(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、睡眠時において、鼾の発生や、無呼吸や低呼吸による酸素不足を伴う睡眠に悩まされる人が増えている。鼾や無呼吸等の発生は、仰向けに寝た状態で筋肉が弛緩し口が半開きになり、下顎が後方に下がることにより舌が後方に下がって(舌根沈下)、気道が狭小化あるいは閉塞することが主な原因とされている。
【0003】
睡眠時の鼾は周囲への迷惑になるだけでなく、自身の眠りの浅さにも繋がる。また、無呼吸や低呼吸を伴う睡眠は、一般に睡眠時無呼吸症候群(SAS)と呼ばれており、体調不良、日中の集中力低下、居眠り運転を引き起こすなど生活や健康に対して大きな影響を及ぼすことが知られている。そのため、舌根沈下を原因とする鼾や睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療に対して、大きな関心が寄せられている。
【0004】
鼾の解消に対しては、様々なグッズが販売されているが、多くの人に効果を示す決定的なものはほとんど見られていない。睡眠時無呼吸症候群に対しては、口腔内装具を睡眠中に装着し、舌や下顎を前方に固定することで舌の後方の気道スペースを広げ、気道の閉塞を防ぐスプリント療法(特許文献1参照)や、専用の鼻マスクを介して強制的に空気を気道内に送り、陽圧をかけるCPAP療法が一般的に行われている。しかしながら、どちらも口や鼻に装着物があることから、快眠を妨げると同時に鼻炎や結膜炎を誘引する例も見られる等問題も多く、治療脱落者が多数存在するという現実がある。
【0005】
本発明者らは、これらの問題を踏まえて、顔面に装着物を装着することなく、気道確保を可能にした気道確保装置を先に提案している(特許文献2参照)。この気道確保装置は、頭部を後屈させるエアバッグと顎先を挙上させるエアバッグを内蔵して胸部や首周りに取り付けられる装着体と、異常呼吸(例えば無呼吸)を検出する検出手段と、異常呼吸を検出した場合に装着体を駆動させる制御手段とを備えている。この気道確保装置によれば、異常呼吸が発生した場合に、最適な頭部位置姿勢を実現することで自動的に気道を開通することができる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に開示される気道確保装置では以下のような問題がある。すなわち、特許文献2の気道確保装置は、装着体が患者の胴体や首周りに取り付けられるので、頭部が胴体に対して直線状にない場合、つまり胴体に対して頭部のみが傾いている場合には、装着体が膨張したときに顎先に的確に当たらない場合があるという問題がある。このような場合には、睡眠時に呼吸音に異常が発生したとしても顎先を挙上させることができないので、正常な気道スペースを確保することができず、鼾や睡眠時無呼吸症候群の問題を十分に解決することができなかった。
【0007】
また、特許文献2等で実現される頭部位置の姿勢においても気道開通の効果を得ることはできるが、近年ではより確実かつ効果的に気道を開通させることが可能な気道確保装置の開発が要求されている。すなわち、特許文献2における気道確保の頭部位置姿勢は、頭部後屈・顎先挙上の姿勢であるが、本発明者らのその後の研究で、頭部挙上・顎先挙上の姿勢のほうがより効果的に気道を開通させることを見出した(非特許文献1参照)。
【0008】
ここで、頭部挙上・顎先挙上の姿勢とは、頭部を寝床面から所定の高さにして、略水平の角度に保ち、口を閉じる姿勢であり、人が匂いを嗅ぐときの姿勢(スニッフィングポジション)と類似した姿勢である。
図14は、頭部挙上・顎先挙上姿勢において、頭部挙上高さを変えて気道開通の状況をみたものである。
図14の横軸は頭部挙上高さであり、縦軸は気道閉塞圧である。被験者は日本人男性、10人である。結果として、頭部挙上高さ6cmのときに気道閉塞圧が最も低く、気道開通の効果があった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。
<第1の実施の形態>
[気道確保装置の構成例]
まず、本発明の第1の実施の形態に係る気道確保装置100の概略構成の一例について説明する。本実施の形態では、気道確保装置100を鼾および無呼吸症候群の治療装置に適用した例である。
図1は、第1の実施の形態に係る気道確保装置100の概略構成の一例を示している。
図2Aは気道確保装置100の正面図を示し、
図2Bはその背面図を示している。
【0016】
図1および
図2A、
図2Bに示すように、気道確保装置100は、ヘッドギア102と頭部挙上用エアバッグ104と顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rとポンプ装置130と呼吸音検出装置120と高さ・傾き取得装置140と制御基板150と操作部160とを備えている。
【0017】
ヘッドギア102は、頭部の略全体を覆うヘルメット形状をなしており、例えばポリエステル製の風通しの良いメッシュ生地や発泡ウレタン等の材料から構成されている。ヘッドギア102は、装着される患者の頭部10の大きさに合わせて形成しても良いし、例えばL,M,Sサイズのように複数のサイズを予め用意しても良い。ヘッドギア102は、頭部挙上用エアバッグ104および顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rをヘッドギア102の所定位置に固定することにより、患者が睡眠時に寝返りして仰向けから横向きの姿勢になった場合でも、頭部挙上用エアバッグ104および顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rが患者の頭部10から位置ずれしないようにする機能を有している。ヘッドギア102の患者の左右の耳に対応した位置には、患者の耳を外部に露出させるための開口部102a(右耳用の開口部は省略する)が形成されている。ヘッドギア102の頂面部には、患者の頭部の頂面を外部に露出させるための開口部102bが形成されている。なお、ヘッドギア102は、装着体の一例を構成している。
【0018】
頭部挙上用エアバッグ104は、ヘッドギア102を介して患者の頭部10の後頭部(背面)側に設けられ、例えばビニール等の樹脂材料から構成されている。頭部挙上用エアバッグ104は、ヘッドギア102の後部側に取り付けられると共に、その胴体16側が患者の首14の後部の付け根位置まで張り出すようにして設けられている。頭部挙上用エアバッグ104の張り出した部分は、患者の首幅よりも幅広に形成されており、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rが膨張したときにその膨張部分の一部(折り曲げ部)を支持する。頭部挙上用エアバッグ104と顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Lおよび106Rとは一部を接着しておいても良い。なお、頭部挙上用エアバッグ104は、第1の袋状体の一例を構成している。
【0019】
頭部挙上用エアバッグ104は、睡眠時に呼吸音に異常が発生した場合に、ポンプ装置130のエア供給動作により膨張することで、頭部挙上用エアバッグ104上に載っている患者の頭部10を上方に押し上げて寝床に対して所定の高さまで挙上させる。本例では、患者の気道が最も開通しやすいとされる6cm付近の高さまで挙上するものとする。この高さは、本発明者らが実験により最も気道の開通効果のある高さとして得られた数値である。一方、頭部挙上用エアバッグ104は、睡眠時の呼吸音の異常が解消した場合に、ポンプ装置130のエア吸引動作により収縮することで、頭部挙上用エアバッグ104上に載っている患者の頭部10を元の高さに戻す。
【0020】
顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Lは、患者の下顎12の左側から左耳用の開口部102aに向かって延在し、その途中で胴体16に向かって折り曲げられて頭部挙上用エアバッグ104の胴体16側の端部位置まで延在している。つまり、本例の顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Lは、側面形状が略逆L字状に形成されている。顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Lの下顎12の周辺の部位は、ヘッドギア102の対応した側面部に取り付けられている。これにより、患者が睡眠時に横向き姿勢となった場合でも、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Lがヘッドギア102から離脱することを防止できる。なお、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Lは、第2の袋状体の一例を構成している。
【0021】
顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Rは、患者の下顎12の右側から右耳用の図示しない開口部に向かって延在し、その途中で胴体16に向かって折り曲げられて頭部挙上用エアバッグ104の胴体16側の端部位置まで延在している。つまり、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Rは、側面形状が略L字状に形成されている。顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Rの下顎12の周辺の部位は、ヘッドギア102の対応した側面部に取り付けられている。これにより、患者が睡眠時に横向き姿勢となった場合でも、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Rがヘッドギア102から離脱することを防止できる。なお、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Rは、第2の袋状体の一例を構成している。
【0022】
顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rは、睡眠時の呼吸音に異常が発生した場合に、ポンプ装置130のエア供給動作により膨張することにより、ヘッドギア102をやや後方に回転させる。これにより、下顎12が下方より押し上げられることでヘッドギア102が装着された頭部10も後方に回転され、気道開通に適した角度である略水平を実現すると同時に、ヘッドギア102の一部で下顎12下に渡してあるベルトが下顎12を挙上することで口が閉じられる。一方、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rは、睡眠時の呼吸音の異常が解消した場合に、ポンプ装置130のエア吸引動作により収縮することで、ヘッドギア102と共に患者の頭部10を元の姿勢に戻す。
【0023】
ポンプ装置130は、エア管130aを介して頭部挙上用エアバッグ104に接続されている。ポンプ装置130は、睡眠時の呼吸音に異常が発生したときに、エア管130aを介してエアを頭部挙上用エアバッグ104に供給することにより頭部挙上用エアバッグ104を膨張させる。ポンプ装置130は、睡眠時の呼吸音の異常が解消されたときに、頭部挙上用エアバッグ104からパイプ103aを介してエアを引き抜くことにより頭部挙上用エアバッグ104を収縮させる。
【0024】
また、ポンプ装置130は、エア管130bを介して顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Lに接続されている。ポンプ装置130は、睡眠時の呼吸音に異常が発生したときに、エア管130bを介してエアを顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Lに供給することにより顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Lを膨張させる。ポンプ装置130は、睡眠時の呼吸音の異常が解消されたときに、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Lからエア管130bを介してエアを引き抜くことにより顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Lを収縮させる。なお、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106Rについては、エアバッグ160Lと対称であって構成が同様であるため、その説明については省略する。
【0025】
ここで、エア管130a,130bのそれぞれに図示しない弁(例えば電磁弁)を設けることで、ポンプ装置130からのエアを頭部挙上用エアバッグ104と顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106R,106Lとに独立して供給できるようにすることができる。また、頭部挙上用エアバッグ104にエアを供給するポンプ装置と、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106R,106Lにエアを供給するポンプ装置とをそれぞれ別々に用意しても良い。
【0026】
呼吸音検出装置120は、コンデンサマイク122と呼吸音処理装置124とを有している。コンデンサマイク122は、例えばヘッドギア102の患者の額18の近傍位置に取り付けられ、睡眠時の鼾を含む呼吸音を検出して、得られた呼吸音に基づく電圧信号Saを呼吸音処理装置124に供給する。コンデンサマイク122は、患者の額相当部以外にも患者の鼻(呼吸音発生源)に近いヘッドギア102の左右の部位に取り付けても良いし、呼吸音の検出が可能であれば患者の寝床周辺部に設置しても良い。
【0027】
呼吸音処理装置124は、コンデンサマイク122から供給された呼吸音の電圧信号Saを周波数領域のスペクトルに変換して呼吸音検出信号Sbを生成し、この生成した呼吸音検出信号Sbを制御基板150に供給する。呼吸音検出信号Sbには、呼吸音のスペクトル分布が含まれている。なお、呼吸音処理装置124の機能を制御基板150側に組み込み、制御基板150にて呼吸音の電圧信号Saをスペクトル変換処理するようにしても良いし、また異常な呼吸音の発生の有無を判定する機能を呼吸音処理装置124に持たせ、制御基板150は呼吸音における異常発生の有無を表す信号を呼吸音処理装置124から受け取るようにしても良い。
【0028】
高さ・傾き取得装置140は、センサ144a,144bと3次元位置計測装置144とを有している。センサ144aは、患者の下顎12に近いヘッドギア102の部位に取り付けられ、センサ144aの寝床面Bに対する高さを検出して検出信号Scを3次元位置計測装置144に供給する。本実施の形態では、センサ144aと下顎12との位置は近接しているので、センサ144aの高さを下顎12の高さとみなすことができる。なお、センサ144aは、下顎12に直接取り付けることもできる。この場合には、センサ144aの高さが下顎12の高さとなる。
【0029】
センサ144bは、患者の額18に近いヘッドギア102の部位に取り付けられ、センサ144bの寝床面Bに対する高さを検出して検出信号Sdを3次元位置計測装置144に供給する。本実施の形態では、センサ144aと額18との位置は近接しているので、センサ144bの高さを額18の高さとみなすことができる。なお、センサ144bは、額18に直接取り付けることもできる。この場合には、センサ144bの高さが額18の高さとなる。
【0030】
3次元位置計測装置144は、2つのセンサ144a,144bから供給される検出信号Sc,Sdと挙上前に取得した高さデータとに基づいて患者の頭部10の寝床面Bに対する高さを算出し、算出で得られた高さデータ(位置データ)Dhを制御基板150に供給する。本実施の形態では、センサ144a,144b間の中点の高さを算出し、この中点における高さを患者の頭部10の高さとしている。また、3次元位置計測装置144は、2つのセンサ144a,144bから供給される検出信号Sc,Sdに基づいて下顎12と額18との間の傾きを算出し、この算出により得られた傾きデータ(位置データ)Dsを制御基板150に供給する。
【0031】
なお、本実施の形態では頭部の位置と高さを検出するのに、センサ144aとセンサ144bの二つの位置センサを用いているが、頭部とセンサの角度が常に一致するようしっかりと固定し、位置と傾斜の両方を得られるセンサを用いたならば、センサを144aか144bのどちらか一つとすることもできる。
【0032】
制御基板150は、CPU152やメモリ部154を有している。CPU152は、例えば睡眠時に気道確保プログラムを実行することで、ポンプ装置130等の動作を制御する。制御基板150としては、この制御基板150が搭載されたコンピュータ等を用いることができる。
【0033】
メモリ部154は、例えば不揮発性の半導体メモリ等から構成され、気道確保プログラムや、このプログラムを実行する際に用いられる各種データを記憶している。具体的には、メモリ部154には、呼吸音が正常か否かを判定する際に用いられる基準呼吸音データが記憶されている。基準呼吸音データは、例えば、予め患者等の睡眠時の正常な呼吸音を録音し、この呼吸音をスペクトル変換したスペクトル分布データである。また、メモリ部154には、頭部挙上用エアバッグ104および顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rによる頭部10の挙上時に頭部10の高さの目標値(目標高さデータ)や角度の目標値(目標傾きデータ)が記憶されている。目標高さデータとしては、気道開通に適した値として例えば6cmが設定される。
【0034】
操作部160は、例えば気道確保装置100の電源をオン/オフするための電源ボタン等を有している。操作部160は、制御基板150に接続され、患者による電源ボタン等の操作を受け付け、この受け付けた操作に基づく操作信号を制御基板150に供給する。なお、制御基板150が搭載されたコンピュータが用いられる場合には、操作部160はこのコンピュータの構成に含まれる。
【0035】
[気道確保装置の動作例]
次に、第1の実施の形態に係る気道確保装置100の動作の一例について説明する。
図3は、気道確保装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
図4A〜
図4Cは、気道確保装置100の動作時における、頭部10の姿勢、および頭部挙上用エアバッグ104、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rの状態の一例を説明するための図である。
図4A〜
図4Cにおいて、紙面左側は患者を左側から見た図であり、紙面右側は患者を正面から見た図である。なお、以下の説明において、患者は仰向けで寝るものとする。
【0036】
図3に示すように、ステップS100で制御基板150は、操作部160の操作により気道確保装置100の電源がオンされたか否かを判断する。本例では、就寝前に患者が操作部160により気道確保装置100の電源をオンすることを前提としている。制御基板150は、気道確保装置100の電源がオンされたと判断した場合にはステップS110に進み、気道確保装置100の電源がオンされていないと判断した場合には電源がオンされるまで待機する。
【0037】
気道確保装置100の電源がオンされると、ステップS110では、呼吸音検出装置120のコンデンサマイク122により患者の呼吸音(鼾音)が検出され、この検出された呼吸音が呼吸音処理装置124により周波数領域の呼吸音検出信号Sbに変換されて制御基板150に供給される。制御基板150は、呼吸音処理装置124から供給される呼吸音検出信号Sbを取得する。
【0038】
ステップS120で制御基板150は、呼吸音検出装置120から供給された呼吸音検出信号Sbに基づいて、患者から発生する呼吸音に異常が発生したか否かを判定する。呼吸音の異常には、無呼吸や低呼吸、鼾等が含まれている。具体的には、メモリ部154から正常時の基準呼吸音検出信号のスペクトル分布データを読み出し、この読み出したスペクトル分布データと呼吸音検出装置120から供給された呼吸音検出信号Sbのスペクトル分布データとの類似度から呼吸音の異常の有無を判定する。異常時の呼吸音は、この呼吸音に類似する一般的な音と比べて例えば750Hz付近の周波数帯が特徴的となっているので、この750Hz付近の類似度から患者の呼吸音の異常の有無の判定を行うことができる。制御基板150は、患者の呼吸音に異常が発生したと判定した場合にはステップS130に進む。一方、患者の呼吸音が正常であると判定した場合にはステップS180に進む。
【0039】
患者の呼吸音に異常が発生した場合、ステップS130で制御基板150は、ポンプ装置130を駆動することにより頭部挙上用エアバッグ104にエアを供給する。このエアの供給により、
図4Aおよび
図4Bに示すように、頭部挙上用エアバッグ104が膨張し、頭部挙上用エアバッグ104上に載っている頭部10を上方に押し上げて所定の高さまで挙上させる。例えば、頭部10を寝床面Bから約6cmの高さまで挙上させる。続けて、制御基板150は、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rにポンプ装置130からエアを供給する。例えば、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106R側の弁を開くことで、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106R側へのエアの供給を開始する。このエアの供給により、
図4Cに示すように、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rのそれぞれが膨張する。このとき、膨張した顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rの下端側が頭部挙上用エアバッグ104に押し当たって支持(規制)されるので、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rの上端側に膨張による付勢力が働く。この付勢力により下顎12が下方より押し上げられてヘッドギア102が後方に回転することで、ヘッドギア102に装着された頭部10も後方に回転する。これにより、頭部10が略水平姿勢になると共に、患者の口が閉じた状態となる。このようなエア制御により、患者の頭部10が、気道が最も効果的に開通される姿勢になる。
【0040】
なお、本実施の形態では、睡眠中の患者に過度な負担を与えないために、頭部挙上用エアバッグ104および顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rを段階的にゆっくり膨張させるようにエア供給制御を行ったが、頭部挙上用エアバッグ104と顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rとを同時に膨張させるようにしても良い。
【0041】
ステップS140では、エアの供給により挙上した患者の頭部10の下顎12および額18の高さがセンサ144a,144bにより検出され、この検出結果に基づいて3次元位置計測装置144により頭部10の傾きおよび高さが算出される。算出された傾きデータDsおよび高さデータDhは、制御基板150に供給される。制御基板150は、3次元位置計測装置144から供給される患者の頭部10の傾きデータDsおよび高さデータDhを取得する。
【0042】
ステップS150で制御基板150は、傾き・高さ取得装置140から取得した患者の頭部10の傾きデータDsおよび高さデータDhに基づいて気道開通に最も適した頭部姿勢(スニッフィングポジション)となったか否かを判定する。制御基板150は、メモリ部154から目標傾きデータを読み出し、3次元位置計測装置144から供給された傾きデータDsと目標傾きデータとを比較し、実際に測定された傾きデータDsが目標傾きデータの許容範囲内であるか否かを判定する。また、制御基板150は、メモリ部154から目標高さデータを読み出し、3次元位置計測装置144から供給された高さデータDhと目標高さデータとを比較し、実際に測定された高さデータDhが目標高さデータの許容範囲内であるか否かを判定する。制御基板150は、傾きデータDsおよび高さデータDhの双方が正常の範囲内であると判定した場合にはステップS160に進む。一方、制御基板150は、傾きデータDsおよび高さデータDhの少なくとも一方が許容範囲外(異常)であると判定した場合にはステップS130に戻り、算出結果に基づいてエアの供給量の制御が行われる。例えば、頭部10の傾きが許容範囲外である場合には顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rへのエアの供給量を制御し、頭部10の高さが許容範囲外である場合には頭部挙上用エアバッグ104へのエアの供給量を制御する。
【0043】
ステップS160で制御基板150は、患者の頭部10が適切な姿勢となり気道スペースが広がったことにより、患者の呼吸音が正常となったか否かを判定する。具体的には、メモリ部154から正常時の基準呼吸音検出信号のスペクトル分布データを読み出し、この読み出したスペクトル分布データと呼吸音検出装置120から供給された呼吸音検出信号Sbのスペクトル分布データとの類似度から呼吸音の異常の有無を判定する。このとき、呼吸音の正常な期間が一定期間継続した場合に、呼吸音が正常に戻ったと判定しても良い。判定方法は、上述したステップS120の判定方法と同様である。制御基板150は、呼吸音が正常に戻ったと判定した場合にはステップS170に進む。一方、呼吸音が正常に戻っていないと判定した場合にはステップS130に戻り、エアの供給量の制御が行われる。
【0044】
ステップS170で制御基板150は、患者の呼吸音が正常の範囲内に戻ると、ポンプ装置130を駆動することにより頭部挙上用エアバッグ104および顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rのそれぞれからエアを引き抜く。頭部挙上用エアバッグ104および顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rからエアが吸引されると、
図4Aに示すように、患者の頭部10が挙上前の元の位置に戻る。なお、このエアの吸引は、患者に負担を与えないために、段階的に行っても良い。具体的には、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rから先にエアを吸引しても良いし、頭部挙上用エアバッグ104から先にエアを吸引しても良い。
【0045】
ステップS180で制御基板150は、気道確保装置100の電源が操作部160の操作によりオフされたか否かを判断する。例えば、朝になり、患者が起床する際に操作部160が操作されて気道確保装置100の電源がオフされる。タイマー制御により電源をオフするようにしても良い。制御基板150は、気道確保装置100の電源がオフされたと判断した場合には、上述した一連の気道確保動作を終了する。一方、気道確保装置100の電源がオフされていないと判断した場合にはステップS110に戻り、上述した気道確保動作を繰り返し実行する。
【0046】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、呼吸に異常が発生した場合に、頭部10を寝床面Bから6cm付近の高さに挙上させると共に、下顎12を後方に回転させて頭部10を適切な角度とし、また口を閉じさせる。これにより気道開通を促し、鼾や無呼吸症候群の治療、症状の改善を図ることができる。
【0047】
また、頭部挙上用エアバッグ104および顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rをヘッドギア102に固定し、患者はこのヘッドギア102を装着して就寝するので、頭部挙上用エアバッグ104および顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rが後頭部や下顎12から位置ずれることを防止できる。これにより、睡眠時に異常が発生した場合でも、確実に気道を開通させることができ、鼾や無呼吸症候群の発生を確実に防止、抑止することができる。
【0048】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206の形状を第1の実施の形態の顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106R,106Lの形状とは異ならせている。なお、その他の気道確保装置200の構成および動作は、第1の実施の形態の気道確保装置100と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0049】
[気道確保装置の構成例]
まず、第2の実施の形態に係る気道確保装置200の構成例について説明する。
図5Aは第2の実施の形態に係る気道確保装置200を患者の左側から見た図であり、
図5Bは正面から見た図である。なお、気道確保装置200の背面図については、上記第1の実施の形態の気道確保装置100の背面図(
図2B参照)と同様であるため省略している。
【0050】
気道確保装置200は、ヘッドギア202と、第1の袋状体の一例である頭部挙上用エアバッグ204と、第2の袋状体の一例である顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206とを備えている。
【0051】
顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206は、
図5Aおよび
図5Bに示すように、第1の実施の形態で説明した顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rの形状を変形させたものである。具体的には、
図1および
図2A、
図2Bに示した顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rのうち頭部挙上用エアバッグ104側の端部のそれぞれが胴体16の略胸元の位置まで延在し、その先端が内側方向に折り曲げられて互いに接続された構成となっている。平面的に見ると、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106は、両端部が開放された矩形環状に形成され、その両端部のそれぞれが患者の下顎12の左右近傍に位置し、ヘッドギア202の対応する側面部に取り付けられている。
【0052】
顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206には、第1の実施の形態で説明したポンプ装置130が接続されている。ポンプ装置130は、患者の呼吸音に異常が発生した場合に、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206にエアを供給することにより顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206を膨張させる。一方、ポンプ装置130は、患者の呼吸音が正常に戻った場合に、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206からエアを引き抜くことにより顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206を収縮させる。
【0053】
[気道確保装置の動作例]
次に、第2の実施の形態に係る気道確保装置200の動作の一例について説明する。
図6A〜
図6Cは、第2の実施の形態に係る気道確保装置200の動作時における頭部10の姿勢、および頭部挙上用エアバッグ204、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206の状態の一例を説明するための図である。
図6A〜
図6Cにおいて、紙面左側は患者を左側から見た図であり、紙面右側は平面から見た図である。
【0054】
睡眠時に患者の呼吸音に異常が発生すると、ポンプ装置130が駆動し、頭部挙上用エアバッグ204にエアが供給される。このエアの供給により、
図6Aおよび
図6Bに示すように、頭部挙上用エアバッグ204が膨張し、頭部挙上用エアバッグ204上に載っている頭部10が上方に押し上げられて所定の高さまで挙上される。例えば、頭部10が寝床面Bから約6cmの高さまで挙上される。
【0055】
続けて、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206にエアが供給される。このエアの供給により、
図6Cに示すように、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206が膨張する。顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206が膨張すると、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206の折り曲げ部が頭部挙上用エアバッグ204表面に押し当てられると共に、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206の胸側の部位が胴体16によって支持された状態となるので、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206の膨張による付勢力がヘッドギア202側の顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ206の部位に作用する。この付勢力によりヘッドギア202が後方に回転することで、下顎12が下方より押し上げられて、ヘッドギア202を装着する頭部10が後方に回転すると同時に口が閉じられる。このようなエア制御により、患者の頭部10を、気道開通に最も効果的な姿勢とすることができる。
【0056】
第2の実施の形態によっても、上記第1の実施の形態と同様に、患者の頭部10を気道開通に適した姿勢にすることで、気道開通を促し、睡眠時の鼾や無呼吸症候群の発生を効果的に防止することができる。
【0057】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306R,306Lの形状を第1の実施の形態の顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106R,106Lの形状とは異ならせている。なお、その他の気道確保装置300の構成および動作は、第1の実施の形態の気道確保装置100と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0058】
[気道確保装置の構成例]
まず、第3の実施の形態に係る気道確保装置300の構成例について説明する。
図7Aは第3の実施の形態に係る気道確保装置300の構成の一例を示す患者を左側から見た図であり、
図7Bは患者を正面から見た図である。なお、気道確保装置300の背面図については、上記第1の実施の形態の気道確保装置100の背面図(
図1および
図2A、
図2B参照)と同様であるため省略している。
【0059】
気道確保装置300は、ヘッドギア302と、第1の袋状体の一例である頭部挙上用エアバッグ304と、第2の袋状体の一例である顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rとを備えている。顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rは、第1の実施の形態で説明した顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rの側面形状を逆L字状から三角形状の環状体に変更したものである。顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rは、上方側の角部が患者の下顎12の左右側に位置すると共に、三角形状の一辺がヘッドギア202の対応する側面部に取り付けられている。
【0060】
顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rには、第1の実施の形態で説明したポンプ装置130が接続されている。ポンプ装置130は、患者の呼吸音に異常が発生した場合に、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rにエアを供給することにより顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rを膨張させる。一方、ポンプ装置130は、患者の呼吸音が正常に戻った場合に、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rからエアを引き抜くことにより顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rを収縮させる。
【0061】
[気道確保装置の動作例]
次に、第3の実施の形態に係る気道確保装置300の動作の一例について説明する。
図8A〜
図8Cは、第3の実施の形態に係る気道確保装置300の動作時における頭部10の姿勢、および頭部挙上用エアバッグ304、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rの状態の一例を説明するための図である。
図8A〜
図8Cにおいて、紙面左側は患者を左側から見た図であり、紙面右側は患者を正面から見た図である。
【0062】
睡眠時に患者の呼吸音に異常が発生すると、ポンプ装置130が駆動し、頭部挙上用エアバッグ304にエアが供給される。このエアの供給により、
図8Aおよび
図8Bに示すように、頭部挙上用エアバッグ304が膨張し、頭部挙上用エアバッグ304上に載っている頭部10が上方に押し上げられて所定の高さまで挙上される。例えば、頭部10が寝床面Bから約6cmの高さまで挙上される。
【0063】
続けて、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rにエアが供給される。このエアの供給により、
図8Cに示すように、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rが膨張する。顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rが膨張すると、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rの下部が頭部挙上用エアバッグ304表面に押し当てられて頭部挙上用エアバッグ304により支持された状態となるので、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rの膨張による付勢力が顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ306L,306Rの上部側に作用する。この付勢力により下顎12が下方より押し上げられてヘッドギア302が後方に回転することで、ヘッドギア302を装着する頭部10が後方に回転すると同時に口が閉じられる。このようなエア制御により、患者の頭部10を、気道開通に最も効果的な姿勢とすることができる。
【0064】
第3の実施の形態によっても、上記第1の実施の形態と同様に、患者の頭部10を気道開通に適した姿勢にすることで、気道開通を促し、睡眠時の鼾や無呼吸症候群の発生を効果的に防止することができる。
【0065】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態では1つの頭部挙上用エアバッグ404を用いて患者の頭部10を気道開通に適した頭部の高さおよび角度とする点において、2つの頭部挙上用エアバッグ104、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106R,106Lを用いて患者の頭部10を気道開通に適した頭部の高さおよび角度とする第1の実施の形態等と相違している。なお、その他の気道確保装置400の構成および動作は、第1の実施の形態の気道確保装置100と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0066】
[気道確保装置の構成例]
まず、第4の実施の形態に係る気道確保装置400の構成例について説明する。
図9は、第4の実施の形態に係る気道確保装置400の概略構成の一例を示している。
【0067】
気道確保装置400は、ヘッドギア402と、第1および第2の袋状体の一例であるエアバッグ404とを備えている。エアバッグ404は、例えば第1の実施の形態で説明した頭部挙上用エアバッグ104と顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L,106Rとを連通一体化することで1つの空気室により構成したものである。このエアバッグ404は、頭部挙上部404aと顎先挙上・頭部角度調整部404bとを有している。頭部挙上部404aは、ヘッドギア402の後部側に取り付けられ、エアの供給により膨張することで頭部10を寝床面Bに対して所定の高さに挙上させる。顎先挙上・頭部角度調整部404bは、患者の首14の両脇周辺部の頭部挙上部404aから下顎12に向かって突出し、その突出した先端が下顎12の左右近傍のヘッドギア402の対応する側面部のそれぞれに取り付けられている。顎先挙上・頭部角度調整部404bは、エアの供給により膨張することで、下顎12を後方に回転させて頭部10を水平に保持する。
【0068】
エアバッグ404には、第1の実施の形態で説明したポンプ装置130が接続されている。ポンプ装置130は、患者の呼吸音に異常が発生した場合に、エアバッグ404にエアを供給することによりエアバッグ404を膨張させる。一方、ポンプ装置130は、患者の呼吸音が正常に戻った場合に、エアバッグ404からエアを引き抜くことによりエアバッグ404を収縮させる。
【0069】
[気道確保装置の動作例]
次に、第4の実施の形態に係る気道確保装置400の動作時におけるエアバッグ404の状態の一例について説明する。
図10Aおよび
図10Bは、第4の実施の形態に係る気道確保装置400の動作時における頭部10の姿勢、およびエアバッグ404の状態の一例を示している。
【0070】
睡眠時に患者の呼吸音に異常が発生すると、ポンプ装置130が駆動し、エアバッグ404にエアが供給される。このエアの供給により、
図10Aおよび
図10Bに示すように、エアバッグ404の頭部挙上部404aが膨張し、頭部挙上部404a上に載っている頭部10が上方に押し上げられて所定の高さまで挙上される。例えば、頭部10が寝床面Bから約6cmの高さまで挙上される。
【0071】
同時に、頭部挙上部404aと連通一体化された顎先挙上・頭部角度調整部404bも膨張する。顎先挙上・頭部角度調整部404bが膨張すると、ヘッドギア402が顎先挙上・頭部角度調整部404bによりや後方に回転することで、患者の下顎12も下方より押し上げられて後方に回転すると同時に口が閉じられる。これにより、頭部10が気道開通に適した姿勢となる。
【0072】
第4の実施の形態によっても、上記第1の実施の形態と同様に、患者の頭部10を気道開通に適した姿勢にすることで、気道開通を促し、睡眠時の鼾や無呼吸症候群の発生を効果的に防止することができる。
【0073】
以上の第1〜第4の実施形態において、ポンプ装置130は、呼吸音の異常を検知してから作動し、呼吸音が正常に戻ると作動を停止するが、頭部挙上用エアバッグ104、204、304、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ106L、106R、206、306L、306R、およびエアバッグ404の人体と接する面側に細かい開口を設けておき、そこからある量のエアを常時吹き出すようにしてもよい。すなわち電源オン後すぐに、ポンプ装置130が微量送気状態で駆動し、前記エアバッグの開口から微量のエアを吹き出す。呼吸音の異常を検知したら前記エアバッグを膨張させるように送気量を増加させ、呼吸音が正常に戻ったらまた微量送気状態に戻すようにしてもよい。これにより、本気道確保装置を装着したときの発汗、蒸れ等を低減させることができる。
【0074】
<第5の実施の形態>
第5の実施の形態では、気道確保装置500を構成する頭部挙上用エアバッグ504および顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ506のそれぞれを予めエアにより膨らませた状態としている点において上記第1〜第4の実施の形態と相違している。なお、その他の気道確保装置500の構成および動作等は、第1の実施の形態の気道確保装置100等と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0075】
図11Aは第5の実施の形態に係る気道確保装置500を患者の左側から見た図であり、
図11Bは正面から見た図である。
図12Aは頭部挙上用エアバッグ504の平面図であり、
図12Bはその正面図であり、
図12Cはその背面図である。
図13Aは顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ506の平面図であり、
図13Bはその正面図であり、
図13Cはその左側面図である。
【0076】
気道確保装置500は、
図11Aおよび
図11Bに示すように、ヘッドギア502と、第1の袋状体の一例である頭部挙上用エアバッグ504と、第2の袋状体の一例である顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ506とを備えている。
【0077】
頭部挙上用エアバッグ504は、患者の頭部10を寝床面Bから所定の高さに位置させるためのエアバッグである。頭部挙上用エアバッグ504は、
図12A〜
図12Cに示すように、U字形状からなり、頭部挙上用エアバッグ504の内側の径D1がヘッドギア502の外径D2(
図11B)と略同一に選定される。この頭部挙上用エアバッグ504は、患者の頭部10の一方の側面部から背面部(後部)を介して他方の側面部に沿うようにしてヘッドギア502の外周面に取り付けられている。
【0078】
頭部挙上用エアバッグ504の内部には予めエアが充填されており、使用時にエア供給動作を行わなくても良い構成となっている。本例では、睡眠時における安定姿勢を維持するために、2個のU字状のエアバッグを重ねて2段構造とすることにより頭部挙上用エアバッグ504を構成している。なお、頭部挙上用エアバッグ504を1つのエアバッグで構成しても良いし、3つ以上のエアバッグで構成しても良い。
【0079】
頭部挙上用エアバッグ504の膨張時における膨張幅は、
図11Aおよび
図11Bに示すように、内部に供給するエア量を調整することで、気道開通に適した高さである約6cmに設定される。これにより、患者の頭部10を寝床面B対して6cmの高さに設定できる。また、本例では、頭部挙上用エアバッグ504がヘッドギア502の左右側面部(患者の耳に対応した位置)にも設けられているので、患者が仰向けに寝る場合だけでなく、寝返りをして横向きの姿勢になった場合でも、患者の頭部10を寝床面Bから約6cmの高さに位置させることができるようになっている。
【0080】
顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ506は、患者がヘッドギア502を装着したときに下顎12を下方より押し上げて頭部10を後方に回転させて所定の角度をとらせるためのエアバッグである。顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ506は、ヘッドギア502の左右下端部と患者の肩、鎖骨付近との間に介在して配置され、下顎12の近傍に位置するヘッドギア502の部位に取り付けられている。この顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ506は、第1のエアバッグ506aと、第2のエアバッグ506bR,506bLとを有している。
【0081】
図13A〜
図13Cに示すように、第1のエアバッグ506aは、U字形状からなり、その内側の径D3が一般的な患者の首14の太さに対応した長さに選定される。第1のエアバッグ506aの内部には予めエアが充填されており、使用時にエア供給動作を行わなくても良い構成となっている。第2のエアバッグ506bR,506bLは、略楕球形状をなし、第1のエアバッグ506aの両端部の対応する位置のそれぞれに取り付けられている。第2のエアバッグ506bR,506bLの内部にも予めエアが充填されており、使用時にエア供給動作を行わなくても良い構成となっている。
【0082】
このように構成された顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ506を患者が装着して睡眠姿勢となると、第1のエアバッグ506aが患者の肩付近に押し当たり、第2のエアバッグ506bR,506bLがヘッドギア502の下端部に押し当たることで、下顎12を下方より押し上げてヘッドギア502を後方に回転させて患者の頭部10を水平姿勢にする。このとき、同時に患者の口も閉じられる。また、頭部挙上用エアバッグ504により、頭部10の高さが寝床面Bから約6cmの位置に維持される。
【0083】
以上説明したように、第5の実施の形態によれば、睡眠時において、患者の頭部10を気道開通に適した頭部の高さおよび角度とすることで、気道開通を促し、睡眠時の鼾や無呼吸症候群の発生を効果的に防止することができる。また、U字形状の頭部挙上用エアバッグ504がヘッドギア502の側面部まで覆った構造となっているので、患者が横向き姿勢となった場合でも、患者の頭部10を気道開通に適した頭部10の高さおよび角度に維持した状態とすることができる。これにより、患者の寝返りを妨げることなく、かつ、睡眠時の鼾や無呼吸症候群の発生を効果的に防止することができる。
【0084】
第5の実施の形態においては、頭部挙上用エアバッグ504及び顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ506は、当該エアバッグにエアを充填したときと等価な形状及び硬度を有する中実柔軟部材、例えば発泡ポリウレタン等で構成されてもよい。また、頭部挙上用エアバッグ504及び顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ506は、当該エアバッグにエアを充填したときと等価な形状及び硬度を有する中空メッシュ部材、例えば細線材である竹ひごや細線金属を編み込んで形成した編み枕で構成されてもよい。なお、この場合において、頭部挙上用エアバッグ504は第1の柔軟部材の一例を構成し、顎先挙上・頭部角度制御用エアバッグ506は第2の柔軟部材の一例を構成している。
【0085】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。上記実施の形態では、睡眠時の異常の有無を呼吸音により判定したが、これに限定されることはない。例えば、腹部と胸部の膨らみのパターンから吸気・呼気、無呼吸を検出するセンサ、呼吸に伴う体幹−ベッド(布団)間の圧力分布変化を検出するシート状圧力分布計あるいは鼻(正確には鼻孔の下あたりの唇の上)に装着して吸気・呼気、無呼吸を検出するサーミスタなど既存のセンサを用いることができる。