(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233878
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】まつ毛成形具
(51)【国際特許分類】
A45D 2/48 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
A45D2/48
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-174292(P2013-174292)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42204(P2015-42204A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100098109
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩平
(72)【発明者】
【氏名】安保 明
【審査官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−206126(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3111955(JP,U)
【文献】
実公昭50−010954(JP,Y1)
【文献】
登録実用新案第3005171(JP,U)
【文献】
実公昭49−025670(JP,Y1)
【文献】
実公昭45−000918(JP,Y1)
【文献】
実公昭02−013680(JP,Y1)
【文献】
実公昭33−003142(JP,Y1)
【文献】
特開2010−188150(JP,A)
【文献】
実開昭49−003795(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 2/48
A45D 24/08
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルと、該ハンドルに取り付けられたまつ毛の成形部材とを含み、成形部材に、まつ毛に宛がいながら成形するための成形部が設けられ、成形部材は、ハンドルに設けられた成形部材用の収納部に収納されるまつ毛成形具において、
成形部材は、収納された状態から使用状態となる位置まで移動が可能であり、且つ成形部材を使用状態の位置方向に弾性的に付勢する付勢手段が設けられており、収納部に収納された成形部材が前記付勢手段の弾性力によって使用状態の位置方向に移動することをロックするロック機構が設けられ、且つそのロックを解除するためのアクチュエータが設けられており、
ハンドルは、不意にロックが解除されたときに、収納されている成形部材が前記付勢手段の弾性力によって使用状態の位置方向に移動することを阻止するためのストッパー部材を有し、該ストッパー部材は、成形部材が使用状態となる位置へ移動する方向にあって、成形部材の前記付勢手段の弾性力による使用状態の位置方向への移動を阻止するために、その弾性力よりも大きな係止力を有して成形部材の少なくとも一部を覆い、且つその覆った状態を開放して成形部材の使用状態の位置方向への移動阻止を解除できるようにハンドルに取り付けられていることを特徴とするまつ毛成形具。
【請求項2】
成形部材の、収納された状態から使用状態となる位置までの移動は旋回軸線を中心とする旋回移動であり、成形部材は、ハンドルに設けられた成形部材用の収納部に収納されるように折り畳み可能にハンドルに枢支されている請求項1記載のまつ毛成形具。
【請求項3】
成形部材が使用状態に置かれたときに、ストッパー部材を、それが成形部材を覆っていたときの元の位置に戻すことにより、そのストッパー部材を把持面の一部として機能させることができるように、ストッパー部材が形成されている請求項1又は請求項2記載のまつ毛成形具。
【請求項4】
ストッパー部材は、横断面がほぼU字形をなし、ハンドルの両側面を跨ぐように取り付けられ、ハンドルの両側面の間に設けられた収納部に収納されている成形部材を上から覆う請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載のまつ毛成形具。
【請求項5】
ストッパー部材は、旋回可能にハンドルに取り付けられている請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載のまつ毛成形具。
【請求項6】
ストッパー部材は、横断面がほぼU字形をなし、ハンドルの両側面を跨ぐように旋回可能にハンドルに取り付けられ、ハンドルの両側面の間に設けられた収納部に収納されている成形部材を上から覆うものであり、
横断面がU字形をなすストッパー部材のそのU字形の頂部であって、ストッパー部材の旋回軸線と反対側の端部に存在する頂部が、その頂部と対向する成形部材又は収納部の開口のいずれからも距離を置いて浮いている請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載のまつ毛成形具。
【請求項7】
成形部材に、まつ毛を加熱しながら成形するための電熱加熱部材が設けられている請求項1乃至請求項6のいずれか一項記載のまつ毛成形具。
【請求項8】
成形部材の周面一側に成形部が設けられ、該成形部が弧状の凹曲面をなすように成形部材が弧状に曲がっている部分を有する請求項7記載のまつ毛成形具
【請求項9】
成形部材の周面一側に成形部が設けられ、該成形部の表面が、鏡面に形成された鏡面状成形部である請求項7又は請求項8記載のまつ毛成形具。
【請求項10】
成形部材の周面他側に第二の成形部が設けられ、該成形部は、弧状の凸曲面をなし、表面に複数の櫛歯が並んで設けられている櫛歯状成形部である請求項7乃至請求項9のいずれか一項記載のまつ毛成形具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まつ毛を美しく成形するためのまつ毛成形具に関する。
【背景技術】
【0002】
まつ毛を成形するためのまつ毛成形具は、2種類存在する。その一つは、対向する一対の細長い挟持部を有し、その挟持部でまつ毛を上下から挟んで強圧することによりまつ毛を成形するものである。他の一つは、細長く延びる成形部の周面の片側をまつ毛に宛がいながら、まつ毛を梳いたり加熱したりすることによりまつ毛を成形するものである。本発明は、後者の、他の一つのまつ毛成形具に関する。
【0003】
特許文献1や特許文献2のような電熱加熱式のまつ毛成形具は、棒状の成形部材がハンドルの先端から突出しており、キャップを嵌めて携帯等するものである。したがって、折り畳んだりすることができず、まつ毛成形具を短くすることができないから、ハンドバッグ等に入れたときに嵩張るという欠点がある。
【0004】
そこで、特許文献3のように、成形部材を折り畳み可能として、全長を短くするものが存在する。特許文献3の成形部材は大ぶりに形成されており、櫛歯のみをハンドルに設けられた収納部に収納し、櫛台はハンドルの外側に出ている構成である。このような構成であるから、折り畳まれている成形部材を開くときは、ハンドルの外側に出ている櫛台を指で摘んで容易に開くことができる。
【0005】
これに対して、特許文献1や特許文献2のような電熱加熱式のまつ毛成形具の成形部材は細長い棒状であるから、このような成形部材を折り畳み式とすれば、成形部材のほとんどの部分がハンドルに設けられた収納部に収納されるので、指で成形部材を摘みづらく、容易に開くことができない。そこで、成形部材を開く方向に弾性的に付勢し、収納部に収納したときにロック可能とし、ボタン操作によってそのロックを解除することにより成形部材を自動的に開く構成とすれば、指で成形部材を摘むことなく成形部材を開くことができる。しかし、このようなまつ毛成形具をハンドバッグ等に入れて携帯する場合には、振動などによってボタンが押された場合にロックが外れて成形部材が開いてしまう虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005ー193020号公報
【特許文献2】特開2001−120333号公報
【特許文献3】特開2002ー125743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ハンドルに設けられた収納部に収納されている成形部材が、弾性付勢力によって使用位置に移動することを規制するためにロックされた収納状態が維持されている場合に、不意にそのロックを解除する力が働いてロックが解除されても、成形部材の収納状態を確実に維持することができるまつ毛成形具を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、ハンドルと、該ハンドルに取り付けられたまつ毛の成形部材とを含み、成形部材に、まつ毛に宛がいながら成形するための成形部が設けられ、成形部材は、ハンドルに設けられた成形部材用の収納部に収納されるまつ毛成形具において、成形部材は、収納された状態から使用状態となる位置まで移動が可能であり、且つ成形部材を使用状態の位置方向に弾性的に付勢する
付勢手段が設けられており、収納部に収納された成形部材が
前記付勢手段の弾性力によって
使用状態の位置方向に移動することを
ロックするロック機構が設けられ、且つ
そのロックを解除するためのアクチュエータが設けられており、ハンドルは、不意にロックが解除されたときに、収納されている成形部材が
前記付勢手段の弾性力によって使用状態の位置方向に移動することを阻止するためのストッパー部材を有し、該ストッパー部材は、
成形部材が使用状態となる位置へ移動する方向にあって、成形部材の
前記付勢手段の弾性力による使用状態の位置方向への移動
を阻止
するために、
その弾性力よりも大きな係止力を有して成形部材の少なくとも一部を覆い、且つその覆った状態を開放して成形部材の
使用状態の位置方向への移動阻止を解除できるようにハンドルに取り付けられている構成である。
【0009】
請求項2記載の発明は、成形部材の、収納された状態から使用状態となる位置までの移動は旋回軸線を中心とする旋回移動であり、成形部材は、ハンドルに設けられた成形部材用の収納部に収納されるように折り畳み可能にハンドルに枢支されている構成である。
【0010】
請求項3記載の発明は、成形部材が使用状態に置かれたときに、ストッパー部材を
、それが成形部材を覆っていたときの元の位置に戻すことにより、そのストッパー部材を把持面の一部として機能させることができる
ように、ストッパー部材が形成されている構成である。
【0011】
請求項4記載の発明は、ストッパー部材が、横断面がほぼU字形をなし、ハンドルの両側面を跨ぐように取り付けられ、ハンドルの両側面の間に設けられた収納部に収納されている成形部材を上から覆う構成である。
【0012】
請求項5記載の発明は、ストッパー部材が、旋回可能にハンドルに取り付けられている構成である。
【0013】
請求項6記載の発明は、
横断面がほぼU字形をなすストッパー部材が、ハンドルの両側面を跨ぐように旋回可能にハンドルに取り付けられ、ハンドルの両側面の間に設けられた収納部に収納されている成形部材を上から覆うものであり、
横断面がU字形をなすストッパー部材の
そのU字形の頂部であって、ストッパー部材の旋回軸線と反対側の端部に存在する頂部が、その頂部と対向する成形部材又は収納部の開口のいずれからも距離を置いて浮いている構成である。
【0014】
請求項7記載の発明は、成形部材に、まつ毛を加熱しながら成形するための電熱加熱部材が設けられている構成である。
【0015】
請求項8記載の発明は、成形部材の周面一側に成形部が設けられ、該成形部が弧状の凹曲面をなすように成形部材が弧状に曲がっている部分を有している構成である。
【0016】
請求項9記載の発明は、成形部材の周面一側に成形部が設けられ、この成形部の表面が、鏡面に形成された鏡面状成形部である構成である。
【0017】
請求項10記載の発明は、成形部材の周面他側に第二の成形部が設けられ、この成形部は、弧状の凸曲面をなし、表面に複数の櫛歯が並んで設けられている櫛歯状成形部である構成である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明は、収納部に収納された成形部材が
前記付勢手段の弾性力によって
使用状態の位置方向に移動することを
ロックするロック機構が設けられ、且つ
そのロックを解除するためのアクチュエータが設けられており、ハンドルは、不意にロックが解除されたときに、収納されている成形部材が
前記付勢手段の弾性力によって使用状態の位置方向に移動することを阻止するためのストッパー部材を有している。したがって、本発明は、成形部材が自然に移動することを阻止するロック機構とストッパー部材の二重の規制手段を有しており、不意にロックが解除されても成形部材が飛び出すことがないのである。
また、ストッパー部材は、
成形部材が使用状態となる位置へ移動する方向にあって、成形部材の
前記付勢手段の弾性力による使用状態の位置方向への移動
を阻止
するために、
その弾性力よりも大きな係止力を有して成形部材の少なくとも一部を覆い、且つその覆った状態を開放して成形部材の
使用状態の位置方向への移動阻止を解除できるようにハンドルに取り付けられている。したがって、成形部材を収納した状態で、ストッパー部材を含めてハンドルを持ち易い形状としておけば、成形部材を移動させて使用状態としたときに、ストッパーを元の状態に復帰させることにより持ち易い形状とすることもできる。
【0019】
請求項2記載の発明は、成形部材の、収納された状態から使用状態となる位置までの移動は旋回軸線を中心とする旋回移動であり、成形部材は、ハンドルに設けられた成形部材用の収納部に収納されるように折り畳み可能にハンドルに枢支されている。成形部材を収納部に収納する折畳み式であるから、不使用時には成形部材を折り畳んでまつ毛成形具の長さを容易に短くすることができる。また、ハンドバッグ等に入れて携帯するときに、折り畳んで長さを短くすることにより、コンパクトに収納することができる。
【0020】
請求項3記載の発明は、成形部材が使用状態に置かれたときに、ストッパー部材を
、それが成形部材を覆っていたときの元の位置に戻すことにより、そのストッパー部材を把持面の一部として機能させることができる
ように、ストッパー部材が形成されている。把持面とは、まつ毛成形具の使用時において、使用者の手と接触し得る面である。把持面は、ハンドルの表面の一部であるが、特に把持面と呼ばれるからには、使用時に手がその把持面に当たったときに、使用者に不快感や痛みを感じさせることのない、あるいは、使用しづらい不自然な持ち方を強要することのないような、使用者に快適な感覚を与えることが内包された面である。ストッパー部材を把持面の一部として機能させる構成とすることによりハンドルを握った使用者の手に快適な感覚を与えることができる。したがって、請求項4記載の発明は、成形部材が使用状態に置かれたときに、使用者の手に快適な感覚を与えることができるまつ毛成形具を提供することできる。
【0021】
請求項4記載の発明は、ストッパー部材の横断面がほぼU字形をなし、ハンドルの両側面を跨ぐように取り付けられ、ハンドルの両側面の間に設けられた収納部に収納されている成形部材を上から覆っている。ハンドルの両側面の間に設けられた収納部に収納されている成形部材を上から覆っているので、成形部材が弾性力で不意に飛び出すことを阻止することができる。また、ストッパー部材の横断面がほぼU字形であるから、ストッパー部材の屈曲表面は滑らかな弧状面となり、使用時にその部分に手が当たったときに良好な感覚を与えることができる。
【0022】
請求項5記載の発明は、ストッパー部材が、旋回可能にハンドルに取り付けられている。したがって、ストッパー部材によるストッパー機能の係脱を、ストッパー部材を旋回させることによって行うことができるから、容易に操作することができる。
【0023】
請求項6記載の発明は、
ストッパー部材が、横断面がほぼU字形をなし、ハンドルの両側面を跨ぐように旋回可能にハンドルに取り付けられ、ハンドルの両側面の間に設けられた収納部に収納されている成形部材を上から覆うものであり、横断面がU字形をなすストッパー部材の
そのU字形の頂部であって、ストッパー部材の旋回軸線と反対側の端部に存在する頂部が、その頂部と対向する成形部材又は収納部の開口のいずれからも距離を置いて浮いている。したがって、例えば、ハンドルを持った手の親指を、ストッパー部材の旋回軸線と反対側の端部に存在する頂部に引っ掛けて、ストッパー部材を突き上げるように旋回させて半開きとし、それから他方の手でストッパー部材を開くように容易に旋回させることができる。最初から他方の手でストッパー部材の両側面をつまんで旋回させることもできるが、指先が滑ることもあるので、まずストッパー部材の前記頂部に親指を引っ掛けて半開きにする方が確実に旋回させることができる。
【0024】
請求項7記載の発明は、成形部材に、まつ毛を加熱しながら成形するための電熱加熱部材が設けられているので、熱によりまつ毛を確実に成形することができる。
【0025】
請求項8記載の発明は、成形部材の周面一側に成形部が設けられ、該成形部が弧状の凹曲面をなすように成形部材が弧状に曲がっている部分を有する。成形部が弧状の凹曲面をなしているので、その凹曲面がまつ毛にフィットし、アイロンのようにしてまつ毛に当ててまつ毛を全体的に成形することができる。
【0026】
請求項9記載の発明は、成形部の表面が、鏡面に形成された鏡面状成形部である。したがって、その鏡面に付着したマスカラの除去が楽である。
【0027】
請求項10記載の発明は、成形部材の周面他側に第二の成形部が設けられ、この成形部は、弧状の凸曲面をなし、表面に複数の櫛歯が並んで設けられている櫛歯状成形部である。したがって、櫛歯を使用してまつ毛を梳くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3】ストッパー部材を開いた状態の斜視図である。
【
図6】成形ヘッドを櫛状成形部側から見た図である。
【
図8】一方の半割ハンドルを分離させた斜視図である。
【
図9】一方の半割ハンドルの前端付近の斜視図である。
【
図10】成形部材を閉じた状態における半割ハンドルを分離させた斜視図である。
【
図12】成形ヘッドを取り外した成形部材の斜視図である。
【
図13】他方の半割ハンドルの内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。実施形態のまつ毛成形具1は、電熱加熱式のまつ毛成形具である。
図1に示すように、まつ毛成形具1は、ハンドル2の先端に細長い成形部材3が取り付けられている。また、
図2に示すように成形部材3は折り畳み可能にハンドル2に取り付けられている。後述するように、成形部材3は、ハンドル2に旋回可能に枢支され、旋回させることにより折り畳むことができる。また、
図3に示すように、ハンドル2には、成形部材3を折り畳んで収納するための収納部4が形成され、ハンドル2の底部に収納部4の開口5が開いている。使用状態に開いた成形部材3を旋回させることにより、成形部材3を、開口5を介して収納部4の中に折り畳むことができる。
図2に示すように、本実施形態では、成形部材3はほぼ完全に収納部4の中に収納されているが、成形部材3の一部が収納部4からはみ出ていてもよい。成形部材3がはみ出ているときに、少なくとも成形ヘッド8は収納部4の中に納まっていることが好ましい。
【0030】
後述するように、成形部材3は、使用状態の開かれた位置方向に弾性的に付勢されている。また、折り畳まれた成形部材3が、折り畳まれた状態を維持するために、開かれた位置方向に旋回することを規制するためのロック機構が設けられている。ボタン6は、そのロックを解除するためのアクチュエータであり、ボタン6を押すことによりロックが解除され、成形部材3は、付勢力により使用状態の開かれた位置方向まで一気に旋回する。符号7は、ストッパー部材であり、成形部材3が折り畳まれているときに、不意にボタン6が押されて成形部材3が突然飛び出すことを阻止するためのものであり、ハンドル2に旋回可能に取付けられている。
【0031】
成形部材3は、合成樹脂で形成されている。
図1に示すように、成形部材3は、その一部として成形ヘッド8を有する。また、
図5及び
図6に示すように、成形ヘッド8は独立した部材として形成されている。成形ヘッド8の一側に櫛状成形部9が形成され、他側に鏡面状成形部10が形成されている。成形部材3の先端には、三角形をなす一対の小さなツノ片11,11が一体に形成されている。また、成形ヘッド8の内部に線状の加熱部12が配置されている。なお、成形ヘッド8を成形部材3と一体に成形してもよいことは言うまでもない。
【0032】
図5に示すように、成形ヘッド8に形成された櫛状成形部9は形状の異なる二種類の櫛歯が交互に並んでいる。一方の櫛歯15はその上面が三角形をなしており、他方の櫛歯16の上面は緩やかな弧状をなしており、一方の櫛歯15は他方の櫛歯16よりも高く形成されている。櫛状成形部9は、マスカラの付いたまつ毛を梳くために使用される。また、鏡面状成形部10は、まぶたのカーブに合わせた形状で熱が伝わるように設計されており、アイロンのようにしてまつ毛を下から押し上げて使用する。鏡面状成形部10は、文字通り表面が鏡面のように仕上げられているので、その鏡面に付着したマスカラの除去が楽である。ツノ片11,11は、マスカラでまつ毛同士が付いたときに、まつ毛同士を離して分けるときなどに使用される。すなわち、まつ毛を部分的に整えたり修正したりするときなどに使用される。なお、櫛歯の構成は以上のものに限定されるものでなく、例えば、同じ形状や同じ高さの櫛歯を複数並べて配置してもよく、3種類以上の櫛歯を配列してもよい。
【0033】
図7に示すように、加熱部12は、金属製の芯線13の周囲にニクロム線14を螺旋状に巻き付けたものである。芯線13の表面は絶縁材が被覆され、ニクロム線14を流れる電流が芯線13に流れ出ることを防止している。芯線13を使用することにより、螺旋状のニクロム線14が大きく変形したり移動したりすることを防止することができる。また、加熱部12は先端部で二つ折りにされているので、成形部材3の内部には二本の加熱部12が存在する。
図6に示すように、二つ折りにされた二本の加熱部12の一方の加熱部12は、櫛状成形部9側に存在して各櫛歯15,16の間から覗いている。他方の加熱部12は、一方の加熱部12の後ろ側にあって鏡面状成形部10に近接した内側を通っている。また、この鏡面状成形部10に近接した内側を通る加熱部12を、鏡面状成形部10の弧状の凹曲面と平行に延びるように配置することにより、鏡面状成形部10のどの部分でも均一にまつ毛を加熱できるようにするのが好ましい。このように加熱部12は二つ折りにされているので、加熱部12が通電されたとき、櫛状成形部9と鏡面状成形部10の両方が加熱される。
【0034】
図12に示すように、成形部材3の基部17の一方の側面には、成形部材3に旋回付勢力を与えるためのコイル状の旋回付勢バネ18が取り付けられている。旋回付勢バネ18の中心軸線は、成形部材3の旋回軸線と一致する。旋回付勢バネ18の一方のバネ端(図示せず。)は基部17に固定されており、他方のバネ端19は直角に曲げられている。また、基部17には、成形部材3の旋回軸線方向に延びる軸孔20が設けられている。
図13に示すように、半割ハンドル21には軸部22が形成されており、この軸部22と成形部材3の軸孔20とが遊嵌することにより、成形部材3はハンドル2に対して軸部22を中心に旋回する。また、成形部材3に取り付けられている旋回付勢バネ18のバネ端19が、半割ハンドル21の内面に設けられたスリット23に係合することにより、成形部材3に旋回付勢力が付与される。
【0035】
図3に示すように、ハンドル2にストッパー部材7が旋回可能に取り付けられている。使用状態にある成形部材3を折り畳むとき、あるいは折り畳まれている成形部材3を使用状態に旋回させるときは、いずれもこの
図3のように、ストッパー部材7を開いて行う。そして、成形部材3を使用するとき、及び使用した成形部材3を折り畳んだときのいずれの場合においても、開いたストッパー部材7は
図1及び
図2に示すように閉じる。ストッパー部材7の内面には一対の突起24が形成され、その突起24に対応するハンドル2の表面に一対の窪み25が形成されているので、ストッパー部材7を閉じたときに突起24が窪み25に係止する。そして、その係止力は、成形部材3を開かせるための旋回付勢バネ18の付勢力よりも大きいので、ストッパー部材7が開くことを防止する。
【0036】
ストッパー部材7は、断面がU字形の板状に形成されている。また、そのU字形の屈曲部分の表面は滑らかな弧状をなしている。さらに、U字形の縦方向の中心線に関し左右対称の形状をなしている。
図1に示すように、ストッパー部材7の頂部により構成される頂部ライン26と、ハンドル2の底部により構成される底部ライン27とは、その境界でストッパー部材7の頂部がハンドル2の底部よりも浮いてやや段差を有するものの、一定の流れを有するラインを構成している。また、成形部材3を折り畳んだ状態と、成形部材3を開いた使用状態のいずれの場合においても、ストッパー部材7のハンドル2に対する位置関係は同じである。したがって、使用時にハンドル2を手に持って、指がストッパー部材7の表面に当たったときに、ストッパー部材7に当たった指に違和感がなく、ストッパー部材7の屈曲部の表面が滑らかな弧状をなしていることもあって、ストッパー部材7の表面を含めた一つの把持面として認識することができる。したがって、使用時にストッパー部材7が指に痛みを与えることがなく、ストッパー部材7が不自然な握り方を強要することもない。さらに、
図3に示すように、ハンドル2の側面に、ストッパー部材7の形状に適応する凹所28を形成することにより、ハンドル2の表面とストッパー部材7の表面の段差をなくしたり小さくしたりすることができるから、さらに違和感なくハンドル2を持つことができる。
【0037】
前述したように、成形部材3は、使用状態の開かれた位置方向に弾性的に付勢されている。また、折り畳まれた成形部材3が、折り畳まれた状態を維持するために、開かれた位置方向に旋回することを規制するためのロック機構が設けられている。ボタン6は、そのロックを解除するためのアクチュエータであり、ボタン6を押すことによりロックが解除され、成形部材3は、付勢力により使用状態の開かれた位置方向まで一気に旋回する。ここで、まずロック機構について説明する。
図4に示すように、成形部材3の基部17の他方の側面に、ボタン6に付勢力を与えるためのコイル状のボタン付勢バネ29が取り付けられる。ボタン付勢バネ29の中心軸線は、成形部材3の旋回軸線と一致する。
図10に示すように、ボタン6は成形部材3の基部17の他方の側面に取り付けられており、ボタン6の内部にボタン付勢バネ29が収納され、ボタン6を弾力的に付勢している。
図8〜
図10に示すように、半割ハンドル30にはボタン6を半割ハンドル30の表面に覗かせるためのボタン孔31が形成されている。ボタン6の底部にはフランジ32が形成されているので、ボタン6がボタン孔31から抜け出すことはない。また、ボタン6は十字形に形成され、ボタン孔31も十字形に形成されているから、ボタン6はハンドル2に対して回転しない。なお、ボタン6を回転させない構成として、他の構成を利用してもよいことは勿論である。
【0038】
図10及び
図11は、成形部材3が折り畳まれている状態を示している。
図11に示すように、成形部材3が折り畳まれているときは、ボタン6は成形部材3の基部17の側面からやや浮いている。浮いているのは、ボタン付勢バネ29の付勢力による。この状態のとき、係止突起35が基部17の側面から突出している。係止突起35は垂直方向に移動可能で、基部17の内部でコイルバネにより付勢力を付与されて弾力的に突出方向に押圧されている。したがって、係止突起35を上から押圧すると下降する。係止突起35の一方の側に垂直壁面36が形成され、他方の側に傾斜壁面37が形成されている。成形部材3が折り畳まれているときは、フランジ32に形成されている切欠き33内を通過して
図9に示す半割ハンドル30の係止壁34が係止突起35の垂直壁面36に係止する。これにより、成形部材3は折り畳まれた状態にロックされる。
【0039】
次に、折り畳まれた状態にロックされている成形部材3のロック状態が、ボタン6を押すことにより解除される機構について説明する。前述したように、
図11はボタン6が浮いて成形部材3がロック状態にあるが、ここからボタン6を押すとボタン6のフランジ32が係止突起35を押して下降させる。係止突起35がその半分ほど下降すると、半割ハンドル30の係止壁34に係止していた垂直壁面36も下降して係止壁34から外れるので、それにより係止状態が解除され成形部材3は付勢力により使用位置まで一気に旋回する。
図9に示すように、半割ハンドル30には障害突起38が形成されており、成形部材3の旋回中に、係止突起35の垂直壁面36が、旋回付勢バネ18の付勢力により、障害突起38の傾斜面39を乗り越えて使用状態まで旋回する。この障害突起38を形成した理由は、
図1に示すように、まつ毛を成形するときは櫛状成形部9を使用する場合と鏡面状成形部10を使用する場合がある。鏡面状成形部10を使用するときに、成形部材3にはそれが閉じる方向へ旋回させる力がまつ毛から加わるので、使用中に成形部材3がわずかではあるが閉じる方向へ旋回する可能性がある。そこで、障害突起38を形成することにより、使用中に、係止突起35の傾斜壁面37がその障害突起38に当たって成形部材3の旋回を阻止することができる。なお、傾斜壁面37は文字通り傾斜面であるから、手の力によって成形部材3を閉じる方向へ旋回させたときは、その傾斜壁面37が障害突起38を乗り越えて旋回することは言うまでもない。
【0040】
また、本実施形態のまつ毛成形具1は、成形部材3を使用状態に開いたときに、自動的にニクロム線14に乾電池40から電流が流れて加熱され、成形部材3を折り畳んだときに自動的に電流が切れる構造を有するので、以下この構造について説明する。
図12は、ニクロム線14に電流が流れている状態を示している。すなわち、成形部材3は使用状態に開かれている。なお、
図12は、加熱部12のニクロム線14の取付け状態を表わすために、成形ヘッド8を取り外した状態を示しており、加熱部12を両側から挟持して固定するためのプラスチック製固定部材44が露出している。すなわち、成形ヘッド8の内部に加熱部12及び固定部材44を嵌挿することにより、成形ヘッド8は着脱可能に成形部材3の一部として取り付けられる。符号41,41はハンドル2に取り付けられる通電端子であり、通電部材(図示せず。)を介して乾電池40とつながっている。また、符号42は成形部材3の基部17に取り付けられた通電板であり、基部17の両側に一対取り付けられ、それぞれニクロム線14とつながっている。通電端子41と通電板42が接触することによりニクロム線14に電流が通電される。そして、
図10及び
図11は成形部材3が折り畳まれた状態を示しており、図から明らかなように通電端子41と通電板42とが非接触状態となり、ニクロム線14に電流が流れず加熱されない。また、
図8に示す符号43は温度調節ボタンであって、温度調節ボタン43を左右いずれかに移動させることによって、ニクロム線14の温度を調節することができる。温度の調節は、乾電池40と通電端子41とをつなぐ通電部材に抵抗(図示せず。)を介在させ、温度調節ボタン43の位置によって抵抗の大きさを切り換えることにより、温度を調節することができる。温度調節の温度としては40℃〜90℃の間で任意に選択可能で、本実施形態のように2段階で温度切替ができる場合は、例えば80℃と60℃の2種類に温度設定ができるようにしてもよい。また、3種類以上の温度設定ができるようにしてもよい。また、段階的に温度を切り替える構成に代えて、ダイヤルによって連続的に温度を調節できる構成としてもよい。温度調節機能を設けず、一定の温度で加熱する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
弾性的付勢力によって成形部材が自動的に開く折り畳み式のまつ毛成形具であって、折り畳まれた成形部材が不意に開くことを確実に阻止し、且つ使用時に握り心地の良いまつ毛成形具を提供することができる。また、加熱によるまつ毛成形部を備えることにより、まつ毛を成形しやすいまつ毛成形具を提供することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 まつ毛成形具、 2 ハンドル、 3 成形部材、 4 収納部、 5 開口、 6 ボタン、 7 ストッパー部材、 8 成形ヘッド、 9 櫛状成形部、 10 鏡面状成形部、 11 ツノ片、 12 加熱部、 13 芯線、 14 ニクロム線、 15 一方の櫛歯、 16 他方の櫛歯、 17 成形部材の基部、 18 旋回付勢バネ、 19 バネ端、 20 軸孔、 21 半割ハンドル、 22 軸部、 23 スリット、 24 突起、 25 窪み、 26 頂部ライン、 27 底部ライン、 28 凹所、 29 ボタン付勢バネ、 30 半割ハンドル、 31 ボタン孔、 32 フランジ、 33 切欠き、 34 係止壁、 35 係止突起、 36 垂直壁面、 37 傾斜壁面、 38 障害突起、 39 傾斜面、 40 乾電池、 41 通電端子、 42 通電板、 43 温度調節ボタン