特許第6233851号(P6233851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233851
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ボタンとボタンホールの構造
(51)【国際特許分類】
   A41H 37/10 20060101AFI20171113BHJP
   A41F 1/02 20060101ALI20171113BHJP
   A44B 1/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A41H37/10 Z
   A41F1/02 Z
   A44B1/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-157193(P2015-157193)
(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公開番号】特開2017-36514(P2017-36514A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2015年11月26日
【審判番号】不服2017-5491(P2017-5491/J1)
【審判請求日】2017年4月18日
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512113504
【氏名又は名称】株式会社発明デザイン研究所
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(72)【発明者】
【氏名】今井 雄仁
【合議体】
【審判長】 渡邊 豊英
【審判官】 谿花 正由輝
【審判官】 千壽 哲郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/111977(WO,A1)
【文献】 特開2004−115934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41H37/10
A41F1/02
A41B1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の生地に連結部を介して取付けられているボタンと、他方の生地に設けられ、前記ボタンを通すボタンホールからなるボタンとボタンホールの構造において、
前記一方の生地と他方の生地が連続しており、
少なくとも一対の隣り合う前記ボタン及びボタンホールを具え、
前記一対の隣り合うボタンホールが、それぞれ、互いに対する遠位端と近位端を有し、
前記生地の非着用時で広げた状態、且つ、前記一対の隣り合うボタンが掛けられているときに、該一対の隣り合うボタンの連結部が、それぞれ、前記遠位端同士に位置するように構成されている、
ボタンとボタンホールの構造。
【請求項2】
一方の生地に連結部を介して取付けられているボタンと、他方の生地に設けられ、前記ボタンを通すボタンホールからなるボタンとボタンホールの構造において、
前記一方の生地と他方の生地が連続しており、
少なくとも一対の隣り合う前記ボタン及びボタンホールを具え、
前記一対の隣り合うボタンホールが、それぞれ、互いに対する遠位端と近位端を有し、
前記生地の非着用時で広げた状態、且つ、前記一対の隣り合うボタンが掛けられているときに、該一対の隣り合うボタンの連結部が、それぞれ、前記遠位端同士又は近位端同士に位置するように構成され、
前記一対の隣り合うボタンホールの内、一方の前記ボタン及びボタンホールが、他方の前記ボタンがボタンホールに掛けられるときの前記両生地の移動方向に対する直交方向に位置するように設けられ、
前記ボタンホールが前記直交方向に沿う直線状の切れ目を有する
ボタンとボタンホールの構造。
【請求項3】
前記ボタンホールのいずれかの前記連結部が位置する前記遠位端又は近位端が、前記移動方向に曲がっている、請求項のボタンとボタンホールの構造。
【請求項4】
前記ボタンホールが二以上の直線状の切れ目、曲線状の切れ目、又は任意の図形形状からなる、請求項1のボタンとボタンホールの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服等に使用されるボタン、詳細には、一方の生地に取付けられているボタンを他方の生地のボタンホールに通して両方の生地を留めるタイプ(以下、単に、「ボタンホールタイプ」ということもある。)のボタンとボタンホールの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上衣の前開き部やブーツの側面のように、互いに離れている一対の生地をボタンで留めることは昔から行われてきた。それらのボタンの内、最も広く使用されているものの一つが、一方の生地に取付けられているボタンを他方の生地のボタンホールに通して両方の生地を留めるというボタンホールタイプである。このタイプのボタンは、ボタンを掛けるとき又は外すときに、ボタンをボタンホールに通さなければならない。この作業は、幼児にとって容易ではなく、また、ボタンが小さいと、高齢者にとっても容易ではない。また、同作業は、手袋をつけたときや手が悴んだとき等、手先が思うように動かない場合に困難である。
【0003】
ここで、ボタンの掛け外しを簡単にするために、ボタンホールの大きさを単純に大きくすることが考えられる。しかし、この場合、ボタンが不意に外れ易くなるため、一対の生地を留めるというボタンとしての機能を発揮し難くなるという問題がある。このような事情の下、ボタンホールタイプ以外の構造が開発されており、幼児や高齢者であっても、一対の生地を簡単に留められるようにした衣服として、例えば、以下に示すものが考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−157101号公報
【特許文献2】実登3175405号公報
【0005】
特許文献1には、一対の生地が重ね合わさる部分の対向面に面ファスナを取付け、面ファスナで両方の生地を留めるようにしたワイシャツが開示されている。
【0006】
特許文献2には、一対の生地が重ね合わさる部分の対応する複数の位置にスナップボタンを取付けた上衣が開示されている。
【0007】
特許文献1によれば、面ファスナ同士を押し付けることにより、一方、特許文献2によれば、スナップボタンの雄側を雌側に嵌込むことにより、一対の生地を留めることができるので、従来のボタンホールタイプに対し、一対の生地を比較的簡単に留めることができる。また、特許文献1,2のいずれの構造においても、一対の生地を離す方向に引っ張れば、面ファスナ又はスナップボタンを簡単に外すことができるので、一対の生地の掛止状態を比較的簡単に外すこともできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ボタンホールタイプは依然として主流であり、大半の衣服等に使用されている。これは、シャツやワイシャツの分野では特に顕著である。このように、ボタンホールタイプが面ファスナやスナップボタンに未だ完全に置換えられていない理由としては、以下の事情が考えられる。
【0009】
まず、コストの問題である。面ファスナやスナップボタンは、主にボタンのコストしか掛からないボタンホールタイプに比べて材料コストが掛かるため、メーカ側にとって負担が大きい。
【0010】
また、ユーザ側に受け容れられ難いという問題もある。特に高齢者においては、これまでボタンをボタンホールに通して留めていたものを、面ファスナやスナップボタンに変更することに対して抵抗がある。
【0011】
一方、ボタンホールタイプには、以下の利点がある。すなわち、ボタンの掛け外しに指先を使うことにより、脳が活性化するということである。特に、ボタンの掛け外しは、幼児の脳の発達を促すともいわれている。
【0012】
そこで、本発明は、前記事項に鑑み、不意に外れ難いボタンとボタンホールの構造を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、一方の生地に連結部を介して取付けられているボタンと、他方の生地に設けられ、前記ボタンを通すボタンホールからなるボタンとボタンホールの構造において、
前記一方の生地と他方の生地が連続しており、
少なくとも一対の隣り合う前記ボタン及びボタンホールを具え、
前記一対の隣り合うボタンホールが、それぞれ、互いに対する遠位端と近位端を有し、
前記生地の非着用時で広げた状態、且つ、前記一対の隣り合うボタンが掛けられているときに、該一対の隣り合うボタンの連結部が、それぞれ、前記遠位端同士に位置するように構成されているボタンとボタンホールの構造、
または、
一方の生地に連結部を介して取付けられているボタンと、他方の生地に設けられ、前記ボタンを通すボタンホールからなるボタンとボタンホールの構造において、
前記一方の生地と他方の生地が連続しており、
少なくとも一対の隣り合う前記ボタン及びボタンホールを具え、
前記一対の隣り合うボタンホールが、それぞれ、互いに対する遠位端と近位端を有し、
前記生地の非着用時で広げた状態、且つ、前記一対の隣り合うボタンが掛けられているときに、該一対の隣り合うボタンの連結部が、それぞれ、前記遠位端同士又は近位端同士に位置するように構成され、
前記一対の隣り合うボタンホールの内、一方の前記ボタン及びボタンホールが、他方の前記ボタンがボタンホールに掛けられるときの前記両生地の移動方向に対する直交方向に位置するように設けられ、
前記ボタンホールが前記直交方向に沿う直線状の切れ目を有するボタンとボタンホールの構造によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一対のボタンのそれぞれと一方の生地との連結部が、他方の生地に設けられている一対のボタンホールの遠位端同士又は近位端同士に位置するように構成されているため、ボタンを掛けたときの、ボタンホールに対するボタンの移動を従来に比べて抑制することができる。すなわち、ボタンの掛止状態を安定させることができるので、ボタンが不意にボタンホールを通って外れてしまうということを防止することができる。一方で、ボタンホールを大きくすれば、ボタンを掛け外しし易くすることができる。
【0015】
また、一方のボタン及びボタンホールが、他方のボタンがボタンホールに掛けられるときの両生地の移動方向に対する直交方向に設けられており、ボタンホールが、当該直交方向に沿う直線状の切れ目を有する場合、ボタンホールに対するボタンの移動を抑制し易く、且つ、他方の生地に対してボタンが引っ掛かる範囲を比較的大きく確保できる。よって、ボタンホールを大きくして、ボタンが掛け外しし易く不意に外れ難いという構成を実現し易い。
【0016】
さらに、ボタンホールのいずれかの遠位端又は近位端が、ボタンがボタンホールに掛けられるときの両生地の移動方向に曲がっている構成とすれば、単に直線状の切れ目からなるボタンホールに比べて、ボタンをボタンホールに通し易いので、ボタンの掛け外しが容易な構造にすることができる。
【0017】
ボタンホールが二以上の直線状の切れ目、曲線状の切れ目、又は図形形状からなる構成としても、上記同様、単に直線状の切れ目からなるボタンホールに比べて、ボタンの掛け外しが容易な構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一実施形態のボタンとボタンホールの構造を適用した上衣の正面図。
図2】本発明の第一実施形態において、ボタンを掛けている状態の要部拡大図。
図3(a)は、本発明の第一実施形態のボタンとボタンホールの構造の配置例を表した正面図。(b)は、参考例の正面図。
図4】本発明の第二実施形態において、ボタンを掛けている状態の要部拡大図。
図5】本発明の第三実施形態において、ボタンを掛けている状態の要部拡大図。
図6(k)を除き、本発明の第四〜二十実施形態のボタンホールのバリエーションを表した正面図。(k)は、参考例の正面図。
図7】本発明の第二十実施形態のボタンとボタンホールの構造を適用した上衣の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例を図1〜7を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の第一実施形態のボタンとボタンホールの構造(以下、単に、「ボタン構造」という。)10を具えた上衣(ワイシャツ)100を示す。ワイシャツ100は、一方の生地12にボタン22,42,60が取付けられており、ボタン22,42,60が他方の生地14に設けられたボタンホール32,42(第一ボタン60のボタンホールは図示省略。)に通されることにより、ボタン22,42,60が他方の生地14に引っ掛かり、両方の生地12,14が留められる。ワイシャツ100は、首元の第一ボタン60を具え、第二ボタン22以下に、3組のボタン構造10を具える。なお、ワイシャツ100において、一方の生地12と他方の生地14は連続した生地である。また、ボタン構造10は、一組でも機能するが、本実施形態のように、複数組設けてもよい。
【0021】
ボタン構造10の要部拡大図が図2である。図2に示すように、ボタン構造10は、一対のボタン22,42及びボタンホール32,52から構成される。ボタン構造10のボタン22,42は円形で、ボタンホール32,52は、ボタン22がボタンホール32に掛けられるときの両生地12,14の移動方向(X方向)に対する直交方向(Y方向)に沿う直線状の切れ目である。ここで、X方向は、通常、身幅、裾幅、袖幅と同方向であり、Y方向は、着丈、総丈と同方向である。なお、図2において、ボタンホールの幅は、便宜上、誇張して示されており、これは、図3〜7においても同様である。
【0022】
ボタン構造10では、ボタンホール32,52がY方向に沿う直線状の切れ目であるため、ボタンホール32,52は、Y方向に、互いに対する遠位端34,54と近位端36,56を有する。そして、ボタン22,42と一方の生地12との連結部24,44が、それぞれ、ボタン22,42を掛けたときに遠位端34,54に位置するように構成されている。なお、ボタン構造10では、ワイシャツ100の非着用時で広げた状態のときに連結部24,44が遠位端34,54に位置するように構成されている。ここで、連結部24,44は、一般的には、ボタン22,42と生地12を連結する糸であるが、くるみボタンの金具部分のように、ボタン22,42と連続する部品で構成されていてもよい。
【0023】
本構成により、ボタン22及び42が図2の上方向に移動しようとした場合、ボタン22はボタンホール32の遠位端34より上に移動できないため、ボタン22と同一の生地12に設けられているボタン42も上に移動し難い。一方、ボタン22及び42が図2の下方向に移動しようとした場合、ボタン42はボタンホール52の遠位端54より下に移動できないため、ボタン42と同一の生地12に設けられているボタン22も下に移動し難い。よって、ボタンホール32,52に対するボタン22,42の移動を抑制することができるから、ボタン22,42の掛止状態を安定させることができる。これにより、従来よりも不意に外れ難いボタン構造とすることができる。
【0024】
本発明に適用されるボタンホールは、ボタンの厚み、他のボタンホールとの関係等を考慮して、ボタンを通すことができる程度にすればよい。ボタンホールの長手方向(Y方向)寸法をボタンの同方向の寸法と同程度にすれば、上述したように、従来よりも不意に外れ難いボタン構造とすることができる。一方、ボタン構造10のボタンホール32,52のように、ボタン22,42の直径よりも大きい(約1.2倍の)長手方向(Y方向)寸法を有する構成とすることもできる。これにより、ボタン22,42をボタンホール32,52に通し易くなるため、従来よりも掛け外しし易いボタン構造とすることができる。すなわち、ボタン構造10によれば、掛け外しし易く、不意に外れ難いうという機能の両立を実現することができる。ボタンホールの大きさを大きくすればするほど、ボタンを掛け外しし易くなるが、その程度は用途に応じて決めればよい。
【0025】
ボタン構造10は、図3に示すように、複数組のものを種々の配置で適用することができる。なお、図3〜7において、X方向及びY方向は、図2と同方向である。例えば、図3(a)に示され、且つ、ワイシャツ100(図1参照。)と同様に、ボタン構造10を構成しないボタン62を1つ具え、ボタン62に続くようにボタン構造10を複数組設けることができる。ボタン構造10のボタン22,42及びボタンホール32,52が隣り合っていると、ボタン22,42をボタンホール32,52に掛けたときの生地の歪みを抑えることができる
【0026】
図4は、本発明の第二実施形態のボタン構造10aを示す。基本的な構造はボタン構造10と同様であるため、異なる点について以下に説明する。
【0027】
ボタン構造10aでは、ボタン構造10と同様に、ボタンホール32a,52aは、Y方向に沿う直線状の切れ目を有する。しかし、ボタンホール32a,52aでは、ボタン22,42と一方の生地12との連結部24,44が位置する遠位端34,54が、生地12と14が重なる方向(X方向)の内、ボタンホール32a,52aが設けらている生地14が、ボタン22,42が設けられている生地12に対して近づく方向(図4の左方向)に曲がっており、鉤部38,58を形成している。
【0028】
ボタン構造10aのボタン22,42を掛けたとき、連結部24,44は、図示しているように、鉤部38,58に引っ掛かることができる。これにより、ボタン22,42は、直交方向(Y方向)へ移動し難くなるため、ボタン構造10に比べ、ボタン22,42が不意に外れることをより確実に防ぐことができる。一方で、ボタン構造10のような直線状のボタンホール32,52に比べ、ボタン22,42を通すボタンホール32a,52aの範囲が大きくなるため、ボタンを掛け外しし易くすることもできる。
【0029】
図5に示すように、ボタン22,42と一方の生地12との連結部24,44が、それぞれ、ボタン22,42を掛けたときに、ボタンホール32b,52bの互いに対する近位端36b,56bに位置するようにしたボタン構造10bとしてもよい。ボタン構造10bによっても、ボタン構造10と同様の効果を奏することができる。なお、図示しての説明は省略するが、ボタン構造10bの近位端36b,56bに、ボタン構造10aの鉤部38,58と同様の鉤部を設けることもできる。
【0030】
図6は、本発明に適用することができるボタンホールのバリエーションを示す。図6(a)〜(g)のボタンホールは、二以上の直線状の切れ目からなる。図6(a)のボタン構造10cでは、ボタン22,42の連結部24,44が位置していない近位端36c,56cが、生地12,14が重なる方向(X方向)の内、図中の右方向に曲がっている。すなわち、ボタンホール32c,52cは、Y方向に沿う直線状の切れ目とX方向に沿う直線状の切れ目からなる。これにより、ボタン22,42を通すボタンホール32c,52cの範囲を大きくすることができるため、ボタンの掛け外しがし易い構成とすることができる。当該効果を奏するためには、ボタンの連結部が位置しているか否かに関わらず、近位端又は遠位端を生地が重なる方向(X方向)のいずれかに曲げればよく、ボタン構造10cのように直角に曲げる以外に、図6(b)のボタン構造10dの近位端36d,56dのように、カーブ状に曲げてもよい。
【0031】
また、ボタンを通すボタンホールの範囲を大きくするために、図6(c)のボタンホール32e,52e、又は図6(d)のボタンホール32f,52fのように、T字状にすることもできる。その他に、ボタンホールを、図6(e),(f)のように十字状にすることもでき、図6(g)のようにY字状にすることもできる。
【0032】
一方、本発明に適用することができるボタンホールは、必ずしもY方向に延びる直線状の切れ目を有するものでなくてもよい。例えば、図6(h),(i)に示す、ボタンホール32j,52jのようなV字状の切れ目、又はボタンホール32k,52kのような曲線状(ボタン構造10kの場合、U字状)の切れ目でもよく、図6(j)に示すように、Y方向に対して傾きを有する直線状の切れ目のボタンホール32l、52lであってもよい。
【0033】
ここで、図6(h),(i)に示すようなボタンホール32j,32kの場合、ボタンの掛け外し時には、切片31,31aが折れて図6(k)のボタンホール52mに似た形状になるため、ボタン22をボタンホール32j,32kに通し易くすることができる。
【0034】
また、図6)乃至(r)に示すように、ボタンホールの形状を任意の図形の形状にすることによって、ボタンを通すボタンホールの範囲を大きくすることもできる。このとき、ボタンホールの大きさは、ボタンの厚み、他のボタンホールとの関係等を考慮して決定される。また、図6(q)、(r)のように、一対のボタンホール32r,52r、32t,52tは、対称の形状でなくてもよい。これは、直線形状又は曲線形状のボタンホールも同様である。
【0035】
上記では、ボタン及びボタンホールがY方向に設けられている態様のものを説明したが、本発明は、図7の、ダブルブレストのボタン列を具えているコート100aのように、一対のボタン22,42及びボタンホール32u,52uがX方向に設けられているものにも適用することができる。基本的には、ボタン構造10と同様であるため、具体的な説明は省略するが、ボタンホール32u,52uは、X方向に沿う直線状の切れ目であり、同方向に、互い対する遠位端と近位端(図示省略。)を有する。そして、ボタン構造10uの場合、ボタン22,42と一方の生地12aとの連結部(図示省略。)が、それぞれ、互いのボタンホール32u,52uに対する遠位端に位置するように構成されている。ボタンホール32u,52uの形状を、上記に説明した他の形状とすることもできるのは言うまでもない。
【0036】
本発明は、一対の隣り合うボタンホール同士の関係で、互いに対する近位端及び遠位端を有するものであれば適用することができ、一対の隣り合うボタンの配列方向は、X方向とY方向に限られるものではない。近位端及び遠位端は、ボタンホール自体の端部である以外に、ボタンホールの一部分が糸で縫われるなどして形成されていてもよい。また、本発明は、ボタン自体の形状は問わずに適用可能であり、ボタンホールの大きさは、ボタンの形状・大きさ等を考慮して適宜決定すればよい。
【0037】
本発明のボタンとボタンホールの構造は、シャツやワイシャツのように、前面の中央に配設されたボタン列以外にも適用可能である。また、上衣以外にも、ブーツ、帽子、鞄など、一対のボタン及びボタンホールが設けられ得るものであれば、適用可能である。
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、不意に外れ難いボタンとボタンホールの構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 ボタンとボタンホールの構造
12 生地(ボタン側)
14 生地(ボタンホール側)
22,42 ボタン
24,44 連結部
32,52 ボタンホール
34,54 遠位端
36,56 近位端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7