(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233831
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】傾斜式駐輪装置
(51)【国際特許分類】
B62H 3/08 20060101AFI20171113BHJP
E04H 6/06 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
B62H3/08
E04H6/06 X
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-86115(P2013-86115)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-237432(P2013-237432A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2016年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-105474(P2012-105474)
(32)【優先日】2012年4月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517004436
【氏名又は名称】株式会社ショウエイテクノ製作
(72)【発明者】
【氏名】森田 昌佳
【審査官】
山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−241360(JP,A)
【文献】
実開平01−075556(JP,U)
【文献】
特開2011−174362(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0155906(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 3/08
E04H 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車を載置する受台と、
前記受台の一端部を回動自在に支持する支柱と、
前記受台を回動させて昇降させる受台昇降機構と、
前記受台の上方位置及び下方位置での係止状態を解除する操作部材と、
から構成される傾斜式駐輪装置であって、
前記支柱は、上側部側面にベアリングボックス用レールを配設し、上端部背面にアーム車用レールを配設してあり、
前記受台昇降機構は、
前記ベアリングボックス用レールに沿って転動するベアリング車を備え、前記支柱に沿って昇降するベアリングボックスと、
前記受台の先端部下面に固定し、前記ベアリングボックスの上端部に支軸を介して回動自在とした受台支持体と、
前記アーム車用レールに沿って転動するアーム車を先端部に備え、前記受台支持体の先端部に基端部を固定してなるアームと、
から構成されることを特徴とする傾斜式駐輪装置。
【請求項2】
前記支柱の上端部側面にストッパーを固着し、前記アームの中間部がこのストッパーに当接することによって、前記受台はそれ以上上昇せず、略水平状態に保持されることを特徴とする請求項1に記載の傾斜式駐輪装置。
【請求項3】
作用杆の伸縮動作によって押圧作用、緩衝作用を奏する作動装置を付設し、前記作動装置の本体の一端部を前記ベアリングボックスの下端部に枢支し、前記作動装置の作用杆の先端部を前記受台支持体の側面に枢支し、前記受台を上方回動する際に力を付勢するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の傾斜式駐輪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下二段に自転車を駐輪させる上下二段式駐輪施設に採用して好適な、安全性及び利便性をより向上させた傾斜式駐輪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンション、公共施設等の敷地内の空間を有効に活用し、多数の自転車を駐輪できるようにするため、上下二段に自転車を駐輪させることができる上下二段式駐輪施設が採用されている。
そして、上下二段式駐輪施設を比較的安価に実現する手段として、上段の自転車受台を所定角度回動可能に構成し、受台を下降させて傾斜状態とし、受台を上昇させて水平状態とする傾斜式駐輪装置が採用されている。
【0003】
例えば、
図7に示すような傾斜式駐輪装置101では、支柱103の上端部に取付板104を固定し、この取付板104に弧状孔104aを形成し、この弧状孔104aに受台102の先端部に固定した支軸105を嵌挿させてある。
そして、
図7(a)に示すように、受台102を下降させて傾斜状態として、自転車Aを受台102に載置させ又は受台102から降車させ、
図7(b)に示すように、受台102を上昇させて水平状態として、自転車Aを上段に駐輪させるようになっている(特許文献1、非特許文献1及び2参照)。
【0004】
又、傾斜式駐輪装置101では、上段の自転車受台102を下降させて傾斜状態とするため、下段の自転車受台111をレール112に沿って左右に移動可能とし、下段の受台111を移動させたスペースに上段の受台102を位置させるようにしてある。
上段の受台102を上昇させて水平状態とした後、その下方に下段の受台111を位置させ、下段の受台111にも自転車Aを駐輪させるため、上段の受台102の上昇時における位置は、自転車Aと下段の受台111を合わせた高さよりも、かなり高くなるように設定してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4297469号公報(特願2001−029872)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】製品カタログ中の自転車ラック掲載頁:株式会社ダイケン
【0007】
【非特許文献2】製品カタログ中の自転車ラック掲載頁:株式会社ニチプレ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示される従来の傾斜式駐輪装置101では、上段の受台102を下降させて傾斜状態とした時、上段の受台102の傾斜角度は45°前後で急勾配であるため、自転車Aを受台102に載せ難く、労力がいる上、自転車Aが後下方に移動し易く、危険であるという問題があった。
【0009】
又、非特許文献1に開示される従来の傾斜式駐輪装置、さらに、非特許文献2に開示される従来の傾斜式駐輪装置にあっても、上段の受台の下降時における傾斜角度は45°前後で急勾配であるため、同様の問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたものであって、受台を下降させて傾斜状態とした時、受台の傾斜角度が比較的緩勾配になるようにして、自転車を受台にそれほど労力を要せずに載せ易く、自転車が後下方に移動し難く安全である傾斜式駐輪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の傾斜式駐輪装置は、自転車を載置する受台と、前記受台の一端部を回動自在に支持する支柱と、前記受台を回動させて昇降させる
受台昇降機構と、前記受台の上方位置及び下方位置での係止状態を解除する操作部材と、から構成される傾斜式駐輪装置
であって、前記支柱は、上側部側面にベアリングボックス用レールを配設し、上端部背面にアーム車用レールを配設してあり、前記受台昇降機構は、前記ベアリングボックス用レールに沿って転動するベアリング車を備え、前記支柱に沿って昇降するベアリングボックスと、前記受台の先端部下面に固定し、前記ベアリングボックスの上端部に支軸を介して回動自在とした受台支持体と、前記アーム車用レールに沿って転動するアーム車を先端部に備え、前記受台支持体の先端部に基端部を固定してなるアームと、から構成されることを特徴とする。
【0012】
ここで、
前記支柱の上端部側面にストッパーを固着すれば、前記アームの中間部がこのストッパーに当接することによって、前記受台はそれ以上上昇せず、略水平状態に保持される。
【0013】
又、
作用杆の伸縮動作によって押圧作用、緩衝作用を奏する作動装置を付設し、前記作動装置の本体の一端部を前記ベアリングボックスの下端部に枢支し、前記作動装置の作用杆の先端部を前記受台支持体の側面に枢支し、前記受台を上方回動する際に力を付勢するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の傾斜式駐輪装置によれば、受台の下降時における傾斜角度が比較的に緩勾配となるので、女性や子供であっても、自転車を受台に載置し、受台から降車する動作をそれほど労力を要せず、容易にすることができる。又、自転車が後下方に移動し難くなり、極めて安全である。
【0015】
又、本発明の傾斜式駐輪装置によれば、受台の下降時における傾斜角度が比較的に緩勾配となるので、自転車を載置した受台を上昇させる時、後輪受を低くしても自転車が落下することがなく、受台に自転車を載置し、降車するのが極めて容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の傾斜式駐輪装置において、受台を下降させて傾斜状態とした場合の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の傾斜式駐輪装置において、受台を上昇させて水平状態とした場合の側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の傾斜式駐輪装置を採用して、上段を傾斜式駐輪装置とし、下段をスライド式駐輪装置として、上下二段式駐輪施設を構成した場合の側面図である。
【
図4】受台を下降させて傾斜状態とした場合における、(a)は受台の先端部の拡大側面図、(b)は受台の後端部の拡大側面図、(c)は受台の後端部の拡大平面図である。
【
図5】受台を上昇させて水平状態とした場合における、(a)は受台の先端部の拡大側面図、(b)は受台の後端部の拡大側面図、(c)は受台の後端部の拡大平面図である。
【
図6】本発明と従来の傾斜式駐輪装置において、受台を下降させて傾斜状態とした場合の傾斜角度を比較したものであって、(a)は特許文献1に記載の傾斜式駐輪装置の側面図、(b)は本発明の傾斜式駐輪装置の側面図である。
【
図7】特許文献1に記載の傾斜式駐輪装置の(a)は受台を下降させて傾斜状態とした場合の側面図、(b)は受台を上昇させて水平状態とした場合の側面図である。
【
図8】従来の傾斜式駐輪装置において、受台の傾斜状態における傾斜角度を説明するものであって、(a)は非特許文献1に記載の傾斜式駐輪装置の側面図、(b)はその全体外観を示す斜視図である。
【
図9】従来の傾斜式駐輪装置において、受台の傾斜状態における傾斜角度を説明するものであって、非特許文献2に記載の傾斜式駐輪装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の傾斜式駐輪装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の傾斜式駐輪装置1は、
図1及び2に示すように、受台2、支柱4、受台昇降機構3、作動装置9及び操作部材11から構成される。
【0018】
受台2は、自転車Aを載置させる矩形状部材であって、その側面には、柵状の転倒防止部材19を配設してあり、その後端部には、自転車が後下方に移動しないように後輪受13を配設してある。
又、受台2の後端部下面には、受台2をコンクリート床面G等から適宜位置に保持するために、受台ストッパー13Aを付設してある。
【0019】
支柱4は、コンクリート床面G上等に支柱用ベース17によって立設してあり、その上側部側面には、ベアリングボックス用レール8を配設してあり、その上端部側面には、ベアリングボックスストッパー18を固着してある。
又、支柱4の上端部正面には、受け金具11Bを固着してあり、上端部背面には、アーム車用レール16を固定してある。
【0020】
受台昇降機構3は、支柱4に沿って昇降する移動体であるベアリングボックス5と、このベアリングボックス5に対して揺動する受台支持体2Aと、この受台支持体2Aの先端に固定したアーム14とから構成される。
【0021】
支柱4には、支柱4に沿って昇降するベアリングボックス5を配設してあり、ベアリングボックス5にはベアリング車7,7を回転自在に固定してある。
又、ベアリングボックス5の上端部は受台支持体2Aの中間部に支軸10を介して回動自在に固定してある。
【0022】
受台2の先端部の下面には、受台支持体2Aの中間部から基端部を固定してあり、受台支持体2Aの先端には、へ字形に屈曲させたアーム14の基端を溶接等によって固定してある。そして、アーム14の先端部にはベアリング車15を回転自在に固定してある。
【0023】
受台2の側面には、先端部から後端部に亘って杆状の操作部材11を配設してあり、操作部材11の先端部には係止金具11Aを固定し、その後端部にはハンドル12を固定してある。
そして、操作部材11及び係止金具11Aは、常時、支柱4の方向にバネ材等によって弾性付勢されている。
【0024】
ベアリングボックス5の下端部には、作動装置9の本体の一端部を枢支してあり、この作動装置9の作用杆9Aの先端部は、受台2の先端部側面に枢支してある。
この作動装置9は、作用杆9Aの伸縮動作に伴って押圧作用、緩衝作用を奏するものであって、特には、ガススプリングを採用するのが好ましい。
【0025】
本発明の傾斜式駐輪装置1は、以上のような構成であって、以下のように操作することによって、以下のような作用を奏する。
【0026】
図1及び
図4に示すように、受台2が下降して傾斜状態にある時は、ベアリングボックス5はベアリングボックス用レール8の下端部に位置し、アーム14の先端部はアーム車用レール16の基端部に位置している。又、操作部材11の係止金具11Aは、受け金具11Bの下面に当接している。
【0027】
この時、受台2の回動中心となる支軸10は、支柱4に対して比較的に下方位置にあるから、受台2の傾斜角度θは30°前後まで緩傾斜となっている。尚、傾斜角度θは25〜35°、特には、30°であることが好ましい。
よって、女性や子供であっても、自転車Aを受台2に載置し、受台2から降車するのにそれほど労力を要せず、容易にすることができる。又、自転車Aが後下方移動することもなく、極めて安全である。
【0028】
次に、利用者が自転車Aを受台2に載置した後、弾力付勢に抗して操作部材11のハンドル12を後方に引けば、係止金具11Aは受け金具11Bの下面から離反する。
そして、利用者がハンドル12を握りつつ、受台2に上方向の力を加えれば、係止金具11Aの先端は受け金具11Bの正面に沿って当接しつつ上昇する。
ベアリング車7,7もベアリングボックス用レール8に沿って上昇するので、ベアリングボックス5も支柱4に沿って上昇する。一方、アーム車15もアーム車用レール16に沿って斜上方に上昇するので、アーム14の先端部は支柱4から離反する方向へと移動する。
【0029】
この時、作動装置9の作用杆9Aの伸張動作によって、受台2には斜上方に回動する力が付勢されるから、女性や子供であっても、比較的に小さな労力で、自転車Aを載置した受台2を上昇させることができる。
【0030】
さらに、受台2に上方向の力を加えれば、
図5(a)に示すように、係止金具11Aの先端は受け金具11Bの正面から上面へと沿って当接する。一方、アーム14の中間部がストッパー18に当接するので、それ以上受台2は上昇せず、
図2に示すように、略水平状態に保持される。
【0031】
この時、受台2の回動中心となる支軸10は、支柱4に対して最上位置にあるから、受台2は、十分に高い位置に、水平状態に保持されることになる。
【0032】
一方、受台2が水平状態に保持された状態において、利用者が操作部材11のハンドル12を後方に引けば、係止金具11Aは受け金具11Bの上面から離反するから、上記と逆の操作及び動作によって、受台2を下降させ傾斜状態とすることができる。
【0033】
従来は、傾斜状態における受台2の傾斜角度が急勾配であったため、自転車Aを載置した受台2を上昇させる時、利用者に向かって自転車Aが落下しないように、後輪受13を高くしなければならならず、自転車Aを受台2に載置し、降車するのに不便であった。
しかし、本発明においては、傾斜角度が緩勾配となったので、自転車Aを載置した受台2を上昇させる時、後輪受13を低くしても自転車Aが後方に落下することなく、受台2に自転車Aを載置し、降車するのが極めて容易となった。
【0034】
図3に示すように、本発明の傾斜式駐輪装置1を採用すれば、1台分のスペースで上下二段に自転車Aを駐輪させることができ、上方に受台2が水平状態で位置する時には下方のスペースが空くため、下段の受台20と組み合わせることができる。
【0035】
しかし、上段の受台2を下降させる時には1台分のスペースを必要とするので、下段の受台20は左右に移動できるようにする必要がある。
このため、
図3に示すように、コンクリート床面Gに取付ブラケット25を介してレール22を固定して敷設し、ベアリングボックス21の横方向ベアリング車23と縦方向ベアリング車24によってレール22を挟持させ、ベアリングボックス21をレール22に沿って移動自在とする。
【0036】
かかる構成によれば、下段の受台20はレール22に沿って左右に移動できるようになって、上段の受台2を下降する位置に1台分のスペースを空けることができるから、上段の受台2を下降させて傾斜状態にすることができる。
尚、
図3において、26は前倒防止部材、27は車輪、28はタイヤスロープ、29は後輪受、30は転倒防止部材である。
【0037】
図6(a)は特許文献1に記載された傾斜式駐輪装置101であるが、支軸105を中心として受台102が回動するだけなので、他社製品と同じく、受台102の傾斜角度は平均45°前後となり、後輪受106の高さも約311mmから350mmである。
一方、
図6(b)は本発明の傾斜式駐輪装置1であるが、支軸10を中心として受台2が回動すると共に、支軸10自体も昇降するので、受台2の傾斜角度は緩勾配で、30°前後となり、後輪受13の高さも120mm前後にすることができる。
【0038】
図8(a)は非特許文献1に記載された傾斜式駐輪装置であるが、やはり、支軸を中心として受台が回動するだけなので、受台の傾斜角度は46°と急勾配であり、後輪受の高さも311mmである。
図8(b)に示す写真を見ても、受台の傾斜角度はかなりの急勾配であることがわかる。
【0039】
図9は非特許文献2に記載された傾斜式駐輪装置であるが、やはり、支軸を中心として受台が回動するだけなので、受台の傾斜角度は46°前後の急勾配であり、後輪受の高さも約320mmである。
【符号の説明】
【0040】
1 傾斜式駐輪装置
2 受台
2A 受台支持体
3 受台昇降機構
4 支柱
5 ベアリングボックス
6 ベアリングボックス用ストッパー
7 ベアリング車
8 ベアリングボックス用レール
9 ガススプリング
9A シリンダーロッド
10 支軸
11 操作部材
11A 係止金具
11B 受け金具
12 ハンドル
13 後輪受
13A 受台ストッパー
14 アーム
15 アーム車
16 アーム車用レール
17 支柱用ベース
18 ベアリングボックスストッパー
19 転倒防止部材
20 受台
21 ベアリングボックス
22 レール
23 横方向ベアリング車
24 縦方向ベアリング車
25 取付ブラケット
26 前倒防止部材
27 車輪
28 タイヤスロープ
29 後輪受
30 転倒防止部材