、圧延(y)は、一方向圧延としてもよいが、板面内で直交する2方向(X軸方向、Y軸方向)間の熱膨張率の差を小さくして面内異方性を減ずるために、直交する2方向で圧延を行うクロス圧延を行ってもよい。ここで、直交する2方向での圧延は、異なる圧下率で行ってもよいが、X軸方向とY軸方向で熱膨張率差のない均一な熱特性を有するCu−Mo複合材(a)を得たい場合には、同じ圧下率で圧延するのが好ましい。
【0048】
以上の(iv)又は(v)の方法で得られたCu−Mo複合材(a)は、圧延(y)が施されているため、クラッド材の冷間圧延(x)では、冷間圧延(x)と圧延(y)を合わせたCu−Mo複合材(a)の総圧下率が70〜99%、より好ましくは80〜99%、特に好ましくは90〜96%となるような圧下率で圧延することが望ましい。その理由は上記と同様である。また、上述したクロス圧延と同様に理由から、圧延(y)でCu−Mo複合材(a)を一方向圧延した場合には、冷間圧延(x)では、Cu−Mo複合材を圧延(y)の圧延方向と直交する方向に圧延してもよい。
【0049】
図7及び図8は、後述する実施例の放熱板であって、製造時における冷間圧延の圧下率が異なる放熱板について、それらの熱特性を整理して示したものであり、図7は板厚方向の熱伝導率(室温での熱伝導率)と50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率を、図8は板厚方向の熱伝導率(室温での熱伝導率)と50℃から400℃までの板面内平均熱膨張率を、それぞれ示している。ここで、冷間圧延の圧下率(70〜98%)は、Cu−Mo複合材単体での圧下率とクラッド材圧延時のCu−Mo複合材の圧下率を合わせた総圧下率である。
【0050】
また、本発明の放熱板の製造において、Cu−Mo複合材(a)のCu含有量が比較的低い場合には、材料の総圧下率にもよるが、冷間圧延による耳ワレなどを防止するために、温間圧延を取り入れた製造方法(但し、Cu−Mo複合材(a)の圧延(y)を行わない製造方法を含む。)とすることが好ましく、この製造方法では、例えば、次のような条件で温間圧延を行うことが好ましい。
すなわち、材料の総圧下率(Cu−Mo複合材単体での圧下率とクラッド材圧延時のCu−Mo複合材の圧下率を合わせた総圧下率)が70%以上であって、Cu−Mo複合材(a)のCu含有量が20mass%未満の場合には、下記(1)又は/及び(2)の温間圧延を行うことが好ましく、特にCu含有量が15mass%以下の場合には、下記(1)及び(2)の温間圧延を行うことが好ましい。また、Cu−Mo複合材(a)のCu含有量が20〜30mass%であって、材料の総圧下率が特に高い場合(例えば総圧下率96%以上)にも、下記(1)又は/及び(2)の温間圧延を行うことが好ましい。
(1)上記冷間圧延(x)に代えて温間圧延を行う。
(2)上記圧延(y)を温間圧延で行う。
【0051】
さきに述べたように、温間圧延ではMo粒子のCuマトリックス内での相対位置変化がより容易となり、Cuの加工硬化も生じにくいため、冷間圧延に較べてMo粒子をCu相によって変形させる作用が十分に得られず、圧延による熱膨張率の低下の割合が冷間圧延に較べて低くなる傾向にあるが、低Cu含有量のCu−Mo複合材の場合には、Mo粒子間距離が短くなることからCu相とMo粒子の相対位置変化が生じにくいため、Mo粒子が変形されやすく、このため上記のような条件で温間圧延を行っても、冷間圧延した場合と大差ない熱特性を有する放熱板が得られる。
温間圧延は200〜300℃程度の温度で行うことが好ましい。温間圧延の温度が300℃超では、Moが酸化して表面酸化物が生成しやすくなり、それが圧延中に剥離して製品の品質に悪影響を及ぼすなどの問題を生じやすい。
なお、上記(1)、(2)のいずれか一方の温間圧延を行う場合、Cu−Mo複合材(a)のCu含有量や厚さなどに応じて圧延性を考慮し、いずれか一方が選択される。
【0052】
次に、Cu−Mo複合材(a)を得るための上記(i)〜(v)の方法の工程について説明する。
以下の説明において、Mo粉末又はMo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする工程を工程(A)、前記圧粉体を還元性雰囲気中又は真空中で焼結して焼結体とする工程を工程(B)、前記焼結体に非酸化性雰囲気中又は真空中で溶融したCuを含浸させる工程を工程(C1)、前記焼結体を緻密化処理する工程を工程(C2)、Cu溶浸又は緻密化処理したCu−Mo複合材に圧延(y)を施す工程を工程(D)という。
【0053】
工程(A)では、常法に従いMo粉末又はMo粉末とCu粉末の混合粉末を加圧成形して圧粉体とする。上述したCu−Mo複合材(a)の製造方法では、圧粉体の焼結後にCuの溶浸を行う場合(工程(C1))と、圧粉体の焼結後にCuの溶浸を行うことなく、緻密化処理を行う場合(工程(C1))とがあるが、後者の場合には、Cu−Mo複合材(a)のCu含有量に見合う量のCu粉末を配合する。
Mo粉末やCu粉末の純度や粒径は特に限定しないが、通常、Mo粉末としては、純度が99.95質量%以上、FSSS平均粒径が1〜8μm程度のものが用いられる。また、Cu粉末としては、通常、電解銅粉やアトマイズ銅粉末などの純Cuであって、平均粒径D50が5〜50μm程度のものが用いられる。
【0054】
工程(A)では、Mo粉末又はMo粉末とCu粉末の混合粉末を型に充填し、使用する混合粉末の充填性や圧粉体の成形密度の目標値に応じて圧力を調整しながら加圧成形し、圧粉体を得る。
工程(B)では、工程(A)で得られた圧粉体を還元性雰囲気(水素雰囲気など)中又は真空中で焼結して焼結体とする。この焼結も通常の条件で行えばよく、Mo粉末とCu粉末の混合粉末の圧粉体の場合には、900〜1050℃(好ましくは950〜1000℃)程度の温度で30〜1000分程度保持する条件で行うことが好ましい。また、Mo粉末の圧粉体の場合には、1100〜1400℃(好ましくは1200〜1300℃)程度の温度で30〜1000分程度保持する条件で行うことが好ましい。
【0055】
工程(C1)では、工程(B)で得られた焼結体(多孔質体)に非酸化性雰囲気中又は真空中で溶融したCuを含浸(Cuの溶浸)させてCu−Mo複合材(a)を得る。この工程(C1)を行う場合には、Cu溶浸によって所望のCu含有量となる。
Cuの溶浸も通常の条件で行えばよい。例えば、焼結体の上面及び/又は下面にCu板やCu粉末を配置し、1083〜1300℃(好ましくは1150〜1250℃)程度の温度で20〜600分保持する。非酸化性雰囲気は特に限定しないが、水素雰囲気が好ましい。また、溶浸した後の加工性向上の観点からは、真空中で溶浸するのが好ましい。
【0056】
ここで、工程(B)と工程(C1)を順次行う場合に、工程(A)で得られた圧粉体にCu溶浸用のCu板やCu粉末を配置した状態で、まず焼結温度に加熱して工程(B)を実施し、しかる後、温度をCu溶浸温度まで上昇させて工程(C1)を実施するようにしてもよい。
なお、この工程(C1)で得られたCu−Mo複合材(溶浸体)は、次工程での冷間圧延に先立ち、表面に残留した余剰の純Cuを除去するために表面研削(例えば、フライス盤や砥石などによる表面研削加工)を施すことが好ましい。
【0057】
また、工程(C1)に代えて行う工程(C2)では、工程(B)で得られた焼結体を緻密化処理してCu−Mo複合材(a)を得る。この場合、工程(B)の焼結後に、さらに温度を上げてCuを溶解する処理(1200〜1300℃程度で20〜120分程度保持する処理)を行った後、工程(C2)の緻密化処理を行ってもよい。
この緻密化処理には高い温度と圧力が必要であり、ホットプレス、放電プラズマ焼結(SPS)、加熱圧延などの方法で行うことができる。この緻密化処理により、焼結体中の空隙を減らし緻密化させ、相対密度を高める。
工程(D)では、Cu−Mo複合材(a)の熱膨張率を低下させることを目的として、工程(C1)又は(C2)で得られたCu−Mo複合材に所定の圧下率で圧延(y)を施す。
なお、工程(C1)又は(C2)で得られたCu−Mo複合材を圧延する前に、必要に応じて800〜1000℃程度の温度で均質化時効熱処理を施してもよい。
【0058】
本発明の放熱板は、冷間圧延又は温間圧延のままで、或いはさらに軟質化時効熱処理を施すことにより製品とすることができる。また、必要に応じて、半導体の台座としての使用を想定した耐食性及び電食に対する性能を向上させる目的で、表面にさらにNiめっきなどのめっきを施してもよい。この場合、めっき皮膜は放熱板の熱特性に大きく影響しない程度の膜厚で形成される。めっきの種類に特別な制限はなく、例えば、Niめっき、Cuめっき、Auめっき、Agめっきなどが適用でき、これらの中から選ばれるめっきを単独で或いは2層以上を組み合わせて施すことができる。めっきは、放熱板の片面(最外層である両Cu−Mo複合体層のうちの一方の表面)のみに施してもよいし、放熱板の両面に施してもよい。また、放熱板表面にNiめっきなどのめっきを施す際のめっき性の改善のために、放熱板表面(最外層であるCu−Mo複合体層の表面)に下地としてCuめっきを施してもよい。以上のようなめっきにより形成されるめっき皮膜の好ましい膜厚は、さきに述べた通りである。
【0059】
本発明の放熱板は、各種の半導体モジュールが備えるセラミックパッケージやメタルパッケージなどの半導体パッケージに好適に利用でき、高い放熱性と耐用性が得られる。特に、高熱伝導率でありながら、低い熱膨張率が800℃を超える高温に曝された後も保持されるので、接合温度が750℃以上と高くなるロウ付け接合を行なう用途などについても問題なく適用できる。
【実施例】
【0060】
[実施例1]
(1)Cu−Mo複合材の製造条件
Mo粉末(FSSS平均粒径:6μm)と純Cu粉末(平均粒径D50:5μm)を所定の割合で混合した混合粉末を型(50mm×50mm)に入れて加圧成形し、後工程の冷間圧延での圧下率に応じた厚さの圧粉体とした。この圧粉体を水素雰囲気中で焼結(1000℃、600分)して焼結体を得た。次いで、この焼結体の上面に純Cu板を置き、水素雰囲気中で1200℃に加熱(保持時間180分)して純Cu板を溶解させ、この溶解したCuを焼結体に含浸させることで、所定のCu含有量のCu−Mo複合材を得た。このCu−Mo複合材を、表面に残留するCuをフライス盤を用いて除去した後、所定の圧下率で一方向の圧延(y)(冷間圧延)を施し、Cu−Mo複合材を製作した。
【0061】
(2)各供試体の製造条件
(2.1)本発明例
上記のようにして得られた所定の板厚のCu−Mo複合材と純Cu板を、(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)の3層構造又は(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)の5層構造に積層させ、この積層体を放電プラズマ焼結(SPS)装置(住友石炭鉱業(株)社製「DR.SINTER SPS-1050」)を用いて、950℃、18分保持、加圧力20MPaの条件で拡散接合させた。次いで、上記Cu−Mo複合材の圧延(y)(冷間圧延)と同じ圧下率で、圧延(y)の圧延方向と直交する方向に圧延(冷間圧延)し、本発明例の放熱板(板厚1mm)を製造した。
(2.2)比較例
Cu−Mo複合材と純Cu板をCu/(Cu−Mo)/Cuの3層構造とした以外は、本発明例と同一の条件で比較例の放熱板(板厚1mm)を製造した(比較例3、5、7、9、11)。
また、上記Cu−Mo複合材単体も比較例の放熱板(板厚1mm)とした(比較例1、2、4、6、8、10)。
【0062】
(3)熱特性の測定
各供試体について、板面内熱膨張率を押棒式変位検出法で測定し、50℃−400℃と50℃−800℃における各伸び量の差を温度差で割り算して、50℃から400℃までの板面内平均熱膨張率と50℃から800℃までの板面内平均熱膨張率を求めた。また、板厚方向の熱伝導率(室温での熱伝導率)をフラッシュ法で測定した。
(4)熱特性の評価
表1及び表2に、各供試体の熱特性を製造条件とともに示す。これによれば、比較例に較べて本発明例は板厚方向の熱伝導率が大幅に増加していることが判る。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
[実施例2]
(1)Cu−Mo複合材の製造条件
Cu含有量が30mass%以上のCu−Mo複合材については、実施例1と同様の方法及び条件で製作した。一方、Cu含有量が30mass%未満のCu−Mo複合材については、次のようにして製作した。Mo粉末(FSSS平均粒径:6μm)を型(50mm×50mm)に入れて加圧成形し、後工程の冷間圧延での圧下率に応じた厚さの圧粉体とした。この圧粉体を水素雰囲気中で焼結(1300℃、600分)して焼結体を得た。次いで、この焼結体の上面に純Cu板を置き、水素雰囲気中で1200℃に加熱(保持時間180分)して純Cu板を溶解させ、この溶解したCuを焼結体に含浸させることで、所定のCu含有量のCu−Mo複合材を得た。このCu−Mo複合材を、表面に残留するCuをフライス盤を用いて除去した後、所定の圧下率で一方向の圧延(y)(冷間圧延)を施し、Cu−Mo複合材を製作した。
【0066】
(2)各供試体の製造条件
(2.1)本発明例
上記のようにして得られた所定の板厚のCu−Mo複合材と純Cu板を、(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)の3層構造、(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)の5層構造、又は(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)の7層構造に積層させ、実施例1と同様の方法及び条件で拡散接合と圧延(冷間圧延)を行い、本発明例の放熱板(板厚1mm)を製造した。
(2.2)比較例
Cu−Mo複合材と純Cu板をCu/(Cu−Mo)/Cuの3層構造とした以外は、本発明例と同一の条件で比較例の放熱板(板厚1mm)を製造した(比較例12、13)。
また、上記Cu−Mo複合材単体も比較例の放熱板(板厚1mm)とした(比較例14〜30)。
【0067】
(3)熱特性の測定
各供試体について、実施例1と同様の方法で板面内平均熱膨張率と板厚方向の熱伝導率(室温での熱伝導率)を測定・算出した。
(4)熱特性の評価
表3及び表4に、各供試体の熱特性を製造条件とともに示す。これによれば、本発明例は比較例に較べて熱伝導率が大幅に高く、特にCu−Mo複合体層のCu含有量が20〜30質量%であるため、高熱伝導率と低熱膨張率を高度に満足する優れた熱特性が得られている。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
[実施例3]
(1)Cu−Mo複合材の製造条件
圧延を250℃の温間で行った以外は実施例2(Cu含有量が30mass%未満のCu−Mo複合材の場合)と同様の方法及び条件でCu−Mo複合材を製作した。
(2)本発明例の各供試体の製造条件
上記のようにして得られた所定の板厚のCu−Mo複合材と純Cu板を、(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)の3層構造に積層させ、圧延を250℃の温間で行った以外は実施例1と同様の方法及び条件で拡散接合と圧延を行い、本発明例の放熱板(板厚1mm)を製造した。
【0071】
(3)熱特性の測定
各供試体について、実施例1と同様の方法で板面内平均熱膨張率と板厚方向の熱伝導率(室温での熱伝導率)を測定・算出した。
(4)熱特性の評価
表5に、各供試体の熱特性を製造条件とともに示す。これによれば、温間圧延を行うことにより、Cu−Mo複合材のCu含有量が25mass%の場合には総圧下率98%での圧延が可能であり、Cu−Mo複合材のCu含有量が15mass%の場合には総圧下率96%での圧延が可能であり、いずれの本発明例も高熱伝導率と低熱膨張率を高度に満足する優れた熱特性が得られている。
【0072】
【表5】
【0073】
[実施例4]
(1)Cu−Mo複合材の製造条件
実施例2(Cu含有量が30mass%未満のCu−Mo複合材の場合)と同様の方法及び条件でCu−Mo複合材を製作した。
(2)本発明例の各供試体の製造条件
上記のようにして得られた所定の板厚のCu−Mo複合材と純Cu板を、(Cu−Mo)/Cu/(Cu−Mo)の3層構造に積層させ、実施例1と同様の方法及び条件で拡散接合と圧延(冷間圧延)を行い、放熱板本体(板厚1mm)を製作した。この放熱板本体の両面に電解めっきにより膜厚が10μm又は20μmのCuめっき皮膜を形成し、本発明例の放熱板を製造した。
【0074】
(3)熱特性の測定
各供試体について、実施例1と同様の方法で板面内平均熱膨張率と板厚方向の熱伝導率(室温での熱伝導率)を測定・算出した。
(4)熱特性の評価
表6に、各供試体の熱特性を製造条件とともに示す。これらの供試体のうち、本発明例19と本発明例21の放熱板本体の構成は、本発明例7の放熱板とほぼ同等であり、本発明例20と本発明例22の放熱板本体の構成は、本発明例8の放熱板とほぼ同等であるので、それらの熱特性を対比することができる。
膜厚10μmのCuめっき皮膜を形成した本発明例19、20の放熱板の熱特性は、それぞれ本発明例7、8の放熱板の熱特性とほぼ同等である。一方、膜厚20μmのCuめっき皮膜を形成した本発明例21、22の放熱板の熱特性は、本発明例7、8の放熱板に較べて板厚方向での熱伝導率が若干低くなっているが、その低下量は10W/m・K未満である。
【0075】
【表6】
【要約】
【課題】Cu−Mo複合材とCu材のクラッド構造を有する低熱膨張率、高熱伝導率の放熱板を提供する。
【解決手段】板厚方向においてCu−Mo複合体層、Cu層、Cu−Mo複合体層がこの順に積層し、或いは板厚方向においてCu−Mo複合体層とCu層が交互に積層することで3層以上のCu−Mo複合体層と2層以上のCu層で構成されるとともに、両面の最外層がCu−Mo複合体層からなる放熱板であって、Cu−Mo複合体層は、Cuマトリクス中に扁平なMo相が分散した板厚断面組織を有する。このクラッド構造により、低熱膨張率でありながら高い熱伝導率が得られる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8