特許第6233818号(P6233818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233818
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】地盤注入用固結材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/12 20060101AFI20171113BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20171113BHJP
   C09K 17/08 20060101ALI20171113BHJP
   C09K 17/46 20060101ALI20171113BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20171113BHJP
   C09K 103/00 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   C09K17/12 P
   C09K17/02 P
   C09K17/08 P
   C09K17/46 P
   E02D3/12 101
   C09K103:00
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-63439(P2016-63439)
(22)【出願日】2016年3月28日
(62)【分割の表示】特願2012-56239(P2012-56239)の分割
【原出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2016-153499(P2016-153499A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】391003598
【氏名又は名称】富士化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹原 茂生
(72)【発明者】
【氏名】松田 貴文
(72)【発明者】
【氏名】磯部 弘
(72)【発明者】
【氏名】大野 康年
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−241305(JP,A)
【文献】 特開2010−121083(JP,A)
【文献】 特開平10−036840(JP,A)
【文献】 特開2012−012483(JP,A)
【文献】 特開2001−019957(JP,A)
【文献】 特開2001−031968(JP,A)
【文献】 特開2001−003047(JP,A)
【文献】 特開2003−119465(JP,A)
【文献】 特開2010−185020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00− 17/52
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、並びに、硫酸及び/又はリン酸を含有する地盤注入用固結材の製造方法であって、
(1)前記地盤注入用固結材は、SiO濃度が10質量%超過であり、前記SiO中、前記コロイダルシリカに由来するSiO量が40質量%以下であり、
(2)施工現場において原料撹拌用の実機により、前記硫酸及び/又はリン酸に更にリン酸ナトリウム、クエン酸系化合物及び硫酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を混合した混合液を調製し、次いで前記混合液に前記珪酸ソーダ及び前記コロイダルシリカを同時又は順不同で混合することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
既存の岸壁、護岸又は構造物の耐震補強及び/又は周囲の地盤改良に用いる地盤注入用固結材を製造する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記耐震補強は、レベル2地震動に対する耐震補強である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記地盤注入用固結材は、一軸圧縮強度(28日強度)が420kN/m以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
部分ゲルの発生を抑制しながら前記地盤注入用固結材を得る、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記珪酸ソーダの供給速度が2100〜12000L/hであり、前記コロイダルシリカの供給速度が480L以上/hである、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の岸壁、護岸又は構造物の耐震補強及び/又は周囲の地盤改良に有用な地盤注入用固結材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コロイダルシリカ及び珪酸ソーダを含有する地盤注入用固結材は知られている。例えば、特許文献1の請求項1には、「コロイダルシリカと、水ガラス(珪酸ソーダ)とを含み、地盤への注入前にはそれ自体でゲル化しないアルカリ性シリカ溶液からなる地盤注入用固結材。」が記載されている。
【0003】
上記特許文献1には、コロイダルシリカと水ガラスの混合物(アルカリ性シリカ溶液)に反応剤として硫酸、リン酸、塩化アルミニウム等を添加できることが記載されている。この点について、特許文献1の[0029]段落には、「例えば、アルカリ性シリカ溶液に酸性反応剤を添加して該溶液を酸性〜中性領域に調整して所定のゲル化時間を有するグラウトとすることができる。」と記載されている。
【0004】
従来の地盤注入用固結材は、SiO濃度が10質量%を超えるものは調製することが困難であり、調製したとしても部分ゲル(白濁)が生じることにより粘性が高く、地盤への浸透性の点で十分な性能は得られない。この点、地山の改良や液状化現象の防止の様な用途に適用する場合には、SiO濃度が10質量%以下のものでも効果は得られるが、既存の岸壁、護岸又は構造物の耐震補強及び/又は周囲の地盤改良(特に海辺地域などの海水の影響を受ける地域)に適用する場合には、部分ゲルの発生を抑制した上でSiO濃度が10質量%を超える高強度(固結強度が大きい)の地盤注入用固結材が必要とされ ているが、要求性能を満足する地盤注入用固結材は未だ開発されていない。
【0005】
なお、実験室レベルでは、地盤注入用固結材の原料の混合液を高速撹拌することにより部分ゲルを発生させずにSiO濃度が10質量%を超えるものを調製することができる場合があるが、施工現場で原料撹拌用の実機により同様の高速撹拌を行うことは困難であり、高速撹拌に頼らずに高強度の地盤注入用固結材を調製する方法を開発することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−3047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、部分ゲルの発生が抑制されており、SiO濃度が10質量%を超える地盤注入用固結材を提供することを目的とする。また、高速撹拌に頼らずに上記の地盤注入用固結材を調製することができる製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の酸及び添加剤を併用する場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の地盤注入用固結材の製造方法に関する。
1.コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、並びに、硫酸及び/又はリン酸を含有する地盤注入用固結材の製造方法であって、
(1)前記地盤注入用固結材は、SiO濃度が10質量%超過であり、前記SiO中、前記コロイダルシリカに由来するSiO量が40質量%以下であり、
(2)施工現場において原料撹拌用の実機により、前記硫酸及び/又はリン酸に更にリン酸ナトリウム、クエン酸系化合物及び硫酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を混合した混合液を調製し、次いで前記混合液に前記珪酸ソーダ及び前記コロイダルシリカを同時又は順不同で混合することを特徴とする製造方法。
2.既存の岸壁、護岸又は構造物の耐震補強及び/又は周囲の地盤改良に用いる地盤注入用固結材を製造する、上記項1に記載の製造方法。
3.前記耐震補強は、レベル2地震動に対する耐震補強である、上記項2に記載の製造方法。
4.前記地盤注入用固結材は、一軸圧縮強度(28日強度)が420kN/m以上である、上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5.部分ゲルの発生を抑制しながら前記地盤注入用固結材を得る、上記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6.前記珪酸ソーダの供給速度が2100〜12000L/hであり、前記コロイダルシリカの供給速度が480L以上/hである、上記項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【0010】
以下、本発明の地盤注入用固結材及びその製造方法について詳細に説明する。
【0011】
地盤注入用固結材
本発明の地盤注入用固結材は、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、並びに、硫酸及び/又はリン酸を含有する地盤注入用固結材であって、
(1)前記地盤注入用固結材は、更にリン酸系化合物、クエン酸系化合物及び硫酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有し、
(2)前記地盤注入用固結材は、SiO濃度が10質量%超過であり、前記SiO中、前記コロイダルシリカに由来するSiO量が40質量%以下であることを特徴とする。
【0012】
上記特徴を有する本発明の地盤注入用固結材は、特定の酸及び添加剤を併用するため、SiO濃度は10質量%超過であるが部分ゲルの発生は抑制されている。即ち、部分ゲルの発生が抑制されている点で地盤への浸透性が高く、SiO濃度が10質量%超過である点で従来品よりも固結強度が高い。よって、本発明の地盤注入用固結材は、いわゆる液状化防止用途よりも高強度を要求される既存の岸壁、護岸又は構造物の耐震補強及び/又は周囲の地盤改良(特に海辺地域などの海水の影響を受ける地域)に適用する場合に優れた効果を発揮することができる。
【0013】
上記コロイダルシリカは、コロイド状の性状を示し、それ単独では半永久的にゲル化しない安定な物質である。コロイダルシリカとしては、市販品やそれに水を加えて希釈した希釈溶液を使用できる。
【0014】
コロイダルシリカに含まれるシリカ(SiO)の平均粒子径としては、3〜30nm程度が好ましく、4〜15nm程度がより好ましい。なお、本明細書に記載の平均粒子径は窒素吸着によるBET法(但しBET法で測定困難な微粒子については動的光散乱法)により測定した値である。
【0015】
コロイダルシリカに含まれるシリカ濃度としては、20〜50質量%程度が好ましい。
【0016】
このようなコロイダルシリカは調製することもできる。例えば、珪酸ソーダの水希釈液をイオン交換により脱アルカリ処理し、次いで得られた活性珪酸にアルカリ剤を添加してpHを調整するとともに加熱により造粒することにより調製する。
【0017】
上記珪酸ソーダとしても、市販品やそれに水を加えて希釈した希釈溶液を使用できる。
【0018】
珪酸ソーダのモル比(SiO/NaO)は限定されないが、2.0〜5.2程度が好ましく、汎用の珪酸ソーダが使えるため、3.1〜3.8程度がより好ましい。
【0019】
珪酸ソーダに含まれるシリカ濃度としては、24〜30質量%程度が好ましい。
【0020】
上記コロイダルシリカと珪酸ソーダの割合(混合割合)に関しては、地盤注入用固結材中のSiO(換算値)において、コロイダルシリカに由来するSiO量が40質量%以下(好ましくは15〜40質量%)となるように割合を調整する。コロイダルシリカに由来するSiO量が40質量%を超えると固結強度が十分に得られなくなるおそれがある。また、コロイダルシリカに由来するSiO量が15質量%未満となると地盤注入用固結材に収縮低減効果を十分に与えられないおそれがある。
【0021】
本発明では、酸として硫酸及び/又はリン酸を用いる。これらの酸としては、酸濃度が50〜80質量%の酸原液又はそれを水希釈した酸水溶液を使用できる。酸の量は、地盤注入用固結材の所望のゲルタイム(即ちpH)に応じて設定する。
【0022】
本発明では、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ及び酸(硫酸及び/又はリン酸)以外に、リン酸、リン酸ナトリウム、クエン酸及び硫酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を用いる。添加剤(水希釈物も含む)を用いることにより、部分ゲルの発生を抑制しつつSiO濃度が10質量%超過である地盤注入用固結材を高速撹拌に頼らずに調製することができる。特に、酸及び添加剤の混合物に珪酸ソーダ及びコロイダルシリカを同時又は順不同で混合する製造方法によれば、部分ゲルの発生を抑制することができるため、浸透性に優れた粘性を確保しつつSiO濃度が10質量%超過である高濃度の地盤注入用固結材を調製することができる。添加剤の含有量は酸の量に対して変わるが、通常は酸100質量部に対して添加剤2〜50質量部程度が好ましい。
【0023】
本発明の地盤注入用固結材は上記成分以外に各成分の希釈用の水を含むことができる。本発明の地盤注入用固結材のSiO濃度は10質量%超過であり、11質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、13質量%以上が更に好ましく、上限値としては15質量%程度である。SiO濃度が14質量%程度の高濃度な地盤注入用固結材は、例えば、酸として硫酸を使用し、添加剤としてリン酸を使用する場合に調製し易い。
【0024】
本発明の地盤注入用固結材は、SiO濃度が10質量%超過である点で従来品よりも固結強度が高い。具体的には、好ましくは一軸圧縮強度(28日強度:qu)が300kPa以上であり、好ましい実施態様では400〜800kPa程度である。よって、いわゆる液状化防止用途よりも高強度を要求される既存の岸壁、護岸又は構造物の耐震補強及び/又は周囲の地盤改良(特に海辺地域などの海水の影響を受ける砂質地盤)に適用する場合に優れた効果を発揮することができる。より具体的には、既存の岸壁、護岸又は構造物(タンク、建造物、橋脚、滑走路等)の耐震補強(レベル2地震動対応)、岸壁増深時の岸壁前面の地盤改良、岸壁背面地盤の土圧低減、既存の構造物の下部地盤の支持力増加などの用途において優れた効果を発揮することができる。なお、上記「レベル2地震動」とは、土木学会が定義する構造物の耐震設計に用いる入力地震動であり、「現在から将来にわたって当該地点で考えられる最大級の強さをもつ地震動」を意味する。
【0025】
地盤注入用固結材の製造方法
本発明の地盤注入用固結材の製造方法は、上記成分を含有し、部分ゲルの発生を抑制しつつSiO濃度が10質量%超過である地盤注入用固結材を調製することができる限り特に限定されないが、酸及び添加剤の混合物に珪酸ソーダ及びコロイダルシリカを同時又は順不同で混合する製造方法によれば、部分ゲルの発生を抑制することができるため、浸透性に優れた粘性を確保しつつSiO濃度が10質量%超過である高濃度の地盤注入用固結材を高速撹拌に頼らなくとも調製し易い。
【0026】
即ち、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、並びに、硫酸及び/又はリン酸を含有する地盤注入用固結材の製造方法であって、
(1)前記地盤注入用固結材は、SiO濃度が10質量%超過であり、前記SiO中、前記コロイダルシリカに由来するSiO量が40質量%以下であり、
(2)前記硫酸及び/又はリン酸に更にリン酸系化合物、クエン酸系化合物及び硫酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を混合した混合液を調製し、次いで前記混合液に前記珪酸ソーダ及び前記コロイダルシリカを同時又は順不同で混合することを特徴とする製造方法によって好適に製造することができる。
【0027】
なお、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、酸(硫酸及び/又はリン酸)及び添加剤の説明は前記の通りであり、またいずれも原液若しくは水希釈物のいずれも使用できる。
【0028】
酸及び添加剤の混合物(水希釈物を含む)へのコロイダルシリカの供給速度は限定されないが、地盤注入用固結材を1000L調製する場合は、480L以上/h程度が好ましく、960L以上/h程度がより好ましい。また、同様に、珪酸ソーダの供給速度も限定されないが、地盤注入用固結材を1000L調製する場合は、2100〜12000L/h程度が好ましく、4200〜9000L/h程度がより好ましい。
【0029】
なお、珪酸ソーダ及びコロイダルシリカを同時に混合する態様は、珪酸ソーダの添加工程及びコロイダルシリカの添加工程が一部又は全部重複していてもよいことを示す意味であり、必ずしも添加開始と添加完了の時期を同時とする意味に限定されない。
【発明の効果】
【0030】
本発明の地盤注入用固結材は、特定の酸及び添加剤を併用するため、SiO濃度は10質量%超過であるが部分ゲルの発生は抑制されている。即ち、部分ゲルの発生が抑制されている点で地盤への浸透性が高く、SiO濃度が10質量%超過である点で従来品よりも固結強度が高い。よって、本発明の地盤注入用固結材は、いわゆる液状化防止用途よりも高強度を要求される既存の岸壁、護岸又は構造物の耐震補強及び/又は周囲の地盤改良(特に海辺地域などの海水の影響を受ける地域)に適用する場合に優れた効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に調製例及び試験例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は調製例に限定されない。
【0032】
調製例1〜9(地盤注入用固結材の調製)
≪使用材料≫
以下の調製例では下記の材料を用いた。
1)5号珪酸ソーダ
(SiO2:25.6質量%, Na2O:7.1質量%, モル比:3.7, 富士化学(株)製)
2)コロイダルシリカ
(SiO2:40.0質量%, Na2O:0.6質量%, 日産化学工業(株)製)
3)酸
・78%工業用硫酸
・75%工業用リン酸
4)添加剤
・75%工業用リン酸
・リン酸二水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)
・クエン酸(和光純薬工業(株)製)
・硫酸アルミニウム((株)北陸化成工業所製, 14から25水和物)
≪地盤注入用固結材の調製≫
A液:コロイダルシリカを水で希釈したもの
B液:5号珪酸ソーダを水で希釈したもの
C液:酸及び添加剤を水で希釈したもの
目標とする地盤注入用固結材のSiO濃度(質量%)と、それを調製するためのA液、B液及びC液の配合条件を下記表1及び表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
C液を混合容器に入れ、270rpmで撹拌した。B液を7300ml/hで全量滴下し、その後A液を一気に添加した。これにより、地盤注入用固結材を得た。各調製例における作液状況(部分ゲルの有無)を下記表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
SiO濃度が10質量%を超える地盤注入用固結剤は、従来は調製が困難であったが、本発明の実施態様(調製例1〜9)によれば、特定の添加剤を併用することにより、高速撹拌に頼ることなく調製することが可能である。
【0038】
試験例1(地盤注入後の一軸圧縮強さの比較)
SiO濃度又はコロイダルシリカの含有量を振った各種の地盤注入用固結材を用いて砂(豊浦砂)を固めて円柱の供試体(直径5cm、高さ10cm)を作製し、供試体の一軸圧縮強さを測定した。なお、地盤注入用固結材ごとに供試体を3本ずつ作製し、その平均値を求めた。
【0039】
供試体の作製方法及び測定方法は次の通りとした。
(1)円柱の型(内径5cm、高さ12cm)からその円柱の体積を求める。
(2)豊浦砂を、上記体積に対して相対密度50%になるように計量する。
(3)上記円柱の型に地盤注入用固結材を入れ、そこに計量した豊浦砂が均一になるように流し込む。
(4)地盤注入用固結材がゲル化して所定の材齢(28日)となるまで静置して待つ。
(5)ゲル化した後、円柱を高さ10cmになるように整えて供試体とする。
(6)供試体を圧縮強さ測定機で圧縮し、供試体が壊れた時の一軸圧縮強さを測定する。一軸圧縮強さの単位は(圧力/単位面積)である。
(試験例1−1)
コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、硫酸、添加剤(リン酸、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸及び硫酸アルミニウム)並びに水の混合量を調整することにより、SiO濃度が10、12及び14質量%の地盤注入用固結材を調製した。なお、原料の詳細及び原料の配合順序については、前記調製例で使用したものと同じである。
【0040】
各地盤注入用固結材を用いた供試体の一軸圧縮強さの測定結果は下記の通りである。
【0041】
【表4】
【0042】
いずれの添加剤を用いた場合でも、SiO濃度が10質量%超過となることにより、有意に供試体の一軸圧縮強度が高められることが分かる。なお、添加剤を用いずにSiO濃度が10質量%の地盤注入用固結材を調製し、それを用いて供試体を作製した場合の一軸圧縮強度は400kN/mであるため、SiO濃度が10質量%以下の既知の地盤注入用固結材の場合も添加剤を添加することにより供試体の一軸圧縮強さを改善できることが分かる。
(試験例1−2)
コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、硫酸、添加剤(リン酸)並びに水を混合することにより、SiO濃度が13質量%の地盤注入用固結材を調製した。なお、原料の詳細及び原料の配合順序については、前記調製例で使用したものと同じであり、SiO中のコロイダルシリカに由来するSiO量を0、20、50及び70に振ることにより4種類の地盤注入用固結材を調製した。
【0043】
各地盤注入用固結材を用いた供試体の一軸圧縮強さの測定結果は下記の通りである。
【0044】
【表5】
【0045】
表5の結果より、SiO中のコロイダルシリカに由来するSiO量が増えるにつれて一軸圧縮強さが低下することが分かる。なお、コロイダルシリカに由来するSiO量が90質量%になると地盤注入用固結材はゲル化しないことも分かった。一軸圧縮強さの点からはコロイダルシリカに由来するSiO量は40質量%以下とすることが望ましい。
【0046】
試験例2(原料の添加順序と作液状況との関連性)
(調製例10)
A液(コロイダルシリカ)とB液(珪酸ソーダ)の混合順序を逆にした以外は、調製例5と同様にして地盤注入用固結材を調製した。即ち、C液(硫酸+添加剤)にA液を混合後、B液を混合する順序とした。
(調製例11)
A液(コロイダルシリカ)とB液(珪酸ソーダ)を同時に混合した以外は、調製例5と同様にして地盤注入用固結材を調製した。即ち、C液(硫酸+添加剤)に対してA液及びB液を同時に混合する順序とした。
(比較調製例12)
A液(コロイダルシリカ)にC液(硫酸+添加剤)を混合後、B液(珪酸ソーダ)を混合する順序とした以外は、調製例5と同様にして地盤注入用固結材を調製した。
(比較調製例13)
添加剤をC液ではなくA液に配合し、且つ、A液(コロイダルシリカ+添加剤)にB液(珪酸ソーダ)を混合後、C液(硫酸)を混合する順序とした以外は、調製例5と同様にして地盤注入用固結材を調製した。
(比較調整例14)
A液(コロイダルシリカ)にB液(珪酸ソーダ)を混合後、C液(硫酸+添加剤)を混合する順序とした以外は、調製例5と同様にして地盤注入用固結材を調製した。
【0047】
各調製例10〜14における作液状態は下記の通りである。
【0048】
【表6】
【0049】
表6の結果より、本発明では酸に添加剤を混合した混合液を調製し、次いで前記混合液に前記珪酸ソーダ及び前記コロイダルシリカを同時又は順不同で混合する順序で地盤注入用固結材を調製することが適切であることが分かる。