【文献】
Norio Akiyama and Tsukio Ohtani,Adsorption of Primary Alcohol Molecules on Trigonal Selenium Nanowires,Jpn. J. Appl. Phys.,2013年10月25日,Vol.52, No.10,p.105001
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対向する2つの電極の間に、導電層と、ガスの接触によって電気伝導度が変化するナノ材料の集合層とからなる積層単位(導電層/集合層)が繰り返し配置された構造を備えるガスセンサであって、静電容量が7pF未満である、ガスセンサ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明のガスセンサは、対向する2つの電極の間にガスの接触によって電気伝導度が変化するナノ材料(以下、当該「ガスの接触によって電気伝導度が変化するナノ材料」を「ガス感受性ナノ材料」とも称する。)の集合層を介在させており、静電容量が7pF未満であることが主たる特徴である。
【0013】
図1は本発明のガスセンサの一例(第1例)を模式的に示した断面図である。図において、1A、1Bは基板、2A、2Bは電極、3はガス感受性ナノ材料の集合層、4は導電層、5はセンサ部、9A、9Bはシールド膜、10はガスセンサを示す。
【0014】
該一例のガスセンサ10(
図1)において、2つの電極2A、2Bは、例えば、銅板2aと、該銅板2aの表面を被覆する金メッキ層2bで構成されており、2つの電極2A、2Bは互いの平面が実質的に平行となるように対向配置されている(平行平板)。一方の電極2A上にカーボンテープなどの導電性粘着材料からなる導電層4が配置され、該導電性粘着材料からなる導電層4上にガス感受性ナノ材料の集合層3が配置されている。なお、ガス感受性ナノ材料の集合層3は、ガス感受性ナノ材料とともに金属微粒子等の導電性材料(サイズがナノスケールの導電性材料)を含ませたものであってもよい。導電性粘着材料からなる導電層4を用いているのは、集合層3からガス感受性ナノ材料が飛散するのを防止すると同時にガス感受性ナノ材料と電極2A、2Bとの電気的接触性能を向上させるためである。センサ部5は、一方の電極2A、導電層4、ガス感受性ナノ材料の集合層3およびもう一方の電極2Bの積層により構成される。
【0015】
対向する2つの電極2A、2Bは、電流計6及び電源7を含む回路に接続されており、センサ部5のガス感受性ナノ材料の集合層3のガス感受性ナノ材料がガスと接触することで生じる電流変化が測定される。なお、図中の符号8はショート時の回路保護のための保護用抵抗である。
【0016】
図2は、後述の実験例(被検ガス:エタノール)で得られた、当該一例のガスセンサ10において、ガス感受性ナノ材料の集合層3としてセレンナノワイヤーの集合層を使用し、対向配置される2つの電極の一方の電極である下部電極2Aに平面形状が正方形の平板電極を使用し、その平板電極の面積を0.25mm
2(0.5mm×0.5mm)、1.0mm
2(1.0mm×1.0mm)、2.25mm
2(1.5mm×1.5mm)および0.5mm
2(1.0mm×0.5mm)に変更して、それぞれの下部電極に対して対向配置される2つの電極のもう一方の電極である上部電極2B(面積:xmm×ymm)として一方の幅xを下部電極のそれと同じにし、もう一方の幅y(<x)を下部電極のそれと相異させた電極を配置し、印加電圧5Vで動作させた時のセンサ感度Sを測定した値と、センサのもつ静電容量(センサ部の静電容量)Cとの関係を示す。
図2から静電容量Cが小さいほど、センサ感度が向上することが分かる。また、対向電極面積の減少による静電容量Cの減少は、空間電荷制限電流値も小さくなることから、ガスセンサの消費電力低減に寄与する。さらに、静電容量Cが小さくなることにより、ガス応答時間も早くすることができる。
【0017】
図3は本発明のガスセンサの他の一例(第2例)を模式的に示した斜視図、
図4は該センサのセンサ部の要部断面図である。これらの図において、
図1と同一符号は同一または相当する部分を示す。
【0018】
該一例のガスセンサ11では、センサ部5における2つの電極2A、2Bは互いの平面が実質的に平行となるように対向配置されており、一方の電極2Aの略全面に対して導電層4およびガス感受性ナノ材料の集合層3が積層され、ガス感受性ナノ材料の集合層3上に一方の電極2Aよりも細幅にしたもう一方の電極2Bが配置されている。すなわち、上記
図1に示される第1例のガスセンサ10では、センサ部5において対向配置する2つの電極は同じ平面面積の電極であるが、本例のガスセンサ11では、センサ部5において対向する2つの電極2A、2Bは平面面積を相異させている。
【0019】
図5(A)は、後述の実験例(被検ガス:エタノール)で得られた、当該ガスセンサ11において、ガス感受性ナノ材料の集合層3としてセレンナノワイヤーの集合層を使用し、印加電圧5Vで動作させた時の、センサ部5において対向する2つの電極2A、2Bのオーバーラップ部分の面積であるオーバーラップ面積A
overlapと、センサ感度Sとの関係を示している。オーバーラップ面積A
overlapは細幅の一方の電極2Bの幅を変更することで変更されている。なお、
図5(A)の横軸のオーバーラップ面積A
overlapはセンサ部における面積が0.25mm
2(0.5mm×0.5mm)、1.0mm
2(1.0mm×1.0mm)、2.25mm
2(1.5mm×1.5mm)および0.5mm
2(1.0mm×0.5mm)となる太幅の一方の電極2Aに対して設けたもう一方の細幅の電極2B(面積:xmm×ymm)として一方の幅xを太幅の一方の電極2Aのそれと同じにし、もう一方の幅y(<x)を太幅の一方の電極2Aそれと相異させた電極を配置した際の値を示す。
【0020】
オーバーラップ面積A
overlapが0.25mm
2よりも小さいときに、特にセンサ感度(センサ応答S)が著しく向上することがわかる。これは、電極が小さくなることで電界強度の集中効果を生じるためにセンサ感度が増大したものと考えられる。
【0021】
図2、
図5(A)の結果から、センサ部を、対向する2つの電極(平板電極)の間にガス感受性ナノ材料の集合層を介在させた構成とし、かつ、対向する2つの電極のオーバーラップ面積を小さくして、センサの静電容量を減少させることで、センサ感度が大きく向上し、しかも、センサの消費電力も小さくなることが分かる。特に、対向する2つの電極のオーバーラップ面積を0.25mm
2以下にすることで、センサ感度が著しく向上することが分かる。
【0022】
本発明のガスセンサにおいて、センサ部の対向する2つの電極(平板電極)のオーバーラップ面積(該「オーバーラップ面積」は、平面が同一形状かつ同一面積の2つの電極全体がオーバーラップして対向する場合のオーバーラップ面積(=電極の平面面積)および平面面積が相異する2つの電極が部分的にオーバーラップして対向する場合のオーバーラップ面積を含む。)は、1.0mm
2未満が好ましく、0.50mm
2以下が好ましく、0.25mm
2以下がより好ましい。なお、オーバーラップ面積が小さすぎると、過度の電流低下を引き起こすため、その下限は0.15mm
2以上が好ましく、0.20mm
2以上がより好ましい。
【0023】
図6は本発明のガスセンサの他の一例(第3例)の模式断面図である。この図において、
図1と同一符号は同一または相当する部分を示す。
【0024】
該一例のガスセンサ12では、対向する2つの電極2A、2Bの間に、導電層4と、ガス感受性ナノ材料の集合層3とからなる積層単位(導電層/ガス感受性ナノ材料の集合層)が2回繰り返された構造を有しており(以下、該構造を有するガスセンサを「二層型センサ」とも称する)、これによってセンサの静電容量を低下させている。なお、前述の
図1の例のガスセンサ10は、対向する2つの電極の間に、導電層とガス感受性ナノ材料の集合層(セレンナノワイヤーの集合層)からなる積層単位が一つのみ設けられた構造であり、以下、該構造を有するガスセンサを「単層型センサ」とも称する。なお、二層型センサにおいても、ガス感受性ナノ材料の集合層3は、ガス感受性ナノ材料に金属微粒子などの導電性材料を含ませたものであってもよい。
【0025】
なお、対向する2つの電極2A、2Bの間で、積層単位(導電層/ガス感受性ナノ材料の集合層)は3回以上繰り返されていてもよい。積層単位がn回(nは2以上の整数)繰り返されることで、ガスとガス感受性ナノ材料との接触面積は増加するが、センサ部のもつ電気容量(静電容量)Cは、積層単位が一つの単層型に比べて約1/nになり、その抵抗値はn倍になる。積層単位の好ましい繰り返し回数(n)は2〜5であり、より好ましくは2又は3である。
【0026】
図7は、後述の実験例(被検ガス:エタノール)で得られた、当該ガスセンサ(二層型センサ)12において、ガス感受性ナノ材料の集合層3にセレンナノワイヤーの集合層を使用したガスセンサ、および、
図1のガスセンサ(単層型センサ)10において、ガス感受性ナノ材料の集合層3にセレンナノワイヤーの集合層を使用したガスセンサの、センサ応答Sと印加電圧Vとの関係を示し、
図8はセンサ応答Sとセンサの消費電力Pとの関係を示している。
図8から、単層型センサでは駆動電圧が5V付近に感度ピークを有するのに対し、二層層型センサは駆動電圧が1V付近に感度ピークを有することが分かる。そして、
図8から、二層型センサの場合、センサの消費電力Pによるセンサ応答Sのピークは、単層型センサのそれに比べて1.3倍となり、消費電力は、単層型センサの1mWが、二層型では0.79μWとなり、1μW以下でも動作していることがわかる。従って、エネルギーハーベスティング技術への適用も可能な1μW以下の低消費電力で動作できることが分かる。このときの動作電圧は1.3Vである。
【0027】
また、
図9は、後述の実験例(被検ガス:エタノール)で得られた、当該ガスセンサ(二層型センサ)12において、ガス感受性ナノ材料の集合層3にセレンナノワイヤーの集合層を使用したガスセンサを印加電圧1Vで動作させた時の揮発ガスに対する電流値の時間変化を示し、
図10は
図1のガスセンサ(単層型センサ)10において、ガス感受性ナノ材料の集合層3にセレンナノワイヤーの集合層を使用したガスセンサを印加電圧2Vで動作させた時の揮発ガスに対する電流値の時間変化を示す。
図9と
図10の対比から、二層型センサを流れる動作電流値は、単層型センサの約33μAに対し、電流値が約1/10の3.0μAになることがわかる。I−V特性が非線形のため、電流値が激減し、感度は上昇することがわかる。また、静電容量Cの減少により、センサ応答時間が早くなっていることがわかる。また、
図11(A)に二層型センサを印加電圧0.05Vで動作させた時の揮発ガスに対する電流値の時間変化を示す。
図11(A)から、二層型センサでは、動作電流値が0.14μAでも信号が観測されることがわかる。この時の動作電力は、10nW以下である。なお、外部の雑音の影響を受けているが、これはシールドおよび信号波形のスムージング処理により軽減が可能である。
【0028】
図12は本発明のガスセンサの他の一例(第4例)を模式的に示した斜視図、
図13は該センサのセンサ部の要部断面図である。これらの図において、
図3、4と同一符号は同一または相当する部分を示す。
【0029】
該一例のガスセンサ13は、前記第2例のガスセンサ11の構成と第3例のガスセンサ12の構成を複合した構成を有しており、二層型による静電容量低減と、センサ部における一方の電極の面積がもう一方の電極の面積よりも小さいことによる電界強度の集中効果によって、消費電力の一層の低減およびセンサ感度の一層の向上が期待できるものである。
【0030】
なお、本発明のガスセンサにおいて、センサ部の電極間での電界強度の集中効果を発現または増強するために、
図14に示されるガスセンサ14のように、センサ部において対向させる2つの電極を、平板電極と、該平板電極の平面に向けて突出する先鋭部を有する電極とで構成することは有効である。
【0031】
本発明のガスセンサは、センサ部の静電容量が7pF未満であれば、センサ感度が向上し、動作電流も低減して、目的の消費電力の低減を図ることができるが、静電容量は6pF以下が好ましく、4pF以下がより好ましい。なお、センサ部の静電容量が小さ過ぎると、電流が流れにくくなる懸念があるため、静電容量は0.5pF以上が好ましい。
【0032】
本発明のガスセンサにおいて、ガス感受性ナノ材料の集合層3に使用されるガス感受性ナノ材料は、特に限定されず、ガスの接触によって電気伝導度が変化する導電性又は半導電性を有する公知のナノ材料を使用できる。ここでいう「ナノ材料」とは、1次元、2次元又は3次元のサイズがナノスケール(1nm〜1000nm未満)である材料を意味する。
【0033】
ガス感受性ナノ材料の好適例としては、例えば、セレン、ZnO、ZnInO、In
2O
3、SiO
2、Ga
2O
3、Ge、Si等の半導体物質のナノワイヤーやナノベルト;セレン、ZnO、SnO
2、Ga
2O
3、In
2O
3、CdO、PbO
2、MgO等の半導体物質のナノロッド;カーボンナノチューブ;等が挙げられる。これらの中でも、加温することなく、室温にて、無機ガスだけでなく有機ガスの接触によって電気伝導度が変化する、セレンナノ材料、特にセレンナノワイヤー、セレンナノファイバー、セレンナノチューブ、セレンナノロッド、セレンナノベルトが好ましい。
【0034】
ガス感受性ナノ材料が、ナノワイヤー、ナノファイバー、ナノロッド、又はナノチューブである場合、平均直径が10〜800nmであることが好ましく、10〜600nmであることがより好ましい。ナノベルトである場合、「平均幅」が10〜800nmであることが好ましく、10〜600nmであることがより好ましい。「平均直径」は、走査型電子顕微鏡(SEM)の写真画像より複数のサンプル(サンプル数:50)の直径を計測し、分布のグラフにおける、分布強度のピーク値である。同様に、「平均幅」は走査型電子顕微鏡(SEM)の写真画像より複数のサンプル(サンプル数:50)の幅を計測し、分布のグラフにおける、分布強度のピーク値である。なお、ここでいう「直径」とは写真画像上でのナノワイヤー、ナノファイバー、ナノロッド、ナノチューブの長さ方向と直交する方向の幅を意味し、また、「幅」とは写真画像上でのナノベルトの長さ方向と直交する方向の幅を意味する。なお、ナノワイヤーとナノファイバーの明確な区別はないが、一般的には短繊維状のものをナノワイヤー、長繊維状のものをナノファイバーと呼び、中空のものをナノチューブと呼ぶ。また、ベルト状のものをナノベルト、ロッド状のものをナノロッドと呼ぶ。
なお、ナノワイヤー、ナノファイバー、ナノロッド、又はナノチューブの長さは0.5〜12μmが好ましく、0.8〜6μmがより好ましい。
【0035】
ガス感受性ナノ材料の集合層3におけるガス感受性ナノ材料の量は特に限定されないが、5〜100μg/mm
2程度が好ましい。5μg/mm
2未満ではガスとの十分な接触面積が得られないために感度が低下する可能性があり、100μg/mm
2を超える場合は集合層内部へのガス流が不良となるために、ガス応答性が悪くなる可能性がある。
【0036】
なお、ガス感受性ナノ材料の集合層3には、金属微粒子等の導電性のナノ材料(1次元、2次元又は3次元のサイズがナノオーダーの導電性材料)を含有させたものを用いることができる。
【0037】
センサ部における対向する2つの電極の電極間距離は、特に限定はされないが、単層型センサの場合は、0.1〜0.8mm程度が一般的であり、好ましくは0.1〜0.2mm程度である。二層型センサの場合は、0.15〜0.6mm程度が一般的であり、好ましくは0.15〜0.3mm程度である。
【0038】
電極2A、2Bには公知の電極材料であれば特に制限なく適用でき、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウムスズ)、カーボン等が使用される。また、電極は単層構造でも、多層構造でもよい。電極表面は金、銀等の電気伝導率がより高い材料にて形成するのが好ましく、金で形成するのがより好ましい。電極表面が金、銀等で形成されていれば、信号対雑音比(SN比)のよいセンシングが可能になる。ガス感受性ナノ材料がセレンナノワイヤーである場合、金の仕事関数(5.2eV)および銀の仕事関数(4.73eV)は、銅の仕事関数(4.65eV)に比べてセレンの仕事関数(5.9eV)に比較的近い値をもち、また、特に金は耐腐食性に富むことから、より安定で電気接触性に優れた電極表面を形成することができる。
【0039】
上記例示のガスセンサでは、導電層4には、カーボンテープなどの導電性粘着材料を使用したが、導電性接着剤を使用してもよい。導電性接着剤としては、導電性粉末と有機バインダとを含む接着剤が挙げられ、その硬化物が導電性を有するものであれば制限なく使用できる。導電性粉末としては、例えば、銅、金、銀、ニッケル、パラジウム、コバルト等の金属単体、または、前記金属元素から選ばれる少なくとも1種を含む合金からなる金属粉末等が挙げられる。また、有機バインダとしては、金属との接着性の良いものが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂等が挙げられ、なかでも、接続信頼性等の点からエポキシ樹脂が好ましい。導電性接着剤は市販品を使用でき、半導体微結晶との接着性及び硬化物の導電性を考慮して適当なものが選択されるが、電気的及び機械的な接続信頼性の観点から、エポキシ樹脂系導電性接着剤が好ましい。
【0040】
導電層4の電気抵抗は、60Ω/inch
2以下であることが好ましく、50Ω/inch
2以下がより好ましい。また、導電層4の電気抵抗は1Ω/inch
2以上が好ましい。また、導電層4の厚さは特に限定はされないが、ガス感受性ナノ材料を固定し良好な電気伝導性をもたせる観点から、通常、30〜300μm程度が好ましく、60〜160μm程度がより好ましい。
【0041】
基板1A、1Bは、絶縁性材料であれば、特に限定はされないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の硬化性樹脂や、硬化性樹脂とガラス繊維の複合物等が挙げられる。
【0042】
本発明のガスセンサのセンサ応答(S)は、次式で表される。
【0044】
センサ応答(S)はガスに対する電流値減少量ΔI=(I
0−I
m)を初期電流値I
0で正規化したものである。I
mはガスに対して反応した際の電流値の最小値である。
【0045】
ガスセンサにおける一定電圧下でガス感受性ナノ材料の集合層3とガスが接触することで生じる電流変化の挙動は、接触するガスの種類によって異なる。このため、一定電圧下で生じる電流変化の大きさの違いからガスの種類を判別することが可能である。
【0046】
図15はガス感受性ナノ材料の集合層3にセレンナノワイヤーの集合層を用いたガスセンサにおける種々の有機ガスに対する検出感度を示している。ガスセンサの被検ガスの濃度(N)に対するセンサ応答(S(N))は次の式で表すことができる。
【0048】
式中、ε
rは有機ガスの比誘電率(市販の有機溶媒の原液の比誘電率)、Aはセレンナノワイヤーとガスとの接触効率、Vは電圧、dは電極間距離、Nは濃度、nはベキ数、N
mは市販の有機溶媒の原液の濃度である。
【0049】
ここで、2>>ξ(ε
r−1)/(ε
r+2)である場合、センサ応答は、下記式で表すことができる。
【0051】
式中、N
Xは、有機ガスのN
mで規格化された濃度N/N
mである。
【0052】
図15中の曲線は上記式〔数2〕によるA=0.837、ξ=2.15のときのフィッテングであり、縦軸はセンサ応答(S=ΔI/I
0)、横軸は有機ガスの比誘電率(ε
r)である。
【0053】
センサ応答(S)は、電流値変化量(ΔI)が100%濃度の高濃度の有機ガスに接触したときの電流値変化量(飽和感度)である場合、その値が有機ガスの種類によって異なることから、これを利用することで、有機ガスを識別することができる。
【0054】
また、異なる有機ガス間で、電流値変化量(ΔI)とその緩和時間(すなわち、ΔIの最大値に到達する時間もしくはΔIが減少する時間(緩和時間(τ
r)))とが相関性を示すので、かかる緩和時間(τ
r)の違いを尺度として、有機ガスを識別することも可能である。すなわち、緩和時間(τ
r)の違いを尺度として一定電圧の下で生じる電流値変化の大きさの時間的な特性の違いからガス種を識別することができる。
【0055】
また、有機ガス毎に、飽和感度(100%濃度での電流値変化量(ΔI))と、種々のガス濃度での電流値変化量を基準データとして採っておき、該基準データをメモリに格納したマイコンに電流計8からの実測の電流値が入力される判定装置(図示せず)をガスセンサに組み込むことで、有機ガスの検出及び識別を自動判定することも可能である。
【0056】
本発明でいう有機ガスとは、環境や人体への影響が懸念される揮発性有機化合物のことであり、例えば、メタン、エタン、n−ブタン、イソブタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ペンタン、2−メチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、n−ヘキサン、3−メチルヘキサン、n−ヘプタン、3−メチルヘプタン、ノナン、デカン、ウンデカン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビシクロヘキシル、プロピレン、cis−2−ブテン、trans−2−ブテン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソプレン、cis−2−ペンテン、trans−2−ペンテン、1−ヘプテン、ジペンテン、ベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、クメン、スチレン、ナフタレン、テトラリン、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、臭化メチル、クロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、1,1−ジクロロエチレン、n−プロピルブロマイド、1,2−ジクロロプロパン、塩化アリル、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、フェノール、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酸化プロピレン、エチレンオキシド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ギ酸メチル、酢酸エチル、トリフロロ酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ビニル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピオン酸、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン、ジメチルスルホキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピリジン、ピペリジン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトニトリル、アクリロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、トリフロロメチルプロフィルケトン等が挙げられる。
【0057】
また、本発明のガスセンサは、無機ガスにも対応でき、無機ガスとしては、二酸化炭素、一酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、二硫化炭素、アンモニアなどが挙げられる。
【0058】
本発明はガスセンサアレイも提供する。すなわち、本発明のガスセンサアレイは、上述した本発明のガスセンサをガス流路のガス流れ方向に沿って複数配列して、複数のガスセンサのそれぞれに生じる電流変化の時間変化スペクトルを比較することで、ガスの種類を判別できることを見出したことから、複数のガスセンサの個々のセンサにおける一方の電極を複数のガスセンサ間で共通する単一の電極で構成することによって、複数の本発明のガスセンサの配列を単体のデバイスとして取り扱えるようにしたものである。
【0059】
図16は本発明のガスセンサアレイの一例を模式的に示した斜視図である。図において、
図1と同一符号は同一または相当する部分を示す。
【0060】
本発明のガスセンサアレイは、当該一例のガスセンサアレイ50に示されるように、被検ガスGを流すガス流路21と、ガス流路21のガス流れ方向に沿った単一の第一電極22Aと、ガス流れ方向に垂直に配置された複数の第二電極22Bとを有する。当該一例のガスセンサアレイ50は、個々のガスセンサが「単層型センサ」となるように構成されたものであり、単一の第一電極22A上には導電層4とガス感受性ナノ材料の集合層3がこの順に積層されており、単一の第一電極22A/導電層4/ガス感受性ナノ材料の集合層3の積層体と、その両サイドに配置された絶縁性壁部23A、23Bとによって、ガス流路21が区画され、絶縁性壁部23A、23B上からガス感受性ナノ材料の集合層上に渡るように複数の第二電極22Bが配置されている。
【0061】
複数の第二電極22Bの各電極と第一電極22Aとの間にセンサ部(ガスセンサ)が形成されることになり、第二電極22Bの数がセンサ部(ガスセンサ)の数となる。なお、第一電極22Aおよび第二電極22Bはともに、銅板と、該銅板の表面を被覆する金メッキ層で構成されているが、
図16はこれらの明示を省略している。
【0062】
各センサ部(ガスセンサ)毎に、電流計6及び電源7を含む回路が形成されており、各センサ部(ガスセンサ)毎に、ガス感受性ナノ材料とガスが接触することで生じる電流変化が測定される。図中の符号8はショート時の回路保護のための保護用抵抗である。なお、
図16では、図面に向かって左側にある第二電極22Bを含む回路のみを図示しているが、実際には、図面に向かって右側にある第二電極22Bを含む回路が形成されており、紙面の制約から当該回路の図示を省略している。
【0063】
当該一例のガスセンサアレイ50では、第二電極22Bは8個(すなわち、センサ部(ガスセンサ)は8個)であるが、これは紙面の制約から差し当って示したものであり、本発明のガスセンサアレイにおいて、第二電極22Bの数(すなわち、センサ部(ガスセンサ)の数)は、ガスの測定環境に応じて任意に設定される。
【0064】
本発明のガスセンサアレイでは、
図16に示されるように、通常、基板1Aに対向してカバー24を有する。カバー24はガス流路21を流れる被検ガスがガス流路21から漏れ出ることを防止し、かつ、複数の第二電極22Bを固定(保持)する機能を有する。カバー24としては、具体的には、基板1Aと同様の材料(硬化性樹脂や硬化性樹脂とガラス繊維の複合物等)からなり、第二電極22Bを受承する凹部を有するように加工もしくは成形された板状体や、凹凸追従性及び素子を接着し固定する機能を備えた絶縁シート(例えば、エポキシ樹脂系接着剤層、シアノアクリレート系接着層等)を基板1Aと同様の材料(硬化性樹脂や硬化性樹脂とガラス繊維の複合物等)からなる平板に積層した積層板等が挙げられるが、これらに限定されない。また、基板1Aの下面およびカバー24の上面には、通常、ノイズ低減のための導電性材料によるシールド膜が配置されるが、
図16ではこれらの図示を省略している。
【0065】
図16に示されるように、本発明のガスセンサアレイ50において、ガス流路21はガス導入口21Aとガス排出口21Bを有し、被検ガスGはガス導入口21Aからガス流路21内に流入し、ガス排出口21Bから外部へ出て行く。
【0066】
ガス流路21の形状や寸法は特に限定されないが、一般的には、ガス流路21の横断面(ガス流路21の軸線と直交する断面)は面積が0.05〜0.8mm
2程度の正方形または矩形であり、ガス流路21の長さは、一般に5.0〜10.0mm程度(好ましくは5.0〜8.9mm程度)である。なお、ガス流路21は、通常、壁によって仕切られた線状の路であるが、ガス流れが形成されればよく、線状の路として定義され難い単純空間であってもよい。
【0067】
単一のガスセンサにおいて、検出感度(センサ応答S)の値が近接する有機ガス(たとえば、ベンゼンとアセトン)は、それらの判別が容易でない。しかし、ガスセンサアレイであればこれらを判別することが可能である。
【0068】
ガスセンサアレイでは、複数のセンサ部(ガスセンサ)は、ガス流路21のガス導入口21Aからの距離が互いに異なるため、ガス導入口21Aからガス流路21へガスが導入されると、それぞれのセンサ部(ガスセンサ)の電流変化(I/I
0)の時間変化スペクトルに時間的なずれが生じる。
【0069】
例えば、
図17はガス流路にメタノールガスを流したときのセンサ部(ガスセンサ)の番号(ガス流路のガス導入口に近いものから数えたセンサ部(ガスセンサ)の番号)と、第1番目のセンサ部(ガスセンサ)のガス反応開始時間からの遅延時間との関係を示している。
【0070】
メタノール以外の種々の有機溶媒のガスについて、ガスセンサアレイの、異なるガスセンサ間でのI/I
0の時間変化スペクトルにおける反応開始時間の遅延時間を調べ、第1番目のセンサ部(ガスセンサ)(det 1)と第9番目のセンサ部(ガスセンサ)(det 9)間での遅延時間と、有機溶媒のガス拡散速度:ηDPMln[P
0/(P
0−P)]との関係を示したのが
図18である。なお、ガス拡散速度(ηDPMln[P
0/(P
0−P)])は、下記の非特許文献4に記載されており、式中、ηは、比例係数、Dは有機溶媒のガスの相互拡散係数、Pは蒸気圧、Mは分子量及びP
0は大気圧(101.325kPa)である。相互拡散係数Dは、下記の非特許文献5、6に記載の藤田の式を用いて算出したものである。
【0071】
非特許文献4: J. M. McKelvey and H. E. Hoelscher, Analytical Chemistry, vol. 29, no. 1, p. 123, 1957. “Apparatus for preparation of very dilute gas mixtures.”
非特許文献5:A. P. Altshuller and I. R. Cohen, Analytical Chemistry 1960 32 (7), pp. 802-810. “Application of Diffusion Cells to Production of Known Concentration of Gaseous Hydrocarbons.”
非特許文献6: 藤田重文, 化学工学 28(3), 251-52(1964).
【0072】
図18中の#001のプロットは、幅が1.0mmの第一電極(銅箔電極)に幅が1.2mmのカーボンテープ(導電性粘着材料からなる導電層)を使用してセレン
ナノワ
イヤーの集合層を形成した場合の結果、#002のプロットは、幅が1.0mmの第一電極(銅箔電極)に幅が1.1mmのカーボンテープ(導電性粘着材料からなる導電層)を使用してセレン
ナノワ
イヤーの集合層を形成した場合の結果である。
【0073】
図18から、本発明のガスセンサアレイで有機ガスのセンシングを行うと、複数のセンサ部(ガスセンサ)のそれぞれに生じる電流変化(I/I
0)の時間変化スペクトルは異なるセンサ部(ガスセンサ)間で遅延が生じ、有機ガス毎に特有の遅延時間を呈することがわかる。従って、この遅延時間を計測することで、有機ガスのガス種を判別することができる。
【0074】
本発明のガスセンサアレイにおける、複数のセンサ部(ガスセンサ)のそれぞれのセンサ部(ガスセンサ)に生じる電流変化の時間変化スペクトルは、上述の、ガス感受性ナノ材料がガスと接触して電流減少が始まる時間である反応開始時間だけでなく、電流減少量(ΔI)が最大となるピーク時間や反応後の緩和時間も異なるセンサ部(ガスセンサ)間において遅延が生じ、それらも有機ガス毎に特有の遅延時間を呈する。従って、かかる時間変化スペクトルのピーク時間や緩和時間の遅延時間を計測することで、有機ガスのガス種を判別することも可能である。
【0075】
本発明のガスセンサアレイにおいて、センサ部(ガスセンサ)の数(すなわち、第二電極22Bの数)は特に限定されないが、2〜15程度が好適である。隣接するセンサ部(ガスセンサ)の離間距離(すなわち、隣接する第二電極22Bの離間距離)は0.1〜0.5mm程度が好適である。
【0076】
本発明のガスセンサアレイにおける、異なるセンサ部(ガスセンサ)間の電流変化(I/I
0)の時間変化スペクトルの遅延時間は、基本的には、ガス流路のガス導入口に最も近い位置にあるセンサ部(ガスセンサ)の電流変化(I/I
0)の時間変化スペクトルを基準に、他のセンサ部(ガスセンサ)の電流変化(I/I
0)の時間変化スペクトルの遅延時間が計測されるが、これに限定されない。ガス流路のガス流れ方向に並設されている複数のセンサ部(ガスセンサ)のうち、ガス毎に特有の遅延時間が明確に現れる2つのガスセンサの電流変化の時間変化スペクトルを対比して遅延時間を計測すればよい。例えば、遅延時間の長いガス種(例えば1−オクタノール)に対しては、第1番目のガスセンサ(det 1)と、該第1番目のガスセンサ(det 1)に対して比較的近い位置にある小さい番号のガスセンサ(例えば第2番目のガスセンサ(det 2))を使うと良い。
一方、遅延時間の短いガス種(例えばアセトン)に対しては、第1番目のガスセンサ(det 1)と、該第1番目のガスセンサ(det 1)に対して比較的遠い位置にある大きい番号のガスセンサ(例えば、第9番目のガスセンサ(det 9)以降のガスセンサ)を使うと良い。
【0077】
遅延時間の計測は、ガスセンサアレイに個々のセンサ部(ガスセンサ)の電流変化(I/I
0)の時間変化スペクトルが映し出されるモニタを付設しておいて、そのモニタ上で計測してもよいし、ガスセンサのセンサ応答(S)の電気的出力値から自動計算するマイクロコンピューターにて行うようにしてもよい。
【0078】
例えば、
図18に示した特定の位置番号のセンサ部(ガスセンサ)における遅延時間と、有機溶媒のガス拡散速度との関係等のデータを格納したデータベースをあらかじめ作成しておき、該データベースと、ガスセンサアレイで検出された遅延時間とデータベースに保存されているデータとの対比結果に基づいて被検ガスのガス種を判定する計算部とをガスセンサアレイに付設することで、自動でガス種を判別するガス分析システムを作製できる。
【0079】
本発明のガスセンサアレイでは、複数のセンサ部(ガスセンサ)における一つ一つのセンサ部(ガスセンサ)は静電容量が7pF未満に設定されている。すなわち、本発明のガスセンサアレイでは、複数のセンサ部(ガスセンサ)の一つ一つが、静電容量の減少によって、高感度および低消費電力化が図られた本発明のガスセンサにより構成されている。
図16に示すガスセンサアレイ50では、例えば、複数の第二電極22Bのそれぞれの電極幅および第一電極22Aの電極幅を調整することで、それぞれのセンサ部(ガスセンサ)における電極のオーバーラップ面積を1.0mm
2未満(好ましくは0.5mm
2以下、より好ましくは0.25mm
2以下、さらに一層好ましくは0.20mm
2以下)にして、静電容量が7pF未満(好ましくは6pF以下、より好ましくは4pF以下)に設定されている。
【0080】
なお、本発明のガスセンサアレイにおいて、各センサ部の電極間での電界強度の集中効果を発現または増強するために、センサ部において対向する2つの電極を、平板電極と、該平板電極の平面に向けて突出する先鋭部を有する電極とで構成してもよい。
【0081】
図19は本発明のガスセンサアレイの他の例(第2例)を模式的に示した斜視図であり、図において、
図6および
図16と同一符号は同一または相当する部分を示す。かかるガスセンサアレイ51は、個々のセンサ部(ガスセンサ)が「二層型センサ」となるように構成されたものであり、単一の第一電極22A上には、積層単位(導電層4/ガス感受性ナノ材料の集合層3)が2回繰り返され、最上のガス感受性ナノ材料の集合層3上に、複数の第二電極22Bが配置されている。すなわち、複数のセンサ部(ガスセンサ)の一つ一つを、前述の1μW以下の低消費電力での動作(センシング)が可能なガスセンサ13(
図12)の構成に対応させている。
【0082】
また、基板1Aの下面およびカバー24の上面には、通常、ノイズ低減のための導電性材料によるシールド膜が配置されるが、
図19においてもこれらの図示を省略している。
【0083】
図20は、後述の実験例で得られた、かかる二層型ガスセンサアレイ51の動作(センシング)時の印加電圧0.01Vで動作させた時の揮発ガスに対する電流値の時間変化を示す。二つのセンサ部(ガスセンサ)のみで動作させた場合の電力は、[(0.032+0.196)×0.01]μW=0.0023μW、すべて動作した場合でも、電力は、[(0.032+0.072+0.192+0.144+0.196)×0.01]μW=0.0064μWであり、極めて低い消費電力を達成している。
【0084】
なお、本発明のガスセンサアレイにおいて、各センサ部の電極間での電界強度の集中効果を発現または増強するために、センサ部において対向する2つの電極を、平板電極と、該平板電極の平面に向けて突出する先鋭部を有する電極とで構成してもよい。
【0085】
また、本発明のガスセンサアレイでは、エネルギーハーベスティング技術への適用等が可能な1μW程度以下の低消費電力とするために、全てのセンサ部(ガスセンサ)に通電せずに、必要なセンサ部(ガスセンサ)の第二電極のみを電源に接続して、必要なセンサ部(ガスセンサ)のみを動作させることで、トータルの消費電力を下げることができる。
【0086】
図24は、後述の実験例により得られた、
図16に示す構成のガスセンサアレイ50において、ガス流路21にアセトンとトルエンの混合比を種々変更した混合ガスを流したときの、それぞれのセンサ部(ガスセンサ)に生じる電流変化の時間変化スペクトルの異なるセンサ部(ガスセンサ)間での遅延時間を計測した結果である。
【0087】
図24(A)はアセトン300μLとトルエン60μLの混合ガスを流したときの、ガス流路2のガス導入口2Aに最も近い位置のガスセンサから数えて第1番目のガスセンサ(det 1)、第5番目のガスセンサ(det 5)、第9番目のガスセンサ(det 9)、第13番目のガスセンサ(det 13)に生じた電流変化の時間変化スペクトルを示している。これと同様に、アセトン300μLとトルエン120μLの混合ガス、アセトン300μLとトルエン240μLの混合ガス、アセトンの単独ガス(300μL)、トルエンの単独ガス(300μL)を使用したときの、第1番目のガスセンサ(det 1)、第5番目のガスセンサ(det 5)、第9番目のガスセンサ(det 9)、第13番目のガスセンサ(det 13)に生じた電流変化の時間変化スペクトルを測定し、それらの結果から、第1番目のガスセンサ(det 1)と第5番目のガスセンサ(det 5)との間で生じた遅延時間、第1番目のガスセンサ(det 1)と第9番目のガスセンサ(det 9)との間で生じた遅延時間、第1番目のガスセンサ(det 1)と第13番目のガスセンサ(det 13)との間で生じた遅延時間をまとめたものが
図24(B)である。なお、
図24(A)の各スペクトルは、重なりを避けるために、縦軸方向にずらして表示している。
【0088】
図24(B)から、例えば、トルエンとアセトンの混合ガスにおいてトルエン濃度が低い場合、トルエンとアセトンの成分比率に関係なく、ガス流路21のガス導入口21Aに近い位置のガスセンサ(det 5)も、ガス導入口21Aから遠い位置のガスセンサ(det 9)も、第1番目のガスセンサ(det 1)に対する電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間は略同じになるが、トルエン濃度が高いガスの場合、ガス流路21のガス導入口21Aに近い位置のガスセンサ(det 5)では、トルエンとアセトンの成分比率に関係なく、第1番目のガスセンサ(det 1)に対する電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間は略同じになるが、ガス流路21のガス導入口21Aから遠い位置のガスセンサ(det 9、det 13)では、第1番目のガスセンサ(det 1)に対する電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間はトルエンの影響が大きくなり、トルエン濃度が低いガスの場合とは、異なる遅延時間を呈するようになる。
【0089】
従って、本発明のガスセンサアレイを使用すれば、ガス流路に混合ガスを流すことで、複数のガスセンサのそれぞれのガスセンサに生じる電流変化の時間変化スペクトルの異なるセンサ間での遅延時間から、混合ガスの成分比率を特定することができる。
【0090】
図25(A)は、後述の実験例により得られた、
図16に示す構成のガスセンサアレイ50において、アセトンとベンゼンの混合ガスをガス流路2に7.0秒間流したときの、第1番目のガスセンサに生じる電流変化の時間変化スペクトル(図中のdet 1を付した実線)と第13番目のガスセンサに生じる電流変化の時間変化スペクトル(図中のdet 13を付した実線)とを示す図であり、
図25(B)は、後述の実験例により得られた、
図16に示す構成のガスセンサアレイ50において、アセトンとベンゼンの混合ガスをガス流路21に74.0秒間流したときの、第1番目のガスセンサに生じる電流変化の時間変化スペクトル(図中のdet 1を付した実線)と第13番目のガスセンサに生じる電流変化の時間変化スペクトル(図中のdet 13を付した実線)とを示す図である。なお、
図25(A)及び
図25(B)中には、比較のために、ガス流路21にアセトンのみを流したときの第1番目のガスセンサ(det 1)で測定される電流変化の時間変化スペクトル(「アセトン」を付した破線)と、ベンゼンのみを流したときの第1番目のガスセンサ(det 1)で測定される電流変化の時間変化スペクトル(「ベンゼン」を付した破線)をそれぞれ示した。
【0091】
図25(A)に示されるように、アセトンとベンゼンの混合ガスのガス流路を流れる時間が短い場合、ガス感受性ナノ材料の集合層のガスとの接触時間が短くなるため、ガス流路の導入口に近い第1番目のガスセンサ(det 1)においては、混合ガスによる電流変化の時間変化スペクトルは、アセトンのみによる電流変化の時間変化スペクトルと重なっており、このことから、アセトンのみが検出されることがわかる(ベンゼンは検出されない)。また、アセトンに対し半導体微結晶は反応、回復が速く、また、ベンゼンは半導体微結晶との接触時間が短いために、ガス流路の導入口から遠く離れた第13番目のガスセンサ(det 13)では、電流変化(スペクトル変化)が認められる。
【0092】
一方、
図25(B)に示されるように、混合ガスのガス流路を流れる時間が長くなると、ガスセンサにおける半導体微結晶とガスとの接触時間が長くなるので、ガス流路の導入口に近い第1番目のガスセンサ(det 1)ではアセトンとベンゼンが検出され(図中のdet1を付した実線)、ガス流路の導入口にから遠く離れた第13番目のガスセンサ(det 13)では信号が大きいベンゼンが主に検出されることになる(図中のdet 13を付した実線)。なお、
図25(B)中の挿入図は、ガスの導入開始時付近を横軸にした拡大図であり、ガス流路へのガスの導入開始時付近のスペクトル(図中の白抜きの矢印部)から、主としてアセトンが検出されていることが認められる。
【0093】
従って、本発明のガスセンサアレイを使用すれば、ガス流路に被検ガスを流す時間を相違させた複数の条件にて、複数のガスセンサに一定電圧を印加した状態でガス流路に被検ガスを流して、それぞれの条件での、複数のガスセンサに生じる電流変化の時間変化スペクトルを観測することで、該複数の条件で得られた時間変化スペクトルの比較により、混合ガスからなる被検ガスのガス成分を特定することができる。
【0094】
図26(A)は、後述の実験例により得られた、
図16に示す構成のガスセンサアレイ50(電極表面に金めっきを施したもの)において、ガス流路21に混合比(ベンゼン/アセトン)が0.71/0.29のアセトンとベンゼンの混合ガス混合ガスを流したときの、第1番目のガスセンサ(det 1)と第13番目のガスセンサ(det 13)における電流変化の時間変化スペクトルを示す図であり、
図26(B)は、
図26(A)中の測定開始から20秒〜70秒経過した付近の拡大図である。時刻28秒にガスの導入が開始されると、第1番目のガスセンサ(det 1)と第13番目のガスセンサ(det 13)の遅延時間差(Δt
1,13)が4.2秒経過したとき、第13番目のガスセンサの電流変化の時間変化スペクトルが現れだすことが分かる。また、
図27はアセトンとベンゼンの混合ガスの成分比と、第1番目のガスセンサ(det 1)と第13番目のガスセンサ(det 13)の遅延時間差(Δt
1,13)との関係を示す図である。遅延時間差(Δt
1,13)は、第1番目のガスセンサ(det 1)におけるガスと接触して電流減少が始まる時間(反応開始時間)と、第13番目のガスセンサ(det 13)におけるガスと接触して電流減少が始まる時間(反応開始時間)の差である。
【0095】
なお、
図26(A)と
図25(B)の対比から、ガスセンサの対向電極(第一電極、第二電極)の電極表面に金めっきを施したことで、信号対雑音比(SN比)の向上したデータが得られるようになっていることがわかる。また、
図27から、測定対象(被検ガス)のガス成分が判明していれば(すなわち、被検ガスがベンゼンとアセトンの混合ガスであることが判明していれば)、ガスセンサアレイの異なるガスセンサ間の反応開始時間の遅延時間差の測定データから、被検ガスにおけるガス成分の成分比(ベンゼンとアセトンの成分比)を特定できることが分かる。
【0096】
図28は、後述の実験例により得られた、
図16に示す構成のガスセンサアレイ50において、ガス流路21に1−ブタノールと1−オクタノールの混合比を種々変更した混合ガスを流したときの、第1番目のガスセンサ(det 1)における電流変化の時間変化スペクトルを示す図(
図28(A))、第3番目のガスセンサ(det 3)における電流変化の時間変化スペクトルを示す図(
図28(B))及び第9番目のガスセンサ(det 9)における電流変化の時間変化スペクトルを示す図(
図28(C))である。なお、
図28(A)及び
図28(B)には、比較としてガス流路21に1−オクタノールのみを流したときの、電流変化の時間変化スペクトルを示した。
【0097】
図28(A)〜
図28(C)から、1−オクタノールのみを流したときの、電流変化の時間変化スペクトルは、第1番目のガスセンサ(det 1)では3200秒付近でピークとなり、その後は1−ブタノールと1−オクタノールの混合した電流変化の時間変化スペクトルと重なる。第3番目のガスセンサ(det 3)では、1−オクタノールのみを流したときの、電流変化の時間変化スペクトルは、2500秒付近から電流変化の時間変化スペクトルが見えだし、4800秒付近でピークとなり、その後は1−ブタノールと1−オクタノールの混合した電流変化の時間変化スペクトルと重なる。このことは、この時間帯においては、1−オクタノールのみの電流変化の時間変化スペクトルであることを示している。このように、1−ブタノールと1−オクタノールの混合ガスにおいては、個々のガスセンサにおいて、1−オクタノールによる電流変化の時間変化に比べて1−ブタノールによる電流変化の時間変化が速いため、電流変化の時間変化スペクトルの早い時間帯においては1−ブタノールによる電流変化に基づくものとなり、1−オクタノールによる電流変化が反映されないことがわかる。1−オクタノールによる影響は、かなり遅い時間帯(3200秒以降)において現れる。
【0098】
また、
図29は、混合比を種々変更した1−ブタノールと1−オクタノールの混合ガスをガス流路21に流したときの、第2番目のガスセンサ(det 2)、第3番目のガスセンサ(det 3)、第4番目のガスセンサ(det 4)、及び第9番目のガスセンサ(det 9)における電流変化の時間変化スペクトルの、第1番目のガスセンサの電流変化の時間変化スペクトルに対するガス反応開始時間の遅延時間を示している。なお、比較のために、ガス流路21に1−ブタノールのみを流したとき、及び、ガス流路21に1−オクタノールのみを流したときの、遅延時間も示した。
図29から、第2番目のガスセンサ(det 2)から第4番目のガスセンサ(det 4)までは、混合ガスによる遅延時間は1−ブタノールのみによる遅延時間と一致していることが分かる。
【0099】
従って、
図15の単一ガスセンサにおける検出感度(センサ応答S)の値がほぼ同じ1−ブタノール(
図15中の番号4)と1−オクタノール(
図15中の番号8)の混合ガスにおいても、本発明のガスセンサアレイを使用すれば、電流変化の時間変化の速いガス成分(すなわち、スペクトルが短時間で急峻に変化するガス成分)である1−ブタノールを即座に分離検出できることがわかる。電流変化の時間変化の遅いガス成分である1−オクタノールに関しては、3200秒以降の時間経過後のスペクトル
による成分分解により特定できる。
【0100】
図30は後述の実験例により得られた、
図16に示す構成のガスセンサアレイ50において、エタノールガスをガス流路に種々の異なる流速で導入したときの、第1番目のガスセンサ(det 1)と第9番目のガスセンサ(det 9)の間で生じる電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間を測定した結果である。この結果から、ガスセンサアレイの異なるガスセンサ間で生じる電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間が、ガスセンサアレイへ向かうガスの流速の−1.84乗に比例していることがわかる。このことから、ガスセンサアレイへ向かうガスの流速が遅いほど、ガスセンサアレイの異なるガスセンサ間で生じる電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間が大きくなることが分かる。
【0101】
一方、
図31は後述の実験例により得られた、
図16に示す構成のガスセンサアレイ50において、ガス流路に導入するエタノールガスの流速は一定にして、濃度が種々異なるエタノールガスをガス流路に導入したときの、第1番目のガスセンサ(det 1)と第9番目のガスセンサ(det 9)の間で生じる電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間を測定した結果である。この結果から、ガスセンサアレイの異なるガスセンサ間で生じる電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間は、ガスセンサアレイへ向かうガスの濃度の逆数に比例していることが分かる。このことから、ガスセンサアレイへ向かうガスの濃度が高いほど、ガスセンサアレイの異なるガスセンサ間で生じる電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間が短くなることがわかる。
【0102】
以上は被検ガスが有機ガスである場合の例を挙げて説明したが、
図32は後述の実験例により得られた、
図16に示す構成のガスセンサアレイ50において、ガス流路21に二酸化炭素ガス(100%)を流したときの、ガス流路21のガス導入口21Aに最も近い位置のガスセンサから数えて第1番目のガスセンサ(det 1)、第2番目のガスセンサ(det 2)、第3番目のガスセンサ(det 3)、第4番目のガスセンサ(det 4)に生じた電流変化の時間変化スペクトルを示している。
【0103】
図32(A)は、ガス流路へのガスの導入開始から200秒迄を横軸にしたスケールの図であり、
図32(B)はガス流路へのガスの導入開始から120秒迄を横軸にしたスケールの図である。
図32(A)および
図32(B)から、本発明のガスセンサアレイは、二酸化炭素ガスに対しても、それぞれのガスセンサに生じる電流変化(I/I
0)の時間変化スペクトルは異なるガスセンサの間で遅延が生じるため、無機ガスに対してもガス検出(ガスの判別)が可能であることが分かる。
【0104】
[実施例1(
図1の構成のガスセンサ)]
ガス感受性ナノ材料にセレンナノワイヤー(平均直径:151nm、長さ:0.9〜5.0μm)を使用した。
厚さが35μmの銅箔を用いた銅張積層板(絶縁層:ガラスエポキシ系)に厚さ0.3μmの金メッキを施したものを使用し、一方の表面に平面面積が0.25mm
2(0.5mm×0.5mm)の正方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料A、1.0mm
2(1.0mm×1.0mm)の正方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料B、平面面積が2.25mm
2(1.5mm×1.5mm)正方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料C、および平面面積が0.5mm
2(1.0mm×0.5mm)の長方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料Dをそれぞれ作製した。
電極付き基板材料Aを2枚用意し、一方の電極パターンに、該電極パターンと平面サイズ及び形状が同じ両面粘着カーボンテープ(日新EM(株)製のカーボン系両面粘着テープ、厚さ:0.12mm、電気抵抗:50Ω/inch
2)を貼り付け、その全面上にセレンナノワイヤーを塗布して、セレンナノワイヤーが25μg/mm
2存在するセレンナノワイヤーの集合層を形成し、その上にもう一方の基板材料Aの電極パターンを重ね、ガスセンサ1を作製した。
電極付き基板材料Bを2枚用意し、上記と同様の手順で、ガスセンサ2を作製した。
電極付き基板材料Cを2枚用意し、上記と同様の手順で、ガスセンサ3を作製した。
電極付き基板材料Dを2枚用意し、上記と同様の手順で、ガスセンサ4を作製した。
なお、ガスセンサ2は特許文献2の実施例のガスセンサに相当する。
【0105】
[実施例2(
図3、
図4の構成のガスセンサ)]
ガス感受性ナノ材料にセレンナノワイヤー(平均直径:151nm、長さ:0.9〜5.0μm)を使用した。
厚さが35μmの銅箔を用いた銅張積層板(絶縁層:ガラスエポキシ系)に厚さ0.3μmの金メッキを施したものを使用し、一方の表面に平面面積が0.25mm
2(0.5mm×0.5mm)の正方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料A1、一方の表面に平面面積が1.0mm
2(1.0mm×1.0mm)の正方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料A2、一方の表面に平面面積が2.25mm
2(1.5mm×1.5mm)正方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料A3をそれぞれ作製した。
上記と同様の銅張積層板(絶縁層:ガラスエポキシ系)に厚さ0.3μmの金メッキを施したものを使用し、一方の表面に平面面積が0.125mm
2(0.5mm×0.25mm)の長方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料B1、一方の表面に平面面積が0.5mm
2(1.0mm×0.5mm)の長方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料B2、一方の表面に平面面積が0.375mm
2(1.5mm×0.25mm)の長方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料B3、一方の表面に平面面積が1.5mm
2(1.5mm×1.0mm)の長方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料B4をそれぞれ作製した。
電極付き基板材料A1の電極パターンに、該電極パターンと平面サイズ及び形状が同じ両面粘着カーボンテープ(日新EM(株)製のカーボン系両面粘着テープ、厚さ:0.12mm、電気抵抗:50Ω/inch
2)を貼り付け、その全面上にセレンナノワイヤーを塗布して、セレンナノワイヤーが20μg/mm
2存在するセレンナノワイヤーの集合層を形成し、その上にもう一方の電極付き基板材料B1の電極パターンを重ね、ガスセンサ5を作製した。
電極付き基板材料A2およびB2を用い、上記と同様にして、ガスセンサ6を作製した。
電極付き基板材料A3およびB3を用い、上記と同様にして、ガスセンサ7を作製した。
電極付き基板材料A3およびB4を用い、上記と同様にして、ガスセンサ8を作製した。
【0106】
[実施例3(
図6の構成のガスセンサ)]
ガス感受性ナノ材料にセレンナノワイヤー(平均直径:151nm、長さ:0.9〜5.0μm)を使用した。
厚さが35μmの銅箔を用いた銅張積層板(絶縁層:ガラスエポキシ系)に厚さ0.3μmの金メッキを施したものを使用し、一方の表面に平面面積が1.0mm
2(1.0mm×1.0mm)の正方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料を作製した。
この電極付き基板材料を2枚用意し、一方の電極付き基板材料の電極パターンに、該電極パターンと平面サイズ及び形状が同じ両面粘着カーボンテープ(日新EM(株)製のカーボン系両面粘着テープ、厚さ:0.12mm、電気抵抗:50Ω/inch
2)を貼り付け、その全面上にセレンナノワイヤーを塗布して、セレンナノワイヤーが25μg/mm
2存在するセレンナノワイヤーの集合層を形成し、さらに平面サイズ及び形状が同じ両面粘着カーボンテープ(日新EM(株)製のカーボン系両面粘着テープ、厚さ:0.12mm、電気抵抗:50Ω/inch
2)を貼り付け、その全面上にセレンナノワイヤーを塗布して、セレンナノワイヤーが25μg/mm
2存在するセレンナノワイヤーの集合層を形成し、その上にもう一方の電極付き基板材料の電極パターンを重ね、ガスセンサ9を作製した。
【0107】
[実施例4(
図12の構成のガスセンサ)]
ガス感受性ナノ材料にセレンナノワイヤー(平均直径:151nm、長さ:0.9〜5.0μm)を使用した。
厚さが35μmの銅箔を用いた銅張積層板(絶縁層:ガラスエポキシ系)の上に厚さ0.3μmの金メッキを施したものを使用し、下部電極2Aとして、一方の表面に平面面積が1.0mm
2(1.0mm×1.0mm)の正方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料1を作製した。
電極付き基板材料の厚さが35μmの銅箔を用いた銅張積層板(絶縁層:ガラスエポキシ系)の上に厚さ0.3μmの金メッキを施したものを使用し、上部電極2Bとして、一方の表面に平面面積が0.5mm
2(1.0mm×0.5mm)の長方形の電極パターンを備えた電極付き基板材料2を作製した。
電極付き基板材料1の電極パターンに、該電極パターンと平面サイズ及び形状が同じ両面粘着カーボンテープ(日新EM(株)製のカーボン系両面粘着テープ、厚さ:0.12mm、電気抵抗:50Ω/inch
2)を貼り付け、その全面上にセレンナノワイヤーを塗布して、セレンナノワイヤーが25μg/mm
2存在するセレンナノワイヤーの集合層を形成し、さらに平面サイズが同じ形の両面粘着カーボンテープ(日新EM(株)製のカーボン系両面粘着テープ、厚さ:0.12mm、電気抵抗:50Ω/inch
2)を貼り付け、その全面上にセレンナノワイヤーを塗布して、セレンナノワイヤーが25μg/mm
2存在するセレンナノワイヤーの集合層を形成し、その上にもう一方の電極基板材料2の電極パターンを重ね、ガスセンサ10を作製した。
【0108】
[ガスセンサを用いた実験例]
(実験例1)
実施例1および2で作製されたそれぞれのセンサ1から8に対して、エタノールを綿棒(5mmφ、長さ10mm)に滴下し、センサからlmm離れた位置に、この綿棒の先端をセットし、印加電圧5Vでセンサを動作させた時の該綿棒からの揮発ガスに対するセンサの電流値の最小値I
mを測定し、あらかじめ測定していたガス接触前の電流値I
0からセンサ感度Sを求めた。なお、実験に当たり、直流電源は、エーディーシー6146型、もしくは6156型を、電流測定にはエーディーシー8240型を用いた。センサのもつ静電容量Cは、LCZメーター(YHP社製4277)を用いて測定した。得られた静電容量Cとセンサ感度Sとの関係を
図2に示す。Cが大きくなるとセンサの面積が増大するためSも大きくなることは知られたことであるが、Cが小さくなるにつれてSが大きくなることは、本測定で初めて明らかにされた。なお、
図2中の電極の面積が1.0mm
2(1.0mm×1.0mm)のガスセンサは特許文献2の実施例のガスセンサに相当する。
【0109】
(実験例2)
実施例1および2で作製されたガスセンサ1〜8のそれぞれに対して、エタノールを綿棒(5mmφ、長さ10mm)に滴下し、センサからlmm離れた位置に、この綿棒の先端をセットし、印加電圧5Vでセンサを動作させた時の該綿棒からの揮発ガスに対するセンサの反応前の電流値I
0とセンサの反応後の電流値の最小値Imを測定し、センサ感度Sを求めた。実施例1および2で作製されたガスセンサ1〜8のそれぞれに対して、2つの電極2A、2Bのオーバーラップ部分の面積A
overlapとセンサ感度Sとの関係を調べた結果を
図5(A)に示す。また、
図5(B)にオーバーラップ部分の面積A
overlapと電極間距離dの比A
overlap/dに対するガスセンサの静電容量Cの実測値との関係を示す。静電容量Cと、オーバーラップ部分の面積A
overlapと電極間距離dの比A
overlap/dとは、ほぼ比例関係が成り立っており、このことから、センサの静電容量Cが6pF以下の領域では電極間距離dよりも、オーバーラップ部分の面積A
overlapにセンサ感度Sが大きく依存すると考えられる。
【0110】
(実験例3)
エタノールを綿棒(5mmφ、長さ10mm)に滴下し、実施例1で作製した単体型ガスセンサ2について、センサからlmm離れた位置に、この綿棒の先端をセットし、印加電圧Vを0Vから20Vまで変えて、その際に該綿棒からの揮発ガスに対するセンサの電流値の最小値Imを測定し、あらかじめ測定していたガス接触前の電流値I
0からセンサ感度Sを求めた。また、実施例3で作製した二層型ガスセンサ9について同様な測定を行った。
図7は、センサ応答Sと印加電圧Vとの関係を示し、
図8はI
0と印加電圧Vとの積、すなわち消費電力Pと、センサ感度Sとの関係であり、
図7、8中の白丸のプロットが単体型ガスセンサ2での結果であり、菱形のプロットが二層型ガスセンサ9の結果である。単層型センサに比べて二層型センサは、消費電力が下がるとともに、センサ感度Sも大きくなることがわかる。
【0111】
(実験例4)
エタノールを綿棒(5mmφ、長さ10mm)に滴下し、実施例3で作製した二層型ガスセンサ9について、センサからlmm離れた位置に、この綿棒の先端をセットし、印加電圧1.00Vで、該綿棒からの揮発ガスに対する電流値の時間変化を測定した。この結果を
図9に示す。
【0112】
(実験例5)
エタノールを綿棒(5mmφ、長さ10mm)に滴下し、実施例1で作製した単体型ガスセンサ2について、センサからlmm離れた位置に、この綿棒の先端をセットし、印加電圧2.00Vで、該綿棒からの揮発ガスに対する電流値の時間変化を測定した。この結果を
図10に示す。
【0113】
(実験例6)
エタノールを綿棒(5mmφ、長さ10mm)に滴下し、実施例3で作製した二層型ガスセンサ9について、センサからlmm離れた位置に、この綿棒の先端をセットし、印加電圧0.05Vで、該綿棒からの揮発ガスに対する電流値の時間変化を測定した。この結果を
図11(A)に示す。また、実施例3で作製した二層型ガスセンサ9の2つの電極付き基板材料の電極パターンの形成面とは反対側の面の銅箔(シールド膜)を剥ぎとった状態で、センサからlmm離れた位置に、綿棒の先端をセットし、印加電圧1.3Vで、該綿棒からの揮発ガスに対する電流値の時間変化を測定した。この結果を
図11(B)に示す。
図11(A)と
図11(B)の対比から、微小電流の測定では、シールドによるノイズの低減効果が認められることが分かる。
【0114】
[実施例5(
図16の構成のガスセンサアレイ)]
厚さが35μmの銅箔を用いた銅張積層板(絶縁層:ガラスエポキシ系)の両面に厚さ0.3μmの金メッキを施したものを使用し、一方の面に幅0.9mm×長さ8.9mmの帯状電極(銅箔パターン)を形成し、該帯状電極(銅箔パターン)の両側部に幅1.0mm×長さ8.9mm×深さ0.036mmのガス流路用の溝の下側部分を形成した(第1電極付き基板材料)。
次に、上記帯状電極(銅箔パターン)の上に、幅1.0mm×長さ7.0mmの両面粘着カーボンテープ(日新EM(株)製のカーボン系両面粘着テープ、厚さ:0.12mm、電気抵抗:50Ω/inch
2)を貼り付け、さらにその上にセレンナノワイヤーが25μg/mm
2存在するセレンナノワイヤーの集合層を形成した。
厚さが35μmの銅箔からなる銅張積層板(絶縁層:ガラスエポキシ系)の両面に厚さ0.3μmの金メッキを施したものを使用し、片面の銅箔をパターニングして、15本の針状電極(幅0.21mm×長さ1mmの銅箔パターン)を0.21mmの間隔で配列させた(第2電極付き基板材料)。
第1電極付き基板材料と第2電極付き基板材料を互いの電極形成面を対向させて、セレンナノワイヤーの集合層に第2電極付き基板材料の針状電極が接触するように微量の力にて貼り合わせ、
図16に示す構成のガスセンサアレイを作製した。第1電極付き基板材料における銅張積層板由来の絶縁層が
図16中の基板1Aに相当し、第2電極付き基板材料における銅張積層板由来の絶縁層が
図16中のカバー24に相当する。なお、第1電極付き基板材料と第2電極付き基板材料の貼り合わせは、第1電極付き基板材料のガス流路用の溝部の側壁となる銅張積層板由来の絶縁層の凸部と、第2電極付き基板材料における銅張積層板由来の絶縁層とを厚さ10μmの両面粘着テープを介して貼り合わせて、横方向のガス抜けの回避および絶縁を確保した。ガス流路の軸線と直交する断面の形状は、各幅1.0mm×高さ0.16mm(断面積0.16mm
2)であった。また、両面粘着カーボンテープは第1電極付き基板材料と第2電極付き基板材料の貼り合わせによって圧縮され、厚みは貼り合わせ前から35〜50%程度減少した。
【0115】
[実施例6(
図19の構成のガスセンサアレイ)]
厚さが35μmの銅箔を用いた銅張積層板(絶縁層:ガラスエポキシ系)の両面に厚さ0.3μmの金メッキを施したものを使用し、一方の面に幅1.0mm×長さ8.9mmの帯状電極(銅箔パターン)を形成し、該帯状電極(銅箔パターン)の両側部に幅0.75mm×長さ8.9mm×深さ0.036mmのガス流路用の溝の下側部分を形成した(第1電極付き基板材料)。
次に、上記帯状電極(銅箔パターン)の上に、幅1.0mm×長さ7.0mmの両面粘着カーボンテープ(日新EM(株)製のカーボン系両面粘着テープ、厚さ0.12mm、電気抵抗:50Ω/inch
2)を貼り付け、さらにこの上にセレンナノワイヤーが25μg/mm
2存在するセレンナノワイヤーの集合層を形成し、さらにこの上に平面サイズ及び形状が同じ両面粘着カーボンテープを貼り付け、さらにこの上にセレンナノワイヤーが25μg/mm
2存在するセレンナノワイヤーの集合層を形成した。
厚さが35μmの銅箔からなる銅張積層板(絶縁層:ガラスエポキシ系)の両面に厚さ0.3μmの金メッキを施したものを使用し、片面の銅箔をパターニングして、15本の針状電極(幅0.21mm×長さ1mmの銅箔パターン)を0.21mmの間隔で配列させた(第2電極付き基板材料)。
第1電極付き基板材料と第2電極付き基板材料を互いの電極形成面を対向させて、セレンナノワイヤーの集合層に第2電極付き基板材料の針状電極が接触するように微量の力にて貼り合わせ、
図19に示す構成の二層型ガスセンサアレイを作製した。第1電極付き基板材料における銅張積層板由来の絶縁層が
図19中の基板1Aに相当し、第2の板状体における銅張積層板由来の絶縁層が
図19中のカバー24に相当する。なお、ガス流路の軸線と直交する断面の形状は、各幅0.75mm×高さ0.25mm(断面積0.19mm
2)であった。また、両面粘着カーボンテープは第1電極付き基板材料と第2電極付き基板材料の貼り合わせによって圧縮され、厚みは貼り合わせ前から35〜50%程度減少した。
【0116】
[ガスセンサアレイを用いた実験例]
ガスセンサアレイのガス導入口に最も近い位置にあるガスセンサを第1番目のガスセンサ(det 1)とし、該第1番目のガスセンサ(det 1)からの離間距離が大きくなる順番に残りの15個のガスセンサに番号を付けた。個々のガスセンサ(任意の第i番目のガスセンサ(det i))毎の電流値は、一定電圧(5V)のもとで、GPIB(General Purpose Interface Bus)制御されたデジタルマルチメータ(ADCMT 7461A)により計測され、その測定データが、パーソナルコンピュータに取り込まれるよう構成した。GPIB制御は、National Instrument製のLabVIEWソフトにより作成されたものを用いた。最小時間分解能は0.05秒である。直流電源は、TEXIO PA80-1B を用いた。
【0117】
データ解析は、Excel或いはIgorソフトにより行った。
ガスの発生は、有機溶媒を綿棒(5mmφ、長さ10mm)に滴下し、上記実施例で作製したガスセンサアレイのガス流路のガス導入口に最も近い位置にあるガスセンサ(第1番目のガスセンサ)から1mm離れた位置に、この綿棒の先端をセットした。
【0118】
ガスフローの測定は、シリンジを用いてテドラーバッグに有機溶媒を注入後、空気を注入することにより希釈したのち、ミニポンプ(柴田MP-Σ30N)を用いてバッグから取り出し、上記実施例で作製したガスセンサアレイのガス流路のガス導入口に最も近い位置にあるガスセンサ(第1番目のガスセンサ)から1mm離れた位置から任意の流速で吹きかけた。
【0119】
実験例7
(1)アセトン300μLとトルエン60μLの混合液、(2)アセトン300μLとトルエン120μLの混合液、(3)アセトン300μLとトルエン240μLの混合液をそれぞれ調製した。また、(4)アセトン300μL、(5)トルエン300μLを用意した。そして、かかる5種について、それぞれ、実験例1と同様にして、ガスセンサアレイのガス流路に揮発ガスを流し、第1番目のガスセンサ(det 1)、第5番目のガスセンサ(det 5)、第9番目のガスセンサ(det 9)及び第13番目のガスセンサ(det 13)における電流変化の時間変化スペクトルを測定した。(1)の混合液の電流変化の時間変化スペクトルの結果が
図24(A)及び
図24(B)である。
【0120】
実験例8
実験例1と同様にして、アセトン300μLとベンゼン240μLの混合液による揮発ガスをガスセンサアレイのガス流路に7.0秒間流して、第1番目のガスセンサ(det 1)と第13番目のガスセンサ(det 13)における電流変化の時間変化スペクトルを測定した。この結果が
図25(A)である。また、実験例1と同様にして、アセトン300μLとベンゼン240μLの混合液による揮発ガスをガスセンサアレイのガス流路に74.0秒間流して、第1番目のガスセンサ(det 1)と第13番目のガスセンサ(det 13)に生じる電流変化の時間変化スペクトルを測定した。この結果が
図25(B)である。
図25(B)中の挿入図は、
図25(B)のガス流路へのガスの導入開始時付近(試験開始から40秒〜80秒)を横軸にしたスケールの図である。
【0121】
実験例9
ガスセンサアレイとして、実験例1で使用したガスセンサアレイの第一電極および第二電極の銅箔パターンの表面に金めっきを施したものを用意した。
(1)アセトン300μL液、(2)アセトン300μLとベンゼン60μLの混合液、(3)アセトン300μLとベンゼン120μLの混合液、(4)アセトン300μLとベンゼン240μLの混合液、(5)アセトン300μLとベンゼン300μLの混合液、(6)アセトン240μLとベンゼン300μLの混合液、(7)アセトン120μLとベンゼン300μLの混合液、(8)アセトン60μLとベンゼン300μLの混合液、(9)ベンゼン300μL液をそれぞれ調製し、実験例1と同様にして、ガスセンサアレイのガス流路に揮発ガスを流し、第1番目のガスセンサ(det 1)、第13番目のガスセンサ(det 13)における電流変化の時間変化スペクトルを測定した。そのうちの混合ガスの成分比(アセトン/ベンゼン)が0.29/0.71であるときの電流変化の時間変化スペクトルが
図26(A)であり、
図26(B)は測定開始から20秒〜70秒経過した付近の拡大図である。また、
図27はこのようにして得られたベンゼンとアセトンの混合ガスの成分比と、第1番目のガスセンサ(det 1)と第13番目のガスセンサ(det 13)の遅延時間差(Δt
1,13)との関係を示した図である。遅延時間差(Δt
1,13)は、第1番目のガスセンサ(det 1)におけるガスと接触して電流減少が始まる時間(反応開始時間)と、第13番目のガスセンサ(det 13)におけるガスと接触して電流減少が始まる時間(反応開始時間)の差である。
【0122】
実験例10
(1)1−ブタノール60μLと1−オクタノール240μLの混合液、(2) 1−ブタノール120μLと1−オクタノール240μLの混合液、(3) 1−ブタノール240μLと1−オクタノール240μLの混合液をそれぞれ調製し、これら3種について、それぞれ、実験例1と同様にして、ガスセンサアレイのガス流路に揮発ガスを流し、第1番目のガスセンサ(det 1)、第2番目のガスセンサ(det 2)、第3番目のガスセンサ(det 3)、第4番目のガスセンサ(det 4)及び第9番目のガスセンサ(det 9)における電流変化の時間変化スペクトルを測定した。この結果の(2) (3)の混合液と1−オクタノールのみの第1番目のガスセンサ(det 1)、第3番目のガスセンサ(det 3)、及び第9番目のガスセンサ(det 9)における電流変化の時間変化スペクトルが
図28(A)〜
図28(C)である。また、
図29は1−ブタノールと1−オクタノールの混合ガスと、第1番目のガスセンサ(det 1)、第2番目のガスセンサ(det 2)、第3番目のガスセンサ(det 3)、第4番目のガスセンサ(det 4)、及び第9番目のガスセンサ(det 9)における電流変化の時間変化スペクトルの第1番目のガスセンサのガス反応開始時間からの遅延時間との関係を示している。
【0123】
実験例11
エタノール0.5mLを5Lの空気にて希釈したガスを調製し、このエタノールガスを0.1L/分、0.2L/分、0.3L/分、0.4L/分、0.5L/分、2.0L/分及び3.0L/分の流速にて、上記実施例で作製したガスセンサアレイのガス導入口へ流入させたときの、第1番目のガスセンサ(det 1)と第9番目のガスセンサ(det 9)の間で生じる電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間を測定した。この結果が
図30である。
【0124】
実験例12
エタノール0.08mL、0.1mL、0.15mL、0.25mL、0.5mL、0.75mLを5Lの空気にて希釈して、濃度が6750ppm、8440ppm、12660ppm、21110ppm、42210ppm、63320ppmのエタノールガスを調製し、これらを、上記実施例で作製したガスセンサアレイのガス導入口に0.2L/minの流速でガスを流入させたときの、第1番目のガスセンサ(det 1)と第13番目のガスセンサ(det 13)の間で生じる電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間を測定した。この結果が
図31である。
【0125】
実験例13
無機ガスである二酸化炭素ガス(100%)を
図6の例のガスセンサアレイ21のガス流路に0.2L/minの流速で、ガスセンサアレイのガス導入口へ吹き付けた際の、ガス流路2のガス導入口2Aに最も近い位置のガスセンサから数えて第1番目のガスセンサ(det 1)、第2番目のガスセンサ(det 2)、第3番目のガスセンサ(det 3)、第4番目のガスセンサ(det 4)の間で生じる電流変化の時間変化スペクトルの遅延時間を測定した。この結果が
図32(A)及び
図32(B)である。
【0126】
実験例14
エタノールを綿棒(5mmφ、長さ10mm)に滴下し、実施例6で作製した二層型ガスセンサアレイ2について、センサからlmm離れた位置に、この綿棒の先端をセットし、印加電圧0.01Vで、該綿棒からの揮発ガスに対する電流値のガスセンサアレイのガス流路に揮発ガスを流し、第1番目のガスセンサ(det 1)、第5番目のガスセンサ(det5)、第9番目のガスセンサ(det 9)、第11番目のガスセンサ(det 11)及び第13番目のガスセンサ(det 13)における電流変化の時間変化スペクトルを測定した。この結果が
図20である。シールドの効果および信号波形のスムージング処理(波形データ300ポイントの平滑処理)により、印加電圧0.01Vにおいてもノイズの少ないデータが得られ、このときの消費電力はdet 1とdet13を用いた場合2.3nWであり、det 1、det5、det 9、det 11、det 13のすべてを用いて6.4nWの微小電力で動作した。
【0127】
図20の時間75〜135秒における電流値Iと初期電流値I
0との比I/I
0の時間変化の拡大図を
図21に示す。印加電圧0.01Vにおいてもdet 1、det 5、det 9、det11、det 13でガスの到達時間による遅延が見られることから、ガス種を遅延時間から特定できることがわかる。同様の測定を、印加電圧0.1Vで行った結果を
図22および
図22の時間45〜105秒におけるI/I
0の拡大図を
図23に示す。信号波形のスムージング処理は、波形データ30ポイントの平滑処理とした。印加電圧0.1Vでは、電流値が上昇するが、このときの消費電力はdet 1とdet13を用いた場合0.2μWであり、det 1、det 5、det 9、det 11、det 13のすべてを用いて0.6μWの微小電力で動作した。印加電圧0.1Vにおいてもdet 1、det 5、det 9、det 11、det 13でガスの到達時間による遅延を測定でき、それらの遅延時間は0.01V動作時とほぼ同じであることがわかる。