【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1に係るグラビア印刷機及びグラビア印刷機の運転方法を
図1〜6に基づいて説明する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、本実施例に係るグラビア印刷機100において、フラットベッド110上には、対象体であるシート状の樹脂フィルムやフレキシブルガラス等の基材1が載置されて支持されるようになっている。また、フラットベッド110の長手方向一方側(
図1中、左側)には、凹部としての配線パターンの溝(幅:約1〜100μm、深さ:約1〜100μm)を形成されたスリーブ型の凹版(グラビア版)124を外周に装着した版胴(グラビア胴)120が当該フラットベッド110の幅方向(
図1中、紙面垂直方向)へ軸方向を向けるようにして回転可能に配設される一方、シリコーンブランケットを外周に巻き付けたブランケット胴(シリコーンブランケット胴)130が版胴120に対接する位置とフラットベッド110上との間を回転しながら移動できるようにフラットベッド110の幅方向へ軸方向を向けるようにして回転可能に配設されている。このブランケット胴130は、フラットベッド110の一方端側(
図1中、左側)と他方端側(
図1中、右側)との間を回転しながら移動することができ、フラットベッド110上の基材1上に位置したときに当該基材1に対接しながら転動することができるようになっている。以下、版胴120(凹版124)上のブランケット胴130が対接する位置(本実施例では、版胴120の頂点を0°として版胴回転角θBの位置)を受理位置という。
【0018】
版胴120には、第1ドクターブレード121がその先端部を版胴120(凹版124)のインキ充填位置(版胴120の頂点を0°として版胴回転角θ1の位置)に対して対接離反移動できるように配設されている。
第1ドクターブレード121の先端部が凹版124に対接した状態(着位置)にあるとき、凹版124と第1ドクターブレード121との間には、必要に応じてインキ2が供給されるようになっており、第1ドクターブレード121は、版胴120の回転に伴って、先端部が、凹版124の配線パターンの溝にインキ2を供給(充填)すると同時に、当該溝以外の部分に付着したインキ2を凹版124から掻き取ることができるようになっている。また、第1ドクターブレード121の先端部が凹版124から離反した状態(脱位置)にあるとき、第1ドクターブレード121の先端部は、後述するスクレーパー123と凹版124との間のクリアランス(隙間)分以上、凹版124から離反するようになっている。
【0019】
また、版胴120には、第2ドクターブレード122がその先端部を凹版124のインキかき取り位置(版胴120の頂点を0°として版胴回転角θ2の位置。ただし、θ1<θ2)に対して対接離反移動できるように配設されている。
第2ドクターブレード122の先端部が凹版124に対接した状態(着位置)にあるとき、第2ドクターブレード122は、版胴120の回転に伴って、先端部が、凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2を凹版124から掻き取ることができるようになっている。また、第2ドクターブレード122の先端部が凹版124から離反した状態(脱位置)にあるとき、第2ドクターブレード122の先端部は、後述するスクレーパー123と凹版124との間のクリアランス(隙間)分以上、凹版124から離反するようになっている。
【0020】
また、版胴120には、スクレーパー123がその先端部を凹版124のインキ膜形成位置(版胴120の頂点を0°として版胴回転角θsの位置。ただし、θs<θ1)に対して近接離反移動できるように配設されている。スクレーパー123の版胴120の軸方向に沿った長さは、第1ドクターブレード121および第2ドクターブレード122の版胴120の軸方向に沿った長さに比較して長くなっている(
図6参照)。
【0021】
スクレーパー123の先端部が版胴120に近接した状態にあるとき、スクレーパー123は、その先端部と凹版124との間に所定のクリアランス(例えば、0.03mm〜0.1mm)を有しており、版胴120の回転に伴って、凹版124の表面(版面)に、スクレーパー123の先端部と凹版124との間の間隙を通過したクリアランス分の厚みを有するインキ2の膜(インキ膜)を形成することができるようになっている。
【0022】
また、
図3に示すように、本実施例においてグラビア印刷機100の制御装置141は、グラビア印刷機100
の各装置の動作の基準となる位相(以下、基準位相という)を検出する位相検出器142、及び、ブランケット胴130の位置を検出するブランケット胴位置検出器143から検知信号を入力する一方、第1ドクターブレード121を版胴120に対して対接離反移動させる第1ドクターブレード用エアシリンダ144、第2ドクターブレード122を版胴120に対して対接離反移動させる第2ドクターブレード用エアシリンダ145、及び、スクレーパー123を版胴120に対して近接離反移動させるスクレーパー用エアシリンダ146に制御信号を出力するように構成されている。
【0023】
図4及び
図5を用いて制御装置141による制御の流れを説明する。なお、
図5(a)は第1ドクターブレード121および第2ドクターブレード122の先端部が凹版124から離反した位置であってスクレーパー123の先端部が凹版124に近接した位置にある状態、
図5(b)は
図5(a)に示した状態から第1ドクターブレード121の先端部を凹版124に対接させた状態、
図5(c)は
図5(b)に示した状態から第2ドクターブレード122の先端部を凹版124に対接させた状態、
図5(d)は
図5(c)に対して第1ドクターブレード121の先端部を凹版124から離反させた状態を示している。また、
図5では版胴120の表面にインキ2の膜が形成されることを分かり易く説明するため、インキ2の膜厚を誇張して示している。
【0024】
まず、
図4に示す時刻t1は、前回の受理工程が終了した後、凹版124の表面にインキ2の膜が形成された状態であり、このとき、
図5(a)に示すように第1ドクターブレード121、第2ドクターブレード122はその先端部が凹版124から離反した位置(脱位置)、スクレーパー123はその先端部が凹版124に近接した位置(着位置)に位置付けられている。なお、
図5(a)中の符号2cは、スクレーパー123と版胴120との間に溜まったインキ2により形成されたインキ溜まりである。
【0025】
この状態において、制御装置141は、ブランケット胴位置検出器143から入力される信号により受理工程の開始を検知すると、まず、版胴の回転角がθBとなる受理工程の開始時刻t5に先駆け、位相検出器142から入力される基準位相に基づき、版胴の回転角がθ1となる時刻t3において第1ドクターブレード用エアシリンダ144に対して第1ドクターブレード121の先端部を版胴120に対接させるよう指令を出力する。これにより、時刻t3において
図5(b)に示すように第1ドクターブレード121の先端部が版胴120に対接した状態となり、第1ドクターブレード121の先端部による凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2の掻き取りが開始される。ここで、時刻t3は、受理工程の開始のタイミングに合わせて、第1ドクターブレード121の先端部によってインキ2の掻き取りが開始された版胴120上の位置が受理位置に来たときに、ブランケット胴130が凹版124に対接して受理工程が開始されるように位相検出器142から入力される基準位相に基づきその時刻を設定されている。なお、
図5(b)中の符号2aは、第1ドクターブレード121によって掻き取られたインキ2により形成されたインキ溜まりである。
【0026】
続いて、制御装置141は、受理工程の開始時刻t5に先駆け、位相検出器142から入力される基準位相に基づき、版胴の回転角がθ2となる時刻t4において第2ドクターブレード用エアシリンダ145に対して第2ドクターブレード122の先端部を凹版124に対接させるよう指令を出力する。これにより、
図5(c)に示すように時刻t4において第2ドクターブレード122の先端部が凹版124に対接した状態となり、第2ドクターブレード122の先端部による凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2の掻き取りが開始される。ここで、時刻t4は、受理工程の開始のタイミングに合わせて、第1ドクターブレード121の先端部によってインキ2の掻き取りが開始された版胴120上の位置がインキ掻き取り位置に来たときに、第2ドクターブレード122の先端部によりインキ2の掻き取りが開始されるように、且つ、第2ドクターブレード122の先端部によってインキ2の掻き取りが開始された版胴120上の位置が受理位置に来たときに、ブランケット胴130が凹版124に対接して受理工程が開始されるように位相検出器142から入力される基準位相に基づきその時刻を設定されている。なお、
図5(c)中の符号2bは、第2ドクターブレード122によって掻き取られたインキ2により形成されたインキ溜まりである。
【0027】
その後、位相検出器142から入力される基準位相に基づき、版胴の回転角がθBとなる時刻t5においてブランケット胴130が凹版124に対接して受理工程が開始され、インキ2がブランケット胴130のシリコーンブランケット上に配線パターンに対応した状態で受け渡される。上述したように、この受理工程は、第1ドクターブレード121の先端部、第2ドクターブレード122の先端部によってそれぞれインキ2の掻き取りが開始された版胴120上の位置が受理位置θBに来たときに開始されることとなる。
【0028】
続いて、制御装置141は、受理工程の終了時刻t10に先駆け、位相検出器142から入力される基準位相に基づき、版胴の回転角がθ1となる時刻t8において第1ドクターブレード用エアシリンダ144に対して第1ドクターブレード121の先端部を版胴120から離反させるよう指令を出力する。これにより、
図5(d)に示すように時刻t8において第1ドクターブレード121の先端部が凹版124から離反した状態(脱位置)となり、第1ドクターブレード121の先端部による凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2の掻き取りが終了し、スクレーパー123の先端部と凹版124との間を通過したインキ2の膜が凹版124の表面を覆った状態で維持されることとなる。ここで、時刻t8は、受理工程の終了のタイミングに合わせて、第1ドクターブレード121の先端部によってインキ2の掻き取りが終了した版胴120上の位置が受理位置に来たときに、ブランケット胴130が凹版124から離反して受理工程が終了するように位相検出器142から入力される基準位相に基づきその時刻を設定されている。
【0029】
さらにその後、制御装置141は、第1ドクターブレード用エアシリンダ144に対して第1ドクターブレード121の先端部を所定時間間隔で且つ既定の回数だけ版胴120への対接離反(着脱)を繰り返すよう指令を出力する。これにより、時刻t8からしばらくの間(例えば、版胴120が一回転する間)、所定時間間隔で且つ規定回数だけ第1ドクターブレード121の先端部が凹版124に対して対接離反を繰り返し、第1ドクターブレード121の先端部に付着していたインキ2が凹版124に戻される(インキ戻し)。
【0030】
続いて、制御装置141は、受理工程の終了時刻t10に先駆け、位相検出器142から入力される基準位相に基づき、版胴の回転角がθ2となる時刻t9において第2ドクターブレード用エアシリンダ145に対して第2ドクターブレード122の先端部を凹版124から離反させるよう指令を出力する。これにより、
図5(a)に示すように時刻t9において第2ドクターブレード122の先端部が凹版124から離反した状態(脱位置)となり、第2ドクターブレード122の先端部による凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2の掻き取りが終了し、スクレーパー123の先端部と凹版124との間を通過したインキ2の膜が凹版124の表面を覆った状態で維持されることとなる。なお、時刻t9は、受理工程の終了のタイミングに合わせて、第1ドクターブレード121の先端部によってインキ2の掻き取りが終了した版胴120上の位置がインキ掻き取り位置に来たときに、第2ドクターブレード122の先端部によるインキ2の掻き取りが終了するように、且つ、第2ドクターブレード122の先端部によってインキ2の掻き取りが終了した版胴120上の位置が受理位置に来たときに、ブランケット胴130が凹版124から離反して受理工程が終了するように位相検出器142から入力される基準位相に基づきその時刻を設定されている。
【0031】
さらにその後、制御装置141は、第2ドクターブレード用エアシリンダ145に対して第2ドクターブレード122の先端部を所定時間間隔で且つ既定の回数だけ凹版124への対接離反(着脱)を繰り返すよう指令を出力する。これにより、時刻t9からしばらくの間(例えば、版胴120が一回転する間)、所定時間間隔で且つ規定回数だけ第2ドクターブレード122の先端部が凹版124に対して対接離反を繰り返し、第2ドクターブレード122の先端部に付着していたインキ2が凹版124に戻される(インキ戻し)。
【0032】
その後、時刻t10において受理工程が終了してブランケット胴130が凹版124から離反する。この時点において、凹版124の表面には膜形成位置から受理位置までインキ2の膜が形成された状態となっており、その後、
図4に示す時刻t11において凹版124の表面が全周にわたってインキ2の膜に覆われた状態となる。なお、上述したように、受理工程は、第1ドクターブレード121の先端部、第2ドクターブレード122の先端部によってそれぞれインキ2の掻き取りが終了した版胴120上の位置が受理位置に来たときに終了することとなる。なお、
図4から明らかである通り、印刷稼働時、スクレーパー123は常に着位置(近接位置)となっている。
【0033】
上述した受理工程終了後の処理に並行して、グラビア印刷機100では、ブランケット胴130上に転写されたインキ2の状態をカメラで読み取り、インキ2の粘度が転写に適した半固化状態となるまで粘度調整を行い(粘度調整工程)、インキ2の状態が転写に適した状態となったところで、ブランケット胴130が、フラットベッド110の一方端側(
図2中、左側)から他方端側(
図2中、右側)へ向けて回転しながら移動することにより、基材1上を転動して、シリコーンブランケット上のインキ2を当該基材1上に転写して印刷する(転写工程。
図2参照)。これにより、基板1上には、配線パターンに対応した状態でインキ2が転写されて当該配線パターンが印刷される。
【0034】
その後、印刷が終了した基材1を搬送する(排出工程)一方、フラットベッド110上に新たな基材1を載置して支持し(基材セット工程)、基材1の見当合わせ(基材見当調整工程)を行った後、ブランケット胴130を版胴120(凹版124)に対接する位置に移動させつつ、上述した時刻t3以降の処理を実施することとなる。このような受理工程以外の工程を行っている間(受理工程を行っていないとき。具体的には、受理工程終了後から、ブランケット胴130を版胴120に対接する位置に移動させるまでの間)、本実施例に係るグラビア印刷機100では、版胴120の表面(版面の凹部)をインキ2の膜により覆った状態を維持することとなる。
【0035】
なお、本実施例においては、第1ドクターブレード121により上流側ドクターブレードを構成し、第2ドクターブレード122によりドクターブレードを構成し、位相検出器142により位相検出手段を構成し、第1ドクターブレード用エアシリンダ144、第2ドクターブレード用エアシリンダ145によりドクターブレード駆動手段を構成し、ブランケット胴130により被転写部材を構成し、制御装置141により制御手段を構成している。
【0036】
このように、本実施例に係るグラビア印刷機100によれば、受理工程以外の工程を行っている間、例えば受理工程が終了した後、ブランケット胴130に転写されたインキ2のカメラ読み取り、粘度調整、また、基材の搬送及び基材のセットならびに基材の見当合わせ等を行っている間、版胴120は待機状態となるが、このような待機状態の間、版胴120の表面はインキ2の膜に覆われているため、版溝に充填されたインキ2の乾燥を防止することができる。
これに伴い、印刷稼働時に凹版124の洗浄を行う頻度を減らすことができるため、印刷物の生産性を向上させることができる。
また、スクレーパー123の版胴120の軸方向に沿った長さを第1ドクターブレード121および第2ドクターブレード122の版胴120の軸方向に沿った長さより長くしたことにより、軸方向に対して十分な範囲で版胴120の凹部をインキ2の膜(乾燥防止膜)によって覆うことができるとともに、
図6(b)に示すように、第1ドクターブレード121および第2ドクターブレード122の先端部による凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2の掻き取りを行った際に、第1ドクターブレード121および第2ドクターブレード122の両端側に漏れ出して帯状となったインキ帯2eをスクレーパー123によってならして
図6(a)に示すように再度インキ2の膜として利用することでインキ2の消費量を抑制することもできる。
また、第1ドクターブレード121および第2ドクターブレード122を版胴120に対して繰り返し対接離反させるインキ戻しを行うことにより、第1ドクターブレード121および第2ドクターブレード122の先端に付着したインキ2を版胴120に戻すこともでき、さらにインキ2の消費量を抑制することができる。
【実施例2】
【0037】
本発明の実施例2に係るグラビア印刷機及びグラビア印刷機の運転方法を
図7に基づいて説明する。
上述した実施例1では、版胴120に第1ドクターブレード121、第2ドクターブレード122およびスクレーパー123を設ける例を示したが、本実施例では、上述した実施例1のスクレーパー123を廃止し、版胴120に第1ドクターブレード121および第2ドクターブレード122のみを設ける例を示す。その他の構成は、上述した実施例1とおおむね同様であり、以下、同一の部材には同一の符号を付して重複する説明は適宜省略し、異なる点を中心に説明する。
【0038】
本実施例においては、
図1等に示し上述したスクレーパー123を廃止したことに伴い、第1ドクターブレード121は第2ドクターブレード122に対して版胴120の軸方向に沿った長さが長くなるように構成される。
また、第1ドクターブレード用エアシリンダ144は、第1ドクターブレード121の先端部を凹版124に対接する着位置と、凹版124に近接する近接位置と、凹版124から離反する脱位置との間で移動させることができるものとし、第1ドクターブレード121は、必要に応じてインキ2を供給(充填)すると同時に掻き取ることができるとともに、インキ2の膜の形成を行うことができるものとする。
【0039】
このように構成される本実施例では、第1ドクターブレード121の先端部が凹版124に対接した状態にあるとき、上記第1ドクターブレード121は、上記版胴120の回転に伴って、凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2を凹版124から掻き取ることができるようになっている一方、第1ドクターブレード121の先端部が凹版124に近接した状態にあるとき、第1ドクターブレード121は、その先端部と凹版124との間に所定のクリアランス(例えば、0.03mm〜0.1mm)を有しており、版胴120の回転に伴って、凹版124の表面に、第1ドクターブレード121の先端部と凹版124との間の間隙を通過したクリアランス分の厚みを有するインキ2の膜を形成することができるようになっている。
【0040】
そして、
図7に示すように、前回の受理工程が終了した後であって次の受理工程が開始される以前の時刻t1において、第2ドクターブレード122が脱位置となる一方、第1ドクターブレード121は近接位置となって、版胴120の表面にインキ2の膜を形成する。
【0041】
この状態において、制御装置141は、ブランケット胴位置検出器143から入力される信号により受理工程の開始を検知すると、まず、受理工程の開始時刻t5に先駆け、時刻t3において第1ドクターブレード用エアシリンダ144に対して第1ドクターブレード121の先端部を凹版124に対接させるよう指令を出力する。これにより、時刻t3において第1ドクターブレード121の先端部が凹版124に対接した状態となり、第1ドクターブレード121の先端部による凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2の掻き取りが開始される。
【0042】
続いて、制御装置141は、受理工程の開始時刻t5に先駆け、位相検出器142から入力される基準位相に基づき、版胴の回転角がθ2となる時刻t4において第2ドクターブレード用エアシリンダ145に対して第2ドクターブレード122の先端部を凹版124に対接させるよう指令を出力する。これにより、時刻t4において第2ドクターブレード122の先端部が凹版124に対接した状態となり、第2ドクターブレード122の先端部による凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2の掻き取りが開始される。
【0043】
また、制御装置141は、受理工程の終了時刻t10に先駆け、時刻t8において第1ドクターブレード用エアシリンダ144に対して第1ドクターブレード121の先端部を版胴120から離反させ近接位置に位置付けるよう指令を出力する。これにより、時刻t8において第1ドクターブレード121の先端部が凹版124に近接した状態となり、第1ドクターブレード121の先端部による凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2の掻き取りが終了し、第1ドクターブレード121の先端部と凹版124との間をインキ2が通過し、インキ2の膜が形成されることとなる。
【0044】
続いて、制御装置141は、受理工程の終了時刻t10に先駆け、位相検出器142から入力される基準位相に基づき、版胴の回転角がθ2となる時刻t9において第2ドクターブレード用エアシリンダ145に対して第2ドクターブレード122の先端部を凹版124から離反させるよう指令を出力する。これにより、時刻t9において第2ドクターブレード122の先端部が凹版124から離反した状態となり、第2ドクターブレード122の先端部による凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2の掻き取りが終了し、第1ドクターブレード121の先端部と凹版124との間を通過したインキ2の膜が凹版124の表面を覆った状態で維持されることとなる。
【0045】
なお、本実施例においては、第1ドクターブレード121によりドクターブレードを構成し、位相検出器142により位相検出手段を構成し、第1ドクターブレード用エアシリンダ144によりドクターブレード駆動手段を構成し、ブランケット胴130により被転写部材を構成し、制御装置141により制御手段を構成している。
【0046】
このように構成される本実施例に係るグラビア印刷機およびグラビア印刷機の運転方法においても、上述した実施例1に係るグラビア印刷機およびグラビア印刷機の運転方法と同様の作用効果を得ることができる。
【実施例3】
【0047】
本発明の実施例3に係るグラビア印刷機及びグラビア印刷機の運転方法を
図8に基づいて説明する。
上述した実施例1では、版胴120に第1ドクターブレード121、第2ドクターブレード122およびスクレーパー123を設ける例を示したが、本実施例では、上述した実施例1の第1ドクターブレード121を廃止し、版胴120に第2ドクターブレード122およびスクレーパー123のみを設ける例を示す。その他の構成は、上述した実施例1とおおむね同様であり、以下、同一の部材には同一の符号を付して重複する説明は適宜省略し、異なる点を中心に説明する。
【0048】
本実施例においては、
図1等に示し上述した第1ドクターブレード121を廃止したことに伴い、スクレーパー123が、インキ2の膜を形成できることに加え、必要に応じてインキ2を供給(充填)することができるように構成される。
【0049】
また、上記版胴120の回転に伴って凹版124の溝以外の部分に付着したインキ2を凹版124から掻き取る部材が、第2ドクターブレード122のみとなる。
【0050】
なお、
図8に示すように、第2ドクターブレード122及びスクレーパー123の運転状態(着脱動作)は、
図4に示し上述した実施例1における運転状態と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0051】
本実施例においては、第2ドクターブレード122によりドクターブレードを構成し、位相検出器142により位相検出手段を構成し、第2ドクターブレード用エアシリンダ145によりドクターブレード駆動手段を構成し、ブランケット胴130により被転写部材を構成し、制御装置141により制御手段を構成している。
【0052】
このように構成される本実施例に係るグラビア印刷機およびグラビア印刷機の運転方法によれば、実施例1または実施例2に係るグラビア印刷機およびグラビア印刷機の運転方法による効果に加え、凹版124に対接する部材が第2ドクターブレード122のみとなるため、ブレードの交換頻度を低減することができるとともに、凹版124の長寿命化を図ることができる。
【0053】
なお、上述した実施例1〜3においては、版胴120に凹部としての配線パターンの溝を形成された凹版124が装着された例を示したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、版胴120の表面(版面)に直接凹部としての溝が形成されていてもよい。
【0054】
また、上述した実施例1〜3ではブランケット胴130を被転写部材とし、版胴120(凹版124)からブランケット胴130にインキ2を転写した後、ブランケット胴130から基材1にインキ2を転写する例を示したが、ブランケット胴130がなく、版胴120が基材1と対接可能に保持され、版胴120(凹版124)から直接基材1にインキ2を転写するものであってもよく、その場合は基材1が被転写部材となる。
【0055】
また、上述した実施例1〜3においては、制御装置141が位相検出器142から送出されるグラビア印刷機100の基準位相に基づいて版胴120の回転角を把握する例を示したが、位相検出器142は、グラビア印刷機100の基準位相に基づいて回転する版胴120の位相、または、グラビア印刷機100の基準位相に基づいて回転するブランケット胴130の位相を検出し、検出した位相を出力するものであってもよい。
【0056】
また、上述した実施例1〜3においては、受理工程が終了してから次の受理工程までの間(例えば、時刻t14からt3に戻るまでの間)、凹版124の表面をインキ2の膜で覆った状態で且つ版胴120を回転させつつ待機する例を示したが、受理工程が終了した後、凹版124の表面をインキ2の膜で覆った状態とし、その後、時刻t3の処理に戻るまでの間、版胴120の回転を停止させた状態で待機してもよい。時刻t11以降、時刻t3の処理に戻るまでの間、版胴120の回転を停止させれば、スクレーパー123(実施例2では第1ドクターブレード121)の両サイドに形成されるインキ帯2d(
図6参照)の成長を抑制することができ、インキ2の消費量をさらに抑制することができる。