【実施例】
【0034】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0035】
図において、符号1は、山や法面など斜面で、この斜面1の裾に連なるよう水平状に延びる平坦な地面2が形成される。上記斜面1で発生した落石3が上記地面2の各部に向かって広く飛散することを防止するため、上記地面2上に落石防止柵4が設置される。
【0036】
上記落石防止柵4は、上記地面2上に載置されて設置されるよう形成される基台7と、地面2の上方に配置されて上記基台7に支持される柵本体8と、上記基台7上に載置されて、この基台7および柵本体8を地面2上に安定した状態で設置可能とさせる重し9とを備えている。
【0037】
上記落石防止柵4は、上記斜面1で広く発生する落石3の飛散を防止する落石防止装置の一部を構成する落石防止ユニットである。つまり、上記落石防止柵4は、通常、上記斜面1の裾に沿った一方向Aに向かって所望個数が連設されることにより、上記落石防止装置が形成される。
【0038】
上記基台7は、上記地面2上に載置されるよう敷設される平坦な厚板(22mm程度)の剛性基板12と、この基板12の上面に溶接により固着されてこの基板12と互いに補強し合う複数(4本)の骨格材13とを有している。
【0039】
上記基板12は、平面視で全体として上記一方向Aに長い長方形状をなしている。この基板12は、上記一方向Aで地面2上に並設される複数枚(3枚)の板材を互いに溶接して固着することにより形成される。また、上記各骨格材13は、それぞれ断面が互いに同形同大の型鋼材(Iビーム)製とされ、上記基板12の上面に沿うと共に上記一方向Aに直交する直交方向Bに向かって延び、上記一方向Aで等間隔に配置される。
【0040】
なお、上記各骨格材13は、基板12に締結具により固着してもよく、他の形状の型鋼材(アングル、チャンネルなど)やパイプ材(断面円形や角パイプなど)であってもよい。また、上記一方向Aに延び、この一方向Aで隣り合う上記骨格材13,13同士を結合する他の骨格材を設けてもよい。また、上記基台7は間伐材で形成してもよい。
【0041】
前記柵本体8は、上記各骨格材13の長手方向(直交方向B)の中途部から上方に向けて上記重し9よりも高く突設される複数(4本)の柱材16と、上記斜面1に対面するよう上記各柱材16の上部側に締結具17により架設される落石遮蔽材18と、上記柱材16を基準として上記斜面1と反対側の上記骨格材13と上記柱材16との間に架設され、これら13,16に締結具19により固着されて上記骨格材13への柱材16の結合を補強するステー20とを有している。上記各骨格材13と各柱材16とはそれぞれ溶接により互いに固着される。なお、上記ステー20は設けなくてもよい。
【0042】
上記各柱材16は、上記各骨格材13とそれぞれの断面が互いに同形同大の型鋼材製とされる。また、上記落石遮蔽材18は、上記一方向Aに長く延び、上下方向に並設される複数枚(7枚)の長尺板材23を有している。これら各長尺板材23は、その長手方向の各部断面が上記斜面1側に向かって凸のハット形状をなすことにより大きい剛性を有している。これら各長尺板材23が上下方向で互いに対向する対向縁部は互いに係脱可能に係合することとされ、これにより、これら各長尺板材23は、上下方向で互いに隙間なく連設され、外力によるこれらの変形時には互いに当接して互いに補強し合うものとされる。
【0043】
なお、上記各長尺板材23は上記各柱材16にそれぞれ締結具17により固着されるが、各長尺板材23同士を溶接により互いに固着してもよく、また、上記各柱材16と各長尺板材23とを互いに溶接により固着してもよい。また、上記柵本体8は間伐材で形成してもよい。
【0044】
前記重し9は、平面視で矩形の枠形状をなすよう上記基台7上に設置されると共に互いに連結具26により連結される複数枚(10枚)の縦向き網材27と、これら縦向き網材27の内面に全体的に沿うよう設けられてこれら縦向き網材27に取り付けられる膜材28と、この膜材28で囲まれた空間29に充填される土砂系重量物30と、上記基台7における各骨格材13,13の間の内部空間31に収容される他の土砂系重量物32とを有している。なお、上記したように、複数枚の縦向き網材27により枠形状体を形成した場合、この枠形状体の上、下端開口の少なくともいずれか一方の開口を閉じるよう、上記各縦向き網材27に連結される不図示の横向き網材を設けてもよい。
【0045】
上記各縦向き網材27、膜材28、および土砂系重量物30は上記柵本体8を基準として上記斜面1側の基台7上に設置される。一方、上記他の土砂系重量物32は、上記柵本体8を基準として上記斜面1側と、その反対側とで上記基台7の内部空間31に設置される。
【0046】
図3において、上記各縦向き網材27は、それぞれ縦向き網材27の面方向かつ縦方向に延びると共に横方向で等間隔(75mm)に配置される複数本の縦向き線材35と、それぞれ縦向き網材27の面方向かつ横方向に延びると共に縦方向で等間隔(75mm)に配置される複数本の横向き線材36とを有している。これら各縦向き線材35と各横向き線材36とはそれぞれ直径が4mmでとされ、かつ、溶融亜鉛メッキされた鉄製金属線材とされて溶接などにより互いに強固に結合され、正方形状の網目を有している。
【0047】
図3において、上記連結具26は、平面視で互いに隣り合う縦向き網材27,27の互いの対向端縁部を互いに枢支させるものであって、これら対向端縁部を構成する各縦向き線材35に、それぞれ離脱可能に巻き掛けられるコイル形状の連結線材39,39と、互いに噛み合うように接近させられた両連結線材39,39を縫うようにこれら各連結線材39内に順次挿入される連結バー40とを有している。なお、上記連結具26は、上記した隣り合う縦向き網材27,27に巻き掛けられる単一の連結線材39により構成してもよく、単なる針金であってもよく、また、市販品を用いてもよい。
【0048】
上記膜材28は、上記土砂系重量物30を上記空間29に充填されたままに保持するためのものであり、上記膜材28は、通水性を有する天然繊維、合成繊維等による不織布である。なお、上記膜材28は、天然繊維、合成繊維等による織物や、この織物の両面のうち、少なくとも一方の面に施されるポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等などの合成樹脂からなるコーティング材とを備えたものも利用可能であり、遮水性もしくは通水性のシート材で形成してもよい。
【0049】
上記土砂系重量物30は、土、砂、礫、小石群、石群、およびコンクリートなどの廃材破砕ブロック(塊)群等や、これらの混合物を含む概念として本願で用いることとする。
【0050】
上記構成によれば、基台7を上記地面2上への載置により設置されるよう形成すると共に、この基台7上に載置される重し9を設けている。
【0051】
このため、上記基台7と、この基台7に支持される柵本体8とは上記重し9によって安定した状態で地面2上に設置されることから、柵本体8は落石3からの衝撃力に十分に対抗できる。そして、上記基台7は、地面2上への載置により設置されるものであって、従来の技術のように地面には埋設しないで足りる。よって、その分、所望場所への上記落石防止柵4の設置作業や撤去作業が迅速かつ容易にできる。
【0052】
また、上記重し9が、平面視で枠形状をなすよう設置されると共に互いに連結される複数枚の縦向き網材27と、これら縦向き網材27で囲まれた空間29に充填される土砂系重量物30とを有している。
【0053】
ここで、上記各縦向き網材27は、種々の組み合わせによって種々の形状や大きさの組み立て体の形成が容易にできるものであり、また、互いの連結の解除により分解が迅速かつ容易にできると共にこの分解後にコンパクトにすることによる搬送も容易にできるものである。また、上記土砂系重量物30は固定的に定まった形状ではなく、その追加や削減が迅速かつ容易にできるものである。このため、これら縦向き網材27と土砂系重量物30とを構成部材とする上記落石防止柵4の設置作業や撤去作業は迅速かつ容易にできる。よって、本構成の落石防止柵4は、仮設用のものとして、特に有益である。
【0054】
また、前記したように、重し9が、上記縦向き網材27の内面に沿うよう設けられる膜材28を有している。
【0055】
このため、上記空間29に充填された土砂系重量物30が上記各縦向き網材27の網目を通して外部に洩出することは上記膜材28によって、より確実に防止される。よって、上記基台7と、この基台7に支持される柵本体8とは上記重し9によって長期にわたり安定した状態で地面2上に設置されることから、上記柵本体8は落石3からの衝撃力に長期にわたり十分に対抗でき、つまり、落石防止柵4の耐久性が向上する。
【0056】
また、上記膜材28は、上記土砂系重量物30と同様に固定的に定まった形状ではなく、その追加、延長や上記縦向き網材27からの離脱が容易にできるものである。このため、上記した落石防止柵4の耐久性の向上のために、上記したように膜材28を設けた場合でも、この落石防止柵4の設置作業や撤去作業は迅速かつ容易にできる。
【0057】
なお、上記落石防止柵4の撤去作業をする場合、特に上記重し9の各縦向き網材27や膜材28が大きく変形したり、破損したりしていない場合には、上記土砂系重量物30と共に再利用が可能である。
【0058】
また、前記したように、重し9の少なくとも一部分を上記柵本体8よりも上記斜面1側に配置している。
【0059】
このため、斜面1に落石3が生じた場合、この落石3は上記柵本体8に先立って重し9に衝突しがちとなる。そして、上記落石3が上記重し9に衝突した場合には、この重し9における主に縦向き網材27や土砂系重量物30は、上記衝突時の衝撃力により容易に変形したり、上記土砂系重量物30の粒子同士が互いに摩擦したりして、上記衝撃力のエネルギーを効果的に吸収し、この衝撃力を緩和する。よって、この衝撃力による柵本体8の大きな変形は抑制されて落石防止柵4の耐久性が、より向上する。
【0060】
また、前記したように、基台7における内部空間31を含み上記基台7上に上記重し9の他の土砂系重量物32を載置している。また、
図1,2中二点鎖線で示すように、上記柵本体8を基準として、上記基台7上の上記斜面1側とその反対側とに跨ぐように上記重し9を設置した場合には、上記柵本体8において上記一方向Aで互いに隣り合う両柱材16,16同士の間の内部空間43にも重し9の土砂系重量物30が充填されて、この土砂系重量物30は上記基台7上に載置される。
【0061】
このため、上記各内部空間31,43が重し9の設置に無駄なく利用される。よって、上記基台7をコンパクトにしても、この基台7と共に柵本体8を地面2上に安定した状態で設置できる。つまり、このように基台7をコンパクトにできる分、落石防止柵4の設置作業や撤去作業が更に迅速かつ容易にできる。
【0062】
また、
図1,2中実線と一点鎖線とで示すように、柵本体8を基準として、上記基台7上の上記斜面1側とその反対側とに上記重し9を個別に設置してもよい。
【0063】
上記のようにすれば、上記各重し9の合計質量を所望値にする場合に、これら各重し9の形状や質量をそれぞれ小さく抑制できることから、これら各重し9についての取り扱いが迅速かつ容易にできる。よって、上記重し9の合計質量を増加させたり減少させたりする場合の作業が迅速かつ容易にでき、その分、落石防止柵4の設置作業や撤去作業が更に迅速かつ容易にできる。
【0064】
また、前記したように、基台7が、上記地面2上に載置される剛性基板12と、この基板12の上面に固着されてこの基板12を補強する複数の骨格材13とを有し、上記柵本体8が、上記各骨格材13から上方に向けて上記重し9よりも高く突設される複数の柱材16と、上記斜面1に対面するよう上記各柱材16の上部側に架設される落石遮蔽材18とを有している。
【0065】
このため、地面2に対し基台7の基板12は面接触することから、これら地面2と基板12との間の各部の面圧を小さくでき、かつ、この基板12により上記各骨格材13は互いに結合されることから、上記基台7の剛性が向上させられる。よって、この基台7は、この基台7に突設される上記柵本体8をある程度高くしても、この柵本体8を地面2上に安定して支持させることができ、この結果、落石3が落石防止柵4を越えて地面2の各部に広く飛散することは、より確実に防止される。