特許第6233691号(P6233691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6233691樹脂組成物、これを含有する活性エネルギー線硬化性ハードコート剤、加飾フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233691
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、これを含有する活性エネルギー線硬化性ハードコート剤、加飾フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/00 20060101AFI20171113BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20171113BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20171113BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20171113BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C08F299/00
   B32B27/00 E
   B32B27/30 A
   B05D3/06 Z
   C09D133/06
   C09D7/12
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-188142(P2013-188142)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-54886(P2015-54886A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 佳明
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁宣
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 浩壽
【審査官】 亀谷 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−161802(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/015378(WO,A1)
【文献】 特開2009−286972(JP,A)
【文献】 特開2000−044226(JP,A)
【文献】 特表2010−503604(JP,A)
【文献】 特開2011−213514(JP,A)
【文献】 特開2011−157436(JP,A)
【文献】 特開2012−050941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 299/00−299/08
C08F 290/00−290/14
C08K 3/00−13/08
C09D
C08J 7/04−7/06
B32B 27/00−27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性シリカ微粒子(A)、重量平均分子量10,000〜200,000の多官能(メタ)アクリレート(B)及び光重合開始剤(C)を含み、該疎水性シリカ微粒子(A):メチルイソブチルケトン:メチルエチルケトン:ノルマルヘキサン=1:3:6:10(重量配合比率)を混合した溶液の全光線透過率が60〜99%であり、該疎水性シリカ微粒子(A)がジシロキサン化合物、ジシラザン化合物及びモノアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物により表面処理されたものであることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
上記疎水性シリカ微粒子(A)が、粒子径が1〜100nmであることを特徴とする請求項1の樹脂組成物。
【請求項3】
上記多官能(メタ)アクリレート(B)が、エポキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマーを含むモノマー成分のラジカル重合体にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られるものであり、(メタ)アクリロイル基1つあたりの分子量が200〜400であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性ハードコート剤
【請求項5】
基材フィルムに塗布した請求項4記載のハードコート剤に活性エネルギー線を照射して半硬化状態のハードコート層を形成した加飾フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物、これを含有する活性エネルギー線硬化性ハードコート剤、加飾フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末やパソコン筐体、車内装トリム等のプラスチック射出成型品の表面は、本来傷が付き易いため、硬度や耐擦傷性といったハードコート性、耐薬品性などの機能性を付与させた表面保護層が設けられる。この表面保護層には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂よりも、活性エネルギー線硬化性樹脂の方がそれら特徴に優れていることから賞用されている。従来はスプレー塗装や印刷などで成型品表面に表面保護層を作成していたが、表面保護層を積層したプラスチックフィルムを金型内に設置し、熱により溶融した樹脂を金型内に射出することで、成型と同時に成形物表面に表面保護層を付けるインモールド成形法が、生産性が高く、且つ、複雑な絵柄など高い意匠性を付与することができる点で近年注目されている。
【0003】
インモールド成形に使用されるプラスチックフィルムは加飾フィルムと呼ばれ、プラスチックフィルム基材に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物よりなる表面保護層や柄インキ層、接着層などを多層積層させたものである。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は一般的に室温では液状であることから塗工直後はタック(粘着性)があるため、一旦ロール状に巻き取る際には、固体状(タックフリー状態)にしなければならない。十分なタックフリー状態でなければ、塗工面と基材面が密着して剥がれ難く(ブロッキングといわれる)なり、後工程で不具合が生じることになる。
【0004】
特許文献1には、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルと1分子中に重合性不飽和結合を1個有する不飽和化合物との共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるアクリル系樹脂、1分子内に光重合性不飽和結合を2個以上有した融点が40℃以上の光重合性単量体と融点が40℃以上の光重合開始剤よりなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が
溶剤揮発後に塗膜表面がタックフリーになると記載されているが、耐ブロッキング性は乏しい。
【0005】
特許文献2および特許文献3では、水酸基を有する活性エネルギー線硬化型樹脂とポリイソシアネート化合物との熱架橋を利用した提案がなされているが、保存安定性が悪いことに加えて、多官能イソシアネートがハードコート性やブロッキング性を低下させる傾向がある。
【0006】
特許文献4では、SP値の異なる二種類の樹脂を使用し、相分離を利用して表面に微細な凹凸を形成して耐ブロッキング性を付与する樹脂組成物が提案されているが、塗膜の透明性が損なわれ意匠性に問題を有する。
【0007】
特許文献5では、無機微粒子によりハードコート層表面に凹凸を形成させる技術が報告されてあるが、無機微粒子の沈降や塗膜の透過率やヘイズが低下し易い。特に耐ブロッキング剤としてシリカフィラーがよく用いられているが、耐ブロッキング性を発現するためには、多量のシリカフィラーが必要であり、コスト高の原因でもあった。
【0008】
このように、低コストで優れた耐ブロッキング性を有しつつ、高いハードコート性・透明性を有する塗膜を形成できる樹脂組成物は未だ開発されていなかった。
【0009】
【特許文献1】特開平11−100418号公報
【特許文献2】特開平10−58895号公報
【特許文献3】特開2011−143719号公報
【特許文献4】特開2007−182519号公報
【特許文献5】特開2004−42653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、低コストで優れた耐ブロッキング性と塗膜伸度を両立した半硬化状態の塗膜を形成することができ、活性エネルギー線により完全に硬化させると、優れた耐擦傷性、硬度を成型物表面に付与し、高い透明性を有する塗膜を形成させることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究の末、シリカ微粒子を特定の疎水性表面処理状態にして、特定分子量の多官能(メタ)アクリレートと光重合開始剤より成る活性エネルギー線樹脂組成物にし、プラスチック基材に塗工した後、活性エネルギー線にて半硬化状態にした場合、優れた耐ブロッキング性であることを見出し、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、疎水性シリカ微粒子(A)、重量平均分子量10,000〜200,000の多官能(メタ)アクリレート(B)及び光重合開始剤(C)を含み、疎水性シリカ微粒子(A):メチルイソブチルケトン:メチルエチルケトン:ノルマルヘキサン=1:3:6:10(重量配合比率)を混合した溶液の全光線透過率が60〜99%であることを特徴とするものである。(以下、本発明1という)。
【0012】
本発明2は、本発明1において、上記疎水性シリカ微粒子(A)がジシロキサン化合物、ジシラザン化合物、及びモノアルコキシシラン化合物により選ばれる1種以上の化合物により表面処理されたものであり、粒子径が1〜100nmである樹脂組成物である。
【0013】
本発明3は、本発明1又は2において、多官能(メタ)アクリレート(B)がエポキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマーを含むモノマー成分のラジカル重合体に、α,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られるものであり、(メタ)アクリロイル基1つあたりの分子量が200〜400である樹脂組成物である。
【0014】
本発明4は、本発明1〜3のいずれかの樹脂組成物を含有する活性エネルギー線硬化性ハードコート剤である。
【0015】
本発明5は、基材フィルムに塗布した本発明4のハードコート剤に活性エネルギー線を照射して半硬化状態のハードコート層を形成した塗工フィルムである。
【0016】
本発明6は、基材フィルムに塗布した本発明4のハードコート剤に活性エネルギー線を照射して半硬化状態のハードコート層を形成した加飾フィルムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低コストで優れた耐ブロッキング性と塗膜伸度を両立した半硬化状態の塗膜を形成することができる。また、活性エネルギー線により完全に硬化させると、優れた耐擦傷性、硬度を成型物表面に付与し、高い透明性を有する塗膜を形成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の樹脂組成物は、疎水性シリカ微粒子(A)(以下、「A成分」ともいう)、重量平均分子量10,000〜200,000の多官能(メタ)アクリレート(B))(以下、「B成分」ともいう)及び光重合開始剤(C))(以下、「C成分」ともいう)を含み、疎水性シリカ微粒子(A):メチルイソブチルケトン:メチルエチルケトン:ノルマルヘキサン=1:3:6:10(重量配合比率)を混合した溶液(混合液)の全光線透過率が60〜99%である。ここで全光線透過率とは、対照として厚さ1cmの空の石英セルを100%の全光線透過率とした時に、上記混合液を充填した石英セルを測定した時の透過率であり、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所製 HM−150型)を用いて測定される。表面処理が不十分なシリカ微粒子だと、ノルマルヘキサンの存在下で凝集してしまうことから、全光線透過率は低下してしまう。対して、表面処理が十分であれば、ノルマルヘキサンが存在していても凝集せずに、高い全光線透過率を維持することができる。なお、メチルイソブチルケトン及びメチルエチルケトンは、分散溶媒として用いた。全光線透過率が60〜99%であれば、本発明の優れた特性のひとつの耐ブロッキング性が得られるようになり、60%未満だと耐ブロッキング性が不十分となる。
【0019】
上記(A)成分は、原料シリカ微粒子を表面処理剤により処理して疎水性を付与したものである。この原料シリカ微粒子は、特に限定されず、ケイ素ハロゲン化物を気化させ気相反応により得られる乾式シリカ(フュームドシリカとも言われる)や、水ガラスより生成される湿式シリカのどちらも使用することができる。
【0020】
上記(A)成分の平均粒子径は1〜200nm(レーザー回折・散乱法による)程度に制御されたものを使用することが好ましい。平均粒子径が1nm未満の場合には、保存安定性が悪く、平均粒子径が200nmを超えると硬化膜に白化が生じ易くヘイズや透過効率などの光学特性を損ねる恐れがある。より好ましくは、平均粒子径が1〜100nmである。
【0021】
上記表面処理剤としては、原料のシリカ微粒子に疎水性を付与できるものであれば特に限定されず、例えば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、界面活性剤、ジシロキサン化合物、ジシラザン化合物、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤が挙げられる。好ましくは、ジシロキサン化合物、ジシラザン化合物、及びシランカップリング剤により選ばれる1種以上の化合物である。これにより、一般的に親水性を示すシリカ微粒子表面を、十分に疎水化に変質することができ、極めて優れた耐ブロッキング性を有する塗膜を形成することができる。
【0022】
上記ジシロキサン化合物の具体例としては、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサブチルジシロキサン、ヘキサペンチルジシロキサン、ヘキサヘキシルジシロキサン、ヘキサシクロヘキシルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニル−1,1,3,3−テトラメチルプロパンジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。この中でも、特に入手が容易の点でヘキサメチルジシロキサンが好ましい。
【0023】
上記ジシラザン化合物の具体例としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられる。この中でも、特に入手が容易な点でヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0024】
上記シランカップリング剤の中で、好ましくはモノアルコキシシランカップリング剤であり、具体例としては、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デジルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランが挙げられる。この中でも、特に反応性と疎水性の付与効果が高い点でヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシランが好ましい。
【0025】
上記表面処理は、公知の表面処理方法を用いることができる。例えば、水に分散したシリカ微粒子に上記表面処理剤を添加して反応させた後、水を加熱留去しながら、任意の有機溶剤を留去した分量を加える操作で、有機溶剤に分散した表面処理シリカ微粒子を得ることができる。
【0026】
上記(B)成分は、重量平均分子量10,000〜200,000の多官能(メタ)アクリレートであれば特に限定されない。重量平均分子量が10,000未満であると、耐ブロッキング性の低下となる。重量平均分子量が200,000を超えると、樹脂の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となる。ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として分子量から測定した値である。また(メタ)アクリロイル基1つあたりの分子量は、{(A)成分の重量平均分子量/アクリロイル基の和}から算出される値である。
【0027】
上記(B)成分は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマーを含むモノマー成分のラジカル重合体に、α,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られるものであり、(メタ)アクリロイル基1つあたりの分子量が200〜400である多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。これにより、高い硬度、優れた耐擦傷性を有するハードコート層を得ることができる。
【0028】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマーとは、分子内に少なくとも1個のエポキシ基と1個の不飽和二重結合を有する化合物である。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。これらのうち、入手容易性と調達コストの面から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
上記(B)成分は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマーの他に共重合可能なモノマーを含むことができる。
【0030】
上記共重合可能なモノマーとして、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、いずれか一方の末端に不飽和二重結合を有し、エポキシ基及びカルボキシル基を含有しないマクロモノマー等が挙げられる。これらのうち1種又は2種以上をモノマー成分として含有することができる。
【0031】
上記マクロモノマーの具体例としては、例えば、東亞合成(株)マクロモノマーAA−6やAB−6、AY−707S、チッソ(株)サイラプレーンFM−0711、FM−0721、ダイセル化学工業(株)プラクセルFA10L、日油(株)ブレンマーPME−4000、PSE−1300等が挙げられる。
【0032】
上記α,β−不飽和カルボン酸としては、各種公知のものを特に限定なく使用することができる。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸等のα,β−不飽和モノカルボン酸、(メタ)アクリル酸ダイマー等のα,β−不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。これらのうち、上記樹脂組成物を完全硬化させたハードコート層ハードコート性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0033】
上記(C)成分は、活性エネルギー線によりラジカルを発生させて重合を開始させることができるものであれば、特に限定されず公知のものを用いることができる。(C)成分の具体例としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)ファニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。(C)成分は、これらを単独、あるいは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0034】
上記樹脂組成物における(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合量は、(B)成分の樹脂固形分100重量部に対して、(A)成分を1〜50重量部程度、(C)成分を0.1〜10重量部程度、とすることが好ましい。この配合量とすることで、硬化性をコントロールして半硬化させたハードコート層を形成しやすく、活性エネルギー線を照射してハードコート層を完全硬化させる際も硬化不良が生じにくい。またこれにより、半硬化膜の状態で耐ブロッキング性が良くなる。本発明の樹脂組成物は、従来耐ブロッキング性として用いられてきたシリカフィラーよりも少ない配合量で優れた耐ブロッキング性を得ることができる。本発明によれば、優れた耐ブロッキング性を有し、かつ、原料コストを抑えることができる。同様の観点から、より好ましくは、(B)成分の樹脂固形分100重量部に対して、(A)成分を1〜30重量部程度で(C)成分を0.5〜5重量部程度、(A)成分を1〜20重量部程度で(C)成分を0.5〜3重量部程度、(A)成分を1〜10重量部程度で(C)成分を0.5〜2.5重量部程度、とすることである。
【0035】
上記樹脂組成物は、塗工性の改良のためにレベリング剤を配合することができる。また、基材との剥離を容易にするために、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエステル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンアクリル系共重合物、シリコン変性アクリル等のシリコーン化合物、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリカプロラクトンテトラオール、カプロラクトン変性アクリルポリオール、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート等のε−カプロラクトン重合物を配合することができる。耐光性を改善するために市販の紫外線吸収剤等も配合することができる。
【0036】
本発明はまた、上記樹脂組成物を含有する活性エネルギー線硬化性ハードコート剤である。本発明のハードコート剤は、上記樹脂組成物を含有することで優れた耐擦傷性、硬度を成型物表面に付与し、高い透明性を有するものである。
【0037】
上記ハードコート剤を基材フィルムに塗布して活性エネルギー線を照射して半硬化状態のハードコート層を形成した加飾フィルムもまた本発明の一つである。
【0038】
上記半硬化とは、活性エネルギー線硬化型樹脂中の(メタ)アクリロイル基の一部が架橋反応し、未反応の(メタ)アクリロイル基が残存している状態である。これは、赤外線分光測定による反射ATR測定法にて測定を行い、波長1620cm−1付近のピーク面積P1620と、波長1720cm−1付近のピーク面積P1720の比(P1620/P1720)の値から、下記式(1)で表わされる硬化度が、0.7以上0.95以下を意味する。
硬化度=(UV照射後P1620/UV照射後P1720)/(UV照射前P1620/UV照射前P1720)
【0039】
上記半硬化させたハードコート層は、半硬化塗膜表面を指触した際に指に樹脂成分が付着しない低タック性と耐ブロッキング性、優れた塗膜伸度を有する。
【0040】
上記基材フィルムに半硬化膜(ハードコート層)を積層させる方法としては、公知の方法で塗布して乾燥/または乾燥後に、上述の硬化度を満たすように活性エネルギー線を照射して硬化させることにより行う。ハードコート剤の塗布方法としては、例えばバーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が挙げられる。なお、塗布量は特に限定されないが、通常は、乾燥後の重量が0.1〜20g/m、好ましくは0.5〜10g/mになる範囲である。
【0041】
上記基材フィルムは、特に制限はなく、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等を用いることができる。
【0042】
本発明の加飾フィルムは、特に限定されず、ラミネート用加飾フィルム、転写用加飾フィルムとして用いることができる。
【0043】
上記ラミネート用加飾フィルムは、例えばプラスチックフィルム基材の片側にハードコート層を、もう一方の面に柄インキ層や接着層等を積層した層構成の加飾フィルムであり、成型物の表面に張り付けることで加飾することができる。また、インモールドラミネーション等と呼ばれるインモールド成形にも使用することができる。
【0044】
上記転写用加飾フィルムは、基材フィルムの片面に離型層を形成し、離型層上に転写層(ハードコート層、絵柄層、接着層等の順で積層した層)を積層した加飾フィルムであり、通常、転写される柄インキ層、アンカー層、接着層、低反射層、帯電防止層、紫外線吸収層、近赤外線遮断層、電磁波吸収層などの転写層を、上記半硬化物であるハードコート層の上に、任意の順番で積層してもよい。インモールドデコレーション等と言われるインモールド成形に使用することができる。
【0045】
上記柄インキ層は、適切な色の顔料や染料を、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニル汗タール樹脂、セルロース系樹脂、アルキド樹脂などに配合した着色インキを、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、スクリーン印刷などの印刷方法を用い積層したものである。この柄インキ層は、単色、または、多色重ね塗りをしても良い。また、金属蒸着を全面もしくは部分的に行うこともできる。
【0046】
上記アンカー層は、各転写層間の密着性を高めるため、例えば、二液硬化性ウレタン樹脂、メラミンやエポキシ系熱硬化性樹脂、塩化ビニル系樹脂やポリアクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができ、公知の印刷方法で積層したものである。
【0047】
上記接着層は、成型品表面に転写層を密着させるために必要である。全面もしくは、転写させたい箇所のみ積層するものである。接着層としては、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、インデン樹脂等、成形物の材質によって、親和性が適切なものを一種または二種以上を配合して用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら各例に限定されるものではない。なお、各例中、部および%は特記しない限りすべて重量基準である。
【0049】
<活性エネルギー線硬化型樹脂(多官能(メタ)アクリレート)の調製>
【0050】
<合成例1>
撹拌機、温度計、還流冷却機、窒素流入口を取り付けた四つ口フラスコに、酢酸ブチル48.6部、グリシジルメタアクリレート(以下、GMA)32.6部、アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBN)1.6部を仕込んで攪拌し、窒素気流化で100℃まで昇温したのち10時間反応させた。反応終了後、60℃まで冷却して、アクリル酸16.6部、トリフェニルフォスフィン 0.1部、メトキノン 0.5部を仕込み、窒素流入口をエアーバブリング装置に取り換えて空気を反応液中にバブリングしながら攪拌して、110℃まで昇温させ9時間保温反応させることで、樹脂固形分50%の樹脂1を得た。なお、重量平均分子量(GPCによるポリスチレン換算値)は15,000であり、アクリル基一つあたりの分子量は214と算出された。重量平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、商品名「HLC−8220」、カラム:東ソー(株)製、商品名「TSKgel superHZM−M」を3本直列に連結して測定した値を表1に示す。
【0051】
<合成例2>
撹拌機、温度計、還流冷却機、窒素流入口を取り付けた四つ口フラスコに、酢酸ブチル49.2部、GMA33.0部、AIBN0.3部を仕込んで攪拌し、窒素気流化で85℃まで昇温したのち10時間反応させた。反応終了後、60℃まで冷却して、アクリル酸16.8部、トリフェニルフォスフィン 0.1部、メトキノン 0.5部を仕込み、窒素流入口をエアーバブリング装置に取り換えて空気を反応液中にバブリングしながら攪拌して、110℃まで昇温させ9時間保温反応させることで、樹脂固形分50%の樹脂2を得た。なお、重量平均分子量(GPCによるポリスチレン換算値)は60,000で、算出されるアクリル基一つあたりの分子量は214であった。
【0052】
<合成例3>
撹拌機、温度計、還流冷却機、窒素流入口を取り付けた四つ口フラスコに、酢酸ブチル48.7部、GMA25.4部、ポリスチレンマクロモノマー(商品名「AS−6」東亞合成株式会社)10.9部、AIBN1.5部を仕込んで攪拌し、窒素気流化で90℃まで昇温したのち10時間反応させた。反応終了後、60℃まで冷却して、アクリル酸12.9部、トリフェニルフォスフィン 0.1部、メトキノン 0.5部を仕込み、窒素流入口をエアーバブリング装置に取り換えて空気を反応液中にバブリングしながら攪拌して、110℃まで昇温させ9時間保温反応させることで、樹脂固形分50%の樹脂4を得た。なお、重量平均分子量(GPCによるポリスチレン換算値)は40,000で、算出されるアクリル基一つあたりの分子量は275であった。
【0053】
【表1】
GMA:グリシジルメタクリレート
AS−6:東亞合成株式会社製 ポリスチレンマクロモノマー
【0054】
<シリカ微粒子S1の調製>
撹拌機、温度計、減圧蒸留装置を取り付けた三つ口フラスコに、イソプロピルアルコール(以下、IPA)分散シリカゾル(日産化学工業株式会社 商品名;IPA−ST−L シリカ含有量30%)500gに、表面処理剤としてヘキサメチルジシロキサン 30gを加え、攪拌しながら60℃で10時間反応させヘキサメチルジシロキサン表面処理シリカゾルを得た。その後、フラスコ内容物が250gになるまで減圧蒸留を行い濃縮させた後、メチルイソブチルケトン(以下、MIBK)を250g加え、内容物が500gで一定になる様に添加しながら、減圧蒸留によりMIBKに溶剤置換し、MIBK分散ヘキサメチルジシロキサン表面処理シリカゾル(シリカ微粒子)S1(シリカ含有量30%、IPA含有量0.6%以下、数平均粒子径約50m)を得た。また、得られたシリカ微粒子S1にMIBKとメチルエチルケトン(以下、MEK)を加え、シリカ:MIBK:MEK=1:3:6(重量配合比)の混合液10gを調製した。この混合液10gの全光線透過率が60%に達するのに必要なノルマルヘキサンは30gであった。ヘキサメチルジシロキサン表面処理シリカ微粒子が1に対して、溶剤比率をMIBK:MEK:ノルマルヘキサン=3:6:10に調製したときの全光線透過率は76%であった。
【0055】
<シリカ微粒子S2〜S7の調製>
同様の手順で、IPA分散シリカゾルの種類と、表面処理剤の種類と配合量を変更し、同様の手順でS2〜S7のシリカ微粒子を得た。
【0056】
【表2】
IPA−ST:イソプロピルアルコール分散シリカゾル(粒子径 約15nm)
IPA−ST−L:イソプロピルアルコール分散シリカゾル(粒子径 約50nm)
IPA−ST−ZL:イソプロピルアルコール分散シリカゾル(粒子径 約100nm)
【0057】
<ハードコート剤(樹脂組成物)の調製>
表3に示す処方で各材料を配合して、MEKにて固形分40%になるように希釈し、ハードコート剤を調製した。なお、表2中は全て固形分に換算した数値(単位は特記がない場合は重量部)を示す。
【0058】
<塗工フィルムの作製>
ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)の片面に上記の調製したハードコート剤T1〜T8をバーコーター#12にて塗工した。80℃60秒間乾燥させ有機溶剤を揮発させた後、高圧水銀灯にて積算光量0〜300mJ/cmのUV線(UV照射条件(1))を照射し半硬化状態にして塗工フィルムを作製した。
【0059】
得られた塗工フィルムの半硬化状態のハードコート層のタック性、耐ブロッキング性、塗膜伸度を以下のように評価した。その結果を表3と表4に示す。
【0060】
<タック性>
半硬化状態のハードコート層を指触し、以下の基準で評価した。
○=樹脂成分が指に付着しない。
×=樹脂成分が指に付着する。
【0061】
<耐ブロッキング性>
半硬化状態のハードコート層を有する転写用加飾フィルムを5×5cmの大きさに切り出し、ポリエチレンテレフタレートフィルムを乾燥膜面側に貼り合せ、ガラス板に挟み100g/cmの荷重を掛け、40℃保温庫に24時間静置して乾燥膜とポリエチレンテレフタレートフィルムとの貼り付き具合によって、耐ブロッキング性を以下に示す4段階で評価した。
4;全く貼りついて無い状態
3;貼りついていない箇所があり、貼り付いている箇所も容易に剥離する
2;全体が貼りついているものの、容易に剥離する
1;全体が貼り付き、剥離するのが困難
評価3を低い耐ブロッキング性、評価4をより優れた低い耐ブロッキング性と判断し、評価3以上のものについて耐ブロッキング性を有するとした。一方、評価2は耐ブロッキング性に劣る、評価1は極めて耐ブロッキング性が高い状態といえ、評価2以下のものを耐ブロッキング性がないものと評価した。
【0062】
<塗膜伸度>
半硬化状態のハードコート層を有する転写用加飾フィルムを長さ100mm、幅7mmの短冊状に切り出し、引張試験機(型番「RTC−1250A」株式会社オリエンテック)にチャック間距離50mmでセットし、室温25℃、湿度45%RHの環境の下、引張り速度10mm/minで実施し、ハードコート層にクラックが生じるまでの伸度を測定した。
【0063】
<剥離強度>
作成した転写用加飾フィルムのハードコート層側に、幅24mmのセロハンテープ(ニチバン株式会社 商品名 エルパック LP−24)を張付け、セロハンテープ端部に沿ってカッターで切れ目を入れて、所定長さにプラスチックフィルム基材とハードコート層間を剥がして、バネ計りで剥離強度を測定した。剥離強度は30〜500mmN/24mmであれば、金型内への搬送時に基材フィルムとハードコート層が剥離することなく取り扱え、かつ、転写と同時に基材フィルムをハードコート層から剥離する際に剥がしムラが起ることなく使用することができる。
【0064】
<転写用加飾フィルムの製造>
前述の通り作成した半硬化状態のハードコート層の上に、接着層として日本合成化学会社製ポリエステル樹脂(商品名P−170)をトルエン:メチルエチルケトン=1:1の混合溶媒で固形分30%に希釈したものを、バーコーターを用いて乾燥膜厚さ1μm程度になるよう塗布し、100℃60秒間乾燥させて転写用加飾フィルムとした。
<インモールド射出成型>
金型内に作成した上記各転写用加飾フィルムを配置して、熱可塑性樹脂(三菱レイヨン社製、商品名 アクリペットVH)の溶融物を射出成型し、ハードコート層を最表面に転写させた成形物を得た。その後、成形物高圧水銀灯にて積算光量300mJ/cmのUV線を成形物に照射し(UV照射条件(2))、ハードコート層を完全硬化させた。
【0065】
転写用加飾フィルムが有する完全硬化したハードコート層の鉛筆硬度、耐擦傷性を以下のように評価した。その結果を表3と表4に示す。
【0066】
<鉛筆硬度>
作成したインモールド射出成型物にて評価した。JIS−K−5600の試験方法に則って行った。鉛筆硬度2Hのものを優れたハードコート性を有しているとし、逆に、鉛筆硬度Hのものはハードコート剤として使用できるもののややハードコート性に劣るもの、鉛筆硬度Fはハードコート性が明らかに劣るものと判断した。
【0067】
<耐擦傷性>
作成したインモールド射出成型物にて評価した。#0000スチールウールを使用し、500g/cm荷重をかけて、硬化膜表面を10往復擦傷し、目視にて傷の有無を確認し、以下のように評価した。
○=傷無し
×=傷有り
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
PE3A:ペンタエリスリトールトリアクリレート
合成雲母:平均粒子径100nm