【実施例】
【0021】
以下において具体的な実施例を説明する。なお、本発明は実施例の形態に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0022】
本実施例の骨格筋の評価用センサは、
図1に示すように、ブリッジ状に構成した基体10と、この基体10に装着した筋音図の測定手段のフォトリフレクタ20と、基体10に装着した筋電図の測定手段の電極30とを具備している。
【0023】
基体10は、接着部材を介して皮膚に貼付される第1の貼付片11と、この第1の貼付片11から所定間隔だけ離隔させて接着部材を介して皮膚に貼付される第2の貼付片12と、第1の貼付片に立設した第1の脚柱13と、第2の貼付片に立設した第2の脚柱14と、第1の脚柱13と第2の脚柱14との間に架設した支持基板15とでブリッジ状に構成している。
【0024】
第1の貼付片11と、第2の貼付片12と、第1の脚柱13と、第2の脚柱14と、支持基板15は、それぞれ塩ビ板で構成しており、所定形状とした塩ビ板に折り曲げ加工を行って第1の貼付片11、第2の貼付片12、第1の脚柱13、第2の脚柱14、支持基板15としている。ちなみに、本実施例では、第1の貼付片11と第2の貼付片12の大きさは15mm×7mm、第1の脚柱13と第2の脚柱14の大きさは15mm×6mm、支持基板15の大きさは15mm×30mmとしている。
【0025】
さらに、本実施例では、
図1及び
図2に示すように、長方形状となっている支持基板15の長辺には、第1のスカート片16と第2のスカート片17を設けて、支持基板15の下面側を第1の脚柱13と、第1のスカート片16と、第2の脚柱14と、第2のスカート片17で取り囲んでいる。
【0026】
第1のスカート片16と第2のスカート片17を設けることで、支持基板15の構造的な強度を向上させることができるとともに、後述するように支持基板15に装着したフォトリフレクタ20に余計な光が入り込むことを抑制して、計測精度を向上させることができる。第1のスカート片16と第2のスカート片17は、それぞれ第1の脚柱13と第2の脚柱14に連結することで、さらなる構造的な強度の向上を図るととともに、余計な光の入り込みを抑制してもよい。
【0027】
なお、第1のスカート片16と第2のスカート片17は、第1の脚柱13及び第2の脚柱14よりも丈を短くして、第1のスカート片16及び第2のスカート片17の下端縁が皮膚に接触することがないようにしている。すなわち、第1のスカート片16及び第2のスカート片17の下端縁が皮膚に接触すると、計測対象である筋肉の振動に影響が生じるおそれがあるためである。
【0028】
基体10の支持基板15には、
図2に示すように略中央部分に開口部Hを設けて、支持基板15の上面にフォトリフレクタ20を接着剤で貼付している。
【0029】
フォトリフレクタ20は、市販のフォトリフレクタ(TCRT1010 ,Vishay Semiconductors)を用いている。このフォトリフレクタは、発光部は950nm、受光部はフォトトランジスタで、本来は1mmにピーク動作距離を持つON-OFFセンサであるが、
図3に示すような距離−出力特性を持っており、これを3次多項式で近似して変換に用いた。フォトトランジスタの暗電流と増幅回路ノイズのため、距離分解能は約10μm、ダイナミックレンジは1〜8mmである。
【0030】
筋電図の測定手段の電極30は、φ8mmのAg-AgClであり、中心距離間を12mmとして基体10の第2の貼付片12に取り付けている。
【0031】
このようにして構成した骨格筋の評価用センサは、約2.5g程度とすることができ、被検体に装着感を与えることなく装着することができる。
【0032】
本実施例の骨格筋の評価用センサは、第1の貼付片11と第2の貼付片12にそれぞれ両面テープを装着して、この両面テープを介して皮膚への装着を行うこととしている。なお、電極30の部分は、電極ペーストを介して皮膚に接触させることとしている。
【0033】
骨格筋の評価用センサで筋音図が計測される領域には、皮膚上に白色光沢シールを貼付して、フォトリフレクタ20の光を反射させやすくしている。
【0034】
図示していないが、本実施例の骨格筋の評価用センサはケーブルを介して送信ロガーユニット(OE-WES ユニット,追坂電子機器)に接続して、この送信ロガーユニットからデータ解析を行う電子計算機に接続した受信ユニットに向けてデータ送信することとしている。なお、ケーブルには筋電図の測定手段の電極30用のプリアンプを挿入している。
【0035】
このように、骨格筋の評価用センサのフォトリフレクタ及び/または筋電図の計測用電極での計測データを無線でデータ送信するデータ送信手段を具備することによって、被験者が計測されていることに気を取られることなく、自然な運動状態での計測を可能とすることができる。
【0036】
本実施例の骨格筋の評価用センサを、両面テープを介して加振器上に貼付して、筋音図の測定の外乱振動に対する影響を確認した。
図4に示すように、振動周波数をDC〜200Hzまで変化させたところ、100Hz以下では十分な周波数特性が得られることが確認できた。
【0037】
以下において、説明の便宜上、本実施例の骨格筋の評価用センサによる筋音図の測定を「MMG」、筋電図の測定を「EMG」と表記することとする。
【0038】
本実施例の骨格筋の評価用センサを用いて、
図5に示すようにスクワット動作をした場合のMMGとEMGの同時計測した結果を
図6と
図7に示す。特に、
図6は、膝関節屈曲角度が約75度の場合であり、
図7は、膝関節屈曲角度が約100度の場合である。膝関節屈曲角度は、伸展状態を0度としている。
【0039】
膝関節が屈曲を始めると大腿直筋EMGが増加し始め、最大屈曲でEMGも最大値となるが、大腿直筋の変位MMGはやや遅れて増加(筋は膨らむ)しはじめ、膝関節の伸展が始まるとEMGと共にMMGは減少し、立位姿勢に戻る直前にもう一度MMGは増加、減少する。これに呼応してEMGもわずかに増加、減少する。この傾向は深いスクワットでも同様である。しかし、膝関節屈曲角度が大きくなる深いスクワットでは、EMGの振幅が約2倍になり、それに呼応してMMGの振幅も2倍弱になっている。
【0040】
このように、本実施例の骨格筋の評価用センサで筋機能評価が行えるデータを得られることが確認できた。
【0041】
他の使用例として、本実施例の骨格筋の評価用センサを用いて、
図8に示すようにエルゴメータ運動をした場合のMMGとEMGの同時計測した結果を
図9〜12に示す。特に、
図9は60rpm−30Wで他動的にクランクを回転させた場合であり、
図10は遅くて軽いペダル動作(60rpm−30W)を行った場合であり、
図11は遅くて重いペダル動作(60rpm−80W)を行った場合であり、
図12は早くて軽いペダル動作(90rpm−30W)を行った場合である。
【0042】
図9に示すように、他動的な運動の場合には、MMGは膝関節屈曲角度に同期した波形が得られているが、EMGはほとんど見られない。すなわち、MMGは筋断面の形状変化を測定していることから、腓腹筋が他動的に伸縮を繰り返しているだけであることがわかる。
【0043】
また、膝関節屈曲相では、腓腹筋EMGがあまり発火せず、膝関節が伸展し始めるとEMGが増加し始め、膝関節の屈曲相になると減少することがわかる。負荷を大きくした場合でも、サイクル数を上昇させた場合でも同様であった。MMGは膝関節最大屈曲で最大値を示すものの、膝関節が滑らかに伸展しているにもかかわらず、もう一度MMGが増加、減少する箇所がみられる。これは負荷やサイクル数を変化させるとさらに顕著になった。
【0044】
このように、異なる運動であっても、本実施例の骨格筋の評価用センサで筋機能評価が行えるデータを得られることが確認できた。
【0045】
以上のように、本発明の骨格筋の評価用センサによれば、運動中であっても筋音図と筋電図とを同時計測でき、高度な筋機能評価を行うことができる。