(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各遊星ローラの前記第1接触点において、前記中心軸を含む面による前記各遊星ローラの外周面の断面形状は凸である、または、前記インターナルリングの前記内周面の断面形状は凸である、請求項1ないし3のいずれかに記載のトラクション動力伝達装置。
前記各遊星ローラの前記第2接触点において、前記中心軸を含む面による前記各遊星ローラの外周面の断面形状は凸である、または、前記太陽ローラの外周面の断面形状は凸である、請求項1ないし4のいずれかに記載のトラクション動力伝達装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の例示的な第1の実施形態に係るトラクション動力伝達装置1の構成を示す縦断面図である。
図1では、トラクション動力伝達装置1の中心軸J1を含む面による断面を示す。トラクション動力伝達装置1は、例えば、精密加工機または3D測定装置等において減速機または増速機として利用される。
【0010】
トラクション動力伝達装置1は、ケーシング2と、第1回転組立体3と、第2回転組立体4と、インターナルリング5と、を含む。ケーシング2は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。ケーシング2は、第1ケーシング21と、第2ケーシング22と、を含む。第1ケーシング21は、
図1中における上下方向を向く中心軸J1を中心とする略円筒状である。第2ケーシング22は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。以下の説明では、便宜上、中心軸J1に沿って第1ケーシング21側を上側、第2ケーシング22側を下側として説明するが、中心軸J1の向きは必ずしも重力方向と一致する必要はない。また、以下の説明では、中心軸J1が向く方向である上下方向を、「軸方向」とも呼ぶ。
【0011】
第1ケーシング21は、第2ケーシング22の上側に配置され、複数のボルト23により第2ケーシング22に接続される。複数のボルト23は、中心軸J1を中心とする周方向に、略等角度間隔にて配置される。なお、
図1では、複数のボルト23のうち、1つのボルト23のみを図示する。また、以下の説明では、中心軸J1を中心とする周方向を、単に「周方向」という。
【0012】
第1回転組立体3は、第1回転軸部材31と、第1接続部32と、太陽ローラ33と、を含む。第1回転軸部材31、第1接続部32および太陽ローラ33はそれぞれ、中心軸J1が中心に位置する略円筒状または略円柱状である。換言すれば、第1回転軸部材31、第1接続部32および太陽ローラ33は同軸上に配置される。
【0013】
第1回転軸部材31は、第1ケーシング21の上面から上方に向かってケーシング2の外側へと突出する。第1接続部32は、第1回転軸部材31の下端部に接続される。太陽ローラ33は、第1回転軸部材31の下端部に接続される。第1接続部32および太陽ローラ33は、ケーシング2の内部に配置される。すなわち、太陽ローラ33は、ケーシング2内にて第1接続部32を介して第1回転軸部材31に間接的に接続される。なお、太陽ローラ33は、第1回転軸部材31に直接的に接続されてもよく、第1回転軸部材31と一繋がりの部材であってもよい。
【0014】
第1接続部32の外周面と第1ケーシング21との間には、第1軸受機構24が設けられる。第1軸受機構24は、第1接続部32に対して、中心軸J1を中心とする径方向の外側に位置する。以下の説明では、中心軸J1を中心とする径方向を、単に「径方向」という。第1接続部32は、第1軸受機構24を介して、第1ケーシング21に対して回転可能に支持される。これにより、第1回転組立体3が、中心軸J1を中心としてケーシング2により回転可能に支持される。第1軸受機構24は、例えば、ボールベアリングである。第1軸受機構24として、ボールベアリング以外の様々な軸受機構が利用されてよい。
【0015】
第2回転組立体4は、第2回転軸部材41と、遊星キャリア42と、複数の遊星軸部材43と、複数の遊星ローラ44と、を含む。第2回転軸部材41は、中心軸J1が中心に位置する略円筒状または略円柱状である。第2回転軸部材41は、第2ケーシング22の下面から下方に向かってケーシング2の外側へと突出する。換言すれば、第2回転軸部材41は、軸方向に関して第1回転軸部材31とは反対側にてケーシング2から突出する。遊星キャリア42、複数の遊星軸部材43、および、複数の遊星ローラ44は、ケーシング2内に配置される。
【0016】
遊星キャリア42は、第2接続部421と、遊星支持部422と、を含む。第2接続部421は、中心軸J1が中心に位置する略円筒状または略円柱状である。遊星支持部422は、中心軸J1が中心に位置する略円板状である。第2接続部421と遊星支持部422とは、一繋がりの部材である。遊星支持部422の上面は、太陽ローラ33の先端部である下端部と対向する。第2接続部421は、遊星支持部422の下側に位置する。遊星キャリア42の第2接続部421の下端部には、第2回転軸部材41が接続される。第2回転軸部材41および遊星キャリア42は、中心軸J1を中心として同軸上に配置される。
【0017】
第2接続部421の外周面と第2ケーシング22との間、および、遊星支持部422の外周面と第2ケーシング22との間には、第2軸受機構25が設けられる。第2軸受機構25は、遊星キャリア42の径方向外側に位置する。遊星キャリア42は、第2軸受機構25を介して、第2ケーシング22に対して回転可能に支持される。これにより、第2回転組立体4が、中心軸J1を中心としてケーシング2により回転可能に支持される。第2軸受機構25は、例えば、ボールベアリングである。第2軸受機構25として、ボールベアリング以外の様々な軸受機構が利用されてよい。
【0018】
遊星キャリア42の遊星支持部422は、複数の遊星軸部材43を下方から支持する。換言すれば、複数の遊星軸部材43は、遊星支持部422の上面から上方に向かって突出する。複数の遊星軸部材43は、太陽ローラ33の径方向外側にて、周方向に等角度間隔に配置される。
図1に示す例では、3つの遊星軸部材43が、周方向に120°間隔にて配列される。
図1では、複数の遊星軸部材43のうち、1つの遊星軸部材43のみを図示する。遊星ローラ44についても同様である。
【0019】
複数の遊星軸部材43はそれぞれ、中心軸J1に沿う方向を向く略円柱状である。以下の説明では、各遊星軸部材43の中心軸を「遊星軸J2」と呼ぶ。また、遊星軸J2が向く方向を「遊星軸方向」という。上述の「中心軸J1に沿う方向」とは、中心軸J1が向く軸方向におよそ平行な方向を意味しており、軸方向に厳密に平行である必要はない。すなわち、各遊星軸部材43の遊星軸J2は、中心軸J1に平行であってもよく、中心軸J1に対して小さい角度だけ傾斜してもよい。複数の遊星軸部材43は、互いに同様の形状を有し、同じ大きさである。好ましくは、複数の遊星軸部材43はそれぞれ、中心軸J1に対して傾斜しており、遊星キャリア42の遊星支持部422から離れるに従って径方向外方へと向かう。各遊星軸部材43について、遊星軸J2と中心軸J1との成す角度、すなわち、遊星軸J2および中心軸J1を含む仮想面における当該角度は、例えば、0.5°である。
【0020】
トラクション動力伝達装置1では、遊星支持部422の上面に、下方に向かう複数の穴が設けられる。遊星支持部422の各穴に遊星軸部材43の下部が挿入されることにより、複数の遊星軸部材43が遊星支持部422に接続される。各遊星軸部材43は、遊星支持部422に対して回転不能に固定される。各遊星軸部材43の遊星支持部422から上方に突出する部位は、軸方向に関して太陽ローラ33とおよそ同じ位置に位置する。
【0021】
複数の遊星ローラ44はそれぞれ、ケーシング2内にて複数の遊星軸部材43を介して支持される。
図1に示す例では、3つの遊星ローラ44が、3つの遊星軸部材43を介して支持される。各遊星ローラ44は、遊星軸部材43の周囲に位置する略円筒状である。複数の遊星ローラ44は、互いに同様の形状を有し、同じ大きさである。遊星ローラ44の内周面と遊星軸部材43の外周面との間には、遊星軸受機構45が設けられる。遊星軸受機構45は、例えば、ニードルベアリングである。遊星軸受機構45として、ニードルベアリング以外の様々な軸受機構が利用されてよい。各遊星ローラ44は、遊星軸受機構45を介して、遊星軸部材43をおよそ中心として遊星軸部材43により回転可能に支持される。
【0022】
複数の遊星ローラ44のそれぞれの外周面は、太陽ローラ33の外周面に接する。詳細には、各遊星ローラ44と太陽ローラ33との間には微小間隙が存在し、当該微小間隙には、ケーシング2内に充填された潤滑油が存在する。各遊星ローラ44の外周面は、潤滑油の油膜を介して、太陽ローラ33の外周面に間接的に接する。
【0023】
インターナルリング5は、中心軸J1が中心に位置する環状の部材である。インターナルリング5は、第2回転組立体4の径方向外側にてケーシング2に接続される。インターナルリング5は、軸方向に関して複数の太陽ローラ33の上部と、およそ同じ位置に位置する。換言すれば、インターナルリング5は、複数の太陽ローラ33の上部の径方向外側に位置する。インターナルリング5は、第1ケーシング21と第2ケーシング22との間に挟まれることにより、ケーシング2に回転不能に固定される。詳細には、第1ケーシング21と第2ケーシング22とを互いに固定するボルト23を締めることにより、第1ケーシング21と第2ケーシング22との間の距離が小さくなり、インターナルリング5が第1ケーシング21と第2ケーシング22との間に挟まれて固定される。
【0024】
インターナルリング5は、好ましくは、内周部51と、2つの支持部52と、を含む。内周部51は、中心軸J1が中心に位置する環状である。
図1に示す例では、内周部51は、中心軸J1が中心に位置する略円筒状である。2つの支持部52はそれぞれ、中心軸J1が中心に位置する略円環板状である。2つの支持部52は、内周部51の上端部および下端部から、中心軸J1に略垂直に径方向外側に拡がる。換言すれば、2つの支持部52は、中心軸J1を含む面による断面において、内周部51の軸方向両側の端部から径方向外側に拡がる。上側の支持部52は、第1ケーシング21に接し、下側の支持部52は、第2ケーシング22に接する。
【0025】
複数の遊星ローラ44のそれぞれの外周面は、インターナルリング5の内周面に接する。詳細には、各遊星ローラ44とインターナルリング5との間に存在する微小間隙に、ケーシング2内に充填された潤滑油が存在する。各遊星ローラ44の外周面は、潤滑油の油膜を介して、インターナルリング5の内周部51に間接的に接する。インターナルリング5の内周部51は、各遊星ローラ44の外周面に接する内周面を有する。
【0026】
複数の遊星ローラ44は、インターナルリング5の径方向への弾性変形を利用して、太陽ローラ33に向けて押圧される。詳細には、インターナルリング5の2つの支持部52は、第1ケーシング21と第2ケーシング22とにより挟まれることにより、軸方向に近づけられる。これにより、インターナルリング5がケーシング2に取り付けられた状態において、インターナルリング5の内周部51は、径方向内方に向かって弾性変形している。このように、インターナルリング5の内径が弾性変形により小さくなることにより、インターナルリング5に接する複数の遊星ローラ44は、径方向内側の太陽ローラ33に向けて押圧される。
【0027】
図1では、各遊星ローラ44とインターナルリング5との接触部である第1接触点61と、各遊星ローラ44と太陽ローラ33との接触部である第2接触点62とを中実の丸印にて示す。また、第1接触点61においてインターナルリング5から各遊星ローラ44に作用する第1押圧力を示す第1押圧力ベクトルV1と、第2接触点62において太陽ローラ33から各遊星ローラ44に作用する第2押圧力を示す第2押圧力ベクトルV2とを矢印にて示す。
【0028】
各遊星ローラ44の第1接触点61と第2接触点62とは、各遊星ローラ44を支持する遊星軸部材43の中心軸方向である遊星軸方向に関して、異なる位置に位置する。
図1に示す例では、第2接触点62は、軸方向に関して第1接触点61よりも遊星キャリア42に近い。また、第2接触点62は、遊星軸方向に関しても第1接触点61よりも遊星キャリア42に近い。第2接触点62は、遊星軸方向に関して、遊星ローラ44の遊星軸方向の中心と遊星ローラ44の下端との間に位置する。第1接触点61は、遊星軸方向に関して、遊星ローラ44の遊星軸方向の中心と遊星ローラ44の上端との間に位置する。
【0029】
各遊星ローラ44の第1接触点61および第2接触点62において、中心軸J1を含む面による各遊星ローラ44の外周面の断面形状は凸である。換言すれば、各遊星ローラ44において、第1接触点61と中心軸J1とを含む面による各遊星ローラ44の外周面の断面形状は、遊星軸J2を中心とする径方向において外方に凸である。また、第2接触点62と中心軸J1とを含む面による上記外周面の断面形状は、遊星軸J2を中心とする径方向において外方に凸である。
【0030】
図1に示す例では、各遊星ローラ44において、遊星軸J2を含む面による外周面の断面形状は、略円弧状である。遊星ローラ44の外径は、遊星ローラ44の遊星軸方向の略中心にて最大である。遊星ローラ44の外径とは、遊星軸J2を中心とする径方向において、各遊星ローラ44の外周面と遊星軸J2との間の距離である。遊星ローラ44の外径は、遊星ローラ44の遊星軸方向の略中心から離れるに従って漸次減少する。
【0031】
トラクション動力伝達装置1が減速機として利用される場合、高速軸である第1回転軸部材31と共に、第1接続部32および太陽ローラ33が中心軸J1を中心として回転する。換言すれば、第1回転組立体3が、中心軸J1を中心として回転する。太陽ローラ33の回転により、太陽ローラ33と各遊星ローラ44との間の微小間隙に存在する潤滑油にトラクションが発生する。当該トラクションにより、各遊星ローラ44は、遊星軸J2を中心として回転する。各遊星ローラ44の遊星軸J2を中心とする回転により、各遊星ローラ44とインターナルリング5との間の微小間隙に存在する潤滑油にトラクションが発生する。インターナルリング5はケーシング2に固定されているため、当該トラクションにより、複数の遊星ローラ44は中心軸J1を中心として回転する。
【0032】
以下の説明では、各遊星ローラ44の遊星軸J2を中心とする回転を「自転」と呼び、複数の遊星ローラ44の中心軸J1を中心とする回転を「公転」と呼ぶ。上述のように、遊星キャリア42は、複数の遊星軸部材43を介して複数の遊星ローラ44に接続され、低速軸である第2回転軸部材41は遊星キャリア42に接続される。このため、複数の遊星ローラ44の公転に伴い、遊星キャリア42および第2回転軸部材41も、中心軸J1を中心として回転する。すなわち、第2回転組立体4が中心軸J1を中心として回転する。
【0033】
トラクション動力伝達装置1が増速機として利用される場合は、減速機として利用される場合とは反対に、第2回転組立体4の第2回転軸部材41、遊星キャリア42および複数の遊星ローラ44が中心軸J1を中心として回転する。各遊星ローラ44は、公転時にインターナルリング5との間に発生するトラクションにより自転する。各遊星ローラ44の自転により、各遊星ローラ44と太陽ローラ33との間にトラクションが発生する。そして、当該トラクションにより、第1回転組立体3の太陽ローラ33、第1接続部32および第1回転軸部材31が、中心軸J1を中心として回転する。
【0034】
このように、トラクション動力伝達装置1が減速機として利用される場合も、増速機として利用される場合も、第1回転組立体3と第2回転組立体4との間で、トラクションによる動力伝達が行われる。
【0035】
図2は、1つの遊星ローラ44、および、その近傍の部位を拡大して示す縦断面図である。
図3および
図4は、1つの遊星ローラ44、および、その近傍の部位を拡大して示す横断面図である。
図2では、中心軸J1に対する遊星軸J2の傾斜を実際よりも大きく描いている。また、
図3および
図4では、遊星ローラ44および遊星軸部材43のみに平行斜線を付す。
【0036】
図2に示すように、各遊星ローラ44の第1接触点61と第2接触点62とは、遊星軸方向に関して異なる位置に位置する。これにより、各遊星ローラ44の中心軸J3が、遊星軸部材43の中心軸である遊星軸J2に対して傾く。その結果、遊星ローラ44の内周面の上端部441および下端部442の一方が、遊星軸部材43の外周面のうち、中心軸J1を中心とする径方向の外側の部位に、遊星軸受機構45を介して押圧される。また、遊星ローラ44の内周面の上端部441および下端部442の他方が、遊星軸部材43の外周面のうち、中心軸J1を中心とする径方向の内側の部位に、遊星軸受機構45を介して押圧される。
【0037】
図2に示す例では、遊星ローラ44の内周面の上端部441が、
図3に示すように、遊星軸部材43の外周面のうち、中心軸J1を中心とする径方向の外側の部位に、遊星軸受機構45を介して押圧される。また、遊星ローラ44の内周面の下端部442が、
図4に示すように、遊星軸部材43の外周面のうち、中心軸J1を中心とする径方向の内側の部位に、遊星軸受機構45を介して押圧される。
図2では、遊星ローラ44の遊星軸部材43に対する傾きを、実際によりも大きく描いている。
図3および
図4では、遊星軸部材43の中心軸である遊星軸J2と遊星ローラ44の中心軸J3とのずれを、実際よりも大きく描いている。また、
図3および
図4では、第1接触点61における第1押圧力ベクトルV1、および、第2接触点62における第2押圧力ベクトルV2を描いている。
【0038】
トラクション動力伝達装置1では、上述のように、遊星ローラ44が遊星軸部材43に対して傾斜することにより、遊星軸部材43と自転中の遊星ローラ44との間のバックラッシュを低減することができる。
図2に示す例では、遊星ローラ44の上端部441において、遊星軸部材43の径方向外側の部位と遊星ローラ44との間のバックラッシュを低減することができる。また、遊星ローラ44の下端部442において、遊星軸部材43の径方向内側の部位と遊星ローラ44との間のバックラッシュを低減することができる。
【0039】
図2では、遊星軸J2と第1接触点61と第2接触点62とを含む面による遊星ローラ44の断面を示す。各遊星ローラ44について、当該断面における第1押圧力ベクトルV1は、当該断面において第1接触点61と第2接触点62とを結ぶ仮想的な直線L1に対して一方側に傾斜する。また、各遊星ローラ44について、当該断面における第2押圧力ベクトルV2は、当該断面において上記直線L1に対して他方側に傾斜する。
図2に示す例では、第1押圧力ベクトルV1は直線L1に対して上側に傾斜し、第2押圧力ベクトルV2は直線L1に対して下側に傾斜する。第1押圧力ベクトルV1と、第2押圧力ベクトルV2とは、略平行である。
【0040】
このように、各遊星ローラ44では、第1押圧力ベクトルV1と第2押圧力ベクトルV2とは、第1接触点61と第2接触点62とを結ぶ直線L1を挟んで互いに逆向きに傾斜する。これにより、第1押圧力ベクトルV1の遊星軸J2に垂直な方向の成分と、第2押圧力ベクトルV2の遊星軸J2に垂直な方向の成分とを大きくすることができる。また、上述のように、第1接触点61と第2接触点62とは、遊星軸方向に関し、遊星ローラ44の遊星軸方向の中心を挟んで互いに反対側に位置する。これにより、第1押圧力および第2押圧力により遊星ローラ44に作用する傾斜モーメント、すなわち、遊星ローラ44を遊星軸部材43に対して傾斜させる向きに作用するモーメントを大きくすることができる。換言すれば、第1押圧力および第2押圧力を、遊星ローラ44を傾斜させるために効率良く利用することができる。
【0041】
図2に示す例では、第1押圧力ベクトルV1の遊星軸方向成分と、第2押圧力ベクトルV2の遊星軸方向成分とは、反対方向を向く。遊星軸方向成分とは、遊星軸J2に平行な方向の成分である。詳細には、第1押圧力ベクトルV1の遊星軸方向成分は下側を向き、第2押圧力ベクトルV2の遊星軸方向成分は上側を向く。このように、両押圧ベクトルの遊星軸方向成分が反対方向を向くことにより、第1押圧力により遊星軸部材43に作用する軸方向の力と、第2押圧力により遊星軸部材43に作用する軸方向の力とが相殺する。これにより、遊星軸部材43に作用する軸方向の力が小さくなる。このため、遊星軸部材43と遊星ローラ44との間の遊星軸受機構45の負荷が小さくなる。その結果、遊星ローラ44を介した動力の伝達効率を向上することができる。
【0042】
上述のように、インターナルリング5がケーシング2に取り付けられた状態において、インターナルリング5の2つの支持部52が軸方向に近づけられることにより、内周部51が径方向内方に向かって弾性変形している。このように、トラクション動力伝達装置1では、簡素な構造のインターナルリング5により、各遊星ローラ44を太陽ローラ33に向けて押圧することができる。また、遊星ローラ44の押圧に弦巻バネ等を利用する場合に比べて、弦巻バネ等によるバックラッシュを避けることができる。その結果、トラクション動力伝達装置1におけるバックラッシュを低減することができる。
【0043】
トラクション動力伝達装置1が組み立てられる際には、上述のボルト23が締められることにより、インターナルリング5の内周部51が径方向内方に向かって徐々に弾性変形し、遊星軸部材43がそれぞれ挿入された複数の遊星ローラ44が、径方向内方に向けて押圧される。トラクション動力伝達装置1の組み立て完了前の状態、すなわち、第1ケーシング21と第2ケーシング22とを接続するボルト23が完全に締められる前の状態では、各遊星ローラ44は遊星軸J2に対して遊星軸方向に可動である。上述のように、複数の遊星軸部材43はそれぞれ、遊星キャリア42から離れるに従って径方向外方へと向かう。このため、遊星ローラ44は、インターナルリング5により径方向内方に向けて押圧されることにより、遊星軸部材43に沿って遊星キャリア42に僅かに近づきつつ径方向内方に僅かに移動する。遊星ローラ44が径方向内方に移動すると、太陽ローラ33から遊星ローラ44に作用する径方向外方に向かう押圧力が大きくなる。遊星ローラ44は、遊星軸部材43に沿って僅かに移動し、インターナルリング5からの径方向内方に向かう押圧力と、太陽ローラ33からの径方向外方に向かう押圧力とが釣り合う位置に配置される。
【0044】
トラクション動力伝達装置1では、遊星軸部材43が、遊星キャリア42から離れるに従って径方向外方へと向かって傾斜することにより、遊星ローラ44の遊星軸方向の位置を容易に決定することができる。換言すれば、遊星軸部材43への遊星ローラ44の取り付けを容易とすることができる。また、各遊星ローラ44における第2接触点62が、軸方向に関して第1接触点61よりも遊星キャリア42に近いため、遊星軸部材43への遊星ローラ44の取り付けを、さらに容易とすることができる。
【0045】
上述のように、各遊星ローラ44の第1接触点61において、中心軸J1を含む面による各遊星ローラ44の外周面の断面形状は凸である。第1接触点61では、必ずしも遊星ローラ44の外周面の断面形状は凸である必要はなく、中心軸J1を含む面によるインターナルリング5の内周面の断面形状が凸であってもよい。換言すれば、各遊星ローラ44の第1接触点61では、中心軸J1を含む面による各遊星ローラ44の外周面の断面形状、および、中心軸J1を含む面によるインターナルリング5の内周面の断面形状のうち、少なくとも一方の断面形状が凸である。これにより、遊星ローラ44が遊星軸方向に僅かに移動する場合等、遊星ローラ44の外周面上における第1接触点61の位置、および、インターナルリング5の内周面上における第1接触点61の位置を滑らかに変化させることができる。
【0046】
また、トラクション動力伝達装置1では、各遊星ローラ44の第2接触点62において、中心軸J1を含む面による各遊星ローラ44の外周面の断面形状は凸である。第2接触点62では、必ずしも遊星ローラ44の外周面の断面形状は凸である必要はなく、中心軸J1を含む面による太陽ローラ33の外周面の断面形状が凸であってもよい。換言すれば、各遊星ローラ44の第2接触点62では、中心軸J1を含む面による各遊星ローラ44の外周面の断面形状、および、中心軸J1を含む面による太陽ローラ33の外周面の断面形状のうち、少なくとも一方の断面形状が凸である。これにより、遊星ローラ44が遊星軸方向に僅かに移動する場合等、遊星ローラ44の外周面上における第2接触点62の位置、および、太陽ローラ33の外周面上における第2接触点62の位置を滑らかに変化させることができる。
【0047】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の例示的な第2の実施形態に係るトラクション動力伝達装置1aの縦断面図である。
図5では、トラクション動力伝達装置1aの中心軸J1を含む面による断面を示す。トラクション動力伝達装置1aは、
図1に示す遊星ローラ44とは形状が異なる複数の遊星ローラ44aを含む。トラクション動力伝達装置1aは、また、
図1に示すインターナルリング5とは形状が異なるインターナルリング5aを含む。トラクション動力伝達装置1aの他の構造は、トラクション動力伝達装置1と同様である。以下、同様の構成には同符号を付す。
【0048】
各遊星ローラ44aは、遊星ローラ44と同様に、第1接触点61にてインターナルリング5aの内周面と接し、第2接触点62にて太陽ローラ33の外周面と接する。各遊星ローラ44aの第1接触点61と第2接触点62とは、各遊星ローラ44aを支持する遊星軸部材43の中心軸方向である遊星軸方向に関して、異なる位置に位置する。トラクション動力伝達装置1aでは、トラクション動力伝達装置1と同様に、遊星ローラ44aが遊星軸部材43に対して傾斜することにより、遊星軸部材43と自転中の遊星ローラ44aとの間のバックラッシュを低減することができる。
【0049】
トラクション動力伝達装置1aでは、トラクション動力伝達装置1と同様に、各遊星ローラ44aについて、遊星軸J2と第1接触点61と第2接触点62とを含む面による遊星ローラ44aの断面における第1押圧力ベクトルV1が、当該断面において第1接触点61と第2接触点62とを結ぶ仮想的な直線L1に対して一方側に傾斜する。各遊星ローラ44aについて、当該断面における第2押圧力ベクトルV2は、当該断面において上記直線L1に対して他方側に傾斜する。これにより、第1押圧力ベクトルV1の遊星軸J2に垂直な方向の成分と、第2押圧力ベクトルV2の遊星軸J2に垂直な方向の成分とを大きくすることができる。
【0050】
また、第1接触点61と第2接触点62とは、遊星軸方向に関し、遊星ローラ44aの遊星軸方向の中心を挟んで互いに反対側に位置する。これにより、第1押圧力および第2押圧力により遊星ローラ44aに作用する傾斜モーメント、すなわち、遊星ローラ44aを遊星軸部材43に対して傾斜させる向きに作用するモーメントを大きくすることができる。換言すれば、第1押圧力および第2押圧力を、遊星ローラ44aを傾斜させるために効率良く利用することができる。
【0051】
第1接触点61における各遊星ローラ44aの外径は、第2接触点62における各遊星ローラ44aの外径よりも小さい。これにより、第1回転軸部材31の回転数に対する第2回転軸部材41の回転数の割合を小さくすることができる。すなわち、トラクション動力伝達装置1aが減速機として利用される場合、トラクション動力伝達装置1aの減速比を大きくすることができる。また、トラクション動力伝達装置1aが増速機として利用される場合、トラクション動力伝達装置1aの増速比を大きくすることができる。
【0052】
上記トラクション動力伝達装置1,1aでは、様々な変更が可能である。
【0053】
インターナルリング5,5aは、必ずしも第1ケーシング21と第2ケーシング22とにより挟まれることにより弾性変形して遊星ローラ44,44aを押圧する必要はない。インターナルリング5,5aは、例えば、力を加えて弾性変形させることにより内径を大きくした後、複数の遊星ローラ44,44aの径方向外側に配置されて力が解除される。これにより、インターナルリング5,5aが径方向内方に向かって弾性変形し、複数の遊星ローラ44,44aが太陽ローラ33に向けて押圧される。インターナルリング5,5aは、また、焼き嵌めにより複数の遊星ローラ44,44aに嵌められてもよい。この場合、インターナルリング5,5aのうち複数の遊星ローラ44,44aに接する部位が弾性変形し、複数の遊星ローラ44,44aが太陽ローラ33に向けて押圧される。このように、トラクション動力伝達装置1,1aでは、複数の遊星ローラ44,44aは、インターナルリング5,5aの径方向への弾性変形を利用して太陽ローラ33に向けて押圧される。
【0054】
図6は、トラクション動力伝達装置の他の好ましい例を示す断面図である。
図6に示すトラクション動力伝達装置1bは、
図1に示すインターナルリング5とは形状が異なるインターナルリング5bを含む。インターナルリング5bは、中心軸J1を中心とする略円筒状の円筒部55と、中心軸J1を中心とする略円環板状の円環板部56と、を含む。円環板部56は、円筒部55の下端部から径方向内方に拡がる。円筒部55の下部と円環板部56とは、第2ケーシング22に固定される。そして、円筒部55の上部の径方向への弾性変形を利用して、複数の遊星ローラ44が太陽ローラ33に向けて押圧される。
【0055】
図7および
図8は、トラクション動力伝達装置の他の好ましい例を示す断面図である。
図7および
図8では、ケーシングの図示を省略する。
図7に示すトラクション動力伝達装置1c、および、
図8に示すトラクション動力伝達装置1dにおいても、
図1に示すトラクション動力伝達装置1と同様に、各遊星ローラ44,44bの第1接触点61と第2接触点62とは、遊星軸方向に関して異なる位置に位置する。
図7および
図8に示す例では、第1接触点61は、軸方向に関して第2接触点62よりも遊星キャリア42に近い。
図8に示すトラクション動力伝達装置1dでは、遊星ローラ44bの上部および下部の外径が、遊星ローラ44bの遊星軸方向の中心から離れるに従って漸次減少する。したがって、遊星軸J2を含む遊星ローラ44bの断面において、遊星ローラ44b上部の外側面、および、遊星ローラ44b下部の外側面は、遊星軸J2に対して傾斜する傾斜面である。遊星ローラ44bでは、第1接触点61および第2接触点62は、当該傾斜面上に位置する。
【0056】
トラクション動力伝達装置1c,1dでは、遊星軸J2と第1接触点61と第2接触点62とを含む面による遊星ローラ44,44bの断面において、第1押圧力ベクトルV1は、第1接触点61と第2接触点62とを結ぶ仮想的な直線L1に対して一方側に傾斜する。また、当該断面における第2押圧力ベクトルV2は、当該断面において上記直線L1に対して他方側に傾斜する。
図7および
図8に示す例では、第1押圧力ベクトルV1は直線L1に対して下側に傾斜し、第2押圧力ベクトルV2は直線L1に対して上側に傾斜する。第1押圧力ベクトルV1と、第2押圧力ベクトルV2とは、略平行である。
【0057】
トラクション動力伝達装置1c,1dでは、トラクション動力伝達装置1と同様に、遊星ローラ44,44bが遊星軸部材43に対して傾斜することにより、遊星軸部材43と自転中の遊星ローラ44,44bとの間のバックラッシュを低減することができる。また、第1押圧力および第2押圧力を、遊星ローラ44,44bを傾斜させるために効率良く利用することができる。
【0058】
上述のトラクション動力伝達装置では、第1回転軸部材31および第2回転軸部材41は、ケーシング2内に配置されてもよい。第1回転軸部材31と第2回転軸部材41とは、必ずしも、ケーシング2から互いに反対向きに突出する必要はなく、例えば、第1回転軸部材31および第2回転軸部材41のうち一方の部材が中空であり、他方の部材が当該一方の部材の径方向内側に位置してもよい。
【0059】
第1回転組立体3では、第1接続部32以外の部位、例えば、第1回転軸部材31が第1軸受機構24を介してケーシング2により回転可能に支持されてもよい。第2回転組立体4では、遊星キャリア42以外の部位、例えば、第2回転軸部材41が第2軸受機構25を介してケーシング2により回転可能に支持されてもよい。
【0060】
第2回転組立体4では、遊星ローラ44が遊星軸部材43に固定され、遊星軸部材43と遊星キャリア42との間に遊星軸受機構45が設けられてもよい。換言すれば、遊星ローラ44は、遊星軸部材43および遊星軸受機構45を介して遊星キャリア42により回転可能に支持される。遊星ローラ44は遊星軸部材43と共に回転する。この場合、遊星ローラ44が遊星軸部材43と共に遊星軸受機構45内にて傾斜することにより、遊星キャリア42と自転中の遊星軸部材43および遊星ローラ44との間のバックラッシュを低減することができる。
【0061】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。