特許第6233908号(P6233908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233908
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】物干し具、及び、物干しピンチ
(51)【国際特許分類】
   D06F 57/00 20060101AFI20171113BHJP
   D06F 55/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   D06F57/00 350
   D06F55/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-45894(P2017-45894)
(22)【出願日】2017年3月10日
【審査請求日】2017年3月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】715011104
【氏名又は名称】溝口 大志
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】溝口 大志
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−129533(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3140272(JP,U)
【文献】 実開昭61−028559(JP,U)
【文献】 特開2015−177940(JP,A)
【文献】 特開昭61−137306(JP,A)
【文献】 実開昭53−164219(JP,U)
【文献】 実公昭36−030808(JP,Y1)
【文献】 特開平08−131691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 57/00
D06F 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物干しハンガーと、
前記物干しハンガーに固定された物干しピンチと、
を備えた物干し具であって、
前記物干しハンガーは、
第1の吊り下げ面と、前記第1の吊り下げ面の裏面である第1の物干し面と、第1の側面と、を有する第1のハンガー部と、
第2の吊り下げ面と、前記第2の吊り下げ面の裏面である第2の物干し面と、第2の側面と、を有する第2のハンガー部と、
前記第1のハンガー部と前記第2のハンガー部を接続する接続部と、
を備え、
前記物干しハンガーは、前記接続部を中心として折り畳むことにより、前記第1の物干し面と前記第2の物干し面が略同一平面上に位置する平面状態から、前記第1の吊り下げ面と前記第2の吊り下げ面が対向した折り畳み状態に変形可能であり、前記物干しハンガーを前記平面状態から前記折り畳み状態に変形させる際に、前記第1のハンガー部は、前記接続部を中心として第1の回転方向に回転され、
前記物干しピンチは、
基端部分が前記第1のハンガー部に回転可能に支持され、前記基端部分を中心として前記第1の回転方向に回転させることにより、先端部分が前記第1の物干し面の外側の空間又は前記第1の側面の外側の空間を移動する回転部と、
前記第1のハンガー部に固定された係止部と、
を備え、
前記回転部及び前記係止部の少なくとも一方には、対向した前記回転部と前記係止部の間に挟まれた被物干し部材の挟持状態を保つための挟持部が形成されており、
前記接続部が下側となるように前記第1のハンガー部がぶら下げられた状態において、前記係止部は、前記第1の回転方向へ回転した前記回転部と対向する位置において略水平方向に突出しており、前記回転部は、前記係止部と対向した状態において、前記係止部よりも前記水平方向に突出しており、
前記第1の物干し面には、前記第1の回転方向とは逆方向の第2の回転方向へ回転し略垂直方向に延びた回転部と対向する位置に、前記回転部との対向状態を維持するための保持部が設けられていることを特徴とする物干し具。
【請求項2】
前記接続部が下側となるように前記第1のハンガー部がぶら下げられた状態において、前記第1のハンガー部には、複数の前記物干しピンチが略垂直方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項1に記載の物干し具、
【請求項3】
前記係止部は、前記第1の物干し面から突出し前記回転部と対向する対向面と、前記対向面の反対側の非対向面と、を備え、前記非対向部は、先端が丸みを帯びた形状を有していることを特徴とする請求項2に記載の物干し具。
【請求項4】
第1の吊り下げ面と、前記第1の吊り下げ面の裏面である第1の物干し面と、第1の側面と、を有する第1のハンガー部と、第2の吊り下げ面と、前記第2の吊り下げ面の裏面である第2の物干し面と、第2の側面と、を有する第2のハンガー部と、前記第1のハンガー部と前記第2のハンガー部を接続する接続部と、を有し、前記接続部を中心として折り畳むことにより、前記第1の物干し面と前記第2の物干し面が略同一平面上に位置する平面状態から、前記第1の吊り下げ面と前記第2の吊り下げ面が対向した折り畳み状態に変形可能であり、前記物干しハンガーを前記平面状態から前記折り畳み状態に変形させる際に、前記第1のハンガー部は、前記接続部を中心として第1の回転方向に回転される物干しハンガーに取り付けられる物干しピンチであって、
基端部分が前記第1のハンガー部に直接的又は間接的に回転可能に支持され、前記基端部分を中心として前記第1の回転方向に回転させることにより、先端部分が前記第1の物干し面の外側の空間又は前記第1の側面の外側の空間を移動する回転部と、
前記第1のハンガー部に直接的又は間接的に固定された係止部と、
を備え、
前記回転部及び前記係止部の少なくとも一方には、対向した前記回転部と前記係止部の間に挟まれた被物干し部材の挟持状態を保つための挟持部が形成されており、
前記接続部が下側となるように前記第1のハンガー部がぶら下げられた状態において、前記係止部は、前記第1の回転方向へ回転した前記回転部と対向する位置において略水平方向に突出しており、前記回転部は、前記係止部と対向した状態において、前記係止部よりも前記水平方向に突出しており、
前記第1の物干し面には、前記第1の回転方向とは逆方向の第2の回転方向へ回転し略垂直方向に延びた回転部と対向する位置に、前記回転部との対向状態を維持するための保持部が設けられていることを特徴とする物干しピンチ。
【請求項5】
前記係止部は、前記第1の物干し面から突出し前記回転部と対向する対向面と、前記対向面の反対側の非対向面と、を備え、前記非対向部は、先端が丸みを帯びた形状を有していることを特徴とする請求項に記載の物干しピンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被物干し部材を干すための物干し具、及び、物干しピンチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対向させた2枚の板の一端同士を回転可能に接続し、他端間に洗濯物を挟持することのできるピンチが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−110395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のピンチは、通常の洗濯バサミと同様に、物干しハンガーに鎖等によってぶら下げて使用するものであり、洗濯物等の被物干し部材の着脱の操作性が大きく改善されているわけではない。
【0005】
そこで、本発明は、被物干し部材の着脱の操作性のよい物干し具、及び、物干しピンチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、物干しハンガーと、前記物干しハンガーに固定された物干しピンチと、を備えた物干し具であって、前記物干しハンガーは、第1の吊り下げ面と、前記第1の吊り下げ面の裏面である第1の物干し面と、第1の側面と、を有する第1のハンガー部と、第2の吊り下げ面と、前記第2の吊り下げ面の裏面である第2の物干し面と、第2の側面と、を有する第2のハンガー部と、前記第1のハンガー部と前記第2のハンガー部を接続する接続部と、を備え、前記物干しハンガーは、前記接続部を中心として折り畳むことにより、前記第1の物干し面と前記第2の物干し面が略同一平面上に位置する平面状態から、前記第1の吊り下げ面と前記第2の吊り下げ面が対向した折り畳み状態に変形可能であり、前記物干しピンチは、基端部分が前記第1のハンガー部に回転可能に支持され、前記基端部分を中心として回転させることにより、先端部分が前記第1の物干し面の外側の空間又は前記第1の側面の外側の空間を移動する回転部と、前記第1のハンガー部に固定され、前記回転された回転部と対向する位置に配置された係止部と、を備え、前記回転部及び前記係止部の少なくとも一方には、対向した前記回転部と前記係止部の間に挟まれた被物干し部材の挟持状態を保つための挟持部が形成されていることを特徴とする物干し具を提供している。
【0007】
このような構成によれば、“折り畳み状態”において回転部が使用者の正面付近で操作可能な状態となっているので、使用者は楽な姿勢で洗濯物の着脱を行うことが可能となる。また、物干しハンガーを折り畳んだ状態で洗濯物の着脱を行うことができるので、小さなスペースでも洗濯物の着脱を行うことが可能となる。
【0008】
また、従来の物干し具では、第1の物干し面と第2の物干し面が対向するように折り畳まれ、かつ、鎖等を介して第1の物干し面及び第2の物干し面に洗濯バサミがぶら下げられていたため、物干しハンガーを開く際に洗濯バサミ同士が互いに絡み合って開かないという問題が生じていた。
【0009】
しかしながら、本発明の物干し具では、物干しピンチは第1のハンガー部に固定されており、ぶら下げる構成ではないので、絡み合うという問題が生じない。
【0010】
また、前記物干しハンガーを前記平面状態から前記折り畳み状態に変形させる際に、前記第1のハンガー部は、前記接続部を中心として第1の回転方向に回転され、前記回転部の先端部分は、前記基端部分を中心として前記第1の回転方向に回転させることにより、前記第1の物干し面の外側の空間又は前記第1ハンガー部の側面の外側の空間を移動し、前記係止部は、前記第1の回転方向へ回転した前記回転部と対向する位置に配置されており、前記接続部が下側となるように前記第1のハンガー部がぶら下げられた状態において、前記第1のハンガー部には、複数の前記物干しピンチが垂直方向に沿って配列されており、前記回転部は、前記係止部と対向した状態において、前記第1の物干し面の外側の空間又は前記第1ハンガー部の側面の外側の空間へ向けて前記係止部よりも突出していることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、複数の回転部の係止部よりも突出した部分に対して重力に沿って力を加えるだけで、複数の回転部を第1の回転方向とは逆の方向へ一斉に回転させることができるので、洗濯物の挟持状態を一斉に解除することが可能となる。
【0012】
また、前記係止部は、前記第1の物干し面から突出し前記回転部と対向する対向面と、前記対向面の反対側の非対向面と、を備え、前記非対向部は、先端が丸みを帯びた形状を有していることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、洗濯物の挟持状態を一斉に解除した際、上方に位置していた物干しピンチから外れた洗濯物が、下方に位置する物干しピンチの係止部の先端に引っかかってしまうことが抑制される。
【0014】
また、前記物干しピンチは、前記第1の回転方向とは逆方向の第2の回転方向へ回転した前記回転部が再び前記第1の回転方向へ回転することを抑制するための保持部を更に備えることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、第2の回転方向へ回転した回転部は、保持部により、再び第1の回転方向へ回転することを抑制されるので、意図せずに回転部が第1の方向に回転して挟持状態となってしまうことが抑制され、次の物干し作業の際にスムーズに洗濯物を装着することが可能となる。
【0016】
また、本発明の別の観点によれば、第1の吊り下げ面と、前記第1の吊り下げ面の裏面である第1の物干し面と、第1の側面と、を有する第1のハンガー部と、第2の吊り下げ面と、前記第2の吊り下げ面の裏面である第2の物干し面と、第2の側面と、を有する第2のハンガー部と、前記第1のハンガー部と前記第2のハンガー部を接続する接続部と、を有し、前記接続部を中心として折り畳むことにより、前記第1の物干し面と前記第2の物干し面が略同一平面上に位置する平面状態から、前記第1の吊り下げ面と前記第2の吊り下げ面が対向した折り畳み状態に変形可能な物干しハンガーに取り付けられる物干しピンチであって、基端部分が前記第1のハンガー部に直接的又は間接的に回転可能に支持され、前記基端部分を中心として回転させることにより、先端部分が前記第1の物干し面の外側の空間又は前記第1の側面の外側の空間を移動する回転部と、前記第1のハンガー部に直接的又は間接的に固定され、前記回転された回転部と対向する位置に配置された係止部と、を備え、前記回転部及び前記係止部の少なくとも一方には、対向した前記回転部と前記係止部の間に挟まれた被物干し部材の挟持状態を保つための挟持部が形成されていることを特徴とする物干しピンチを提供としている。
【0017】
また、前記物干しハンガーを前記平面状態から前記折り畳み状態に変形させる際に、前記第1のハンガー部は、前記接続部を中心として第1の回転方向に回転され、前記回転部の先端部分は、前記基端部分を中心として前記第1の回転方向に回転させることにより、前記第1の物干し面の外側の空間又は前記第1ハンガー部の側面の外側の空間を移動し、前記係止部は、前記第1の回転方向へ回転した前記回転部と対向する位置に配置されており、前記回転部は、前記係止部と対向した状態において、前記第1の物干し面の外側の空間又は前記第1ハンガー部の側面の外側の空間へ向けて前記係止部よりも突出していることが好ましい。
【0018】
また、前記係止部は、前記第1の物干し面から突出し前記回転部と対向する対向面と、前記対向面の反対側の非対向面と、を備え、前記非対向部は、先端が丸みを帯びた形状を有していることが好ましい。
【0019】
また、前記第1の回転方向とは逆方向の第2の回転方向へ回転した前記回転部が再び前記第1の回転方向へ回転することを抑制するための保持部を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の物干し具、及び、物干しピンチによれば、被物干し部材の着脱を操作性よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態による物干し具の底面図
図2】本発明の第1の実施の形態による物干し具の“平面状態”の説明図
図3】本発明の第1の実施の形態による物干し具の“折り畳み状態”の説明図
図4】本発明の第1の実施の形態による物干し具の変形についての説明図
図5】本発明の第1の実施の形態による物干し具の“折り畳み状態”における物干しピンチの拡大図
図6】本発明の第1の実施の形態による物干し具の使用方法についてのフローチャート
図7】本発明の物干しピンチの変形例
図8】本発明の物干しピンチの他の変形例
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施の形態による物干し具1について、図1図6を参照して説明する。
【0023】
物干し具1は、洗濯物等の被物干し部材(以下、洗濯物と称す)を干すためのものであって、図1に示すように、物干しハンガー2と、物干しピンチ3と、を備えている。
【0024】
まず、図1図4を参照して、物干しハンガー2の構成について説明する。
【0025】
図1図3に示すように、物干しハンガー2は、第1のハンガー部21と、第2のハンガー部22と、接続部23と、を備えている。
【0026】
第1のハンガー部21及び第2のハンガー部22は、それぞれ同一サイズの格子状の略長方形状を有しており、略棒状の接続部23を介して接続されている。
【0027】
第1のハンガー部21は、洗濯物を干す際に上面となる第1の吊り下げ面21aと、洗濯物を干す際に下面となる第1の物干し面21bと、を備えている。
【0028】
同様に、第2のハンガー部22も、洗濯物を干す際に上面となる第2の吊り下げ面22aと、洗濯物を干す際に下面となる第2の物干し面22bと、を備えている。
【0029】
物干しハンガー2は、接続部23を中心として折り畳むことにより、第1の吊り下げ面21aと第2の吊り下げ面22aが略同一平面上に位置する“平面状態(図2)”から、第1の吊り下げ面21aと第2の吊り下げ面22aが対向した“折り畳み状態(図3)”に変形可能である。
【0030】
本実施の形態では、図4に示すように、物干しハンガー2を“折り畳み状態”に変形させる際に第1のハンガー部21が回転する方向を第1の回転方向P、物干しハンガー2を“平面状態”に変形させる際に第1のハンガー部21が回転する方向を第2の回転方向Qとする。
【0031】
第1のハンガー部21の接続部23とは反対側の端部には、一対の第1のフック部21cが設けられており、第2のハンガー部22の接続部23とは反対側の端部には、一対の第2のフック部22cが設けられている。
【0032】
物干し具1の使用時には、一対の第1のフック部21c間に吊り下げ紐21dを、一対の第2のフック部22c間に吊り下げ紐22dを架け渡し、架け渡された吊り下げ紐21d及び吊り下げ紐22dを物干し竿X等にぶら下げることが好ましい。
【0033】
この状態で、吊り下げ紐21dと吊り下げ紐22dが互いに遠ざかるように物干し竿上をスライドさせることで、物干しハンガー2は“平面状態”となり、吊り下げ紐21dと吊り下げ紐22dが互いに近づくように物干し竿上をスライドさせることで、物干しハンガー2は“折り畳み状態”となる。
【0034】
続いて、図3及び図5を参照して、物干しピンチ3の構成について説明する。
【0035】
図3に示すように、物干しピンチ3は、第1のハンガー部21及び第2のハンガー部22にそれぞれ複数個ずつ設けられており、それぞれ、回転部31と、係止部32と、保持部33と、を備えている。
【0036】
以下では、第1のハンガー部21に設けられた物干しピンチ3を例に説明するが、第2のハンガー部22に設けられた物干しピンチ3も同様の構成を有しているものとする。
【0037】
また、以下の説明では、物干しハンガー2が“折り畳み状態”で吊り下げられている場合、すなわち、第1のハンガー部21及び第2のハンガー部22が共に略垂直方向に延びている場合を例に説明する。
【0038】
回転部31は、略板形状を有しており、基端部分が第1の物干し面21bに回転可能に支持されている。詳細には、回転軸は異なるが、第1のハンガー部21及び第2のハンガー部22とそれぞれ同じ回転方向である第1の回転方向P及び第2の回転方向Qへ回転可能に支持されている。回転部31を第1の回転方向P又は第2の回転方向Qへ回転させることで、回転部31の先端部分が第1の物干し面21bの外側の空間、すなわち、第1の吊り下げ面21aとは反対側の空間(第2のハンガー部22とは反対側の空間とも言える)を移動することとなる。
【0039】
また、図5に示すように、回転部31の略中間部分には、磁石により構成された第1の挟持部31aが埋め込まれている。
【0040】
係止部32は、第1の物干し面21bから外側の空間へ向けて略水平方向に突出し、かつ、第1の回転方向Pへ回転した回転部31と対向する位置に配置されている。回転部31と係止部32が対向した状態においては、回転部31の方が係止部32よりも第1の物干し面21bの外側の空間へ向けて突出している。
【0041】
図5に示すように、係止部32は、回転部31と対向する対向面32aと、反対面である非対向面32bと、を備えている。
【0042】
対向面32aには、回転部31と係止部32が対向した状態において第1の挟持部31aと対向する位置に、磁石により構成された第2の挟持部32cが設けられている。従って、回転部31が第1の回転方向Pへ回転し、第1の挟持部31aが第2の挟持部32cに近づくと、第1の挟持部31aは第2の挟持部32cに吸着されることとなる。
【0043】
非対向面32bは、先端が丸みを帯びた形状を有している。
【0044】
保持部33は、第1の物干し面21bに設けられた磁石であり、第2の回転方向Qへ回転した回転部31の第1の挟持部31aと対向する位置に配置されている。従って、回転部31が第2の回転方向Qへ回転し、第1の挟持部31aが保持部33に近づくと、第1の挟持部31aは保持部33に吸着されることとなる。
【0045】
このような構成の物干しピンチ3は、物干しハンガー2が“折り畳み状態”で吊り下げられているときには、回転部31よりも係止部32が上方となる姿勢で略垂直方向に複数配列されている。
【0046】
続いて、図6を参照して、本実施の形態による物干し具1の使用方法について説明する。
【0047】
図6は、洗濯物の装着から取り込みまでの物干し具1の使用方法についてのフローチャートである。本実施の形態では、このフローチャートは、物干しハンガー2が“折り畳み状態”にあり、かつ、第1の挟持部31aが保持部33に吸着されている状態から開始するものとする。
【0048】
まず、回転部31を第1の回転方向Pへ回転させ、保持部33との吸着を解除する(S1)。
【0049】
続いて、回転部31に洗濯物を載置した後(S2)、回転部31を更に第1の回転方向Pへ回転させ、第2の挟持部32cと吸着させる(S3)。これにより、回転部31と係止部32との間に洗濯物が挟持されることとなる。
【0050】
この状態では、挟持された洗濯物は、略水平方向へ延びた回転部31の先端から折れ曲がって下方へぶら下がった状態となる。なお、“折り畳み状態”では、複数の物干しピンチ3は、略垂直方向に配列されているので、複数の物干しピンチ3にそれぞれ洗濯物を挟持させる際には、下方から順に挟持させていくことが好ましい。
【0051】
全ての洗濯物を挟持させた後、第1の物干しハンガー部21を第2の回転方向Qに、第2の物干しハンガー部22を第1の回転方向Pに回転させることで、物干しハンガー2を“折り畳み状態”から“平面状態”に変形させる(S4)。この変形は、吊り下げ紐21dと吊り下げ紐22dが互いに遠ざかるように物干し竿上をスライドさせることで、容易に行うことができる。
【0052】
物干しハンガー2が“平面状態”となることで、各物干しピンチ3が略水平方向に並ぶ一方で、略水平方向に延びていた回転部31及び係止部32は、略下方向へ延びることとなる。従って、各物干しピンチ3に挟持された洗濯物は、折れ曲がることなく、かつ、互いに接触することない状態で干されることとなる。
【0053】
洗濯物を取り込む際には、第1の物干しハンガー部21を第1の回転方向Pに、第2の物干しハンガー部22を第2の回転方向Qに回転させることで、物干しハンガー2を “平面状態”から“折り畳み状態”に変形させる(S5)。
【0054】
最後に、回転部31を第2の回転方向Qへ回転させ、第2の挟持部32cとの吸着を解除させる(S6)。これにより、洗濯物が挟持状態から解放されるので、重力に沿って落下することとなる。一方、第2の回転方向Qへ回転した回転部31は、保持部33と吸着され、新たな洗濯物を装着可能な待機状態となる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態による物干し具1では、第1のハンガー部21に回転可能に支持された回転部31を回転させることにより洗濯物の着脱を行う。
【0056】
このような構成によれば、従来の洗濯バサミのような“つまむ”操作が不要となるので、物干し作業において使用者に疲労が生じることが抑制される。また、回転部31に洗濯物を載置した状態で回転部31を第1の回転方向Pへ回転させるだけで洗濯物を挟持することができるので、片手でも物干し作業が可能となる。
【0057】
また、物干しハンガー2が“折り畳み状態”のときに、第1の物干し面21bが外側となり、かつ、回転部31の先端部分は、第1の物干し面21bの外側の空間を移動可能に構成されている。
【0058】
このような構成によれば、“折り畳み状態”において回転部31が使用者の正面付近で操作可能な状態となっているので、使用者は楽な姿勢で洗濯物の着脱を行うことが可能となる。また、“折り畳み状態”で洗濯物の着脱を行うことができるので、小さなスペースでも洗濯物の着脱を行うことが可能となる。
【0059】
また、従来の物干し具では、第1の物干し面と第2の物干し面が対向するように折り畳まれ、かつ、鎖等を介して第1の物干し面及び第2の物干し面に洗濯バサミがぶら下げられていたため、物干しハンガーを開く際に洗濯バサミ同士が互いに絡み合って開かないという問題が生じていた。
【0060】
しかしながら、本実施の形態による物干し具1では、物干しピンチ3は第1のハンガー部21に固定されており、ぶら下げる構成ではないので、絡み合うという問題が生じない。
【0061】
また、本実施の形態による物干し具1では、回転部31と係止部32と対向し、かつ、物干しハンガー2が“折り畳み状態”で吊り下げられている場合において、物干しピンチ3は、回転部31よりも係止部32が上方となる姿勢で略垂直方向に複数配列されており、かつ、回転部31は、第1の物干し面12bの外側の空間へ向けて係止部32よりも突出している。
【0062】
このような構成によれば、複数の回転部31の係止部32よりも突出した部分に対して重力に沿って力を加えるだけで、複数の回転部31を第2の回転方向Qへ一斉に回転させることができるので、洗濯物の挟持状態を一斉に解除することが可能となる。
【0063】
また、本実施の形態による物干し具1では、係止部32の非対向面32bは、先端が丸みを帯びた形状を有している。
【0064】
このような構成によれば、洗濯物の挟持状態を一斉に解除した際、上方に位置していた物干しピンチ3から外れた洗濯物が、下方に位置する物干しピンチ3の係止部32の先端に引っかかってしまうことが抑制される。
【0065】
また、本実施の形態による物干し具1では、第2の回転方向Qへ回転した回転部31の第1の挟持部31aと対向する位置に保持部33が配置されている。
【0066】
このような構成によれば、第2の回転方向Qへ回転した回転部31の第1の挟持部31aは、磁石から構成される保持部33に吸着されるので、意図せずに回転部31が第1の方向Pに回転して挟持状態となってしまうことが抑制され、次の物干し作業の際にスムーズに洗濯物を装着することが可能となる。
【0067】
尚、本発明の物干し具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0068】
例えば、上記実施の形態では、物干しピンチ3は、物干し具1の一部として説明したが、物干しハンガー2から着脱可能であってもよい。着脱可能とすることで、一の物干しピンチ3が破損等した場合に容易に交換が可能となる。この場合、回転部31及び係止部32は、第1のハンガー部21及び第2のハンガー部22に間接的に支持されることとなる。
【0069】
また、物干しピンチ3は、上記実施の形態以外の構造を採用することも可能である。例えば、上記実施の形態では、図2に示すように、回転部31と係止部32は、第1の物干し面21bと略垂直な面で対向したが、図7に示すように、第1の物干し面21bと略水平な面で対向する構造等も考えられる。この場合、図5のS6において洗濯物の挟持状態を一斉に解除するために、回転部31に固定され略水平に延びた操作部34を備えていることが好ましい。
【0070】
また、上記実施の形態では、物干しピンチ3は、第1の物干し面21b及び第2の物干し面22bに取り付けられていたが、図7に示すように、第1のハンガー部21及び第2のハンガー部22の側部に取り付けられてもよい。この場合であっても、物干しピンチ3は、側部側から見ると、第1の物干し面21b及び第2の物干し面22bの外側の空間を移動することとなる。
【0071】
このように、本発明の“第1の物干し面の外側の空間”は、物干しピンチ3は、第1のハンガー部21を側部側から見た場合に“第1の物干し面の外側の空間”に相当していればよい。このことは、物干しピンチ3が第1のハンガー部21及び第2のハンガー部22のいずれの場所に取り付けられていたとしても、“折り畳み状態”において、“外側の空間”から操作部34(または、上記実施の形態における回転部31)を操作可能であればよいことを意味する。
【0072】
同様の発想で、物干しピンチ3を第1のハンガー部21及び第2のハンガー部22の側部に取り付ける場合、図8に示すように、第1の物干し面21b及び第2の物干し面22bの側部の外側の空間を移動するように構成してもよい。
【0073】
また、上記実施の形態では、回転部31と係止部32の対向状態、及び、回転部31と保持部33の対向状態を維持するために磁石を用いたが、それぞれを互いに係合可能な形状等にすることによって対向状態を維持してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 物干し具
2 物干しハンガー
3 物干しピンチ
21 第1のハンガー部
21a 第1の吊り下げ面
21b 第1の物干し面
21c 第1のフック部
21d 吊り下げ紐
22 第2のハンガー部
22a 第2の吊り下げ面
22b 第2の物干し面
22c 第2のフック部
22d 吊り下げ紐
23 接続部
31 回転部
31a 第1の挟持部
32 係止部
32a 対向面
32b 非対向面
32c 第2の挟持部
33 保持部
34 操作部
【要約】
【課題】 被物干し部材の着脱の操作性のよい物干し具を提供する。
【解決手段】 物干し具1は、物干しハンガー2と、物干しピンチ3と、を備えている。物干しハンガー2は、接続部23を中心として折り畳むことで、第1の物干し面21bと第2の物干し面22bが同一平面上に位置する平面状態から、第1の吊り下げ面21aと第2の吊り下げ面22aが対向した折り畳み状態に変形可能である。物干しピンチ3は、第1のハンガー部21に回転可能に支持された基端部分を中心として回転させることで先端部分が第1の物干し面21bの外側の空間を移動する回転部31と、回転された回転部31と対向する位置に配置された係止部21と、を備えている。回転部31及び係止部32には、回転部31と係止部32の間に挟まれた被物干し部材の挟持状態を保つための第1の挟持部31a及び第2の挟持部32cがそれぞれ形成されている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8