(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、小じわや皮膚のたるみなどの防止または改善する効果を発揮する外用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、プテロスチルベンに対して特定の処理を施してプテロスチルベン多糖体を作製したところ、斯かる多糖体が、小じわや皮膚のたるみなどの防止または改善作用に関して、優れた効果を発揮することを見出した。 本発明は斯かる知見を基にして完成されたものであり、下記に示す態様の発明を広く包含するものである。
【0008】
項1 プテロスチルベン多糖体を有効成分として含む、外用組成物。
【0009】
項2 プテロスチルベン多糖体が、下記式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
にて表される、項2に記載する外用組成物。
(式中のnは、1〜9の整数である。)
項3 前記nが1または2である、項2に記載の外用組成物。
【0012】
項4 項1〜3の何れか1項に記載する外用組成物であって、該外用組成物中にカロテノイド化合物を含まない、外用組成物。
【0013】
項5 項1〜4の何れか1項に記載する外用組成物であって、該外用組成物の有効成分が、実質的にプテロスチルベン多糖体のみからなる、外用組成物。
【0014】
項6 4型コラーゲンの産生を促進させる用途に用いられる、項1〜5の何れか1項に記載する、外用組成物。
【0015】
項7 肌にはりを与える用途に用いられる、項1〜6の何れか1項に記載する、外用組成物。
【0016】
項8 チロシナーゼ活性を阻害する用途に用いられる、項1〜7の何れか1項に記載する、外用組成物。
【0017】
項9 美白効果を与える用途に用いられる、項1〜8の何れか1項に記載する、外用組成物。
【0018】
項10 化粧料組成物である、項1〜9の何れか1項に記載する、外用組成物。
【0019】
項11 プテロスチルベン多糖体と、外用組成物に添加することが許容される成分とを混合する工程を含む、項1〜10の何れか1項に記載する、外用組成物の製造方法。
【0020】
項12 肌にはりを求めるヒトおよび/または美白効果を求めるヒトに対して、プテロスチルベン多糖体を肌または頭皮に適用する工程を含む、美容方法。
【0021】
項13 プテロスチルベン多糖体の、肌のたるみ防止、ハリ感の付与および/または美白用の外用組成物の製造のための、使用。
【発明の効果】
【0022】
本発明の外用組成物は、4型コラーゲンの産生を促進する効果を発揮する。このような効果に基づき、本発明の外用組成物は肌にはりを与える用途において、有用である。
【0023】
本発明の外用組成物は、チロシナーゼ活性を阻害する。このような効果に基づき、本発明の外用組成物は美白効果を与える用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
外用組成物
本発明の外用組成物はプテロスチルベン多糖体を有効成分として含む。
【0026】
プテロスチルベン多糖体とは、プテロスチルベン(IUPAC名: 4−[(E)−2−(3,5−Dimethoxyphenyl)ethenyl]phenol)の3位の水酸基に対して、二つ以上の糖からなる多糖による修飾が施された配糖体である。
【0027】
このようなプテロルスチルベン多糖体に含まれる糖残基は、特に限定はされない。例えば、グルコース、トレオース、リキソース、アロース、プシコース、セドヘプツロース、およびボレミトールなどに代表される単糖に由来する糖残基を挙げることができる。
【0028】
これらの糖残基の中でも、グルコースが好ましい。また、糖残基は全て同一であっても異なっていてもよく、特に限定されない。好ましくは、全て同一の糖残基であることが好ましい。
【0029】
本発明の外用組成物の有効成分であるプテロスチルベン多糖体に含まれる糖残基の個数は特に限定されない。例えば、2個〜10個の何れかを挙げることができる。好ましくは、2個または3個であり、3個が最も好ましい。
【0030】
上記する多糖体における多糖を構成する単糖間のグリコシド結合の種類は、特に限定されない。例えば、1−4結合、1−3結合、1−6結合等を挙げることができる。好ましくは、1−4結合である。また、α−グリコシド結合とすることもでき、β−グリコシド結合とすることもできる。好ましくはα−グリコシド結合とすることである。
【0031】
なお、上記する多糖におけるグリコシド結合が複数である場合のグリコシド結合の種類は、それぞれ同一の種類とすることもできるし、異なる種類とすることもできる。好ましくは同一の種類とすることである。
【0032】
上記する単糖の立体配置は特に限定されない。例えば、D体とすることもでき、L体とすることもできる。好ましくはD体である。
【0033】
このようなプテロスチルベン多糖体の中でも、下記式(1)
【0036】
ここで、nは1〜9の整数を意味する。好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜2である。
【0037】
上記するプテロスチルベン多糖体における、プテロスチルベンの3位の水酸基と、糖との結合様式は特に限定はされない。例えば、α−グリコシド結合とすることもでき、β−グリコシド結合とすることもできる。好ましくはα−グリコシド結合とすることである。
【0038】
本発明のプテロスチルベン多糖体は、プテロスチルベンと上記の単糖とを原料に、ケーニッヒ・クノール反応等を利用した化学的合成によって製造した、プテロスチルベン単糖配糖体と糖とを、シクロデキストリントランスフェラーゼ等の酵素を用いることによる製造方法;または両者の原料と共に、PaGT2などの配糖化酵素を用いて生合成に供する方法;またはブドウ類などの果実を含む植物体から公知の方法を採用した抽出法に供する方法によって製造することができる。
【0039】
本発明の外用組成物には、プテロスチルベン多糖体以外の、任意の成分を包含することができる。しかし、任意の成分としてカロテノイド化合物は、本発明の外用組成物に包含されないことが好ましい。
【0040】
カロテノイド化合物とは、化学式C
40H
56の化学構造を有する化合物の誘導体であり、炭素および水素のみで形成されるカロテンと、炭素および水素以外の元素を含むキサントフィルとに分類される化合物である。具体的なカロテンは特に限定されない。例えば、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、δ−カロテン、リコピンなどの化合物を挙げることができる。
【0041】
キサントフィルは、化学式C
40H
56の化学構造を有する化合物の誘導体であって、炭素、水素、およびそれ以外の元素で形成される化合物である。具体的なキサントフィルは特に限定はされない。例えば、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ツナキサンチン、サルモキサンチン、パラシロキサンチン、ビオラキサンチン、アンテラキサンチン、ククルビタキサンチン、ディアトキサンチン、アロキサンチン、ペクテノール、ペクテノロン、マクトラキサンチン、カプサンチン、カプサンチノール、フコキサンチン、フコキサンチノール、ペリジニン、ハロシンチアキサンチン、アマロウシアキサンチン、カンタキサンチン、エキネノン、ロドキサンチン、ビキシン、ノルビキシンなどを挙げることができる。上記のキサントフィルには、これらのモノエステル体およびジエステル体も包含される。
【0042】
本発明の外用組成物には、上記のカロテノイド化合物を除く、任意の成分が含まれていてもよい。更に好ましくは、本発明の外用組成物に含まれる有効成分として、実質的にプテロスチルベン多糖体のみを含む態様を挙げることができる。
【0043】
ここで有効成分とは、本発明の外用組成物が発揮する効果として後述する、4型コラーゲン産生を促進する効果および/またはチロシナーゼ活性を阻害する効果を奏する必須成分を意味する。よって、実質的にプテロスチルベン多糖体からなる有効成分を含む態様の本発明の外用組成物には、4型コラーゲン産生を促進する効果および/またはチロシナーゼ活性を阻害する効果に寄与しない、任意の成分は含まれていてもよい。
【0044】
本発明の外用組成物に有効成分として含まれるプテロスチルベン多糖体の含有量は、本発明の外用組成物が本発明の効果を奏することを限度として、特に限定されない。例えば、外用組成物の全質量に対して、通常は0質量%より大きい数値範囲で設定することができ、その上限値は10質量%程度、より好ましくは15質量%程度、更に好ましくは20質量%程度とすることができる。
【0045】
下記の実施例(例えば、実験例2)に示すように、プテロスチルベン多糖体を有効成分として含む組成物は、優れた4型コラーゲン産生促進効果を発揮する。このことから、プテロスチルベン多糖体も、同様に優れた4型コラーゲン産生促進効果を発揮すると考えられる。したがって、プテロスチルベン多糖体を有効成分とする組成物は、4型コラーゲンの産生を促進させる用途に好適に用いられる。 4型コラーゲンとはセラミドトランスファープロテイン(CETR)とも呼ばれ、皮膚の基底膜に存在し、基底膜において細胞外マトリックス同士の結合に関与することが知られている。プテロスチルベン多糖体を外用することにより、基底膜の4型コラーゲンが亢進すると共に、老化などによる肌のたるみを抑え、肌にはりを与える効果を発揮する。
【0046】
以上に鑑みて、本発明の外用組成物は、これをヒトに適用(外用)することによって、肌のたるみを抑え、はりを与える効果を奏することが期待される。
【0047】
下記の実施例(例えば、実験例3)に示すように、プテロスチルベン多糖体は、優れたチロシナーゼ阻害活性を発揮する。このことから、同様に、プテロスチルベン多糖体も、優れたチロシナーゼ阻害活性を発揮することが期待される。したがって、テロスチルベン多糖体を有効成分とする組成物は、チロシナーゼ活性を阻害する用途に好適に用いられる。
【0048】
チロシナーゼとはメラニン合成に関わる酵素であり、この活性を阻害する組成物は美白効果を奏することが知られている。よって、本発明の外用組成物は、これをヒトに適用(外用)することによって、美白効果を奏することが期待できる。つまり、美白剤として有用である。
【0049】
本発明の外用組成物の適用対象としては、上記のような効果を必要とするヒト、またはこのようなヒトが着用する衣類であれば特に限定されることはない。
【0050】
本発明の外用組成物の使用量は、上記のような効果を期待できる範囲内の使用量である限り、特に限定はされない。例えば、後述する本発明の外用組成物の1形態である化粧料組成物、または医薬組成物などにおける使用量から、適宜決定することができる。
【0051】
本発明の外用組成物の形態は特に限定はされない。例えば、化粧料組成物、または医薬組成物を挙げることができる。中でも、化粧料組成物が好ましい。
【0052】
化粧料組成物
本発明の外用組成物は、化粧料組成物の形態とすることができる。本発明の化粧料組成物には、薬用化粧品などの医薬部外品も包含する。
【0053】
化粧料組成物に含まれるプテロスチルベン多糖体の配合量は、特に限定されない。例えば、化粧料組成物の全質量に対して、通常は0質量%より大きい数値範囲で設定することができ、その上限値は10質量%程度、より好ましくは15質量%程度、更に好ましくは20質量%程度とすることができる。
【0054】
化粧料組成物の具体的な態様は特に限定されない。例えば、ファンデーション、頬紅、白粉などのメイクアップ化粧料;化粧水、乳液、スキンクリーム、ローション、オイル、パックなどの基礎化粧料;洗顔料、クレンジング、ボディソープなどの皮膚洗浄料;シャンプー、リンス、コンディショナー、整髪剤、育毛剤などの毛髪化粧料;バスソルト、バスタブレット、バスリキッドなどの入浴剤、マッサージ剤、清拭剤などの態様を挙げることができる。
【0055】
化粧料組成物の形状は特に限定はされない。例えば、ローション状(液状)、ムース状、ジェル状、ゼリー状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、シート状、エアゾール状、スプレー状などを挙げることができる。このような種類の形状とすることで、皮膚のみならず、頭皮にも適用することができる。
【0056】
化粧料組成物の適用量は、適用対象者の性別や年齢、当該化粧料組成物の適用形態、所望する効果の程度などに基づいて適宜設定することができる。例えば、化粧料組成物に有効成分として含まれるプテロスチルベン多糖体の量に換算して、皮膚または頭皮の1cm
2あたり、通常1mg〜5mg程度の量とすればよい。
【0057】
医薬組成物
本発明の外用組成物は、医薬組成物の形態とすることができる。
【0058】
医薬組成物に含まれるプテロスチルベン多糖体の配合量は、特に限定されない。例えば、医薬組成物の全質量に対して、通常は0質量%より大きい数値範囲で設定することができ、その上限値は10質量%程度、より好ましくは15質量%程度、更に好ましくは20質量%程度とすることができる。
【0059】
医薬組成物の剤形は特に限定はされない。たとえば、エアゾール剤、液剤、エキス剤、(眼)軟膏剤、経皮吸収型製剤、懸濁剤、乳剤、酒精剤、貼付剤、チンキ剤、パップ剤、芳香水剤、リニメント剤、流エキス剤、ローション剤などの、主として外用される剤形を挙げることができる。
【0060】
このような医薬組成物の投与量は、適用対象者の性別や年齢、当該医薬組成物の適用形態、所望する効果の程度などに基づいて適宜設定することができる。例えば、医薬組成物に有効成分として含まれるプテロスチルベン多糖体の量に換算して、ヒト成人の一日あたりで、通常1〜5mg/cm
2程度の量とすればよい。
【0061】
外用組成物の製造方法
本発明の外用組成物の製造方法は、プテロスチルベン多糖体と、外用組成物に添加することが許容される成分とを混合する工程を含む。
【0062】
プテロスチルベン多糖体とは、上記のとおりである。
【0063】
外用組成物に添加することが許容される成分は特に限定されない。例えば、上記の外用組成物の一つの形態として挙げた、化粧料組成物、または医薬組成物、に添加することが許容される成分とすることができる。
【実施例】
【0064】
以下に、本発明をより詳細に説明するための実施例を示す。なお、本発明が以下に示す実施例に限定されないのは言うまでもない。
【0065】
<実験例1>
下記の下記式(2)
【0066】
【化3】
【0067】
で表されるプテロスチルベンモノグルコシドを、マイスターバイオ社から入手し、以下の実験に用いた。
【0068】
htert遺伝子を導入して不死化したヒト皮膚細胞を準備し、これを所定の培地中で馴化した。その後、馴化培地に50μMの上記プテロスチルベンモノグルコシドを添加し、5日間培養した。
【0069】
培養後の細胞からRNAを回収し、4型コラーゲンmRNAの発現量の変化を、マイクロアレイ法によって調べた。結果を
図1に示す。なお、馴化培地にプテロスチルベンモノグルコシドを添加しない陰性対象実験も行った。
【0070】
図1に示すように、プテロスチルベンモノグリコシドを添加することによって(図中のA)、ヒト皮膚細胞に含まれる4型コラーゲン遺伝子の発現量が、陰性対象実験(図中のB)と比較して、1.35倍程度に増大することが明らかとなった。
【0071】
<実験例2>
プテロスチルベンモノグリコシドは、皮膚細胞における4型コラーゲン遺伝子の発現量を亢進させることが、上記の実験例1から明らかになったので、同様に、プテロスチルベンモノグリコシドによる皮膚細胞における4型コラーゲンのタンパク質レベルでの発現量の亢進も期待された。
【0072】
そこで、ヒト皮膚角化細胞およびヒト線維芽細胞から構成される皮膚3次元モデルの作製キット(EFT−400;クラボウ社)を用いた、ウエスタンブロッティング法による実験を行った。
【0073】
キットのプロトコルに沿って皮膚3次元モデルを作製し、これを所定の培地に馴化した。馴化培地に上記のプテロスチルベンモノグルコシド(終濃度で25μMおよび100μM)を添加して、7日間培養した。
【0074】
培養後の細胞を回収し、そのライセートを抗ヒトコラーゲン抗体(COL4A3BP;アブカム社)を用いたウエスタンブロッティング法に供し、4型コラーゲンの発現量を検討した。なお、内部標準として抗α−チューブリン抗体を用いたウエスタンブロッティングも行い、得られた画像データをデンシトメトリー解析に供した。これらの結果を
図2に示す。
【0075】
図2に示すように、プテロスチルベンモノグルコシドは、皮膚三次元モデル内の4型コラーゲンの発現量を、添加濃度依存的に、コントロールと比べて最大で2.5倍程度に増大させることが明らかとなった。よって、プテロスチルベンモノグルコシドを有効成分として含む組成物は、皮膚細胞における4型コラーゲンの増大に起因する各種効果(例えば、基底膜の肥厚による、肌にはりを与える効果など)に関連することが明らかとなった。
【0076】
<実験例3>
プテロスチルベンモノグルコシドによるチロシナーゼ阻害効果(IC
50値の測定)を、一般的に知られる方法に基づいて行った。チロシナーゼとしてSIGMA社のチロシナーゼ(Cat No.T3824)を用い、プテロスチルベン(東京化成工業社製;図中のA)、上記のプテロスチルベンモノグルコシド(図中のB)、およびポジティブコントロールとしてアルブチン(図中のC)を用いた。これらの結果を
図3に示す。
【0077】
図3に示すように、プテロスチルベンモノグルコシド(図中のB)は、そのアグリコンであるプテロスチルベン(図中のA)と比較して、優れたチロシナーゼ阻害活性を有することが明らかとなった。両者をIC
50値で比較すると、プテロスチルベンモノグルコシドの方が、5.5倍近く優れたチロシナーゼ阻害効果を発揮することが明らかとなった。
【0078】
<実験例4>
上記の実施例1〜3にて用いたプテロスチルベンモノグルコシドを原料に、プテロスチルベン多糖体を作製した。
【0079】
具体的には、上記する化学式(2)で表される1gのプテロスチルベンモノグリコシドを40mLの蒸留水に溶解させた。このようにして作製した溶解液に、4gの可溶性デンプン(ナカライテスク)を加え、0.5mのシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(アマノエンザイム)の存在下で、60℃で24時間インキュベートした。
【0080】
この酵素は、グルコース分子を有する化合物に対して、他のグルコース分子を1−4グリコシド結合させる反応を触媒する酵素である。このようにして得られた反応物をHPLCに供した。結果(HPLCチャート)を
図4Aに示す。HPLCの条件は以下のとおりである。
【0081】
・使用カラム:YMC−Pack R&D ODS(φ20×150mm)
・展開液 :アセトニトリル35%水溶液
・流速 :1ml/分
・測定温度 :40℃
【0082】
図4Aに示すように、上記の反応物には、プテロスチルベン配糖体であるプテロスチルベン単糖配糖体、およびこれに1〜7個程度のグルコースがα(1−4)結合したプテロスチルベン多糖体が含まれることをHPLCにて確認した。保持時間が短くなるほど、プテロスチルベンに付加されるグルコース数が増える傾向となることが示唆された。
【0083】
更に、この反応物からプテロスチルベン二糖配糖体およびプテロスチルベン三糖配糖体を、HPLCを繰り返し行って単離した。単離した後のHPLCチャートをそれぞれ
図4B(プテロスチルベン二糖配糖体)および
図4C(プテロスチルベン三糖配糖体)に示す。
【0084】
また、単離したプテロスチルベン二糖配糖体およびプテロスチルベン三糖配糖体の質量分析データは以下のとおりである。なお、質量分析はESI
-法を用いて行った。
【0085】
プテロスチルベン二糖配糖体:実測値579.2;推定値580.3
プテロスチルベン三糖配糖体:実測値741.2;推定値742.3
【0086】
<実験例5>
上記の実験例4にて単離したプテロスチルベン二糖配糖体およびプテロスチルベン三糖配糖体を用い、プテロスチルベン多糖体が皮膚3次元モデルに対して、4型コラーゲンタンパク質の発現量を亢進させるかどうかを確認する実験を行った。
【0087】
具体的には、実験例2と同様に実験を行い、プテロスチルベンモノグルコシドに代えて、上記するプテロスチルベン二糖配糖体およびプテロスチルベン三糖配糖体のDMSO溶液(共に50μM)を作製し、これらを皮膚3次元モデルに添加して、7日間培養した。培養後の細胞のライセートを抗ヒトコラーゲン抗体を用いたウエスタンブロッティング法に供し、細胞内での4型コラーゲンの発現量を検討した。陰性コントロール(Ctrl)として、DMSO溶液のみを皮膚3次元モデルに添加した実験を行った。
【0088】
なお、内部標準として抗α−チューブリン抗体を用いたウエスタンブロッティングも行い、得られた画像データをデンシトメトリー解析に供した。これらの結果を
図5に示す。
【0089】
図5に示す結果から、陰性コントロール(DMSO)と比較して、プテロスチルベン二糖配糖体の添加によって、皮膚3次元モデルにおける4型コラーゲンの発現量が約1.37倍程度に上昇することが明らかとなった。そして、プテロスチルベン二糖配糖体の添加によって、皮膚3次元モデルにおける4型コラーゲンの発現量が約1.97倍程度に上昇することが明らかとなった。
【0090】
よって、プテロスチルベン多糖体を有効成分として含む組成物も、皮膚細胞における4型コラーゲンの増大に起因する各種効果(例えば、基底膜の肥厚による、肌にはりを与える効果など)に関連することが明らかとなった。
【0091】
[処方例]
以下の表1〜4に示す配合例に従って、各種化粧料組成物を製造する。なお、プテロスチルベン多糖体とは、下記式(1)
【0092】
【化4】
【0093】
にて表される化合物であって、式中のnは1〜9の何れかである。また、式中のグルコース間のグリコシド結合は全て1−4結合であって、プテロスチルベンの3位とグルコースとの結合様式およびグルコース間のグリコシド結合は、共にα−結合である。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】