特許第6233881号(P6233881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233881
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】回転角検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20171113BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G01D5/20 110Q
   G01D5/244 K
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-272123(P2013-272123)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-125127(P2015-125127A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 敦
(72)【発明者】
【氏名】重田 哲
(72)【発明者】
【氏名】後藤 広生
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−210874(JP,A)
【文献】 特開2006−266733(JP,A)
【文献】 特開2007−315856(JP,A)
【文献】 特開2000−39336(JP,A)
【文献】 特開2005−315840(JP,A)
【文献】 特開2010−100286(JP,A)
【文献】 特開2009−210281(JP,A)
【文献】 特開2004−328832(JP,A)
【文献】 特開2007−206018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに取り付けられたレゾルバの励磁巻線を励磁するための正弦波状の励磁信号を受信し、前記励磁信号のピーク位置情報を含むピークパルス信号を出力するピーク検出部と、
前記ピークパルス信号に基づいて所定のパルス幅のサンプルパルス信号を出力するサンプルパルス発生部と、
前記レゾルバより出力される前記モータの回転角情報を含む回転角信号を受信し、前記サンプルパルス信号に基づいて前記回転角信号の電圧を保持するサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド部により保持された前記回転角信号の電圧を取得し、その電圧に基づいて前記モータの回転角を演算する演算部と、を備え
前記サンプルパルス発生部は、前記ピークパルス信号のパルス幅よりも短いパルス幅で前記サンプルパルス信号を出力することを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転角検出装置において、
前記サンプルホールド部は、前記サンプルパルス信号のパルス幅に対応するサンプル期間を除いたホールド期間の間、前記回転角信号の電圧を保持し、
前記サンプルパルス発生部は、前記ピークパルス信号の立ち上がり位置から前記回転角信号のピーク位置までの期間以上のパルス幅で前記サンプルパルス信号を出力することを特徴とする回転角検出装置。
【請求項3】
モータに取り付けられたレゾルバの励磁巻線を励磁するための正弦波状の励磁信号を受信し、前記励磁信号のピーク位置情報を含むピークパルス信号を出力するピーク検出部と、
前記ピークパルス信号に基づいて所定のパルス幅のサンプルパルス信号を出力するサンプルパルス発生部と、
前記レゾルバより出力される前記モータの回転角情報を含む回転角信号を受信し、前記サンプルパルス信号に基づいて前記回転角信号の電圧を保持するサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド部により保持された前記回転角信号の電圧を取得し、その電圧に基づいて前記モータの回転角を演算する演算部と、を備え、
前記サンプルホールド部は、前記サンプルパルス信号のパルス幅に対応するサンプル期間を除いたホールド期間の間、前記回転角信号の電圧を保持し、
前記サンプルパルス発生部は、前記ピークパルス信号の立ち上がり位置から前記回転角信号のピーク位置までの期間以上のパルス幅で前記サンプルパルス信号を出力することを特徴とする回転角検出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の回転角検出装置において、
前記励磁信号を出力すると共に、前記回転角信号に基づいて前記モータの回転角を検出するレゾルバ回路部をさらに備え、
前記演算部による前記モータの回転角の演算結果と、前記レゾルバ回路部による前記モータの回転角の検出結果とを比較し、その比較結果に基づいて前記レゾルバ回路部の診断を行うことを特徴とする回転角検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転角を検出する回転角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、EV(Electric Vehicle)などの車両に搭載する車両用モータを制御する場合、ISO26262の機能安全規格を満たす必要がある。そのため、一般的に、以下のような安全目標を達成することが求められる。
(1)モータが意図した回転方向とは逆に回転しないこと(ASIL-C or D)。
(2)モータが意図しないトルクや回転数を出力しないこと(ASIL-C or D)。
【0003】
このような安全目標を達成するためには、車両用モータの異常な回転を検出した場合に、モータの駆動を停止するような安全機構を設ける必要がある。
【0004】
ところで、従来のレゾルバ回路では、RDC(Resolver Digital Converter)がレゾルバからの出力信号(SIN,COS信号)に基づいて、モータの回転角度θを算出し、外部のマイコンに出力する。外部のマイコンは、RDCから供給されたモータの回転角度θに基づいて、モータをフィードバック制御する。
【0005】
したがって、前述した安全機構を設けるためには、車両用モータの回転角度θを算出するレゾルバ回路が健全であることが前提となる。
【0006】
この点に関し、レゾルバの励磁コイルに供給する励磁信号のゼロクロスポイントの間隔に基づいてレゾルバからの出力信号(SIN、COS信号)をサンプリングし、そのサンプリング結果に基づいてsinθとcosθを求めることにより、レゾルバ回路の異常を検出する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3402207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されるような診断装置では、励磁信号の振幅に異常があっても、ゼロクロスポイントは変わらないため、励磁信号の振幅の異常を検出できない。つまり、従来の診断装置では、レゾルバ回路の健全性を的確に診断することができない場合があった。
【0009】
本発明の目的は、レゾルバ回路の健全性を的確に診断するために、従来のレゾルバ回路に併設して使用可能な回転角検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による回転角検出装置の一態様は、モータに取り付けられたレゾルバの励磁巻線を励磁するための正弦波状の励磁信号を受信し、前記励磁信号のピーク位置情報を含むピークパルス信号を出力するピーク検出部と、前記ピークパルス信号に基づいて所定のパルス幅のサンプルパルス信号を出力するサンプルパルス発生部と、前記レゾルバより出力される前記モータの回転角情報を含む回転角信号を受信し、前記サンプルパルス信号に基づいて前記回転角信号の電圧を保持するサンプルホールド部と、前記サンプルホールド部により保持された前記回転角信号の電圧を取得し、その電圧に基づいて前記モータの回転角を演算する演算部と、を備え、前記サンプルパルス発生部は、前記ピークパルス信号のパルス幅よりも短いパルス幅で前記サンプルパルス信号を出力する
本発明による回転角検出装置の他の一態様は、モータに取り付けられたレゾルバの励磁巻線を励磁するための正弦波状の励磁信号を受信し、前記励磁信号のピーク位置情報を含むピークパルス信号を出力するピーク検出部と、前記ピークパルス信号に基づいて所定のパルス幅のサンプルパルス信号を出力するサンプルパルス発生部と、前記レゾルバより出力される前記モータの回転角情報を含む回転角信号を受信し、前記サンプルパルス信号に基づいて前記回転角信号の電圧を保持するサンプルホールド部と、前記サンプルホールド部により保持された前記回転角信号の電圧を取得し、その電圧に基づいて前記モータの回転角を演算する演算部と、を備え、前記サンプルホールド部は、前記サンプルパルス信号のパルス幅に対応するサンプル期間を除いたホールド期間の間、前記回転角信号の電圧を保持し、前記サンプルパルス発生部は、前記ピークパルス信号の立ち上がり位置から前記回転角信号のピーク位置までの期間以上のパルス幅で前記サンプルパルス信号を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レゾルバ回路に併設して使用可能な回転角検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る回転角検出装置の構成を示す図である。
図2】ピーク検出部の動作を説明するための図である。
図3】サンプルパルス発生部およびサンプルホールド部の動作を説明するための図である。
図4】ピークパルス信号を用いてホールド期間を決定した場合の例を示す図である。
図5】励磁信号が交差しない場合の例を示す図である。
図6】サンプル飽和点以前にホールド期間が開始される場合の例を示す図である。
図7】回転角信号のピーク位置から遠いタイミングでホールド期間が開始される場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る回転角検出装置1の構成を示す図である。図1に示す回転角検出装置1は、モータ10と同軸に取り付けられたレゾルバ11に接続されている。モータ10は、たとえば車両を駆動するために用いられる車両用モータであり、不図示のインバータによって制御される。
【0014】
レゾルバ11は、モータ10の回転角度θを検出するためのセンサであり、励磁巻線111、SIN巻線112、およびCOS巻線113から構成される。
【0015】
回転角検出装置1は、レゾルバ回路部13、ピーク検出部14、サンプルパルス発生部15、サンプルホールド部16、および演算部17を有する。レゾルバ回路部13は、一般的にRDC(Resolver Digital Converter)と呼ばれるものであり、励磁信号出力部131および回転角検出部132から構成される。ピーク検出部14は、分圧回路141およびコンパレータ142から構成される。演算部17は、AD変換器18を有している。
【0016】
以下では、図2、3を用いて、図1に示した回転角検出装置1の動作を説明する。図2は、ピーク検出部14の動作を説明するための図である。図3は、サンプルパルス発生部15およびサンプルホールド部16の動作を説明するための図である。
【0017】
レゾルバ回路部13は、励磁信号出力部131により、レゾルバ11の励磁巻線111の両端に、図2の上段に示すような励磁信号excを出力する。この励磁信号excは、互いに180°位相が異なる励磁信号exc+、exc-によって構成されている。励磁巻線111の一端(+極)には励磁信号exc+が入力され、励磁巻線111の他端(−極)には励磁信号exc+を反転した励磁信号exc-が入力される。なお、励磁信号exc+,exc-は、ピーク検出部14の分圧回路141にも入力される。
【0018】
レゾルバ11では、励磁巻線111に励磁信号excが入力されると、これに応じて、SIN巻線112およびCOS巻線113に、モータ10の回転角度θに応じた回転角信号SRsin,SRcosがそれぞれ励起される。そして、SIN巻線112の一端側の電圧が回転角信号SRsin+として出力され、他端側の電圧が回転角信号SRsin-として出力される。また、COS巻線113の一端側の電圧が回転角信号SRcos+として出力され、他端側の電圧が回転角信号SRcos-として出力される。
【0019】
なお、レゾルバ11において、SIN巻線112は、励起される回転角信号SRsinが励磁信号excと同相になるように配置されており、COS巻線113は、励起される回転角信号SRcosが励磁信号excよりも90°遅れた位相となるように配置されている。これらの回転角信号は、エンベロープ上に回転角度θに応じた角度情報をそれぞれ有している。
【0020】
レゾルバ11のSIN巻線112から出力された回転角信号SRsin+,SRsin-およびCOS巻線113から出力された回転角信号SRcos+,SRcos-は、回転角検出装置1において、レゾルバ回路部13の回転角検出部132に入力されると共に、サンプルホールド部16にも入力される。
【0021】
レゾルバ回路部13の回転角検出部132は、レゾルバ11のSIN巻線112から回転角信号SRsin+,SRsin-を受信し、レゾルバ11のCOS巻線113から回転角信号SRcos+,SRcos-を受信する。回転角検出部132は、これらの信号に基づいてモータ10の回転角度θを検出し、その検出結果を演算部17に出力する。
【0022】
ピーク検出部14において、分圧回路141は、入力された励磁信号exc+,exc-の電圧レベルをそれぞれシフトする。具体的には、図2の中段に示すように、励磁信号exc+のピーク近傍の所定範囲において励磁信号exc+が励磁信号exc-を上回るようなシフト量で、励磁信号exc+,exc-の電圧レベルをそれぞれシフトする。すなわち、レベルシフト後の励磁信号exc+と励磁信号exc-のピーク位置での電圧差を図中に示すように励磁信号交差電圧ΔVexcとすると、この励磁信号交差電圧ΔVexcが0より大きくなるように、励磁信号exc+,exc-のシフト量が決定される。なお、レベルシフト後の励磁信号exc+が励磁信号exc-を上回っている期間(以下では、ピークトリガ期間Tpkと称する)は、図示のように、励磁信号exc+のピークタイミングを中心とした左右対称の期間である。
【0023】
コンパレータ142は、分圧回路141によりレベルシフトされた励磁信号exc+と励磁信号exc-を比較し、その比較結果に基づいて、上記のピークトリガ期間Tpkの間だけアクティブとなるような2値のピークパルス信号Sppをサンプルパルス発生部15に出力する。このピークパルス信号Sppは、図2の下段に示すように、ピークトリガ期間Tpkに応じたパルス幅を有している。
【0024】
ピーク検出部14は、以上説明したような動作を分圧回路141とコンパレータ142でそれぞれ行うことにより、レゾルバ11から正弦波状の励磁信号excを受信し、その励磁信号excのピーク位置情報を含むピークパルス信号Sppを出力する。
【0025】
なお、上記のピーク検出部14とは別の方法でピークパルス信号Sppを得るようにしてもよい。たとえば、レベルシフトされていない状態で励磁信号exc+と励磁信号exc-の電圧差を求め、その値が所定の閾値以上のときにアクティブとなるようなパルス信号を出力しても、ピークパルス信号Sppを得ることができる。これ以外にも、励磁信号excのピーク位置情報を含むピークパルス信号Sppを得ることができれば、どのような方法を利用してもよい。
【0026】
サンプルパルス発生部15は、ピーク検出部14からのピークパルス信号Sppに基づいて、所定のパルス幅のサンプルパルス信号Sspを生成し、サンプルホールド部16に出力する。具体的には、図3の上段に示すピークパルス信号Sppがアクティブになるタイミングを元に、ピークトリガ期間Tpkよりも小さなサンプルトリガ期間Tspだけアクティブとなる、図3の中段に示すようなサンプルパルス信号Sspを生成する。これにより、サンプルパルス発生部15は、ピークパルス信号Sppのパルス幅よりも短いパルス幅でサンプルパルス信号Sspを出力する。
【0027】
サンプルホールド部16は、レゾルバ11のSIN巻線112から回転角信号SRsin+,SRsin-を受信し、レゾルバ11のCOS巻線113から回転角信号SRcos+,SRcos-を受信する。そして、回転角信号SRsin+と回転角信号SRsin-の電圧差から回転角信号SRsinを求めると共に、回転角信号SRcos+と回転角信号SRcos-の電圧差から回転角信号SRcosを求める。
【0028】
さらにサンプルホールド部16は、サンプルパルス発生部15からのサンプルパルス信号Sspに基づいてサンプル期間Tslとホールド期間Thdをそれぞれ決定する。そして、サンプル期間Tsl中に回転角信号SRsin,SRcosの電圧をそれぞれサンプリングすると共に、ホールド期間Thd中に回転角信号SRsin,SRcosの電圧をそれぞれ保持する。具体的には、図3の下段に示すように、サンプルパルス信号Sspの立ち上がりから立ち下がりまでの期間をサンプル期間Tslとし、このサンプル期間Tslを除いた期間、すなわちサンプルパルス信号Sspの立ち下がりから次のサンプルパルス信号Sspの立ち上がりまでの期間をホールド期間Thdとする。そして、サンプルパルス信号Sspの立ち下がりのタイミングで、そのときの回転角信号SRsin,SRcosの電圧をそれぞれサンプルホールド電圧Vshsin,Vshcosとして保持を開始し、ホールド期間Thdの間、これらの電圧を保持し続ける。
【0029】
なお、図3では簡略化のために、回転角信号SRsinと回転角信号SRcosを共通の図で表している。また、図3に示したように、サンプル期間Tslは前述のサンプルトリガ期間Tspと等しく、ピークトリガ期間Tpkよりも短い。
【0030】
演算部17は、サンプルホールド部16によって保持されたホールド期間Thd中のサンプルホールド電圧Vshsin,Vshcosを、AD変換器18によりデジタル値にそれぞれ変換して取得する。そして、取得したこれらの電圧値に基づいて角度演算を行うことにより、モータ10の回転角度θを演算する。なお、サンプル期間Tsl中にサンプリングされた回転角信号SRsin,SRcosの電圧については、変動が激しいため、角度演算に用いるのには適さない。そのため、演算部17では、サンプルパルス発生部15からサンプルパルス信号Sspを入力し、これに基づいてサンプル期間Tslを特定することで、サンプル期間Tslの間に取得された電圧値を角度演算から除外するようにしてもよい。
【0031】
上記のようにしてモータ10の回転角度θを演算したら、演算部17は、その演算結果をレゾルバ回路部13による回転角度θの検出結果と比較し、その比較結果に基づいてレゾルバ回路部13の診断を行う。具体的には、演算部17で演算した回転角度θと、レゾルバ回路部13によって検出された回転角度θとを比較する。その結果、これらの差が所定範囲内であればレゾルバ回路部13が正常であると診断し、所定範囲を超えていればレゾルバ回路部13が異常であると診断する。
【0032】
以上説明したように、本実施形態では、サンプルパルス発生部15により、ピークトリガ期間Tpkよりも短いサンプルトリガ期間Tspのパルス幅でサンプルパルス信号Sspを生成し、これを用いてサンプルホールド部16でのホールド期間Thdを決定している。これにより、ピーク検出部14からのピークパルス信号Sppをそのまま用いてホールド期間Thdを決定する場合と比べて、モータ10の回転角度θを高精度かつ確実に演算できるようにしている。以下では、この点について、図4〜7を用いて詳しく説明する。
【0033】
図4は、ピークパルス信号を用いてホールド期間を決定した場合の例を示す図である。図4に示すように、ピーク検出部14からのピークパルス信号Sppを直接サンプルホールド部16に入力し、このピークパルス信号Sppの立ち下がりから次のピークパルス信号Sppの立ち上がりまでの期間をホールド期間Thdとする。そして、ピークパルス信号Sppの立ち下がりのタイミングで、そのときの回転角信号SRsin,SRcosの電圧をそれぞれサンプルホールド電圧Vshsin,Vshcosとして保持を開始し、ホールド期間Thdの間、これらの電圧を保持し続ける。この場合のサンプル期間Tslは、ピークトリガ期間Tpkと等しい。
【0034】
ピーク検出部14の分圧回路141は、前述のように、励磁信号出力部131から入力された励磁信号exc+,exc-の電圧レベルを、これらのピーク位置における励磁信号交差電圧ΔVexcが0よりも大きくなるようにそれぞれシフトする。このとき、励磁信号exc+,exc-のシフト量を小さく設定すると、製造公差によるばらつきや、励磁信号exc+,exc-に印加されるノイズの影響等によって、図5に示すように、励磁信号交差電圧ΔVexcが0未満となってしまい、シフト後の励磁信号exc+と励磁信号exc-が交差しなくなることがある。このような場合、ピークパルス信号Sppが出力されず、演算部17においてモータ10の回転角度θを演算することができなくなってしまう。
【0035】
また、励磁信号exc+,exc-のシフト量を小さく設定すると、励磁信号交差電圧ΔVexcが0よりも大きくなりピークパルス信号Sppが出力されても、図6に示すように、回転角信号SRsin,SRcosの電圧が飽和するタイミング(サンプル飽和点)以前にピークパルス信号Sppが立ち下がり、ホールド期間Thdが開始される場合がある。このような場合、演算部17で取得されるサンプルホールド電圧Vshsin,VshcosはSN比が小さい。そのため、回転角信号SRsin,SRcosに含まれるノイズの影響などにより、演算部17においてモータ10の回転角度θを精度よく演算することができなくなってしまう可能性がある。
【0036】
以上説明したように、励磁信号exc+,exc-のシフト量を小さく設定すると、製造公差やノイズの影響等により、モータ10の回転角度θを正しく演算できない可能性がある。したがって、これを避けるためには、励磁信号exc+,exc-のシフト量をある程度大きく設定する必要がある。
【0037】
しかしその一方で、励磁信号exc+,exc-のシフト量を大きく設定すると、その分だけピークトリガ期間Tpkが長くなり、ピークパルス信号Sppのパルス幅が広がる。その結果、図7に示すように、回転角信号SRsin,SRcosのピーク位置からそれぞれ時間的に遠いタイミングでホールド期間Thdが開始される場合がある。このような場合も、図6で説明したのと同様に、演算部17で取得されるサンプルホールド電圧Vshsin,VshcosはSN比が小さい。そのため、回転角信号SRsin,SRcosに含まれるノイズの影響などにより、演算部17においてモータ10の回転角度θを精度よく演算することができなくなってしまう可能性がある。
【0038】
また、励磁信号exc+,exc-のシフト量を大きく設定すると、その分だけサンプル期間Tslが長くなり、ホールド期間Thdが短くなる。そのため、演算部17においてサンプルホールド電圧Vshsin,Vshcosを取得してモータ10の回転角度θを演算できる期間の割合が少なくなり、的確な角度演算の機会が減少する。
【0039】
これに対して、上記実施形態で説明した本発明では、前述の通り、サンプルパルス発生部15により、ピークトリガ期間Tpkよりも短い所定のサンプルトリガ期間Tspのパルス幅でサンプルパルス信号Sspを生成し、これを用いてサンプルホールド部16においてホールド期間Thdを決定している。そのため、励磁信号exc+,exc-のシフト量に関わらず、モータ10の回転角度θを高精度かつ確実に演算することができる。
【0040】
なお、サンプルパルス信号Sspのパルス幅が短すぎると、図6で説明したのと同様に、回転角信号SRsin,SRcosのピーク位置よりも前のタイミングでサンプルパルス信号Sspが立ち下がり、ホールド期間Thdが開始されてしまう場合がある。したがって、こうした事態を避けるためには、サンプルパルス信号Sspのパルス幅すなわちサンプルトリガ期間Tspは、回転角信号SRsin,SRcosのピーク位置すなわちサンプル飽和点を含むように設定することが好ましい。換言すると、サンプルパルス発生部15は、ピークパルス信号Sppの立ち上がり位置から回転角信号SRsin,SRcosのピーク位置までの期間以上のパルス幅で、サンプルパルス信号Sspを出力することが好ましい。
【0041】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
【0042】
(1)回転角検出装置1において、サンプルパルス発生部15は、ピーク検出部14から出力されたピークパルス信号Sppに基づいて所定のパルス幅のサンプルパルス信号Sspを出力する。サンプルホールド部16は、レゾルバ11より出力されるモータ10の回転角情報を含む回転角信号SRsin,SRcosを受信し、サンプルパルス信号Sspに基づいて回転角信号SRsin,SRcosの電圧をサンプルホールド電圧Vshsin,Vshcosとして保持する。演算部17は、サンプルホールド部16により保持されたサンプルホールド電圧Vshsin,Vshcosを取得し、これらに基づいてモータ10の回転角度θを演算する。このようにしたので、レゾルバ回路に併設して使用可能な回転角検出装置を提供することができる。
【0043】
(2)サンプルパルス発生部15は、ピークパルス信号Sppのパルス幅よりも短いパルス幅でサンプルパルス信号Sspを出力する。このようにしたので、励磁信号exc+,exc-のシフト量を大きく設定した場合にも、モータ10の回転角度θを高精度かつ確実に演算することができる。
【0044】
(3)サンプルホールド部16は、サンプルパルス信号Sspのパルス幅に対応するサンプル期間Tslを除いたホールド期間Thdの間、回転角信号SRsin,SRcosの電圧をサンプルホールド電圧Vshsin,Vshcosとして保持する。サンプルパルス発生部15は、ピークパルス信号Sppの立ち上がり位置から回転角信号SRsin,SRcosのピーク位置までの期間以上のパルス幅で、サンプルパルス信号Sspを出力することが好ましい。このようにすれば、励磁信号exc+,exc-のシフト量を大きく設定した場合にも、モータ10の回転角度θを高精度かつ確実に演算することができる。
【0045】
(4)回転角検出装置1は、励磁信号exc+,exc-を出力すると共に、回転角信号SRsin,SRcosに基づいてモータ10の回転角度θを検出するレゾルバ回路部13をさらに備える。演算部17は、演算部17によるモータ10の回転角度θの演算結果と、レゾルバ回路部13によるモータ10の回転角度θの検出結果とを比較し、その比較結果に基づいてレゾルバ回路部13の診断を行う。このようにしたので、レゾルバ回路部13の健全性を的確に診断することができる。
【0046】
なお、以上説明した実施の形態において、回転角検出装置1は、回転角検出部132と演算部17でモータ10の回転角度θをそれぞれ求めるようにしたが、演算部17でのみモータ10の回転角度θを求めてもよい。この場合、レゾルバ回路部13は回転角検出部132を有していなくてもよい。さらに、励磁信号exc+,exc-を外部から入力するようにして、レゾルバ回路部13自体を設けなくてもよい。
【0047】
また、以上説明した実施の形態や各種の変化例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。
【符号の説明】
【0048】
1 回転角検出装置
10 モータ
11 レゾルバ
13 レゾルバ回路部
14 ピーク検出部
15 サンプルパルス発生部
16 サンプルホールド部
17 演算部
18 AD変換器
111 励磁巻線
112 SIN巻線
113 COS巻線
131 励磁信号出力部
132 回転角検出部
141 分圧回路
142 コンパレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7