(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の部材には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0019】
(第1実施形態)
<熱音響機関の構成>
図1を参照し、本願発明の第1実施形態に係る熱音響機関1の構成について、説明する。
図1に示すように、熱音響機関1は、2つの原動機10(10
1,10
2)が直列に接続されたストレート型熱音響機関である。
【0020】
[原動機]
原動機10は、蓄熱器12の両端部間に温度勾配を形成して作動気体の音響パワー及び音響パワー密度を増幅させるものであり、2本の共鳴管11(11a,11b)と、蓄熱器12と、加熱器13と、冷却器14とを備える。つまり、原動機10は、共鳴管11a,11bと、蓄熱器12と、加熱器13と、冷却器14とを1つのユニットとして扱ったものである。ここで、原動機10は、蓄熱器12の両端を挟むように、加熱器13が蓄熱器12の一端側に配置され、冷却器14がその反対側、すなわち蓄熱器12の他端側に配置されている。
図1では、外部から原動機10
1に入力される音波を音波入力と図示し、熱音響機関1が増幅して出力する音波を音波出力と図示した。
【0021】
[共鳴管]
共鳴管11は、作動気体が満たされる直線状の円筒管であり、所定の共鳴管長さL及び断面積を有している。ここで、共鳴管11aが冷却器14に接続され、共鳴管11bが加熱器13に接続されている。また、原動機10
1の共鳴管11bは、加熱器13に接続されていない側が、原動機10
2の共鳴管11aで冷却器14に接続されていない側に接続される。また、共鳴管11は、共鳴管長さLが、後記する音響パワー増幅率が加熱器温度と冷却器温度との比に0.7以上1.0以下の値を乗じた値以上となるように設定されている。共鳴管長さLの設定については、詳細を後記する。
作動気体としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、ヘリウムとアルゴンとの混合物や空気等がよく用いられる。
ここでは、作動気体として大気圧空気を用いる場合は、原動機10
1の共鳴管11aの一端を開口していてもよい。また、
図2に示すように、共鳴管11aの一端には、作動気体を封入するバッファータンク16を設けてもよい。すなわち、バッファータンク16を設ける場合は、作動気体は共鳴管11内にも封入されて満たされるものであり、共鳴管11aの一端を開口した場合は、大気圧空気で満たされるものである。
なお、
図2以降、図面を見易くするため、一部符号を省略した。
【0022】
[蓄熱器]
蓄熱器12は、共鳴管11の管路に設けられ、作動気体を加熱及び冷却するものである。すなわち、蓄熱器12は、加熱器13及び冷却器14によって蓄熱器12の両端部間に温度勾配を形成して作動気体の音響パワー及び音響パワー密度を増幅させる。蓄熱器12は、その一端部(以下、適宜、高温部12bと称する)と、その他端部(以下、適宜、常温部12aと称する)との間に生じる温度差を保つことによって、主として作動気体の音響パワー及び音響パワー密度を増幅する機能を有している。蓄熱器12は、例えば、共鳴管11の延在方向(管路方向)に多数の平行通路を有するセラミックス製のハニカム構造体や、多数枚のステンレス鋼メッシュ薄板を微小ピッチで積層した構造体とすることができる。あるいは、蓄熱器12として、金属繊維よりなる不織布状物等を用いることも可能である。
【0023】
[加熱器]
加熱器(高温熱交換器)13は、蓄熱器12の一端側に隣接して共鳴管11の管路に設けられ、蓄熱器12の一端部(高温部12b)を加熱するものである。すなわち、加熱器13は、外部熱を用いて蓄熱器12の一端を加熱する熱入力部として機能する。加熱器13は、例えば、加熱用の熱交換器から構成される。具体的には、加熱器13は、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板が微小ピッチで積層された構成とされる。この加熱器13には図示しない加熱装置が接続されており、その外周に設けられた環状部材13a(
図3)を介して加熱処理される構成とされている。なお、図面では便宜上、蓄熱器12と加熱器13の間に環状部材13aの左壁が示されているが、加熱器13は、この左壁を通して蓄熱器12の一端側と隣接、すなわち密着している。
【0024】
[冷却器]
冷却器14は、蓄熱器12の他端側に隣接して共鳴管11の管路に設けられ、蓄熱器12の他端部(常温部12a)の熱を外部に放出するものである。すなわち、冷却器14は、冷却水や空気等を用いて蓄熱器12の他端の熱を外部に放出して冷却する機能を有している。冷却器14は、例えば、冷却用の熱交換器から構成される。冷却器14としては、基本的には加熱器13と同一構成とされており、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板が微小ピッチで積層された構成とされている。この冷却器14は、その周囲に冷却ブラケット14a(
図3)が配設されている。この冷却ブラケット14aには図示しない冷却水路が接続されており、冷却水路を流れる冷却水により、冷却器14は冷却ブラケット14aを介して一定の冷却温度を維持しうる構成とされている。なお、図面では便宜上、蓄熱器12と冷却器14の間に冷却ブラケット14aの右壁が示されているが、冷却器14は、この右壁を通して蓄熱器12の他端側と隣接、すなわち密着している。
【0025】
[共鳴管長さの設定]
図3,
図4を参照し、共鳴管長さLの設定について、詳細に説明する(適宜
図1参照)。
最初に、共鳴管長さL以外の諸元を決定する。具体的には、各原動機10が備える共鳴管11a,11bについて、直径、開口率及び流路径を決定する。また、各原動機10が備える蓄熱器12、加熱器13及び冷却器14について、長さ、直径、開口率及び流路径を決定する。また、各原動機10について、加熱器温度及び冷却器温度を決定する。ここで、加熱器温度とは、各原動機10が備える加熱器13の温度を表す。また、冷却器温度とは、各原動機10が備える冷却器14の温度を表す。また、作動気体について、動作周波数、種類及び平均圧力を決定する。これによって、共鳴管長さL以外の伝達マトリクスの要素が決定する。
【0026】
続いて、以下の計算モデルを用いて、熱音響機関1の伝達マトリクスM
allを求める。この計算モデルは、Rottが導いた熱音響微分方程式に基づいている。Rottの熱音響微分方程式は、例えば、文献「N. Rott,Z.Angew.Math.Phys.20,pp.230-243,1969」に詳細に記載されており、下記の式(1)及び式(2)で表される。
【0029】
ここで、pが圧力振幅、Uが断面平均体積流速振幅、jが虚数単位、ωが角周波数、A
Cが共鳴管11の断面積、p
mが作動気体の平均圧力、γが比熱比、νが動粘性係数、σがプラントル数、T
mが共鳴管11の内部における作動気体の平均温度、αが熱拡散係数である。
【0030】
なお、蓄熱器12の温度勾配dT
m/dxは一定ではない。本実施形態では、蓄熱器12においてエンタルピー流は一定であるという条件でイタレーション(繰り返し計算)を行って、温度勾配dT
m/dxを設定している。
【0031】
また、χ
α,χ
νは、温度拡散係数及び動粘性係数に依存する複素関数である。χ
α,χ
νは、共鳴管11が円形断面を有するとき、下記の式(3)で表すことができる。
【0033】
ここで、J
0,J
1がベッセル関数の0番目及び1番目のオーダ、rが共鳴管11の半径、τ
α,τ
νが熱緩和時間及び動粘性緩和時間である。また、点xにおけるp(x),U(x)、及び、x=0となる点でのp(0),U(0)を用いて、式(1)の解を下記の式(4)及び式(5)で表すことができる。
【0036】
ここで、eがネイピア数である。式(4)を与えられた要素で連結することで、全体の音場を求めることができる。ここで、
図3に示すように、原動機10毎に、冷却器14に接続された共鳴管11aの端を始点aとし、加熱器13に接続された共鳴管11bの端を終点bとする。始点aでの圧力振幅をp
a、始点aでの断面平均体積流速振幅をU
aとする。また、終点bでの圧力振幅をp
b、終点bでの断面平均体積流速振幅をU
bとする。この場合、始点a及び終点bの関係は、伝達マトリクスを用いて、下記の式(6)で表すことができる。
【0038】
ここで、B
aが冷却器14に接続された共鳴管11aの伝達マトリクス、B
AHXが冷却器14の伝達マトリクス、B
regが蓄熱器12の伝達マトリクス、B
HHXが加熱器13の伝達マトリクス、B
bが加熱器13に接続された共鳴管11bの伝達マトリクスである。
【0039】
図4に示すように、2つの原動機10
1,10
2を接続するには、接続点におけるインピーダンスマッチングが重要である。つまり、Z=p/vとし、原動機10
1の比音響インピーダンスZ
lと原動機10
2の比音響インピーダンスZ
2とが等しくなる条件を見つける。そこで、下記の式(7)及び式(8)を満たす伝達マトリクスM
allの固有値λに注目する。
【0042】
ここで、A
aが始点aでの断面積、A
bが終点bでの断面積、v
aが始点aでの断面平均流速振幅、v
bが終点bでの断面平均流速振幅である。このとき、始点a及び終点bの比音響インピーダンスは、比音響インピーダンスZ=p
a/v
a=p
b/v
bと仮定すれば、伝達マトリクスM
allによって求めることができる。
【0043】
固有値及び固有ベクトルは、マトリクス要素に依存する。この固有ベクトルの要素の比で決まる比音響インピーダンスZがρ
mc(ρ
mは作動気体の平均密度、cは音速)に近いと、進行波音波に近いことを意味する。伝達マトリクスM
allの固有ベクトルは2つ存在するが、本実施形態では、音波が正方向に進行すると考えて、実数部が正となる比音響インピーダンスZと、それに対応する固有値λを用いる。固有値λと音響パワー増幅率Gとの関係は、下記の式(9)で表すことができる。この音響パワー増幅率Gとは、始点aの音響パワーに対する終点bの音響パワーの比である。
【0045】
ここで、‘〜’は、複素共役である。また、共鳴管11a,11bの直径が同一のため、A
a=A
bが成立するから、式(9)は下記の式(10)で表すことができる。
【0047】
従って、式(10)に伝達マトリクスM
allの固有値λを代入することで、音響パワー増幅率Gを求めることができる。そして、共鳴管長さLは、音響パワー増幅率Gが最大となるように設定する。
【0048】
図5を参照し、熱音響機関1における、原動機10
1,10
2への入力熱量の関係を説明する。ここで、原動機10
1への入力熱量をQ
lとし、原動機10
2への入力熱量をQ
2とする。また、原動機10
1(共鳴管11a〜共鳴管11b)の音響パワー増幅率をG
lとし、原動機10
2(共鳴管11a〜共鳴管11b)の音響パワー増幅率をG
2とする。原動機10
1,10
2が同一構成であるならば、入力熱量Q
l,Q
2の関係は、下記の式(11)で表すことができる。
【0050】
[熱音響機関の製造方法]
図6を参照し、熱音響機関1の製造方法として、共鳴管長さLの設定手順について説明する(適宜
図1参照)。
【0051】
まず、熱音響機関1の製造方法では、共鳴管長さL以外の諸元を決定する(ステップS1)。
次に、熱音響機関1の製造方法では、式(1)〜式(7)を用いて、熱音響機関1の伝達マトリクスM
allを求める(ステップS2:伝達マトリクス算出工程)
【0052】
次に、熱音響機関1の製造方法では、式(8)を用いて、伝達マトリクスM
allの固有値λを求める(ステップS3:固有値算出工程)。
次に、熱音響機関1の製造方法では、固有値算出工程S3で求めた固有値λを式(10)に代入して、音響パワー増幅率Gを求める(ステップS4:音響パワー増幅率算出工程)。
【0053】
次に、熱音響機関1の製造方法では、共鳴管長さLを、音響パワー増幅率算出工程S4で求めた音響パワー増幅率Gが最大となるように設定する(ステップS5:共鳴管長さ設定工程)。
【0054】
[作用・効果]
以上のように、熱音響機関1は、Rottが導いた熱音響微分方程式を展開した計算モデルを用いて(式(1)〜式(10))、音響パワー増幅率Gが最大になる共鳴管長さLを容易に設定することができる。これによって、熱音響機関1は、蓄熱器12の位置での高いインピーダンスを実現すると共に音響パワー密度を増加させて、大きな音響パワーを進行波又は進行波に近い音波で伝えることができる。さらに、熱音響機関1は、各原動機10が備える全ての共鳴管11が同一長さ及び同一断面積となる同一構成なので、各原動機10の接続点におけるインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0055】
(第2実施形態)
<熱音響発電機の構成>
図7を参照し、本願発明の第2実施形態に係る熱音響機関1Aの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する(適宜
図1参照)。
図7に示すように、熱音響機関1Aは、
図1の熱音響機関1と、原動機ループ(入力部)20と、発電機(出力部)30とを備える熱音響発電機である点が、第1実施形態と異なる。
【0056】
[原動機ループ]
原動機ループ20は、音響パワー及び音響パワー密度を増幅させるための入力音波を原動機10
1に入力するものであり、ループ管21と、蓄熱器22と、加熱器23と、冷却器24とを備える。
【0057】
原動機用ループ管21は、作動気体が封入される環状の管であり、その管路は角丸の四角形に形成され、四辺に該当する直線部を形成する直管部21a〜21dからなる。すなわち、原動機用ループ管21は、縦方向に略平行に並んだ2つの直管部21a,21bと、横方向に略平行に並んだ2つの直管部21c,21dと、を有している。そして、原動機用ループ管21は、直管部21aの一端と直管部21cの一端、直管部21bの一端と直管部21cの他端、直管部21bの他端と直管部21dの一端が接続され、この部位で湾曲している。また、原動機用ループ管21は、直管部21aの他端と直管部21dの他端が接続されるとともに、この分岐部位において、原動機10
1の共鳴管11に接続する。この分岐部位は、上側が湾曲しているが、直角に形成しているものであってもよい。
【0058】
すなわち、原動機用ループ管21は、原動機10
1の共鳴管11aに作動気体が通動可能な状態で接続されている。また、原動機10
1の共鳴管11aと原動機用ループ管21との境界は、この共鳴管11aの長さが共鳴管長さL以上になる位置であればよい。
図7では、原動機10
1の共鳴管11aと原動機用ループ管21との境界を符号A1と図示した。
【0059】
蓄熱器22、加熱器23及び冷却器24は、ループ管21に設けられた以外、蓄熱器12、加熱器13及び冷却器14と同様のため、詳細な説明を省略する。なお、蓄熱器22、加熱器23及び冷却器24は、それらのサイズ(長さ、直径、開口率、流路径)を原動機10
1,10
2と無関係に決定することができる。
【0060】
[発電機]
発電機30は、原動機10
2の共鳴管11bの他端に接続されており、原動機10で増幅された増幅音波に応動して発電を行なうリニア発電機として機能する。すなわち、発電機30は、音響パワーに基づき内側ヨーク33を往復振動させて、音響パワーを電力に変換するものである。
【0061】
発電機30は、原動機10
2の共鳴管11bの他端に接続され、共鳴管11及びループ管21の内部で生じる圧力変動に対応した内部圧力変動を受ける圧力容器39を備えている。圧力容器39内には、外側ヨーク(円筒)31,31と、外側ヨーク31,31にそれぞれ収容されるコイル32,32と、外側ヨーク31,31の間に位置する内側ヨーク(円筒)33と、外側ヨーク31,31のそれぞれと内側ヨーク33との間に設けられた永久磁石34,34と、が備えられている。なお、永久磁石34,34は、それぞれS極とN極の磁石から構成されている。
【0062】
発電機30におけるこのような構造は、コイル32,32を周回する磁束密度の時間変化により電流が発生するという原理に基づいた発電方式を採用している。すなわち、音響パワーに基づき内側ヨーク33がストロークすることにより、コイル32,32を周回する磁束密度が大きく変化し、発電が行われる。また、内側ヨーク33に突起33aを取り付けることによって、エアギャップを磁束が通過することによる磁束密度の低下を抑止することができる。
【0063】
なお、発電機30は、原動機10
2の共鳴管11bに作動気体が通動可能な状態で接続されている。また、原動機10
2の共鳴管11bと発電機30との境界は、この共鳴管11bの長さが共鳴管長さL以上になる位置であればよい。
図7では、原動機10
2の共鳴管11bと発電機30との境界を符号A2で図示した。
【0064】
<熱音響発電機の動作>
まず、熱音響機関1Aは、原動機ループ20において、加熱器23によって蓄熱器22の高温部22bを加熱し、かつ、冷却器24によって蓄熱器22の常温部22aを冷却すると、蓄熱器22の両端に、すなわち、高温部22bと常温部22aとの間に温度差が生じる。この温度差により、原動機ループ20(具体的には、蓄熱器22)には、主として作動気体の音響パワーが生じる。そして、原動機ループ20において発生した作動気体の音響パワーは、入力音波としてループ管21の直管部21a,21c,21b,21dを順に通過して、原動機10
1,10
2に伝達される。
【0065】
原動機10
1,10
2において音響パワー及び音響パワー密度が増幅される。このとき、熱音響機関1Aは、音響パワー増幅率Gが最大になるように共鳴管長さLが設定されているので、蓄熱器12の位置で高いインピーダンスを実現すると共に、音響パワー密度を増加させることができる。その結果、熱音響機関1Aは、発電機30に大きな音響パワーが伝えられ、この音響パワーに基づき内側ヨーク33を往復振動させることで、音響パワーが電力に変換されて発電が行なわれる。
【0066】
<作用・効果>
以上のように、熱音響機関1Aは、第1実施形態と同様の効果に加え、変換機構による変換ロスや摩擦損失が根本的に存在しないというメリットがあり、小型化や高効率化を期待することができる。
【0067】
(第3実施形態)
<熱音響冷却機の構成>
図8を参照し、本願発明の第3実施形態に係る熱音響機関1Bの構成について、第2実施形態と異なる点を説明する(適宜
図7参照)。
図8に示すように、熱音響機関1Bは、
図7の発電機30の代わりに、冷却ループ(出力部)40を備える熱音響冷却機である点が、第2実施形態と異なる。
【0068】
冷却ループ40は、原動機10で増幅された音響パワー(増幅音波)に応動して冷却を行うものであり、冷凍用ループ管41と、冷凍用蓄熱器42と、冷凍用冷却器43と、冷気放出器44とを備える。
【0069】
[冷凍用ループ管]
冷凍用ループ管41は、作動気体が封入される環状の管であり、その管路は角丸の四角形に形成され、四辺に該当する直線部を形成する直管部41a〜41dからなる。すなわち、冷凍用ループ管41は、四辺に該当する直線部を形成する縦方向に略平行に並んだ2つの直管部41a,41bと、横方向に略平行に並んだ2つの直管部41c,41dと、を有している。そして、冷凍用ループ管41は、直管部41aの一端と直管部41cの一端、直管部41bの一端と直管部41cの他端、直管部41bの他端と直管部41dの一端が接続され、この部位で湾曲している。また、冷凍用ループ管41は、直管部41aの他端と直管部41dの他端が接続されるとともに、この分岐部位において、原動機10
2の共鳴管11bに接続する。この分岐部位は、上側が湾曲しているが、直角に形成しているものであってもよい。
【0070】
すなわち、冷凍用ループ管41は、原動機10
2の共鳴管11bに作動気体が通動可能な状態で接続されている。また、原動機10
2の共鳴管11bと冷凍用ループ管41との境界は、この共鳴管11bの長さが共鳴管長さL以上になる位置であればよい。
図8では、原動機10
2の共鳴管11bと冷凍用ループ管41との境界を符号A3と図示した。
【0071】
[冷凍用蓄熱器]
冷凍用蓄熱器42は、冷凍用ループ管41の管路に設けられ、作動気体を冷却するものである。すなわち、冷凍用蓄熱器42は、原動機10
2から、共鳴管11b、冷凍用ループ管41の直管部41d,41b,41c,41aの順にこれらの管を通じて冷凍用蓄熱器42の一端部(以下、適宜、常温部42aと称する)に伝達された音響パワーを、冷凍用蓄熱器42の一端部(常温部42a)と冷凍用蓄熱器42の他端部(以下、適宜、低温部42bと称する)との間における温度差に変換する機能を有している。冷凍用蓄熱器42の常温部42aは、冷凍用冷却器43によって冷却されているため、伝達された音響パワーによって、冷凍用蓄熱器42の低温部42bは、常温部42aよりも低い温度まで冷却されて冷気が発生する。この冷気は、冷気放出器44によって外部に取り出される。冷凍用蓄熱器42は、熱容量の大きい蓄冷材からなる。蓄冷材としては、例えば、ステンレス鋼、銅、鉛等を用いることができ、また、冷凍用蓄熱器42の形状は多様な形状を適用することが可能である。
【0072】
[冷凍用冷却器]
冷凍用冷却器43は、冷凍用蓄熱器42の一端側に隣接して冷凍用ループ管41の管路に設けられ、冷凍用蓄熱器42の一端部(常温部42a)の熱を外部に放出するものである。すなわち、冷凍用冷却器43は、冷却水や空気等を用いて冷凍用蓄熱器42の一端の熱を外部に放出して冷却する機能を有している。冷凍用冷却器43は、例えば、冷却用の熱交換器から構成される。具体的には、冷凍用冷却器43は、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板が微小ピッチで積層された構成とされている。この冷凍用冷却器43は、その周囲に冷却ブラケット43aが配設されている。この冷却ブラケット43aには図示しない冷却水路が接続されており、冷却水路を流れる冷却水により、冷凍用冷却器43は冷却ブラケット43aを介して一定の冷却温度を維持しうる構成とされている。なお、図面では便宜上、冷凍用蓄熱器42と冷凍用冷却器43の間に冷却ブラケット43aの下壁が示されているが、冷凍用冷却器43は、この下壁を通して冷凍用蓄熱器42の一端側と隣接、すなわち密着している。
【0073】
[冷気放出器]
冷気放出器44は、冷凍用蓄熱器42の他端側に隣接して冷凍用ループ管41の管路に設けられ、冷凍用蓄熱器42の他端部(低温部42b)に発生する冷気を外部に放出するものである。すなわち、冷気放出器44は、冷凍用蓄熱器42の他端において発生する冷気を外部に取り出す冷気出力部として機能する。冷気放出器44は、例えば、冷凍用の熱交換器から構成される。冷気放出器44としては、基本的には冷凍用冷却器43と同一構成とされており、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板が微小ピッチで積層された構成とされている。この冷気放出器44の外周位置には、冷気(冷熱)を取り出す高熱伝導率材料(例えば、銅)よりなる環状部材44aが配設されている。なお、図面では便宜上、冷凍用蓄熱器42と冷気放出器44の間に環状部材44aの上壁が示されているが、冷気放出器44は、この上壁を通して冷凍用蓄熱器42の他端側と隣接、すなわち密着している。
【0074】
<熱音響冷却機の動作>
熱音響機関1Bでは、熱音響機関1Aと同様、原動機ループ20(具体的には、蓄熱器22)に、主として作動気体の音響パワーが生じる。そして、原動機ループ20において発生した作動気体の音響パワーは、入力音波としてループ管21の直管部21a,21c,21b,21dを順に通過して、原動機10
1,10
2に伝達される。
【0075】
原動機10
1,10
2において音響パワー及び音響パワー密度が増幅される。このとき、熱音響機関1Bは、音響パワー増幅率Gが最大になるように共鳴管長さLが設定されているので、蓄熱器12の位置で高いインピーダンスを実現すると共に、音響パワー密度を増加させることができる。その結果、熱音響機関1Bは、冷却ループ40に大きな音響パワーを伝えることができる。
【0076】
次に、冷凍用蓄熱器42に伝達された音響パワーは、冷凍用冷却器43によって外部に熱を放出して冷却されている冷凍用蓄熱器42の常温部42aと冷凍用蓄熱器42の低温部42bとの間における温度差に変換される。そして、この冷凍用蓄熱器42の両端の温度差によって冷凍用蓄熱器42の低温部42bに発生した冷気(冷熱)が、冷気放出器44によって外部に取り出されることにより、冷凍能力が得られる。
【0077】
<作用・効果>
以上のように、熱音響機関1Bは、第2実施形態と同様、変換機構による変換ロスや摩擦損失が根本的に存在しないというメリットがあり、小型化や高効率化を期待することができる。
なお、熱音響機関1Bが冷却ループを備えることとして説明したが、冷却ループ40の代わりに、昇温を行う昇温ループ(不図示)を備えてもよい。この昇温ループは、
図7の原動機ループ20と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0078】
(第4実施形態)
図9を参照し、本願発明の第4実施形態に係る熱音響機関1Cとして、その具体的な利用方法を例示する(適宜
図1参照)。
【0079】
図9に示すように、熱音響機関1Cは、
図1の原動機10
1,10
2に直列に接続された原動機10
3をさらに備える点が、第1実施形態と異なる。この原動機10
3は、原動機10
1,10
2と同様のため、説明を省略する。
【0080】
ここで、熱音響機関1Cは、工場60で発生した排熱を利用している。すなわち、熱音響機関1Cは、冷却装置50で冷却された冷却水により、原動機10
1〜10
3の冷却器14を冷却する。このとき、熱音響機関1では、冷却水による冷却に代えて、空冷による冷却を行ってもよい。また、熱音響機関1Cは、工場60で発生した排熱により、原動機10
1〜10
3の加熱器13を加熱する。これによって、熱音響機関1Cは、原動機10
1〜10
3の蓄熱器12の両端部に温度勾配が形成される。
【0081】
また、熱音響機関1Cは、自動車エンジンで発生した排熱により加熱し、水冷又は空冷による冷却を行う熱音響機関として利用することもできる。
さらに、熱音響機関1Cは、船舶のエンジンで発生した排熱により加熱し、エンジン冷却用海水による水冷又は空冷による冷却を行う熱音響機関として利用することもできる。
【0082】
<作用・効果>
以上のように、熱音響機関1Cは、この熱音響機関1Cの周囲で発生した排熱を利用できるので、エネルギ回収効率を向上させることができ、地球温暖化やエネルギ問題の解決に寄与することができる。
【0083】
(変形例)
本願発明に係る熱音響機関は、前記した実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で変形を加えることができる。
前記した各実施形態では、熱音響機関は、2つ又は3つの原動機を直列に接続したこととして説明したが、4つ以上、原動機を直列に接続してもよい。
【実施例】
【0084】
以下、本願発明の実施例について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各実施例では、
図1の熱音響機関1と同一構成とした。ここで、共鳴管11a,11b、蓄熱器12、加熱器13及び冷却器14に関する諸元と、冷却器温度、加熱器温度及び作動気体に関する諸元とをパラメータとして設定し、共鳴管長さLを求めた。以下、実施例1〜3として、それぞれ説明する。
【0085】
(実施例1)
実施例1において、共鳴管11a,11b、蓄熱器12、加熱器13及び冷却器14に関する諸元は、
図10に示した。また、冷却器温度が300(K)、加熱器温度が600(K)、動作周波数が40(Hz)、作動気体が大気圧空気である。
図10では、共鳴管11aを共鳴管1と図示し、共鳴管11bを共鳴管2と図示した(
図14,
図18も同様)。
【0086】
つまり、実施例1では、原動機10
1,10
2の加熱器13を600(K)で加熱し、原動機10
1,10
2の冷却器14を300(K)で冷却する。この実施例1では、加熱器温度及び冷却器温度を各原動機10で同一としたが、加熱器温度及び冷却器温度が原動機10毎に異なってもよい。
【0087】
そして、前記した計算モデルを用いて、音響パワー増幅率Gを算出した。
図11は、音響パワー増幅率Gと共鳴管長さLとユニット効率ηとの関係を表す。
図11では、音響パワー増幅率Gと共鳴管長さLとの関係を実線で図示し、音響パワー増幅率Gが最大になる箇所をドットで図示し、共鳴管長さLと効率ηとの関係を破線で図示した(
図15,
図19も同様)。
【0088】
ユニット効率ηは、各原動機10の熱効率を表し、下記の式(12)のように、原動機10への入力音響パワーW
inとし、原動機10からの出力音響パワーW
outの差を、入力熱量Qで除算した値と定義することができる。
【0089】
【数12】
【0090】
図11より、共鳴管長さLが0.43[m]のとき、各原動機10の音響パワー増幅率Gが1.55と最大になるので、この共鳴管長さLを設定した。
【0091】
この共鳴管長さLを設定したときの規格化音響パワー分布を
図12に図示し、規格化音響パワー密度分布を
図13に図示した。
図12,
図13の横軸x[m]は、原動機10
1の共鳴管11aの左端(つまり、熱音響機関1に音波が入力される位置)を基準とした距離である。また、
図12では、x=0の位置での音響パワーW
0で規格化し、
図13では、x=0の位置での音響パワー密度I
0で規格化した。
【0092】
図12,
図13から、原動機10
1,10
2が接続される毎に、音響パワー及び音響パワー密度が増加していることがわかる。なお、蓄熱器12の付近で音響パワー密度が低下したのは、共鳴管11よりも蓄熱器12の断面積が広いためと考えられる。
【0093】
(実施例2)
実施例2において、共鳴管11a,11b、蓄熱器12、加熱器13及び冷却器14に関する諸元は、
図14に示した。また、冷却器温度が300(K)、加熱器温度が600(K)、動作周波数が40(Hz)、作動気体が10気圧のヘリウムである。そして、実施例1と同様の計算モデルを用いて、音響パワー増幅率Gを算出した。
【0094】
音響パワー増幅率Gと共鳴管長さLとユニット効率ηとの関係を
図15に示した。
図15より、共鳴管長さLが2.61[m]のとき、各原動機10の音響パワー増幅率Gが1.70と最大になるので、この共鳴管長さLを設定した。
【0095】
この共鳴管長さLを設定したときの規格化音響パワー分布を
図16に図示し、規格化音響パワー密度分布を
図17に図示した。
図16,
図17から、実施例1と同様、原動機10
1,10
2が接続される毎に、音響パワー及び音響パワー密度が増加していることがわかる。
【0096】
(実施例3)
実施例3において、共鳴管11a,11b、蓄熱器12、加熱器13及び冷却器14に関する諸元は、
図18に示した。また、冷却器温度が300(K)、加熱器温度が600(K)、動作周波数が25(Hz)、作動気体が30気圧のヘリウムである。そして、実施例1と同様の計算モデルを用いて、音響パワー増幅率Gを算出した。
【0097】
音響パワー増幅率Gと共鳴管長さLとユニット効率ηとの関係を
図19に示した。
図19より、共鳴管長さLが5.49[m]のとき、各原動機10の音響パワー増幅率Gが1.62と最大になるので、この共鳴管長さLを設定した。
【0098】
この共鳴管長さLを設定したときの規格化音響パワー分布を
図20に図示し、規格化音響パワー密度分布を
図21に図示した。
図20,
図21から、実施例1と同様、原動機10
1,10
2が接続される毎に、音響パワー及び音響パワー密度が増加していることがわかる。
【0099】
ここで、
図11,
図15,
図19の結果を整理する。これらグラフより、音響パワー増幅率Gが加熱器温度と冷却器温度との比の70%以上になるように共鳴管長さLを設定すれば、ユニット効率ηも高くなり、熱音響機関1が大きな音響パワーを進行波又は進行波に近い音波で伝えられると考えられる。つまり、共鳴管長さLは、音響パワー増幅率Gが加熱器温度と冷却器温度との比に0.7以上1.0以下の値を乗じた値以上となるように設定すればよいことがわかる。