(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233728
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】眼の瞳孔を拡大させ且つ崩れを防止するデバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
A61F9/007 200Z
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-559604(P2015-559604)
(86)(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公表番号】特表2016-511680(P2016-511680A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】IN2013000457
(87)【国際公開番号】WO2014132264
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】225/KOL/2013
(32)【優先日】2013年2月27日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】517356427
【氏名又は名称】メッド インヴェント ディヴァイセズ プライヴェート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バッタチャルジー、スヴェン
【審査官】
石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0289786(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科処置の間に眼の瞳孔を拡大し崩れを防止するためのデバイスであって、該デバイスは、リング(47、78)として構成され、前記デバイスは、少なくとも3つのノッチ(55)および2つの辺要素を備える、弾力性があり柔軟な材料からなるストランドを備え、前記ノッチは内方にブラインド・レセプタクル(63)を備え、外に向かって開いており、
各ノッチは、第1の鋭角の曲げ(59)、第2の戻し曲げ(60)、第3の鋭角の曲げ(61)を有し、
前記少なくとも3つのノッチおよび2つの辺要素は、同一の平面内に設けられている、デバイス。
【請求項2】
前記リングはフランジ形状の辺要素を有しており、前記フランジは前記ストランドのループによって形成されて、前記フランジは外方を向いており、使用時に、眼の瞳孔縁及び虹彩が、1つのフランジの全長の前面側および次のフランジの全長の後面側にある、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項3】
前記ノッチは前記ストランドを内方にループ化して形成されている、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項4】
前記リングは連続リングであり、不連続リングの2つの端部を接合することによって形成されているか、または、継ぎ目を全く有さずに連続している、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたデバイス。
【請求項5】
前記連続リングは、少なくとも3つの辺と3つの隅とを有する多角形形状を有する、請求項4に記載されたデバイス。
【請求項6】
前記リングは、4つの隅の各々にノッチを備えた長方形または正方形の形状である、請求項5に記載されたデバイス。
【請求項7】
前記リングは、6つの隅の各々にノッチを備えた六角形の形状である、請求項5に記載されたデバイス。
【請求項8】
前記リングは不連続であり、少なくとも、3つの辺および2つの隅を有し、前記リングの端部が鈍い形状又はオリーブ形状である、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項9】
前記不連続リングは、2つの端部、5つの辺、4つの隅、および6つのノッチを有しており、前記ノッチは、前記2つの端部および内角が鈍角である4つの隅にあり、前記リングの前記2つの端部の間の距離が、第1の隅と第4の隅との間の距離よりも大きくなっている、請求項8に記載されたデバイス。
【請求項10】
前記リングは、ノッチ、辺要素又は端部上に1つ又は複数の位置決め用穴を有する、請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載されたデバイス。
【請求項11】
前記リングのノッチは、球根、フラスコ、鍵穴、ホッケーのスティック、オメガ、U、V、L、Sのような形状をしており、デバイス上のすべてのノッチが同じであるか又は異なっている、請求項5から請求項10までのいずれか1項に記載されたデバイス。
【請求項12】
前記リングの隅のうちの少なくとも1つは2つの隣接するノッチを有する、請求項5から請求項11までのいずれか1項に記載されたデバイス。
【請求項13】
前記リングは伸縮性であり、拡大しているか又は拡大することができるようになっている、請求項5から請求項12までのいずれか1項に記載されたデバイス。
【請求項14】
前記リングは、折り畳み、伸展又は変形構成のうちの1つ又は複数の選択された構成に適応させるように構成されている、請求項5から請求項13までのいずれか1項に記載されたデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼の手術の分野に関するものであり、手術中に眼の瞳孔を機械的に拡大又は散大させるためのデバイスの改良に係るものである。
【背景技術】
【0002】
超音波水晶体乳化吸引手術中及び網膜硝子体手術中に、瞳孔が薬剤点眼によっても散大しないとき、瞳孔を機械的に拡大させるためのデバイスが必要となる。このようなデバイスは、手術継続時間全体にわたって瞳孔を拡大させた状態に維持し且つ瞳孔の崩れを防止しなければならない。
【0003】
デバイスを除去すると、瞳孔は拡大されない状態まで復帰して、その機能及び美容を維持する。非散大性の瞳孔をもつ眼は、虹彩の垂れ下がりと関連することが多く、これが手術中の追加的な困難をもたらす。
【0004】
白内障の超音波水晶体乳化吸引手術では、角膜の脇にフェイコプローブを挿入するための1.6〜2.8mmの切開が必要とされる。切開が小さいほど、安全であり且つ乱視中立な傷となり、より良好な見た目に移行する。
【0005】
網膜硝子体手術では、眼の中に器具を挿入するために強膜に大きさが0.6mm以下の切開を必要とする。角膜切開は不要であるため、瞳孔散大用デバイスを挿入するためだけのこのような切開はできる限り小さくすべきである。
【0006】
瞳孔散大に使用される現状のデバイスは、眼内への挿入のために2.2〜2.5mmの切開を必要とする。これでは、上部と底部を備えた2平面構造を有するギャップ又はポケットが隅にあるために切開に突っ掛かる。このような突っ掛かりは、デバイスの除去を困難とさせ、また角膜を損傷させる。このため、瞳孔縁を隅にある小さい幅狭のくさび形のギャップ又はポケットに係合するために精細な位置合わせが必要である。このことは、外科医の視野が上方からのものであり且つデバイス自体がデバイスの辺にある幅狭のギャップの視界を遮るために特に困難である。このギャップ又はポケットは、隅を肉厚で嵩高くさせる上側部と下側部を有する2つの構造平面を有する。このギャップ又はポケットは、瞳孔縁及び虹彩組織を受動的に保持しており、また瞳孔縁は外科的操作の間に簡単に外れる可能性がある。
【0007】
このような連続リング・デバイスは、Malyuginによる米国特許第8323296号(2012年12月4日)、Dusekによる米国特許出願公開第2012/0269786号(2012年11月15日)、並びにChristensen及びColvardによる米国特許出願公開第2013/0096386号(2013年4月18日)に開示されている。
【0008】
他方、不連続リング・デバイスは、Goldmanによる米国特許第5163419号(1992年11月17日)、Graetherによる米国特許第5267553号(1993年12月7日)、Milvertonによる米国特許第6620098号(2003年9月16日)、及びLeeによる米国特許第6648819号(2003年11月18日)に開示されており、これらのデバイスは必要な切開サイズがより大きいこと、関連する操作が煩雑であること及び係合が緩いことのために支持が得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8323296号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0269786号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2013/0096386号明細書
【特許文献4】米国特許第5163419号明細書
【特許文献5】米国特許第5267553号明細書
【特許文献6】米国特許第6620098号明細書
【特許文献7】米国特許第6648819号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主たる目的は、眼の中への挿入に非常に小さい切開しか必要としない、眼の瞳孔を拡大するためのデバイスを提供することである。本発明の別の目的は、挿入又は除去の間に切開に突っ掛かることのない瞳孔縁の係合の機構を備えたデバイスを提供することである。本発明のさらに別の目的は、デバイスの辺にある幅狭のくさび形のギャップ又はポケットへの瞳孔縁の精細な位置合わせを必要としない、孔縁の係合のためのより簡単な機構を備えたデバイスを提供することである。本発明のまた別の目的は、その隅が瞳孔縁と係合可能である一方、細身であり且つ厳密にデバイスの同じ面内にあるデバイスを提供することである。本発明のまた別の目的は、瞳孔を拡大させるだけではなく、外科操作によって脱係合に至らないような虹彩組織に対して確実であるが可逆的に装着されるデバイスを提供することである。本発明のまた別の目的は、非散大性の瞳孔と関連することの多い虹彩の垂れ下がりを低減させるデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、手術中に眼の瞳孔を拡大させ且つ崩れを防止するためのデバイスである。ノッチ及びフランジが連続又は不連続のリングの同じ平面上にあって、瞳孔縁の係合に使用することが本発明の新規な点である。このノッチは隅にあるとともに、リングの周囲に沿って辺要素又はフランジと交互に配置されている。このノッチは、外に向かって開放され、内に向かってブラインド・レセプタクル(出口のない入れ物)となっている。ノッチは、瞳孔縁の異なる部分に係合するとともにこれらを押し離し、瞳孔の持続的拡大が得られる。フランジは、ストランドの幅広のループから形成されるとともに、外方に向いている。
【0012】
本デバイスは、弾力的で柔軟な任意の材料からなるストランドから製作される。例えば、熱処理された4−0ナイロン縫合糸(0.15〜0.17mm)がそうである。ノッチは、切開を通過する際に一時的に真っ直ぐになり、これにより非常に小さい切開を通じてのデバイスの挿入が可能となる。本デバイスはギャップやポケットを全く有さず、全体として単一平面に配置されているため、突っ掛かりを起こさずに切開を通過する。本デバイスは、あたかもペーパー・クリップのようにノッチ及びフランジのところで瞳孔縁及び虹彩を曲げ、これにより確実な係合が実現する。虹彩は柔軟であるため、何らの損傷を受けることなくこのような曲げに耐えることが可能である。虹彩の前方に位置するフランジは、うねり効果を抑制することによってその垂れ下がりを低減する。
【0013】
同じ発明概念の趣旨域内において、手術の性質、眼のサイズ、前眼房の深さ、関連する併存症、切開のサイズ、初期瞳孔サイズ、所望の瞳孔サイズ、その他に応じた外科医の選択を可能にするための設計上の変更が必要である。設計上の変更は、異なる製造可能性に合わせるためにも必要となる。
【0014】
連続形態のリングは、少なくとも3つの辺をもつ多角形の形態をしており、継ぎ目を有することも有しないことも可能である。端部は、端部を結ぶことや縛ること、或いは化学的、熱的又は超音波による端部の結合による又は他の任意の方法によって接合される。成型、型押し又は他の方法によって製作する場合は継ぎ目が存在しない。不連続形態のリングは、少なくとも、3つの辺、2つの隅、および4つのノッチを有する。この形態では挿入のために必要となる切開がかなり小さくなる。
【0015】
本発明の形態の1つとして、リングが、後方に緩やかに傾けられた交互の辺要素又はフランジを有しており、これによりフランジを虹彩の下に簡単に挟み込むことが可能となる。
【0016】
ノッチは、隅におけるストランドの内方ループによって形成されるか、又はストランドの2つの外方に指状に突き出たループの間のストランドの内方ループによって形成される。本発明の一形態では、リングの隅は2つの隣接するノッチを有する。
【0017】
本デバイス上の位置決め用穴は本デバイスの操作の際に役立つ。本デバイスは、伸縮性材料から製作される場合、挿入後により大きなサイズまで拡大する。
【0018】
リング・デバイスは、折り畳み、伸展又は変形構成からの1つ又は複数の選択された構成に適応するように構成させており、これにより小さい切開を通した挿入が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】Malyuginの米国特許第8323296号(2012年12月4日)に開示されたタイプのリングの拡大上面斜視図。
【
図2】Malyuginの米国特許第8323296号に開示されたタイプのリングについて、ループのくさび形のギャップ内に虹彩組織を示している拡大側面斜視図。
【
図3】Dusekの米国特許公開第2012/0269786号に開示されたタイプの修正型リングの拡大上面概要図。
【
図4】Christensen及びColvardの米国特許公開第2013/0096386号に開示されたタイプのリングの斜視図。
【
図5】本発明のデバイスの一形態について、継ぎ目を備えた正方形の連続リングを示す拡大上面概要図。
【
図6】
図5のデバイスによって瞳孔が拡大された位置に維持されているところを示す図。
【
図7】ノッチに対する虹彩組織の関係を示した拡大側面概要図。
【
図8】眼内へのリング・デバイスの挿入及び
図5のデバイスの第1のノッチとの瞳孔縁の係合を示した図。
【
図9】
図5のデバイスの第2のノッチによる係合後における引き伸ばされた瞳孔縁を示した図。
【
図10】
図5のデバイスの4つすべてのノッチによる係合後における完全に拡大された瞳孔を示す図。
【
図11】本発明のデバイスの一形態について、5つの辺、4つの隅及び6つのノッチを備えた不連続リングを示す拡大上面概要図。
【
図12】
図11のデバイスによって瞳孔が拡大された位置に維持されているところを示す図。
【
図13】本発明のデバイスの一形態について、後方に緩やかに傾けられた
図11のデバイスの交互式フランジを示す拡大上面斜視概要図。
【
図14】本発明のデバイスの一形態について、継ぎ目のない六角形の連続リング上にある複数の位置決め用穴を示す拡大上面概要図。
【
図15】本発明のデバイスの一形態について、継ぎ目のない正方形の連続リングのストランドの2つの外方に指状に突き出たループの間にあるストランドの内方ループによって形成されたノッチによる瞳孔縁の係合を示す拡大上面概要図。
【
図16】本発明のデバイスの一形態、継ぎ目のない正方形の連続リングの隅にある2つの隣接するノッチによる瞳孔縁の係合を示す拡大上面概要図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
既存のデバイスの関連する構成及び本発明の新規性について、その全体にわたって同じ符号によって様々な図における対応する部分を示している添付の図面に示している。
【0021】
図1は、Malyuginの米国特許第8323296号(2012年12月4日)に開示されたタイプのリングの拡大上面斜視図を示している。Malyuginのリング1は、ストランドの1回の完全な周回によって形成されるとともに辺6、7、8及び9によって分離された4つのらせん状ループ2、3、4及び5を備えた正方形構成を有する。リングの2つの端部10及び11は、へこませた部分を有するとともに継ぎ目12で接着剤によって互いに突合わせて取り付けられている。各ループは、リングの周囲と対面するくさび形のギャップ13及び14を有し、虹彩組織を受け容れ及び捕捉する。リング1は瞳孔を伸展された位置に維持する一方、中央開口部15により手術中に広い視野面積が得られる。
【0022】
図2は、Malyuginの米国特許第8323296号に開示されたタイプのリングについて、ループのくさび形のギャップ13及び14内にある虹彩組織16を示している拡大側面斜視図を示している。辺9は、ある面にあるギャップ13の底部に接続し、別の面にあるギャップ14の上部に接続している。
【0023】
図3は、Dusekの米国特許出願公開第2012/0269786号に開示されたタイプの修正型リングの拡大上面概要図を示している。Dusekのリング17は、4つの辺18、19、20及び21を有する。辺20は接着剤の滴下によって端部23と24が固定される場所である端部突合わせ継ぎ目22を有する。辺19と辺20とは直交する。これらの辺は、3つの異なった曲げ(すなわち、第1の鈍角の曲げ26(本質的に、
図3に見られるような135°の内方及び左方向への曲げ)、第2の戻し曲げ27(本質的に、
図3に見られるような180°内方へ次いで観察者から離れる下方向へ次いで右方向への曲げ)、及び第3の鈍角の曲げ28(本質的に、
図3に見られるような135°上方向へ且つ左方向への曲げ))を有する隅部分25によって接合されている。隅部分29、30及び31も隅部分25と同一である。
【0024】
図4は、Christensen及びColvardの米国特許出願公開第2013/0096386号に開示されたタイプのリングの斜視図を示している。本開示に記載した実施例では、リング32は丸まった隅33、34、35及び36を備えた正方形形態を有する。各隅には、リングの概して1つの面を形成する上部プレート37が存在しており、且つリングの概して第2の面を形成する底部プレート38が存在している。これらの面は、腕39、40、41及び42を接続することによって形成されたリングの主平面の概して上側及び下側にある。各隅にある上部プレートと底部プレートの外周は一体になって、開かれた形に支持された虹彩の一部分を入れるポケット43、44、45及び46の入口となる唇形状を形成している。
【0025】
図5は、瞳孔の拡大及び崩れの防止のために使用される本発明のリングの拡大上面概要図である。リング47は、例えば熱処理された4−0ナイロン縫合糸などの弾力性のある柔軟な任意のストランドから製作される。これは、連続リングであり、正方形構成を有して、隅部分によって接合されている4つの辺48、49、50及び51を有する。辺50において、端部52及び53が突合わせ継ぎ目54で接着剤により接合されている。隅部分55、56、57及び58の各々は、1つのノッチを形成しており、これらのノッチは同じ符号により示される。隅部分56は、互いに直交する辺49と辺50を接合している。隅部分56において、ストランドは内方にループしてノッチを形成している。同じ面内のストランドの3つの異なった曲げによってノッチが形成される。すなわち、第1の鋭角の曲げ59、第2の丸まった戻し曲げ60及び第3の鋭角の曲げ61である。ノッチは、幅狭の外方へ開いた開口部62を有し、これにより虹彩組織がノッチに入れるようになっている。内方に向かってノッチは、瞳孔縁と虹彩組織を緩やかに係合する球根状の出口のない入れ物(ブラインド・レセプタクル)63を形成する。隅部分55、57及び58も隅部分56と同じである。辺51に沿った隅部分57及び58のそれぞれの部分64及び65によって、外方フランジが形成されている。辺48、49及び50も同様のフランジを形成する。リングは、ノッチとフランジを交互に備えており、これらはすべて、同じ面内にあって空間66を取り囲んでいる。
【0026】
図6は、
図5のリング47によって拡大された位置に維持された瞳孔の図を示している。隅55、56、57及び58にあるノッチは、瞳孔縁67を異なる部分で係合して、これらを押し離し、これにより瞳孔の拡大を生じさせている。辺48及び50にあるフランジは虹彩68の前面側に維持される。辺49及び51にあるフランジは虹彩の後ろ側に維持されており、見えていない。交互になっているノッチとフランジは、幾分かペーパー・クリップのように、瞳孔縁及び虹彩組織に曲げを生じさせる。このことにより確実であるが可逆性の係合が得られる。中央開口部66によって、瞳孔面に至るより深い構造に対する幅広い視野が可能となる。
【0027】
図7は、ノッチに対する虹彩組織の関係を示す拡大側面概要図である。この辺の図は、
図6の2つの任意の隣接するノッチの中間を通る垂直面のものである。デバイスは、2つのノッチを通る間に、虹彩組織68を4回にわたって異なった曲げ方をする。
図7の左から、虹彩68は、辺要素69及びノッチ71の外側の腕70の上を通過する。第1の曲げは、ノッチ71の外側の腕70の周りを下向きに且つノッチを通って通過するために鈍角をなしている。第2の曲げは、ノッチ71の内側の腕72の下を通過するために鈍角をなしている。次いで虹彩68は、ノッチ74の内側の腕73の周りを上向きに且つノッチを通過するために鈍角の角度で第3の曲げを生じる。最後の第4の曲げは、ノッチ74の外側の腕75及び辺要素76を通過するために鈍角をなしている。
図7に見られるように、辺要素69、ノッチ71の外側の腕70、ノッチ71、ノッチ71の内側の腕72、ノッチ74の内側の腕73、ノッチ74、ノッチ74の外側の腕75及び辺要素76はすべて同じ面内にある。
【0028】
図8は、本発明の使用法に関するものであり、
図5のリング47の眼内への挿入及びリングの第1のノッチ55との瞳孔縁67の係合を示す図である。ピンセット(本図では図示せず)によってデバイスが運ばれるか、又はインジェクタ(本図では図示せず)によってデバイスが切開77を通して眼の前眼房内に送られる。正方形リング47は柔軟なので、かなり小さい切開77を通り抜ける際に菱形形状になることができる。ノッチ56及び58は、デバイスが切開を通過する際に開き、一時的に真っ直ぐになる。先行する第1のノッチ55は、瞳孔縁67を引っ掛けて係合し、これを外方方向に押す。瞳孔縁67は、フランジ49を瞳孔縁67及び虹彩68の下に挟み込むためにヒルシュマン・フック(本図では図示せず)によって持ち上げられる。
【0029】
図9は、本発明のより詳細な使用法に関するものであり、また
図5のデバイス47の第2のノッチ56による係合後に引き伸ばされた瞳孔縁を示す図である。弾力的であり柔軟なリング47はここで、その正方形構成まで復帰する。ノッチ55及び56は、2つの異なる点で瞳孔縁67に係合し、これを押し離している。フランジ49(本図では図示せず)は瞳孔縁67の下への挟み込みを維持する一方、フランジ48、50及び51は虹彩68の前面側にある。瞳孔縁が虹彩又は辺ポート(本図では図示せず)を通して導入したヒルシュマン・フックによって再度引っ掛けられると、別の辺ポート(本図では図示せず)を通して導入したピンセットによってフランジ51を保持するとともに、これを瞳孔縁67及び虹彩68の下に挟み込む。
【0030】
図10は、本発明のさらに詳細な使用法に関するものであり、
図5のデバイス47の4つのすべてのノッチ55、56、57及び58による係合後における完全に拡大され且つ正方形構成に適応した瞳孔縁67を示した図である。フランジ48及び50は虹彩68の前面側に依然としてある。辺49及び51のフランジは虹彩の後側にあり、見えていない。中央開口部66によって、瞳孔面に至るより深い構造に対する幅広い視野が可能となる。手術が完了すると、デバイスは瞳孔縁から容易に脱係合させピンセットで引き出される。デバイスは、ノッチがフランジと同じ面にあり且つ一時的に真っ直ぐにできるため切開に突っ掛かることなく眼から出される。
【0031】
図11は、本発明のデバイスの別の形態の拡大上面概要図であり、眼の繊細な構造に対する損傷を防ぐように鈍らせた又はオリーブの形状とさせた端部79及び80を備えた不連続リング78を示す。不連続リング78は、フランジのような形状をした5つの辺81、82、83、84及び85を有する。これらの辺を接合する隅部分は内側が鈍角となっている。4つの隅部分87、88、89及び90によって4つのノッチが形成されており、同じ符号がこれらのノッチに付されている。ノッチ86が第1の端部にあり、またノッチ91がリングの第2の端部にある。
図11のデバイスでは、隅87と90の角度は互いに等しく、また隅89と90の角度は互いに等しい。第1の辺81と第5の辺85は平行であり、これによりデバイスは平坦上部家屋形状を有している。中央の空間92は、デバイスの5つの辺に対して閉じており、1つの辺に開いている。
図11のデバイスの別の形態(本図では図示せず)では、第1の辺81と第5の辺85は、端部79と80の間の距離が、第1の隅87と第4の隅90の間の距離よりも大きくなった非平行であり、これによりデバイスが平坦上部タワー形状を有する。
【0032】
図12は、
図11のデバイスによって瞳孔が拡大された位置に維持されているところを示した図である。ノッチ86、87、88、89、90及び91は、瞳孔縁67を異なる部分で係合してこれらを押し離し、これにより瞳孔の拡大を生じさせている。端部79及び80とフランジ82及び84とは虹彩68の前面側にある。フランジ81、83及び85は虹彩の後側にあり、見えていない。瞳孔の収縮力によって不連続リングの端部79及び80のノッチ同士が引き付けられるために、デバイスの中央の空間92の形状及び瞳孔の形状は六角形となる。中央の空間92によって、瞳孔面に至るより深い構造に対する幅広い視野が可能となる。
図11のデバイスは
図5のデバイスに関して上記で説明した方法で眼の中に挿入できるが、このデバイスは代替として、かなり小さい辺ポート切開を通して端部を先にして眼の中に挿入できる。デバイス全体は、前眼房内に挿入されて虹彩上に配置される。瞳孔縁は虹彩又は1つの辺ポート切開を通じて導入されたヒルシュマン・フックによって引っ掛けられる一方、別の辺ポートを通して導入されたピンセットがフランジ83を保持しこれを瞳孔縁67の下に挟み込んでいる。同様にしてフランジ81及び85が瞳孔縁の下に挟み込まれる。
【0033】
図13は、本発明のデバイスの一形態について、後方に緩やかに傾けられた
図11のデバイスの交互式フランジを示した拡大上面斜視概要図である。デバイス93によってフランジを瞳孔縁の下へ容易に挟み込むことが可能となる。点線で示したフランジ81、83及び85は、フランジの以前の真っ直ぐな位置を意味している。フランジ94、95及び96は、後方に傾けられたフランジのそれぞれを意味している。フランジは、ノッチの中心に至るまでの全領域を傾けられるか、周辺エッジのところだけで傾けられている。瞳孔縁の前面側にあるフランジ82及び84の位置は変更されない。
図11に示した本発明デバイスについての傾けられたフランジを示しているが、このようなフランジはデバイスの形態のすべてについて存在できることを理解されたい。
【0034】
図14は、本発明のデバイスの一形態について、継ぎ目のない六角形の連続リング上の複数の位置決め用穴を示す拡大上面概要図である。デバイス97のフランジおよびノッチのそれぞれの上の穴98及び99を示している。これらの穴の深さは、厚さの一部であるか、又は厚さの全体に及んでいる。これらの穴により、ダイヤラーと呼ばれる尖った器具を使って眼の内部でデバイスを簡単に操作することが可能になる。本発明の
図14のデバイス上に位置決め用穴又は目穴を示しているが、このような位置決め用穴又は目穴はすべての形態のデバイスについて存在させることができることを理解されたい。
【0035】
図15は、本発明のデバイスの一形態について、継ぎ目のない正方形の連続リングのストランドの2つの外方に指状に突き出たループ間にあるストランドの内方ループによって形成されたノッチによる瞳孔縁67の係合を示した拡大上面概要図である。リング100は、4つの辺要素101、102、103及び104を有する。隅部分105、106、107及び108は辺要素を接合する。隅部分108は、辺101を辺104に直交接合させる。隅部分108においてストランドは、ノッチを形成するように同じ面内で3つの異なったループをなしている。ループ115及び116は、外方に向かう指状の突出部である。ノッチ117は、これら2つの外方へのループ状の突出部の間にある内方ループによって形成されている。隅部分105、106及び107は隅部分108と同一であり、ノッチ118、119及び120のそれぞれを形成している。瞳孔縁67は、ノッチ117、118、119及び120によって係合された際、要素110、111、114及び115の後側を通過する際、且つ要素112、113、116及び109の前面側において正方形構成を有する。囲繞された空間121によって、瞳孔面に至るより深い構造に対する幅広い視野が可能となる。
【0036】
図16は、本発明のデバイスの一形態について、継ぎ目のない正方形の連続リングの隅にある2つの隣接するノッチによる瞳孔縁67の係合を示した拡大上面概要図である。リング122は、4つの辺要素123、124、125及び126を有する。隅部分127、128、129及び130は、辺要素を接合させている。隅部分127は、辺123を辺124に直交接合させる。隅部分127においてストランドは、2つの隣接するノッチ対又はダブル・ノッチを形成するように同じ面内で3つの異なったループをなしている。ノッチ対131及び132は内方を向いた2つのループによって形成されている。指状の構造139は、これら2つのノッチの間に外方を向いたループによって形成されている。隅部分128、129及び130は、隅部分127と同一であり、またノッチ対133、134及び135、136及び137、138のそれぞれを形成している。瞳孔縁67は、ノッチ131、132、133、134、135、136、137及び138によって係合された正方形構成を有する。瞳孔縁67は、辺要素123、124、125及び126の後側で、且つ要素139、140、141及び142の前面側を通過する。囲繞された空間143によって、瞳孔面に至るより深い構造に対する幅広い視野が可能となる。瞳孔縁67は、辺要素123、124、125及び126の前側と要素139、140、141及び142の後側とを交互に通過させることが可能である(本図では図示せず)。
【0037】
当業者であれば記載し図示した実施例を本発明の概念を変更することなく変更することが可能である。したがって、本発明は、この記載、図示及び実例に限定されるものではなく、本発明の趣旨域内にあるすべての修正を含むものである。