特許第6233680号(P6233680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233680
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】逆止弁付きヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20171113BHJP
   B65D 47/24 20060101ALI20171113BHJP
   B65D 47/40 20060101ALI20171113BHJP
   B65D 47/06 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B65D47/08 100
   B65D47/24
   B65D47/40
   B65D47/06
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-134523(P2013-134523)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-9816(P2015-9816A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年1月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−192975(JP,A)
【文献】 特開2011−246182(JP,A)
【文献】 実開平04−132051(JP,U)
【文献】 特開2011−073770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
B65D 83/00
B65D 83/08−83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有頂筒体の頂壁(4)に吐出口(5)を開設したキャップ本体(2)と、該キャップ本体(2)にヒンジ結合されて、前記吐出口(5)を開閉する蓋体(21)を有するヒンジキャップ(1)において、前記頂壁(4)の下面に逆止弁(9)を垂下状に設け、該逆止弁(9)は、頂壁(4)の下面側に内部空間を弁室(11)とする弁筒(10)を設けるとともに、上端を前記吐出口(5)に連通させ、下端に弁口(12)を開口した前記弁室(11)内に、前記弁口(12)を塞いで閉弁状態とする弁体(17)を上下方向に自由に移動可能に設けた構成であり、前記ヒンジキャップ(1)の閉姿勢で、前記弁室(11)内に侵入して、前記弁体(17)を押さえ付けて閉弁姿勢とする押さえピン(24)を蓋体(21)に設け、前記弁体(17)と押さえピン(24)の少なくともいずれか一方の高さ寸法を、前記ヒンジキャップ(1)の閉姿勢時に逆止弁(9)を閉弁状態とするように設定したことを特徴とする逆止弁付きヒンジキャップ。
【請求項2】
弁体(17)の高さ寸法の設定により、逆止弁(9)を閉弁姿勢とするようにした請求項1に記載の逆止弁付きヒンジキャップ。
【請求項3】
押さえピン(24)の高さ寸法の設定により、逆止弁(9)を閉弁姿勢とするようにした請求項1に記載の逆止弁付きヒンジキャップ。
【請求項4】
弁体(17)と押さえピン(24)の高さ寸法の設定により、逆止弁(9)を閉弁姿勢とするようにした請求項1に記載の逆止弁付きヒンジキャップ。
【請求項5】
弁室(11)を、縦長に構成した請求項1〜4の何れか1項に記載の逆止弁付きヒンジキャップ。
【請求項6】
弁体(17)を、縦長に構成した請求項1〜5の何れか1項に記載の逆止弁付きヒンジキャップ。
【請求項7】
弁体(17)の高さ寸法を、閉弁状態での上端位置が、略吐出口(5)に位置する値に設定した請求項6に記載の逆止弁付きヒンジキャップ。
【請求項8】
キャップ本体(2)の頂壁(4)の下面側に位置する中栓(8)に、内部空間を弁室(11)とする弁筒(10)を設け、該弁筒(10)を前記頂壁(4)の下面に密に組付けて逆止弁(9)を構成した請求項1〜7の何れか1項に記載の逆止弁付きヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁付きヒンジキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器に組付けられる逆止弁付きヒンジキャップの逆止弁として、液垂れ防止作用を発揮することのできる、弁室を縦長に構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−133307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に記載された従来技術と同じように、液垂れ防止作用を発揮する機能を持った逆止弁付きヒンジキャップとしては、図6に示すものを例示することができる。この図6に示した従来技術のヒンジキャップ100にあっては、キャップ本体102に形成した逆止弁109の弁室111を縦長にすることにより、サックバック機能を発揮させて液垂れ防止作用を高めるようにしている。
【0005】
この図6に示された従来技術において、内容液Nを収納して、逆止弁付きヒンジキャップを組付けた開封前の容器にあっては、容器内のヘッドスペースに空気が存在し、この空気内に逆止弁109が位置している。この容器の搬送中や保管の取扱い時に、容器に振動が作用したり、容器が転倒したりすると、弁体117が弁座面114から離反すると共に、内容液Nが飛散等して弁口112から弁室111内に侵入する。この弁室111内に侵入した内容液Nの一部が弁座面114に付着し、そのまま乾燥固化して固化付着物N1となる。この固化付着物N1は、接着物質として作用して弁座面114に弁体117を接着固定(図6点線図示参照)したり、弁体117の弁座面114への着座を不良にする(図6実線図示参照)と云う不都合を生じる可能性がある、と云う問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、ヒンジキャップの閉蓋状態時には、逆止弁を閉弁状態に保持することを技術的課題とし、もって弁室内に内容液の固化付着物が発生しないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の手段の主たる構成は、
有頂筒体の頂壁に吐出口を開設したキャップ本体と、このキャップ本体にヒンジ結合されて、キャップ本体の吐出口を開閉する蓋体を有するヒンジキャップに関するものであること、
キャップ本体の頂壁の下面に逆止弁を垂下状に設けること、
この逆止弁は、頂壁の下面側に内部空間を弁室とする弁筒を設けるとともに、上端をキャップ本体の吐出口に連通させ、下端に弁口を開口した弁室内に、弁口を塞いで閉弁状態とする弁体を上下方向に自由に移動可能に設けた構成であること、
ヒンジキャップの閉姿勢で、弁室内に侵入して、逆止弁の弁体を押さえ付けて閉弁姿勢とする押さえピンを蓋体に設けること、
弁体と押さえピンの少なくともいずれか一方の高さ寸法を、ヒンジキャップの閉姿勢時に逆止弁を閉弁状態とするように設定したこと、
にある。
【0008】
蓋体に設けた押さえピンは、ヒンジキャップの閉姿勢で、頂壁の下面側に設けられた弁筒の内部空間である弁室を上下方向に自由に移動できる弁体を閉弁姿勢に押さえ付ける、すなわち弁体を弁座面に押さえ付けて、逆止弁を強制的に閉弁状態に保持する。このように、容器の開封前、開封後に関わりなく、自在に開閉操作することのできるヒンジキャップの閉操作により、内部に設けた逆止弁の閉弁状態を確保することができるので、非使用時に逆止弁が不要に開弁状態となるのを確実に防止することができる。
【0009】
それゆえ、容器の搬送中や保管時の取扱いにおいて、内容液の弁室内への不要な侵入を阻止し、これにより内容液の固化付着物の生成を抑制する。
【0010】
弁体と押さえピンの少なくともいずれか一方の高さ寸法は、ヒンジキャップの閉姿勢時に逆止弁を閉弁状態とするように設定されているので、弁体もしくは押さえピンの一方の高さ寸法が規制される場合であっても、他方の高さ寸法の設定により対応することができ、これにより様々な構造および寸法の逆止弁に対して対応可能となる。
【0011】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成において、弁体の高さ寸法の設定により、逆止弁を閉弁姿勢とするようにした、ものである。
【0012】
弁体の高さ寸法の設定により、逆止弁を閉弁姿勢とするようにしたものにあっては、押さえピンの弁室内への侵入量が制限される場合であっても、押さえピンと弁室との間に不都合な機械的な干渉を生じることなく、良好に閉弁状態を得ることができる。
【0013】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成において、押さえピンの高さ寸法の設定により、逆止弁を閉弁姿勢とするようにした、ものである。
【0014】
押さえピンの高さ寸法の設定により、逆止弁を閉弁姿勢とするようにしたものにあっては、構造の単純な押さえピンの高さ寸法を設定するだけで、逆止弁の閉弁姿勢を確保することができる。
【0015】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成において、弁体と押さえピンの高さ寸法の設定により、逆止弁を閉弁姿勢とするようにした、ものである。
【0016】
弁体と押さえピンの高さ寸法の設定により、逆止弁を閉弁姿勢とするようにしたものにあっては、逆止弁を閉弁状態に保持するのに、逆止弁の構造および寸法に応じて、弁体と押さえピンの寸法の組み合わせとして最適なものを選択することができる。
【0017】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成において、弁室を縦長に構成した、ことを加えたものである。
【0018】
弁室を縦長に構成したものにあっては、逆止弁が開弁姿勢から閉弁姿勢に切り替わる際に,弁室内での弁体の移動量を大きくすることにより、吐出口およびその付近に位置した残存内容液を弁室内に引き込む、所謂サックバックさせる効果がより大きく得られる。このことは、弁室や弁体の形状を変更することによって、サックバック効果を適宜変更することが可能であることを意味している。
【0019】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、弁体を、縦長に構成した、ことを加えたものである。
【0020】
弁体を縦長に構成したものにあっては、弁室の径寸法を増大させることなく、弁体および押さえピンの高さ寸法の設定に対応させることができる。
【0021】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成および弁体を縦長にした構成に、弁体の高さ寸法を、閉弁状態での上端位置が、略吐出口に位置する値に設定した、ことを加えたものである。
【0022】
弁体の高さ寸法を、閉弁状態での上端位置が、略吐出口に位置する値に設定したものにあっては、弁体を押さえ付ける押さえピンが弁室内に侵入する必要が殆どないので、押さえピンが弁室内に侵入する際における、逆止弁対する押さえピンの機械的な干渉の発生を皆無とすることができる。
【0023】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、キャップ本体の頂壁の下面側に位置する中栓に、内部空間を弁室とする弁筒を設け、この弁筒をキャップ本体の頂壁の下面に密に組付けて逆止弁を構成した、ことを加えたものである。
【0024】
中栓に弁筒を設けて逆止弁を構成したものにあっては、キャップ本体の頂壁下面に逆止弁を設けることを、簡単に達成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明における逆止弁付きヒンジキャップの主たる構成においては、ヒンジキャップの閉操作により、内部に設けた逆止弁の閉弁状態を確保することができるので、非使用時に逆止弁が不要に開弁状態となるのを確実に防止することができ、これにより容器の安全な使用状態を得ることができる。
【0026】
弁室内における内容液の固化付着物の生成を抑制することができるので、逆止弁を常に安定して機能させることができ、これにより好ましい使用状況を維持することができる。
【0027】
弁体と押さえピンの少なくともいずれか一方の高さ寸法は、ヒンジキャップの閉姿勢時に逆止弁を閉弁状態とするように設定されているので、様々な構造および寸法の逆止弁に対して対応することができ、これにより広い適用範囲を得ることができる。
【0028】
弁体の高さ寸法の設定により、逆止弁を閉弁姿勢とするようにしたものにあっては、押さえピンの弁室内への侵入量が規制される場合であっても、押さえピンと弁室との間に不都合な機械的な干渉を生じることなく、良好に閉弁状態を得ることができるので、ヒンジキャップとして機械的な安定性を得ることができる。
【0029】
押さえピンの高さ寸法の設定により、逆止弁を閉弁姿勢とするようにしたものにあっては、構造の単純な押さえピンの高さ寸法を設定するだけであるので、実施が容易である。
【0030】
弁体と押さえピンの高さ寸法の設定により、逆止弁を閉弁姿勢とするようにしたものにあっては、逆止弁を閉弁状態に保持するのに、逆止弁の構造および寸法に応じて、弁体と押さえピンの寸法の組み合わせとして最適なものを選択することができるので、様々な逆止弁に対して適正に対応させることができる。
【0031】
弁室を縦長に構成したものにあっては、逆止弁が開弁姿勢から閉弁姿勢に切り替わる際に、弁体の移動量を大きくすることが可能であり、これにより液垂れ現象の発生を充分に抑制することができるので、容器の好ましい使用状況を得ることができる。また、弁室や弁体の形状を変更することによって、サックバック効果を適宜変更することが可能であるので、上記した液垂れ現象の発生の抑制を充分に得ることができる。
【0032】
弁体を縦長に構成したものにあっては、逆止弁の製作の自由度を高めることができるので、実施できる逆止弁の構造範囲が広くなる。
【0033】
弁体の縦寸法を、閉弁状態での上端位置が、略吐出口に位置する値に設定したものにあっては、逆止弁に対する押さえピンの機械的な干渉を皆無とすることができるので、逆止弁の構造設定の自由度を高めることができる。
【0034】
中栓に弁筒を設けて逆止弁を構成したものにあっては、キャップ本体の頂壁下面に、逆止弁を簡単に設けることができ、これにより逆止弁付きヒンジキャップの製作を簡単で効率のよいものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1の実施形態例を示す、縦断面図である。
図2図1の実施形態例の弁筒部分を示す要部拡大断面図で、(a)は縦断面図、(b)は平断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態例を示す、縦断面図である。
図4図3に示した実施形態例の、内容液吐出時における縦断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態例を示す、縦断面図である。
図6】従来技術の説明に供する、縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態例を、図1図5を参照しながら説明する。
なお、本実施形態例では、容器体27に対してヒンジキャップ1が位置する側を上方とし、その反対側(図1における下側)を下方とする。また、ヒンジ26が位置する側を後側、その反対を前側とする。
【0037】
図において、1はヒンジキャップ、2はそのキャップ本体、21はその蓋体、そして8は中栓である。ヒンジキャップ1は、内容液Nを収納したボトル状の容器体27の口筒部28に、そのキャップ本体2で組付き、このキャップ本体2に開口された吐出口5を、キャップ本体2にヒンジ26で結合された蓋体21により開閉する。なお、容器体27としては、易剥離性積層容器(デラミ容器とも云う)などの二重容器や、柔軟な胴部を有するチューブ容器などが考えられ、嫌気性の内容液Nを取り扱うのに適している。
【0038】
キャップ本体2は、円筒状の組付き筒3の上端に頂壁4を連設した有頂筒形状をしていて、組付き筒3を容器体27の口筒部28に外装螺合させて容器体27に装着される。頂壁4の中央部には吐出口5が開口形成されており、この吐出口5を囲んで、上方にラッパ状に拡がった吐出筒片6が起立設されており、また頂壁4の下面には、吐出口5を囲んで保持筒7が垂下設されており、この保持筒7には補強リブが設けられている。
【0039】
ヒンジキャップ1の蓋体21は、天板22の周端縁から短円筒状の周筒23を垂下連設して有頂円筒状に構成され、周筒23の後側の下端を、キャップ本体2の組付き筒3の後側の上端に、スナップヒンジ等のヒンジ26によりヒンジ結合している。この蓋体21は、ヒンジ26を回動軸とした開閉回動動作により、キャップ本体2を上方から覆って閉状態となり、この際、周筒23の前側端部が、キャップ本体2の頂壁4の前側端縁に乗り越え係止して、蓋体21の閉姿勢を保持する。この蓋体21の天板22の下面中央部には、キャップ本体2の吐出筒片6に密嵌入するシール筒片25が垂下設されており、さらにこのシール筒片25で囲まれた天板22の下面箇所から押さえピン24が垂下設されている。
【0040】
キャップ本体2の頂壁4の下面側に組付けられる中栓8は、弁体17を組付けることにより逆止弁9を形成する部分で、容器体27の口筒部28と、キャップ本体2の間に位置した状態で、キャップ本体2の組付き筒3の内周面上端部に嵌装する組付きフランジ18を有している。この組付きフランジ18の下端には、口筒部28に密嵌入する短円筒状の嵌入筒19が設けられており、この嵌入筒19に連結壁20を介して、弁室11を形成する弁筒10が連設されている。弁筒10は、弁口12および弁座面14を形成する弁座筒片13を下端に設けており、その内周面には、横方向への変位を規制した状態で、弁体17を自由に移動させる複数(図示実施例の場合は8個、図2(b)参照)の縦リブ15が設けられており、この各縦リブ15に間には縦溝状の通路が形成されている。各縦リブ15の上端には、弁室11内の弁体17が上方に抜け出すのを阻止する止め片16(図2(a)参照)が突出状に設けられている。
【0041】
弁体17を内装して逆止弁9を構成する弁筒10は、キャップ本体2の保持筒7に密に嵌入組付きして、キャップ本体2の頂壁4の下面側に、上端を吐出口5に連通させた弁室11を形成する。この弁筒10の保持筒7に対する密嵌入組付きに際しては、吐出口5の開口縁から垂下設された短円筒片状のシール片を、弁筒10の上端開口部に密嵌入させる等して、弁筒10の頂壁4に対する密な組付きを強化することが望ましい。なお、中栓8をキャップ本体2に組付けるのに先立って、中栓8の弁筒10内に弁体17を挿入しておくことは云うまでもない。
【0042】
蓋体21に設けられた押さえピン24は、ヒンジキャップ1の閉蓋状態で、吐出口5から逆止弁9の弁室11内に侵入して、その下端を弁体17に当接させ、この弁体17を弁座面14に押付け、これにより逆止弁9を閉弁状態に保持する。この状態から、蓋体21を開姿勢にして、押さえピン24による弁体17に対する押さえ付けを解除し、容器体27を傾ける等により逆止弁9を開弁状態にして内容液Nの吐出(図4参照)を行う。この場合、内容液Nの吐出は、内容液Nの自重による自然流下、または容器体27の胴部のスクイズ変形による減容変形に伴う内圧変化よって行われる。
【0043】
このように、ヒンジキャップ1の閉状態では、蓋体21に設けられた押さえピン24が、キャップ本体2に設けられた逆止弁9の弁室11内に侵入して、弁体17を弁座面14に押さえ付けて、逆止弁9を閉弁状態とするのであるが、押さえピン24を弁室11内に侵入させて、弁体17を押さえ付けることができるようにすべく、吐出口5の開口径寸法、弁室11の内径、ヒンジ26と吐出口5の距離、ヒンジ26に対する吐出口5の高さ位置、そして押さえピン24の弁室11内への侵入量等に対応させて、弁体17と押さえピン24の少なくともいずれか一方の高さ寸法を設定する。
【0044】
次に、第1、第2そして第3の実施形態例別に説明する。図示した各実施形態例においては、弁体17と押さえピン24以外の部分の構造および寸法は、同じとなっている。また、吐出口5は、ヒンジ26と略等しい高さレベルに位置している。
【0045】
図1に示した第1の実施形態例は、弁体17として一般的な球体を使用した例を示すもので、弁室11が縦長に形成されており、押さえピン24の高さ寸法を設定して、この押さえピン24の先端(下端)を弁室11の下端部付近まで侵入させる長さとなっている。この第1の実施形態例にあっては、弁体17として球体を使用しているので、逆止弁9の構造が最も簡単なものとなるのであるが、押さえピン24の弁室11内への侵入量が大きくなる。
【0046】
図3に示した第2の実施形態例は、弁体17の高さ寸法を増大調整すると共に、押さえピン24の高さ寸法を減少調整したもので、弁体17を、短い円柱の上下両端を半球状に成形してやや縦長に構成しており、押さえピン24は、弁体17の縦長となった分だけ、弁室11内への侵入量が小さくなる。この第2の実施形態例にあっては、押さえピン24の弁室11内への侵入量が小さくなるので、弁室11内に侵入した押さえピン24の先端の、弁室11内における移動軌跡の横方向の変位量が小さくなる。このため、弁室11内に侵入した押さえピン24の先端が、逆止弁9側と機械的干渉を起こさないようにするのに、寸法的に余裕を得ることができ、これにより押さえピン24の先端の逆止弁9に対する機械的干渉を起こさない、逆止弁付きヒンキャップの製作が簡単となる。
【0047】
図5に示した第3の実施形態例は、第2の実施形態例と同様に、弁体17の高さ寸法を増大調整すると共に、押さえピン24の高さ寸法を減少調整したもので、弁体17を、短い円柱の上下両端を半球状に成形してやや縦長に構成した弁本体17aの上端から、径の小さい円柱状の弁起立片17bを立ち上げて構成した例を示すもので、弁体17の上端、すなわち弁起立片17bの上端は、閉弁姿勢で、略吐出口5(図示例では、吐出口5よりもわずかに下)に位置している。このため、押さえピン24は、ほとんど弁室11内に侵入することがない。このように、第3の実施形態例にあっては、押さえピン24の弁室11内への侵入がないに等しいものとなっているので、押さえピン24の先端の逆止弁9に対する機械的干渉発生は皆無であり、押さえピン24を考慮することなく、逆止弁9の構造を自由に設定することができる。
【0048】
以上、実施形態例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施形態例に限定されるものではない。例えば、弁座面14を、弁座筒片13のテーパー状の上面で形成するのではなく、弁口12を形成する弁座筒片13の上面に、Oリングを固着し、このOリングで弁座面14を形成するようにしてもよい。また、吐出口5をキャップ本体2の頂壁4の中央ではなく、前側に片寄って位置させることによりヒンジ26からの距離を大きくし、これにより押さえピン24の先端の移動軌跡の曲率半径を大きくして、横方向の変位量を小さくするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の逆止弁付きヒンジキャップは、ヒンジキャップが閉姿勢となっている状態で、付設された逆止弁を閉弁状態に保持することにより、容器の閉状態を安定して確実に維持することができ、逆止弁付きヒンジキャップとして広い分野での適用が可能とすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ;ヒンジキャップ
2 ;キャップ本体
3 ;組付き筒
4 ;頂壁
5 ;吐出口
6 ;吐出筒片
7 ;保持筒
8 ;中栓
9 ;逆止弁
10 ;弁筒
11 ;弁室
12 ;弁口
13 ;弁座筒片
14 ;弁座面
15 ;縦リブ
16 ;止め片
17 ;弁体
17a;弁本体
17b;弁起立片
18 ;組付きフランジ
19 ;嵌入筒
20 ;連結壁
21 ;蓋体
22 ;天板
23 ;周筒
24 ;押さえピン
25 ;シール筒片
26 ;ヒンジ
27 ;容器体
28 ;口筒部
N ;内容液
N1 ;固化付着物
図1
図2
図3
図4
図5
図6