(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233841
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】錠剤容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
B65D47/20 200
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-16323(P2014-16323)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143106(P2015-143106A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【弁理士】
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝之
【審査官】
加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−286493(JP,A)
【文献】
特開2005−029251(JP,A)
【文献】
実開昭50−071341(JP,U)
【文献】
実開昭58−151591(JP,U)
【文献】
実開昭57−105257(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口頸部(5)を有する容器体(2)と、
上記口頸部(5)に嵌合させたキャップ本体(12)の頂壁部(16)に錠剤取出し口(36)を開口し、かつこのキャップ本体(12)に対して上記頂壁部(16)の上面への着脱可能な蓋体(50)を設けたキャップ部材(10)と、を具備し、
上記頂壁部(16)の上面の一部には、開蓋状態で外部からの視認可能な錠剤仮置き凹部(42)を形成しており、
この錠剤仮置き凹部(42)は、上記頂壁部(16)の前部に配置された上記錠剤取出し口(36)から離して頂壁部(16)の後方側又は少なくとも左右の一方側に形成されていることを特徴とする、錠剤容器。
【請求項2】
上記錠剤仮置き凹部(42)は、少なくとも長手方向の巾(d1)に比べて深さが小さく、底面が平坦な浅広凹部として形成されていることを特徴とする、請求項1記載の錠剤容器。
【請求項3】
上記キャップ本体(12)の頂壁部(16)の外周部上面に周設した本体側シール条(28)と蓋体(50)の天板部(52)の各外周部下面に周設した蓋体側シール条(56)とが閉蓋状態で相互に気密に当接するように設け、本体側シール条(28)内方の頂壁部分に上記錠剤取出し口(36)及び錠剤仮置き凹部(42)を形成したことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の錠剤容器。
【請求項4】
上記頂壁部(16)の上面の適所に対して、閉塞板部(38)の基部(38a)を少なくとも当該閉塞板部(38)の起伏可能にヒンジ連結し、かつ倒伏状態で閉塞板部(38)の先部(38b)側が錠剤取出し口(36)の全部又は過半部を閉塞することが可能に形成したことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の錠剤容器。
【請求項5】
上記頂壁部(16)の一部に、相互に区画された複数の錠剤仮置き凹部(42)を連続して並設したことを特徴とする、請求項1から請求項4の何れかに記載の錠剤容器。
【請求項6】
上記複数の錠剤仮置き凹部(42)は、頂壁部(16)から立設した平行な垂直壁部(44)で区画された溝形状であり、その溝の両端部(E1、E2)のうちの少なくとも一方を開放端部とし、当該開放端部を介して溝内の錠剤を取り出し可能に設けたことを特徴とする、請求項5記載の錠剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤容器、特に口部付近に錠剤仮置き凹部を設けた錠剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
口部付近に錠剤を置く場所を設けたタイプの錠剤容器として、容器体の口頸部の外面に嵌合した周壁の上端から内向きフランジを突出するとともに、内向きフランジの内縁から上方から見てC字形の計量皿を延設したキャップ本体と、このキャップ本体に対してヒンジ連結した主蓋体と、キャップ本体に枢着され、口頸部の上面のうち内向きフランジ及び計量皿で覆われる箇所以外の部分である錠剤取出し口を開閉可能に塞ぐ補助蓋体とを、具備するものが知られている(特許文献1)。主蓋体の裏面からは押下げ板が垂下されており、主蓋体を閉じると押下げ板が補助蓋体を押し下げ、主蓋体の閉蓋状態で錠剤容器を反転させると、容器体内の錠剤が錠剤取出し口を経て主蓋体内に入り、再び錠剤容器を正立状態にすると、主蓋体内に入った錠剤が、計量皿に載る所定個数を除いて容器体へ戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−193051
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、薬品の如き錠剤に関して使用量を簡単に判るようにしたいという要望がある。薬品を毎日数度に分けて所定個数の錠剤を服用する場合、日常の多忙さや加齢によるもの忘れにより錠剤を飲み忘れたり、逆に過剰に飲み過ぎる可能性がある。例えば介助者が予め一日に服用すべき個数の錠剤を錠剤仮置き凹部の上に出しておき、これを本人が飲むようにする、飲んだ個数が後で視覚的に判るようにする、という用い方ができれば便利である。
【0005】
特許文献1の容器は、錠剤を計量するためのものであり、計量皿に載った錠剤を複数回に分けて飲むという発想はない。仮に計量皿に載った錠剤の一部を服用し、残りの錠剤を計量皿に残したままで主蓋体を閉じれば、計量皿上の錠剤が錠剤取出し口を経て容器体へ転落してしまう可能性があり、その後に服用すべき錠剤の数が判らなくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、ある時間内に複数回に分けて使用すべき錠剤を予め錠剤取出し口の近傍に仮置きしておき、既に使用した錠剤の数及びこれから使用すべき錠剤の数を視覚的に容易に認識し得る錠剤容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段は、
口頸部5を有する容器体2と、
上記口頸部5に嵌合させたキャップ本体12の頂壁部16に錠剤取出し口36を開口し、かつこのキャップ本体12に対して上記頂壁部16の上面への着脱可能な蓋体50を設けたキャップ部材10と、を具備し、
上記頂壁部16の上面の一部には、開蓋状態で外部からの視認可能な錠剤仮置き凹部42を形成しており、
この錠剤仮置き凹部42は、
上記頂壁部16の前部に配置された上記錠剤取出し口36から離して
頂壁部16の後方側又は少なくとも左右の一方側に形成されている。
【0008】
本手段では、
図1及び
図3に示すように、キャップ本体12の頂壁部16の一部に、開
蓋状態で外部からの視認可能な錠剤仮置き凹部42を形成することを提案する。この錠剤仮置き凹部42内に所定の時間(例えば一日)に使用すべき個数の錠剤を予め置いておき、逐次使用することで、残りの錠剤の個数を視覚化し、以て既に使用した錠剤の個数を簡単に認知できるようにする。上記錠剤仮置き凹部42は、錠剤取出し口36から離して設け、錠剤仮置き凹部42に仮置きした錠剤が不意に錠剤取出し口36を経て容器体2内へ転落しにくいようにしている。
【0009】
本明細書において、「錠剤仮置き凹部」とは、頂壁部の一部を周囲に比べて凹ませた構造の他に、頂壁部の上面の一部から一つ又は複数の垂直壁部を起立し、この垂直壁部で周囲から区画される部分を凹部とする構造とを含む。
【0010】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記錠剤仮置き凹部42は、少なくとも長手方向の巾d1に比べて深さhが小さく、底面が平坦な浅広凹部として形成されている。
【0011】
本手段では、錠剤仮置き凹部42の好適な形状を示している。すなわち
図1に示す錠剤仮置き凹部42の長手方向の巾d1に比べて
図2に示す錠剤仮置き凹部42の深さhが小であるように形成している。これにより上方から見て錠剤仮置き凹部42内の錠剤の個数を確認し易くなる。
【0012】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ
上記キャップ本体12の頂壁部16の外周部上面に周設した本体側シール条28と蓋体50の天板部52の各外周部下面に周設した蓋体側シール条56とが閉蓋状態で相互に気密に当接するように設け、本体側シール条28内方の頂壁部分に上記錠剤取出し口36及び錠剤仮置き凹部42を形成した。
【0013】
本手段では、
図2又は
図4に示すように、キャップ本体12の本体側シール条28と蓋体50の蓋体側シール条56が気密に当接するように形成し、これら本体側シール条28及び蓋体側シール条56の内方に錠剤仮置き凹部42に位置させ、錠剤仮置き凹部42に置かれた錠剤Dが吸湿することを防止している。
【0014】
第4の手段は、第1の手段から第3の手段のいずれかを有し、かつ上記頂壁部16の上面の適所に対して、閉塞板部38の基部38aを少なくとも当該閉塞板部38の起伏可能にヒンジ連結し、かつ倒伏状態で閉塞板部38の先部38b側が錠剤取出し口36の全部又は過半部を閉塞することが可能に形成した。
【0015】
本手段では、
図2に示すように、錠剤取出し口36を閉塞することが可能な閉塞板部38を設けている。蓋体50の開蓋状態で錠剤取出し口36を閉塞板部38で閉鎖することにより、錠剤容器を上下反転させて、錠剤取出し口36から錠剤Dが転げ出ることを防止できる。閉塞板部38は、錠剤取出し口36から錠剤Dが出ることを妨げる邪魔板として機能すれば足り、必ずしも錠剤取出し口36を完全に覆うものである必要はない。
【0016】
第5の手段は、第1の手段から第4の手段のいずれかを有し、かつ上記頂壁部16の一部に、相互に区画された複数の錠剤仮置き凹部42を連続して並設した。
【0017】
本手段では、
図3に示す如く相互に区画された複数の錠剤仮置き凹部42を連続して並設している。これにより錠剤の個数を確認することが容易になり、視認性が向上する。
【0018】
第6の手段は、第5の手段を有し、かつ上記複数の錠剤仮置き凹部42は、頂壁部16から立設した平行な垂直壁部44で区画された溝形状であり、その溝の両端部E1、E2のうちの少なくとも一方を開放端部とし、
当該開放端部を介して溝内の錠剤を取り出し可能に設けた。
【0019】
本手段では、
図3に示すように、複数の錠剤仮置き凹部42を、平行な垂直壁部44で区画された溝形状としている。溝の端部E1、E2の少なくとも一方は開放端部としている。
【発明の効果】
【0020】
第1の手段に係る発明によれば、頂壁部16の上面の一部に、開蓋状態で外部からの視認可能な錠剤仮置き凹部42を形成したから、錠剤仮置き凹部42内に置かれた錠剤の個数を簡単に認知することができる。また錠剤仮置き凹部42は、錠剤取出し口36から離したから、錠剤仮置き凹部42に置かれた錠剤が錠剤取出し口36に戻ることがなく、服用すべき錠剤の個数の管理が容易であり、錠剤の飲み忘れや過剰摂取を防止できる。
第2の手段に係る発明によれば、錠剤仮置き凹部42を底面が平坦な浅広凹部としたから、仮置きした錠剤の個数の視認性がより向上する。
第3の手段に係る発明によれば、閉蓋状態で本体側シール条28及び蓋体側シール条56内に錠剤仮置き凹部42が位置するように設けたから、錠剤仮置き凹部42に置かれた錠剤が吸湿することを防止できる。
第4の手段に係る発明によれば、錠剤取出し口36を閉塞可能な閉塞板部38を設けたから、錠剤容器を傾けて錠剤仮置き凹部42から錠剤を取り出す際に、予め錠剤取出し口36を閉塞板部で閉塞することで、不必要に錠剤取出し口36から錠剤が出てしまうことを防止できる。
第5の手段に係る発明によれば、相互に区画された複数の錠剤仮置き凹部42を連続して並設したから、仮置きした錠剤の視認性がより向上する。
第6の手段に係る発明によれば、複数の錠剤仮置き凹部42は、平行な垂直壁部44で区画された溝状であり、その溝の両端部E1、E2のうちの少なくとも一方を開放端部としたから、錠剤仮置き凹部42内で錠剤をスライドさせて開放端部から容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る錠剤容器の開蓋状態での平面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る錠剤容器の開蓋状態での平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1から
図2は、本発明の第1の実施形態に係る錠剤容器を示している。錠剤容器は、容器体2と、キャップ部材10とで構成する。これらの部材は、合成樹脂材で形成することができる。本実施形態では説明の便宜上から、
図1の左方を「前」と、同図の右方を「後」と、同図の下方を「左」と、同図の上方を「右」と定義する。
【0023】
容器体2は、口頸部5を有する筒壁部4を、底壁部6の外周部に連結させてなる。図示の筒壁部4は、底壁部6の外周部から起立する主筒部4aと、この主筒部4aの上下方向中間部の外面から底壁部6より下方へ垂下した脚筒部4bとで構成している。そして脚筒部4b上方の主筒部分を口頸部5としている。しかしながら、これらの構造は適宜変更することができる。
【0024】
また図示例では、上記主筒部4aの側部に、主筒部内面に両端部を連結した平面視コ字形の補助壁部8を形成しており、主筒部4aの側部(図示例では後部)と補助壁部8とで囲まれる収納部Sに乾燥剤などを収納できるようにしている。補助壁部8の下端は底壁部6に連結している。もっとも防湿の必要がない場合、補助壁部8は省略することができる。
【0025】
キャップ部材10は、キャップ本体12と、蓋体50とで構成されている。
【0026】
上記キャップ本体12は、上記口頸部5に嵌合(図示例では螺合)させたキャップ周壁部14の上端に、頂壁部16の外縁部を連結しており、この頂壁部16の適所に、錠剤取出し口36と錠剤仮置き凹部42とを形成し、かつ錠剤取出し口36を塞ぐための閉塞板部38を付設している。
【0027】
図示例では、上記頂壁部16は、
図2に示す水平な中央壁部18と外縁部22との間に環状の隆起部20を形成するとともに、隆起部20に沿って凸状の本体側シール条28を中央壁部18の外周部18a上面から短く起立している。そして本体側シール条28の内側の中央壁部分に上記錠剤取出し口36と錠剤仮置き凹部42と閉塞板部38とを設けている。外縁部22の後部は、浅い凹没部30に形成している。また頂壁部16の前端部には係止凹部32が形成されており、この係止凹部と連続して、キャップ周壁部14の前部上端部分には指掛け用凹部34が形成されている。上記隆起部20は、上記口頸部5の上方に位置しており、隆起部20と口頸部5の上端との間にパッキンPを挟持させている。
【0028】
上記錠剤取出し口36は、図示例では、中央壁部18の前部において、本体側シール条28の内側に開口されている。
【0029】
上記閉塞板部38は、その基部38aを、肉薄ヒンジ40を介して中央壁部18中心付近に連結しており、前方及び後方へ倒すことができるように設ける。そして前方への倒伏状態で閉塞板部38の先部38bが錠剤取出し口36を覆うように設ける。閉塞板部38は錠剤取出し口36を完全に覆うものである必要はない。閉塞板部38は、
図2に実線で示す如く、後方へ倒すときに、頂壁部16の上に完全に倒れるのではなく、閉塞板部38の先部38bが頂壁部16からやや浮いた状態となるように形成してもよい。
【0030】
上記錠剤仮置き凹部42は、頂壁部の一部を凹設してなり、周壁である垂直壁部44の下端部から平坦な底壁部46を連続形成してなる。錠剤仮置き凹部42は、前後2方向へ閉塞板部38を倒伏させても当該閉塞板部38と重ならないように、頂壁部16の左右両側部の少なくとも一方に設けるとよい。上記垂直壁部44は、口頸部5の内面に沿って弯曲する第1壁部44aと上方から見て直線的な第2壁部44bとを含む。これらの構造は適宜変更することができる。上記錠剤仮置き凹部42は、図示例の場合、長手方向の巾d1及び短手方向の巾d2に比べて深さhが小さく、底面が平坦な浅広凹部として形成されている。
【0031】
蓋体50は、上記キャップ本体12の一部(図示例では後部)にヒンジ部48を介して連結している。蓋体50は、天板部52の周囲に蓋周壁54を付設してなり、天板部52の裏面にキャップ本体12の本体側シール条28と係合可能な蓋体側シール条56を形成する。図示例の蓋体側シール条56は、内筒部56aと外筒部56bとからなる2重筒状であり、これら両筒部で本体側シール条28の両側を挟持するように設ける。これらの構造は適宜変更することができ、例えばキャップ本体12の本体側シール条28を2重筒状とし、蓋体50の蓋体側シール条56を単一の凸条としても構わない。上記蓋周壁54のうちヒンジ部48との反対側の部分は、閉蓋状態で上記係止凹部32と係止することが可能に形成しており、かつ当該部分には指掛け部58が付設されている。
【0032】
上記ヒンジ部48は、図示例では、肉薄ヒンジ部48aと左右一対の弾性帯板部48bとで構成する従来公知の弾性反転式ヒンジ部としている。しかし帯板部を省略して肉薄ヒンジ部単独で構成してもよい。またキャップ本体12と蓋体50とを別体としても構わない。
【0033】
次に本願の錠剤容器の好適な使用方法を説明する。まず一日の始めに一日分の個数の錠剤を錠剤仮置き凹部42にセットする。この作業は、錠剤を服用する利用者本人が行ってもよく、また本人の家族などの介助者が行ってもよい。具体的には、蓋体50を
図2に想像線で示す閉蓋位置から実線で示す開蓋状態へ回動し、閉塞板部38を実線で示す開状態のままで指によって押さえ、錠剤容器を上下反転させると、錠剤取出し口36から錠剤Dを振り出すことができる。一日に服用するべき個数の錠剤Dを錠剤仮置き凹部42に置いて、蓋体50を再び閉じる。この場合において、錠剤仮置き凹部42は錠剤取出し口36から離れているので、一連の操作の間に錠剤仮置き凹部42内に置いた錠剤が、錠剤取出し口36から容器体2側に戻ることがない。また本体側シール条28と蓋体側シール条56とが気密に当接しているために錠剤仮置き凹部42に置かれた錠剤が吸湿することがない。
【0034】
次に利用者が錠剤を服用するときには、蓋体50を開き、錠剤仮置き凹部42内から必要数の錠剤を摘まんで取り出す。これにより、次の利点がある。
第1に、例えば朝・昼・晩と順次服用する毎に錠剤仮置き凹部42内の錠剤の個数が減っていくので、服用した錠剤の個数を視覚的に判別できる。服用時の後に本人又は家族が錠剤数を確認して、錠剤仮置き凹部42内に残った錠剤数が予定より多ければ錠剤の飲み忘れに直ちに気づくことができる。
第2に、一日分の錠剤を一度に錠剤取出し口36から振り出して錠剤仮置き凹部42に入れればよいので、各服用時毎に振り出し操作をする場合に比べて、病気や加齢により手先の器用さを欠く利用者にとって有利である。
第3に、一日分の錠剤を予め取り出して錠剤仮置き凹部42に置くので、服用したか否かの記憶が曖昧となったときに過剰量の錠剤を服用することを回避できる。
【0035】
なお、病気や加齢により錠剤仮置き凹部42内から指を摘まむことが困難であるときには、
図1に実線で表す閉塞板部38の先部38bに指先を掛け、閉塞板部38を錠剤取出し口36の上に倒して指で押さえ、このまま錠剤容器を上下反転することで、錠剤仮置き凹部42内から錠剤Dを取り出すことができる。
【0036】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。この実施形態の説明において第1の実施形態と同一の構成に関しては解説を省略する。
【0037】
図3及び
図4は、本発明の第2の実施形態に係る錠剤容器を示している。本実施形態では、第1実施形態の中央壁部18の構造を変形している。当該中央壁部18は、外側から内側へ、本体側シール条28を有する外周部18aと、環状凹部18bと、外周部18aより低い位置に存する水平な基台部18cとを順次連続形成している。基台部18cが外周部18aよりも低くなっているのは、基台部18cと蓋体50の天板部52との間に錠剤Dを挟み込み、錠剤Dが錠剤仮置き凹部42内を不意に移動しないようにするためである。
【0038】
上記環状凹部18bは、
図4に示す如く、略U字形に下方へ膨らんでおり、その下端部は
図4に示す如く肉薄部Tに形成されている。この肉薄部Tを設けた理由は、上述の如く蓋体50の天板部52と基台部18cとの間で錠剤Dを挟み込むときに過剰な挟持力が作用することを回避し、柔軟効果を奏するようにするためである。天板部52と基台部18cとの間で錠剤Dを挟むことにより、錠剤仮置き凹部42内での錠剤Dの移動を防止するため錠剤容器を動かした場合の容器体2内への錠剤の戻りや錠剤容器の持ち運びの際の音鳴りを防止できる。さらに肉薄部を設けることで、錠剤の大きさのばらつきや成形物の寸法のバラツキに対応して応力を分散することができる。
【0039】
上記基台部18cの前部からは口筒部36aを起立し、この口筒部36aの上端部に錠剤取出し口36を開口する。図示例では、この錠剤取出し口36を頂壁部16の外縁部22と同程度の高さに位置させている。
【0040】
上記基台部18cの後半部上面からは、前後方向の複数の平行平板形の垂直壁部44を起立し、垂直壁部44同士の間の空間を、前後方向の両端部E1、E2を開放端部とする錠剤仮置き凹部42に形成している。
図3に示す図示例において、左右方向の内側の3つの錠剤仮置き凹部42は、溝状に形成されている。
【0041】
上記複数の垂直壁部44は、相互の間に錠剤Dを挟み込むことができるように形成するとよい。また各垂直壁部44の高さは、錠剤Dの上下巾よりも短く、上から錠剤Dに指を当ててスライドさせることができる。
【0042】
錠剤仮置き凹部42から錠剤Dを取り出すときには、錠剤Dの位置に応じて、錠剤Dを前側の端部E1より前方へスライドさせ、指で摘まんで取り出してもよい。
【0043】
なお、図示はしていないが、本実施形態においても、錠剤取出し口36を閉塞可能な閉塞板部を頂壁部の適所に設けることができる。
【符号の説明】
【0044】
2…容器体 4…筒壁部 4a…主筒部 4b…脚筒部 5…口頸部
6…底壁部 8…補助壁部
10…キャップ部材 12…キャップ本体 14…キャップ周壁部
16…頂壁部 18…中央壁部 18a…外周部 18b…環状凹部 18c…基台部
20…隆起部 22…外縁部
28…本体側シール条 30…凹没部 32…係止凹部 34…指掛け用凹部
36…錠剤取出し口 36a…口筒部 38…閉塞板部 38a…基部 38b…先部
40…肉薄ヒンジ 42…錠剤仮置き凹部
44…垂直壁部 44a…第1壁部 44b…第2壁部 46…底壁部
48…ヒンジ部 48a…肉薄ヒンジ部 48b…弾性帯板部
50…蓋体 52…天板部 54…蓋周壁 56…蓋体側シール条 58…指掛け部
D…錠剤 E1、E2…端部 P…パッキン S…収納部 T…肉薄部