(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
台船上に旋回可能に設置されたクレーン旋回部と、該クレーン旋回部に上下に回動可能に支持されたジブと、該ジブの先端より繰り出されるワイヤーとを備えたクレーン船にあって、
前記クレーン旋回部の任意の位置に着脱可能に固定されたGPSアンテナと、該GPSアンテナの方位を測定するとともに前記GPSアンテナが受信した電波に基づき該GPSアンテナの位置を測定する位置方位測定手段と、前記ジブの仰角を測定するジブ仰角測定手段と、前記位置方位測定手段及びジブ仰角計測手段より得られる計測結果に基づいて前記ジブ先端部の位置を算出する演算手段とを備えてなるクレーン船の吊り位置検出装置を使用するにあたり、前記演算手段に演算に必要な情報を自動的に設定する方法であって、
前記台船上に一定幅を有する矩形状の基準域部を設定し、
事前に、前記ジブを前記基準域部の幅方向と直交する方向に向けた第1の基準状態、前記ジブ先端部が基準域部の側縁上に位置する第2の基準状態及び前記ジブ先端部が基準域部の側縁上であって、前記第2の基準状態における前記ジブ先端部の位置と幅方向と直交する方向で間隔を隔てて位置する第3の基準状態にそれぞれなるように前記クレーン旋回部及び前記ジブを動作させるとともに、
前記第1乃至第3の基準状態毎に前記GPSアンテナの方位と前記ジブの仰角とを計測し、該計測された第1乃至第3の基準状態における前記該GPSアンテナの方位、前記ジブの仰角及び前記基準域部の幅とに基づいて前記ジブの長さ及びジブ基端と前記旋回中心との間の水平方向距離を算出し、該算出結果を前記演算手段に自動的に設定することを特徴としてなるクレーン船用吊り位置検出装置の自動設定方法。
停船した状態で前記第1乃至第3の基準状態となるように前記クレーン旋回部及び前記ジブを動作させるとともに、第1の基準状態から第3の基準状態に至るまでの前記GPSアンテナの位置及び前記該GPSアンテナの方位を随時計測し、
該各計測されたGPSアンテナの位置を通る円に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心位置を算出し、
該算出された旋回中心位置と、前記計測された何れか一組のGPSアンテナの位置及び前記該GPSアンテナの方位とに基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出し、該算出結果を前記演算手段に自動的に設定する請求項1に記載のクレーン船用吊り位置検出装置の自動設定方法。
前記算出された旋回中心位置と、前記計測された何れか一組のGPSアンテナの位置及び方位と、前記ジブに対する前記GPSアンテナの取付け角度とに基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出する請求項2又は3に記載のクレーン船用吊り位置検出装置の自動設定方法。
前記第1乃至第3の各基準状態における前記計測されたGPSアンテナの位置及び方位に基づき、前記GPSアンテナと旋回中心とを通る直線を算出し、該算出された複数の直線に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心位置を算出し、
該算出された旋回中心位置と、
前記第1乃至第3の基準状態の何れか1の状態における前記GPSアンテナの位置と、
前記該GPSアンテナの方位又は前記ジブに対する前記GPSアンテナの取付け角度と、
に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出する請求項5に記載のクレーン船用吊り位置検出装置の自動設定方法。
【背景技術】
【0002】
水中構造物の基礎となる捨石マウンドの造成に際しては、台船上に旋回可能に設置されたクレーン旋回部と、クレーン旋回部に上下に回動可能に支持されたジブと、ジブ先端より繰り出されるワイヤーとを備えたガット船等のクレーン船を使用し、クレーンによりワイヤーの先端に吊り持ちさせたグラブバケットを操作し、捨石を投入する作業が行われている。
【0003】
従来、この捨石投入作業においては、捨石を投入する位置に旗等の目印を設置し、その目印に基づいて操作者がクレーンを操作する方法が一般的であったが、この方法においては、潮流等により旗等の目印が移動してしまう問題や目視に頼るクレーン操作には熟練を要する等の問題があった。
【0004】
そこで、近年においては、ジブの先端部に位置計測手段を構成するGPSアンテナを固定し、そのジブ先端部の正確な位置を計測することにより、そのジブ先端部より垂下された位置にあるグラブバケットの位置を検出する吊り位置検出装置が開発され、その吊り位置検出装置による検出データに基づいて効率的且つ容易に捨石投入作業等を行えるようにしている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
このクレーン船の吊り位置検出装置では、グラブバケット等の吊り体の位置を正確に検出するためにジブ先端部の正確な位置を計測する必要があり、その為、従来では、海上を移動する台船の位置に依存することなくジブ先端部の位置を特定できるように、位置計測手段を構成するGPSアンテナをジブ先端部に直接固定していた。
【0006】
一方、クレーン装置においては、ジブ先端部に固定されたGPSアンテナの位置情報のみでクレーンの姿勢まで把握することは困難であるので、ジブ先端部の位置情報に加え、ジブの長さ等のクレーン装置の諸元情報を使用して演算を行い、その演算結果に基づいてクレーンの姿勢制御を行う場合がある。
【0007】
従来、クレーン長さ等の諸元情報の入手は、クレーン船の設計図等から入手したり、設計図等から入手できない場合は実際に計測を行ったりするのが一般的であるが、ジブ先端部のGPSアンテナに加えて各種センサ等を用いる方法、例えば、クレーン旋回部に固定された第1のGPSアンテナと、ジブ先端部に固定された第2のGPSアンテナとを使用し、両GPSアンテナの位置情報に基づきクレーンのジブ(ブーム)の長さを算出する方法も開発されている(例えば、特許文献2を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、GPSアンテナのジブ先端部への固定作業が高所での危険な作業を伴うとともに、作業が煩雑で多大な時間を要し、効率が悪いという問題があり、その一方で、ジブ先端部の位置検出及びジブ長さ等の諸元情報の算出のいずれの場合にも、ジブ先端部に固定されたGPSアンテナを使用するものであった。
【0010】
また、クレーン船においては、捨石投入作業に使用できるガット船が稼働スケジュールによって日毎に異なる等の特殊な事情がある場合、吊り位置検出装置を使用する毎に設置及び撤去する必要が生じ、それに伴い、演算等に必要なジブ長さ等の諸元情報も使用の度にコンピュータ等の演算手段に設定し直す必要が生じ、その設定作業が煩雑で効率が悪いという問題があった。
【0011】
更に、長大なジブの実測は、容易でなく非効率的且つ危険な作業であり、また、このような事前計測には、その実測に誤りがあるとその後の演算に誤差が生じることから正確さが要求され、熟練した技能を要するという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、GPSアンテナをジブ先端部に固定せずに、ジブ先端部の位置を検出できるクレーン船用吊り位置検出装置の使用にあたって、吊り体位置を演算するのに必要なジブ長さ等の情報を容易且つ正確に演算手段に設定することができるクレーン船用吊り位置検出装置の自動設定方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、台船上に旋回可能に設置されたクレーン旋回部と、該クレーン旋回部に上下に回動可能に支持されたジブと、該ジブの先端より繰り出されるワイヤーとを備えたクレーン船にあって、前記クレーン旋回部の任意の位置に着脱可能に固定されたGPSアンテナと、
該GPSアンテナの方位を測定するとともに前記GPSアンテナが受信した電波に基づき該GPSアンテナの位置を測定する位置方位測定手段と、前記ジブの仰角を測定するジブ仰角測定手段と、前記位置方位測定手段及びジブ仰角計測手段より得られる計測結果に基づいて前記ジブ先端部の位置を算出する演算手段とを備えてなるクレーン船の吊り位置検出装置を使用するにあたり、前記演算手段に演算に必要な情報を自動的に設定する方法であって、前記台船上に一定幅を有する矩形状の基準域部を設定し、事前に、前記ジブを前記基準域部の幅方向と直交する方向に向けた第1の基準状態、前記ジブ先端部が基準域部の側縁上に位置する第2の基準状態及び前記ジブ先端部が基準域部の側縁上であって、前記第2の基準状態における前記ジブ先端部の位置と幅方向と直交する方向で間隔を隔てて位置する第3の基準状態にそれぞれなるように前記クレーン旋回部及び前記ジブを動作させるとともに、前記第1乃至第3の基準状態毎に前記GPSアンテナの方位と前記ジブの仰角とを計測し、該計測された第1乃至第3の基準状態における前記該GPSアンテナの方位、前記ジブの仰角及び前記基準域部の幅とに基づいて前記ジブの長さ及びジブ基端と前記旋回中心との間の水平方向距離を算出し、該算出結果を前記演算手段に自動的に設定するクレーン船用吊り位置検出装置の自動設定方法にある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、停船した状態で前記第1乃至第3の基準状態となるように前記クレーン旋回部及び前記ジブを動作させるとともに、第1の基準状態から第3の基準状態に至るまでの前記GPSアンテナの位置及び方位を随時計測し、該各計測されたGPSアンテナの位置を通る円に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心位置を算出し、該算出された旋回中心位置と、前記計測された何れか一組のGPSアンテナの位置及び方位とに基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出し、該算出結果を前記演算手段に自動的に設定することにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項2の構成に加え、前記第1乃至第3の基準状態における前記GPSアンテナの位置を通る円に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心位置を算出し、該算出された旋回中心位置と、前記第1乃至第3の基準状態において計測された何れか一組のGPSアンテナの位置及び方位とに基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出することにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項2又は3の構成に加え、前記算出された旋回中心位置と、前記計測された何れか一組のGPSアンテナの位置及び方位と、前記ジブに対する前記GPSアンテナの取付け角度とに基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出することにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記GPSアンテナをその方位が前記クレーン旋回部の旋回半径方向と一致するように固定し、事前に停船した状態で前記第1乃至第3の基準状態となるように前記クレーン旋回部及び前記ジブを動作させるとともに、第1の基準状態から第3の基準状態に至るまでの前記GPSアンテナの位置及び方位を随時計測し、前記計測されたGPSアンテナの位置及び方位に基づいて該GPSアンテナと旋回中心とを通る複数の直線を算出するとともに、該算出された複数の直線に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心位置を算出し、該算出された旋回中心位置と、何れか1の前記直線上に位置する前記計測されたGPSアンテナの位置と、前記GPSアンテナの方位又は前記ジブに対する前記GPSアンテナの取付け角度と、に基づいて前記旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出し、該算出結果を前記演算手段に自動的に設定することにある。
【0018】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記第1乃至第3の各基準状態における前記計測されたGPSアンテナの位置及び方位に基づき、前記GPSアンテナと旋回中心とを通る直線を算出し、該算出された複数の直線に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心位置を算出し、該算出された旋回中心位置と、前記第1乃至第3の基準状態の何れか1の状態における前記GPSアンテナの位置と、前記GPSアンテナの方位又は前記ジブに対する前記GPSアンテナの取付け角度と、に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出することにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るクレーン船用吊り位置検出装置の自動設定方法は、上述したように、台船上に旋回可能に設置されたクレーン旋回部と、該クレーン旋回部に上下に回動可能に支持されたジブと、該ジブの先端より繰り出されるワイヤーとを備えたクレーン船にあって、前記クレーン旋回部の任意の位置に着脱可能に固定されたGPSアンテナと、
該GPSアンテナの方位を測定するとともに前記GPSアンテナが受信した電波に基づき該GPSアンテナの位置を測定する位置方位測定手段と、前記ジブの仰角を測定するジブ仰角測定手段と、前記位置方位測定手段及びジブ仰角計測手段より得られる計測結果に基づいて前記ジブ先端部の位置を算出する演算手段とを備えてなるクレーン船の吊り位置検出装置を使用するにあたり、前記演算手段に演算に必要な情報を自動的に設定する方法であって、前記台船上に一定幅を有する矩形状の基準域部を設定し、事前に、前記ジブを前記基準域部の幅方向と直交する方向に向けた第1の基準状態、前記ジブ先端部が基準域部の側縁上に位置する第2の基準状態及び前記ジブ先端部が基準域部の側縁上であって、前記第2の基準状態における前記ジブ先端部の位置と幅方向と直交する方向で間隔を隔てて位置する第3の基準状態にそれぞれなるように前記クレーン旋回部及び前記ジブを動作させるとともに、前記第1乃至第3の基準状態毎に前記GPSアンテナの方位と前記ジブの仰角とを計測し、該計測された第1乃至第3の基準状態における前記該GPSアンテナの方位、前記ジブの仰角及び前記基準域部の幅とに基づいて前記ジブの長さ及びジブ基端と前記旋回中心との間の水平方向距離を算出し、該算出結果を前記演算手段に自動的に設定することにより、ジブ先端部にGPSアンテナが無くともジブ長さ等を算出できるとともに、煩雑な入力操作を省略し、容易且つ正確にジブ先端部の位置を算出するために必要な諸元データを設定することができる。
【0020】
また、本発明において、停船した状態で前記第1乃至第3の基準状態となるように前記クレーン旋回部及び前記ジブを動作させるとともに、第1の基準状態から第3の基準状態に至るまでの前記GPSアンテナの位置及び方位を随時計測し、該各計測されたGPSアンテナの位置を通る円に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心位置を算出し、該算出された旋回中心位置と、前記計測された何れか一組のGPSアンテナの位置及び方位とに基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出し、該算出結果を前記演算手段に自動的に設定することにより、取り付けたGPSアンテナと旋回中心との相対位置関係を実際の計測に依らずに容易且つ効率的に設定することができる。
【0021】
更に、本発明において、前記第1乃至第3の基準状態における前記GPSアンテナの位置を通る円に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心位置を算出し、該算出された旋回中心位置と、前記第1乃至第3の基準状態において計測された何れか一組のGPSアンテナの位置及び方位とに基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出することにより、ジブの長さ等のクレーン船に由来する諸元データの設定と同時に、取り付けたGPSアンテナと旋回中心との相対位置関係を実際の計測に依らずに容易且つ効率的に設定することができる。
【0022】
更に、本発明において、前記算出された旋回中心位置と、前記計測された何れか一組のGPSアンテナの位置及び方位と、前記ジブに対する前記GPSアンテナの取付け角度とに基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出することにより、クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置をジブの方向に合わせて設定することができる。
【0023】
また、本発明において、前記GPSアンテナをその方位が前記クレーン旋回部の旋回半径方向と一致するように固定し、事前に停船した状態で前記第1乃至第3の基準状態となるように前記クレーン旋回部及び前記ジブを動作させるとともに、第1の基準状態から第3の基準状態に至るまでの前記GPSアンテナの位置及び方位を随時計測し、前記計測されたGPSアンテナの位置及び方位に基づいて該GPSアンテナと旋回中心とを通る複数の直線を算出するとともに、該算出された複数の直線に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心位置を算出し、該算出された旋回中心位置と、何れか1の前記直線上に位置する前記計測されたGPSアンテナの位置と、前記GPSアンテナの方位又は前記ジブに対する前記GPSアンテナの取付け角度と、に基づいて前記旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出し、該算出結果を前記演算手段に自動的に設定することにより、取り付けたGPSアンテナと旋回中心との相対位置関係を実際の計測に依らずに容易且つ効率的に設定することができる。
【0024】
更に本発明において、前記第1乃至第3の各基準状態における前記計測されたGPSアンテナの位置及び方位に基づき、前記GPSアンテナと旋回中心とを通る直線を算出し、該算出された複数の直線に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心位置を算出し、該算出された旋回中心位置と、前記第1乃至第3の基準状態の何れか1の状態における前記GPSアンテナの位置と、前記GPSアンテナの方位又は前記ジブに対する前記GPSアンテナの取付け角度と、に基づいて前記クレーン旋回部の旋回中心に対する前記GPSアンテナの相対位置を算出することにより、ジブの長さ等のクレーン船に由来する諸元データの設定と同時に、取り付けたGPSアンテナと旋回中心との相対位置関係を実際の計測に依らずに容易且つ効率的に設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明に係るクレーン船用吊り位置検出装置の自動設定方法の実施態様を
図1〜
図7に示した実施例に基づいて説明する。
【0027】
尚、図中に示す座標系は、直角座標で位置を表示する場合のために策定された平面直角座標系であって、所定の経緯度が示す点を座標系原点とし、この座標系原点における子午線に一致する軸をx軸、当該x軸と直交する軸をy軸とし、それぞれ真北に向かう方向、真東に向かう方向を正とする。
【0028】
図1(a)〜
図1(c)は、本発明に係るクレーン船用吊り位置検出装置の自動設定方法の第1の実施例における各工程の状態、即ち、第1乃至第3の各状態をそれぞれ示す平面図であって、本発明方法は、第1乃至第3の状態を経て、各状態において計測されたGPSアンテナ11の位置Q1(x11,y11,z11)〜Q3(x13,y13,z13)及び方位(x軸を基準とし、時計回り方向を正とする方位角α1〜α3の方位)、ジブ4の仰角β1〜β3に基づいて吊り位置検出装置10を使用するにあたり必要な諸元データ、即ち、ジブ4の長さL、ジブ4基端と旋回中心Cとの間の水平方向距離A、GPSアンテナ11のクレーン旋回部3の旋回中心Cに対する相対位置を示す距離d1,d2の情報を演算手段15に自動的に設定する。
【0029】
尚、図中符号1は、捨石マウンド造成時の捨石投入に使用されるガット船等の船倉9を備えたクレーン船である。
【0030】
このクレーン船1は、
図2に示すように、台船2上の一方の端部中央に旋回可能に支持されたクレーン旋回部3と、クレーン旋回部3に上下に回動可能に支持されたジブ4と、ジブ4の先端より繰り出されるワイヤー5とを備え、ワイヤー5の先端に吊り体としてグラブバケット6が吊り持ちされる。
【0031】
また、このようなクレーン船1にあっては、稼働スケジュールによって日毎に使用できるクレーン船1が異なるという特殊な事情を鑑み、ジブ先端部4aの位置に基づきグラブバケット6等の吊り体の位置を検出する吊り位置検出装置10が着脱可能に設置され、本発明方法により、クレーン船1に対して吊り位置検出装置10を載せ替える毎に、必要なジブ4の長さL等の演算に必要な情報をコンピュータ等からなる演算手段15に容易且つ効率的に設定する。
【0032】
この吊り位置検出装置10は、
図3に示すように、クレーン旋回部3上の任意の位置に着脱可能に固定されるGPSアンテナ11,12と、GPSアンテナ11の位置P1(x1,y1,z1)及び方位(x軸を基準とし、時計回り方向を正とする方位角α)を計測する位置方位計測手段13と、ジブ4の仰角βを計測するジブ仰角計測手段14と、ジブ先端部4aの位置P(x,y,z)を算出する演算手段15とを備え、クレーン船1に対し着脱可能に設置されている。
【0033】
GPSアンテナ11,12は、クレーン旋回部3の任意の位置、例えば、梯子やリフト装置等の昇降手段によりアクセスし易い操作室8の上面部等に互いに所望の間隔を置いて着脱可能に固定する。
【0034】
この両GPSアンテナ11,12の固定に際しては、固定後にGPSアンテナ11のジブ4に対する取付け角度γ、即ち、ジブ4の長手方向を基準とし、時計回り方向を正とする両GPSアンテナ11,12間方向とジブ4の長手方向とが成す角度γを実際に計測し、その計測した取付け角度γを手動で演算手段15に入力設定する。
【0035】
尚、両GPSアンテナ11,12は、両GPSアンテナ11,12間方向がジブ4と平行、即ち、取付け角度γ=0となるように固定することが好ましく、その場合、使用する計算式を簡素化することができる。
【0036】
位置方位計測手段13は、両GPSアンテナ11,12が有線で接続されたGPS受信処理機本体18を備え、このGPS受信処理機本体18においてGPSアンテナ11,12で受信した電波に基づく各GPSアンテナ11の位置座標を計測するとともに、両GPSアンテナ11,12の受信した電波に基づいて両GPSアンテナ11,12間方向、即ち、一方のGPSアンテナ11を基点とした方位(方位角α)を計測し、そのGPSアンテナ11の位置P1(x1,y1,z1)及び方位(方位角α)の計測データをGPS受信処理機本体18より有線又は無線により演算手段15に出力するようになっている。
【0037】
尚、位置方位計測手段13の態様は、上述の実施例に限定されず、方位計測にジャイロコンパス等の真方位計を使用するものであってもよく、両GPSアンテナ11,12を用いた方位計測とジャイロコンパス等の真方位計とを併用するものであってもよい。
【0038】
ジブ仰角計測手段14は、ジブ4の基端部に着脱可能に固定される傾斜計19を備え、その計測値を有線又は無線で演算手段15に出力する。
【0039】
演算手段15には、例えば、モニターM等の表示手段を備えたノートパソコンやタブレットPC等の持ち運び可能なコンピュータ端末を使用し、位置方位計測手段13及びジブ仰角計測手段14から送られた計測情報及び予め演算手段15に設定されるGPSアンテナ11,12のクレーン旋回部3の旋回中心Cに対する相対位置を示す距離d1,d2、ジブ4に対するGPSアンテナ11の取付け角度γ、ジブ4の長さL及びジブ4の基端と旋回中心Cとの間の水平方向距離Aとに基づいて、例えば、次式によりジブ先端部4aの位置P(x,y,z)を算出し、その結果をモニターMに表示するとともに記憶部に記憶するようになっている。
【0041】
但し、GPSアンテナ11と旋回中心Cとの相対位置は、
図4に示すように、それぞれGPSアンテナ11と旋回中心Cとを結ぶ直線を斜辺とする直角三角形の互いに直交する他の各辺の距離d1,d2で表すものとする。尚、当該直角三角形の直交する各辺は、ジブ4に対しそれぞれ平行又は直交するように設定することが望ましいが、GPSアンテナ11と旋回中心Cとを結ぶ直線を斜辺とする直角三角形であれば、その向きは限定されず、例えば、何れか一辺をx軸方向と平行に設定したものであってもよい。
【0042】
そして、演算手段15は、算出されたジブ先端部4aの位置P(x,y,z)とワイヤー5の繰り出し量等に基づいてグラブバケット6等の吊り体の位置を検出するようになっている。
【0043】
この位置検出装置10を使用するにあたり、ジブ4の長さL、ジブ4の基端と旋回中心Cとの間の水平方向距離A、GPSアンテナ11のクレーン旋回部3の旋回中心Cに対する相対位置を示す距離d1,d2の情報を事前に演算手段15に自動的に設定するには、吊り位置検出装置10をクレーン船1に設置した後、台船2を停船させ、クレーン旋回部3の旋回中心C位置が固定された状態とする。
【0044】
そして、台船2上に一定幅Wを有する矩形状の基準域部を設定する。本実施例では、台船2に矩形状の船倉9を備えたクレーン船1を使用し、船倉9を基準域部に設定し、船倉9の幅Wを計測し、その値を演算手段15に入力する。
【0045】
次に、
図1(a)に示すように、クレーン旋回部3及びジブ4を動作させ、ジブ4を基準域部の幅方向と直交する方向であって、船倉9の幅Wを二分する方向に向けた第1の基準状態とする。その際、例えば、グラブバケット6を船倉9の端辺部中央に合わせて移動させることにより、容易に第1の基準状態となるように位置合わせすることができる。
【0046】
そして、その状態において、位置方位計測手段13及びジブ仰角計測手段14は、GPSアンテナ11の位置Q1(x11,y11,z11)及び方位(方位角α1)と、ジブ4の仰角β1とをそれぞれ計測し、演算手段15に出力し、その計測結果を演算手段15の記憶部に記憶する。
【0047】
次いで、
図1(b)に示すように、第1の基準状態からクレーン旋回部3を旋回させるとともにジブ4を下向きに回動させ、ジブ先端部4aが基準域部の側縁上に位置する第2の基準状態とする。その際、例えば、グラブバケット6を船倉9の隅部に合わせて移動させることにより、容易に第2の基準状態となるように位置合わせすることができる。
【0048】
そして、その状態において、位置方位計測手段13及びジブ仰角計測手段14は、GPSアンテナ11の位置Q2(x12,y12,z12)及び方位(方位角α2)と、ジブ4の仰角β2とをそれぞれ計測し、演算手段15に出力し、その計測結果を演算手段15の記憶部に記憶する。
【0049】
次いで、
図1(c)に示すように、第2の状態からクレーン旋回部3を旋回させるとともにジブ4を起こし、ジブ先端部4aが基準域部の側縁上であって、第2の基準状態におけるジブ先端部4aの位置と幅方向と直交する方向で間隔を置いて位置する第3の基準状態とする。その際、グラブバケット6を船倉9の他方の側縁部の任意の位置、例えば、側縁部中央付近に合わせて移動させることにより、容易に第3の基準状態となるように位置合わせすることができる。
【0050】
また、本実施例では、第3の基準状態を第2の基準状態とは反対側の側縁上に位置するようにしたが、第3の基準状態は、ジブ先端部4aが第2の基準状態と同じ側の側縁上であって、第2の基準状態におけるジブ先端部4aの位置と幅方向と直交する方向で間隔を置いて位置するようにしてもよい。
【0051】
そして、その状態において、位置方位計測手段13及びジブ仰角計測手段14は、GPSアンテナ11の位置Q3(x13,y13,z13)及び方位(方位角α3)と、ジブ4の仰角β3とをそれぞれ計測し、演算手段15に出力し、その計測結果を演算手段15の記憶部に記憶する。
【0052】
次に、このように第1乃至第3の基準状態を経て計測された計測結果に基づいて、ジブ4の長さL及びジブ4基端の旋回中心Cに対する水平方向距離Aを算出し、演算手段15に設定する方法について説明する。
【0053】
第1乃至第3の基準状態におけるGPSアンテナ11の方位角α1〜α3と基準域部の幅Wは、
図5に示す関係、即ち、それぞれ旋回半径方向距離R2,R3を斜辺とする直角三角形で表せ、演算手段15は、例えば、次式により第2の基準状態及び第3の基準状態におけるジブ4の旋回半径方向距離R2,R3を算出し、一時的に演算手段15の記憶部に記憶する。
【0055】
そして、第2の基準状態及び第3の基準状態におけるジブ4の旋回半径方向距離R2,R3が求められれば、ジブ4の旋回半径方向距離R2,R3とジブ4の長さLとは、
図6に示す関係にあるので、演算手段15は、第2の基準状態及び第3の基準状態におけるジブ4の旋回半径方向距離R2,R3及び仰角β2、β3を用いてジブ4の長さLを次式により算出し、当該ジブ4の長さLは一定であるので、その算出結果を演算手段15に自動的に設定する。
【0057】
そして、ジブ4の長さLが求められれば、演算手段15は、ジブ4基端の旋回中心Cに対する水平方向距離Aを次式により算出し、当該水平方向距離Aは一定であるので、その算出結果を演算手段15に自動的に設定する。
【0059】
一方、台船2が停船された状態にあり、クレーン旋回部3の旋回中心Cが固定されているので、その旋回中心Cの位置PCは、
図7に示すように、第1乃至第3の基準状態におけるGPSアンテナ11の位置Q1〜Q3を通る半径Dの同一円軌道上の中心であることから、その水平方向位置PC(a,b)は、例えば、円の方程式を用いて次式より算出され、その結果が演算手段15の記憶部に記憶される。
【0061】
そして、旋回中心Cの水平方向位置PC(a,b)が求められれば、第1乃至第3の基準状態におけるGPSアンテナ11の水平方向位置Q1(x11,y11)〜Q3(x13,y13)の何れか1(本実施例ではQ1)と固定された旋回中心Cの水平方向位置PC(a,b)との関係より、旋回中心Cの水平方向位置PC(a,b)と、第1乃至第3の基準状態における計測された何れか1組のGPSアンテナ11の水平方向位置Q1(x11,y11)及び方位(方位角α1)とに基づき、例えば、次式によってd1、d2が算出され、d1,d2は一定であるので、その算出結果を演算手段15に自動的に設定する。尚、算出に当たり、ジブ4に対する取付け角度γを用いることにより、旋回中心Cに対するGPSアンテナ11の相対位置を示す距離d1,d2に係る各辺をそれぞれジブ4と平行又は直交する方向に合わせて設定することができる。
【0063】
以上により、吊り位置検出装置10を使用するにあたり、必要な諸元情報、即ち、ジブの長さL、ジブ4の基端と旋回中心Cとの間の水平距離A、GPSアンテナ11と旋回中心Cとの相対位置を示す距離d1,d2が算出され、演算手段15に自動的に設定される。
【0064】
尚、GPSアンテナ11と旋回中心Cとの相対位置を示す距離d1,d2の算出は、
図1(a)〜
図1(c)に示すように、第1乃至第3の基準状態となるように順次クレーン旋回部3及びジブ4を動作させるとともに、第1の基準状態から第3の基準状態に至るまでのGPSアンテナ11の位置を随時計測し、その計測された各GPSアンテナ11の位置情報の内の任意の3点の情報を選択し、その任意の3点を通る円に基づいて上述の実施例と同様の手法によりクレーン旋回部3の旋回中心位置Cを算出するようにしてもよい。
【0065】
また、その場合には、旋回中心位置Cと、計測された何れか1組のGPSアンテナ11の位置及び方位とに基づいて、上述の実施例と同様に、クレーン旋回部3の旋回中心Cに対するGPSアンテナ11の相対位置を示す距離d1,d2を算出する。その際、算出に当たりジブ4に対するGPSアンテナ11の取付け角度γを用いることにより、旋回中心Cに対するGPSアンテナ11の相対位置を示す距離d1,d2に係る各辺をジブ4とそれぞれ平行又は直交する方向に設定することができる。
【0066】
また、GPSアンテナ11と旋回中心Cとの相対位置を示す距離d1,d2の算出方法は、上述の実施例に限定されず、GPSアンテナ11の取付け方によって以下に示す第2の実施態様のように算出してもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明し、適宜省略する。
【0067】
図8(a)〜
図8(c)は、本発明に係るクレーン船用吊り位置検出装置の自動設定方法の第2の実施例における各工程の状態、即ち、第1乃至第3の各状態をそれぞれ示す平面図である。
【0068】
この実施例において、GPSアンテナ11,12は、GPSアンテナ11を基点とした方位(両GPSアンテナ11,12方向)がクレーン旋回部3の旋回半径方向と一致するように固定、即ち、一方のGPSアンテナ11が他方のGPSアンテナ12と旋回中心Cとを通る直線上に位置するように固定する。その際、ジブ4に対するGPSアンテナ11の取付け角度γ、即ち、ジブ4と両GPSアンテナ11,12間方向とが成す角度を実際に計測し、それを手動で演算手段15に設定する。
【0069】
尚、クレーン船1及び吊り位置検出装置10の構成は、GPSアンテナ11,12の取り付けを除き上述の実施例の構成と同様であるため説明を省略する。
【0070】
この位置検出装置10を使用するにあたり、ジブ4の長さL、ジブ4の基端と旋回中心Cとの間の水平方向距離A、GPSアンテナ11のクレーン旋回部3の旋回中心Cに対する相対位置を示す距離d1,d2の情報を事前に演算手段15に自動的に設定するには、吊り位置検出装置10をクレーン船1に設置した後、台船2を停船させ、クレーン旋回部3の旋回中心C位置が固定された状態とする。
【0071】
また、取付け角度γ、即ち、旋回中心Cを要としてジブ4の長手方向と両GPSアンテナ11,12間方向とが成す角度γを実際に計測し、それを演算手段15に設定する。
【0072】
そして、台船2上に一定幅Wを有する矩形状の基準域部を設定する。本実施例では、台船2に矩形状の船倉9を備えたクレーン船1を使用し、船倉9を基準域部に設定し、船倉9の幅Wを計測し、その値を演算手段15に入力する。
【0073】
次に、
図8(a)に示すように、クレーン旋回部3及びジブ4を動作させ、ジブ4を基準域部の幅方向と直交する方向であって、船倉9の幅Wを二分する方向に向けた第1の基準状態とする。その際、例えば、グラブバケット6を船倉9の端辺部中央に合わせて移動させることにより、容易に第1の基準状態となるように位置合わせすることができる。
【0074】
そして、その状態において、位置方位計測手段13及びジブ仰角計測手段14は、GPSアンテナ11の位置Q1(x11,y11,z11)及び方位(方位角α1)と、ジブ4の仰角β1とをそれぞれ計測し、演算手段15に出力し、その計測結果を演算手段15の記憶部に記憶する。
【0075】
次いで、
図8(b)に示すように、第1の状態からクレーン旋回部3を旋回させるとともにジブ4を下向きに回動させ、ジブ先端部4aが基準域部の側縁上に位置する第2の基準状態とする。その際、例えば、グラブバケット6を船倉9の隅部に合わせて移動させることにより、容易に第2の基準状態となるように位置合わせすることができる。
【0076】
そして、その状態において、位置方位計測手段13及びジブ仰角計測手段14は、GPSアンテナ11の位置Q2(x12,y12,z12)及びGPSアンテナ11を基点とした方位(方位角α2)と、ジブ4の仰角β2とをそれぞれ計測し、演算手段15に出力し、その計測結果を演算手段15の記憶部に記憶する。
【0077】
次いで、
図8(c)に示すように、第2の状態からクレーン旋回部3を旋回させるとともにジブ4を起こし、ジブ先端部4aが基準域部の側縁上であって、第2の基準状態におけるジブ先端部4aの位置と幅方向と直交する方向で間隔を置いて位置する第3の基準状態とする。その際、グラブバケット6を船倉9の他方の側縁部の任意の位置、例えば、側縁部中央付近に合わせて移動させることにより、容易に第3の基準状態となるように位置合わせすることができる。
【0078】
また、本実施例では、第3の基準状態を第2の基準状態とは反対側の側縁上に位置するようにしたが、第3の基準状態は、ジブ先端部4aが第2の基準状態と同じ側の側縁上であって、第2の基準状態におけるジブ先端部4aの位置と幅方向と直交する方向で間隔を置いて位置するようにしてもよい。
【0079】
そして、その状態において、位置方位計測手段13及びジブ仰角計測手段14は、GPSアンテナ11の位置Q3(x13,y13,z13)及びGPSアンテナ11を基点とした方位(方位角α3)と、ジブ4の仰角β3とをそれぞれ計測し、演算手段15に出力し、その計測結果を演算手段15の記憶部に記憶する。
【0080】
そして、このように第1乃至第3の基準状態を経て計測された計測結果に基づいて、ジブ4の長さL及びジブ基端の旋回中心Cに対する水平方向距離Aの算出及び設定を上述の実施例と同様に
図5、
図6及び数式2〜数式4に基づいて行う。
【0081】
一方、台船2が停船された状態にあり、GPSアンテナ11がその向きを旋回半径方向と一致させて固定されているので、各基準状態におけるGPSアンテナ11と旋回中心Cとを結ぶ直線は、それぞれ方位角α1〜α3を用いて以下の式により表される。
【0083】
そして、旋回中心Cは、各直線の交点であるので、固定された旋回中心Cの水平方向位置PC(a,b)は、例えば、これらの直線のうち第1の基準状態及び第2の基準状態における二つの直線を用いることで以下の式より算出され、その結果が演算手段15の記憶部に記憶される。
【0085】
そして、旋回中心Cの位置PC(a,b)が求められれば、第1乃至第3の基準状態におけるGPSアンテナ11の水平方向位置Q1(x11,y11)〜Q3(x13,y13)の何れか1(本実施例では、Q1)と固定された旋回中心Cの水平方向位置PC(a,b)との関係より、旋回中心位置PC(a,b)と、第1乃至第3の基準状態におけるGPSアンテナ11の水平方向位置Q1(x11,y11)〜Q3(x13,y13)の何れか1(本実施例では、Q1)と、その際の方位角α1又は取付け角度γの何れか一方とに基づき、例えば、以下の式によって旋回中心Cに対するGPSアンテナ11の相対位置を示す距離d1、d2が算出され、d1,d2は一定であるので、その算出結果を演算手段15に自動的に設定する。尚、算出に当たり取付け角度γを用いることにより、旋回中心Cに対するGPSアンテナ11の相対位置を示す距離d1、d2に係る各辺をジブ4の方向に合わせて設定することができる。
【0087】
以上により、吊り位置検出装置10を使用するにあたり、必要な諸元情報、即ち、ジブ3の長さL、ジブ4基端と旋回中心Cとの間の水平距離A、GPSアンテナ11と旋回中心Cとの相対位置を示す距離d1,d2が算出され、演算手段15に自動的に設定される。
【0088】
尚、GPSアンテナ11と旋回中心Cとの相対位置を示す距離d1,d2の算出は、事前に停船した状態で第1乃至第3の基準状態となるようにクレーン旋回部3及びジブ4を動作させるとともに、
図8(a)〜
図8(c)に示す第1の基準状態から第3の基準状態に至るまでのGPSアンテナ11の位置を随時計測し、その計測された各GPSアンテナ11の位置及び方位の内より任意の2点を選択し、その任意の2点におけるにGPSアンテナ11の位置及び方位基づいてGPSアンテナ11と旋回中心Cとを通る複数の直線を上述の実施例と同様に算出するとともに、算出された複数の直線に基づいてクレーン旋回部3の旋回中心位置を算出するようにしてもよい。
【0089】
その場合、旋回中心位置と、直線上に位置する選択された任意の計測されたGPSアンテナ11の位置と、その方位又はGPSアンテナ11の取付け角度γの何れか一方とに基づいて旋回中心Cに対するGPSアンテナ11の相対位置を算出し、算出結果を前記演算手段15に自動的に設定する。
【0090】
尚、上述の各実施例では、捨石マウンド造成時の捨石投入作業等に使用されるガット船を例に説明したが、クレーン船1はガット船に限定されず、グラブ浚渫船等にも適用できる。
【0091】
更に、上述の実施例では、吊り体としてグラブバケットを挙げたが、吊り体の態様はグラブバケットに限定されず、オレンジピールバケット等の他のバケットでもよく、バケット以外の物であってもよい。
【0092】
更に、上述の実施例では、基準域部に船倉9を用いた例について説明したが、基準域部の態様はこれに限定されず、一定幅を有する矩形状であればよく、例えば、台船2の甲板部を基準域部に使用してもよい。
【0093】
更にまた、位置計測に使用する座標系は、上述の実施例に示す直角平面座標系に限定されず、その他の位置計測用に策定された座標系を用いてもよく、独自に設定した座標系を用いてもよい。
【0094】
また、使用する各計算式は、上述の実施例に示した各計算式に限定されず、他の数学的手法に基づく計算式を適用してもよい。