(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、ハイブリッド自動車(HEV)の電源を構成する電池システムに対して本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
【0009】
また、以下の実施形態では、リチウムイオン電池を採用した場合を例に挙げて説明するが、他にもニッケル水素電池、鉛電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパシタなどを用いることもできる。なお、以下の実施形態では単電池を直列に接続して組電池を構成しているが、単電池を並列接続したものを直列接続して組電池を構成してもよいし、直列接続した単電池を並列接続して組電池を構成してもよい。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池制御システム120を含む電池システム100とその周辺の構成を示す図である。電池システム100は、リレー300と310を介してインバータ400に接続される。電池システム100は、組電池110と電池制御システム120を備える。電池制御システム120は、単電池制御部121a、121bと、電流検知部130と、電圧検知部140と、組電池制御部150と、記憶部180とを備える。
【0011】
組電池110は、複数の単電池111からそれぞれ構成された単電池群112a、112bを直列に接続して構成されている。単電池制御部121aおよび121bは、単電池群112a、112bとそれぞれ接続されており、これらの単電池群を構成する各単電池111の電池電圧(両端電圧)や温度を検知して、その検知結果を示す信号を、信号通信路160および絶縁素子170を介して組電池制御部150に送信する。なお、絶縁素子170には、たとえばフォトカプラが用いられる。
【0012】
電流検知部130は、組電池110に流れる電流を検知してその電流値を測定する。電圧検知部140は、組電池110の両端電圧、すなわち組電池110において直列接続された単電池111の総電圧を検知する。
【0013】
組電池制御部150は、単電池制御部121a、121bから送信された信号に基づいて、各単電池111の電池電圧および温度を取得する。また、電流検知部130からは組電池110に流れる電流値を、電圧検知部140からは組電池110の総電圧値をそれぞれ受け取る。これらの情報に基づいて、組電池制御部150は、組電池110の状態を検知し、組電池110を制御する。組電池制御部150による組電池110の状態検知の結果は、単電池制御部121a、121bや車両制御部200に送信される。
【0014】
組電池110は、電気エネルギーの蓄積および放出(直流電力の充放電)が可能な複数の単電池111を電気的に直列に接続して構成されている。組電池110を構成する単電池111は、状態の管理・制御を実施する上で、所定の単位数ごとにグループ分けされている。グループ分けされた各単電池111は、電気的に直列に接続され、単電池群112a、112bを構成している。なお、単電池群112を構成する単電池111の個数は、全ての単電池群112において同数でもよいし、単電池群112毎に単電池111の個数が異なっていてもよい。本実施形態では、説明を簡略化するために、
図1に示すように、4個の単電池111を電気的に直列接続して単電池群112aと112bをそれぞれ構成し、これらの単電池群112aと112bをさらに電気的に直列接続することで、合計8個の単電池111を組電池110が備えることとした。
【0015】
ここで、組電池制御部150と、単電池制御部121aおよび121bとの間の通信方法について説明する。単電池制御部121aおよび121bは、それぞれが監視する単電池群112aおよび112bの電位の高い順にしたがって直列に接続されている。組電池制御部150から送信された信号は、絶縁素子170および信号通信路160を介して単電池制御部121aに入力される。単電池制御部121aの出力は、信号通信路160を介して単電池制御部121bに入力される。最下位の単電池制御部121bの出力は、絶縁素子170および信号通信路160を介して組電池制御部150へと伝送される。なお、本実施形態では、単電池制御部121aと単電池制御部121bの間には絶縁素子が設けられていないが、絶縁素子を介してこれらの間で信号を送受信することもできる。
【0016】
記憶部180には、組電池制御部150が組電池110の制御を行うために必要な各種の情報が記憶されて格納されている。たとえば、各単電池111の充電状態(SOC:State Of Charge)に関する情報や、各単電池111の内部抵抗に関する情報などが、記憶部180に格納されている。
【0017】
組電池制御部150は、単電池制御部121a、121b、電流検知部130、電圧検知部140、および車両制御部200からそれぞれ受け取った情報や、記憶部180に格納されている情報などを用いて、組電池110を制御するための各種の処理や演算を実行する。たとえば、各単電池111のSOCや劣化状態(SOH:State of Health)の演算、組電池110において充放電可能な許容電力の演算、組電池110の異常状態の判定、組電池110の充放電量を制御するための演算などを実行する。そして、これらの演算結果に基づいて、組電池110の制御に必要な情報を単電池制御部121a、121bや車両制御部200に出力する。なお、組電池制御部150と車両制御部200は、CAN(Controller Area Network)と呼ばれる車両内の通信ネットワークにそれぞれ接続されており、これを介して互いの情報を送受信することができる。
【0018】
車両制御部200は、組電池制御部150から送信される情報を用いて、リレー300と310を介して電池システム100と接続されたインバータ400を制御する。車両走行中には、電池システム100はインバータ400と接続される。インバータ400は、電池システム100において組電池110に蓄えられているエネルギーを用いて、モータジェネレータ410を駆動する。
【0019】
電池システム100を搭載した車両システムが始動して走行する場合には、車両制御部200の管理のもとで、電池システム100はインバータ400に接続される。そして、組電池110に蓄えられているエネルギーを用いて、インバータ400によりモータジェネレータ410が駆動される。一方、回生時には、モータジェネレータ410の発電電力により組電池110が充電される。
【0020】
リレー320、330を介して電池システム100が充電器420に接続されると、充電器420から供給される充電電流により、組電池110が所定の条件を満たすまで充電される。充電によって組電池110に蓄えられたエネルギーは、次回の車両走行時に利用されると共に、車両内外の電装品等を動作させるためにも利用される。さらに、必要に応じて、家庭用の電源に代表される外部電源へも放出される場合がある。なお、充電器420は、家庭用電源、または電気スタンドに代表される外部の電源に搭載されている。電池システム100を搭載した車両がこれらの電源に接続されると、車両制御部200が発信する情報に基づき、電池システム100と充電器420が接続される。
【0021】
図2は、単電池制御部121aの回路構成を示す図である。
図2に示すように、単電池制御部121aは、電圧検知部122、制御回路123、信号入出力回路124、および温度検知部125を備える。なお、
図1の単電池制御部121aと単電池制御部121bは、同様の回路構成を有している。そのため、
図2ではこれらを代表して、単電池制御部121aの回路構成を示している。
【0022】
電圧検知部122は、各単電池111の端子間電圧(両端電圧)を測定する。制御回路123は、電圧検知部122および温度検知部125から測定結果を受け取り、信号入出力回路124を介して組電池制御部150に送信する。なお、
図2では図示を省略しているが、単電池制御部121aには、自己放電や消費電流のばらつき等に伴い発生する単電池111間の電圧やSOCのばらつきを均等化するための周知の回路構成が設けられている。この回路の動作は、制御回路123によって制御される。
【0023】
図2において、温度検知部125は、単電池群112aの温度を測定する機能を有する。温度検知部125は、単電池群112aの全体に対して1つの温度を測定し、単電池群112aを構成する各単電池111の温度の代表値としてその温度を取り扱う。温度検知部125による温度測定結果は、組電池制御部150において、単電池111、単電池群112a、および組電池110の状態を検知するための各種演算に用いられる。このとき、温度検知部125が測定した温度は、単電池群112aの温度だけでなく、単電池群112aの各単電池111の温度としても扱われる。さらに、単電池制御部121aの温度検知部125で測定された単電池群112aの温度と、単電池制御部121bの温度検知部125で測定された単電池群112bの温度とに基づいて、たとえばこれらを平均化することで、組電池制御部150において組電池110の温度を求めてもよい。
【0024】
なお、
図2では、単電池制御部121aに1つの温度検知部125を設けた例を示している。これ以外にも、単電池111毎に温度検知部125を設けて、単電池111毎に温度を測定し、その測定結果に基づいて組電池制御部150が各種演算を実行することもできる。しかし、このようにした場合は、温度検知部125の数が多くなる分、単電池制御部121aの構成が複雑となる。あるいは、組電池110の全体に対して1つの温度検知部125を設けてもよい。
【0025】
なお、
図2では温度検知部125を簡易的に1つのブロックで示しているが、実際は、温度測定対象である単電池群112aに対して温度センサが設置されており、この温度センサが温度情報を電圧信号として出力する。この電圧信号に基づいて、制御回路123により単電池群112aの温度を演算することで、単電池群112aの温度測定結果が得られる。制御回路123が演算した温度測定結果を信号入出力回路124に送信すると、信号入出力回路124は、その温度測定結果を単電池制御部121aの外に出力する。この一連の流れを実現するための機能が、単電池制御部121aに温度検知部125として実装されている。なお、温度センサから出力される電圧信号の測定を、電圧検知部122において行ってもよい。
【0026】
次に、組電池110に対する充放電制限について説明する。
図3は、一般的な電池の温度と実効電流の許容値の関係の一例を示す図である。
図3に示すように、電池の実効電流の許容値は、温度によって変化する。すなわち、温度が低くなるほど、低い実効電流から高負荷使用時の劣化曲線を示すため、許容値を低く設定する必要がある。
【0027】
図4は、電池の使用サイクル数と劣化度の関係の一例を示す図である。
図4において破線で示すように、実効電流が許容値以下である通常使用時には、電池の使用サイクル数の増加に伴って電池の劣化が徐々に進行していく。一方、
図4において実線で示すように、実効電流が許容値を超えている高負荷使用時には、電池の使用サイクル数の増加に伴って一時的に内部抵抗値が上昇することで、電池の劣化が急激に進んだように見えてしまう。このような場合、電池の性能を十分に発揮できなくなる。
【0028】
そこで、本実施形態の電池制御システム120では、低温状態での組電池110の性能劣化を防ぐための充放電制限が組電池制御部150において行われる。以下では、この充放電制限について詳しく説明する。
【0029】
図5は、充放電制限に関する組電池制御部150の制御ブロックを示す図である。組電池制御部150は、組電池110の充放電制限を行うための構成として、実効電流値算出部151、温度履歴記録部152、および充放電制限部153の各制御ブロックを機能的に有する。
【0030】
実効電流値算出部151には、電流検知部130によって測定された組電池110の充放電電流の電流値が入力される。実効電流値算出部151は、入力された電流値に基づいて、組電池110に流れる充放電電流の実効電流値を算出する。この実効電流値の算出方法の詳細については、後で説明する。実効電流値算出部151により算出された実効電流値は、温度履歴記録部152に出力される。
【0031】
温度履歴記録部152には、温度検知部125によって検知された組電池110の温度が入力される。温度履歴記録部152は、実効電流値算出部151により算出された実効電流値が所定値以上であれば、入力された温度の履歴を所定時間ごとに記録する。なお、実効電流値が所定値未満であれば、温度履歴記録部152において温度履歴の記録は行われない。温度履歴記録部152により記録された温度の履歴は、充放電制限部153に出力される。
【0032】
なお、温度履歴記録部152において、実効電流値が所定値以上であるか否かに関わらず、温度履歴を常に記録してもよい。この場合は、組電池制御部150に実効電流値算出部151を設けなくてもよい。
【0033】
充放電制限部153は、温度履歴記録部152に記録された温度の履歴に基づいて、所定の継続時間における組電池110の最高温度を求め、この最高温度に基づいて、組電池110の充放電電流を制限すべきか否かを判断する。そして、充放電電流を制限すべきと判断した場合は、制限後の充放電電流に応じた許容電力の値を決定し、単電池制御部121a、121bや車両制御部200に出力する。これにより、組電池110に対する充放電制限を行い、充放電電流を制限する。
【0034】
以上説明したような制御ブロックにより、組電池制御部150は、組電池110に対して低温状態での二段階の充放電制限を行うことができる。具体的には、第1段階の充放電制限として、組電池110の最高温度を所定の第1のしきい値と比較し、第1のしきい値よりも低い場合に充放電制限を行う。また、第2段階の充放電制限として、組電池110の最高温度を第1のしきい値よりも低い所定の第2のしきい値と比較し、第2のしきい値よりも低い場合にさらなる充放電制限を行う。
【0035】
図6は、上記の充放電制限を行うための処理のフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、組電池制御部150において、所定の処理周期ごとに実行される。
【0036】
ステップS11において、組電池制御部150は、組電池110の充放電が開始されてから、または前回温度履歴を記録してから30分を経過したか否かを判定する。30分を経過していればステップS12へ進み、経過していなければ
図6のフローチャートの処理を終了する。なお、ここでは30分間隔で温度履歴を記録する場合を例としているが、温度履歴を記録する時間間隔は30分に限定されず、たとえば10分や1時間であってもよい。組電池制御部150において温度履歴を記録する時間間隔に応じて、ステップS11の判定が行われる。
【0037】
ステップS12において、組電池制御部150は、電流検知部130からの電流測定値を取得する。ここでは、電流検知部130から所定のサンプリング間隔で出力される電流測定値をそれぞれ取得して記憶する。
【0038】
ステップS13において、組電池制御部150は、ステップS12で取得した電流測定値に基づいて、実効電流値算出部151により、所定のタイムウインドウにおける実効電流値を算出する。ここでは、たとえばタイムウインドウの長さをステップS11の判定に用いた30分として、直近の30分間で所定のサンプリング間隔ごとに取得した各電流測定値の二乗平均値を求め、その二乗平均値の平方根を算出することにより、実効電流値を算出することができる。なお、ステップS13において実効電流値を算出するタイムウインドウの長さは、これ以外であってもよい。
【0039】
ステップS14において、組電池制御部150は、温度履歴記録部152により、ステップS13で算出した実効電流値を所定の基準値と比較する。ここでは、たとえば基準値を10Aとして、実効電流値が10Aよりも大きいか否かを判断する。その結果、実効電流値が基準値(10A)よりも大きければステップS15に進み、基準値未満であれば
図6のフローチャートの処理を終了する。
【0040】
ステップS15において、組電池制御部150は、温度履歴記録部152により、組電池110の温度を測定する。ここでは、温度検知部125から出力される温度検知の結果を取得することにより、組電池110の温度測定を行う。
【0041】
ステップS16において、組電池制御部150は、温度履歴記録部152により、ステップS15で測定した組電池110の温度を現在(最新)の温度履歴として、温度履歴を記録する。たとえば、温度履歴記録部152において温度履歴がテーブル化して記録されている場合、この温度履歴テーブルの該当する欄にステップS15の温度測定結果を新たに記録して、温度履歴テーブルの内容を更新する。これにより、ステップS16において温度履歴の記録を行うことができる。
【0042】
図7は、温度履歴記録部152に記録されている温度履歴テーブルの一例を示す図である。この
図7では、現在(最新)から2時間前までの組電池110の温度履歴が30分間隔で連続的に記録されている温度履歴テーブルの例を示している。
【0043】
温度履歴記録部152は、車両システムが動作状態であり、組電池110が継続的に充放電されているときには、
図7に例示したような温度履歴テーブルを用いて、所定時間ごとに組電池110の温度履歴を記録することができる。なお、
図7の温度履歴テーブルを用いた場合、車両システムが動作停止状態となり組電池110の充放電が停止されたら、温度履歴記録部152は、それまでに温度履歴記録部152に記録された温度履歴テーブルの内容を消去することが好ましい。この場合、次に組電池110の充放電が開始されたときには、新たな温度履歴テーブルを用いて、組電池110の温度履歴の記録を再開することが好ましい。
【0044】
図8は、温度履歴記録部152に記録されている温度履歴テーブルの他の一例を示す図である。この
図8では、現在(最新)から3時間前までの組電池110の温度履歴が30分間隔で断続的に記録されている温度履歴テーブルの例を示している。なお、
図8において、1時間前の温度履歴を示す欄および2時間前の温度履歴を示す欄には、組電池110が非充放電状態であったことを表すために、無効値を示す「×」が記録されている。
【0045】
温度履歴記録部152は、車両システムが動作状態と非動作状態を繰り返しており、組電池110が断続的に充放電されているときには、
図8に例示したような温度履歴テーブルを用いて、所定時間ごとに組電池110の温度履歴を記録することができる。なお、
図8の温度履歴テーブルを用いた場合、車両システムが動作停止状態となり組電池110の充放電が停止されても、温度履歴記録部152は、そのまま温度履歴の記録を続けることが好ましい。この場合、組電池110が非充放電状態であったときの温度履歴には、前述のように無効値を記録することが好ましい。
【0046】
図6に戻り、ステップS17において、組電池制御部150は、充放電制限部153により、温度履歴記録部152において組電池110の温度履歴が所定の継続時間以上記録されたか否かを判定する。温度履歴が所定の継続時間、たとえば2時間以上記録されている場合はステップS18に進み、記録されていない場合は
図6のフローチャートの処理を終了する。この継続時間は、組電池110の温度が充放電中に平衡に達するまでの時間に応じて設定されることが好ましい。
【0047】
なお、前述の
図8のような温度履歴テーブルを用いることで、組電池110の非充放電期間においても温度履歴を記録し続けた場合、ステップS17における継続時間の判定は、この非充放電期間を除いて行うことが好ましい。具体的には、
図8の温度履歴テーブルにおいて、1時間前および2時間前の温度履歴の欄には、無効値を示す「×」がそれぞれ記録されている。そのため、ステップS17の判定では、これらの欄をスキップして、
図8の温度履歴テーブルには2時間分に相当する温度履歴が記録されているものとして取り扱うことができる。
【0048】
ステップS18において、組電池制御部150は、温度履歴記録部152に記録されている組電池110の温度履歴に基づいて、充放電制限部153により、前述の継続時間内における組電池110の最高温度を求める。ここでは、現在よりも継続時間だけ前の時点から現在までに記録された温度履歴の中で最も高い温度を選択することで、継続時間内での組電池110の最高温度を求めることができる。
【0049】
たとえば、前述のように継続時間を2時間とした場合、
図7の温度履歴テーブルでは、2時間前から現在までの間に連続して記録された2時間分、合計5つの温度履歴の中から最高温度が選択される。この場合、現在の温度(−9℃)が最も高い。そのため、ステップS18において、組電池110の最高温度は−9℃であると求められる。
【0050】
一方、
図8の温度履歴テーブルでは、無効値の部分を除いて、3時間前から現在までの間に断続的に記録された2時間分、合計5つの温度履歴の中から最高温度が選択される。この場合も、
図7の場合と同様に、現在の温度(−9℃)が最も高い。そのため、ステップS18において、組電池110の最高温度は−9℃であると求められる。
【0051】
以上説明したようにして、温度履歴記録部152により記録された組電池110の温度履歴に基づいて、充放電制限部153において、組電池110が所定の継続時間以上継続的または断続的に充放電されたときの組電池110の最高温度を求めることができる。
【0052】
ステップS19において、組電池制御部150は、充放電制限部153により、ステップS18で求めた組電池110の最高温度を所定の第1のしきい値と比較する。その結果、最高温度が第1のしきい値よりも低ければステップS20に進み、第1のしきい値以上であれば
図6のフローチャートの処理を終了する。
【0053】
ステップS20において、組電池制御部150は、充放電制限部153により、ステップS18で求めた組電池110の最高温度を所定の第2のしきい値と比較する。この第2のしきい値には、ステップS19の判定に用いた第1のしきい値よりも低い値が設定される。その結果、最高温度が第2のしきい値以上であればステップS21に進み、第2のしきい値よりも低ければステップS22に進む。
【0054】
なお、以上説明したステップS19、S20の各判定における第1、第2のしきい値は、ステップS17の判定に用いられた継続時間の長さに応じてそれぞれ設定されることが好ましい。
図9は、継続時間および第1、第2のしきい値の設定値の一例を示す図である。
図9に示すように、継続時間が2時間の場合には、第1のしきい値および第2のしきい値として、たとえば5℃、−5℃がそれぞれ設定される。これに対して、継続時間の設定値が4時間、8時間と長くなるにつれて、第1のしきい値は15℃、25℃、第2のしきい値は0℃、5℃と、それぞれの設定値が順次大きくなる。なお、これらの設定値はあくまで一例であるため、実際の設定値はこの限りではない。
【0055】
ステップS21において、組電池制御部150は、充放電制限部153により、組電池110に対する第1段階の充放電制限を実施する。具体的には、
図3に示したような温度と実効電流の許容値の関係に基づいて、制限後の充放電電流に応じた許容電力値を決定し、その値を単電池制御部121a、121bや車両制御部200に出力することで、充放電時の組電池110の入出力電力が許容電力以下となるように制御する。ステップS21を実行したら、組電池制御部150は
図6のフローチャートの処理を終了する。
【0056】
ステップS22において、組電池制御部150は、充放電制限部153により、組電池110に対する第2段階の充放電制限を実施する。具体的には、上記のステップS21と同様に、制限後の充放電電流に応じた許容電力値を決定し、その値を単電池制御部121a、121bや車両制御部200に出力することで、充放電時の組電池110の入出力電力が許容電力以下となるように制御する。なお、このとき制限後の充放電電流としては、ステップS21における制限後の充放電電流よりも低い値とすることが好ましい。ステップS22を実行したら、組電池制御部150は
図6のフローチャートの処理を終了する。
【0057】
以上説明したような処理を組電池制御部150において実行することで、組電池110に対して低温状態での二段階の充放電制限を行うことができる。
【0058】
図10は、第1段階および第2段階の充放電制限の実施により実効電流が変化する様子の一例を示す図である。
図10に示すように、充放電制限が行われずに組電池110が通常に使用されている時刻Taまでの間は、実効電流が比較的に高いが、時刻Taにおいて第1段階の充放電制限が実施されると、その後は実効電流が低いレベルに抑えられていることが分かる。さらに、その後の時刻Tbにおいて第2段階の充放電制限が実施されると、その後は実効電流がより一層低いレベルに抑えられていることが分かる。
【0059】
なお、ステップS21により第1段階の充放電制限が実施された場合は、次回以降の処理でステップS19の判定結果が否定判定となることで、充放電制限が解除される。
【0060】
一方、ステップS22により第2段階の充放電制限が実施された場合は、次回以降の処理でステップS19やステップS20の判定結果が否定判定となっても、第1段階の充放電制限の場合とは異なり、充放電制限が解除されない。この場合は、ステップS22で充放電制限を開始してからの経過時間を算出し、その経過時間が所定の制限解除時間を超えたときに、ステップS22で開始した組電池110に対する充放電制限を解除することが好ましい。具体的には、ステップS22で充放電制限を開始する前の許容電力値を単電池制御部121a、121bや車両制御部200に出力することで、充放電時の組電池110の入出力電力に対する許容電力を元の状態に戻すように制御すればよい。
【0061】
なお、上記の処理では、たとえば組電池制御部150に内蔵されたタイマを用いて、充放電制限を開始してからの経過時間を算出することができる。あるいは、前述のCANを介した通信により、充放電制限を開始してからの経過時間の情報を
図1の車両制御部200から取得し、この情報に基づいて経過時間を算出してもよい。なお、充放電制限を開始した後に車両システムが停止しており、電池制御システム120が非動作状態であった場合は、その期間も含めて経過時間を算出することが好ましい。
【0062】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0063】
(1)電池制御システム120は、組電池110と接続され、組電池110の充放電を制御する。この電池制御システム120は、組電池110に流れる電流を検知して電流値を測定する電流検知部130と、組電池110の電圧を検知する電圧検知部140と、組電池110の温度を検知する温度検知部125と、組電池制御部150とを備える。組電池制御部150は、温度検知部125により検知された温度の履歴を記録する温度履歴記録部152と、温度履歴記録部152により記録された温度の履歴に基づいて、低温状態での充放電電流を制限する充放電制限部153とを機能的に有する。このようにしたので、低温状態での充放電制限を適切に行うことができる。
【0064】
(2)充放電制限部153は、ステップS16で温度履歴記録部152により記録された温度の履歴に基づいて、組電池110が所定の継続時間以上継続的または断続的に充放電されたときの組電池110の最高温度を求め(ステップS17、S18)、その最高温度を所定のしきい値と比較する(ステップS19、S20)。このようにして、充放電電流を制限するか否かを判断するようにしたので、適切な状況で低温状態での充放電制限を行うことができる。
【0065】
(3)上記の継続時間は、組電池110の温度が充放電中に平衡に達するまでの時間に応じて設定することができる。このようにすれば、低温状態で組電池110が充放電されたときの最高温度を正しく求めることができる。
【0066】
(4)また、
図9に示すように、上記の継続時間として、長さの異なる複数種類の時間を設定することもできる。この場合、ステップS19、S20の判定で用いられるしきい値は、継続時間の長さに応じて、継続時間が長いほど大きな値が設定される。このようにしたので、組電池110が継続的または断続的に充放電されている時間に応じて最適なしきい値を用いて、充放電電流を制限するか否かを判断することができる。
【0067】
(5)充放電制限部153では、ステップS19の判定に用いるための第1のしきい値が設定されると共に、この第1のしきい値よりも低いステップS20の判定に用いるための第2のしきい値が設定される。充放電制限部153は、最高温度が第1のしきい値よりも低い場合は、充放電電流を制限するための第1の充放電制限を行い(ステップS21)、最高温度が第2のしきい値よりも低い場合は、充放電電流をさらに制限するための第2の充放電制限を行う(ステップS22)。このようにして、組電池110に対して二段階の充放電制限を行うようにしたので、低温状態での組電池110の性能劣化を確実に防止することができる。
【0068】
(6)充放電制限部153は、ステップS21で第1の充放電制限を行った場合は、その後に最高温度が第1のしきい値を超えたときに第1の充放電制限を解除する。一方、ステップS22で第2の充放電制限を行った場合は、その後に最高温度が第2のしきい値を超えても、第2の充放電制限を継続して行う。このようにしたので、第2の充放電制限を行った場合はこれを継続して行うことにより、低温状態での組電池110の性能劣化をより一層確実に防止することができる。
【0069】
(7)充放電制限部153は、第2の充放電制限を開始してからの経過時間が所定の制限解除時間を超えたときに、第2の充放電制限を解除する。このようにしたので、第2の充放電制限を行った場合に、これを適切なタイミングで解除して元の状態に戻すことができる。
【0070】
(8)電池制御システム120は、車両内の通信ネットワークであるCANに接続されている。充放電制限部153は、このCANを介して経過時間の情報を取得することもできる。このようにすれば、電池制御システム120がタイマ機能を有していなくても、適切なタイミングで第2の充放電制限を解除することができる。
【0071】
(9)組電池制御部150は、電流検知部130により測定された電流値に基づいて、所定のタイムウインドウにおける実効電流値を算出する実効電流値算出部151をさらに機能的に有する。温度履歴記録部152は、実効電流値算出部151により算出された実効電流値が所定の基準値未満であるか否かを判定し(ステップS14)、実効電流値が基準値未満のときには、温度の履歴の記録を行わない。このようにしたので、組電池110の充放電電流が少なく、そのため低温状態での性能劣化の心配がないような場合は、不要な温度履歴の記録を省略することができる。
【0072】
なお、
図5に示した充放電制限に関する組電池制御部150の制御ブロックの一部または全部を車両制御部200で実現してもよい。たとえば、実効電流値算出部151および温度履歴記録部152を組電池制御部150で実現し、充放電制限部153を車両制御部200で実現する。この場合、組電池制御部150は、温度履歴記録部152に記録された組電池110の温度履歴の情報を車両制御部200に送信する。車両制御部200は、組電池制御部150から送信された温度履歴の情報に基づいて、充放電制限部153により、低温状態での第1の充放電制限や第2の充放電制限を行うか否かを判定し、その判定結果に応じて、これらの充放電制限を電池制御システム120に対して指示する。このようにしても、上記のような作用効果を奏することができる。
【0073】
また、以上説明した実施形態において、温度履歴を記録するか否かを判定するために実効電流値と比較される基準値や、温度履歴を記録する時間間隔、最高温度を求める継続時間の長さなどは一例であり、他の値としてもよい。また、上記の実施形態では、第2段階の充放電制限を開始してからの経過時間を算出し、この経過時間を制限解除時間と比較することで第2段階の充放電制限を解除するか否かを判定することとしたが、第2段階の充放電制限を行った合計時間を算出し、この合計時間を制限解除時間と比較することで第2段階の充放電制限を解除するか否かを判定してもよい。この場合、充放電制限を開始した後に車両システムが停止しており、電池制御システム120が非動作状態であった場合は、その期間を除外して合計時間を算出することが好ましい。
【0074】
本発明は、上記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0075】
また、上記の各構成や各機能は、それらの全部または一部を、例えば集積回路等を用いたハードウェアとして実現することもできるし、プロセッサにより実行されるプログラムやソフトウェアとして実現することもできる。各機能を実現するためのプログラムやテーブルなどの情報は、メモリやハードディスクなどの記憶装置、ICカード、DVDなどの記憶媒体に格納することができる。
【0076】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2013年第166800号(2013年8月9日出願)