特許第6233801号(P6233801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233801
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】更生管及び既設管路の更生方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/34 20060101AFI20171113BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20171113BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20171113BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B29C63/34
   F16L1/00 L
   E03F3/04 Z
   E03F7/00
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-206273(P2013-206273)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-66939(P2015-66939A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】595053777
【氏名又は名称】吉佳エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岡 伸吉
(72)【発明者】
【氏名】張 満良
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−189014(JP,A)
【文献】 特開平07−091567(JP,A)
【文献】 特開2004−332776(JP,A)
【文献】 特開2000−240871(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0154810(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/34
E03F 3/04
E03F 7/00
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続して既設管路内に挿入することで該既設管路を更生する更生管であって、
管本体と、前記管本体の一方の端部に形成された挿入部と、前記管本体の他方の端部に形成された嵌合部と、を有し、
前記挿入部は、管本体の外径よりも小さい外径を有する外周面と、外周面に形成され管本体の外径よりも小さく外周面の外径よりも大きい外径を有する突起と、を有して構成されており、
前記嵌合部は、前記挿入部の突起の外径と等しいか僅かに大きい内径を有する内周面と、管本体の外径よりも小さい外径を有する段部と、内周面に形成され該内周面の内径よりも小さく挿入部の外周面の外径と等しいか僅かに大きい内径を有する突起と、管本体の軸方向に沿って形成され該嵌合部の径方向への変形を許容するための複数のスリットと、を有して構成されており、
一方の更生管の嵌合部に他方の更生管の挿入部を挿入する際に、嵌合部が径方向へ変形することで円滑に接続し得るようにしたことを特徴とする更生管。
【請求項2】
前記嵌合部に形成されたスリットに止水材が充填されていることを特徴とする請求項1に記載した更生管。
【請求項3】
前記嵌合部の外周に形成された段部は、更生管を接続した後配置されるリング状の拘束部材の寸法に対応した寸法を有することを特徴とする請求項1又は2に記載した更生管。
【請求項4】
前記リング状の拘束部材は、縮径可能に構成された帯状の部材、又は管本体部に摺動可能に配置された円筒状の部材であることを特徴とする請求項3に記載した更生管。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載した更生管を用いて既設管路を更生するための方法であって、
更生すべき既設管路に設けた一方のマンホールから他方のマンホールに向けて該既設管路の内周面に、弾性を有してスリーブ状又はシート状に形成され該既設管路の内周面に配置したときに内径が更生管の外径よりも小さくなる弾性を有する緩衝材を配置した後、
何れかのマンホールにジャッキを設置し、該ジャッキに一方の端部に前記緩衝材を押し広げるための先頭体を取り付けた第1番目の更生管を設置した後、ジャッキを駆動して既設管路内に挿通し、
第1番目の更生管の挿通が終了した後、ジャッキに第2番目の更生管を設置して該第2番目の更生管の端部を第1番目の更生管の端部に挿入して挿入部を嵌合部に嵌合させると共に、更生管の嵌合部の外周面にリング状の拘束部材を配置することで、該嵌合部を径方向の変形不能に拘束し、
その後、ジャッキを駆動して第1番目の更生管と第2番目の更生管を既設管路内に挿入し、
上記作業を第1番目の更生管が他方のマンホールに到達するまで繰り返し、
第1番目の更生管が他方のマンホールに到達した後、先頭体を取り外すと共に管口処理してマンホールと更生管を一体化する
ことを特徴とする既設管路の更生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化した既設管路を更生するための更生管と、この更生管を利用して劣化した既設管路を更生する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中には、下水道用の管路、上水道用の管路或いは農業用の管路等多くの管路が敷設されている。これらの管路は経時的に劣化するため、劣化した管路の内部に新たな更生管を配置することによって更生することが行われる。
【0003】
例えば下水道管路は、所要の位置毎にマンホールを設置すると共に、マンホールの間に複数の鉄筋コンクリート管を配置して敷設されている。このような管路では、長期間の使用によって管の内周面が腐食して強度が低下することがあり、作用する荷重によって破壊する虞が生じる。また、地震や地盤沈下等に起因して、管どうしの間に抜けだしを含むずれが生じたり、管にひび割れが生じることがあり、ずれやひび割れから地下水が浸入する虞がある。そして、管路内に地下水が浸入した場合、下水道処理施設に過大な負担をかけるという問題や、地下水と共に管路周囲の土砂が入り込んで管路の断面積が減少したり、周囲に空洞が生じて道路陥没の原因となるという問題が生じる。
【0004】
劣化した既設管路を更生する場合、幾つかの工法が実施されている。その一つに、既設管路の内部に複数の更生管を接続しつつ挿入することで、マンホール間に更生管からなる新たな管路を形成し、更に、更生管と既設管との間に形成された隙間にセメントミルクやモルタル等の充填材を充填する鞘管工法がある。この鞘管工法では、更生された管路は既設管の強度に硬化した充填材と更生管の強度を付加した強度を発揮する。
【0005】
上記の如き鞘管工法では、充填材を注入するために更生管と既設管との隙間を大きくせざるを得ないという問題、前記隙間が大きくなるため更生管の太さが小さくなるという問題、前記隙間に充填材を注入する作業が容易ではないという施工性の問題、等の問題がある。この問題を解決するための工法として、既設管路の内周面に弾力性を持った緩衝材を配置した後、この緩衝材の内側に自立可能な強度を有する更生管を挿入する被覆鞘管工法が実施されている。この被覆鞘管工法では、先頭に取り付けた先頭体によって緩衝材を圧縮させつつ、更生管を推進することで既設管路を更生することができ、更生された管路は更生管の強度を発揮する。この被覆鞘管工法では、更生管と既設管との隙間に充填材を注入する必要がない。このため、前記隙間を小さくすることができ、この結果更生管の太さを大きくすることができるという利点、前記隙間に充填材を注入する作業が不要となることから施工性が向上するという利点、等の利点を有する。
【0006】
上記した何れの工法であっても、更生管を既設管路に挿入する作業はマンホールの内部で行われる。このため、個々の更生管はマンホールの内径よりも短く、且つ長手方向の両端部には他の更生管と確実に且つ強固に接続するための接続部が形成されている。更生管どうしの接続はねじによるのが一般的であり、個々の更生管の両端部には雄ねじと雌ねじが形成されている。
【0007】
更生管としては、充分な強度と適度な硬度を有する塩化ビニル管が利用されている。そして、塩化ビニル管をマンホールの内径に対応する長さに切断する加工や、両端部にねじを形成する加工は、夫々の加工に適した機械を用いて行うのが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
劣化した既設管路に更生管を挿入する作業はマンホールの内部で行われるため、既に挿入された更生管に対し、新たな更生管を回転させてねじ結合することとなる。この作業は極めて狭い空間内で行われることとなり、作業がし難く手間がかかるという問題がある。
【0009】
また最近では、劣化した既設管路を更生する際に用いる更生管として、地震時に生じる地盤の変位に容易に追従して耐震性に優れ、且つ耐薬品性に優れた例えばポリエチレンを主原料とした管を利用することが要求されている。このような管は適度な硬度を有するものの、粘り気を有するため機械加工に適した材料とはいえず、機械によるねじ加工を含む加工が容易ではないという問題を有する。このため、ねじによることなく確実に接続することができる更生管の開発が要求されているのが実情である。
【0010】
本発明の目的は、容易で確実な接続を実現した更生管と、この更生管を用いた既設管路の更生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る更生管は、直列に接続して既設管路内に挿入することで該既設管路を更生する更生管であって、管本体と、前記管本体の一方の端部に形成された挿入部と、前記管本体の他方の端部に形成された嵌合部と、を有し、前記挿入部は、管本体の外径よりも小さい外径を有する外周面と、外周面に形成され管本体の外径よりも小さく外周面の外径よりも大きい外径を有する突起と、を有して構成されており、前記嵌合部は、前記挿入部の突起の外径と等しいか僅かに大きい内径を有する内周面と、管本体の外径よりも小さい外径を有する段部と、内周面に形成され該内周面の内径よりも小さく挿入部の外周面の外径と等しいか僅かに大きい内径を有する突起と、管本体の軸方向に沿って形成され該嵌合部の径方向への変形を許容するための複数のスリットと、を有して構成されており、一方の更生管の嵌合部に他方の更生管の挿入部を挿入する際に、嵌合部が径方向へ変形することで円滑に接続し得るようにしたものである。
【0012】
上記更生管に於いて、前記嵌合部に形成されたスリットに止水材が充填されていることが好ましい。
【0013】
また、上記何れかの更生管に於いて、前記嵌合部の外周に形成された段部は、更生管を接続した後配置されるリング状の拘束部材の寸法に対応した寸法を有することが好ましく、前記リング状の拘束部材は、縮径可能に構成された帯状の部材、又は管本体に摺動可能に配置された円筒状の部材であることがより好ましい。
【0014】
また、本発明に係る既設管路の更生方法は、上記何れかの更生管を用いて既設管路を更生するための方法であって、更生すべき既設管路に設けた一方のマンホールから他方のマンホールに向けて該既設管路の内周面に、弾性を有してスリーブ状又はシート状に形成され該既設管路の内周面に配置したときに内径が更生管の外径よりも小さくなる弾性を有する緩衝材を配置した後、何れかのマンホールにジャッキを設置し、該ジャッキに一方の端部に前記緩衝材を押し広げるための先頭体を取り付けた第1番目の更生管を設置した後、ジャッキを駆動して既設管路内に挿通し、第1番目の更生管の挿通が終了した後、ジャッキに第2番目の更生管を設置して該第2番目の更生管の端部を第1番目の更生管の端部に挿入して挿入部を嵌合部に嵌合させると共に、更生管の嵌合部の外周面にリング状の拘束部材を配置することで、該嵌合部を径方向の変形不能に拘束し、その後、ジャッキを駆動して第1番目の更生管と第2番目の更生管を既設管路内に挿入し、上記作業を第1番目の更生管が他方のマンホールに到達するまで繰り返し、第1番目の更生管が他方のマンホールに到達した後、先頭体を取り外すと共に管口処理してマンホールと更生管を一体化することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る更生管では、一方の端部に挿入部が、他方の端部に嵌合部が形成されているので、直列に配列した一方の更生管の挿入部を他方の更生管の嵌合部に嵌合させる、という簡単な作業で確実な接続を実現することができる。
【0016】
即ち、挿入部は、管本体よりも小さい外径と、外周面に突起を有している。また、嵌合部は、挿入部の外径と略等しい内径と、管本体よりも小さい外径を有する段部と、内周面に形成された突起と、嵌合部の径方向への変形を許容するための複数のスリットと、を有している。
【0017】
このため、挿入部を嵌合部に嵌合させる際に、更生管を回転させる必要がなく、単に更生管に推力を作用させて押し込むという単純な作業で接続することができる。そして、挿入部の突起が嵌合部の内周面と接触しつつ押し込まれることで、嵌合部は径方向に拡径するように変形して円滑に嵌合することができる。
【0018】
また、嵌合部に形成されたスリットに止水材が充填されているため、該嵌合部に挿入部を嵌合させたとき、両者の間隙を止水材によって埋めることができ、止水性を確保することができる。
【0019】
また、嵌合部の外周に形成された段部が、更生管を接続した後配置されるリング状の拘束部材の寸法に対応した寸法を有することで、直列に配列した更生管を接続した後、該段部に拘束部材を配置しても、該拘束部材が外周面に突出することがない。
【0020】
本発明に係る管路の更生方法では、更生すべき既設管路の内周面に緩衝材を配置した後、一方のマンホールの内部で更生管を他方のマンホールに向けて推進し、且つ推進された更生管の嵌合部或いは挿入部に新たな厚生管の挿入部或いは嵌合部を接続しつつ推進することで、既設管路を更生することができる。
【0021】
特に、嵌合部に挿入部を嵌合させた後、嵌合部の外周に形成された段部にリング状の拘束部材を配置し、この拘束部材によって嵌合部を径方向の変形不能に拘束することで、更生管に引き抜き方向の力が作用した場合でも、挿入部と嵌合部に形成された突起どうしが接触して抜けることがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】更生管の構成を説明する図である。
図2】挿入部の構成を説明する図である。
図3】挿入部の構成を説明する斜視図である。
図4】嵌合部の構成を説明する図である。
図5】嵌合部の構成を説明する斜視図である。
図6】更生管を接続したときの状態を説明する図である。
図7】管路の更生方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る更生管について説明する。本発明の更生管は劣化した既設管路(以下「既設管」という)の内部に挿入されて該既設管を更生するための管であり、複数の更生管を直列に配列して接続する作業を、推力を付与して単に押し込むことで行えるようにしたものである。このため、マンホールの内部で更生管を回転させるような作業をなくし、容易に且つ確実な接続作業を実現することが可能となる。
【0024】
即ち、直列に配列した更生管を、一方の更生管の挿入部を他方の更生管の嵌合に押し込む際に突起どうしが対向したとき、複数のスリットが形成された嵌合部が拡径方向に変形して容易に突起どうしが互いに乗り越えて接続することが可能である。更に、更生管どうしを接続した後、両者の接続部位である嵌合部の外周を拘束部材によって拘束することで、接続された更生管に引き抜き方向の力が作用して突起どうしが接触しても、嵌合部の拡径方向への変形を拘束することで、更生管の離脱を防ぐことが可能となる。
【0025】
更生管の材質は特に限定するものではなく、従来から採用されている塩化ビニルやポリエチレン等の合成樹脂を原料としたものであって良い。しかし、更生管が射出成型によって製造し得る場合、特に有利である。
【0026】
また、更生管の口径や長さ等の寸法は限定するものではなく、更生すべき既設管の口径やマンホールの内径等の寸法条件に応じて適宜設定されることが好ましい。
【0027】
更生すべき既設管が真直である保障はない。このため、直列に配列した更生管を接続して既設管の内部に挿入したとき、接続された更生管に作用する曲げ方向の力によって接続部位が離脱してはならない。従って、挿入部及び嵌合部は、曲げ方向の力が作用した場合でも嵌合状態を保持し得る長さを有することが必要である。
【0028】
挿入部の外周面に形成された突起及び嵌合部の内周面に形成された突起は、接続された更生管に引き抜き方向の力が作用したとき、互いに係合して該引き抜き力に対抗し、離脱を阻止するものである。このため、挿入部及び嵌合部の突起は、夫々引き抜き方向の力が作用したとき、この力の作用に伴って互いに係合し得る位置と、作用する引抜力に対抗し得る高さを持って形成される。
【0029】
このため、挿入部に形成された突起と嵌合部に形成された突起は、一方の更生管の挿入部が他方の更生管の嵌合部に嵌合されたとき、一方の更生管の挿入部に形成された突起が他方の更生管の嵌合部に形成された突起の当接面側の谷部に位置し得るように形成されている。従って、接続された更生管に引き抜き方向の力が作用したとき、一方の更生管の挿入部に形成された突起が他方の更生管の嵌合部に形成された突起と係合して前記力に対抗することが可能である。
【0030】
挿入部は管本体の一方の端部から円筒状に突出して形成され、嵌合部に嵌合して先端面が該嵌合部の基部に当接し、一方の更生管に付与された推力を他方の更生管に伝達する機能を有する。このため、挿入部の肉厚は嵌合部の肉厚に比較して充分に大きいことが好ましく、且つ長さは嵌合部の長さよりも僅かに大きいことが好ましい。このように、挿入部の方が嵌合部よりも、肉厚が大きく、且つ長さが大きいことによって、一方の更生管に付与された推力は挿入部を介して他方の更生管に伝えられ、嵌合部に座屈などが生じる虞がない。
【0031】
また、挿入部の外周面の全周に形成する突起の数は限定するものではなく、少なくとも一つ或いは二つあることで良い。また、突起の高さも特に限定するものではなく、嵌合部に形成された突起の高さとの関係で適度な高さであれば良い。特に、挿入部及び嵌合部に形成された突起は、挿入部を嵌合部に挿入する際の力、或いは引抜力が作用するため、これらの力に対抗し得る高さであることが必要である。
【0032】
嵌合部は管本体の他方の端部から円筒状に突出して形成され、挿入部が挿入される際に突起の侵入に応じて径方向に変形(太さが大きくなるように変形、拡径)して円滑な挿入を実現するものである。また、嵌合部の内周面に形成された突起の数や位置は限定するものではなく、前述したように、挿入部の外周面に形成された突起の数に対応し、且つ挿入部が嵌合した後引き抜き力が作用したとき、互いに係合して作用する力に対抗し得る位置及び高さに設定されている。
【0033】
嵌合部に形成されたスリットは、該嵌合部の径方向への変形(拡径)が容易に行えるようにするためのものであり、管本体の軸方向(嵌合部の長手方向)に複数形成されている。特に、各スリットは嵌合部の端面にまで形成されることはなく、該嵌合部は円筒状の突起としての形状を保持している。スリットの数や寸法は特に限定するものではなく、更生管の原料や嵌合部の肉厚等の条件に応じて適宜設定することが好ましい。このように、嵌合部にスリットを形成することによって、嵌合部は曲げ剛性が小さくなり、隣接するスリットの間の部分は変形しやすくなるため、挿入部が挿入されるのに応じて容易に拡径することが可能となる。
【0034】
嵌合部の外周面には管本体の外径よりも小さい外径を持った段部が形成されている。この段部は、挿入部を嵌合した後、リング状の拘束部材を配置することで、接続された更生管に引き抜き力が作用したときに生じる嵌合部の径方向への変形を不能とするためのものである。このため、段部を更生する嵌合部の外径は、拘束部材の厚さ方向の寸法に対応させて設定することで、接続した更生管を推進する際に、拘束部材が突出して更生作業に支障をきたすことがないようにすることが必要である。
【0035】
前述したように拘束部材は、2本の更生管を接続した後、嵌合部の外周面に形成された段部に配置されて該嵌合部の拡径方向への変形を不能とするように拘束するものである。このため、拘束部材としては、この機能を有するものであれば良く、厚さが薄いものであることが好ましい。このような拘束部材としては、例えばホースバンドのように締めたり緩めたりすることが可能なものを利用することが可能である。また、内径が嵌合部の外径と等しく、且つ外径が管本体の外径に等しい円筒状の金属パイプを用いることも可能である。これらの拘束部材は、更生管を接続するのに先立って該更生管の外周部分の何れかに取り付けておくことが必要である。
【0036】
また、強い収縮力を有するリング状のゴム輪を用いることも可能である。このゴム輪を更生管を接続するのに先立って該更生管の外周部分の何れかに取り付けておき、2本の更生管を接続した後、嵌合部の外周面に形成された段部まで滑らせることで、嵌合部の拡径方向への変形を不能とするように拘束することが可能である。ゴム輪を更生管の表面に沿って滑らせるには、両者の間に潤滑性を有する油成分を塗布したり、両者の間に低摩擦フィルムを配置しておくことが好ましい。
【0037】
更に、拘束部材として強固な接着性を保持したテープを用いることも可能である。この場合、2本の更生管を接続した後、嵌合部の外周面に形成された段部にこのテープを複数回巻きつけて強固に接着することで、嵌合部の拡径方向への変形を不能とするように拘束することが可能である。
【0038】
次に、本実施例に係る更生管について図1図6により説明する。図に示す更生管Aは、管本体1の一方側に挿入部2が形成され、他方側に嵌合部3が形成されている。そして、2本の更生管Aを挿入部2と嵌合部3が対向するようにして直列に配列し、挿入部2を嵌合部3に押し込んで嵌合した後、嵌合部3の外周に拘束部材4を配置することで、確実な接続を実現することが可能である。
【0039】
尚、本実施例では、拘束部材4として、外径が管本体1の外径と略等しく、肉厚が約1mmのステンレスパイプを用いており、該拘束部材4を挿入部2側の管本体1に形成した段部1aに摺動可能に取り付けている。そして、2本の更生管Aを接続した後、図6に示すように嵌合部3の外周まで摺動させて該嵌合部3の拡径方向への変形が不能となるように拘束している。
【0040】
本実施例に於いて、更生管Aはポリエチレン(PE)に補強材を加えた組成物を原料とし、射出成型によって製造されている。この更生管AはPEのみを原料とする管と比較して充分な硬度と強度を有しており、既設管を更生したときに自立管としての機能を発揮することが可能である。また、更生管Aは、長さが約600mm、管本体1の外径が約250mm、内径が約225mmに設定されており、肉厚は約12mmに設定されている。
【0041】
尚、前述したように、本実施例に於ける原料や寸法は限定するものではなく、他の原料による管、及び他の寸法を持った管であっても良いことは当然である。
【0042】
管本体1は内周面1bが挿入部2の端面2cまで形成されており、挿入部2側の外周面1cに拘束部材4を収容するための段部1aが形成されている。段部1aの管本体1の長手方向に対する寸法は限定するものではなく、拘束部材4を確実に収容し得る寸法であれば良い。
【0043】
本実施例では、拘束部材4として肉厚が約1mmのステンレスパイプを用いているため、段部1aの段差はこの肉厚に対応して約1mm〜約1.5mm程度で形成されている。また、段部1aは拘束部材4の長さよりも大きく形成されており、どの程度大きいかは限定するものではない。特に、段差1aは挿入部2に向けて僅かなテーパを設けておくことが好ましい。そして、予め段部1aに拘束部材4となるステンレスパイプを取り付けた後、接着剤によって簡単に固定しておくことが好ましい。
【0044】
挿入部2は、図2図3に示すように、管本体1の内周面1bを共有して円筒状に構成されており、長さは約10cmに設定されている。挿入部2の長さは更生管Aの太さに応じて約10cm〜約15cmの範囲に設定されている。特に、挿入部2は付与された推力を確実に伝達し得るように、肉厚は管本体1の肉厚の約2/3程度に設定されている。このため、挿入部2の外周面2aと管本体1の外周面1cとの間には、管本体1の肉厚の約1/3程度の段差が形成されている。
【0045】
挿入部2の外周面2aには全周にわたって2条の突起2bが形成され、該突起2bに隣接して谷部が形成されている。外周面2aに於ける突起2bの位置は、後述する嵌合部3の内周面3aに形成された突起3dの位置との関係で適宜設定される。尚、突起2bは必ずしも外周面2aの全周にわたって連続して形成されている必要はなく、断続的に形成されたものであって良い。また、突起2bは螺旋状に形成されたものであっても良い。
【0046】
特に、突起2bの高さは嵌合部3の変形のし易さに応じて適宜設定することが可能である。本実施例では突起2bの高さ(突起2bの頂部と谷部との差)は約2.5mmに設定されている。しかし、突起2bの高さは前記値に限定するものではなく、更生管Aの太さに応じて約2mm〜約8mmの範囲に設定されている。
【0047】
挿入部2は対向する更生管Aの嵌合部3に嵌合して端面2cが嵌合部3の当接面3bに当接して推力を伝達する。このため、嵌合部3に対する挿入が容易になるように、外周面2bの端面2c側には面取部2dが形成されている。
【0048】
嵌合部3は、図4図5に示すように、挿入部2の外径と略等しい内径と、管本体1の外径よりも小さい外径を有する段部3cと、を有する円筒状に構成されており、長さは挿入部2の長さよりも僅かに短く形成されている。嵌合部3の肉厚は管本体1の肉厚の約1/3から段部3cの寸法を差し引いた寸法に設定されている。
【0049】
管本体1の内周面1bと嵌合部3の内周面3aとの間には挿入部2の肉厚と略等しい段差が形成され、該段差の端面が挿入部2の端面2cと当接して推力を受ける当接面3bとして構成されている。
【0050】
嵌合部3の外周に形成された段部3cは拘束部材4を受け入れるためのものであり、該拘束部材4の厚さ寸法に応じて設定されている。本実施例では、前述したように肉厚が約1mmのステンレスパイプを利用しているため、管本体1に形成された段部1aと同様に約1mm〜約1.5mmに設定されている。しかし、拘束部材4としてホースバンド状の部材を用いる場合、或いは前記肉厚と異なる肉厚のパイプを用いる場合、更に、ゴム輪やテープを用いるような場合、前記寸法には限定されない。
【0051】
嵌合部3の内周面3aには2条の突起3dが形成され、該突起3dに隣接して谷部が形成されている。各突起3dに隣接した谷部は、挿入部2を嵌合し該挿入部2の端面2cが当接面3bと当接したとき、該挿入部2に形成された突起2bが嵌合部3が変形して拡径することで、突起3dを乗り越えて対向し得る位置に形成されている。また、内周面3aの端面3f側には、挿入部2を円滑に挿入し得るように面取部3gが形成されている。
【0052】
突起3d及び突起2bの高さ(各突起の頂部と谷部との差)は互いに等しく設定されており、挿入部2が嵌合部3に挿入されたとき、突起3dは突起2bの谷部に、突起2bは突起3dの谷部に嵌合する。このようにして突起と谷部が嵌合したとき、突起3dと突起2bの間には隙間が形成されることが好ましい。このように隙間が形成されることで、複数の更生管Aを連続させたときに屈曲する自由度を生じさせることが可能である。
【0053】
また、突起3d及び突起2bの形状は、両側面と天面とが直角に交差する角形である必要はなく、両側面と天面とが鈍角で交叉する台形状、一方の面(挿入部2を挿入する際に対向する面)が天面に鈍角で交叉する鋸刃状、等の形状であって良い。しかし、側面と天面とが交差する角部は僅かなテーパ面とするか、R面として挿入部3の挿入を容易にすることが好ましい。
【0054】
嵌合部3の長手方向には、該嵌合部3の端面3fまで貫通することのない複数のスリット3eが形成されている。従って、端面3f側の端部は円筒状の形状を保持している。スリット3eは嵌合部3の曲げ剛性を小さくして拡径方向又は縮径方向の変形をし易くするために形成されるものである。このため、スリット3eの数や幅寸法等の条件は限定するものではなく、嵌合部3の変形のし易さに対応させて適宜設定される。
【0055】
本実施例では、スリット3eは嵌合部3の全周にわたって8本形成されており、各スリット3eは幅約3mmに設定されている。本件発明者の知見では、スリット3eの幅寸法と本数の積は、嵌合部3の周長の約10%〜約30%程度の範囲であることが好ましい。しかし、この比率に限定するものではないことは当然である。
【0056】
各スリット3eには止水材5が充填されている。止水材5としては特に限定するものではなく、通常使用されている止水材を用いることが可能である。このように、スリット3eに予め止水材5を充填しておくことで、嵌合部3に挿入部2を挿入すると共に、段部3cに拘束部材4を配置したとき、該嵌合部3の内周面3aと挿入部2の外周面2aとで構成される間隙、及び嵌合部3の段部3cと拘束部材4とで構成される間隙を止水材5によって止水することが可能となる。
【0057】
尚、止水材はスリット3eに充填するもの以外に、嵌合部3の内周面3a及び挿入部2の外周面2aの両面に塗布しておくことで、スリット3eに充填した止水材に加えてより確実な止水が可能となり好ましい。また、嵌合部3の外周面となる段部3cには採用する拘束部材4に対応させて接着材又は止水材を塗布しておくことで、拘束部材4による拘束を確実に実現でき、或いは確実な止水が可能となり好ましい。
【0058】
拘束部材4は、嵌合部3の外周に形成された段部3cに配置され、該嵌合部3が径方向に変形するのを拘束するための部材である。従って、拘束部材4としては嵌合部3の径方向への変形が不能となるように拘束し得るものであれば採用することが可能である。そして、このような拘束部材4としては、ねじを利用して締め付けることで縮径可能なホースバンド状に構成されたもの、パイプ状に構成されたもの、ゴム輪状に構成されたもの、強固な接着性を有するテープ状のもの、等があり、いずれも好ましく採用することが可能である。
【0059】
本実施例では、前述したように、拘束部材4としてステンレスパイプを採用しており、予め該ステンレスパイプを管本体1に於ける挿入部2側に形成した段部1aに対し摺動可能に収容している。そして、段部1aの管本体1側に押し込むことで、テーパ状に形成された段部1aに食い込ませることで一時的に固定している。
【0060】
例えば、拘束部材4としてホースバンド状に構成されたものを採用する場合、ホースバンドを緩めて径を管本体1の外径よりも大きくした状態で取り付けておくことで、管本体1の段部1aを形成する必要がない。また、ゴム輪或いはテープを採用する場合も同様に段部1aを必要としない。
【0061】
次に、上記の如く構成された更生管Aを接続する手順について説明する。先ず、一方の更生管Aの管本体1の段部1aにステンレスパイプからなる拘束部材4を取り付けておき、該更生管Aの挿入部2と他方の更生管Aの嵌合部3を対向させる。この状態で挿入部2を嵌合部3に挿入すると、突起2bが嵌合部3の内周面3a、突起3dと次々に接触し、嵌合部3には拡径するような力が作用する。嵌合部3は作用する力に応じて、スリット3eによって分割された部分が拡径するように変形し、挿入部2が挿入される。
【0062】
一方の更生管Aの挿入部2が他方の更生管Aの嵌合部3に嵌合したとき、該挿入部2の端面2cは嵌合部3の当接面3bに対して確実に当接し、径方向に変形した嵌合部3は元の形状に復帰する。挿入部2が嵌合部3に嵌合したとき、突起2bは突起3dを乗り越えて他方の更生管Aの当接面3b側に位置し、且つ突起2b、3dは互いに対向する面と接触している。
【0063】
一方の更生管Aの挿入部2が他方の更生管Aの嵌合部3に嵌合した後、一方の更生管Aの管本体1の段部1aに取り付けた拘束部材4を摺動させ、図6に示すように、他方の更生管Aの嵌合部3の段部3cに移動させる。このとき、嵌合部3の段部3cには接着材を塗布しておくことが好ましい。これにより、嵌合部3は拡径する方向への変形不能に拘束される。
【0064】
このため、接続された更生管Aに引き抜き方向の力が作用し、一方の更生管Aの挿入部2に形成された突起2bが他方の更生管Aの嵌合部3に形成された突起3dと係合しても、嵌合部3が拡径方向に変形することがない。従って、接続された更生管Aが離脱することがなく、作用する引き抜き力に対し、互いに係合した各突起2b、3dによって対抗することが可能である。
【0065】
次に、本発明に係る更生方法について説明する。本発明に係る更生方法は、既設管の内周面に緩衝材を配置した後、この緩衝材の内部に複数の更生管Aを接続しつつ挿通することで構成するようにしたものである。
【0066】
本発明に於いて既設管の口径は限定するものではなく、作業員が中に入ることのできない小口径の既設管から、作業員が中に入って作業することが許される大口径の既設管まで適用することが可能である。特に、緩衝材を既設管の内周面に配置する際の作業性の面からみて、200mm〜800mm程度の小口径を有する既設管に適用することが有利である。
【0067】
また、既設管の劣化状態を問うものではなく、如何なる劣化状態であっても対応することが可能である。即ち、既設管の劣化状態が、内周面の腐食やひび割れの発生、或いは管の継ぎ目に生じた管どうしのずれや段差等を含むものであって良く、管路の強度が低下したり、内部に地下水が浸入して支障が生じるような場合を含む。しかし、管どうしのずれや段差が大きい場合、管路の更生に先立って、ずれた部分を埋めたり、段差を滑らかにするような前処理が必要となる。
【0068】
また、「管路の内周面に弾性を有する緩衝材を配置」するとは、緩衝材が既設管の内周面に固定されているか否か、を問うものではなく、更生管Aを挿入したとき、該更生管Aと既設管の内周面との間に配置されていれば良い。従って、更生管Aの挿入に先立って、緩衝材を既設管の内周面に固定しておく場合と、緩衝材を既設管の内周面に固定することなく単に既設管に内部に通しておくだけの場合とがある。
【0069】
既設管の内周面に配置する緩衝材は弾力性を有する緩衝性能を発揮し得るものであれば良く、材質を限定するものではない。このような緩衝材としては、合成繊維や天然繊維或いは無機質繊維からなる織布や不織布があり、これらの中から選択的に採用することが可能である。また、緩衝材としては織布や不織布に限定されるものではなく、弾力性を有する合成樹脂の発泡体を採用することも可能である。
【0070】
緩衝材の形状は特に限定するものではなく、シート状のものやスリーブ状のものを用いることが可能である。しかし、シート状の緩衝材を用いるか、スリーブ状の緩衝材を用いるかによって既設管の内周面に配置する際の施工法は異なるため、既設管の径を含む条件に応じて適宜選択することが好ましい。
【0071】
例えば、シート状の緩衝材を既設管の内周面に配置する場合、既設管の内周面に緩衝材を沿わせておき、接着或いは釘等の手段によって張り付けておくことが必要となる。このような作業は、既設管の中に作業員が入って行うこととなり、大口径の既設管を対象としたときに有利である。
【0072】
スリーブ状の緩衝材を既設管の内周面に配置する場合、予め既設管の径に対応させた径を有する緩衝材のスリーブを平たく畳んでおき、この緩衝材を既設管の内部に通した後、内部に圧縮空気を供給して膨らませることで既設管の内周面に配置することが可能である。また、既設管の内部にスリーブ状の緩衝材を平たく畳んだ状態で通しておき、この緩衝材の内部に直接新管を挿入し、挿入した新管を推進することによって緩衝材を既設管の内周面に押し付けて配置することも可能である。
【0073】
上記の如く、既設管の内周面に緩衝材を配置する際の施工法や、緩衝材の形状は限定することなく、種々のものを選択して採用することが可能である。特に、既設管に対する施工の容易さを考慮すると、大口径の既設管に対してはシート状の緩衝材を用い、小口径の既設管に対してはスリーブ状の緩衝材を用いることが好ましい。何れにしても緩衝材は、予め既設管の内径に対応した最適なものを選択して採用することが好ましい。
【0074】
緩衝材の厚さは既設管の径や劣化の状態に応じて異なるものの、自由状態で約10mm〜約30mm程度であることが好ましく、この緩衝材に更生管Aを挿入したときに約30%〜約80%程度の圧縮率で圧縮することが好ましい。しかし、既設管や更生管AはJIS規格を含む規格によって径が決まっており、目的の既設管の径とこの既設管を更生する更生管Aの径に対応して圧縮率を想定した厚さを持った緩衝材を選択することが好ましい。
【0075】
例えば、更生すべき管路に不陸が生じていたり、既設管どうしの間に抜けなどに起因する寸法の大きい段差が生じているような場合、緩衝材が上記厚さよりも薄いと更生管Aの挿入が困難になる虞がある。また、緩衝材が上記厚さよりも厚くなると、既設管と更生管Aとの隙間を大きくすることになり、更生後の管路の断面積が小さくなるという問題が生じ、更に、緩衝材の内部に新管を挿入する際に必要な推進力も大きくなるという問題が生じる。
【0076】
緩衝材を繊維や発泡体によって構成した場合、既設管に生じたひび割れや管どうしのずれた部分から地下水と土砂が浸入しても、土砂によって緩衝材が目詰まりを起こして、浸入した地下水が他の部位まで浸透するのを防ぐことが可能であるため好ましい。
【0077】
また、既設管の内周面に配置された緩衝材の内部に更生管Aを挿入する際に、更生管Aの中心位置と既設管の中心とにずれが生じている場合、更生管Aの挿入の際に生じる緩衝材の圧縮の度合いが不均一になる。このため、緩衝材の更生管Aに対する反力が不均一となり、この結果、更生管Aの全外周にわたって生じる摩擦抵抗が不均一となるため、全体の摩擦抵抗が大きくなる。特に、緩衝材が圧縮されて薄くなった部分では既設管の凹凸や不陸の影響を受け易くなり、大きな抵抗が生じる虞がある。従って、円滑な挿入作業を行うのに支障をきたす虞がある。
【0078】
このため、緩衝材の内部に更生管Aを挿入する場合、既設管と更生管の中心を略一致させることによって、発生する摩擦抵抗の平均化をはかることが可能であり、これにより円滑な挿入作業を実現することが可能となる。例えば、緩衝材の内部に、更生管Aの中心位置が既設管の中心と略一致するように支持する支持部材を設け、該支持部材によって更生管Aを支持することで、既設管と更生管Aの中心を略一致させることが可能である。
【0079】
上記の如く、緩衝材の内部に設けた支持部材によって更生管Aを支持して中心位置を既設管の中心位置を略一致させることで、更生管Aの挿入に伴って生じる緩衝材の変形量(圧縮される厚さ)は全周にわたって略均一となる。このため、更生管Aの挿入に伴って生じる摩擦抵抗、及び緩衝材の圧縮変形に必要な抵抗も全周にわたって略均一となり、円滑な挿入作業を実現することが可能となる。
【0080】
次に、本実施例に係る更生方法について図7を用いて説明する。図に示す既設管Bは下水道用の管路であり、マンホール11から図示しない他方のマンホールの間に複数のヒューム管を連続させて敷設されている。既設管Bの内周面には緩衝材12が配置されている。
【0081】
緩衝材12はポリエステル繊維からなる不織布(フェルト)を既設管Bの内径に対応させたスリーブ状に形成されている。このスリーブを、引込式又は反転式でマンホール11から隣接する他方のマンホールまで挿入した後、圧縮空気を供給して膨らませることで既設管Bの内周面に圧接させ、この圧接状態を保持させている。この状態では、緩衝材は自由な状態を保持しており、厚さは略素材の厚さ(例えば30mm)を保持している。
【0082】
尚、前述したように、緩衝材12がシート状に形成されている場合、作業員が既設管Bの内部に入り込んで該既設管Bの内周面に緩衝材12を沿わせて接着或いは釘等によって張り付けておく。
【0083】
既設管Bの内周面に配置された緩衝材12の内部であって下方には、一対のレール13が一方のマンホール11から他方のマンホールにむけて、且つ既設管Bの全長にわたって配置されている。レール13は、ステンレス鋼や硬質合成樹脂からなるアングル状の形材として構成されており、更生管Aを載置したとき、既設管Bの中心と更生管Aの中心が略一致し得るような寸法を有している。
【0084】
上記の如く配置されたレール13は、緩衝材12の内部に更生管Aを挿入する際に、該更生管Aと滑り接触しつつ荷重を支持することで、摩擦抵抗を軽減する減摩部材としての機能を発揮すると共に、推進方向を案内するガイド部材としての機能も有している。
【0085】
本実施例では、マンホール11には、更生管Aを推進するジャッキ15が設置されている。ジャッキ15は、更生管Aを載置して推進方向を案内するベッド15aと、ベッド15aに載置された更生管Aを推進する押輪15bと、押輪15bを往復駆動する駆動シリンダー15cと、を有して構成されている。押輪15bは更生管Aの挿入部2の外径よりも小さい外径を有しており、更生管Aを推進する際に嵌合部3の当接面3bに対し円滑に当接し得るような形状を有している。そして、ジャッキ15はマンホール11の底盤11aに設置され、更生管Aの推進時に発生する反力を支持し得るように構成されている。
【0086】
更生管Aを緩衝材12の内部に推進するに際し、先頭の更生管Aの先端には、外周の径が更生管Aよりも僅かに大きく設定された先頭体16が取り付けられている。この先頭体16は、ジャッキ15によって更生管Aを推進する際に、緩衝材12を既設管Bの内周面に押圧して拡径する機能を有する。
【0087】
次に、本実施例に係る更生方法の手順について説明する。先ず、マンホール11に設置されたジャッキ15に挿入部2を先頭にして先頭の更生管Aを載置し、この更生管Aの挿入部2に先頭体16を取り付ける。次いで、ジャッキ15の駆動シリンダー15cを駆動して押輪15bを前進させることで、更生管Aを推進する。この推進に伴って、先頭体16は緩衝材12を既設管Bの内周面に圧接させて厚さを減少させる。
【0088】
推進された更生管Aはジャッキ15のベッド15aからレール13に移り、該レール13に載置された状態で推進される。このため、更生管Aの重量の一部はレール13に支持されることとなり、該更生管Aの重量の全てが緩衝材12に直接作用することがない。従って、更生管Aと緩衝材12の接触部分に作用する荷重が小さくなり、推進に伴って生じる摩擦抵抗が軽減される。
【0089】
1本の更生管Aの推進が終了すると、押輪15bを元の位置に復帰させた後、ベッド15aに挿入部2を既に推進された更生管Aに対向させて新たな更生管Aを載置し、既に推進された更生管Aに向けて推進する。新たな更生管Aの推進に伴って、前述したように該構成管Aの挿入部2が既に推進された更生管Aの嵌合部3に嵌合し、端面2cが当接面3bと当接する。更なる新たな更生管Aの推進により、付与された推力は管本体1、挿入部2、嵌合部3を経て先頭体16に連なる更生管Aを推進する。
【0090】
上記の如くして複数の更生管Aを連続させて推進し、先頭体16が隣接するマンホールに到着したとき、この先頭体16を離脱させると共に、マンホール11及び他方のマンホールに露出した更生管Aの端末処理を行うことで、これらのマンホール11及び他方のマンホールの間に敷設されている既設管Bを更生管Aによって更生することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る更生管及び管路の更生方法は、下水道用の既設管のみならず、地中に敷設され、劣化したときに内部に地下水が浸入する虞のある既設管に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
A 更生管
B 既設管
1 管本体
1a 段部
1b 内周面
1c 外周面
2 挿入部
2a 外周面
2b 突起
2c 端面
2d 面取部
3 嵌合部
3a 内周面
3b 当接面
3c 段部
3d 突起
3e スリット
3f 端面
3g 面取部
4 拘束部材
5 止水材
11 マンホール
11a 底盤
12 緩衝材
13 レール
15 ジャッキ
15a ベッド
15b 押輪
15c 駆動シリンダー
16 先頭体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7