【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の酸及び添加剤を併用する場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の地盤注入用固結材の製造方法に関する。
1.コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、並びに、硫酸及び/又はリン酸を含有する地盤注入用固結材の製造方法であって、
(1)前記地盤注入用固結材は、SiO
2濃度が10質量%超過であり、前記SiO
2中、前記コロイダルシリカに由来するSiO
2量が40質量%以下であり、
(2)施工現場において原料撹拌用の実機により、前記硫酸及び/又はリン酸に更に
リン酸ナトリウム、クエン酸系化合物及び硫酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を混合した混合液を調製し、次いで前記混合液に前記珪酸ソーダ及び前記コロイダルシリカを同時又は順不同で混合することを特徴とする製造方法。
2.既存の岸壁、護岸又は構造物の耐震補強及び/又は周囲の地盤改良に用いる地盤注入用固結材を製造する、上記項1に記載の製造方法。
3.前記耐震補強は、レベル2地震動に対する耐震補強である、上記項2に記載の製造方法。
4.前記地盤注入用固結材は、一軸圧縮強度(28日強度)が420kN/m
2以上である、上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5.部分ゲルの発生を抑制しながら前記地盤注入用固結材を得る、上記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6.前記珪酸ソーダの供給速度が2100〜12000L/hであり、前記コロイダルシリカの供給速度が480L以上/hである、上記項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【0010】
以下、本発明の地盤注入用固結材及びその製造方法について詳細に説明する。
【0011】
地盤注入用固結材
本発明の地盤注入用固結材は、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、並びに、硫酸及び/又はリン酸を含有する地盤注入用固結材であって、
(1)前記地盤注入用固結材は、更にリン酸系化合物、クエン酸系化合物及び硫酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有し、
(2)前記地盤注入用固結材は、SiO
2濃度が10質量%超過であり、前記SiO
2中、前記コロイダルシリカに由来するSiO
2量が40質量%以下であることを特徴とする。
【0012】
上記特徴を有する本発明の地盤注入用固結材は、特定の酸及び添加剤を併用するため、SiO
2濃度は10質量%超過であるが部分ゲルの発生は抑制されている。即ち、部分ゲルの発生が抑制されている点で地盤への浸透性が高く、SiO
2濃度が10質量%超過である点で従来品よりも固結強度が高い。よって、本発明の地盤注入用固結材は、いわゆる液状化防止用途よりも高強度を要求される既存の岸壁、護岸又は構造物の耐震補強及び/又は周囲の地盤改良(特に海辺地域などの海水の影響を受ける地域)に適用する場合に優れた効果を発揮することができる。
【0013】
上記コロイダルシリカは、コロイド状の性状を示し、それ単独では半永久的にゲル化しない安定な物質である。コロイダルシリカとしては、市販品やそれに水を加えて希釈した希釈溶液を使用できる。
【0014】
コロイダルシリカに含まれるシリカ(SiO
2)の平均粒子径としては、3〜30nm程度が好ましく、4〜15nm程度がより好ましい。なお、本明細書に記載の平均粒子径は窒素吸着によるBET法(但しBET法で測定困難な微粒子については動的光散乱法)により測定した値である。
【0015】
コロイダルシリカに含まれるシリカ濃度としては、20〜50質量%程度が好ましい。
【0016】
このようなコロイダルシリカは調製することもできる。例えば、珪酸ソーダの水希釈液をイオン交換により脱アルカリ処理し、次いで得られた活性珪酸にアルカリ剤を添加してpHを調整するとともに加熱により造粒することにより調製する。
【0017】
上記珪酸ソーダとしても、市販品やそれに水を加えて希釈した希釈溶液を使用できる。
【0018】
珪酸ソーダのモル比(SiO
2/Na
2O)は限定されないが、2.0〜5.2程度が好ましく、汎用の珪酸ソーダが使えるため、3.1〜3.8程度がより好ましい。
【0019】
珪酸ソーダに含まれるシリカ濃度としては、24〜30質量%程度が好ましい。
【0020】
上記コロイダルシリカと珪酸ソーダの割合(混合割合)に関しては、地盤注入用固結材中のSiO
2(換算値)において、コロイダルシリカに由来するSiO
2量が40質量%以下(好ましくは15〜40質量%)となるように割合を調整する。コロイダルシリカに由来するSiO
2量が40質量%を超えると固結強度が十分に得られなくなるおそれがある。また、コロイダルシリカに由来するSiO
2量が15質量%未満となると地盤注入用固結材に収縮低減効果を十分に与えられないおそれがある。
【0021】
本発明では、酸として硫酸及び/又はリン酸を用いる。これらの酸としては、酸濃度が50〜80質量%の酸原液又はそれを水希釈した酸水溶液を使用できる。酸の量は、地盤注入用固結材の所望のゲルタイム(即ちpH)に応じて設定する。
【0022】
本発明では、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ及び酸(硫酸及び/又はリン酸)以外に、リン酸、リン酸ナトリウム、クエン酸及び硫酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を用いる。添加剤(水希釈物も含む)を用いることにより、部分ゲルの発生を抑制しつつSiO
2濃度が10質量%超過である地盤注入用固結材を高速撹拌に頼らずに調製することができる。特に、酸及び添加剤の混合物に珪酸ソーダ及びコロイダルシリカを同時又は順不同で混合する製造方法によれば、部分ゲルの発生を抑制することができるため、浸透性に優れた粘性を確保しつつSiO
2濃度が10質量%超過である高濃度の地盤注入用固結材を調製することができる。添加剤の含有量は酸の量に対して変わるが、通常は酸100質量部に対して添加剤2〜50質量部程度が好ましい。
【0023】
本発明の地盤注入用固結材は上記成分以外に各成分の希釈用の水を含むことができる。本発明の地盤注入用固結材のSiO
2濃度は10質量%超過であり、11質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、13質量%以上が更に好ましく、上限値としては15質量%程度である。SiO
2濃度が14質量%程度の高濃度な地盤注入用固結材は、例えば、酸として硫酸を使用し、添加剤としてリン酸を使用する場合に調製し易い。
【0024】
本発明の地盤注入用固結材は、SiO
2濃度が10質量%超過である点で従来品よりも固結強度が高い。具体的には、好ましくは一軸圧縮強度(28日強度:qu)が300kPa以上であり、好ましい実施態様では400〜800kPa程度である。よって、いわゆる液状化防止用途よりも高強度を要求される既存の岸壁、護岸又は構造物の耐震補強及び/又は周囲の地盤改良(特に海辺地域などの海水の影響を受ける砂質地盤)に適用する場合に優れた効果を発揮することができる。より具体的には、既存の岸壁、護岸又は構造物(タンク、建造物、橋脚、滑走路等)の耐震補強(レベル2地震動対応)、岸壁増深時の岸壁前面の地盤改良、岸壁背面地盤の土圧低減、既存の構造物の下部地盤の支持力増加などの用途において優れた効果を発揮することができる。なお、上記「レベル2地震動」とは、土木学会が定義する構造物の耐震設計に用いる入力地震動であり、「現在から将来にわたって当該地点で考えられる最大級の強さをもつ地震動」を意味する。
【0025】
地盤注入用固結材の製造方法
本発明の地盤注入用固結材の製造方法は、上記成分を含有し、部分ゲルの発生を抑制しつつSiO
2濃度が10質量%超過である地盤注入用固結材を調製することができる限り特に限定されないが、酸及び添加剤の混合物に珪酸ソーダ及びコロイダルシリカを同時又は順不同で混合する製造方法によれば、部分ゲルの発生を抑制することができるため、浸透性に優れた粘性を確保しつつSiO
2濃度が10質量%超過である高濃度の地盤注入用固結材を高速撹拌に頼らなくとも調製し易い。
【0026】
即ち、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、並びに、硫酸及び/又はリン酸を含有する地盤注入用固結材の製造方法であって、
(1)前記地盤注入用固結材は、SiO
2濃度が10質量%超過であり、前記SiO
2中、前記コロイダルシリカに由来するSiO
2量が40質量%以下であり、
(2)前記硫酸及び/又はリン酸に更にリン酸系化合物、クエン酸系化合物及び硫酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を混合した混合液を調製し、次いで前記混合液に前記珪酸ソーダ及び前記コロイダルシリカを同時又は順不同で混合することを特徴とする製造方法によって好適に製造することができる。
【0027】
なお、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、酸(硫酸及び/又はリン酸)及び添加剤の説明は前記の通りであり、またいずれも原液若しくは水希釈物のいずれも使用できる。
【0028】
酸及び添加剤の混合物(水希釈物を含む)へのコロイダルシリカの供給速度は限定されないが、地盤注入用固結材を1000L調製する場合は、480L以上/h程度が好ましく、960L以上/h程度がより好ましい。また、同様に、珪酸ソーダの供給速度も限定されないが、地盤注入用固結材を1000L調製する場合は、2100〜12000L/h程度が好ましく、4200〜9000L/h程度がより好ましい。
【0029】
なお、珪酸ソーダ及びコロイダルシリカを同時に混合する態様は、珪酸ソーダの添加工程及びコロイダルシリカの添加工程が一部又は全部重複していてもよいことを示す意味であり、必ずしも添加開始と添加完了の時期を同時とする意味に限定されない。