(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の吸音層の積層体と、これら吸音層の間に介在する音波拡散フィルムを含む吸音材によって空間を区画する吸音ユニットによって構成された携帯端末用ブースであって、前記吸音層の内側の面には布が貼り付けられており、前記携帯端末用ブースの外壁を構成する外側の面と、前記吸音材との間に中空構造が設けられており、前記携帯端末用ブースの上部には吸音材からなるルーフ部材が設けられている携帯端末用ブース。
前記樹脂シートには、複数個の開口部が設けられており、前記接着剤はこの開口部においては、前記吸音層を直接接合し、開口部以外では前記樹脂シートを介して前記吸音層を接合する請求項5に記載の携帯端末用ブース。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外出中に携帯端末で会話を行う際には、これまでの電話ボックスなどに置かれた公衆電話とは違って、他の人々が普通に歩行している場所で行うという場合が多い。従って、雑踏などでは、周りの雑音で相手の声が良く聞こえないということも少なくない。
【0005】
駅や建物の中であっても、周囲の反響が響いて、ゆっくりと会話を行うということはできない。普通は壁の近くなどへ寄って、いくらかでも静かな場所で話そうとする。しかし、実際には壁で反射する雑音が加わって、壁の近くは決して静かな場所ではない。通話相手にとっても、この反射雑音によって音声が聞き取りづらくなってしまうということもある。一方で、通路の真ん中に出て会話を行うというのもあまりよい選択ではない。
【0006】
また、会話の内容は周囲の人に聞こえる可能性があり、プライベートな内容は話しにくいということもある。更に、歩行しながらの会話や携帯端末の利用は、周りの通行人に迷惑を与える場合もあり、余りマナーの良い行為とは言えない。
【0007】
従来の電話ボックスと同様のボックスを、ほぼそのまま携帯電話ボックスとしたものも存在する(非特許文献1)。このような従来の電話ブースは、直方体の形状をしたドア付き閉鎖空間となっている。そして、セキュリティ上の配慮や開放感を与える観点から、側面はガラスを用いた壁となっている。ここで閉鎖空間とするのは、ノイズの少ない空間というのは外部と遮断することでのみ形成されると信じられていたためである。
【0008】
しかしながら、少なくとも、携帯電話の利用という目的からすれば、この考えは誤りである。閉鎖空間は、ノイズの反響空間でもある。ガラスを通過する音響は大きくなくとも、反響音はやかましく感じられる。特に、内部の利用者自身が発する音声などが反響する音もこの反響音となり得る。更に、このようなものを新たに設置するには一定の空間が必要である。また、コスト的にも高くついてしまう。更に、気軽に設置したり利用するにはやや大げさである。
【0009】
そこで、本発明の目的は、携帯端末を気兼ねなく快適に利用でき、開放感もある小型の携帯端末用ブースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の携帯端末用ブースは、 複数の吸音層の積層体と、これら吸音層の間に介在する音波拡散フィルムを含む吸音材によって空間を区画する吸音ユニットによって構成された携帯端末用ブースであって、
前記吸音層の内側の面には布が貼り付けられており、前記携帯端末用ブースの外壁を構成する外側の面と、前記吸音材との間に中空構造が設けられており、前記携帯端末用ブースの上部には吸音材からなるルーフ部材が設けられている。このような構成とすることで、手軽に携帯端末の利用空間を提供できる。
【0011】
好ましい実施例では、前記吸音ユニットは、
帯域500Hz以上の音圧を低減させる。
【0012】
また、好ましい実施例では、前記吸音層は、ニードルフェルト
、グラスウール
、フェノール樹脂、ポリウレタンの少なくとも1つを含む吸音材料からなっている。
【0013】
好ましい実施例では、
前記積層体は、隣接する前記吸音層の間に、前記音波拡散フィルムとして樹脂シートを挟んで積層されている。
【0014】
更に、好ましい実施例では、前記樹脂シートは厚み0.1mm〜0.5mmのビニールシートである。
【0015】
更に、好ましい実施例では、前記樹脂シートには、複数個の開口部が設けられており、前記接着剤はこの開口部においては、前記吸音層を直接接合し、開口部以外では前記樹脂シートを介して前記吸音層を接合する。
【0016】
更に、好ましい実施例では、前記吸音ユニットを所定の高さに支持する複数の支柱を更に含んでいる。。
【0017】
更に、好ましい実施例では、前記吸音ユニットは複数の吸音パネルからなり、これら吸音パネルが連結して前記区画された空間を形成する。
【0018】
更に、好ましい実施例では、前記吸音パネルは、吸音材と、この吸音材を装着する支持パネルとからなり、この支持パネルの外側の面は少なくとも部分的に開放されている。
【0019】
更に、好ましい実施例では、前記支持パネルの外側には、遮音面が設けられている。
【0020】
更に、好ましい実施例では、前記支持パネルは、
金属製のパネルである。
【0021】
更に、好ましい実施例では、
前記支持パネルは、アルミパネルである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係わる携帯端末用ブースによれば、部分的に囲まれたプライベートな空間を提供することで、落ち着いて携帯端末を利用できる。また、この空間は、吸音ユニットとなっているため、狭い空間で感じる息苦しさや、不快な音の響きというものはなく、快適な状況で携帯端末を利用できる。更に、後ろ側には音がもれず、会話の音声も内部で吸収され前方への反射が無い。従って、他人に会話の内容を聞かれてしまうという危惧が小さくなり、また、大きな声の人も周囲の迷惑にならないようになる。更には、通話相手にとっても、反射雑音が軽減されるということで、音声が聞きやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施例1の携帯端末用ブースを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例1の携帯端末用ブースの板状吸音パネルの構造を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例1の携帯端末用ブースの吸音材の吸音構造を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の吸音材に挿入されているビニールシートに設けられた開口部を示す平面図である。
【
図5】
図5は、国際公開公報(WO2006/134654)に記載されている吸音構造を示している。
【
図6】
図6は、実施例1の携帯端末用ブースの板状吸音パネルの構造を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施例1の携帯端末用ブースの板状吸音パネルの構造を示す部分断面図である。
【
図8】
図8は、実施例2の携帯端末用ブースで用いるルーフ部材を示す平面図である。
【
図9】
図9は、実施例2の携帯端末用ブースの平面図である。
【
図10】
図10は、別の例のルーフ部材を用いた実施例2の携帯端末用ブースの平面図である。
【
図11】
図11は、実施例3の携帯端末用ブースを示す斜視図である。
【
図12】
図12は、実施例3の携帯端末用ブースにルーフ部材を設けた状態を示す平面図である。
【
図13】
図13は、実施例4として説明する携帯端末用ブースの変形例の吸音ユニットの断面図である。
【
図14】
図14は、実施例4として説明する携帯端末用ブースの別の変形例の吸音ユニットの断面図である。
【
図15】
図15は、実施例4として説明する携帯端末用ブースの更に別の変形例の吸音ユニットの断面図である。
【
図16】
図16は、実施例4として説明する携帯端末用ブースの更に別の変形例の平面図である。
【
図18】
図18は、実施例4として説明する携帯端末用ブースの別の変形例を正面から見た図である。
【
図19】
図19は、実施例4として説明する携帯端末用ブースの更に別の変形例の斜視図である。
【
図20】
図20は、実施例5の携帯端末用ブースを示す斜視図である。
【
図21】
図21は、実施例5の携帯端末用ブースに着脱可能な看板を示す斜視図である。
【
図23】
図23は、実施例5の携帯端末用ブースに、
図21の看板を取り付ける方法を示す部分拡大斜視図である。
【
図24】
図24は、実施例5の携帯端末用ブースに、
図21の看板を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図25】
図25は、実施例5の携帯端末用ブースの変形例を示す斜視図である。
【
図26】
図26は、実施例6の携帯端末用ブースを示す斜視図である。
【
図27】
図27は、実施例6の携帯端末用ブースの板状吸音パネルの構造を示す分解斜視図である。
【
図28】
図28は、実施例6の携帯端末用ブースの板状吸音パネルの構造を示す断面図である。
【
図29】
図29は、実施例6の携帯端末用ブースの板状吸音パネルの別の具体例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態による携帯端末用ブースを説明する。この携帯端末用ブースは、駅の構内、ビルのロビー、雑踏などに設置しておく。携帯電話を利用したい人は、このブースに入って電話をかけることで周りの反響音などを避け、また話の内容を近くにいる人には聞き取りにくい状態で会話を行うことができる。さらに、周囲の人の視線に気兼ねなく携帯電話を利用できる。
【実施例1】
【0025】
図1は、実施例1の携帯端末用ブースを示す斜視図である。この携帯端末用ブース100は、前面に開いた円筒形状の吸音ユニット110と、この吸音ユニット110を支える支持フレーム120とからなっている。それぞれ分解状態で搬入し、現地で組み立てることができる。
【0026】
吸音ユニット110は、幅20cm、長さ60cm、厚み3cmの板状の板状吸音パネル111を、アーチ状に連結して構成されている。また、支持フレーム120は、吸音ユニット110に垂直に接続した4本のパイプ(支柱)121と、パイプ121の下面に貼り付けられている樹脂製のアジャスタフット123からなる。
【0027】
パイプ121の長さを180cmとすると、アーチ状の吸音ユニット110の下端は床から約120cmの高さとなる。また、吸音ユニット110は耳の位置よりも少し上まであればよい。概ね、この携帯端末用ブース100を設置する国の平均身長よりも、板状吸音パネル101の上端が10〜15cm程度上にあるようにする。
【0028】
図2に示したように、板状吸音パネル111は、アルミパネル(支持パネル)113に吸音材115を装着したものである。この吸音材115は、例えば、株式会社ハウス119から販売されている「ルームクリエータ」を利用する。また、吸音材115を装着したアルミパネル113の上端および下端には、パネルキャップ117が嵌合されている。また、図示の通り、板状吸音パネル111を組み合わせた状態で、前方が開口した円筒形となる。この場合で、開口部は、円筒形の中心からの見込み角で90〜120度、つまり円周の1/4から1/3程度の大きさとなっている。この角度範囲は、発明者が実験によって特定したものであり、今回の目的では重要である。
【0029】
一般に、遮音といった場合、大きく分けて2つの性能を考える必要がある。一つは、そのパネルに入射する音波を熱エネルギーに変換してしまう吸収性能である。もう一つはそのパネルに入射する音波を通過させずに反射する反射性能である。
【0030】
音を外に漏らさないという意味では、音波を通過させずに反射してしまうという機能も重要である。防音壁などでは、とにかく音を通さなければ良い。しかし、音楽を楽しむなどの場合は、室内で反響してしまい快適とはいえずに、また室内で再生可能な帯域は非常に狭まってしまう。
【0031】
携帯電話を利用する場合、できるだけ落ち着ける場所として、しばしば壁の隅へ行ってかけることがあるが、そこは音波が反射する場所であり、音響という点では決して良いとはいえない。従って、今回の目的では、特に吸収性能が重要である。
【0032】
ルームクリエータ(吸音材115)は、優れた調音素材であり、
図3に示したような吸音構造を持っている。これは、ニードルフェル
ト、グラスウー
ルといった材質の吸音シート115aを2枚積層させ、間に音波拡散フィルムとして機能する薄いビニールシート(樹脂シート)115bを挟んで接着させたものである。吸音シート115aの他の材質としては、フェノール樹脂、ポリウレタンなどがある。一枚の吸音シート115aの厚みは1〜2cmであり、ビニールシート115bの厚みは0.1mm〜0.5mm程度である。更に、保護および支持用の軟質塩化ビニル樹脂板105cを裏面に設ける。また、内側の面は布115dが貼ってある。全体として、2〜4cm程度となる。
【0033】
ビニールシート115bは、
図4の平面図に示したように、多数の円形開口部115hが設けられている。例えば、開口部115hの直径は2cmで、互いの間隔は7cmである。このような開口部115hを設けることで、入力する音波を横方向に散乱させ、吸音シート115aによる吸音効果を高めることが出来る。また、開口部115hは、入力する音波の一部を通過させることにより、反射と透過のバランスを取るという調音機能も持っている。
【0034】
ビニールシート115bと吸音シート115aとは粘性接着剤によって接着されている。また、円形開口部115h越しに、吸音シート115a同士が粘性接着剤によって接着されている。この粘性接着剤は、ビニールシート115bと吸音シート115aとの間に、一定の粘性を保って介在する。また、この粘性接着剤は、開口部115hを介して、吸音シート115a間にも、一定の粘性を保って介在する。すなわち、使用時においても完全に硬化せず、ネバネバした状態を保っているという点が重要である。
【0035】
このような吸音構造は、国際出願(出願番号:PCT/JP2011/58944)に記載されている。その特徴としては、低周波から高周波まで広い帯域において優れた吸音性能を持っていることにある。特に、今回の目的では、この吸音構造によって、通話の際に騒音と感じられる帯域500HZ以上の音圧を大幅に低減させるという点が重要である。一般的には、低周波において吸音性能を維持することは困難とされている。このように高周波成分のみを取っても、それは音の環境としては不自然であり、ブース内部に入った場合にやや窮屈な印象を受ける。それに対して、一様に吸音された空間では、囲まれているにも拘わらず不自然さは感じず、空間がひろがったような印象を受けるものである。
【0036】
吸音材115として、国際公開公報(WO2006/134654)に記載されている吸音構造を利用しても良い。この吸音構造の特徴は、壁面で構成される、音波の通る音道につき、その断面構成が、少なくとも、その入り側で開口面積の減少率が徐々に小さくなるように構成された狭窄部を有する構造にある。特に、広帯域の音波を吸収できるという点で優れている。
【0037】
図5は、国際公開公報(WO2006/134654)に記載されている吸音構造を示している。この断面図に示されているように、円筒状の吸音体12を並べ、吸音材20で隙間を埋めたような構造となっている。吸音材115の場合、この吸音体12は、アクリル樹脂の円筒であり、狭窄部11(間隙)を挟んで互いに離隔して平行に設けられている。この吸音体の長手方向を、板状吸音パネル111の長手方向に一致させるようにし、表面をファブリック張りとして吸音材115とする。
【0038】
このような吸音材115を用いることで、携帯端末用ブース内部での音の反響は起こらず、静かで落ち着いた空間で会話を行うことができる。
【0039】
図6の断面図や
図7の拡大断面図に示したように、板状吸音パネル111には、アルミパネル113の縁部から突出した円筒状の耳部113eと、反対側の縁部にこの円筒状の耳部113eと枢動可能に係合する耳受113gが設けられている。隣接する板状吸音パネル111同士を、この耳部113eを耳受113gに挿入し、長手方向にスライド係合させることにより、互いに連結させる。パイプ121と板状吸音パネル111との結合は、板状吸音パネル111の側面へのネジ止めによって行われる。
【0040】
このように吸音パネルを円弧状に組み合わせると、確かにパネルの裏側や側面からの音響を減衰する効果はある。その一方で、前面から内側に入ってくる音響、つまり円弧状に開いた側の音響については、直接それを減衰することはできない。しかしながら、狭い空間で感じる息苦しさや、不快な音の響きというものは、壁からの反響によるものが大きい。例えば、屋外の開けた広い場所なら、多くの人が集まっていても思いの外にうるさいという感じを持たないものである。
【0041】
この吸音材の特徴は、内部で音響を横に逸らすことで反響をなくし、あたかもパネルの外側に空間が広がっているような効果をもたらす点にある。従って、完全に閉じたブースなら内面からの反響音が集まり、音がキンキンしてしまうであろうところが、上記構造(PCT/JP2011/58944 又は WO2006/134654に記載の構造)による携帯端末用ブースでは非常に快適な内部空間が形成される。
【0042】
出願人は、この携帯端末用ブースの試作品を制作し、その吸音性能を検証する実験を行った。試作品を設置した実験室の大きさは132m2で高さは2.7mである。使用機材は、レコーダーおよびシグナル発生器としてPro tools LE7(以下PT)、マイクはAKG C451、マイクアンプはDigidesign 002、スピーカーはSONY SMS-1P(パワードSP)である。
【0043】
まず、マイクを試作品の中央(すなわち、板状吸音パネルの円筒中心)に配置し、その開口部から3m離れた位置にスピーカーを配置した。PTにてピンクノイズを発生させ、これをスピーカーから再生出力し、再生と同時にPTにてマイク音声を30秒録音した。録音フォーマットは24bit、48kHzである。PTで録音された音声データは、16bit、44.1kHzのデータとして書き出し、Wave Spectra(Windows(登録商標)ソフト)にて周波数分析(FFT)を行った。
【0044】
試作品としては、板状吸音パネルとして10cm巾のもの24枚と30cm巾のもの8枚を用いて2種類の携帯端末用ブースを作成して実験を行った。パネルの高さは共に60cmである。また、同等の実験を上記携帯端末用ブースの代わりにコンクリートパネルのブースでも行った。
【0045】
実験結果として、10cm巾のものと30cm巾のものとでは、大きな差異は確認できなかった。但し、板状吸音パネルの間の隙間が大きいと、その隙間の反射が影響したと思われる若干の差異が、1kHz以上の周波数領域に現れた。
【0046】
コンクリートパネルの実験では、板状吸音パネルの実験と比較して、明らかに全領域にて音圧レベルの上昇が見られた。特に、可聴領域にて最大20dB程度の上昇が生じていた。この差異は、聴感上でも明瞭に感じられた。結論として、板状吸音パネルは反響を抑えるという点で、大きな効果が期待できる事がわかった。
【0047】
更に、30cm巾の板状吸音パネルを平面に並べて吸音壁とした場合と、円筒形に270°囲んだ場合の比較実験も行った。結果として、300Hz近辺と550Hz近辺、2kHz〜4kHzを中心にして大きな差が見られた。300Hz近辺と550Hz近辺は音の籠りを感じる周波数帯であり、携帯等の通話などの場合、会話の音声に明瞭さを感じるか否かに大きな影響を与える成分である。従って、円筒形に囲むことで、音声の聞き取りが容易になることがわかる。これは、通話相手にとっても同様である。
【0048】
更に、いずれの実験においても、10kHz以上で、低周波数領域に比較して20dB程度の音圧レベルの上昇が認められた。これは板状吸音パネルの表層が固い為か、パネル間の隙間の反射のためと思われる。なお、今回の場合、吸音材の高さが60cmしかない為、高さに余裕を持たせれば開口部からの反射をもっと押さえられる可能性がある。
【0049】
なお、携帯端末用ブース内部の反射音以外の音についても、上記構造はその抑制に効果が高い。例えば、吸音ユニットの裏側(外側)はアルミパネル113でてきており、外部からの音を遮断し反射する。よって、このアルミパネル113は、携帯端末用ブース越しに入ってくる音の抑制効果を高めている。これにより、ユーザーおよび通話相手にとって話しやすい環境が形成される。もちろん、アルミパネルの代わりに、スチール、ジュラルミン、チタンなど他の金属や合金製の遮音パネルとしても良く、コストや強度などを考慮して強化プラスチックや木材など他の材料の遮音パネルとしても良い。
【実施例2】
【0050】
実施例2では、実施例1の携帯端末用ブースに更にルーフ部材を設けたものである。
図8に示したように、このルーフ部材201は、半円形で中央にやはり半円形の切り欠き203が設けられている。全体の面積としては、円筒形状の携帯端末用ブースの上側の開口部分の面積の約30〜40%が隠れる程度とする。
図9は、実施例1の携帯端末用ブース100に取り付けた状態を上から見た平面図である。
【0051】
使用形態としては、携帯端末用ブースの上に載置するだけなので、比較的に小さな強度で十分である。従って、ABS樹脂などのプラスチックまたはアルミの基板205の下に吸音材207を貼りあわせた構造となっている。吸音材207は、やはり上記のルームクリエータを利用する。基板205には、周辺の3箇所に貫通孔209が設けられており、ここにボルトを通して下のパネルキャップ117に設けられた雌ネジ(図不示)にネジ止めを行うことで固定できる。
【0052】
このようなルーフ部材201を用いることで、上方から入ってくる音響を遮断することができ、より静かな空間を形成することが出来る。また、上方の開口全体を覆うのではなく一部分とすることで、外部の光を取り入れると共に、一定の開放感を持たせることが出来る。勿論、
図10に示したように上方の開口全体を覆うようにすれば、音響を遮断する効果をさらに高めることが出来る。
【実施例3】
【0053】
図11は、実施例3の携帯端末用ブースを示す斜視図である。この携帯端末用ブース300は、実施例1の携帯端末用ブース100との違いは、支持フレーム320が吸音ユニット310の下部に接続されているという点である。以下、実施例1と異なる部分を説明する。
【0054】
吸音ユニット310は、幅20cm、長さ60cmの板状の板状吸音パネル311を、アーチ状に連結して構成されている。また、支持フレーム320は、吸音ユニット310に垂直に接続した4本のパイプ321と、これらのパイプ321の中央部を連結したアーチ部材323と、これらのパイプ321の下端に接続した円盤プレート325とからなっている。また、円盤プレート325の下面には、ゴムシートが貼り付けられている。やはり、パイプ321の長さは120cmである
【0055】
パイプ321の上端には雄ネジ(図不示)が設けられており、パネルキャップ317の対応する位置に設けられた雌ネジ(図不示)に螺合することで固定する。また、パイプ321の中央位置にはアーチ部材323を挿入可能な貫通孔329が設けられ、アーチ部材を挿入し六角ネジ327で固定することができる。
【0056】
更に、パイプ321の下端には雌ネジ(図不示)が設けられており、円盤プレート325の上面に設けられた雄ネジ(図不示)に螺合することで固定する。このような構造とすることで、吸音ユニット310の外観がシンプルでデザイン的に優れているとともに、アーチ部材323によって十分な強度を確保できる。なお、この実施例でも、実施例2で示したようなルーフ部材201を設けることもできる(
図12参照)。
【実施例4】
【0057】
実施例4では、上記実施例の幾つかの変形例を説明する。実施例1の場合、吸音ユニット110は、横断面が部分的な円筒状の形態となっている。しかし、これに限らず横断面がコの字の形態や、多角形状(長方形、正方形、五角形など)の形態などとしても良い。この多角形のその一辺の少なくとも一部は開放されている。
【0058】
例えば、
図13の平面図に示したように、断面コの字型の吸音ユニット340とすれば、空間利用率を高くなり、設置場所の選択肢が増える。そして、製造や設置または取り扱いの面でも、利便性が高くなる。また、
図14の平面図に示したように、前面の入り口部分を狭くして、調音機能を高めても良い。
【0059】
更に、
図15の平面図に示したように、二双屏風型(又はL字型)の吸音ユニット350とすることもできる。この場合は、非常に開放感があり、壁に寄り添うような間隔で気軽に利用できるというメリットがある。更に、コストも低く抑えられる。
【0060】
上記吸音ユニットの夫々は、基本的に同じ板状吸音パネルを組み合わせることで製作できる。しかし、
図13から
図15の構造の場合では、このような多くの小さな板状吸音パネルの代わりに、一枚の大きな板状吸音パネルで1つの辺を構成するようにしても良い。この場合、吸音ユニットを組み立てる際の手間が少なく且つ、接合部分が余り無い為により静音機能が高くなる。
図16は、左右および背面361L、361R、361Bの夫々を一枚の大きな板状吸音パネルで構成するようにした吸音ユニットを備えた携帯端末用ブースを示す斜視図である。また、
図17は、
図16のA−A線に沿った吸音ユニットの断面図である。左右面361L、361Rの夫々の縁部には一対の支柱が設けられている。なお、この携帯端末用ブースは更に吸音ユニットの上部にルーフ部材361Tを備えている。
【0061】
また、
図18に示したように、実施例1の吸音ユニット110を足元まで延長して、吸音ユニット330として良い。この場合は、吸音の効果が非常に大きく、より静かな空間を形成することが出来る。また、足元が隠れるので、女性は他人の視線が気にならなくなる。また、
図18の携帯端末用ブースに実施例2のルーフ部材201を組み合わせて上部に設置すれば、更に静かな空間となる。
【0062】
また、上記のように、板状吸音パネルを多数組み合わせて、吸音ユニットを構成した場合、どうしても接続部分の存在によって反響抑制や吸音の効果が一定程度損なわれてしまう。しかし、
図19に示したように、扇状の一枚の板状吸音パネル211を吸音ユニットとすれば、接続部分の影響を取り除くことができる。ここでは、扇状の全体にわたって吸音材が連続的に設けられている。
【実施例5】
【0063】
図20は、実施例5の携帯端末用ブースを示す斜視図である。実施例1の携帯端末用ブースと同様に、この携帯端末用ブース400は、前面に開いた円筒形状の吸音ユニット410と、この吸音ユニット410を支える支持フレーム420とからなっている。やはり、それぞれ分解状態で搬入し、現地で組み立てることができる。
【0064】
吸音ユニット410は、幅20cm、長さ120cm、厚み3cmの板状吸音パネル411を、アーチ状に連結して構成されている。また、支持フレーム420は、吸音ユニット410に垂直に接続した4本のパイプ421b、421fと、パイプ421b、421fの下面に貼り付けられている樹脂製のアジャスタフット423からなる。
【0065】
パイプ421b、421fの長さを200cmとすると、アーチ状の吸音ユニット410の下端は床から約80cmの高さとなる。吸音ユニット410の構造は、サイズを除いて、実施例1のものと同一であり、更に上端に
図10に示したようなルーフ部材が設けられている。
【0066】
実施例5の携帯端末用ブースは、吸音ユニット410の前面開口部(入り口)の両側に位置する板状吸音パネル411上部を連結するアーチ状接続部440を備えている。このアーチ状接続部440は、携帯端末用ブースの安定性を向上させる。板状吸音パネル411は互いに枢動可能に連結しているので、アーチ状接続部440として異なる長さのものを用いれば、携帯端末用ブースの大きさを変えることも出来る。
【0067】
本発明の携帯端末用ブースでは、吸音ユニットの内側および外側を広告スペースとすれば、一定の広告収入も見込める。実施例5の携帯端末用ブースは、更に、着脱可能な看板を設置できる。
図21に、この看板の斜視図を示す。ここに示したとおり、着脱可能な看板430は、プラスチック製の広告板432と、この広告板の両端に固定する支持ポール434とからなっている。
【0068】
図22に示すように、広告板432は、支持ポール434にネジ434sで止められており、適宜、別の広告板を交換可能となっている。また、
図23に示すように、この携帯端末用ブースの前方の2本のパイプ421fの上端には、支持孔421hが設けられている。一方、支持ポール434には下方に突出した支持ロッド434rが設けられており、パイプ421fの支持孔421hに挿入し、看板を吸音ユニット410の上部に設置できるようになっている(
図24参照)。
【0069】
図25は、実施例5の携帯端末用ブースの変形例を示す斜視図である。この携帯端末用ブース450は、
図20のアーチ状接続部440の代わりにアーチ状接続部452を備えている。アーチ状接続部452は、吸音ユニット410の上端から更に上方へ突出し、
図24の看板430と対応する位置に設けられている。具体的には、携帯端末用ブース450の前方の2本のパイプ421fは、携帯端末用ブース400の支持ポール434と同様に、ルーフ部材455を越えて上方へ延出しており、アーチ状接続部452は、このパイプ421fの延出部分の間に設けられている。このアーチ状接続部452は、前面開口部(入り口)を狭めることなく、携帯端末用ブース450の安定性を向上させることができる。
【実施例6】
【0070】
図26は、実施例6の携帯端末用ブースを示す斜視図である。この携帯端末用ブース500は、実施例1の携帯端末用ブースと吸音ユニット510の構造が異なる。特に、異なる構造の板状吸音パネル511を用いている。
【0071】
図27に、この携帯端末用ブース500の板状吸音パネル511の分解斜視図を示す。また、
図28に、断面図を示す。実施例1の携帯端末用ブースの吸音ユニットと同様に、板状吸音パネル511は、アルミパネル513に吸音材515を装着したものである。
【0072】
但し、アルミパネル513の外側は少なくとも部分的に開放されている。ここでは、アルミパネル513には、複数のスリット514が設けられている。すなわち、前面がグリルとなっており、そこから内部の吸音材515が露出している。このグリルが形成されていること以外は、板状吸音パネル511は、実施例1の板状吸音パネル111と同じ構造を持っている。
図2の構造と比較して、このような構造は、外部からの音を遮断し反射する機能は劣っているが、携帯端末用ブース内部の反響を抑制するには効果的である。つまり、第1の実施形態の場合、携帯端末用ブース内部から吸音ユニット110の内側に入射する音は、吸音材115を通ってアルミパネル113の内面で反射され、携帯端末用ブース内部空間での反響を増幅する。しかし、この実施形態では、このような吸音ユニット110の内側に入射する音は、アルミパネル513のスリット514を通過して外部へ逃がされるので、携帯端末用ブース内部空間での反響を抑制することが出来る。
【0073】
従って、グリル513gは、高周波成分を多く含む反響音を小さくすることで、携帯端末用ブース内部の音響を調整する手段となっている。一般的に、アルミパネル513の中央面を(部分的に)除去することは、同様の効果がある。例えば、
図29に、このように中央面を除去されたアルミパネルの別の具体例を示す。ここで、アルミパネルは、外側の枠516と内側の格子状のストリップ517からなっており、この格子ごしに内部の吸音材515が露出している。
【0074】
本発明の携帯端末用ブースは、町の雑踏の中、屋内の人ごみの中などで、音声付きの案内BOXとしての機能を兼ねるようにすることもできる。例えば、携帯端末用ブース内部の正面(例えば、
図20のアーチ状接続部440の内面)にタッチパネル付きのディスプレイを設けて、音声で案内するといったことが可能となる。インターネットへの接続機能も付加して、設置型テレビ電話を設ければ、テレビ電話会議も可能となる。
【0075】
本発明に係わる携帯端末用ブースによれば、携帯端末の利用空間を提供でき、利用者の利便性を高めることができる。例えば、ホテルのロビーなどに設置すれば、マナーよく快適に携帯端末を使うことができ、ホテル自体の雰囲気を良くなる。また、吸音ユニットの外側を広告スペースとすれば、一定の広告収入も見込める。例えば、携帯端末用ブース内部にスピーカーを設置し、音声広告を流すようにしても良い。この音声広告は常時流しておき、ユーザーが入ったことを人感センサーで検知してから一定時間経過後、止めるようにすれば、会話の妨げにならない。この一定時間は、30秒以内、例えば3秒〜20秒、好ましくは5秒〜10秒とする。ユーザーが退出すれば、音声広告は再開する。また、音楽を同時に流しても良い。
【0076】
本発明に係わる携帯端末用ブースによれば、部分的に囲まれたプライベートな空間を提供することで、落ち着いて携帯端末を利用できる。また、この空間は、吸音ユニットとなっているため、狭い空間で感じる息苦しさや、不快な音の響きというものはなく、快適な状況で通話を行うことができる。更に、後ろ側や横方向には音がもれず、会話の音声も内部で吸収され前方への反射が無い。従って、他人に会話の内容を聞かれてしまうという危惧が小さくなり、また、大きな声の人も周囲の迷惑にならないようになる。更には、通話相手にとっても、反射雑音が軽減されるということで、音声が聞きやすくなる。
【0077】
以上、本発明を実施例により詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本願中に説明した実施例に限定されるものではないということは明らかである。本発明の装置は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本願の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。