特許第6233825号(P6233825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233825
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】運動追随性ブラジャー
(51)【国際特許分類】
   A41C 3/00 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   A41C3/00
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-99330(P2017-99330)
(22)【出願日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年5月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390016850
【氏名又は名称】株式会社カドリールニシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】奥村良子
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3373793(JP,B2)
【文献】 特開2012−077387(JP,A)
【文献】 実開昭58−038704(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右1対のカップ部、前記カップ部の下部に位置する左右2枚のカップ台、及び左右2枚の脇布を含み、
前記左右2枚のカップ台が、右カップ部の下縁部と前記左右2枚の脇布が縫合されてなる右カップ台及び、左カップ部の下縁部と前記左右2枚の脇布に縫合されてなる左カップ台であり、前記右カップ台と前記左カップ台は縫合されておらず、それぞれ独立した状態で遊離し、
前記左右2枚の脇布同士が1枚の背部布を介して連結され、前記左右2枚の脇布のそれぞれに一端が連結された2本の肩紐の他端同士が前記背部布にV字状に一体的に縫合されており、
前記背部布の上縁に沿って、帯状の2本のテープが縫合され、前記2本のテープのそれぞれの一端は前記2本の肩紐のそれぞれのV字縫合部近傍に縫合され、それぞれの他端は
前記左右2枚の脇布それぞれに縫合されることなく、前記左右2枚のカップ台の両側の端部と縫合されていることを特徴とする運動追随性ブラジャー。
【請求項2】
前記右カップ台と前記左カップ台がX字状に交差しており、前中心に隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の運動追随性ブラジャー。
【請求項3】
前記左右2枚のカップ台、前記2本の肩紐及び前記2本のテープが伸縮性の素材からなることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の運動追随性ブラジャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動追随性ブラジャーに関する。更に詳しくは、使用者が運動状態にあるときのみならず、静止状態にあるときも体にぴったりと適合することができ、またブラジャーにかかる力の負担を分散することで、肩甲骨の動きを妨げず、人体の動きにスムーズに対応できる、着用性に優れたブラジャーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラジャーに関して、特許文献1に記載されたものが知られている。図11は従来のブラジャーの一例を示す平面説明図である。このものは、腕を上下や前後に動かしたり、体を捩じらせたり、胸部を捩じらせる上半身の運動を要する通常の家事労働の際に、カップ部(22A,22B)が人体の動きにスムーズに対応して、カップ部(22A,22B)と乳房の位置がずれることを防ぐ、着用性に優れたブラジャー(21)を提供することを課題とし、この課題を左右1対のカップ部(22A,22B)、該カップ部(22A,22B)の下部に位置する2枚のカップ台(23A,23B)、及び左右2枚の脇布(24A,24B)からなるブラジャー(21)であって、前記2枚のカップ台(23A,23B)が、右カップ部(22A)の下縁部と左右2枚の脇布(24A,24B)に縫合されてなる右カップ台(23A)及び、左カップ部(22B)の下縁部と左右2枚の脇布(24A,24B)に縫合されてなる左カップ台(23B)であり、該右カップ台(23A)と該左カップ台(23B)は縫合されておらず、それぞれ独立した状態で遊離していることを要件とすることで解決している。さらに特許文献1のブラジャー(21)では、左右2枚のカップ台(23A,23B)を重ねた際に、ブラジャー(21)の前中心に隙間(26)が形成されるように、左右2枚のカップ台(23A,23B)の寸法を決めている。
【0003】
しかし、特許文献1は、左右のカップ台と背部布を連動させるという発想自体がなく、左右2枚の脇布は左右2枚のカップ部の上縁部と左右2枚のカップ台の両側の端部とを隙間なく縫合しているので、伸びや引っ張り力を逃がすことが出来ず、また2本の肩紐(25)が肩甲骨周辺に位置しているので、肩甲骨の動きを妨げるという問題があった。
【0004】
したがって、従来のブラジャーは、通常の家事労働には対応できるが、スポーツやトレーニング等の肩甲骨を大きく動かす体の動きには機能を十分に発揮できないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3373793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のブラジャー(とりわけ、特許文献1のもの)には、通常の家事労働には対応できるが、スポーツやトレーニング等の肩甲骨を大きく動かす体の動きには機能を十分に発揮できないという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ブラジャーが通常の家事労働には対応できるが、スポーツやトレーニング等の肩甲骨を大きく動かす体の様々な動きには機能を十分に発揮できないという欠点を解消することを目的とするものである。
【0008】
本発明の第1の態様は、左右1対のカップ部、前記カップ部の下部に位置する左右2枚のカップ台、及び左右2枚の脇布を含み、前記左右2枚のカップ台が、右カップ部の下縁部と前記左右2枚の脇布が縫合されてなる右カップ台及び、左カップ部の下縁部と前記左右2枚の脇布に縫合されてなる左カップ台であり、前記右カップ台と前記左カップ台は縫合されておらず、それぞれ独立した状態で遊離し、前記左右2枚の脇布同士が1枚の背部布を介して連結され、前記左右2枚の脇布のそれぞれに一端が連結された2本の肩紐の他端同士が前記背部布にV字状に一体的に縫合されており、前記背部布の上縁に沿って、帯状の2本のテープが縫合され、前記2本のテープのそれぞれの一端は前記2本の肩紐のそれぞれのV字縫合部近傍に縫合され、それぞれの他端は前記左右2枚の脇布それぞれに縫合されることなく、前記左右2枚のカップ台の両側の端部と縫合されていることを備えている請求項1に記載の運動追随性ブラジャーに関する。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記右カップ台と前記左カップ台がX字状に交差しており、前中心に隙間が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の運動追随性ブラジャーに関する。
【0010】
本発明の第3の態様は、前記左右2枚のカップ台、前記2本の肩紐及び前記2本のテープが伸縮性の素材からなることを特徴とする請求項3に記載の運動追随性ブラジャーに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1によれば、前記左右1対のカップ部、前記カップ部の下部に位置する前記左右2枚のカップ台、及び前記左右2枚の脇布を含み、前記左右2枚のカップ台が、前記右カップ部の下縁部と前記左右2枚の脇布が縫合されてなる前記右カップ台及び、前記左カップ部の下縁部と前記左右2枚の脇布に縫合されてなる前記左カップ台であり、前記右カップ台と前記左カップ台は縫合されておらず、それぞれ独立した状態で遊離し、前記左右2枚の脇布同士が1枚の前記背部布を介して連結され、前記左右2枚の脇布のそれぞれに一端が連結された前記2本の肩紐の他端同士が前記背部布にV字状に一体的に縫合されており、前記背部布の上縁に沿って、帯状の前記2本のテープが縫合され、前記2本のテープのそれぞれの一端は前記2本の肩紐のそれぞれの前記V字縫合部近傍に縫合され、それぞれの他端は前記左右2枚の脇布それぞれに縫合されることなく、前記2枚のカップ台の両側の端部と縫合されていることを構成要件としていることから、以下のような効果を奏する。
【0012】
スポーツやトレーニング等に使う肩甲骨の中心に前記2本の肩紐が沿うように構成されており、前記2本の肩紐と前記2本のテープは3箇所で交差していることによって、肩、脇、背筋、ブラジャーのアンダー等にかかる力の負担をそれぞれが交差する位置で分散させることで、人体の動きにスムーズに対応でき、着用性においても優れた効果を奏する。
また、前記2本のテープが前記左右2枚のカップ台と縫合されていることで、脇から背中心方向に伸びるので、静止状態にあるときも体にぴったりと適合するこという優れた効果も奏する。
【0013】
更に、請求項1によれば、それぞれの他端は前記左右2枚の脇布それぞれに縫合されることなく、前記左右2枚のカップ台の両側の端部と縫合されることを構成要件としていることから、以下のような効果を奏する。
【0014】
例えば、前記2本のテープのそれぞれの一端を前記左右2枚の脇布と縫合すると、前記2本のテープから伸びや引っ張り力を前記左右2枚のカップ台に伝えることができず、力の負担を分散させることができない。しかし、前記2本のテープのそれぞれの一端が前記左右2枚のカップ台と直接縫合されることで、伸縮作用を十分に発揮できるので、前記2本のテープのそれぞれの一端から交差している3箇所に伸びや引っ張り力を分散させることができ、そして人体の動きにスムーズに対応する、着用性においても優れた効果を奏する。
【0015】
本発明の請求項2によれば、前記右カップ台と前記左カップ台がX字状に交差しており、前中心に隙間が設けられていることを構成要件としていることから、以下のような効果を奏する。
【0016】
前記左右1対のカップ部の下部に前記左右2枚のカップ台が位置していることにより、前記左右2枚のカップ台の部分は生地が二重になるため、ブラジャーの保持力が高く、ブラジャーの身体への安定性を高めることができる。また、前記右カップ台は前記右カップ部の下縁部と前記左右2枚の脇布に縫合されており、前記左カップ台は前記左カップ部の下縁部と前記左右2枚の脇布に縫合されているので、前記右カップ台と前記左カップ台は縫合されず、それぞれ独立した状態で遊離することとなる。従って、前記2枚のカップ部が融通性を有しており、腕を上下や前後に動かしたり、体を捩じらせたりする際や家事などの通常の運動時に、人体の動きにスムーズに対応できるので、前記左右1対のカップ部と乳房の位置がずれることはない。つまり静止状態では、ブラジャーは前記左右2枚のカップ台により体に安定して固定されており、通常の家事労働の際には、前記左右2枚のカップ台が乳房の動きに追随して前記左右1対のカップ部と乳房の位置ずれを防ぐことができるので、着用性において優れた効果を奏する。
【0017】
本発明の請求項3によれば、前記左右2枚のカップ台、前記2本の肩紐及び前記2本のテープが伸縮性の素材からなることを構成要件としているので、前記左右1対のカップ部の融通性をより高めるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る運動追随性ブラジャーの正面図である。
図2図1の運動追随性ブラジャーの背面図である。
図3図1の運動追随性ブラジャーの一部省略斜視図である。
図4】(a)は図1の要部を示す部分斜視図であり、(b)は図3の運動追随性ブラジャーにおける脇布と肩紐とテープの関係性を示す要部説明図である。
図5図1の運動追随性ブラジャーを体に装着した状態の背面図である。
図6】(a)は通常時(静止状態)にある体における肩甲骨と鎖骨及び上腕骨との位置関係を示す説明図であり、(b)は腕を上げたときの肩甲骨と鎖骨及び上腕骨との位置関係を示す説明図である。
図7図1の運動追随性ブラジャーを体に装着した際の肩甲骨の動きに対する追随性を示す図であり、(a)は腕を上げたときの肩甲骨と鎖骨及び上腕骨との位置関係を示す説明図であり、(b)は(a)の状態にあるときの肩紐とテープにかかる力の分散方向を示す図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る運動追随性ブラジャーを体に装着した状態の背面図である。
図9】(a)は図1の運動追随性ブラジャーに適用される2枚のカップ台のうちの一つを示す平面説明図であり、(b)は2枚のカップ台が重なり合った状態を示す説明図である。
図10】背部布に加えられた力と背部布を構成する縦糸と横糸の弾性力の関係を示す説明図である。
図11】従来(特許文献1)のブラジャーの一例を示す平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る運動追随性ブラジャーについて、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る運動追随性ブラジャーの正面図である。図2図1の運動追随性ブラジャーの背面図である。図3図1の運動追随性ブラジャーの一部省略斜視図である。図4の(a)は図1の要部を示す部分斜視図であり、(b)は図3の運動追随性ブラジャーにおける脇布と肩紐とテープの関係性を示す要部説明図である。図5図1の運動追随性ブラジャーを体に装着した状態の背面図である。図6の(a)は通常時(静止状態)にある体における肩甲骨と鎖骨及び上腕骨との位置関係を示す説明図であり、図6の(b)は腕を上げたときの肩甲骨と鎖骨及び上腕骨との位置関係を示す説明図である。図7図1の運動追随性ブラジャーを体に装着した際の肩甲骨の動きに対する追随性を示す図であり、図7の(a)は腕を上げたときの肩甲骨と鎖骨及び上腕骨との位置関係を示す説明図であり、図7の(b)は(a)の状態にあるときの肩紐とテープにかかる力の分散方向を示す図である。図8は本発明の他の実施形態に係る運動追随性ブラジャーを体に装着した状態の背面図である。図9の(a)は図1の運動追随性ブラジャーに適用される2枚のカップ台のうちの一つを示す平面説明図であり、図9の(b)は2枚のカップ台が重なり合った状態を示す説明図である。図10は背部布に加えられた力と背部布を構成する縦糸と横糸の弾性力の関係を示す説明図である。
【0020】
図1乃至図3を参照すると、本発明に係る運動追随性ブラジャー(1)(以下、単に「ブラジャー(1)」と記載する)は、前記左右1対のカップ部(2A,2B)、この前記左右1対のカップ部(2A,2B)の下部に位置する前記左右2枚のカップ台(3A,3B)、前記左右2枚の脇布(4A,4B)、前記2本の肩紐(5A,5B)、帯状の前記2本のテープ(6A,6B)、及び背部布(7)からなる。
【0021】
前記左右1対のカップ部(2A,2B)はそれぞれ外側の側部(OS)が前記肩紐(5A,5B)と縫合され、内側の側部(IS)はそれぞれ左右1対のカップ部(2A,2B)同士と互いに縫合されており、下端部は前記左右2枚のカップ台(3A,3B)と縫合されている。
【0022】
前記カップ台(3)はその上縁部が前記カップ部(2)の下縁部の形状と同様に湾曲しており、図1に示すように前記カップ台(3)は2枚存在する。
【0023】
図1図2及び図9を参照すると、前記右カップ台(3A)は、その右上縁部(31)が右カップ部(2A)の下縁部(2AL)に縫合されており、右側部は右の脇布(4A)に、左側部は左の脇布(4B)にそれぞれ縫合されている。従って、右上縁部は右カップ部(2A)の下縁部(2AL)にぴったり沿うように湾曲しており、右カップ部(2A)の下縁部(2AL)の脇布側の最端から前中心側の端付近にかけて縫合されている。これに対し、左上縁部(32)と前記左カップ部(2B)の下縁部(2AL)にぴったり沿うように湾曲する必要はない。
前記右カップ台(3A)の右上縁部(31)の長さは特に限定されず、前記右カップ部(2A)の下縁部(2AL)の長さよりやや短くしても、或いは前記右カップ部(2A)の下縁部(2AL)の長さと略同じにしてもよい。この右上縁部(31)の長さによって、左上縁部(32)の湾曲の程度が変わることとなり、右上縁部(31)の長さが前記右カップ部(2A)の下縁部(2AL)の長さよりもやや短い場合には、左上縁部(32)の湾曲の程度は前記カップ部(2)の下縁部(2AL)、即ち前記右カップ台(3A)の右上縁部(31)よりも小さくなる。また右上縁部(31)の長さが右カップ部(2A)の下縁部(2AL)の長さと同じ場合には、左上縁部(32)は前記カップ部(2)の下縁部(2AL)、即ち前記右カップ台(3A)の右上縁部(31)と同程度湾曲することとなり、長さも右上縁部(31)と略同じになる。
【0024】
一方、前記左カップ台(3B)はその左上縁部(32)が前記左カップ部(2B)の下縁部(2AL)に縫合されており、右側部は右の脇布(4A)に、左側部は左の脇布(4B)にそれぞれ縫合されている。従って、左上縁部(32)は前記左カップ部(2B)の下縁部(2AL)にぴったり沿うように湾曲しており、前記左カップ部(2B)の下縁部(2AL)の脇布側の最端から前中心側の端付近にかけて縫合されている。これに対し、右上縁部(31)と前記右カップ部(2A)とは縫合されていないので、右上縁部(31)は必ずしも前記右カップ部(2A)の下縁部(2AL)にぴったり沿うように湾曲する必要はない。前記左カップ台(3B)の左上縁部(32)や右上縁部(31)の長さ、湾曲の程度も、前述した前記右カップ台(3A)の場合と同様に、特に限定はされない。つまり、左上縁部(32)の長さを前記左カップ部(2B)の下縁部(2BL)の長さよりやや短くして、右上縁部(31)の湾曲の程度を前記カップ部(2)の下縁部(2AL)よりも小さくすることも、或いは、左上縁部(32)の長さを前記左カップ部(2B)の下縁部(2AL)の長さと同じにして、右上縁部(31)の湾曲の程度を前記カップ部(2)の下縁部(2AL)と同程度にすることも可能である。
【0025】
前記カップ台(3)に用いられる素材は特に限定されないが、前記カップ部(2)の融通性を高めるためには、縦横両方向に自在に伸縮する素材を用いるのが好ましい。ブラジャー(1)全体が縦横方向の伸縮性に優れているので、装着感に不自然感がなく、容易に体に馴染むものである。また、前記2本の肩紐(5A,5B)がずれることがなく常に体にぴったり適合しており、素材の伸縮性によって肩などに負担がかからず、装着感も良好なものとなる。
【0026】
前記左右2枚の脇布(4A,4B)のそれぞれに前記背部布(7)の一端が沿うよう縫合されている(図2参照)。また、前記背部布(7)と前記左右2枚の脇布(4A,4B)は前記左右2枚のカップ台(3A,3B)の両側の端部と一体的に縫合されている(図1参照)。
図2を参照すると、前記左右2枚の脇布(4A,4B)には前記背部布(7)の一部と前記背部布(7)に縫合されている前記2本のテープ(6A,6B)のそれぞれの一端が重なっているが、隙間なく縫合されておらず、前記左右2枚の脇布(4A,4B)は前記2本のテープ(6A,6B)のそれぞれの一端とは縫合されていない。従って、前記左右2枚の脇布(4A,4B)が前記2本のテープ(6A,6B)のそれぞれの一端と縫合されていないことで、前記左右2枚の脇布(4A,4B)と前記2本のテープ(6A,6B)の間に隙間(9)が設けられ、前記2本のテープ(6A,6B)のそれぞれの一端から交差している3箇所に伸びや引っ張り力を分散させることができ、そして人体の動きにスムーズに対応でき、着用性においても優れている。
【0027】
前記2本の肩紐(5A,5B)の一端(即ち、ブラジャー(1)のフロントサイド)は、前記左右2枚の脇布(4A,4B)からブラジャー(1)の本体(即ち、前記左右2枚にカップ部(2A,2B)の左右外側の側部(OS))に沿って縫合され、前記2本の肩紐(5A,5B)の他端同士(即ち、ブラジャー(1)のバックサイドの端部同士)は前記背部布(7)にV字状に一体的に縫合されている。
前記2本の肩紐(5A,5B)が略直角のV字状に縫合されており、また肩位置からV字状に交差する前記V字縫合部(8)を前記背部布(7)と一体的に縫合して固定されていることによって、体が動いた場合でも、肩の方向性を常に一定に定めやすい。つまり、運動時に前記2本の肩紐(5A,5B)がずれにくい。すなわち、図10を参照すると、前記背部布(7)は縦糸(V)と横糸(H)が共に伸縮性を有していると、体が動いて前記2本の肩紐(5A、5B)に、水平方向に対してθ度傾いた方向に長さDだけ延びるように縦糸(V)と横糸(H)に力(ベクトルD)が加わると仮定すると、縦糸(V)の弾性力(F)はF=k・D・sinθで表され、横糸(H)の弾性力(F)はF=k・D・cosθで表され、二つの弾性力(F)、(F)を合成した力(ベクトルDの逆向きのベクトル(即ち、マイナスベクトルD))が発生する(kはバネ常数)。
【0028】
前記2本の肩紐(5A,5B)を幅広の伸縮性紐状部材で形成して、前記ブラジャー(1)に縫合されている。体に装着された前記ブラジャー(1)が肩甲骨や筋肉、又は皮膚の動きに自然に追随するために、本発明では伸縮性と体にぴったりと適合することに優れた幅広(例えば、20mm〜30mm)の前記2本の肩紐(5A,5B)を採用している。更に、伸縮性を最大限活用するために、前記ブラジャー(1)の縁部(前記左右2枚のカップ部(2A,2B)の左右外側の側部(OS))に沿って前記2本の肩紐(5A,5B)の一側縁を縫合している。縫合部分から前記2本の肩紐(5A,5B)の他側縁までの残りの部分は縫合されていないため、伸縮作用を十分に発揮できるようにフリーになっている。
また、前記2本の肩紐(5A,5B)のフリー部分の幅が短すぎると、十分に伸縮性が得られない可能性があり、長すぎると十分な伸縮性は得られるものの、幅が太くなりすぎて体にぴったりと適合しにくくなる。このような理由から、十分な伸縮性と体にぴったりと適合しやすいという両方を満たすことができる。
【0029】
前記2本の肩紐(5A,5B)に用いられる素材は特に限定されないが、融通性を高めるために、縦横方向に自在に伸縮する素材を用いるのが好ましい。ブラジャー(1)全体が縦横方向の伸縮性に優れていると、装着感に不自然感がなく、容易に体に馴染むものである。さらに、人の体に接触する裏面をパイル編みとすることにより、肌触りを良くすることもできる。
【0030】
帯状の前記2本のテープ(6A,6B)は前記背部布(7)の上縁に沿って縫合され、前記2本のテープ(6A,6B)のそれぞれの一端は前記2本の肩紐(5A,5B)のそれぞれの前記V字縫合部(8)近傍に縫合され、それぞれの他端は前左右2枚のカップ台(3A,3B)の両側の端部と縫合されている。
【0031】
前記2本のテープ(6A,6B)のそれぞれ一端が前記左右2枚のカップ台(3A,3B)と直接縫合されることで、前記2本のテープ(6A,6B)と前記左右2枚の脇布(4A,4B)の間に隙間(9)が設けられ、前記2本のテープ(6A,6B)のそれぞれの一端から交差している3箇所に伸びや引っ張り力を分散させることができ、そして人体の動きにスムーズに対応でき、着用性においても優れている。
【0032】
前記2本の肩紐(5A,5B)と同様に幅広(例えば、20mm〜30mm)の伸縮性部材で形成し、ブラジャー(1)の適所に縫合している。(図1及び図2参照)
前記2本のテープ(6A,6B)に用いられる素材は特に限定されないが、融通性を高めるために、縦横方向に自在に伸縮する素材を用いるのが好ましい。ブラジャー(1)全体が縦横方向の伸縮性に優れていると、装着感に不自然感がなく、容易に体に馴染むものである。さらに、人の体に接触する裏面をパイル編みとすることにより、肌触りを良くすることもできる。
【0033】
前記背部布(7)は、前記2本のテープ(6A,6B)と前記2本の肩紐(5A,5B)の端部が縫合されており、前記背部布(7)にはフックアイ(10)が設けられている。前記フックアイ(10)は必ず設ける必要はなく、ヨガや就寝時等で体を仰向けにしても違和感なく着用できるよう前記フックアイ(10)を設けなくても本発明の効果を十分に発揮することができる(図8参照)。
【0034】
図3及び図4を参照して、本発明に係わるブラジャー(1)の前記脇布(4)と前記テープ(6)の構成を具体的に説明する。図4の(a)において参照符号(X)は要部構造を示しており、参照符号(X)を背面から見た部分斜視図である。(b)は図3のブラジャー(1)における前記脇布(4)と前記肩紐(5)と前記テープ(6)の関係性を示す要部説明図である。
前記テープ(6)は前記脇布(4)に重なるように構成されているが、前記脇布(4)とは縫合せず、前記カップ台(3)と縫合されている。前記テープ(6)が前記脇布(4)に縫合されていないことによって、前記カップ台(3)が体の捩りの動き等により引っ張られたときに前記テープ(6)を伝わって、前記肩紐(5)にも伝わり、力を分散させるという本発明の効果を十分に発揮することができる。(図4の(b)参照)。
例えば、前記テープ(6)が前記脇布(4)と縫合されていると、前記2枚のカップ台(3)から引っ張り力が加わっても、前記脇布(4)によって伝わりにくくなっていまい、効果を十分に発揮することができない
って、前記テープ(6)の一端が前記カップ台(3)と直接縫合されることで、伸縮作用を十分に発揮できるので、前記テープ(6)の一端からそれぞれ交差している3箇所に伸びや引っ張り力を分散させることができ、そして人体の動きにスムーズに対応でき、着用性においても優れた効果を発揮する。
【0035】
図6及び図7を参照して、本発明に係わるブラジャー(1)の前記肩紐(5)と前記テープ(6)による運動追随性を具体的に説明する。
肩甲骨(11)は鎖骨(12)と上腕骨(13)のみに接続され、他の骨とは接続されていない。従って、前記肩甲骨(11)は固定されず体の動きに追随する。そのため、腕を上げると、図6の(b)に矢符で示すように、背中心から脇方向に引き上げる力が働いて、ブラジャー装着時に前記ブラジャー(1)が矢符方向に引っ張られる。
しかし、前記2本の肩紐(5A,5B)のV字縫合部(8)で肩方向と脇方向とに引き合う力が働いて、肩甲骨(11)の動きによる前記2本の肩紐(5A,5B)にかかる引張り力を分散させることができる。そのため、前記2本の肩紐(5A,5B)の位置がずれることを防ぐ。更に、前記2本の肩紐(5A,5B)から前記2本のテープ(6A,6B)にも引張り力が伝わり、力が分散される。それにより肩甲骨(11)の動きに追随でき、肩、脇、背筋、ブラジャーのアンダー等にかかる力の負担をそれぞれが交差する位置で分散させることができるため、本発明の請求項2の構成による作用効果を発揮し、着用性において請求項1と請求項2の相乗効果を発揮する。
【0036】
因みに、従来の肩紐は、図11に示すものでは肩紐はブラジャー本体と一体的に設けられており、ブラジャー本体が縦伸び、横伸びの伸縮作用のある素材を用いているため、肩甲骨が動いたときにかかる斜め方向の力に対しては考慮されていない。つまり、肩甲骨の動きに沿って力を分散させるといった効果は全くないものである。
【0037】
図9を参照して、本発明に係わるブラジャー(1)の前記カップ部(2)と前記カップ台(3)による運動追随性を具体的に説明する。
前記2枚のカップ台(3A,3B)が前記カップ部(2)の下部において、図9に示すように重なっていることにより、前記カップ台(3)の部分は生地が二重になるため、前記ブラジャー(1)の保持力が高く、体の安定性を高めることができる。
また、前記右カップ台(3A)と前記左カップ台(3B)は縫合されておらず、それぞれ独立した状態で遊離しているため、前記右カップ部(2A)は前記右カップ台(3A)の存在により、前記左カップ部(2B)は前記左カップ台(3B)の存在により、それぞれ融通性を有している。従って、腕を上下や前後に動かしたり、体を捩じらせる等、特に胸部を捩じらせる上半身の運動を要する通常の家事労働の際にも、前記カップ部(2)が人体の動きにもスムーズに対応できるので、前記カップ部(2)と乳房の位置がずれることはない。即ち、家事労働などの時に、前記カップ部(2)と乳房の位置がずれることを防ぐという効果を発揮する。
【0038】
また、図1及び図2に示す第1実施形態においては、前記右カップ台(3A)の右上縁部(31)の長さが前記右カップ部(2A)の下縁部(2AL)の長さよりもやや短く、前記左カップ台(3B)の左上縁部(32)の長さが左カップ部(2B)の下縁部(2BL)の長さよりもやや短くされているため、前記左右2枚のカップ台(3A,3B)を重ねると前記ブラジャー(1)の前中心に隙間(14)が形成されることとなり、これにより前記ブラジャー(1)の通気性が高められるとともに、前記カップ部(2)の融通性も高められる。更に第1実施形態のように前記右カップ台(3A)の右側部を左側部よりもやや短く、前記左カップ台(3B)の左側部をやや短くすると、前記右カップ台(3A)と前記左カップ台(3B)がX字状に交差することとなるので、前記カップ部(2)の融通性をより高めることができる。また、第1実施形態においては、前記右カップ台(3A)が前記左カップ台(3B)に重なっているが、必ずしも前記右カップ台(3A)が上になる必要はない。例えば、前記左カップ台(3B)が前記右カップ台(3A)の上に重なるようにしてもよい。
【0039】
本発明では、前記カップ台(3)同士が縫合されず、それぞれ独立した状態で遊離しているが、前記カップ台(3)同士が縫合されていても効果を発揮することが可能であるので、このようなものはもちろん本発明に含まれている。
前記カップ台(3)同士が縫合されていても、前記肩紐(5)と前記テープ(6)が3箇所で交差するという構成要件を満たされていれば、肩、脇、背筋、ブラジャーのアンダー等にかかる力の負担をそれぞれが交差する位置で分散させることができるため、運動追随性機能を十分に発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、使用者が運動状態にあるときのみならず、静止状態にあるときも体にぴったり適合することができ、またブラジャーにかかる力の負担を分散することで、肩甲骨の動きを妨げず、人体の動きにスムーズに対応できる、着用性に優れた運動追随性ブラジャーとすることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 運動追随性ブラジャー
2 カップ部
2A 右カップ部
2B 左カップ部
2AL 右カップ部下縁部
2BL 左カップ部下縁部
3 カップ台
3A 右カップ台
3B 左カップ台
4 脇布
4A 右脇布
4B 左脇布
5 肩紐
5A 右肩紐
5B 左肩紐
6 テープ
6A 右テープ
6B 左テープ
7 背部布
8 V字縫合部
9 テープと脇布間の隙間
10 フックアイ
11 肩甲骨
12 鎖骨
13 上腕骨
14 カップ台の隙間
IS カップ部内側の側部
OS カップ部外側の側部
31 カップ台の右上縁部
32 カップ台の左上縁部
、F 弾性力
【要約】
【課題】 肩甲骨を大きく動かす体の動きには機能を十分に発揮できない欠点を解消するための運動追随性ブラジャー。
【解決手段】 左右1対のカップ部、カップ部の下部に位置するカップ台、及び脇布を含み、カップ台同士は縫合されずに独立した状態で遊離し、脇布は背部布を介して連結され、脇布に一端が連結された肩紐の他端同士が背部布にV字状に縫合され、背部布の上縁に沿ってテープが縫合され、テープのそれぞれの一端は肩紐のV字縫合部近傍に、それぞれの他端は脇布に縫合されずにカップ台の両側の端部と縫合されている運動追随性ブラジャー。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11