【実施例1】
【0025】
本発明の調剤監督業務支援システムの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、(a)がシステム要部のハードウェアのブロック図、(b)が群管理装置30(管理装置)及び中央管理装置40(管理装置)の何れもが保持する共通データの一例である。
【0026】
この調剤監督業務支援システムは(
図1(a)参照)、離れて点在しているが同じ薬局チェーンに属している複数(図では4つ)の店舗(薬局)10,10,…を対象として、調剤業務の能率向上や適正化を推し進めるべく、調剤作業の進行状況を把握して調剤作業を的確に監督するために、それぞれの店舗10に一組ずつ設置されて店舗内LANで接続された調剤用機器11〜19及び群管理装置30(管理装置)を4組と、チェーン本部などに設置されており何れの群管理装置30,30,…に対しても店舗外WANで接続されている中央管理装置40(管理装置)とを具えている。
【0027】
調剤用機器11〜19は、設置先の店舗10で処理すべき処方箋である処理対象処方箋の処方データを取得する処方データ取得手段11,12と、設置先の店舗10で処方データに応じて行われた調剤作業に係る調剤実行情報を取得してデータ送信する調剤実行情報取得手段13〜19とに大別される。そのうち後者の調剤実行情報取得手段13〜19は、調剤作業が実際に行われる場所に設置された調剤機や調剤設備などの調剤実行部13〜18と、調剤作業者20が携帯していて調剤実行部13〜18での調剤作業の際に適宜操作する一個または複数個の携帯端末19,19,…とに分けられる。
【0028】
さらに、そのうち調剤実行部13〜18は、薬局での調剤作業の内容に応じて幾つかの調剤ブロックに区分されており、この例では、剤形を変えないで薬剤を必要個数だけ取り揃える計数調剤ブロック13と、散剤を秤で量って必要量だけ取り分ける秤量散薬調剤を行う秤量調剤ブロック14と、水薬を瓶で取り揃えたり注射器で取り分けたりする水薬調剤ブロック15と、軟膏をチューブで取り揃えたり混ぜ合わせたりする軟膏調剤ブロック16と、錠剤や散薬を服用単位で一包化する分包調剤ブロック17と、各ブロックで行われた調剤の結果を処方データ(処方箋)や調剤指示データ(調剤指示箋)と照合する作業監査業務ブロック18とに区分されている。
【0029】
この監査業務ブロック18での監査作業は、他の調剤ブロック13〜17での調剤作業を統べる役目を持つので、調剤ブロックと呼ぶのが適当でない部分もあるが、データ処理の都合などから、ここでは、便宜上、調剤ブロックの一つとしている。
処方データ取得手段11,12は、処方データを薬局内での処方箋処理にて取得するものの典型例として、受付で受領した処方箋を手入力するレセプトコンピュータ11と、光学式文字読取等の処方箋読取装置12とを図示したが、薬局外に設けられている公知の処方オーダリングシステム等からデータ配信にて取得する装置であっても良い。
【0030】
計数調剤ブロック13は、アンプルやPTP包装剤など計数調剤に適した薬剤を収納した調剤機や薬品棚が設置されており、自動化された調剤機は、調剤指示データ(処方データ)の受信から処方薬剤の払い出しまで自動で行うとともに調剤指示データの識別情報や調剤作業の開始終了などの調剤実行情報を群管理装置30に通知するようになっているが、自動化されていない薬品棚は、調剤作業者20が紙や携帯端末19で調剤指示箋を見ながら手作業で棚から必要な薬剤を取り出すようになっており、その手揃え調剤に際し、調剤作業者20は携帯端末19を操作することで剤種等の調剤内容や調剤作業の開始終了などの調剤実行情報を群管理装置30に通知するようになっている。
【0031】
秤量調剤ブロック14は、秤量調剤に適した散薬を収納した調剤機や薬品棚が設置されており、自動化された調剤機は、やはり調剤指示データ(処方データ)の受信から処方薬剤の払い出しまで自動で行うとともに調剤指示データの識別情報や調剤作業の開始終了などの調剤実行情報を群管理装置30に通知するようになっているが、自動化されていない薬品棚は、やはり調剤作業者20が紙や携帯端末19で調剤指示箋を見ながら手作業で棚の散薬瓶から必要な散薬を取り出すようになっており、その手揃え調剤に際し、調剤作業者20は携帯端末19を操作することで秤量値等の調剤内容や調剤作業の開始終了などの調剤実行情報を群管理装置30に通知するようになっている。
【0032】
水薬調剤ブロック15は、取り扱い対象の薬剤が水剤であるが、上述したのと同様の調剤機や調剤棚が設置されており、同様にして調剤実行情報を群管理装置30に通知するようになっている。
軟膏調剤ブロック16は、取り扱い対象の薬剤が軟膏であるが、やはり、上述したのと同様の調剤機や調剤棚が設置されており、同様にして調剤実行情報を群管理装置30に通知するようになっている。
【0033】
分包調剤ブロック17は、調剤指示データ(処方データ)の受信から処方薬剤の分包まで自動で行う分包機が設けられていて、基本的に分包機が調剤指示データの識別情報や調剤作業の開始終了などの調剤実行情報を群管理装置30に通知するが、分包対象に非実装薬品が含まれていると、調剤作業者20による手撒き作業が必要になるため、調剤作業の負担量はかなり大きく、その薬剤手撒き(手揃え調剤)に際して調剤作業者20が携帯端末19を操作して調剤実行情報を群管理装置30に通知するようになっているものもある。例えば、分包機から取り外せる手撒きカセットに予め薬剤を手撒きしておく調剤作業は、携帯端末19を操作して調剤実行情報を群管理装置30に通知する対象となりうる。
【0034】
監査業務ブロック18は、処方データ表示機能に加えて計数機能や読取機能も具備した監査支援装置が設置されていればそれを利用して自動的に監査作業の開始や終了などの擬似的な調剤実行情報を群管理装置30に通知することができるが、監査担当者が手作業で調剤済み薬剤を監査台上に広げてチェックすることが多いので、大抵は、監査担当者が携帯端末19かその代用の固定装置を操作して調剤内容や調剤作業の開始終了などの調剤実行情報を群管理装置30に通知するようになっている。
【0035】
携帯端末19は、調剤作業を総て又は部分的に調剤作業者20に委ねて、処方データのうち該当部分だけからなる調剤指示を画面表示することと、剤種等の調剤内容や調剤作業の開始終了といった調剤実行情報を無線LAN経由で群管理装置30に通知することとを行うものであり、何れの調剤実行部13〜18でも容易かつ的確に使用できるよう、それぞれの調剤実行部13〜18の薬品棚等に付されて剤種を示す薬品名や薬品コードといった必要情報を読み取る光学式読取機能に加え、調剤作業の開始終了時刻の分かる時計機能、さらには無線通信機能も具備していて、作業者20の操作に応じて動作する。
【0036】
群管理装置30は、情報処理に適したプログラマブルな汎用コンピュータ等からなり、LANを介して処方データ取得手段11,12から各店舗10で処理すべき処方データを取得するとともに、やはりLANを介して調剤実行情報取得手段13〜19から調剤実行情報を受信してデータ収集するようになっている。群管理装置30は、取得した処方データから必要なら抽出や分解なども行って調剤指示データを作成し、そのうち自動処理可能な調剤指示を調剤ブロック13〜17の自動調剤機へ適宜な時期に送信し、手揃えの必要な調剤指示を携帯端末19への送信待ちデータとして保持するようにもなっている。
【0037】
また、群管理装置30は、調剤監督業務支援に役立つデータを収集して処理するためメモリにデータ領域を確保しており、そこには(
図1(b)参照)、薬局識別情報と処理対象処方箋数と処理済み処方箋数と処理不明処方箋数と処理不明処方箋率と平均調剤時間と店舗の一人当り処理量とが個別データの形で保持されるようになっている。
また、配列データ・表データの形で、ヒット率と調剤実行数と係数と調剤処理量と処理人数と一人当り処理量とをそれぞれ計数調剤ブロック13と秤量調剤ブロック14と水薬調剤ブロック15と軟膏調剤ブロック16と分包調剤ブロック17と監査業務ブロック18とに対応づけるデータ群が保持されるようになっている。
さらに、図示は割愛したが、調剤内容や調剤作業の開始終了などの調剤実行情報が、適宜な集計時間帯たとえば各営業日に亘ってデータ蓄積されるようにもなっている。
【0038】
薬局識別情報には薬局を識別可能な店舗名などが予め初期設定されており、係数についても、各調剤ブロック13〜17に対応づけた係数値(図示の例では1.0と2.0と1.5と1.6と1.8)が予め設定されるが、これらの係数値は、監督者等が最初は見込みで採用した値であり、再評価後など何度でも修正・変更できるようになっている。各調剤ブロック13〜17の処理人数も、人員配置に変更があれば、対応する値に変更される。これに対し、他のデータは、適宜な集計時間帯毎に例えば各営業日毎に、先ずクリアされ、それからデータ収集の度に計算し直しや再集計が行われるようになっている。
【0039】
群管理装置30による各データ値の算出の仕方について、具体的例を挙げると、処理対象処方箋数は、処方データ取得手段11,12にて処方データを一つ取得する度に一つずつ増やし、処理済み処方箋数は、一つの処方データに係る全ての調剤指示データについて調剤実行情報取得手段13〜19から作業終了が通知されると、その度に一つずつ増やし、処理不明処方箋数は、処理対象処方箋数から処理済み処方箋数を減じることで算出し、処理不明処方箋率は、処理不明処方箋数を処理対象処方箋数で割ることで算出し、平均調剤時間は、データ収集できた調剤作業の開始終了などから得られる調剤時間の総和を算出してからそれを処理済み処方箋数で割ることで算出するようになっている。
【0040】
また、群管理装置30は、調剤実行部13〜18それぞれに対応する調剤ブロック毎に、該当する調剤ブロックで処理される調剤指示を含んでいた該当ブロック向け処方データ及びその調剤実行情報から、ヒット率と調剤実行数と調剤処理量と一人当り処理量を算出するが、その際、ヒット率は、該当ブロック向け処方データの個数を処理済み処方箋数または処理対象処方箋数で割ることで算出し、調剤実行数は、処理済み処方箋枚数にヒット率を乗じることで算出し、調剤処理量は、調剤実行数に係数を掛けることで算出し、一人当り処理量は、調剤処理量を処理人数で割ることで算出するようになっている。なお、調剤実行数は、該当ブロック向け調剤作業終了通知の個数や,該当ブロック向け処理済み処方箋枚数,該当ブロック向け処方データの個数などの何れかが直截的で分かり易いので、そのようにしても良いが、そうすると、一つの処方データ(処方箋)が複数の調剤ブロックにヒットした場合に、値が極端になりがちなので、ヒット率を掛けることで、中庸をとっているのである。また、監査業務ブロック18については、少し異なり、ヒット率を100%にし、調剤処理量を他ブロックの調剤処理量の合計値にするようになっている。
【0041】
さらに、群管理装置30は、調剤実行部13〜18それぞれに対応する調剤ブロック毎に調剤時間を算出して、それらを図示は割愛したが上述した配列データ・表データの拡張形で或いは別の単列形データの形で保持するようになっている。調剤ブロックの調剤時間は、調剤実行部13〜18からデータ収集した調剤実行情報のうち該当ブロックに係るデータから個々の調剤作業に費やされた時間を求め、それを足し合わせることで算出するようになっている。
また、群管理装置30は、上述のようにして算出したデータ値を、モニタ画面等に常時または指定時の適宜な時に表示するとともに、監督者等の指示に応じてプリンタ等で印刷するようにもなっている。
【0042】
中央管理装置40は、上述した群管理装置30が確保していたデータ領域(
図1(b)参照)を監督対象の複数店舗10,10,…それぞれについて確保するとともに、各店舗10毎に、該当する群管理装置30が保持するデータ値を同様に保持するようになっている。薬局識別情報の店舗名や各調剤ブロックの調剤実行数および処理人数は、群管理装置30と同様にして予め設定しても良いが、何れかの群管理装置30に設定されると直ちに又は後に操作指示等に応じて群管理装置30からWAN経由で取得してコピーするようになっている。その他のデータ値についても、群管理装置30からWAN経由で調剤実行情報を取得して群管理装置30と同様に算出しても良いが、やはり何れかの群管理装置30で算出されると直ちに又は後に操作指示等に応じて群管理装置30からWAN経由で取得してコピーするようになっている。
【0043】
また、中央管理装置40は、それらのデータ値を、やはりモニタ画面等に常時または指定時の適宜な時に表示するとともに、監督者等の指示に応じてプリンタ等で印刷することで、目視可能に提示するが、複数の店舗10,10,…に係るデータを保持しているので、店舗10毎の切り替え提示と、複数の店舗10,10,…に係る列挙提示とを選択できるうえ、その列挙提示では、複数の店舗10,10,…について、処理不明処方箋率を含むデータを目視可能に列挙して提示するとともに、その列挙に際して処理不明処方箋率の大小に基づいて各店舗10の並び順を定めることができる。例えば、昇順か降順と上下か左右とが選択可能であり、その選択に従って、昇順か降順いずれか指定された順序で、上下か左右いずれか指定された方向に、一列に並べてから、提示するようになっている。
【0044】
この実施例1の調剤監督業務支援システムについて、その使用態様及び動作を、説明する。ここでは、営業日毎にデータの収集や集計を行う場合を例にして説明する。
【0045】
各店舗10では、夜間や早朝など薬局業務開始前に群管理装置30を操作してメモリの各データをクリアしてから、処方箋の受付や調剤作業を行う。ただし、薬局識別情報と係数と処理人数は、そのような初期化ではクリアされない一方、個別であれば何時でも変更できる設定データなので、修正の必要が生じたら、その度に変更する。
そうすることで、人員配置の変更などの影響が集計結果に速やかに反映される。
【0046】
薬局業務を開始して処方箋の受付等が始まると、処方データ取得手段11,12によって処方データが取得され、その処方データに基づき群管理装置30によって処理対象処方箋数と各調剤ブロックのヒット率が更新されるとともに調剤指示データが作成される。
調剤指示データが調剤ブロック13〜17の自動調剤機で処理できる場合は自動調剤機が使用可能になると調剤指示データが群管理装置30から自動調剤機に送信されるが、そうでない場合、中でも手揃え調剤の場合は、群管理装置30に保持されて携帯端末19からの要求待ち行列に繋がれる。また、全ての処方データとそれから派生した調剤指示データが群管理装置30から監査業務ブロック18に送信されて調剤監査に供される。
【0047】
そして、調剤ブロック13〜17の自動調剤機で調剤指示データが受理されて該当する調剤作業が自動で実行されると、その内容や開始終了などの調剤実行情報が自動調剤機から群管理装置30に送信されてデータ収集され、群管理装置30によって、処理済み処方箋数と処理不明処方箋数と処理不明処方箋率と平均調剤時間が算出されるとともに、該当する調剤ブロックについて調剤実行数と調剤処理量と一人当り処理量と調剤時間が算出される。さらに、それらの調剤実行情報および/又は算出値が群管理装置30から中央管理装置40に送信されて、中央管理装置40には複数の店舗10,10,…に係る収集データや集計値が集められる。
【0048】
調剤指示データが手揃え調剤などで要求待ち行列に繋がれている場合、調剤作業者20が調剤指示に従って必要な薬剤を薬品棚などから手作業で取り揃えるが、その調剤作業に際し、調剤作業者20が、保持している携帯端末19を操作して、調剤指示データを表示させて選択したり、調剤作業の開始や終了を入力したり、薬剤取出先の薬品棚に付された薬品コードを読み取らせる、といったことを携帯端末19に行わせると、それらの操作に応じて調剤実行情報が携帯端末19から群管理装置30へ送信されるので、上述した自動調剤と同様に、該当する店舗10に係る処理済み処方箋数などのデータ値が群管理装置30によって算出され、同様の調剤実行情報や算出値が中央管理装置40にも蓄積される。ただし、調剤作業者20が上述の作業のうち薬剤の取り揃えは行っても携帯端末19の操作を行わなかった場合、データの収集や集計は行われない。
【0049】
このような調剤作業が繰り返されて、一日の薬局業務が終わると、群管理装置30には設置先の店舗10に係る処理不明処方箋率や一人当り処理量などの算出値が得られ、中央管理装置40に複数の店舗10,10,…に掛かる同様の算出値が得られる。そして、それらのデータを表示や印刷にて可視化させて見比べることにより、群管理装置30のある店舗10では、調剤ブロック間での人員配置などを適正化することが効率良くでき、中央管理装置40のある本部では、店舗間での人員配置などを適正化することまで効率良くできる。また、本部では、処理不明処方箋率の大小順で列挙されたリストに基づき、各店舗10,10,…に対して例えばリスト順に強弱を付けて、携帯端末19の使用による調剤作業の確認を促す等のことにより、調剤漏れや過誤調剤などを的確に防止するとともに、データ集計の精度を向上させ延いてはそれに基づく監督の的確性も向上させることができる。
【0050】
[その他]
上記実施例では、処理不明処方箋数と処理対象処方箋数との比を算出して薬局での処理不明処方箋率を求めていたが、薬局での処理不明処方箋率は、処理不明処方箋数と処理済み処方箋数との比を算出して代用することもできる。
上記実施例では、群管理装置30が何れも設置先の店舗10のデータだけ収集して処理するようになっていたが、中央管理装置40と同様に何れか一つ又は複数の群管理装置30がWAN経由で他の店舗10,10,…のデータまで収集して処理するようにしても良い。群管理装置30と中央管理装置40は、データの収集や処理が可能であれば、別装置である必要はなく、一体の又は少数個の管理装置に集約しても良い。
上記実施例では、管理装置30,40によって一人当り処理量などがデータ収集の度に算出されるようになっていたが、それらの算出は、監督者等が管理装置30,40に算出指示を与えたときだけ行うようにしても良い。