(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記掬い部(13)は、前記波形底板(15)の両側縁に立設された側壁(16)と、前記波形底板(15)の後端縁に立設された奥壁(17)と、をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項に記載の嚥下調整食用スプーン。
前記柄部(11)の他端に固定された第二の掬い部(73-2)であって、前記嚥下調整食用スプーンの延在方向に垂直な断面が波形状の第二の波形底板(75)を有する第二の掬い部(73-2)をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4何れか1項に記載の嚥下調整食用スプーン。
前記波形底板(15)が、長方形状の薄平板を嚥下調整食用スプーンの延在方向に垂直な断面が三角波形となるように波形に折り曲げた形状に形成されてなることを特徴とする請求項5に記載の嚥下調整食用スプーン。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための嚥下調整食用スプーンを例示するものであって、本発明は嚥下調整食用スプーンを以下のものに特定しない。また本明細書は、特許請求の範囲を理解し易いように、実施の形態に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、及び「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記しているが、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(第一実施形態)
【0011】
まず、図面を参照しながら、本発明の第一実施形態に係る嚥下調整食用スプーンについて説明する。本実施形態では、略直方体形状の容器に入れられたゼリー状の嚥下調整食を食する際の利用に適した嚥下調整食用スプーンを例に挙げて説明する。
【0012】
図1は、第一実施形態に係る嚥下調整食用スプーンの斜視図である。
図2は、第一実施形態に係る嚥下調整食用スプーンの平面図である。
図3は、第一実施形態に係る嚥下調整食用スプーンの先端側から見た側面図である。
【0013】
図1〜
図3に示すように、第一実施形態に係る嚥下調整食用スプーン10は、使用者が手で掴んで把持する部分である柄部11と、柄部11の先端部に固定され、掬われた嚥下調整食片を保持する部分である掬い部13とを備えている。なお、
図2において、左側が嚥下調整食用スプーン10の先端側であり、右側が後端側である。嚥下調整食用スプーン10は、プラスチック成形により製造されるプラスチック製のスプーンである。
【0014】
掬い部13は、波形底板15と、波形底板15の両側縁に設置された側壁16と、波形底板15の後端縁に設置された奥壁17とを備えている。下方を波形底板15に、側方を側壁16及び奥壁17によって囲まれた空間が、掬った嚥下調整食片を口に運ぶために保持する保持空間となる。
【0015】
波形底板15は、長方形状の薄平板を嚥下調整食用スプーン10の延在方向に垂直な断面が三角波形となるように波形に折り曲げた形状となっており、波形底板15の先端縁から後端縁まで凸条151と凹条152とが交互に平行に延在している。なお、波形底板15の三角波形は水平に延在しており、波形底板15は、凹凸が形成されているが、全体としては平板状である。
【0016】
凸条151は、その延在方向に垂直な断面が上に凸の三角形となって上方に突出し、凹条152は、同じく断面が下に凸の三角形となって下方に突出している。このように、掬い部13を構成する波形底板15に凹凸が形成されていることで、後述するように嚥下調整食用スプーン10により掬われた嚥下調整食片にも凹凸が形成されることになる。
【0017】
なお、本実施形態に係る凸条151及び凹条152は、ピッチが5mm間隔となるように設置されており、隣り合う凸条151の峰線間隔が5mm、隣り合う凹条152の間隔も5mmである。このように波形底板15の波形のピッチを5mmとすれば、嚥下調整食の切断面に形成される凹凸の数を多くして、食感の改善効果を高めることができる。スプーンの大きさ等を考慮すれば、波形底板15に形成される波形のピッチは、8mm以下であることが望ましい。
【0018】
側壁16は、薄平板であり、波形底板15の両側縁全体にわたって、波形底板15に対して垂直に立設されている。奥壁17も薄平板であり、波形底板15の後端縁全体にわたって、波形底板15に対して垂直に立設されている。側壁16及び奥壁17は同じ高さであり、波形底板15の側縁と後端縁が交わる角部において、側壁16と奥壁17は一体に接続されている。
【0019】
以上、本実施形態に係る嚥下調整食用スプーン10の構成について説明したが、続いて、嚥下調整食用スプーン10の使用態様について説明する。
図4〜
図6は、第一実施形態に係る嚥下調整食用スプーンの使用状態を示す斜視図である。
【0020】
図4は、嚥下調整食用スプーン10の先端を容器6に入れられたゼリー状嚥下調整食5に突き刺した状態を示している。嚥下調整食用スプーン10の先端は、上述したように、薄平板を断面が三角波形となるように折り曲げた構成となっているため、嚥下調整食5を切断しながら嚥下調整食5内に容易に刺し入れることができる。
【0021】
図5は、嚥下調整食用スプーン10の掬い部13全体を嚥下調整食5内に挿入し、切断した嚥下調整食片5Aを掬い取った状態を示している。同図に示すように、嚥下調整食5の切断面は、掬い部13の波形底板15の表面の凹凸形状と同じ形状となり、断面が三角波形状となる凹凸が形成された面となる。このとき、嚥下調整食用スプーン10によって掬われた嚥下調整食片5Aは、波形底板15に接する下面に断面三角波形状の凹凸が形成されている。
【0022】
続いて、
図6に示すように、掬った嚥下調整食片5Aを摂食・嚥下困難者の口に運ぶ。嚥下調整食片5Aが摂食・嚥下困難者の口の中に入ると、嚥下調整食片5Aの凹凸下面がちょうど摂食・嚥下困難者の舌の上に乗ることになる。また、摂食・嚥下困難者が口の中で嚥下調整食片5Aを噛み砕かずに飲み込む場合には、嚥下調整食片5Aの凹凸下面が喉に当たることになる。
【0023】
このため、摂食・嚥下困難者は、凹凸下面を有する嚥下調整食片5Aを食する際に、従来のほぼ平面からなるゼリー状嚥下調整食片を食する場合と比べて、大きく異なる食感を楽しむことができる。また、容器6側に残っている嚥下調整食5には、切断面に凹凸が形成されており、次にその部分の嚥下調整食5が掬われた場合には、複数の面に凹凸が形成された嚥下調整食片5Aとなり、摂食・嚥下困難者は、より多彩な食感を楽しむことができる。
【0024】
以上、第一実施形態に係る嚥下調整食用スプーン10の構成・作用について詳細に説明したが、本実施形態によれば、摂食・嚥下困難者が、従来の嚥下調整食と大きく異なる食感を感じることができ、より食事を楽しむことができるようになる。また、嚥下調整食片5Aに凹凸面を形成するための波形底板15が薄板を折り曲げた形状となっているため、嚥下調整食用スプーン10の先端を容易に嚥下調整食5に突き刺して、切断分離することができ、簡単に使用することができる。
【0025】
また、嚥下調整食用スプーン10の掬い部13の波形底板15が全体として平板状に構成されているため、掬い部全体が湾曲状のスプーンと比べて、平らな底面を有する容器6内の嚥下調整食5を効率的に掬うことができる。
(
参考例)
【0026】
続いて、
参考例に係る嚥下調整食用スプーン20について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、
参考例に係る嚥下調整食用スプーンの先端側から見た側面図である。嚥下調整食用スプーン20は、掬い部23の波形底板25以外の構成は上記第一実施形態と同じであるため、同じ構成については説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0027】
嚥下調整食用スプーン20の掬い部23を構成する波形底板25は、長方形状の薄平板を嚥下調整食用スプーン20の延在方向に垂直な断面が矩形波となるように波形に折り曲げて形成されており、波形底板25の先端縁から後端縁まで延在する凸条251と凹条252とが交互に平行に形成されている。凸条251は、その延在方向に垂直な断面が上に凸の長方形となって上方に突出し、凹条252は、同じく断面が下に凸の長方形となって下方に突出している。
【0028】
嚥下調整食用スプーン20によっても上記第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。但し、嚥下調整食用スプーン20によって掬われる嚥下調整食片5Aの切断面は、断面が矩形波形状の凹凸が形成された面となる点で第一実施形態と異なる。これにより、摂食・嚥下困難者は、上記実施形態とは異なる食感を楽しむことができる。
【0029】
以上のように、波形底板25の断面形状を凹凸状にすることもできる。ただ、切断された嚥下調整食片の安定性の観点からは、切断後の嚥下調整食片の断面が、山形の傾斜面となるように、波形底板の断面形状を形成することが好ましい。具体的には、
図7の断面図に示すような、凹凸面が鉛直となるように形成された波形底板25を用いて切断された嚥下調整食片は、
図14Bの断面図に示す形状となる。この場合は、断面視矩形状に直立した嚥下調整食片は、非常に不安定となって型崩れし易くなる。特に嚥下調整食は、摂食・嚥下困難者でも嚥下しやすいよう、硬度が非常に弱くなるように作られている。例えば、厚生労働省が定める摂食・嚥下困難者用食品の規格では、重度の摂食・嚥下困難者に当たる許可基準Iで、2.5×10
3〜1×10
4N/m
2、これに次ぐ許可基準IIでは、1×10
3〜1.5×10
4N/m
2となっている。このように嚥下調整食は強度の弱い、脆い硬度で作成されるため、
図14Bの断面図に示すように凹凸状に切断された嚥下調整食片は、垂直方向に直立された部分が非常に不安定となって崩れ易くなる。この結果、嚥下調整食片は凹凸状を維持できなくなって、所期の食感や舌触りを実現できなくなる虞があった。
【0030】
これに対して、嚥下調整食片の断面形状を
図14Aに示すように、山形で下方を裾状に幅広としたような形状とすることで、突出部分を安定的に支持でき、型崩れを起き難くして、波形形状を維持して嚥下時の食感を享受できる。このように、波形形状の断面視を山形の傾斜面とすることで、切断される嚥下調整食片の断面形状を下方を厚く、上方を薄くして安定的に維持できるようになる。いいかえると、嚥下調整食片の断面形状が山形となるように、波形底板の断面形状を、上方の幅d
1が下方の幅d
2よりも狭くなるように形成することが、
図14Bに示す上方の幅d
1が下方の幅d
2とほぼ等しい形状よりも好ましい。逆に、
図14Cに示すような上方の幅d
1が下方の幅d
2よりも広くなるような形状は、型崩れを生じ易くなるため望ましくない。
(第三実施形態)
【0031】
続いて、本発明の第三実施形態に係る嚥下調整食用スプーン30について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、第三実施形態に係る嚥下調整食用スプーンの先端側から見た側面図である。嚥下調整食用スプーン30は、掬い部33の波形底板35以外の構成は上記第一実施形態と同じであるため、同じ構成については説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0032】
嚥下調整食用スプーン30の掬い部33を構成する波形底板35は、長方形状の薄平板を嚥下調整食用スプーン30の延在方向に垂直な断面が略正弦波となるように波形に折り曲げて形成されており、波形底板35の先端縁から後端縁まで延在する凸条351と凹条352とが交互に平行に形成されている。凸条351は、その延在方向に垂直な断面が上に凸で頂点が円弧状に面取りされた三角形となって上方に突出し、凹条352は、その延在方向に垂直な断面が下に凸で頂点が円弧状に面取りされた三角形となって下方に突出している。
【0033】
嚥下調整食用スプーン30によっても上記第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。但し、嚥下調整食用スプーン30によって掬われる嚥下調整食片5Aの切断面は、断面が略正弦波形状の凹凸が形成された面となる点で第一実施形態と異なる。これにより、摂食・嚥下困難者は、上記実施形態とは異なる食感を楽しむことができる。
(第四実施形態)
【0034】
以上の例では、波形底板を、その凹凸パターンの断面形状が水平方向においてほぼ対称となるように形成した例を説明した。ただ、この構成に限られず、波形底板の断面形状を水平方向において非対称とすることも可能であることはいうまでもない。このような例を第四実施形態として、
図9を参照しながら説明する。
図9は、第四実施形態に係る嚥下調整食用スプーン40の先端側から見た側面図である。この図に示す嚥下調整食用スプーン40は、掬い部43の波形底板45以外の構成は上記第一実施形態と同じであるため、同じ構成については説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0035】
嚥下調整食用スプーン40の掬い部43を構成する波形底板45は、長方形状の薄平板を嚥下調整食用スプーン40の延在方向に垂直な断面が所定の波形となるように波形に折り曲げて形成されており、波形底板45の先端縁から後端縁まで延在する凸条451と凹条452とが交互に平行に形成されている。凸条451は、その延在方向に垂直な断面が上に鋭角に凸の三角形となって上方に突出し、凹条452は、その延在方向に垂直な断面が下に凸の円弧となって下方に突出している。
【0036】
嚥下調整食用スプーン40によっても上記第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。但し、嚥下調整食用スプーン40によって掬われる嚥下調整食片5Aの切断面は、断面が所定の波形の凹凸が形成された面となる点で第一実施形態と異なる。これにより、摂食・嚥下困難者は、上記実施形態とは異なる食感を楽しむことができる。
(第五実施形態)
【0037】
続いて、本発明の第五実施形態に係る嚥下調整食用スプーン50について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、第五実施形態に係る嚥下調整食用スプーンの一部を断面で示す先端側から見た斜視図である。嚥下調整食用スプーン50は、掬い部53以外の構成は上記第一実施形態と同じであるため、同じ構成については説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0038】
嚥下調整食用スプーン50の掬い部53は、波形底板55と、波形底板55の後端縁に設置された奥壁57とを備えている。下方から両脇の側方を波形底板55に、奥側の側方を奥壁57によって囲まれた空間が、掬った嚥下調整食を保持する保持空間となる。
【0039】
波形底板55は、長方形状の薄平板を、嚥下調整食用スプーン50の延在方向に垂直な断面が全体的に円弧状となるように湾曲させた湾曲板の状態で、当該湾曲線に沿って三角波形となるように波形に折り曲げて形成されている。波形底板55の先端縁から後端縁まで凸条551と凹条552とが交互に延在している。
【0040】
凸条551は、その延在方向に垂直な断面が上に凸の三角形となって上方に突出し、凹条552は、その延在方向に垂直な断面が下に凸の三角形となって下方に突出している。奥壁57は薄平板であり、波形底板55の円弧状後端縁全体にわたって、波形底板55に対して垂直に立設されている。
【0041】
嚥下調整食用スプーン50によっても上記第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。但し、嚥下調整食用スプーン50によって掬われる嚥下調整食片5Aの切断面は、断面が全体として湾曲しながら三角波形の凹凸が形成された面となる点で第一実施形態と異なる。これにより、摂食・嚥下困難者は、上記実施形態とは異なる食感を楽しむことができる。
(第六実施形態)
【0042】
続いて、本発明の第六実施形態に係る嚥下調整食用スプーン60について、
図11を参照しながら説明する。
図11は、第六実施形態に係る嚥下調整食用スプーンの斜視図である。嚥下調整食用スプーン60は、スプーンの先端側ではなく根元側に嚥下調整食片5Aに凹凸を形成するために表面に凹凸が形成された掬い部63−2を備えていることを特長としている。
【0043】
図11に示すように、嚥下調整食用スプーン60は、柄部61と、柄部61の先端に固定された第一掬い部63−1と、柄部61の根元に固定され、表面に凹凸が形成された第二掬い部63−2とを備えている。先端側の第一掬い部63−1は、表面に凹凸が形成されていない通常のスプーンの掬い部と同じ形状である。
【0044】
第二掬い部63−2は、表面に凹凸が形成された、全体的に平板状の波形底板65を備えている。この波形底板65上に掬った嚥下調整食片5Aを保持する。波形底板65は、長方形状の薄平板を嚥下調整食用スプーン60の延在方向に垂直な断面が三角形波となるように波形に折り曲げて形成されており、波形底板65の先端縁から後端縁まで凸条651と凹条652とが交互に平行に延在している。
【0045】
凸条651は、その延在方向に垂直な断面が上に凸の三角形となって上方に突出し、凹条652は、同じく断面が下に凸の三角形となって下方に突出している。
【0046】
嚥下調整食用スプーン60によれば、第一掬い部63−1を用いて嚥下調整食5を掬えば、通常のスプーンと同様の食感を得ることができ、第二掬い部63−2を用いて嚥下調整食5を掬えば、従来と大きく異なる食感を得ることができ、一つのスプーンで異なる食感を楽しむことが可能となる。
(第七実施形態)
【0047】
続いて、本発明の第七実施形態に係る嚥下調整食用スプーン70について、
図12を参照しながら説明する。
図12は、第七実施形態に係る嚥下調整食用スプーンの斜視図である。嚥下調整食用スプーン70は、スプーンの先端側及び根元側の双方に、嚥下調整食片5Aに凹凸を形成するために表面に凹凸が形成された掬い部73−1,73−2を備えていることを特長としている。
【0048】
図12に示すように、嚥下調整食用スプーン70は、柄部71と、柄部71の先端に固定された第一掬い部73−1と、柄部71の根元に固定された第二掬い部73−2とを備えている。第一掬い部73−1は、上記第一実施形態の嚥下調整食用スプーン10の掬い部13と同じ構成である。
【0049】
第二掬い部73−2は、表面に凹凸が形成された波形底板75を備えており、上記第六実施形態の第二掬い部63−2とほぼ同様の構成であるが、凹凸の形状が異なっている。波形底板75の嚥下調整食用スプーン70の延在方向に垂直な断面は、上記第三実施形態と同様に略正弦波となっている。
【0050】
嚥下調整食用スプーン70によれば、先端側の第一掬い部73−1で掬った場合と、根元側の第二掬い部73−2で掬った場合とで、嚥下調整食片5Aの切断面の凹凸形状が異なるため、一つのスプーンで異なる食感を楽しむことが可能となる。
(第八実施形態)
【0051】
以上の例では、掬い部の全体に波形状の波形底板を形成する例を説明した。ただ、波形底板は掬い部の全体でなく、一部にのみ形成することもできる。このような一例を第八実施形態として、
図13に示す。この図に示す嚥下調整食用スプーン80は、掬い部83の波形底板85の形状を、ほぼ平滑面としつつ、掬い部83の先端縁から一定幅の部分にのみ、波形状の波形底板85を形成している。これにより、嚥下調整食に嚥下調整食用スプーン80の先端を突き刺した際の切断面を波形状とでき、嚥下時に摂食・嚥下困難者の舌に触れやすい嚥下調整食片の切断面を変化させて食感を楽しむことが可能となる。なお嚥下調整食用スプーン80の柄部81や掬い部83等の形状は、上述した第一実施形態〜第七実施形態で説明したものと同様の構成が適宜利用できるので、詳細説明を省略する。
【0052】
図13の例では、例えば掬い部83の長さを1.2cm〜4cm、幅を1cm〜3cmとできる。また波形底板85で形成される溝の幅は1mm〜1.2mm、深さを1mm〜6mmとできる。さらに波形底板85を設ける幅は、掬い部83の先端縁から4mm以上とできる。
【0053】
また波形底板は、その深さを一定とするのみならず、例えば掬い部の先端縁に近いほど深く、後端に進むほど浅くなるように形成することもできる。これによって、嚥下調整食片の表面に徐々に凹凸が形成されるように、表面形状を変化させることが可能となる。
【0054】
以上の嚥下調整食用スプーンは、硬さが1000〜20000N/m
2のゼリーである嚥下調整食用として好適に利用できる。特に、厚生労働省が定める摂食・嚥下困難者用食品の規格における許可基準Iの2.5×10
3〜1×10
4N/m
2、及び許可基準IIの、1×10
3〜1.5×10
4N/m
2の嚥下調整食用のスプーンとして、また嚥下調整食ピラミッドのレベル0〜2に該当する嚥下調整食用のスプーンとして、好適に利用できる。
【0055】
以上、本発明の第一〜第八実施形態について詳細に説明したが、本発明の実施の形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、プラスチック製の嚥下調整食用スプーンについて説明したが、紙製のスプーン等、嚥下調整食用スプーンの材料としては適宜他の素材を用いることができる。
【0056】
また、上記実施形態では、凸条及び凹条が波形底板の先端縁から後端縁まで全体に形成された場合について説明したが、摂食・嚥下困難者が異なる食感を感じることのできる凹凸を嚥下調整食の切断面に形成できるのであれば、波形底板の一部にだけ形成されていても良い。