(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記データ交換手段は、パス上の一の主体が所持している、その下流側の主体にとって第1の価値を有するデータを当該主体へ提供させ、当該一の主体にとって第1の価値を有するデータを上流側の主体から取得させることを特徴とする請求項1または2に記載のデータ交換装置。
前記評価手段は、各主体が所持するデータの価値を、他の一の主体が当該データに関連して所持している他のデータに基づいて当該他の一の主体にとっての価値として評価することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のデータ交換装置。
前記評価手段は、各主体が所持するデータを、対象ごとにその特徴量のデータが行列配置されるマトリックスで表現できるとき、各主体間で少なくとも一つのデータを所持する行および列において不足するデータ同士を等価と評価することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のデータ交換装置。
前記評価手段は、各主体が所持するデータを、対象ごとにその特徴量のデータが行列に配置されるマトリックスで表現できるとき、各主体間で特徴量の異なるデータ同士の等価性を、各特徴量の概念辞書上での距離が離れるほど低く評価することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のデータ交換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データの価値は、これを取得する者が当該データに関連して既に所持している他のデータの有無や内容にも依存し、例えば、一揃いで扱われるデータ群における各データの価値は、これを既に所持している者にとっては低いが、所持していない者にとっては高くなる。
【0005】
例えば、データ群を、対象ごとにその特徴量のデータが行列配置されるマトリックス配置で表現できるとき、少なくとも一つのデータを所持する行および列において不足するデータの価値は、それ以外のデータの価値よりも高くなる。
【0006】
例えば、
図13に一例を示したように、顧客(ユーザ)の個人情報の価値は、住所、氏名、年齢、性別、職業、嗜好傾向などの特徴量についてデータが揃うほど高くなり、一部の特徴量についてのみデータを所持していても利用価値は余り高くない。したがって、ユーザ甲に関しては氏名、年齢、性別、職業、嗜好傾向のデータを所持し、ユーザ乙に関しては氏名のデータのみを所持している場合、ユーザ甲の住所に関するデータは、これを取得できればユーザ甲に関して全てのデータが揃うので価値が高いと言える。同様に、ユーザ丙の氏名データも、これを取得できれば全ユーザの氏名データが揃うので価値が高いと言える。
【0007】
すなわち、データ群を、対象ごとにその特徴量のデータが行列配置されるマトリックス配置で表現できるとき、少なくとも一つのデータを所持する行および列において不足するデータの価値は、それ以外のデータの価値よりも高くなる。
【0008】
しかしながら、これまでは各データの価値を、これを取得する側の事情、例えば当該データに関連して既に取得しているデータの種類や数などに基づいて評価することができず、これがデータの等価交換を普及させる上での障害となっていた。
【0009】
本発明の目的は、上記の技術課題を解決し、データの価値を、これを取得する側の事情に基づいて定量的に評価することにより、データセンタ等におけるデータの等価交換を実現するデータ交換方法、装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、主体間でのデータの等価交換を実現するデータ交換装置において、以下のような構成を具備した点に特徴がある。
【0011】
(1)各主体が所持するデータの価値を、当該データの他の主体にとっての価値として評価する評価手段と、データの要求主体が表明した要求データを所持する所持主体を検索する所持主体検索手段と、要求主体から所持主体へ前記要求データに対する提供データまたはこれと等価なデータを転送するパスを構築するパス構築手段と、パス上の各主体にデータ交換を行わせて前記所持主体から要求主体へ前記要求データを提供させるデータ交換手段とを具備した。そして、パス上の各主体が、下流側の主体にとって第1の価値を有するデータを所持し、各主体にとって第1の価値を有するデータを上流側の主体が所持するようにした。
【0012】
(2)データ交換手段は、パス上の一の主体が所持している、その下流側の主体にとって第1の価値を有するデータを当該主体へ提供させ、当該一の主体にとって第1の価値を有するデータを上流側の主体から取得させるようにした。
【0013】
(3)第1の価値を有するデータが、複数のデータの価値の総計が第1の価値となる当該複数のデータであるようにした。
【0014】
(4)パス構築手段は、パス長のより長いパスを優先的に構築するようにした。
【0015】
(5)パス構築手段は、パス上の各主体がデータ交換を承認する確率が高いパスを優先的に構築するようにした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0017】
(1)各主体が所持するデータの価値を、当該データの他の主体にとっての価値として評価し、一の主体が有している他の一の主体にとって第1の価値を有するデータが、一の主体にとって第1の価値を有する他のデータと等価と評価されるようにしたので、主体間でのデータの等価交換を実現できるようになる。
【0018】
(2)一の主体が所持している他の主体にとって第1の価値を有するデータを、前記一の主体にとって総計で第1の価値となる複数のデータと等価と評価するようにしたので、データ交換の多様性を向上させることができる。
【0019】
(3)相互にデータを等価交換できる主体ペアが存在しない場合であっても、第3ないしそれ以上の主体を経由する間接的なデータ交換により、複数の主体が同時にデータの等価交換を実現できるようになる。
【0020】
(4)データの等価交換パスをより長く設定することにより、より多くの主体をデータ交換に参加させることができるので、システム全体としてのデータ交換量を増やすことができ、システム運営者およびシステム参加者の双方に、より大きな利益が生じ得る。すなわち、参加者はより多くのデータ交換を実現することで必要なデータをより多く取得でき、またデータの交換量や所持量に応じて参加者からシステム運用者に利用料金が支払われる契約があれば、システム運営者はより多くの利用料金を得られるようになる。
【0021】
(5)データの等価交換パスの構築にあたって、データ交換の承認確率が高いパスから優先的に評価して等価交換パスに決定するようにしたので、等価交換パスの構築を効率よく行えるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されるデータ共有システム(データバンク)の主要部の構成を示したブロック図であり、データベースに所持するデータを等価交換する多数の主体(例えば、事業者)N(N1,N2,N3…)と、各主体間でのデータの等価交換を支援、実現するデータ交換装置1とにより構成される。
【0024】
データ交換装置1において、データ管理部101は、各主体Nがそのデータベースに所持するデータを管理する。データ評価部102は、各主体が所持するデータを評価する。本実施形態では、後に詳述するように、各主体が所持するデータの価値が当該データの他の主体にとっての価値として、当該他の主体が当該データに関連して既に所持している他のデータの個数や種別等に基づいて評価される。
【0025】
等価交換パス構築部103は、データを等価交換できる主体を特定して、当該主体間にデータの等価交換パスを構築する。データ交換部104は、一の主体が所持している他の一の主体にとって第1の価値を有するデータを当該他の一の主体へ提供させる一方、当該一の主体にとって第1の価値を有するデータを、前記他の一の主体またはそれ以外の主体から取得させることにより、各主体間でのデータの等価交換を実現する。
【0026】
このようなデータ交換装置1は、汎用のコンピュータやサーバに各機能を実現するアプリケーション(プログラム)を実装することで構成しても良いし、あるいはアプリケーションの一部がハードウェア化またはROM化された専用機や単能機として構成しても良い。
【0027】
次いで、本発明の第1実施形態を、
図2に示した一対の主体ペア(N1,N2)間での直接的なデータ交換を例にして説明する。
図3は、各主体N1,N2が所持するデータを前記データ評価部102が相対的に評価する方法を説明するための図である。本実施形態では、各主体Nが所持するデータの配列を行(対象者)列(特徴量)のマトリックス配置で表現できるとき、各主体間で少なくとも一つのデータを所持する行および列において不足するデータ同士が等価と評価される。
【0028】
主体N1は、
図3(a)に示したように、2人の対象者U1,U2の特徴量として、それぞれ身長データD11,D21および体重データD12,D22を所持しているが、年齢データは所持していない。主体N2は、
図3(b)に示したように、2人の対象者U2,U3の特徴量として、それぞれ体重データD22,D32および年齢データD23,D33を所持しているが身長データは所持していない。本実施形態では、このような各主体Nにおけるデータの分散所持の状況が、データ交換装置1のデータ管理部101にとって既知であるものとする。
【0029】
このようなデータの分散所持状況において、主体N2が所持するデータの主体N1にとっての価値を考えると、主体N1は対象者U2の体重データD22を既に所持しているので、主体N1にとって主体N2が所持する対象者U2の体重データD22は価値がない(×印、以下同様)。
【0030】
これに対して、主体N1は対象者U2の年齢データD23を所持しておらず、かつ対象者U2の身長データD21および体重データD22は所持しているので、主体N1にとって主体N2が所持する対象者U2の年齢データD23には特に価値がある(○印、以下同様)。
【0031】
また、主体N1は対象者U3の体重データD32を所持しておらず、かつ対象者U1,U2の体重データD12,D22は所持しているので、主体N1にとって主体N2が所持する対象者U3の体重データD32には特に価値がある。
【0032】
一方、主体N2が所持する対象者U3の年齢データD33は、初期の段階では主体N1にとって価値が無いものの、主体N1が対象者U3の身長データおよび体重データを別途に取得できるか、あるいは対象者U1,U2の年齢データを別途に取得できれば価値が高くなる。すなわち、主体N1にとって主体N2が所持する対象者U3の年齢データD33には潜在価値がある(△印、以下同様)。
【0033】
視点を変えて、主体N1が所持するデータの主体N2にとっての価値を考えると、主体N2は対象者U2の体重データD22を既に所持しているので、主体N2にとって主体N1が所持する対象者U2の体重データD22には価値がない。
【0034】
これに対して、主体N2は対象者U2の身長データD21を所持しておらず、かつ対象者U2の体重データD22および年齢データD23は所持しているので、主体N2にとって主体N1が所持する対象者U2の身長データD21は特に価値がある。
【0035】
また、主体N2は対象者U1の体重データD12を所持しておらず、かつ対象者U2,U3の体重データD22,D32は所持しているので、主体N2にとって主体N1が所持する対象者U1の体重データD12は価値がある。
【0036】
一方、主体N1が有する対象者U1の身長データD11は、初期の段階では主体N2にとって価値が無いものの、主体N2が対象者U1の体重データおよび年齢データを別途に取得できるか、あるいは対象者U2,U3の身長データを別途に取得できれば価値が高くなる。すなわち、主体N2にとって主体N1が所持する対象者U1の身長データD11には潜在価値がある。
【0037】
以上のことから、前記データ評価部102は、主体N1の所持するデータD12,D21と主体N2の所持するデータD23,D32とは価値が等価であり、主体N1の所持するデータD11と主体N2の所持するデータD33とは潜在価値が等価であると判断する。
【0038】
前記等価交換パス構築部103は、主体N1が所持するデータD12またはD21と、主体N2が所持するデータD23またはD32とが交換されるように、あるいは主体N1が所持するデータD11と主体N2が所持するデータD33とが交換されるように、主体N1,N2間に等価交換パスを構築する。
【0039】
前記データ交換部104は、
図2に示したように、主体N1から主体N2へ、例えばデータD12を転送させる一方、主体N2から主体N1へ、例えばデータD23を転送させることにより、主体N1,N2間でのデータの等価交換を実現する。
【0040】
なお、上記の第1実施形態では、等価交換されるデータの個数が同数(1対1)であるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、
図4に一例を示したように、例えば、特に価値のあるデータの1つと、潜在価値のあるデータの複数(例えば、3個)とが等価であると予め定義しておき、特に価値のあるデータ1つ(D1)と潜在価値のあるデータ3つ(D2,D3,D4)とで等価交換が行われるようにしても良い。
【0041】
本実施形態によれば、各主体Nが所持するデータの価値が、他の一の主体が当該データに関連して所持している他のデータに基づいて当該他の一の主体にとっての価値として評価される。そして、一の主体が他の一の主体に対して第1の価値を有するデータを提供すれば、一の主体も自身にとって第1の価値を有するデータを他の主体から取得できるので、主体間でのデータの定量的な等価交換が可能になる。
【0042】
また、本実施形態によれば、一の主体が所持している、他の一の主体にとって第1の価値を有するデータを、当該一の主体にとって総計で第1の価値となる複数のデータとも交換できるので、データ交換の多様性を向上させることができる。
【0043】
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。上記の第1実施形態では、相互に等価のデータを有している主体ペア(N1,N2)間でのデータの等価交換について説明したが、本実施形態では、3つ以上の主体N1,N2,N3…に関して、相互に等価のデータを有する主体ペアは存在しないものの、データの間接的な等価交換により、各主体N1,N2,N3…が同時に等価交換を実現できるようにしている。
【0044】
図5は、本発明の第2実施形態において前記データ評価部102が各データを評価する方法を説明するための図であり、ここでは3つの主体N1,N2,N3に着目し、各主体N1,N2,N3におけるデータの分散保持状態は図示の通りであるものとする。
【0045】
主体N2は、主体N1にとって価値の高い対象者U2の年齢データD23を所持しているものの、主体N1は主体N2にとって価値の高い対象者U3の身長データD31を所持していない。したがって、主体N1,N2間ではデータの直接的な等価交換は成立しない。
【0046】
同様に、主体N3は主体N2にとって価値の高い対象者U3の身長データD31を所持しているものの、主体N2が主体N3にとって価値の高い対象者U1の体重データD12を所持していない。したがって、主体N2,N3間でもデータの直接的な等価交換は成立しない。
【0047】
同様に、主体N1は主体N3にとって価値の高い対象者U1の体重データD12を所持しているものの、主体N3は主体N1にとって価値の高い対象者U2の年齢データD23を所持していない。したがって、主体N1,N3間でもデータの直接的な等価交換は成立しない。
【0048】
しかしながら、主体N1が主体N3へ対象者U1の体重データD12を提供し、主体N3が主体N2へ対象者U3の身長データD31を提供し、主体N2が主体N1へ対象者U2の年齢データD23を提供すれば、全ての主体N1,N2,N3が等価のデータを取得できるので、3つの主体N1,N2,N3間での間接的なデータの等価交換が成立する。
【0049】
図6は、上記の第2実施形態によるデータ交換方法を一般化ないしは拡張して主体数を3よりも大きくした例を示した図であり、
図7は、一般化された第2実施形態におけるデータ交換装置1の動作を示したフローチャートである。
【0050】
ステップS1では、データ交換の起点となる主体(要求主体)Nsが表明する要求データDreq、および当該要求データDreqの取得と引き換えに提供できる一つないし複数の提供データ候補Dsupの表明が受け付けられる。なお、提供データ候補Dsupの表明は必須ではなく、表明する場合でも要求データDreqと各提供データ候補Dsupとの間に等価性は不要である。
【0051】
ステップS2では、前記要求データDreqを所持している主体(所持主体)が、前記データ管理部101で管理されているデータを対象に検索される。本実施形態では、検索結果として所持主体Ntが得られたものとして説明を続ける。
【0052】
ステップS3では、後に詳述するように、所持主体Ntから要求主体Nsへ至る多数のパス候補の中の一つが、後に詳述するように、前記
図5を参照して説明した各データの等価評価方法に基づく所定の規則で探索される。そして、当該パス候補上の全ての主体からデータ交換の承認が得られれば、当該パス候補が等価交換パスに決定される。ステップS4では、データ交換装置1から等価交換パス上の各主体に対して、前記承認の得られたデータ交換の実行が指示される。
【0053】
図8は、前記ステップS3における等価交換パスの探索手順を示したフローチャートであり、主にデータ交換装置1の等価交換パス構築部103が、データ管理部101に登録されている、どのデータがどの主体に所属するかの情報に基づいて実行する探索手順を示している。
【0054】
ステップS301では、所持主体Ntから要求主体Nsへ至る全てのパス候補が探索される。このようなパス候補探索は、所持主体Ntを始点として、当該所持主体Ntが要求主体Nsへ提供するデータDreqと等価なデータ(例えば、D1)を所持している主体Nt-1を探索して次ステップ(上流側)とし、さらに当該データD1と等価なデータ(例えば、D2)を所持している主体Nt-2を探索して次ステップとし…という手順を、次ステップが要求主体Nsとなるまで繰り返すことにより行われる。なお、各データ同士が等価であるか否かは、前記
図5に関して説明した規則に基づいて判定される。
【0055】
換言すれば、各パス候補は、パス上の各主体Nが、下流側の主体にとって第1の価値を有するデータを所持し、各主体にとって第1の価値を有するデータを上流側(次ステップ)の主体が所持するように構築される。
【0056】
ステップS302では、以上の手順で探索された多数のパス候補の中からパス長が最も長いパス候補が選択されて今回の評価対象パスとされる。ここでは、前記
図6に示したように、所持主体Nt→Nt-1→Nt-2…Ns+2→Ns+1→要求主体Nsのパス候補が評価対象パスであるものとして説明する。
【0057】
ステップS303では、前記評価対象パス上の各主体に対して所持主体Ntから順に、前記等価交換となる取得データおよび供給データを明示して、データ交換に承諾するか否かが問い合わされる。
【0058】
すなわち、最初は所持主体Ntに対して、要求主体Nsが表明した要求データDreqの提供と引き換えに、これと等価なデータD1を取得するデータ交換を承認するか否かが問い合わされる。承認が得られれば次の主体(次ステップ)へ進み、今度は主体Nt-1に対して、前記データD1の提供と引き換えに、これと等価なデータD2を取得するデータ交換を承認するか否かが問い合わされる。
【0059】
以上の承認処理は、今回の評価対象パス上の各主体に対して順次に行われ、承認の得られない主体が現れるとステップS304からステップS302へ戻り、評価対象パスを次にパス長の長いパス候補に切り替えて上記の各処理が繰り返される。
【0060】
これに対して、評価対象パス上の最後の主体Ns+1が、データD3の提供と引き換えに、これと等価なデータDsupを取得するデータ交換を承認すれば、ステップS304において、パス上の全主体からデータ交換の承認が得られたと判定されるのでステップS305へ進む。ステップS305では、今回の評価対象パスが等価交換パスに決定される。
【0061】
本実施形態によれば、相互にデータを等価交換できる主体ペアが存在しない場合であっても、3つないしはそれ以上の主体を経由する間接的なデータ交換により、当事者主体を含む多数の主体が同時にデータの等価交換を行えるようになる。
【0062】
また、本実施形態によれば、多数のパス候補の中からパス長の長いパスが優先的に選択されるので、より多くの主体をデータ交換に参加させることができるようになり、システム全体としてのデータ交換量を増やすことができる。
【0063】
なお、上記の実施形態では、等価交換パスがパス長を指標に選択されるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、各主体においてデータ交換の承認が得られない場合への対応を考慮して等価交換パスが選択されるようにしても良い。
【0064】
図9は、前記ステップS3における等価交換パスの他の探索手順を示したフローチャートであり、
図10は、本実施形態における等価交換パスの探索方法を模式的に示した図である。
【0065】
ステップS311では、パス探索の始点主体として、最初は所持主体Ntが設定される。ステップS312では、始点主体Ntが提供する要求データDreqと等価なデータを所持している次ステップ候補が全て検索される。ステップS313では、各次ステップ候補から要求主体Nsまでデータの等価交換により到達できる全てのパスに関して、それぞれのステップ数が算出される。
【0066】
例えば、
図10に示したように、始点主体(ここでは、所持主体)Ntが提供するデータDreqと等価なデータを所持している主体N1,N2が次ステップ候補である場合、次ステップ候補N1から要求主体Nsへ到達できるパスは2つ(R11,R12)なので、パスR11のステップ数n11、パスR12のステップ数n12が計算される。同様に、次ステップ候補N2から要求主体Nsへ到達できるパスは3つ(R21,R22,R23)なので、パスR21のステップ数n21、パスR22のステップ数n22およびパスR23のステップ数n23が計算される。
【0067】
図9へ戻り、ステップS314では、ステップ数が最大のパスを構築できる次ステップ候補が選択される。例えば、各パスのステップ数の大小関係がn11>n21>n22>n23>n12であれば主体N1が選択される。
【0068】
ステップS315では、今回の始点主体Ntに対して、データDreqの提供と引き換えに、これと等価なデータを前記次ステップ候補(主体N1)から取得するデータ交換を承認するか否かが問い合わされる。承認が得られなければステップS317へ進み、次ステップ候補を前記ステップ数の合計が次に多かった次ステップ候補(ここでは、ステップ数n21に対応した主体N2)に切り換えてデータ交換を承認するか否かが再び問い合わされる。
【0069】
データ交換の承認が得られればステップS316へ進み、要求主体Nsまで到達したか否かが判定される。到達していなければステップS311へ戻り、前記次ステップを新たな始点主体として上記の各処理を繰り返すことで前記等価交換パスが要求主体Nsへ向けて順次に延設される。
【0070】
本実施形態によれば、最長パスが選択されるとは限らないものの、途中で承認が途絶えた場合であっても、途絶えた箇所から別ルートでの承認を再開できるので、承認を得づらい主体を経由するパスが多い場合でも効率的なパス構築が可能になる。
【0071】
なお、上記の各実施形態では、等価交換パス上の全ての主体からデータ交換の承認を得なければならず、また各主体におけるデータ交換の承認確率には主体依存性があることが経験的に確認されている。したがって、多数のパス候補を評価する際に、パスごとに当該パスを構成する各主体の承認確率を、例えば過去の承認履歴等から推定し、全主体から承認の得られる確率の高いパスから優先的に評価を行うようにしても良い。
【0072】
例えば、前記第1実施形態への適用を考えると、各パス候補のパス長P1および各パス候補上の全ての主体がデータ交換を承認する確率P2を、パス長がより長く、承認確率P2がより高いパス候補ほど評価値が高くなる所定の関数f(P1,P2)へ適用し、各パス候補を評価値の順で評価するようにすれば良い。あるいは、パス長が同一であれば承認確率P2のより高いパス候補が優先されるようにしても良い。
【0073】
また、第2実施形態への適用を考えると、次ステップ候補ごとに全てのパスのステップ数が同一であった時に、パス上の全主体が承認する確率の高いパスが優先されるようにすれば良い。
【0074】
さらに、上記の各実施形態では、各特徴量(身長、体重、年齢)の価値が各主体間での需給関係に基づく相対的な価値以外は等価であるという前提で説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、特徴量の需給関係とは別にさらに別の指標を設定しても良い。
【0075】
例えば、性別、年齢、誕生日という3つの特徴量に着目し、これらの特徴量の概念辞書上での関連性が
図11のように定義されていれば、性別と年齢との概念辞書上の距離は「2」であるのに対して、性別と誕生日との概念辞書上の距離は「3」となる。したがって、性別データと年齢データとは等価とみなす一方、性別データと誕生日データとは等価ではないと判定するようにしても良い。さらに、距離が「2」のデータ1つと、距離が「3」のデータ2つとが等価であるとして等価交換が行われるようにしても良い。
【0076】
さらに、本実施形態でも等価交換されるデータの個数が同数である必要はなく、
図12に示したように、価値の高いデータの1つと価値の低いデータの複数とが等価であるとして等価交換が行われるようにしても良い。同図では、主体N1は1つのデータD1を提供すれば2つのデータD3,D5を取得できる。主体N4は、2つのデータD2,D4を提供すれば1つのデータD1を取得できる。
【0077】
さらに、上記の各実施形態では、対象ごとに複数の特徴量が行列配置されるマトリックス状のデータ構造を例にして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、データをN分割し、N個の部分データから任意のK個の部分データを集めれば元データを復号できる(K,N)閾値秘密分散において、各主体が所持していない部分データを一律に等価とするようにしても良い。