【文献】
Journal of Heterocyclic Chemistry,2008年,Vol. 45,1005-1022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0005】
(発明の詳細な説明)
上記引用文献において、単独で、または化合物名の中(例えば、“アルキルチオ”または“ハロアルキル”など)のいずれかで使用される用語“アルキル”には、直鎖または分枝アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルまたは異なるブチル、ペンチルまたはヘキシルアイソマーが挙げられる。
【0006】
“アルコキシ”には、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシならびに異なるブトキシ、ペントキシおよびヘキシルオキシアイソマーが挙げられる。“アルキルチオ”には、分枝または直鎖アルキルチオ部分、例えば、メチルチオ、エチルチオ、および異なるプロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオおよびヘキシルチオアイソマーが挙げられる。
【0007】
“アルキルスルフィニル”には、アルキルスルフィニル基の双方の鏡像異性体を包含する。“アルキルスルフィニル”の例には、CH
3S(O)−、CH
3CH
2S(O)−、CH
3CH
2CH
2S(O)−、(CH
3)
2CHS(O)−および異なるブチルスルフィニルアイソマーが挙げられる。
【0008】
“アルキルスルホニル”の例には、CH
3S(O)
2−、CH
3CH
2S(O)
2−、CH
3CH
2CH
2S(O)
2−、(CH
3)
2CHS(O)
2−および異なるブチルスルホニルアイソマーが挙げられる。
【0009】
“N−アルキルアミノ”、“N,N−ジ−アルキルアミノ”などは、上記例と同様に規定される。
【0010】
“シクロアルキレン”には、例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、シクロヘプチレンまたはシクロオクチレン、好ましくはシクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、特にシクロペンチレン、シクロへキシレンが挙げられる。
【0011】
本発明に関する適切なビシクロアルキレンおよびトリシクロアルキレン基の例は、下記である:
【化9】
(式中、rおよびsは、各々他方とは独立して、整数0、1または2である)。
【0012】
好ましいビシクロアルキレン基の例には、スピロ−C
7−C
12−アルキレン、例えばスピロ−[3.3]ヘプチレン、スピロ−[3.4]オクチレンまたはスピロ−[4.4]ノニレン基が挙げられる。
【0013】
1または2個のヘテロ原子を含むビシクロ脂肪族基の例には、式:
【化10】
(ここで、rおよびsは、各々他方とは独立して、整数0、1または2である)の基が挙げられる。好ましいヘテロビシクロアルキレン基の例は、スピロ−ジアザ−C
5−C
10−アルキレン、例えば、1,6−または2,6−ジアザスピロ−[3.3]ヘプチレン、1,6−または2,6−ジアザスピロ−[3.4]オクチレンあるいは1,7−または2,7−ジアザスピロ−[4.4]ノニレンである。
【0014】
用語“ヘテロアリール”とは、環の中の環骨格を形成する少なくとも1つの原子が炭素ではない(例えば、窒素、酸素または硫黄である)環を表す。典型的には、複素環式環は、4個以下の窒素、2個以下の酸素、ならびに2個以下の硫黄を含有する。別段の記載がなければ、複素環式環は、飽和、部分不飽和または完全不飽和の環であり得る。完全不飽和の複素環式環がヒュッケル則を満たす場合に、該環はまた“ヘテロ芳香環”、“芳香族複素環式環”とも呼ばれる。別段の記載がなければ、複素環式環および環系は、該炭素または窒素に対して水素の置換により、あらゆる利用可能な炭素または窒素と結合され得る。
【0015】
適切なヘテロアリール基の例は、ピリジル、ピリミジル、s−チアジニル、1,2,4−チアジニル、チエニル、フラニル、ピリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、チアジアゾリルまたはオキサジアゾリル、好ましくはピリジル、ピリミジル、ピリル、イミダゾリルまたはチアゾリル、特に2−、3−または4−ピリジルである。
【0016】
用語“ハロゲン”、単独または化合物中の用語、例えば“ハロアルキル”は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。また、使用される化合物中の用語、例えば“ハロアルキル”、該アルキルは、同一または異なっていてもよいハロゲン原子により部分的または完全に置換されていてもよい。“ハロアルキル”の例には、F
3C−、ClCH
2−、CF
3CH
2−およびCF
3CCl
2−が挙げられる。用語“ハロシクロアルキル”、“ハロアルコキシ”、“ハロアルキルチオ”などは、用語“ハロアルキル”と同様に定義される。“ハロアルコキシ”の例には、CF
3O−、CCl
3CH
2O−、HCF
2CH
2CH
2O−およびCF
3CH
2O−が挙げられる。“ハロアルキルチオ”の例には、CCl
3S−、CF
3S−、CCl
3CH
2S−およびClCH
2CH
2CH
2S−が挙げられる。“ハロアルキルスルフィニル”の例には、CF
3S(O)−、CCl
3S(O)−、CF
3CH
2S(O)−およびCF
3CF
2S(O)−が挙げられる。“ハロアルキルスルホニル”の例には、CF
3S(O)
2−、CCl
3S(O)
2−、CF
3CH
2S(O)
2−およびCF
3CF
2S(O)
2−が挙げられる。
【0017】
置換基における炭素原子の全数は、“C
i−C
j”(式中、iおよびjは整数である)接頭辞により示される。例えば、C
1−C
4アルキルスルホニルは、メチルスルホニルからブチルスルホニルを表す;C
2−アルコキシアルキルはCH
3OCH
2を表す;C
3−アルコキシアルキルは、例えば、CH
3CH(OCH
3)、CH
3OCH
2CH
2またはCH
3CH
2OCH
2を表す;ならびに、C
4−アルコキシアルキルは、全数4個の炭素原子を含有するアルコキシ基により置換されたアルキル基の種々のアイソマーを表し、この例としてCH
3CH
2CH
2OCH
2およびCH
3CH
2OCH
2CH
2−が挙げられる。
【0018】
化合物が1を超えうる置換基の数を示す下付き文字が記載された置換基により置換される場合に、該置換基(それらが1を超える場合)は、定義される置換基の群から独立して選択される(例えば(R
2)
nにおいてnが1または2である)。
【0019】
“芳香族”とは、環原子の各々が主に同一平面に存在しており、かつ環の平面に対して垂直方向にsp軌道を有しており、この中の(4n+2)π電子(式中、nは正の整数である)は、環に関連しており、ヒュッケル則と一致することを示す。
【0020】
式(I)の化合物において、Z
1は、好ましくはNである。Z
2は、好ましくはNまたはCHであり、特にNである。好ましい一実施態様によれば、Z
1およびZ
2は各々Nである。さらに好ましい実施態様によれば、Z
1はNであり、かつZ
2はCHである。
【0021】
R
1、R
1’およびR
1’’は、各々独立して、好ましくはH、ハロゲン、C
1−C
4−アルキル、C
1−C
4−ハロアルキル、C
1−C
4−アルコキシ、C
1−C
4−ハロアルコキシ、C
1−C
4−アルキルチオ、アミノまたはN−モノ−またはN,N−ジ−C
1−C
4−アルキルアミノ、より好ましくはH、ハロゲン、C
1−C
2−アルキル、C
1−C
2−アルコキシ、C
1−C
2−アルキルチオまたはN,N−ジ−C
1−C
2−アルキルアミノであり、特にHまたはメチルである。R
1、R
1’およびR
1’’は、各々他方とは独立して、より好ましくはH、ハロゲン、C
1−C
2−アルキル、C
1−C
2−アルコキシ、C
1−C
2−アルキルチオまたはN,N−ジ−C
1−C
2−アルキルアミノである。最も好ましくは、2つのR
1、R
1’およびR
1’’がHであり、もう一方が好ましいものを含めた上記のような意味の一つを有している。特に、R
1およびR
1’’は各々Hであり、R
1’はHまたはメチル、特にHである。
【0022】
フェニルとしてのAr
1は、好ましくは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C
1−C
2−アルキル、C
1−C
2−ハロアルキル、C
1−C
2−アルコキシまたはC
1−C
2−ハロアルコキシルからなる群から選択される1または2個の同一または異なる置換基により置換されるフェニルである。特に好ましいフェニル基Ar
1は、ハロゲンおよびC
1−C
2−ハロアルキル、特に塩素、フッ素またはCF
3からなる群から選択される1または2個の同一または異なる基により置換されているフェニルである。特に好ましいフェニル基Ar
1は、CF
3、特に4−CF
3−フェニルにより一置換されたフェニルである。
【0023】
好ましいヘテロアリール基Ar
1またはAr
2は、2−、3−または4−ピリジル、あるいは2−または3−チオフェニル基であり、これは各々置換されていないか、または、例えばメチル、エチル、ハロゲン、CF
3またはカルボキシにより置換されている。
【0024】
フェニルとしてのAr
2は、好ましくはハロゲン、シアノ、ニトロ、C
1−C
4−アルキル、C
1−C
2−ハロアルキル、C
1−C
2−アルコキシ、C
1−C
2−ハロアルコキシル、C
1−C
2−アルキルチオ、C
1−C
2−ハロアルキルチオ、C
1−C
2−アルキルスルホニル、ハロ−C
1−C
2−アルキルスルホニル、アミノ、N−モノ−およびN,N−ジ−C
1−C
4−アルキルアミノ、アミノスルホニルならびにC
1−C
2−アルキルアミノスルホニルからなる群から選択される1または2個の同一または異なる置換基により置換されるフェニルである。さらにより好ましいフェニル基Ar
2は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C
1−C
4−アルキル、C
1−C
2−ハロアルキル、C
1−C
2−アルコキシ、C
1−C
2−ハロアルコキシル、C
1−C
2−ハロアルキルチオ、C
1−C
2−アルキルスルホニル、ハロ−C
1−C
2−アルキルスルホニル、アミノおよびC
1−C
2−アルキルアミノスルホニルからなる群から選択される1または2個の同一または異なる基により置換されているフェニルである。特に好ましいフェニル基のAr
2は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C
1−C
2−ハロアルキル、C
1−C
2−ハロアルコキシルまたはC
1−C
2−ハロアルキルチオからなる群から選択される1または2個の同一または異なる基により置換されているフェニルである。特に好ましいフェニル基のAr
2は、フッ素、シアノ、ニトロおよびCF
3からなる群から選択される1または2個の同一または異なる基により置換されているフェニルである。特に好ましい基Ar
2の例には、4−ニトロ−3−CF
3−フェニル、4−シアノ−3−CF
3−フェニル、3,4−ジ−CF
3−フェニル、4−CF
3−3−フルオロフェニル、3−CF
3−4−フルオロフェニル、4−ニトロフェニル、3−および4−CF
3−フェニル、4−シアノフェニル、4−OCF
3−フェニルならびに4−SCF
3−フェニル、特に4−ニトロ−3−CF
3−フェニルが挙げられる。
【0025】
基L
1およびL
2は、同一または異なっていてもよい、特に異なっていてもよい。
【0026】
基L
1に関して、以下の好ましい基が適用される:
(i)X
1は、好ましくはNH、N(C
1−C
2−アルキル)またはO、特にNHまたはN(CH
3)、特にNHであり、
(ii)p、p’およびp’’は、各々独立して好ましくは0であり、
(iv)mおよびnは、各々好ましくは0であり、
(v)可変基Aは、好ましくは非置換のヘテロ−シクロアルキレンまたはヘテロ−ビシクロアルキレン基であり、特にC
3−C
6−ヘテロ−シクロアルキレンまたはC
5−C
8−ヘテロ−ビシクロアルキレン(各々2つのN原子を含む)である。
Aは、より好ましくは、下記の基:
【化11】
(式中、sおよびrは、各々独立して、整数1または2であり、r’は、整数0、1または2であり;上記式において、sおよびrの一つが好ましくは1であり、もう一方が1または2であり、r’は好ましくは1または2、特に1である。特に好ましい基Aは、
【化12】
基(ピペラジン1,4−ジイル)である。
(vi)好ましい基のA
1は、式
【化13】
(式中、s’は、整数0、1または2であり、特に1または2である)
である。例は、基
【化14】
である。
(vii)好ましい基A
2は、式:
【化15】
(式中、s’は整数0、1または2である)。例は、基
【化16】
であり、特に基
【化17】
である。
(viii)好ましい基A
3は、C
2−C
4−アルキレンまたはC
3−C
6−シクロアルキレン基、特に1,2−エチレン、1,2−または1,3−プロピレン、1,3−または1,4−ブチレンあるいはC
5−C
6−シクロアルキレンである。
【0027】
好ましくは、L
1は、式:
【化18】
(IIa’)、
【化19】
(IIa’’)、
【化20】
(IIb’)、
【化21】
(IIc’)、または
*−X
2−A
3−X
3−** (IId’)
[式中、X
1、X
2およびX
3は、各々独立してNH、N(C
1−C
2−アルキル)またはO、特に各々NHまたはN(CH
3)であり、Yは−CH
2−、−NH−、−C(O)−または−S(O
2)−であり、特に−C(O)−または−S(O
2)−であり、p’’は0または1であり、r’は0、1または2であり、rおよびsは、各々独立して1または2であり、s’は整数0、1または2であり;ならびにA
3は、C
2−C
4−アルキレンまたはC
3−C
6−シクロアルキレンである]
の基である。
【0028】
さらにより好ましくは、L
1は、上記式(IIa’)、(IIa’’)、(IIb’)、(IIc’)または(IId’)の基であり、式中sおよびrの一つは1であり、もう一方が1または2であり、r’は0または1であり、s’は1または2であり、X
1、X
2およびX
3は、各々NHであり、p’’は0であり、A
4はC
2−C
4−アルキレンまたはC
5−C
6−シクロアルキレンである。
【0029】
特定の基L
1の例は、
【化22】
である。
【0030】
特に好ましい基L
1は、
【化23】
である。
【0031】
基L
2に関して、以下の好ましいものが適用される:
(i)X
4、X
5およびX
7は、各々独立して、好ましくはNH、N(C
1−C
2−アルキル)またはOであり、好ましくはNHまたはOであり、特に各々Oである。
(ii)X
6は、好ましくはNH、N(C
1−C
2−アルキル)またはO、特にNHまたはOであり、特にNHである。
(iii)qは、好ましくは0である。q’’は、好ましくは1である。tは、0または1であり、特に0である。
(iv)mおよびnは、各々好ましくは0である。
(v)Yは好ましくはメチレン、−C(O)−、−NH−または−S(O
2)−であり、特にメチレンまたは−C(O)−である;Y’は、好ましくはC(O)である;Y’’は好ましくはメチレンである。
(vi)Bは、好ましくは非置換ヘテロ−シクロアルキレンまたはヘテロ−ビシクロアルキレン基であり、特にC
3−C
6−ヘテロ−シクロアルキレン、特にC
3−C
4−ヘテロ−シクロアルキレン(2つのN原子を含む)である。特に好ましい基Bは、式:
【化24】
(式中、r’’は、0または1である)の基である。
(vii)好ましい基B
1は、式:
【化25】
(式中、s’’は整数0、1または2である)である。例は、基:
【化26】
である。特に、基
【化27】
である。
(viii)好ましい基B
2は、式:
【化28】
(式中、s’は、整数0、1または2であり、特に1または2である)である。例は、基
【化29】
または
【化30】
である。
(ix)好ましい基B
3は、C
2−C
4−アルキレンまたはC
3−C
6−シクロアルキレン基であり、特にC
3−C
6−シクロアルキレンである。特に好ましい基B
4は、
【化31】
【化32】
または
【化33】
である。
(x)好ましい基B
4は、ヘテロ−C
3−C
4−シクロアルキレン基であり、より好ましくはヘテロ原子X
5およびX
6を含むヘテロ−C
3−C
4−シクロアルキレン基であって、ここでX
5およびX
6、各々独立してOまたはNHである。特に好ましい基B
4は、
【化34】
である。
【0032】
L
2は、好ましくは、式:
【化35】
(IIIb’)、
【化36】
(IIIIc’)、
【化37】
(IIId*)、または
【化38】
(IIIe’)
(式中、Yは、−CH
2−、−NH−、−C(O)−または−S(O)
2−であり、tは、0または1であり、そしてX
5およびX
6は、各々独立してOまたはNHまたはN(C
1−C
2−アルキル)である)
の基である。
【0033】
L
2は、さらにより好ましくは、
式:
【化39】
(式中、Yは、−CH
2−、−NH−、−C(O)−または−S(O)
2−であり、tは、0または1であり、そしてX
4、X
5およびX
6は、各々独立してOまたはNHまたはN(CH
3)である)
の基である。
【0034】
L
2は、特に好ましくは、上記式(IIIb**)または(IIId**)の基である;特に好ましいものは、式(IIIb**)または(IIId**)の基であり、式中Yは、−CH
2−または−C(O)−であり、tは、0または1、特に0であり、X
5はOであり、X
6はNHまたはO、特にNHである。
【0035】
特定の基L
2の例示は、
【化40】
である。
【0036】
特に好ましい基L
2の例は、
【化41】
である。
【0037】
上記の基L
2において、シクロへキシレン基の場合において、trans-立体配置が一般的に好ましい。
【0038】
本発明の好ましい実施態様は、式:
【化42】
(Ia)
[式中、R
1およびR
1’の一つは、Hであり、もう一方はH、ハロゲン、C
1−C
4−アルキル、C
1−C
4−アルコキシ、C
1−C
4−アルキルチオあるいはアミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−C
1−C
4−アルキルアミノであり;
xおよびyは、各々独立して1、2または3であり;
R
2およびR
3は、各々他方とは独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C
1−C
4−アルキル、C
1−C
4−ハロアルキル、C
1−C
4−アルコキシ、C
1−C
4−ハロアルコキシル、C
1−C
4−アルキルチオ、ハロ−C
1−C
4−アルキルチオ、SF
5、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−C
1−C
4−アルキルアミノ、アミノスルホニル、N−モノ−またはN,N−ジ−C
1−C
4−アルキルアミノスルホニル、C
1−C
4−アルキルスルホニル、C
1−C
4−アルキルスルフィニル、C
1−C
4−アルキルスルホニルアミノ、ベンジルスルホニルアミノ、ハロ−C
1−C
4−アルキルスルホニル、ハロ−C
1−C
4−アルキルスルフィニルあるいはハロジオキソリルであり;ここで、xまたはyが2または3であるならば、2つまたは3つのR
2またはR
3基は各々同一または異なっていてもよく;
L
1は、式:
【化43】
であり、
L
2は、式:
【化44】
であり;
Yは、−CH
2−、−NH−、−C(O)−または−S(O)
2−であり;
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5およびX
6は、各々独立してO、NHまたはN(C
1−C
2−アルキル)であり;
r’は、0、1または2であり、rおよびsは、各々独立して1または2であり、s’は各々独立して整数0、1または2であり;p’’は0または1であり;tは0または1である;そして
A
3は、C
2−C
4−アルキレンまたはC
3−C
6−シクロアルキレンである]
の化合物、またはその生理学的に許容し得る塩に関する。
【0039】
本発明の特に好ましい実施態様は、上記式(Ia):
[R
1はHであり、R
1’はH、ハロゲン、C
1−C
4−アルキル、C
1−C
4−アルコキシ、C
1−C
4−アルキルチオ、あるいはアミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−C
1−C
4−アルキルアミノ、特にHまたはメチルであり;
xおよびyは、各々他方とは独立して1または2であり;
R
2およびR
3は、各々他方とは独立してハロゲン、シアノ、ニトロ、C
1−C
4−アルキル、C
1−C
2−ハロアルキル、C
1−C
2−アルコキシ、C
1−C
2−ハロアルコキシル、C
1−C
2−アルキルチオ、C
1−C
2−ハロアルキルチオ、C
1−C
2−アルキルスルホニル、ハロ−C
1−C
2−アルキルスルホニル、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−C
1−C
4−アルキルアミノ、アミノスルホニルあるいはC
1−C
2−アルキルアミノスルホニルであり;式中、xまたはyが2であるならば、この2つの基R
2またはR
3は、各々同一または異なっていてもよい;
L
1は、基
【化45】
または
【化46】
であり;そして
L
2は、基
【化47】
、
【化48】
、
【化49】
、または
【化50】
であり]
の化合物、またはその生理学的に許容し得る塩に関する。
【0040】
本発明の特に好ましい実施態様は、上記式(Ia):
(式中、R
1はHであり、R
1’はHまたはメチルであり;
xは、1または2、特に1であり、yは、1または2、特に2であり;
R
2は、ハロゲンまたはC
1−C
2−ハロアルキル、特にCF
3であり;
R
3は、フッ素、シアノ、ニトロまたはCF
3であり、特にニトロまたはCF
3であり;
(式中、xまたはyが2であるならば、この2つの基R
2またはR
3は互いに異なっており;
L
1は、基
【化51】
または
【化52】
であり、
L
2は、基
【化53】
または
【化54】
である]
の化合物、またはその生理学的に許容し得る塩に関する。
【0041】
本発明のさらに好ましい実施態様は、下記式:
【化55】
(式中、Ar
1およびAr
2について、上記した所定の意味および好ましいものが適用される)の化合物に関する。
【0042】
特に好ましい化合物は、式(Ib)、(Ib’)、(Ib’’)、(Ib’’’)または(Ib’’’’)であり、式中Ar
1は4−CF
3−フェニルであり、Ar
2は4−ニトロ−3−CF
3−フェニル、4−シアノ−3−CF
3−フェニル、3,4−ジ−CF
3−フェニル、4−CF
3−3−フルオロフェニル、3−CF
3−4−フルオロフェニル、4−ニトロフェニル、3−または4−CF
3−フェニル、4−シアノフェニル、4−OCF
3−フェニルまたは4−SCF
3−フェニル、特に4−ニトロ−3−CF
3−フェニルである。
【0043】
式(I)の化合物は、例えば、式(IV):
【化56】
(IV)
(式中、R
1、R
1’、Z
1およびZ
2は、各々上記のとおりであって、Q
1およびQ
2は、各々独立して脱離基、例えばハロゲン、特に塩素である)
の化合物を、
式(Va)および(Vb):
【化57】
(Va)および
【化58】
(Vb)
(式中、Ar
1、Ar
2、L
1およびL
2は、各々上記定義したとおりである)の各化合物と、自体既知の方法、特に上記式(IV)のピリジンまたはピリミジンの芳香族性求核置換に適切な溶媒において、連続的に反応させて製造することができる。反応条件は、用いる式(Va)または(Vb)の化合物の反応性によって変わる。末端ヒドロキシルまたはチオール基を有する式(Va)または(Vb)の化合物は、末端の第一級または第二級アミノ基を有する式(Va)または(Vb)の化合物よりも、例えば室温で双極性非プロトン溶媒において、式(IV)の化合物とより反応し易く、好ましくは双極性非プロトン溶媒において高温、例えば70〜120℃で、所望により触媒、例えばPd(OAc)
2、RuPhosなどの存在下で反応される。ハロピリジン類およびハロピリミジン類のこれらの芳香族性求核置換反応の特定の例は、例えばJ. Med. Chem. 2011, Vol 54, p.6563-6585, J. Med. Chem. 2009, Vol 52, p.5999-6011、またはChem. Science 2011, Vol.2, p.57-68より知られている。
【0044】
式(IV)の化合物は、既知であるか、または自体既知の方法により得ることができる。式(Va)および(Vb)の化合物は、同様に自体既知の方法により得ることができる、例えばハロゲン化化合物Ar
1またはAr
2と化合物H−L
1−HまたはH−L
2Hとの芳香族性求核置換により得ることができる。
【0045】
化合物Iの塩は、既知の方法により製造され得る。例えば、化合物Iの酸付加塩は、適切な酸または適切なイオン交換試薬を用いた処理により得ることができ、また塩基との塩は、適切な塩基または適切なイオン交換試薬を用いた処理により得ることができる。
【0046】
化合物Iの塩は、通常の手段により、例えば酸付加塩は、適切な塩基性組成物または適切なイオン交換試薬を用いる処理により、また塩基との塩、適切な酸または適切なイオン交換試薬により処理することにより、遊離の化合物Iへと変換され得る。
【0047】
化合物Iの塩は、既知の方法で、化合物Iのその他の塩へと変換され得る;例えば、酸付加塩は、他の酸付加塩へと変換され得る;例えば、適切な溶媒中で、ハイドロクロライドなどの無機酸の塩を、適切な金属塩(例えば、酸のナトリウム塩、バリウム塩、または酢酸銀などの銀塩)と共に用いて処理して、変換することができる(ここで、得られる無機塩(例えば、塩化銀)は不溶性であり、このため沈殿物がこの反応混合物から析出する)。
【0048】
方法および/または反応条件に応じて、塩形成特性を有する化合物Iは、遊離形態または塩形態で得られる。
【0049】
化合物Iは、その水和物の形態でも得ることが可能であり、および/または他の溶媒(例えば、固体形態で存在する化合物の結晶化に必要な場合に使用される溶媒)を含んでいてもよい。
【0050】
式Iの化合物は、所望により、光学異性体および/または幾何異性体、またはその混合物として存在し得る。本発明は、本明細書の全体にて立体化学的な詳細が全ての事例で具体的に明記されていない場合であっても、純粋な異性体および全ての可能な異性体混合物の両方に関すると理解される。
【0051】
幾つかの実施態様において、式(I)の化合物は、2以上の立体構造を有し得る。例えば、式(I)の化合物は、
(式中、L
2は、式
【化59】
の基である)
シス立体構造
【化60】
を有するか、または好ましくはトランス立体構造
【化61】
を有し得る。一般的に、特定の立体構造を示さない化合物構造には、化合物の可能な立体配座異性体の全てを含む、ならびに前記全ての可能な立体配座異性体またはただ一つの異性体を含んでいる組成物を含むと意図される。二置換シクロヘキシル環の場合には、トランス異性体が一般的に好ましい。
【0052】
前記方法または別の方法で得ることができる式(I)の化合物のジアステレオ異性体の混合物は、既知の方法において、それらの成分の物理的−化学的相違に基づいて、純粋なジアステレオ異性体へと、例えば分別結晶化、蒸留および/またはクロマトグラフィーによって分離され得る。
【0053】
このようにして得られる鏡像異性体の混合物の純粋な異性体への分割は、既知の方法によって、例えば、光学活性を有する溶媒からの再結晶化によって、キラル吸着物質上でのクロマトグラフィー[例えば、アセチルセルロース上での高速液体クロマトグラフィー(HPLC)]によって、適切な微生物の助けを借りる、特異的な固定された酵素による切断により、包接化合物の形成を通じて、例えば、キラルクラウンエーテルを用いて(この場合には、唯一つの鏡像異性体が錯化される)達成され得る。
【0054】
本発明に係る化合物(I)は、幅広い活性範囲に注目することができ、温血動物体内および温血動物体上(特に、家畜(livestock)及び飼育動物(domestic animal))の害虫の駆除[特に内部および外部寄生生物(特に蠕虫)の駆除]に使用するために重要な活性成分であるが、一方で温血動物および魚には十分耐容性である。
【0055】
本発明の文脈において、外部寄生生物とは、特に、昆虫、ダニおよびマダニであると理解される。これらには、鱗翅目、鞘翅目、同翅目、異翅目、双翅目、アザミウマ目、直翅目、シラミ目、ノミ目、食毛目、シミ目、等翅目、チャタテムシ目および膜翅目の昆虫が挙げられる。しかし、特に言及し得る外部寄生生物は、ヒトまたは動物に害を与えて病原体を伝播するもの、例えば、ムスカ・ドメスティカ(Musca domestica)、ムスカ・ベツスチッシマ(Musca vetustissima)、ムスカ・オータムナリス(Musca autumnalis)、ファンニア・カニキュラリス(Fannia canicularis)、サルコファガ・カルナリア(Sarcophaga carnaria)、ルシリア・キュプリナ(Lucilia cuprina)、ハイポデルマ・ボービス(Hypoderma bovis)、ハイポデルマ・リネアタム(Hypoderma lineatum)、クリソミア・クロロピガ(Chrysomyia chloropyga)、デルマトビア・ホミニス(Dermatobia hominis)、コクリオミイア・ホミニボラキス(Cochliomyia hominivorax)、ガステロフィラス・インテスティナリス(Gasterophilus intestinalis)、エストラス・オービス(Oestrus ovis)、ストモキシス・カルシトランス(Stomoxys calcitrans)、ヘマトビア・イリタンス(Haematobia irritans)などのハエ類、ならびに蚊科、ブユ科、チョウバエ科などの小昆虫(長角類)であり、さらに吸血寄生生物、例えば、クテノセファリデス・フェリス(Ctenocephalides felis)やクテノセファリデス・カニス(Ctenocephalides canis)(ネコおよびイヌノミ)、キセノプシラ・ケオピス(Xenopsylla cheopis)、ピュレックス・イリタンス(Pulex irritans)、デルマトフィラス・ペネトランス(Dermatophilus penetrans)などのノミ類、ダマリナ・オービス(Damalina ovis)、ペディキュラス・フマニス(Pediculus humanis)などのシラミ類、カミバエやウマバエ(アブ科)、ヘマトポタ・プルヴィアリス(Haematopota pluvialis)などのヘマトポタ(Haematopota)属種、タバヌス・ニグロビッタタス(Tabanus nigrovittatus)などのタバニデア属種、クリソプス・カエキュティエンス(Chrysops caecutiens)などのクリソプシナエ属種、グロッシニアの種などのツエツエバエ、咬む昆虫、特にブラテラ・ゲルマニカ(Blatella germanica)、ブラッタ・オリエンタリス(Blatta orientalis)、ペリプラネタ・アメリカーナ(Periplaneta americana)などのゴキブリ類、デルマニッサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)、サルコプテス・スカビエイ(Sarcoptes scabiei)、プソロプテス・オービス(Psoroptes ovis)およびプソレルガテス属種などのダニ類、最後に挙げるが重要なマダニ類である。これはダニ目(Acarina)に属する。ダニについての公知の例には、ブーフィラス(Boophilus)、アンブリオンマ(Amblyomma)、アノセントール(Anocentor)、デルマセントール(Dermacentor)、ヘマフィサリス(Haemaphysalis)、ヒアロンマ(Hyalomma)、イクソデス(Ixodes)、リピセントール(Rhipicentor)、マルガロプス(Margaropus)、リピセファラス(Rhipicephalus)、アルガス(Argas)、オトビウス(Otobius)およびオルニトドロス(Ornithodoros)などが挙げられ、これらは、好ましくは、ウシ、ブタ、ヒツジおよびヤギなどの家畜、ニワトリ、シチメンチョウおよびガチョウなどの家禽類、ミンク、キツネ、チンチラ、ウサギなどの毛皮を有する動物ならびにネコおよびイヌなどの飼育動物を含めた温血動物(ヒトも含まれる)に寄生する。
【0056】
本発明の式(I)の化合物は、正常な感受性を示す動物の害虫ならびに耐性を示す動物の害虫(例えば、昆虫およびダニ目のメンバーなど)の全ての生育段階または各生育段階に対しても活性を有する。本発明の活性物質の殺害虫効果、殺卵効果および/または殺ダニ効果は、直接的に(すなわち、即時または幾らかの時間経過後に害虫を死滅させる、例えば、脱皮が起った時または害虫の卵を破壊することによって死滅させる)または間接的に(例えば、産卵数および/または孵化率を低下させる)、少なくとも50〜60%の殺害虫率(死亡率)に相当する優れた効力を発揮することができる。
【0057】
化合物(I)は、特に、サルコファギダエ(Sarcophagidae)、アノフィリダエ(Anophilidae)およびキュリシダエ(Culicidae)科の双翅目;直翅目、網翅目(例えば、ブラッティダエ科)および膜翅目(例えば、フォルミシダエ科)の衛生上の害虫に対して使用することもできる。
【0058】
前記化合物は、蠕虫に対して特に有効であり、蠕虫のうちの内部寄生生物線虫および吸虫類は、哺乳動物および家禽(例えば、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、ロバ、イヌ、ネコ、モルモットまたは外来鳥類、特にヒツジまたはウシ)の深刻な病因であり得る。この徴候の典型的な線虫は、ヘモンクス属(Haemonchus)、トリコストロンギルス属(Trichostrongylus)、オステルタギア属(Ostertagia)、ネマトディラス属(Nematodirus)、クーペリア属(Cooperia)、アスカリス属(Ascaris)、ブノストナム属(Bunostonum)、エソファゴストナム属(Oesophagostonum)、チャルベルティア属(Charbertia)、トリチュリス属(Trichuris)、ストロンギラス属(Storongylus)、トリコネマ属(Trichonema)、ディクチオカウラス属(Dictyocaulus)、キャピラリア属(Capillaria)、ヘテラキス属(Heterakis)、トキソカラ属(Toxocara)、アスカリディア属(Ascaridia)、オキシウリス属(Oxyuris)、アンシロストーマ属(Ancylostoma)、ウンシナリア属(Uncinaria)、トキサスカリス・ディロフィラリア(Toxascaris Dirofilaria)、アカントケイロネマ属(Acanthocheilonema)およびパラスカリス属(Parascaris)である。吸虫には、特にファスシオリデアエ(Fasciolideae)科、特にファスシオラ・ヘパティカ(Fasciola hepatica)が挙げられる。
【0059】
驚くべきことに、また予想外に、式(I)の化合物はまた、多くの活性物質に対して耐性である線虫に対して非常に高い効力を有することが示され得る。このことは、LDA試験によるイン・ビトロならびにイン・ビボ(例えば、スナネズミにて)で実証できた。ヘモンクス・コントルタス(Haemonchus contortus)またはトリコストロンギルス・コルブリフォルミス(Trichostrongylus colubriformis)の感受性株を死滅させる活性物質の量は、ベンズイミダゾールまたはレバミソールに対して耐性である対応株を制御する際に十分に効果的でもある。
【0060】
ネマトディラス属、クーペリア属およびエソファゴストナム属の種の一部の害虫は、宿主動物の腸管に寄生するのに対して、ヘモンクス属およびオステルタギア属の種の他の害虫は胃の中に寄生し、ディクチオカウラス種の害虫は、肺組織の中に寄生する。フィラリイダエ(Filariidae)およびセタリイダエ(Setariidae)科の寄生生物は、内部の細胞組織中および臓器(例えば、心臓、血管、リンパ管および皮下組織)中で見出され得る。特に注目すべき寄生生物は、イヌの心糸状虫であるディロフィラリア・インミティス(Dirofilaria immitis)である。式(I)の化合物は、これらの寄生生物に対して極めて有効である。式(I)の化合物によって駆除され得る害虫には、扁形動物門条虫綱(サナダムシ)、例えば、メソセストイダエ(Mesocestoidae)の寄生生物、特にメソセストイド(Mesocestoides)属のもの、特にM.リネアタス(lineatus);ディレピディデ(Dilepidide)、特にディピリディウム・カニナム(Dipylidium caninum)、ジョイユーキシエラ(Joyeuxiella)属種、特にジョイユーキシエラ・パスクアリ(Joyeuxiella pasquali)、ならびにディプロピリディウム(Diplopylidium)属種およびテニア属(Taeniidae)、特にテニア・ピシフォルミス(Taenia pisiformis)、テニア・セルビ(Taenia cervi)、テニア・オービス(Taenia ovis)、テニア・ヒダティゲナ(Taneia hydatigena)、テニア・マルチセップス(Taenia multiceps)、テニア・テニアエフォルミス(Taenia taeniaeformis)、テニア・セリアリス(Taenia serialis)ならびにエキノコッカス(Echinocuccus)属種、最も好ましくはテニア・ヒダティゲナ、テニア・オービス、テニア・マルチセップス、テニア・セリアリス;エキノコッカス・グラニュロサス(Echinocuccus granulosus)、エキノコッカス・グラニュロサス(Echinococcus granulosus)およびエキノコッカス・マルチロキュラリス(Echinococcus multilocularis)、加えてマルチセップス・マルチセップス(Multiceps multiceps)も挙げられる。
【0061】
最も具体的には、イヌおよびネコの体表または体内のテニア・ヒダティゲナ、T.ピシフォルミス、T.オービス、T.テニアエフォルミス、マルチセップス・マルチセップス、ジョイユーキシエラ・パスクアリ、ディピリディウム・カニナム、メソセストイド属種、エキノコッカス・グラニュロサスおよびE.マルチロキュラリスは、ディロフィラリア属種、アンシロストーマ属種(Ancylostoma ssp.)、トキソカラ属種(Toxoxara ssp.)および/またはイヌ鞭虫(Trichuris vulpis)と同時に駆除される。同じく好ましいものは、上記線虫および条虫とともに、クテノセファリデス・フェリス(Ctenocephalides felis)および/またはC.ケイニス(C.canis)が同時に駆除される。
【0062】
さらに、式(I)の化合物は、ヒト病原性寄生生物の駆除に適切である。これらのうち、消化管内に出現する典型的な代表例は、アンシロストーマ(Ancylostoma)、ネカトール(Necator)、アスカリス(Ascaris)、ストロンギロイデス(Strongyloides)、トリキネラ(Trichinella)、キャピラリア(Capillaria)、トリチュリス(Trichuris)およびエンテロビウス(Enterobius)種のものである。本発明の化合物は、血液中、組織中および様々な臓器中に出現する、フィラリイダエ(Filariidae)科のウチェレリア属(Wuchereria)、ブルギア属(Brugia)、オンコセルカ属(Onchocerca)およびロア属(Loa)の寄生生物に対しても有効であり、特に胃腸管に寄生する、ドラクンキュラス(Dracunculus)ならびにストロンギロイデス(Strongyloides)およびトリキネラ(Trichinella)種の寄生生物に対しても有効である。
【0063】
本発明の式(I)の化合物の良好な殺害虫活性は、言及された害虫の少なくとも50〜60%の致死率に相当する。特に、式(I)の化合物は、効力が極めて長い持続性について注目すべきである。
【0064】
式(I)の化合物は、好ましくは修飾されていない形態で使用され、または好ましくは、製剤の分野で慣用されるアジュバントとともに使用され、こうして公知の様式で処理して、例えば、乳化可能な濃縮物、直接希釈可能な溶液、希釈用エマルジョン、可溶性粉末、顆粒またはポリマー性物質における微小封入体を提供できる。組成物の場合と同様に、適用の方法は、所定の目的および現行状況に従って選択される。
【0065】
式(I)の活性成分を含有する製剤、即ち、式(I)の活性成分を含有する薬剤、調製物もしくは組成物、または式(I)の活性成分と他の活性成分との(場合により、固体もしくは液体補助剤との)組み合わせは、自体既知の方法により、例えば、活性成分を、分散組成物と共に(例えば、溶媒、固体担体および場合によっては界面活性化合物(界面活性剤と共に)、十分に混合および/または粉砕することにより製造される。
【0066】
その溶媒は以下のものであってもよい:アルコール類、例えばエタノール、プロパノールまたはブタノール、グリコール類ならびにそのエーテル類およびエステル類、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールエーテル、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルまたはエチレングリコールエチルエーテル、ケトン類、例えばシクロヘキサノン、イソホロンまたはジアセタノールアルコール、強極性溶媒類、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドまたはジメチルホルムアミド、または水、植物性油類(例えば、アブラナ油、ヒマシ油、ココナツ油または大豆油など)、また適切な場合にはシリコン油など。
【0067】
蠕虫の駆除において温血動物に使用するための好ましい適用形態には、溶液、エマルジョン、懸濁液(飲薬)、食品添加物、粉剤、発泡性錠剤を含む錠剤、ボーラス剤、カプセル剤、ミクロカプセル剤およびポアオン製剤が挙げられるが、製剤用賦形剤の生理学的適合性を考慮に入れるべきである。
【0068】
錠剤およびボーラス用の結合剤は、水中またはアルコール中に可溶性である化学的に修飾されたポリマー性天然物質、例えばデンプン、セルロースまたはタンパク質誘導体類(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、タンパク質、例えばゼイン、ゼラチンなど)ならびに合成ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなど)であり得る。錠剤は、充填剤(例えば、デンプン、微結晶性セルロース、糖、ラクトースなど)、流動促進剤および崩壊剤も含有する。
【0069】
抗蠕虫剤が食用濃縮物の形態で存在する場合、使用される担体は、例えば、高機能食品(performance feed)、食用穀物またはタンパク質濃縮物である。このような食品濃縮物または組成物は、活性成分以外に、添加物、ビタミン、抗生物質、化学療法剤または他の殺虫剤(主には、細菌発育抑制剤、真菌発育抑制剤、コクシジウム発育抑制剤またはさらにホルモン調製物)、同化作用を有する物質、あるいは成長を促進するか、食肉処理用の動物の肉質に影響を及ぼすか、もしくは別の様式で生物にとって有益となる物質を含有してもよい。該組成物またはその中に含まれる式(I)の活性成分が餌料または水入れに直接添加される場合には、調合される餌料または飲料は、好ましくは約0.0005〜0.02重量%(5〜200ppm)の濃度で活性成分を含有する。
【0070】
本発明の式(I)の化合物は、単独または他の殺生物剤と組み合わせて使用され得る。式(I)の本願化合物は、同じ活性範囲を有する殺虫剤と共に、例えば活性を増加させるために、または例えば活性の範囲をより広げるために、別の活性範囲を有する物質と共に組み合わされ得る。いわゆる忌避剤を加えることは実用的でもある。活性の範囲を内部寄生生物まで拡張すべき場合には(例えば、駆虫剤)、式Iの化合物は内部寄生特性を有する物質と適切に組み合わされる。もちろん、式Iの化合物は、抗菌組成物と組み合わせて使用することもできる。式Iの化合物は殺成虫剤であるため、即ち式Iの化合物が標的とする寄生生物の成虫段階に対して特に有効であるので、寄生生物の幼若段階を代わりに攻撃する殺虫剤の追加は極めて有利であろう。このようにして、多大な経済的損害をもたらす寄生生物の最大部分が網羅される。さらに、この作用は、耐性の形成を回避することに実質的に寄与する。多くの組み合わせは、相乗効果ももたらし得る。即ち、活性成分の総量を低下させることが可能であり、このことは経済的観点から望ましい効果である。組み合わせパートナーの好ましい群、特に好ましい組み合わせのパートナーが以下に挙げられており、この場合の組み合わせは、式(I)の化合物の他にこれらのパートナーの1つ以上を含有し得る。
【0071】
混合物中の適切なパートナーは、殺生物剤、例えば、様々な活性の機序を有する殺虫剤および殺ダニ剤であってもよく、これは当業者には既知であって、例えばキチン合成阻害剤、成長抑制物質;幼若ホルモンとして作用する活性成分、殺成虫剤として作用する活性成分;広域殺虫剤、広域殺ダニ剤および殺線虫剤であり得、ならびに周知の抗蠕虫剤および昆虫および/またはダニ抑制物質、防虫剤、剥離剤および共力剤でもあり得る。
【0072】
適切な殺虫剤および殺ダニ剤の非限定的な例は、WO2009/071500、第18〜21頁の化合物番号1〜284に挙げられている。
【0073】
適切な抗蠕虫剤の非限定的な例は、WO2009/071500、第21頁の化合物番号(A1)−(A31)に挙げられている。
【0074】
適切な防虫剤および剥離剤の非限定的な例は、WO2009/071500、第21および22頁の化合物(R1)−(R3)に挙げられている。
【0075】
適切な共力剤の非限定的な例は、WO2009/071500、第22頁の化合物番号(S1)−(S3)に挙げられている。
【0076】
従って、本発明のさらなる重要な側面は、式(I)の化合物に加えて、同一または異なる活性の範囲を有する少なくとも1つのさらなる活性成分および少なくとも1つの生理学的に許容される担体を含有することを特徴とする、温血動物に対する寄生生物を駆除するための組み合わせ調製物に関する。本発明は、2つの組み合わせに限定されない。
【0077】
本発明の一実施形態において、式(I)の化合物は、1つ以上のさらなる抗蠕虫剤と組み合わせて使用される。このような組み合わせは、耐性が生じる可能性をさらに低減させ得る。適切な抗蠕虫剤がさらに含まれる。
【0078】
以下の例は、本発明をさらに説明するものである。
表1−3の最終欄における後記に報告された特徴分析は、逆相カラム(XTerra(登録商標)、MS C18 5 μm、50x4.6mm)を備えたWarters Autopurification(HPLC/MS)系を用いて行なわれる。サンプルは、m/zおよび保持時間により特徴分析される。各ケースにおける保持時間は、2つの異なる溶媒(溶媒A:H
2O+0.01%HCOOHならびに溶媒B:CH
3CN+0.01%HCOOH)を含む溶媒系の使用に関連する。この2つの溶媒AおよびBには、2.00ml/分の流速で下記の表に示される時間依存的なグラジエントを用いる。
【表1】
【実施例】
【0079】
実施例1(下記表中の番号23):
【化62】
4−ヒドロキシピペリジン(2.5g)および4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−ベンゾニトリル(4.7g)を、5時間、95℃、DMSO中で反応させて、4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−2−(トリフルオロメチル)−ベンゾニトリルを形成させて、水系後処理および単離の後に、DMF(10ml)に溶解させて、5℃でNaH(60%w/w)(250mg)と30分間反応させた。次いで、0℃で4,6−ジクロロピリミジン(2g)を、該混合物に添加して、30分間室温で攪拌して、4−{4−[(6−クロロピリミジン−4−イル)オキシ]−ピペリジン−1−イル}−2−(トリフルオロメチル)−ベンゾニトリルを形成させた。水系後処理およびカラムクロマトグラフィーによる単離による単離物(115mg)を、85℃で終夜tert−BuOH(2ml)中のCsCO
3(117mg)、Pd(OAc)
2(7mg)、RuPhos(21mg)の存在下で、1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペラジン(138mg)と反応させて、水系後処理およびカラムクロマトグラフィーによる単離後に化合物番号23を得た。
【0080】
実施例2(下記表中の番号88):
【化63】
実施例1に記載の方法を用いて製造した4−{4−[(6−クロロピリミジン−4−イル)オキシ]ピペリジン−1−イル}−2−(トリフルオロメチル)−ベンゾニトリル(100mg)を、6時間80℃でトリエチルアミン(0.18ml)の存在下において、NMP(2ml)中の1−(4−クロロフェニル)ピペラジンジハイドロクロライド(84mg)と反応させて、カラムクロマトグラフィーによる単離の後に化合物番号88を得た。
【0081】
下記表1〜3に示した物質を上記方法と同様に製造した。その中で、下記の省略形を、基 *−L
1−** および **−L
2−* について使用した:
【表2】
【表3】
【0082】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
【表9】
【0085】
新規化合物の駆虫薬としての可能性を、以下の試験において評価した:
胃腸の幼虫成育アッセイ
新規に採集し、かつ洗浄した回虫の卵細胞を使用して、駆虫薬活性について評価される試験物質を含有する適切に調製されたウェルプレートに播種して、培地上で第三齢の幼虫になるまで卵を完全に発育させた。このプレートを、6日間、25℃、60%相対湿度でインキュベートする。殺線虫活性の可能性を同定するために、卵細胞の孵化およびその後の幼虫成育を記録する。効力は、低下した卵孵化、L3の低下した発育またはあらゆる段階の幼虫の麻痺および死亡を%にて表す。化合物番号2、6−9、11、14、15、17、19、20、23、25、53、57、58、61、62、69、71、79、80、82、84、85、87、88−90、99−102、106、118、121−124、および131は、10ppmで、
>50%効力に達したため、有効であると判定した。
【0086】
アレチネズミにおける胃腸蠕虫
アレチネズミに、T.コルブリフォルミスおよびH.コントルタスの約2000匹の第三齢幼虫を用いて、各々治療7日および6日前に胃管を介して人為的に寄生させた。製剤された試験化合物を用いる治療を、経口的(p.o.)または皮下的(s.c.)に行なう。治療3日後に、アレチネズミを安楽死させ、切開して、H.コントルタスを胃から採取して、T.コルブリフォルミスを中腸の上部から採取した。
【0087】
効力は、アボット方程式を用いてプラセボ処理群と比較して、蠕虫数の減少の%として示した。化合物番号2、19、96および101は、32mg/kg(p.o.またはs.c.)でアレチネズミにおいて80%を超える効力を示したため、有効であると判定した。
【0088】
ディロフィラリア・イミティスのミクロフィラリアアッセイ
新規に採集し、かつ洗浄したディロフィラリア・イミティスのミクロフィラリアを、ドナー動物のイヌの血液から調製した。次いで、ミクロフィラリアを、試験物質を含む調製済みのマイクロプレートに配分して、駆虫薬活性について評価する。このプレートを、48時間25℃で60%の相対湿度(RH)にてインキュベートする。次いで、ミクロフィラリアの死亡率を、記録して、効力を決定する。効力を、コントロールおよび標準物と比較して、減少した死亡率を%にて表す。化合物番号1−11、13−26、28−54、57−90、99−104、106−110、118−125および127−131は、30ppmで50%を超える効力を示したため、有効であると判定した。
【0089】
アレチネズミにおけるA.ヴィータ
アレチネズミに、80匹のA.ヴィータの第三齢幼虫を用いて皮下注射により人為的に寄生させる。
製剤化した試験化合物を用いる強制経口投与(p.o.)または皮下注射(s.c.)による治療は、寄生後5日〜9日間連続的に行なう。寄生84日間後、アレチネズミを、フックス‐ローゼンタール計算板と顕微鏡を用いて、血液循環しているミクロフィラリア数を計測するために飼育する。プラセボ処置群のものよりも、平均血液循環ミクロフィラリアが少なくとも50%以下である試験群のみを、成虫を採取するために完全に解剖する。効力は、アボットの式を用いて、プラセボ処置群と比較した虫の数の低下を%として表す。化合物番号2(3mg/kg p.o.で)、6(32mg/kg p.o.で)、18(10mg/kg p.o.で)、57(32mg/kg p.o.で)、65(32mg/kg p.o.で)、80(32mg/kg p.o.で)、90(10mg/kg p.o.で)および104(23mg/kg s.c.で)は、90%を超える効力を示したため、有効であると判定した。